JP2019091316A - 熱交換器の解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】減衰比を精度高く、かつ、高効率に取得することができる熱交換器の解析方法を提供する。【解決手段】熱交換器の構造モデルを作成する構造モデル作成工程と、構造モデルにおける対向箇所に、これら伝熱管と振止部材との非接触時に荷重が発生せずに接触時に荷重が発生し、荷重に応じて摩擦力が発生する摩擦接触要素を設定した非線形モデルを作成する非線形モデル作成工程と、非線形モデルに対して、該非線形モデルの変形量が熱交換器の地震時の一次振動モードの変形量に対応する値となるように慣性加速度を与える静解析を行う変形量再現工程と、非線形モデルに与えた慣性加速度を除去して、変形量を初期変形として非線形モデルを自由振動させる動解析を行う自由振動解析工程と、自由振動に基づいて減衰比を取得する減衰比取得工程とを含む。【選択図】図5

Description

本発明は、熱交換器の解析方法に関する。
蒸気発生器は、Uベンド部を有する熱交換器である。この熱交換器のUベンド部は、曲がり部を有する複数の伝熱管を全体として半球状をなすように集合配列してなるものである。具体的にはUベンド部は、同一面内(面内方向)に並設された伝熱管群を、面内方向に直交する面外方向に積層することによって構成されている。このような伝熱管群の間には、各伝熱管に交差して延びる振止部材が配置されている。
ここで例えば特許文献1には、ボルト等の締結部材を対象とした摩擦減衰の評価手法が開示されている。当該評価手法では、締結部材を構成する第1部材及び第2部材の接触面を固着領域とすべり領域とに分けて形成を線形化することで、計算負荷を低減している。
特許第6037677号公報
ところで、熱交換器のように多数の部材からなる機器では、部材同士の接触点が多数となるため、上記特許文献1の手法を適用して減衰比を評価することは困難である。
熱交換器のような接触点を多数有する構造体であっても、減衰比を精度高く、かつ、効率良く評価することが望まれている。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、減衰比を精度高く、かつ、高効率に評価することができる熱交換器の解析方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る熱交換器の解析方法は、面内方向に並設された複数の伝熱管からなる伝熱管群が前記面内方向に交差する面外方向に複数積層されてなる熱交換器本体と、互いに隣り合う前記伝熱管群の間で前記伝熱管に交差して延びる振止部材とを有する熱交換器の解析方法であって、前記熱交換器の構造モデルを作成する構造モデル作成工程と、前記構造モデルにおける前記伝熱管と前記振止部材との前記面外方向の前記対向箇所に、これら伝熱管と振止部材との非接触時に荷重が発生せずに接触時に荷重が発生し、前記荷重に応じて摩擦力が発生する摩擦接触要素を設定した非線形モデルを作成する非線形モデル作成工程と、前記非線形モデルに対して、該非線形モデルの変形量が前記熱交換器の地震時の一次振動モードの変形量に対応する値となるように慣性加速度を与える静解析を行う変形量再現工程と、前記変形量を初期変形として前記非線形モデルを自由振動させる動解析を行う自由振動解析工程と、前記自由振動に基づいて減衰比を取得する減衰比取得工程と、を含む。
上記方法によれば、変形量再現工程で再現した変形量を初期状態として自由振動させる動解析を行うことで、伝熱管と振止部材との間の摩擦力に基づく減衰を評価することができる。また、静解析のみを行う場合に比べて、取得する減衰比の精度を向上させることができる。さらに、非線形モデルに対して動的な地震応答解析を行う場合に比べて、計算負荷を軽減することができる。
上記態様では、前記構造モデルにおける前記伝熱管と前記振止部材との前記面外方向の対向箇所に、前記面外方向の線形バネ要素を適用した線形モデルを作成する線形モデル作成工程と、前記線形モデルに振動を与える固有値解析を行って、該線形モデルの変形量を取得する固有値解析工程と、をさらに含み、前記熱交換器の固有振動モードの変形量は、前記固有値解析工程で取得した前記線形モデルの変形量であることが好ましい。
