以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。以下、まず最初に、幾つかの実施形態に係る伝熱管の応力評価方法を説明するのに先立って、当該応力評価方法の適用対象である伝熱管群の構造について図1乃至図3を参照して説明する。続いて、当該応力評価方法の処理内容について図4乃至図7を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る伝熱管群10のUベンド部10aの斜視図を示す。図2は、伝熱管群10を、図1の面内方向D2(図1の列方向d2)から見た側面図であり、図3は、伝熱管群10を、図1の面内方向D1(図1の列方向d1)から見た側面図である。なお、図1においては、図面の見やすさを考慮して一部の構成部材を省略して記載している。図1において当該省略された構成部材の一部は、図1における伝熱管群10を側面から見た図2および図3において示されている。
幾つかの実施形態において、伝熱管群10は、複数の伝熱管3と、複数の伝熱管3が挿通される管支持板7と、を備えており、複数の伝熱管3内を流れる流体との熱交換によって蒸気を生成するように構成される。複数の伝熱管3は、それぞれ、流体の入口側に位置する第1直管部4と、流体の出口側に位置する第2直管部5と、第1直管部4と第2直管部5との間に位置する曲り部6と、を有している。管支持板7には、第1直管部4及び第2直管部5が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
伝熱管群10は、U字形状の曲り部6をそれぞれ有する複数の伝熱管3により構成される。複数の伝熱管3の曲り部6によってUベンド部10aが形成される。図1に示す構造においては、曲り部6の半径方向における外側(図1における上側)に向かうに従って曲り部6の曲率半径が大きな伝熱管3が互いに曲率中心を共有する形で同一平面に沿って(面内方向D2に沿って)配列される(図1の管列8)。図3は、このように伝熱管3が面内方向D2に沿って配列された管列8が複数列存在し、これら複数の管列8が、曲り部6を含む平面に直交する方向(図1の面外方向D1)において並んでいる様子を示す。
図1および図3に示すように、複数の管列8のそれぞれにおいて最外周側に位置する伝熱管3の曲り部6の曲率半径は、各管列8の面外方向D1における位置に応じて異なる。このように複数の管列8を面外方向D1に重ねながら曲り部6の曲率半径を変化させることで、伝熱管群10の上端部において半球形状のUベンド部10aが形成される。その結果、図1に示すように、曲率半径の異なる複数の曲り部6a1,6a2,6a3,…が面内方向D2に沿って並び、曲率半径の同一な複数の曲り部6a1,6b1,6c1,…が面外方向に沿って並ぶように配列される。
伝熱管群10においては、振止め部材12が、曲り部6を含む平面に直交する面外方向D1において、隣接する伝熱管3の曲り部6の間に挿入され、面外方向D1への複数の伝熱管3(曲り部6)の動きを拘束している。例えば、図1においては、面外方向D1において並ぶ各々の管列8の両側に、面内方向D2に沿って複数の振止め部材12が挿入され、各管列8に属する複数の伝熱管3の曲り部6の面外方向D1への動きを拘束している。
図1に示すように、第1保持部材11は、Uベンド部10aの外周、すなわち、Uベンド部10aの半球状の外周に沿って取り付けられた円弧状の棒状部材である。上述した振止め部材12は、第1保持部材11からUベンド部10aの半球形状の径方向における内側に向かって延在している。振止め部材12の端部12aには、図1に示すように第1保持部材11が溶接されて、複数の振止め部材12の端部12aを連結している。第1保持部材11は、複数の伝熱管3が面内方向D2に沿って重ねられる管列8と直交しながらUベンド部10aの半球面に沿って延在している。
図2および図3に示すように、複数の第1保持部材11は、第2保持部材(ブリッジ)14によって連結されていてもよい。第2保持部材14は、Uベンド部10aの外周、すなわち、Uベンド部10aの半球状の外周に沿って配置された、円弧形状かつ板状の部材である。第2保持部材14は、Uベンド部10aにおいて伝熱管3の曲り部6が延在する方向に沿って延在している。第2保持部材14は、面外方向D1において並ぶように複数配置されていてもよい。
