JP2019112288A - 炭化ケイ素部材および半導体製造装置用部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラズマに対する耐食性に優れるとともに、光透過性が低く温度調整およびレーザ光による認識性が高く、フォーカスリング、ダミーウェハ等の半導体製造装置用部材として好適なSiC部材。【解決手段】Si元素の含有量に対するC元素の含有量である組成比C/Siが1より大きく、ラマン分光において794cm−1付近のピーク強度をP1とし、1361cm−1付近のピーク強度をP2としたとき、P2/P1の比率が0.02以下である炭化ケイ素部材。【選択図】図1

Description

本開示は、炭化ケイ素部材および半導体製造装置用部材に関するものである。
化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD法)により基材の表面に炭化ケ
イ素(SiC)を析出させ、成膜した後、基材を除去して得られるSiC材料(CVD−SiC材料)は、焼結法で製造されたSiC材料に比較して緻密で高純度であり、耐食性、耐熱性、強度特性にも優れている。そのため、CVD−SiC材料は、半導体製造装置用の加熱ヒータや、エッチング装置に用いられるフォーカスリング、ダミーウェハ、サセプター、炉芯管、耐薬品性治具、分析用容器等の各種部材として提案されている。このCVD法によるSiC材料は、高純度かつ緻密であるため、光透過性が高い。
しかしながら、この高い光透過性が、用途によっては不都合な場合がある。例えば、SiC部材の温度管理を行う際、放射温度計により測温する場合には、測定用の放射赤外線の一部がSiC部材を透過してしまうため、精密な温度管理が困難となる。また、SiC部材を搬送用ロボットで搬送する場合、SiC部材の認識はレーザ光を照射することにより行われるが、SiC部材の光透過性が高いと、ロボットがSiC部材の位置を正確に認識することができず、搬送が困難となる。
そのため、SiC部材の光透過性を低減することが求められていた。例えば特許文献1では、SiC部材の表面あるいは内部に少なくとも1層の粒子性状の異なるSiC層を設けることで、光透過率を低減できることが開示されている。
特開平11−228233号公報
本開示の炭化ケイ素部材は、Si元素の含有量に対するC元素の含有量である組成比C/Siが1より大きいとともに、ラマン分光において794cm−1付近のピーク強度をP1とし、1361cm−1付近のピーク強度をP2としたとき、P2/P1の比率が0.02以下である。
本開示の半導体製造装置用部材、フォーカスリング、およびダミーウェハは、上記の炭化ケイ素部材からなる。
半導体製造装置用部材の一例である、フォーカスリングを模式的に示す斜視図である。 半導体製造装置用部材の別の例である、ダミーウェハを模式的に示す斜視図である。
図1、図2は、炭化ケイ素材料を用いた半導体製造装置用部材1の一例であり、図1はフォーカスリング1a、図2はダミーウェハ1bを模式的に示したものである。半導体製造装置、特にCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長法)、PVD(Physical Vapor Deposition、物理気相成長法)、およびプラズマエッチング装置では、Siなど
のウェハがプラズマ処理される。
フォーカスリング1aは、ウェハの外周に配置され、ウェハを均一に処理するために用いられる。そのため、フォーカスリング1aには、プラズマに対する高い耐食性(耐プラズマ性)を有することが求められる。また、プロセス中の温度管理も重要である。
ダミーウェハ1bは、半導体製造装置の条件調整、クリーニングなどの際にウェハの代替として用いられる。ダミーウェハ1bもフォーカスリング1aと同様に、高い耐プラズマ性を有することが求められる。また、搬送用ロボットで搬送されるため、レーザ光による位置認識が容易である必要がある。
本開示の炭化ケイ素部材は、その実施形態の一つにおいて、Si元素の含有量に対するC元素の含有量である組成比C/Siが1より大きいとともに、ラマン分光において、794cm−1付近のピーク強度をP1とし、1361cm−1付近のピーク強度をP2としたとき、P2/P1の比率が0.02以下である。
炭化ケイ素部材のC/Si比を1より大きくすることで、炭化ケイ素(以下、SiCという場合もある)結晶のSiサイトにC原子が欠陥として導入される。このように不純物準位が導入されることで、SiC結晶の光透過性が低減される。このような炭化ケイ素部材では、SiC結晶自体の光透過性が低いため、たとえば、プラズマ等により炭化ケイ素部材の表面がエッチングされても炭化ケイ素部材自体の光透過性に対する影響が少ない。