これによって、変形量再現工程では、非線形モデルに対して熱交換器の振動モードを再現した変形量を与えることができる。これにより、より精度を向上させることができる。
上記態様では、前記減衰比取得工程は、前記自由振動における一周期の摩擦消散エネルギーを算出し、前記自由振動の振動時の運動エネルギーを算出し、これら摩擦消散エネルギー及び運動エネルギーに基づいて、減衰比を算出してもよい。
これによって、自由減衰の一周期のみを評価することで減衰比を取得することができる。
上記態様の構造モデル作成工程では、予め取得した前記熱交換器を構成する部材の製作誤差を反映した前記構造モデルを作成してもよい。
これによって、伝熱管と振止部材との隙間の寸法をより実機に即したものとすることができる。
本発明の熱交換器の解析方法によれば、減衰比を精度高く、かつ、高効率に取得することができる。
実施形態に係る蒸気発生器の一部を破断した斜視図である。 実施形態に係る蒸気発生器のUベンド部の斜視図である。 実施形態に係る蒸気発生器のUベンド部の側面図である。 実施形態に係る蒸気発生器のUベンド部の正面図である。 実施形態に係る熱交換器の解析方法のフローチャートである。 実施形態に係る熱交換器の解析方法における構造モデルの斜視図である。 実施形態に係る熱交換器の解析方法における構造モデルの伝熱管と振止部材との対向箇所に線形バネ要素又は摩擦接触要素を適用した状態を示す部分斜視図である。 実施形態に係る面外方向の線形バネ要素の相対変位と荷重との関係を示すグラフである。 実施形態に係る面外方向の摩擦接触要素の相対変位と荷重との関係を示すグラフである。 実施形態に係る変形時の非線形モデルを側面から視た模式図である。 実施形態に係る非線形モデルを自由振動させた際の振動の時間的変化を示すグラフである。
以下、本発明の熱交換器の解析方法について、図面を参照して詳細に説明する。
一般に地震時の減衰を評価する場合には、地震応答解析を行う必要がある。多点接触を有する熱交換器のような大規模な構造体で地震応答解析を実施する場合、多大な計算時間を要する。以下に説明する本実施形態の解析方法を用いれば、計算負荷を減らしながら、減衰比を精度高く、かつ、高効率に評価することができる。
図1に示す解析対象となる熱交換器を備えた蒸気発生器1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。加圧水型原子炉は、原子炉冷却材及び中性子減速材として軽水を使用しており、この軽水を一次冷却材として用いる。加圧水型原子炉は、一次冷却材を、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水として、蒸気発生器1に送る。
図1に示す蒸気発生器1は、上下方向に延在し、かつ、密閉された中空円筒形状であって、上半部に対して下半部の方が小径をなす胴部2を備えている。胴部2の下端側には水室21が配置され、上端側には蒸気排出口22が配置されている。下半部から上半部にかけての領域には、胴部2の内壁面に間隔をあけて配列された円筒状の管群外筒(ラッパー管)3が設けられている。この管群外筒3の下端部は、胴部2の下半部内の下方に配置された管板(不図示)まで延在している。管群外筒3内には、複数の伝熱管15を有する熱交換器20が設けられている。
この熱交換器20は、Uベンド部10を有する。Uベンド部10は、複数の伝熱管15を全体として半球状をなすように配列したものである。それぞれの伝熱管15は、曲がり部15Uを有している。すなわち、これら曲がり部15U同士が互いに重なり合うように配列されることで、全体として半球状をなすUベンド部10が形成されている。
より具体的には、この熱交換器20は、図2〜図4に示すように、熱交換器本体11と、振止部材12と、保持部材13と、ブリッジ14と、を備えている。熱交換器本体11は、複数の伝熱管群16を面内方向D1に直交する面外方向D2に積層することによって構成される。この複数の伝熱管群16は、同一面内(面内方向D1)に並設された複数の伝熱管15から構成されている。