伝熱管群10では、面外方向において、隣接する伝熱管3の曲り部6の間に挿入される振止め部材12が、面外方向D1への複数の伝熱管3(曲り部6)の動きを拘束しているので、面外方向D1に作用する加振力に対しては、伝熱管群10全体が一体となって振動する。しかしながら、曲り部6を含む平面に沿った面内方向D2に配列された一連の伝熱管3(図1の管列8)は、両側の振止め部材12とは接続されておらず、両側の振止め部材12との間の摩擦力によってのみ拘束されている。その結果、面外方向D1に作用する地震動に対しては、伝熱管群10全体が一体となって振動する一方で、面内方向D2に作用する地震動に対しては、管列8の中で、複数の伝熱管3が一体となって振動するものと1本だけ独立して振動する独立振動管とが発生することがある。
以下、図4を参照して、独立振動管の挙動について説明する。地震動が面内方向D2に作用すると、独立振動管30(曲り部60)は、面内方向D2において隣接する伝熱管31(31a、31b)と衝突しながら面内方向D2に応答変位する。図4において、加振力が作用する前の(変位の無い状態の)独立振動管30(曲り部60)の初期状態を破線で表し、加振力が作用するのに応答して独立振動管30が変位した状態を実線で表す。なお、破線で表した加振力が作用する前の(変位の無い状態の)独立振動管30と加振力が作用するのに応答して変位した後の独立振動管30との間の変位量を図4においてxで示し、この変位量xが加振力に応答して生じる独立振動管30の応答変位量に相当する。図4には、実線で表される応答変位した状態の独立振動管30が面内方向D2において隣接する伝熱管31aと衝突位置TC1において衝突している様子が示されている。なお、図4では、独立振動管30が外側に隣接する伝熱管31aと衝突する様子が示されているが、独立振動管30は、内側に隣接する伝熱管31bとも衝突し得る。
以上により、独立振動管30に発生する応力が大きくなる可能性がある。以上から、想定される加振力が個々の伝熱管に作用した際に、独立振動管30において発生する可能性のある応力を理論解析により事前に評価することが必要となる場合がある。
続いて、幾つかの実施形態に係る伝熱管の応力評価方法の処理内容について図5乃至図7を参照して説明する。図5は、複数の伝熱管を含む伝熱管群の加振力に起因して発生する応力の評価方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
まず、図5のフローチャートに示す伝熱管の応力評価方法では、伝熱管群10のうち一の伝熱管30(図4の独立振動管30)の加振力に応じた第1応答変位量を、伝熱管群10のうち一の伝熱管30(図4の独立振動管30)以外の他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との相互作用を考慮せずに算出する処理P1が実行される。ここで言う相互作用には、図4のTC1に示す独立振動管30と隣接伝熱管31との衝突による相互作用などが含まれる。また、図5のフローチャートに示す伝熱管の応力評価方法では、加振力に応じた他の伝熱管31を含む伝熱管群10全体の応答変位量を算出する処理P2が実行される。なお、処理P1とP2とは、任意の順序で実行されても良く、互いに同時並列的に実行されても良い。
続いて、図5のフローチャートの実行は処理P3に進み、一の伝熱管30の当該第1応答変位量と伝熱管群10全体の応答変位量とに基づいて、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)と、伝熱管群10のうち一の伝熱管30に隣接する隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との間の衝突による接触荷重を算出する。例示的な一実施形態では、上記接触荷重には、図4のTC1において独立振動管30と隣接伝熱管31とが衝突することにより独立振動管30が受ける接触荷重などが含まれる。
続いて、図5のフローチャートの実行は処理P4に進み、上記接触荷重を考慮して、加振力作用時の応答解析(例えば、地震波応答解析)を行う。具体的には、処理P4において、加振力および隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)から受ける上記接触荷重に基づいて、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)の加振力に応じた第2応答変位量を算出する。続いて、図5のフローチャートの実行は処理P5に進み、当該第2応答変位量に基づいて、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)に発生する応力を評価する。