炭化ケイ素部材のラマン分光において、794cm−1付近のピークはSiとCとの結合に起因する。また、1361cm−1付近のピークは、C−C結合に起因し、黒鉛等の単体の炭素が存在することを示唆している。したがって、ラマン分光においてP2/P1の比率が0.02以下の炭化ケイ素部材には、単体の炭素が実質的に存在しないといってよい。その結果、プラズマ等により炭化ケイ素部材中の黒鉛がエッチングされることに起因する、パーティクルの発生を抑えることができ、半導体等被処理物のパーティクル汚染を防ぐことができる。
炭化ケイ素部材の実施形態の一つでは、表面粗さRaが10nm以下の平滑面を有していてもよい。
炭化ケイ素部材が、表面粗さRa10nm以下の平滑面を有することにより、プラズマ等によりその平滑面がエッチングされても、パーティクル発生をさらに抑制することができる。また、通常の、すなわちC/Si比がほぼ1である炭化ケイ素部材の場合、SiC結晶自体が高い光透過性を有するため、Raが10nm以下であると、炭化ケイ素部材の光透過性が大幅に上昇しやすい。一方、本開示の実施形態に係る炭化ケイ素部材は、SiC結晶自体の光透過性が低いため、Raを10nm以下としても光透過性を低く保つことができる。すなわち、高い耐プラズマ性と、低い光透過性とを兼ね備えた炭化ケイ素部材とすることができる。
炭化ケイ素部材実施形態の一つでは、組成比C/Siが、1.05以上であってもよい。
炭化ケイ素部材の組成比C/Siが1.05以上であることにより、SiC結晶の欠陥量をより多くし、光透過性をさらに低減することができる。
炭化ケイ素部材の実施形態の一つでは、SiCの単位体積当たりに含まれる窒素原子の含有量が、1×1018cm−3以上であってもよい。
炭化ケイ素部材が、窒素原子を1018cm−3以上含有していることにより、新たな不純物準位が多量に導入される。その結果、SiC結晶自体の光透過性をさらに低減することができ、より光透過性の低い炭化ケイ素部材とすることができる。
このような炭化ケイ素部材は、たとえば半導体製造装置用部材として用いることができる。
このような炭化ケイ素部材、すなわち、C/Si比が1より大きいSiCは、以下のように、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD法)により作製することが
できる。
本実施形態のSiC部材の作製に用いるCVD装置は、ガスの導入口および導出口を有する縦型または横型のバッチ式のCVD室と、電気的な加熱手段とを備えたものがよいが、特にこれに限定されない。特に、高周波を用いて加熱するCVD装置は、基体を選択的に加熱できるため、本実施形態の炭化ケイ素部材の作製に用いることができる。加熱に用いる高周波の周波数は、たとえば3kHz〜100kHzとすればよい。
CVDの方法としては、CVD室内に基体をセットし、原料ガス、キャリアガスなどのガスをCVD室内に導入し、基体上で化学気相成長(CVD)反応させるものであればよい。
原料ガスは、炭素原子およびケイ素原子を含むガスであればよい。特に、ケイ素原子を含むガスとしては、分子中に、ケイ素原子に1個以上の塩素原子が結合している構造を有するものを用いることができる。その中でも、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、塩化ケイ素と炭化水素ガスとの混合原料などを用いることができる。これらの原料ガスを用いることで、CVD−SiCを高速で堆積させることができ、効率的にSiC部材を作製することができる。
これらの原料ガスは、水素、アルゴン等のキャリアガスと所定の比率で混合され、混合ガスとしてCVD室内に導入される。原料ガスとキャリアガスとの混合比率は、たとえば原料ガスの体積に対して、キャリアガスの体積を3倍〜10倍とすればよい。キャリアガスは水素(H)であってもよい。水素をキャリアガスとして用いることで、ケイ素原子からの脱塩素反応を促進することができる。
C/Si比が1より大きいSiCは、原料ガスに含まれる炭素原子(C)の量に対して、水素(H)の量を少なくすることで得られる。原料ガスのH/C比は、2.5〜3倍とすることができる。原料ガスのH/C比を2.5倍以上とすることで、黒鉛の析出を抑制することができる。