各伝熱管15は、管状をなす部材であって、それぞれ下端が図1に示す水室21に接続された一対の直線部と、これら直線部の上端部同士を接続する曲がり部15Uと、を有している。
伝熱管群16は、曲がり部15Uの大きさが互いに異なる複数の伝熱管15を、曲がり部15Uの径が小さいものから順に該曲がり部15Uの外側に向かって配列することで構成されている。このとき、各伝熱管15の直線部は互いに平行をなしている。これにより、上記のように同一平面内に配列された複数の伝熱管15を有する伝熱管群16が形成されている。なお、面内方向D1とは、伝熱管群16における各伝熱管15が配置される平面に沿う方向を意味している。
熱交換器本体11は、伝熱管群16を面内方向D1に直交する面外方向D2に複数積層することで構成される。なお、面外方向D2は、面内方向D1に直交する方向とせずに、交差している方向としてもよい。
このように伝熱管群16が積層されることで、熱交換器本体11の頂部では、複数の曲がり部15Uが全体として半球状をなすUベンド部を形成する。このUベンド部10は、熱交換器20の上方を向くようにして配置される。
このような熱交換器本体11は、胴部2の内側に固定された管支持板23に支持されている。即ち、管支持板には、多数の貫通孔が形成されており、この貫通孔内に各伝熱管15が非接触状態で挿通されている。言い換えれば、各伝熱管群16における複数の伝熱管15は、隣り合う他の伝熱管15との間に間隙を形成するように配置されている。
振止部材12は、面外方向D2に積層された伝熱管群16の間にそれぞれ設けられている。即ち、振止部材12は、互いに隣り合う伝熱管群同士の間に形成あれる隙間内に設けられている。
振止部材12は、全体としてI字状、又はV字状をなす矩形断面の棒状部材である。振止部材12の両端部には、固定部12aが設けられている。I字状の振止部材12は、Uベンド部10の中央部に位置している。さらに、V字状の振止部材12では、積層される伝熱管群16の間におけるUベンド部10がなす半球の中心側にV字の頂部が位置している。以上のような構成により、振止部材12は、面外方向D2に隣り合う伝熱管群16に挟まれるように面内方向D1に延在している。
保持部材13は、Uベンド部10の表面から突出する振止部材12の固定部12a同士を互いに連結する部材である。この保持部材13は、Uベンド部10の半球面に沿って延びる円弧状をなしている。
ブリッジ14は、面外方向D2に間隔をあけて設けられた複数の振止部材12にそれぞれ接続されている。ここで、一部の振止部材12の固定部12aは、他の振止部材12の固定部12aよりも半球面の径方向外側に向かって突出している。ブリッジ14は、この突出部分に接続されている。以上により、ブリッジ14と振止部材12とが互いに接続される。
このブリッジ14は、Uベンド部10の外周、すなわち、伝熱管群16の半球状の外周に沿って面内方向D1に延在するように配置された円弧状の部材である。なお、図2では、1つのみのブリッジ14が示されているが、実際には図3に示すように、複数のブリッジ14が面外方向D2に間隔をあけて配置されている。
以上のように構成された蒸気発生器1では、図1に示すように、加圧水型原子炉で加熱された一次冷却水が水室21の入室に送られ、熱交換器本体11の多数の伝熱管15内を通って循環して水室21の出室に到達する。一方、復水器で冷却された二次冷却水は、給水管に送られ、胴部2内の給水路を通って、伝熱管群16に沿って上昇する。この際、伝熱管15内を流通する高温の一次冷却水と伝熱管15周囲の二次冷却水との間で熱交換が行われる。この熱交換を経て冷却された一次冷却水は、出室から加圧水型原子炉内に戻される。一方、高温高圧の一次冷却水と熱交換した二次冷却水は、胴部2内を上昇し、気水分離器で蒸気と熱水とに分離される。分離された蒸気は、湿分分離器で湿分を除去されてからタービンに送られる。
<熱交換器の解析方法>
次に上述した蒸気発生器1の熱交換器20の解析方法について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態の解析方法は、構造モデル作成工程S1、線形モデル作成工程S2、固有値解析工程S3、非線形モデル作成工程S4、変形量再現工程S5、自由振動解析工程S6及び減衰比取得工程S7を含む。
