JP2019091316A - 熱交換器の解析方法 - Google Patents
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ここで例えば特許文献1には、ボルト等の締結部材を対象とした摩擦減衰の評価手法が開示されている。当該評価手法では、締結部材を構成する第1部材及び第2部材の接触面を固着領域とすべり領域とに分けて形成を線形化することで、計算負荷を低減している。
熱交換器のような接触点を多数有する構造体であっても、減衰比を精度高く、かつ、効率良く評価することが望まれている。
即ち、本発明に係る熱交換器の解析方法は、面内方向に並設された複数の伝熱管からなる伝熱管群が前記面内方向に交差する面外方向に複数積層されてなる熱交換器本体と、互いに隣り合う前記伝熱管群の間で前記伝熱管に交差して延びる振止部材とを有する熱交換器の解析方法であって、前記熱交換器の構造モデルを作成する構造モデル作成工程と、前記構造モデルにおける前記伝熱管と前記振止部材との前記面外方向の前記対向箇所に、これら伝熱管と振止部材との非接触時に荷重が発生せずに接触時に荷重が発生し、前記荷重に応じて摩擦力が発生する摩擦接触要素を設定した非線形モデルを作成する非線形モデル作成工程と、前記非線形モデルに対して、該非線形モデルの変形量が前記熱交換器の地震時の一次振動モードの変形量に対応する値となるように慣性加速度を与える静解析を行う変形量再現工程と、前記変形量を初期変形として前記非線形モデルを自由振動させる動解析を行う自由振動解析工程と、前記自由振動に基づいて減衰比を取得する減衰比取得工程と、を含む。
一般に地震時の減衰を評価する場合には、地震応答解析を行う必要がある。多点接触を有する熱交換器のような大規模な構造体で地震応答解析を実施する場合、多大な計算時間を要する。以下に説明する本実施形態の解析方法を用いれば、計算負荷を減らしながら、減衰比を精度高く、かつ、高効率に評価することができる。
図1に示す解析対象となる熱交換器を備えた蒸気発生器1は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)に用いられる。加圧水型原子炉は、原子炉冷却材及び中性子減速材として軽水を使用しており、この軽水を一次冷却材として用いる。加圧水型原子炉は、一次冷却材を、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水として、蒸気発生器1に送る。
このように伝熱管群16が積層されることで、熱交換器本体11の頂部では、複数の曲がり部15Uが全体として半球状をなすUベンド部を形成する。このUベンド部10は、熱交換器20の上方を向くようにして配置される。
振止部材12は、全体としてI字状、又はV字状をなす矩形断面の棒状部材である。振止部材12の両端部には、固定部12aが設けられている。I字状の振止部材12は、Uベンド部10の中央部に位置している。さらに、V字状の振止部材12では、積層される伝熱管群16の間におけるUベンド部10がなす半球の中心側にV字の頂部が位置している。以上のような構成により、振止部材12は、面外方向D2に隣り合う伝熱管群16に挟まれるように面内方向D1に延在している。
次に上述した蒸気発生器1の熱交換器20の解析方法について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
本実施形態の解析方法は、構造モデル作成工程S1、線形モデル作成工程S2、固有値解析工程S3、非線形モデル作成工程S4、変形量再現工程S5、自由振動解析工程S6及び減衰比取得工程S7を含む。
構造モデル作成工程S1では、図6に示すような熱交換器20の構造モデルAを作成する。即ち、熱交換器20の構成部品としての伝熱管15、振止部材12、保持部材13及びブリッジ14をモデル化した構成部品モデルを熱交換器20の図面データに基づいて組み合わせ、熱交換器20全体のFEMモデルとしての構造モデルAを作成する。