成膜レートは100μm/h以上であってもよい。成膜レートを100μm/h以上にするには、原料ガスの流量を増やし、基材とノズルとの距離を近づければよい。たとえば基材とノズルとの距離は、50mm以下、さらには30mm以下とすればよい。炭素原子を含む原料ガスは、大半が炭素原子に水素原子が結合した化合物である。キャリアガスであるHガスの量が少なくなると、炭素原子を含む原料ガスの炭素原子と水素原子との結合が解離しやすくなり、炭素原子を含む原料ガスの反応性が高くなる。反応性の高い炭素原子を含む原料ガスが多いと、生成するSiC結晶は炭素(C)リッチなSiC結晶、すなわちC/Si比が1以上のSiC結晶となりやすい。また、成膜レートを100μm/h以上とすると、格子欠陥が非常に生成しやすくなり、C/Si比が1より大きいSiC結晶が得られる。また、このような過程では黒鉛が生成されにくく、黒鉛を含まない炭化
ケイ素部材が得られる。
CVD室内には、さらに窒素原子(N)などのドーパント原子を含有するガスを導入してもよい。CVD−SiC中にドーパント原子を導入することで、CVD−SiCの欠陥を増加させ、光透過率を低下させることができる。ドーパント原子としては、窒素(N)のほか、ホウ素(B)などを用いてもよい。窒素含有ガスとしては、例えば窒素、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。ホウ素含有ガスとしては、例えば三塩化ホウ素、ジボランなどが挙げられる。
原料ガスと、ドーパント原子を含有するガスとの比率は、ドーパント原子の導入量に応じて適宜調整すればよい。たとえば、原料ガスの体積に対し、ドーパント原子を含有するガスの体積を、0.01倍〜50倍とすればよい。以下、原料ガス、キャリアガス、および必要に応じドーパント原子を含有するガスの混合ガスを、総じて混合原料ガスという。
CVDの反応温度は、たとえば1200℃以上とすればよく、さらに1250℃以上としてもよい。反応温度が1200℃未満であると、CVD−SiCの堆積速度が著しく低下し、生産効率が低下する。反応温度は、特に1350℃以上、さらには1350℃〜1500℃とするのがよい。
CVD−SiCを堆積させる基体としては、たとえば黒鉛を用いればよい。黒鉛の熱膨張係数は、炭化ケイ素の熱膨張係数に近い。したがって、基体として黒鉛を用いることで、基体および基体の表面に形成されたCVD−SiCの熱応力による変形を低減することができる。
黒鉛の熱膨張係数は、CVD−SiCの熱膨張係数よりも若干大きくてもよい。CVD−SiC堆積後に、基体およびCVD−SiCを室温まで冷却した際、黒鉛の熱膨張係数がCVD−SiCの熱膨張係数よりも若干大きいことにより、CVD−SiCに生じる熱応力は圧縮応力となる。CVD−SiCに圧縮応力が働くことにより、CVD−SiCにはクラックが発生しにくくなる。
また、フォーカスリング1aやダミーウェハ1b等の炭化ケイ素部材では、CVD−SiCを自立体(自立膜)として用いる。自立体として用いる炭化ケイ素部材では、形成したCVD−SiCから基体を除去する必要がある。黒鉛製の基体は、酸化や研削によりCVD−SiCから除去しやすい。このような点からも、CVD−SiCを形成する基体として、黒鉛を用いるのがよい。
炭化ケイ素部材のC/Si比は、例えば電子線マイクロアナライザ(EPMA)、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光、二次イオン質量分析(SIMS)等の元素分析手法によって確認することができる。また、X線光電子分光(XPS)で得られたC1sのスペクトルを、Si−C結合(283.5eV付近)とC−C結合(285eV付近)のピークに分離し、その積分強度ASi−C、AC−Cを比較することによって求めてもよい。黒鉛を含まない場合、C−C結合はSiCのSiサイトに置換されたC原子の存在を示している。積分強度の比AC−C/ASi−Cは、結合の数量比を表わしている。1つのSiサイトがC原子に置換されたとき、C−C結合が新たに4つ生成することになるため、(AC−C/ASi−C)÷4=1−C/Siと考えてよい。
以下、本実施形態の炭化ケイ素部材について、実施例に基づき詳細に説明する。
四塩化ケイ素(SiCl)、メタン(CH)、水素(H)、および必要に応じア
ンモニア(NH)を用いて、CVD法により、黒鉛基板上にCVD−SiCを形成した。
CVD装置は、高周波誘導加熱により黒鉛基板を加熱する方式の装置を用いた。高周波の周波数は60kHzとした。CVD室内に、黒鉛基板および断熱材からなる基板支持体を配置し、CVD室内を真空排気しながら昇温した。黒鉛基体の温度は、1400℃とした。原料ガス(塩化ケイ素およびメタン)、キャリアガス(水素)、および必要に応じドーパントガス(窒素)を混合した混合ガスを原料ガスとして、ガス吹き付け用ノズルにより黒鉛基体上に吹き付け、CVD−SiCを堆積させた。