<構造モデル作成工程>
構造モデル作成工程S1では、図6に示すような熱交換器20の構造モデルAを作成する。即ち、熱交換器20の構成部品としての伝熱管15、振止部材12、保持部材13及びブリッジ14をモデル化した構成部品モデルを熱交換器20の図面データに基づいて組み合わせ、熱交換器20全体のFEMモデルとしての構造モデルAを作成する。
具体的には、構造モデル作成工程S1では、自動生成プログラムが組み込まれたコンピュータを使用し、予め作成された上記の各構成部品モデル及び熱交換器20の図面データに基づいて管群全体(Uベンド部を含む熱交換器20の上部全体)の構造モデルAを自動作成する。
なお、図面データは、構成部品の位置や姿勢や、構成部品同士の接続部の位置等が設定された熱交換器20の設計図面である。当該図面データは、上記の自動生成プログラムに予め組み込まれている。
<線形モデル作成工程>
構造モデル作成工程S1の後に、線形モデル作成工程S2を行う。線形モデル作成工程S2では、構造モデルAにおける伝熱管15と振止部材12との対向箇所25に、面外方向D2の線形バネ要素を適用することで、線形モデルを作成する。
ここで、上記構造モデルAにおける伝熱管15と振止部材12との相対位置関係は、図7に示す通りとなっている。即ち、面外方向位D2に隣り合う一対の振止部材12の間に配置される伝熱管15は、これら振止部材12の延在方向に交差するように延在しており、伝熱管15は、該伝熱管15を面外方向D2から挟み込む一対の振止部材12の間で隙間をあけて配置されている。伝熱管15は、振止部材12に対して当該隙間を介して面外方向D2に対向している。伝熱管15と振止部材12との対向箇所25とは、伝熱管15と振止部材12とが面外方向D2に最短距離を示す部分である。
線形モデル作成工程S2では、構造モデルAにおける上記対向箇所25の全てに、伝熱管15と振止部材12とに結合された面外方向D2の線形バネ要素を適用する。
線形バネ要素は、図8に示す通り、荷重と相対変位とが線形関係を示す荷重‐変位特性を有するバネ要素である。線形バネ要素の特性線は、相対変位の増加とともに荷重も増加する直線状をなす。ここで、図8における荷重は、伝熱管15と振止部材12との間で作用し合う荷重を示している。また、相対変位は、伝熱管15と振止部材12との相対変位を示している。線形バネ要素では、伝熱管15と振止部材12との初期位置(設計データ上の位置、即ち、外力が及んでいない構造モデルA上の位置)にある場合の相対変位を基準値0としている。そして、伝熱管15と振止部材12とが基準値よりも近接した状態を正、伝熱管15と振止部材12とが基準値よりも離間した状態を負としている。
なお、構造モデルAでは、図7に示すように、伝熱管15を該伝熱管15に沿って延びる一次元要素15aとして設定してもよい、振止部材12を該振止部材12に沿って延びる線分のこれらの延在方向に延びる一次元要素15bとして示してもよい。また、線形モデル作成工程S2では、伝熱管15と振止部材12との対向箇所25を、これら伝熱管15と振止部材12との最短距離を通る一次元要素30として示してもよい。そして、当該対向箇所25を示す一次元要素30に図8に示す面外方向D2の線形バネ要素を設定してもよい。
以上のように、構造モデルAにおける伝熱管15と振止部材12との対向箇所25に面外方向D2の線形バネ要素を適用することで、線形モデルが作成される。
<固有値解析工程>
線形モデル作成工程S2の後に、固有値解析工程S3を行う。固有値解析S3では、線形モデルに特定の周波数を与える応答解析を行って、該線形モデルの変形量を取得する。
即ち、固有値解析S3では、上記の線形モデルに対して特定の周波数及び振幅の振動を与え、変位の応答波形を得る。ここで、一般的に観測地震波では、10Hz以下の低周波成分が卓越することから、当該周波数帯域に存在する振動モードが応答に対して支配的となる。熱交換器20の実機における地震応答の実績からも、1次振動モードが10Hz以下になることが判明している。そのため、ここでは、線形モデルで固有値解析を行い、一次振動モードの振動特性を取得する。