具体的には、構造モデル作成工程S1では、自動生成プログラムが組み込まれたコンピュータを使用し、予め作成された上記の各構成部品モデル及び熱交換器20の図面データに基づいて管群全体(Uベンド部を含む熱交換器20の上部全体)の構造モデルAを自動作成する。
なお、図面データは、構成部品の位置や姿勢や、構成部品同士の接続部の位置等が設定された熱交換器20の設計図面である。当該図面データは、上記の自動生成プログラムに予め組み込まれている。
構造モデル作成工程S1の後に、線形モデル作成工程S2を行う。線形モデル作成工程S2では、構造モデルAにおける伝熱管15と振止部材12との対向箇所25に、面外方向D2の線形バネ要素を適用することで、線形モデルを作成する。
線形バネ要素は、図8に示す通り、荷重と相対変位とが線形関係を示す荷重‐変位特性を有するバネ要素である。線形バネ要素の特性線は、相対変位の増加とともに荷重も増加する直線状をなす。ここで、図8における荷重は、伝熱管15と振止部材12との間で作用し合う荷重を示している。また、相対変位は、伝熱管15と振止部材12との相対変位を示している。線形バネ要素では、伝熱管15と振止部材12との初期位置(設計データ上の位置、即ち、外力が及んでいない構造モデルA上の位置)にある場合の相対変位を基準値0としている。そして、伝熱管15と振止部材12とが基準値よりも近接した状態を正、伝熱管15と振止部材12とが基準値よりも離間した状態を負としている。
以上のように、構造モデルAにおける伝熱管15と振止部材12との対向箇所25に面外方向D2の線形バネ要素を適用することで、線形モデルが作成される。
線形モデル作成工程S2の後に、固有値解析工程S3を行う。固有値解析S3では、線形モデルに特定の周波数を与える応答解析を行って、該線形モデルの変形量を取得する。
即ち、固有値解析S3では、上記の線形モデルに対して特定の周波数及び振幅の振動を与え、変位の応答波形を得る。ここで、一般的に観測地震波では、10Hz以下の低周波成分が卓越することから、当該周波数帯域に存在する振動モードが応答に対して支配的となる。熱交換器20の実機における地震応答の実績からも、1次振動モードが10Hz以下になることが判明している。そのため、ここでは、線形モデルで固有値解析を行い、一次振動モードの振動特性を取得する。
次に非線形モデル作成工程S4を行う。非線形モデル作成工程S4は、構造モデル作成工程S1の後に線形モデル作成工程S2や固有値解析工程S3と並行して行ってもよいし、これら線形モデル作成工程S2、固有値解析工程S3の前段又は後段に行ってもよい。
固有値解析工程S3及び非線形モデル作成工程S4の後に、変形量再現工程S5を行う。変形量再現工程S5では、作成した上記非線形モデルに対して面外方向D2の慣性加速度を与える解析(静解析)を行う。
当該解析では、図10に示す変形時の非線形モデルの変形量が、熱交換器20の固有振動モードの変形量に対応する値となるように、非線形モデルに対して慣性加速度を与える。
変形量再現工程S5の後に自由振動解析工程S6を行う。自由振動解析工程S6では、変形量再現工程S5で非線形モデルに与えた慣性加速度を除去する。そして、当該慣性加速度による変形量を初期変形として、非線形モデルを自由振動させる動解析を行う。
この自由振動の際には、伝熱管15と振止部材12との接触箇所におけるすべりに応じて、摩擦接触要素に基づく摩擦力が作用する。即ち、非線形モデルに行う動解析によって、各接触箇所における荷重及びすべり量が求まり、これに応じて接触箇所に作用する摩擦力の仕事量も算出される。当該摩擦力が行う仕事によって、非線形モデルの運動エネルギーが、摩擦消散エネルギーとして消費される。よって、自由振動は、図11に示すように、振幅が時間とともに減衰する態様を示す。
自由振動解析工程S6の後に、減衰比取得工程S7が行われる。減衰比取得工程S7では、自由振動解析工程S6で取得した自由振動の態様に基づいて、減衰比を取得する。
本実施形態では、まず自由振動における一周期の摩擦消散エネルギーW1を算出する。例えば自由振動が開始されてからの最初の一周期の摩擦消散エネルギーW1を算出する。摩擦消散エネルギーW1は、下記(1)式で求められる。