ガス吹き付け用ノズルは15mmの内径を有していた。ガス吹き付け用ノズルと黒鉛基板との距離は5mmとした。各ガスの流量および成膜レートを表1に示す。
Figure 2019112288
得られたCVD−SiCは、研削加工して、黒鉛基板を除去して厚さ1mmの平板形状のSiC試料とした。
得られた各SiC試料の組成は、エネルギー分散型X線分光(EDS)により評価し、C/Si比を求めた。また、各SiC試料ラマン分光を行い、794cm−1付近のピークと1361cm−1付近のピークとの強度比P2/P1を算出した。窒素含有量は、二次イオン質量分析(SIMS)により測定した。各SiC試料の表面粗さRaは、表面粗さ計を用いて測定した。
各SiC試料の光透過率は、分光光度計を用いて測定し、波長600nm、2500nmにおける光透過率を表2に記載した。
また、直径50mmのSiウェハ上にSiC試料を載せ、プラズマエッチング装置によりプラズマを照射した。プラズマ症や後のSiウェハを光学顕微鏡で観察し、Siウェハ上のパーティクル数を計数した。
各試料のC/Si比、P2/P1比、含有窒素量、表面粗さRa、光透過率、およびパーティクル数を表2に示す。
Figure 2019112288
試料No.1〜5は、C/Si比が1より大きく、ラマン分光におけるP2/P1が0.02以下であることから、光透過性が低く、プラズマに対する耐食性に優れた特性を示した。試料No.2は、鏡面研磨加工を行い、Ra=10nmとすることで、低い光透過率を維持したまま、パーティクル数が低減されていた。試料No.3は、CH量を増やしたことによって、SiサイトへのC原子置換が促進され、C/Si比は1.05だった。鏡面研磨加工を行い、Ra=9nmとした結果、さらに光透過率を低減させることができた。試料No.4は、さらにCH量を増やしたことによって、SiサイトへのC原子置換が促進されるとともに微量のC−C結合が生成されたが、P2/P1が0.02以下であり、光透過率が低くパーティクル数も少なかった。試料No.5は、NHを原料ガスに混ぜたことで、窒素原子がSiCにドープされ、窒素量が3×1018cm−3に増加し、さらに光透過率が低減した。
一方、試料No.6は、SiClおよびCHの流量が少なく、成膜レートが30μm/hと低かった。さらに、SiCl、CHに対するHの量を10倍に増やしたことで、SiCのSiサイトへのC原子の置換が起こりにくくなり、C/Si比は1.00となり、光透過率が高かった。試料No.7では、CHの流量をSiClの1.5倍としたことにより、C/Si比が1.12であった。試料No.7のラマンスペクトルには、黒鉛のピークが明確に確認され、P/P比は0.11であった。このように黒鉛を含む試料No.7は、光透過率は低いが、黒鉛がエッチングされやすく、プラズマ照射時のパーティクル数が大幅に増加した。
1 :半導体製造装置用部材
1a :フォーカスリング
1b :ダミーウェハ

Claims (7)

  1. Si元素の含有量に対するC元素の含有量である組成比C/Siが1より大きく、ラマン分光において794cm−1付近のピーク強度をP1とし、1361cm−1付近のピーク強度をP2としたとき、P2/P1の比率が0.02以下である、炭化ケイ素部材。
  2. 組成比C/Siが1.05以上であることを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素部材。
  3. 窒素原子を1×1018cm−3以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化ケイ素部材。
  4. 表面粗さRaが10nm以下の平滑面を有する請求項1〜3のいずれかに記載の炭化ケイ素部材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭化ケイ素部材からなる、半導体製造装置用部材。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭化ケイ素部材からなる、フォーカスリング。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の炭化ケイ素部材からなる、ダミーウェハ。
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