そして、想定している地震動の応答スペクトル波形に基づいて、線形モデルで予測した一次振動モードの固有振動数における面外方向D2の最大変位を一次予想の変形量として取得する。当該変形量は、地震時の振動モードの形状に対応する。なお、応答波形から熱交換器20全体のひずみを求め、当該ひずみを変形量としてもよい。
<非線形モデル作成工程>
次に非線形モデル作成工程S4を行う。非線形モデル作成工程S4は、構造モデル作成工程S1の後に線形モデル作成工程S2や固有値解析工程S3と並行して行ってもよいし、これら線形モデル作成工程S2、固有値解析工程S3の前段又は後段に行ってもよい。
非線形モデル作成工程S4では、図7に示す構造モデルAにおける伝熱管15と振止部材12との対向箇所25に、摩擦要接触要素を適用することで非線形モデルを作成する。
摩擦接触要素は、図9に示す通り、伝熱管15と振止部材12とに結合されており面外方向D2に作用する。摩擦接触要素は、荷重と相対変位とが非線形関係を示す荷重‐変位特性を有する。図9に示す荷重及び相対変位の定義は、図8に示す線形バネ要素と同様である。
摩擦接触要素の荷重‐変位特性は、相対変位が負である場合、及び、0から正の所定の値の範囲にある場合に、荷重の値は0となる。一方、相対変位が正の所定の値を超えた場合には、相対変位と荷重とが正の相関となる直線状をなしている。これにより、摩擦接触要素は、伝熱管15と振止部材12との非接触時に荷重が発生せずに接触時のみに荷重が発生するといった実際の熱交換器20での挙動を模擬している。なお、摩擦接触要素の荷重‐変位特性で所定の正の値になって初めて相対変位の増加に伴って荷重が増加するのは、線形バネ要素と同様にギャップ要素を含むためである。これにより、伝熱管15と振止部材12との隙間がなくなるまで変位して初めて荷重が生じるといった実際の挙動を模擬している。
また、摩擦接触要素は、伝熱管15と振止部材12との接触箇所の荷重に応じて、これら伝熱管15及び振止部材12のすべり方向への摩擦力を発生する要素である。即ち、摩擦接触要素は、伝熱管15と振止部材12との接触方向の荷重を垂直抗力として、伝熱管15と振止部材12との間の摩擦係数に応じて、当該荷重に交差するすべり方向に摩擦力を発生させる。当該摩擦力が為す仕事は摩擦消散エネルギーとなり、振動時の減衰に寄与する。
<変形量再現工程>
固有値解析工程S3及び非線形モデル作成工程S4の後に、変形量再現工程S5を行う。変形量再現工程S5では、作成した上記非線形モデルに対して面外方向D2の慣性加速度を与える解析(静解析)を行う。
当該解析では、図10に示す変形時の非線形モデルの変形量が、熱交換器20の固有振動モードの変形量に対応する値となるように、非線形モデルに対して慣性加速度を与える。
本実施形態では、熱交換器20の地震時の変形量として、固有値解析工程S3で取得した線形モデルの変形量を採用している。そのため、変形量再現工程S5では、非線形モデルの変形量が、固有値解析工程S3で取得した前記線形モデルの変形量の値となるように、非線形モデルに対して慣性加速度を与える。
<自由振動解析工程>
変形量再現工程S5の後に自由振動解析工程S6を行う。自由振動解析工程S6では、変形量再現工程S5で非線形モデルに与えた慣性加速度を除去する。そして、当該慣性加速度による変形量を初期変形として、非線形モデルを自由振動させる動解析を行う。
この自由振動の際には、伝熱管15と振止部材12との接触箇所におけるすべりに応じて、摩擦接触要素に基づく摩擦力が作用する。即ち、非線形モデルに行う動解析によって、各接触箇所における荷重及びすべり量が求まり、これに応じて接触箇所に作用する摩擦力の仕事量も算出される。当該摩擦力が行う仕事によって、非線形モデルの運動エネルギーが、摩擦消散エネルギーとして消費される。よって、自由振動は、図11に示すように、振幅が時間とともに減衰する態様を示す。
<減衰比取得工程>
自由振動解析工程S6の後に、減衰比取得工程S7が行われる。減衰比取得工程S7では、自由振動解析工程S6で取得した自由振動の態様に基づいて、減衰比を取得する。