W1=ΣμdF … (1)
W2=1/2M(2πfx)2 … (2)
η=W1/W2 … (3)
これによって、減衰比ηを取得することができる。
ここで本実施形態の解析方法では、地震時のモード形状に着目している。一般的に観測地震波においては10Hz以下の低周波成分が卓越するため、当該周波数帯域に存在する振動モードが応答に対して支配的となる。上述の通り、熱交換器20においても一次振動モードが10Hz以下になることは過去の実績から判明している。
例えば、構造モデル作成工程S1では、予め取得した熱交換器20を構成する部材の製作誤差を反映した構造モデルAを作成してもよい。これにより、熱交換器20の構成部品の製作誤差を考慮して対向箇所(接触箇所)25の隙間量を設定することができる。ここで、構成部品の製作誤差とは、例えば伝熱管15や振止部材12の曲げ量、板厚寸法等のパラメータの製作バラつきのことである。これらのパラメータを考慮して隙間量を設定することで、評価精度をさらに向上させることができる。
また、実施形態では、蒸気発生器1の熱交換器20に本発明の解析方法を適用した例について説明したが、多点接触を有する他の大規模構造体の評価に適用してもよい。
2 胴部
3 管群外筒
10 Uベンド部
11 熱交換器本体
12 振止部材
12a 固定部
13 保持部材
14 ブリッジ
15 伝熱管
15a 一次元要素
15b 一次元要素
15U 曲がり部
16 伝熱管群
20 熱交換器
21 水室
22 蒸気排出口
23 管支持板
25 対向箇所
30 一次元要素
40 線形バネ要素
S1 構造モデル作成工程
S2 線形モデル作成工程
S3 固有値解析工程
S4 非線形モデル作成工程
S5 変形量再現工程
S6 自由振動解析工程
S7 減衰比取得工程
D1 面内方向
D2 面外方向
A 構造モデル
Claims (4)
- 面内方向に並設された複数の伝熱管からなる伝熱管群が前記面内方向に交差する面外方向に複数積層されてなる熱交換器本体と、互いに隣り合う前記伝熱管群の間で前記伝熱管に交差して延びる振止部材とを有する熱交換器の解析方法であって、
前記熱交換器の構造モデルを作成する構造モデル作成工程と、
前記構造モデルにおける前記伝熱管と前記振止部材との前記面外方向の対向箇所に、これら伝熱管と振止部材との非接触時に荷重が発生せずに接触時に荷重が発生し、前記荷重に応じて摩擦力が発生する摩擦接触要素を設定した非線形モデルを作成する非線形モデル作成工程と、
前記非線形モデルに対して、該非線形モデルの変形量が前記熱交換器の固有振動モードの変形量に対応する値となるように慣性加速度を与える静解析を行う変形量再現工程と、
前記変形量を初期変形として前記非線形モデルを自由振動させる動解析を行う自由振動解析工程と、
前記自由振動に基づいて減衰比を取得する減衰比取得工程と、
を含む熱交換器の解析方法。 - 前記対向箇所に、前記面外方向の線形バネ要素を適用した線形モデルを作成する線形モデル作成工程と、
前記線形モデルに特定の周波数の振動を与える固有値解析を行って、該線形モデルの変形量を取得する固有値解析工程と、
をさらに含み、
前記熱交換器の固有振動モードの変形量は、前記固有値解析工程で取得した前記線形モデルの変形量である請求項1に記載の熱交換器の解析方法。 - 前記減衰比取得工程は、
前記自由振動における一周期の摩擦消散エネルギーを算出し、
前記自由振動の振動時の運動エネルギーを算出し、
これら摩擦消散エネルギー及び運動エネルギーに基づいて、減衰比を算出する請求項1又は2に記載の熱交換器の解析方法。 - 前記構造モデル作成工程では、予め取得した前記熱交換器を構成する部材の製作誤差を反映した前記構造モデルを作成する請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器の解析方法。
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