なお、上述した接触荷重は、独立振動管30が隣接伝熱管31に押圧されることにより作用する押圧荷重のみならず、独立振動管30が隣接伝熱管31と摩擦を起こすことにより作用する摩擦力荷重も加味して算出してもよい。上述した接触荷重を力ベクトルで表した場合、当該押圧荷重は、伝熱管3の曲率中心を原点とする極座標系の半径軸r方向に沿った成分に対応する。また、上述した接触荷重を力ベクトルで表した場合、当該摩擦力荷重は、上記極座標系におけるθ座標軸方向に沿った方向成分に対応する。上述した接触荷重の力ベクトルを構成する法線方向成分(押圧荷重)と接線方向成分(摩擦力荷重)については以下において図6Aおよび図6Bを参照して後述する。
以上より、図5に示す伝熱管の応力評価方法によれば、伝熱管群10の面内方向D2に沿って想定される加振力が作用した際に、伝熱管群10内で独立して振動する一の伝熱管30(図4の独立振動管30)に発生する応力を、独立振動管30の応答変位量の変動として評価する方法を得ることができる。また、当該応力評価方法によれば、独立振動管30に隣接する伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)から受ける接触荷重を考慮することで、独立振動管30に発生する応力を適切に評価することができる。
また、図5に示す伝熱管の応力評価方法では、まず、独立して振動する一の伝熱管30(図4の独立振動管30)の第1応答変位量を、他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管)との相互作用を考慮せずに算出している。その上で、図5に示す応力評価方法では、当該第1応答変位量に基づいて上述した接触荷重を考慮しながら当該独立振動管に発生する応力を評価している。その結果、当該応力評価方法によれば、単純化された計算により、上述した接触荷重を考慮しながら独立振動管30に発生する応力を短い計算時間で評価することができる。
幾つかの例示的な実施形態では、図1〜図3に示す伝熱管群10の構造において、面内方向D2に沿った平面内において一の伝熱管30に隣接する隣接伝熱管31から受ける上記接触荷重に基づいて、一の伝熱管30の当該第2応答変位量を算出してもよい。
上述したように、図1〜図3に示す伝熱管群10では、複数の振止め部材12が、面外方向D1への複数の伝熱管3(曲り部6)の動きを拘束している。その一方で、曲り部6を含む平面に沿った面内方向D2に配列された一連の伝熱管(図1の管列8)は、両側の振止め部材12とは接続されておらず、両側の振止め部材12との間の摩擦力によってのみ拘束されている。従って、図5に示す応力評価方法において、面内方向D2に作用する加振力に対して、他の伝熱管31から1本だけ独立して振動する独立振動管30が振動する方向は面内方向D2とほぼ一致し、独立振動管30が隣接する伝熱管31と衝突することにより受ける接触荷重も主として面内方向D2の作用力である。
そこで、幾つかの例示的な実施形態では、曲り部6を有する伝熱管3の管列8が延在する平面内(面内方向D2)において、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)に隣接する隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管)から受ける接触荷重に基づいて、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)の第2応答変位量を算出するようにしている。このように面内方向D2において第2応答変位量を算出することで、独立振動管30に発生する応力を適切に評価することができる。
例示的な一実施形態においては、図5に示すように、処理P1の全体を実行するために、処理S11〜S15を含む複数段階の処理を順次実行するようにしてもよい。また、処理P2の全体を実行するために、処理S21〜S25を含む複数段階の処理を順次実行するようにしてもよい。処理S11〜S15は、独立振動管30の第1応答変位量を算出するものであり、処理S21〜S25は、伝熱管群10全体の第1応答変位量を算出するものである。
処理S11〜S15は、伝熱管群10内において他の伝熱管3とは独立して振動する独立振動管30を特定した上で、当該特定された独立振動管30についての第1応答変位量を求める処理を行う。つまり、処理S11〜S15は、伝熱管群10において面内方向D2に延在する管列8(図1)に含まれる複数の伝熱管3の中で、いずれの伝熱管3が独立振動管30として振る舞うかを特定し、当該特定された独立振動管30についての第1応答変位量を求める処理を行う。