本実施形態では、まず自由振動における一周期の摩擦消散エネルギーWを算出する。例えば自由振動が開始されてからの最初の一周期の摩擦消散エネルギーWを算出する。摩擦消散エネルギーWは、下記(1)式で求められる。
=ΣμdF … (1)
ここで、μは伝熱管15と振止部材12との接触箇所の摩擦係数であって本実施形態の摩擦接触要素に対応する。dは接触箇所における摺動距離であって伝熱管15と振止部材12との接触時のすべり量に対応する。Fは接触箇所の接触荷重に対応する。d及びFの値は、上記自由振動解析工程S6における動解析によってそれぞれの接触箇所での値が求められる。これら各接触箇所での摩擦力が行う仕事量がμdFであり、すべての接触箇所での仕事量の和がΣμdFである。
次に、自由振動の振動時の運動エネルギーWを求める。当該運動エネルギーWは、摩擦消散エネルギーWを求めた一周期の初期の運動エネルギーWである。運動エネルギーWは下記(2)式で求められる。
=1/2M(2πfx) … (2)
ここで、Mは一次振動モードのモーダルマス、fは一次振動モードの固有振動数、xは一次振動モードの最大変位である。これらM、f及びxの値は、固有値解析工程S3によって求められた値を用いる。なお、(2)式における2πfxの値は、自由振動における速度を示している。そのため、当該速度は自由振動解析工程S6の動解析によって求められた値を用いてもよい。
そして、これら摩擦消散エネルギーW及び運動エネルギーWに基づいて、減衰比ηを下記(3)式で求める。
η=W/W … (3)
これによって、減衰比ηを取得することができる。
以上のように、本実施形態の解析方法によれば、変形量再現工程S5で再現した変形量を初期状態として自由振動させる動解析を行うことで、伝熱管15と振止部材12との間の摩擦力に基づく減衰を評価することができる。また、静解析のみを行う場合に比べて、取得する減衰比の精度を向上させることができる。さらに、非線形モデルに対して例えば地震波や特定の周波数成分を外力として与える動解析を行う場合に比べて、計算負荷を軽減することができる。
ここで、一般に地震時の減衰を評価する場合には、地震応答解析を行う必要がある。多点接触を有する熱交換器20のような大規模な構造体で地震応答解析を実施する場合、多大な計算時間を要する。
ここで本実施形態の解析方法では、地震時のモード形状に着目している。一般的に観測地震波においては10Hz以下の低周波成分が卓越するため、当該周波数帯域に存在する振動モードが応答に対して支配的となる。上述の通り、熱交換器20においても一次振動モードが10Hz以下になることは過去の実績から判明している。
よって、地震時の応答に寄与する主要振動モードが明確であり、かつ、その振動モードの形状が静解析によって再現可能である場合には本実施形態の解析方法が適用可能である。即ち、変形量再現工程S5で静解析を実施することで振動モードの形状を再現し、自由振動解析工程S6で当該変形形状を初期状態として外力を除去し対象物を自由振動させる動解析を追加実施する。これによって、伝熱管15と振止部材12の接触箇所における摩擦消散エネルギーから地震時の減衰比を評価することができる。したがって、静解析のみにより減衰比を求める場合に比べて、精度高く減衰比を求めることができる。
また、本実施形態の変形量再現工程S5では、非線形モデルの変形量が、線形モデルの固有値解析における変形量と対応するように非線形モデルに慣性加速度を与えている。これにより、変形量再現工程S5では、非線形モデルに対して熱交換器の振動モードを再現した変形量を与えることができる。よって、より精度を向上させることができる。また、固有値解析工程S3での解析は、線形モデルに対して行えばよいので計算時間が不用意に増大してしまうこともない。
さらに、本実施形態の減衰比取得工程S7では、自由振動における一周期の摩擦消散エネルギー、及び、自由振動の振動時の運動エネルギーを算出し、これら摩擦消散エネルギー及び運動エネルギーに基づいて減衰比を求めている。これにより、数周期の自由減衰を求める動解析を実施すれば減衰比を取得することができるため、動的な地震応答解析を実施する必要は無く、解析時間の短縮化を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、構造モデル作成工程S1では、予め取得した熱交換器20を構成する部材の製作誤差を反映した構造モデルAを作成してもよい。これにより、熱交換器20の構成部品の製作誤差を考慮して対向箇所(接触箇所)25の隙間量を設定することができる。ここで、構成部品の製作誤差とは、例えば伝熱管15や振止部材12の曲げ量、板厚寸法等のパラメータの製作バラつきのことである。これらのパラメータを考慮して隙間量を設定することで、評価精度をさらに向上させることができる。
実施形態では、変形量再現工程S5で非線形モデルに与える慣性加速度を、当該非線形モデルの変形量が固有値解析工程S3での変形量となる値とした。しかしながらこれに限定されることはなく、例えば実際の熱交換器20の地震時の挙動や他の解析等によって予め熱交換器20の最大変位量がわかっていれば、当該変位量となるように非線形モデルに慣性加速度を与えてもよい。
実施形態では、自由振動の一周期分から減衰比を求めたがこれに限定されることはない。例えば、自由振動の数周期分の時間的変化から既知の手法によって減衰比を求めてもよい。
また、実施形態では、蒸気発生器1の熱交換器20に本発明の解析方法を適用した例について説明したが、多点接触を有する他の大規模構造体の評価に適用してもよい。
1 蒸気発生器
2 胴部
3 管群外筒
10 Uベンド部
11 熱交換器本体
12 振止部材
12a 固定部
13 保持部材
14 ブリッジ
15 伝熱管
15a 一次元要素
15b 一次元要素
15U 曲がり部
16 伝熱管群
20 熱交換器
21 水室
22 蒸気排出口
23 管支持板
25 対向箇所
30 一次元要素
40 線形バネ要素
S1 構造モデル作成工程
S2 線形モデル作成工程
S3 固有値解析工程
S4 非線形モデル作成工程
S5 変形量再現工程
S6 自由振動解析工程
S7 減衰比取得工程
D1 面内方向
D2 面外方向
A 構造モデル

Claims (4)

  1. 面内方向に並設された複数の伝熱管からなる伝熱管群が前記面内方向に交差する面外方向に複数積層されてなる熱交換器本体と、互いに隣り合う前記伝熱管群の間で前記伝熱管に交差して延びる振止部材とを有する熱交換器の解析方法であって、
    前記熱交換器の構造モデルを作成する構造モデル作成工程と、
    前記構造モデルにおける前記伝熱管と前記振止部材との前記面外方向の対向箇所に、これら伝熱管と振止部材との非接触時に荷重が発生せずに接触時に荷重が発生し、前記荷重に応じて摩擦力が発生する摩擦接触要素を設定した非線形モデルを作成する非線形モデル作成工程と、
    前記非線形モデルに対して、該非線形モデルの変形量が前記熱交換器の固有振動モードの変形量に対応する値となるように慣性加速度を与える静解析を行う変形量再現工程と、
    前記変形量を初期変形として前記非線形モデルを自由振動させる動解析を行う自由振動解析工程と、
    前記自由振動に基づいて減衰比を取得する減衰比取得工程と、
    を含む熱交換器の解析方法。
  2. 前記対向箇所に、前記面外方向の線形バネ要素を適用した線形モデルを作成する線形モデル作成工程と、
    前記線形モデルに特定の周波数の振動を与える固有値解析を行って、該線形モデルの変形量を取得する固有値解析工程と、
    をさらに含み、
    前記熱交換器の固有振動モードの変形量は、前記固有値解析工程で取得した前記線形モデルの変形量である請求項1に記載の熱交換器の解析方法。
  3. 前記減衰比取得工程は、
    前記自由振動における一周期の摩擦消散エネルギーを算出し、
    前記自由振動の振動時の運動エネルギーを算出し、
    これら摩擦消散エネルギー及び運動エネルギーに基づいて、減衰比を算出する請求項1又は2に記載の熱交換器の解析方法。
  4. 前記構造モデル作成工程では、予め取得した前記熱交換器を構成する部材の製作誤差を反映した前記構造モデルを作成する請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器の解析方法。
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