幾つかの実施形態では、伝熱管群10のうち、加振力の周波数に固有振動数が最も近い伝熱管3を他の伝熱管3から独立して振動する一の伝熱管30(独立振動管30)として選択してもよい。これにより、伝熱管群10の面内方向D2に想定される加振力が作用した際に、伝熱管群10内において独立して振動する(独立振動管30となる)可能性の高い伝熱管3において発生する応力を評価することができる。
幾つかの実施形態では、伝熱管群10のうち、加振力としての地震波の卓越周波数に固有振動数が最も近い伝熱管3を他の伝熱管3から独立して振動する一の伝熱管30(独立振動管30)として選択してもよい。これにより、伝熱管群10の面内方向D2に想定される地震波が作用した際に、伝熱管群10内において独立して振動する(独立振動管30となる)可能性の高い伝熱管3において発生する応力を評価することができる。
以下、一連の処理S11〜S15およびS21〜S25の処理内容について具体的に説明する。なお、処理S11〜S15の実行に先立って、伝熱管群10の中で独立振動管30として振る舞う伝熱管3が加振力の周波数などに基づいて既に抽出されているものとして説明する。
処理S11では、独立振動管30を有限要素法でモデル化したモデルを生成する。処理S21では、伝熱管群10全体を有限要素法でモデル化したモデルを生成する。例示的な一実施形態においては、伝熱管群10全体および独立振動管30は、それぞれ有限要素法における梁モデルとしてモデル化しても良い。ここで、伝熱管群10の中で独立振動管30となり得る個々の伝熱管3は、曲り部6の曲率半径の大小を除いて同様の形状および材質を有する。従って、いずれの伝熱管3が独立振動管30となるかに応じて、伝熱管群10全体について実行される処理S21の処理内容を、個々の伝熱管3について曲率半径の相違を考慮して実行したものが処理S11の処理内容となる。つまり、処理S11では、伝熱管毎に異なる曲率半径の相違を考慮して、独立振動管30を有限要素法でモデル化したモデルを生成する。
処理S12では、管列8に含まれる複数の伝熱管3の中で、いずれの伝熱管3が独立振動管30となるかに応じて、有限要素法により質点系としてモデル化した個々の伝熱管3の質量マトリクスと剛性マトリクスを用いた実固有値解析により、個々の伝熱管3の固有振動数と固有モードを算出する。処理S22では、有限要素法により質点系としてモデル化した個々の伝熱管群10全体の質量マトリクスと剛性マトリクスを用いた実固有値解析により、伝熱管群10全体の固有振動数と固有モードを算出する。例示的な一実施形態では、独立振動管30および伝熱管群10全体の固有振動数と固有モードは、質量マトリクス[M
p]と剛性マトリクス[K
p]を用いた以下の式で表される固有値問題を解くことにより、固有値ωおよび固有ベクトル{y}に対応する値として得られる。
処理S13では、独立振動管30の応答変位量を計算するために振動方程式に入力される必要のあるパラメータとして、処理S12にて算出された固有振動数と固有モードから得られるモーダル・パラメータを抽出する。例示的な一実施形態では、当該モーダル・パラメータには、モード変換行列、モーダル質量、モーダル剛性およびモーダル減衰などが含まれる。モード変換行列は、独立振動管30が設けられる物理的な空間を表す3次元デカルト座標系と固有モードを基底ベクトルとして形成される固有モード座標系との間の座標変換を行う座標変換行列である。モーダル質量、モーダル剛性およびモーダル減衰は、有限要素法により質点系としてモデル化した独立振動管30の質量マトリクス、剛性マトリクスおよび減衰マトリクスを上述した固有モード座標系で表した行列である。このモーダル・パラメータは、処理S12にて独立振動管30について算出された固有振動数と固有モードから得られるモーダル・パラメータである。以下の説明においては、処理13にて、独立振動管30について算出された固有振動数と固有モードから得られるモーダル質量、モーダル剛性、モーダル減衰およびモーダル変換行列を、それぞれ、モーダル質量Md、モーダル剛性Kd、モーダル減衰Cdおよびモーダル変換行列Φdと表記する。
処理S23では、伝熱管群10全体の応答変位量を計算するために振動方程式に入力される必要のあるパラメータとして、処理S22にて算出された固有振動数と固有モードから得られるモーダル・パラメータを抽出する。モード変換行列は、伝熱管群10が設けられる物理的な空間を表す3次元デカルト座標系と固有モードを基底ベクトルとして形成される固有モード座標系との間の座標変換を行う座標変換行列である。モーダル質量、モーダル剛性およびモーダル減衰は、有限要素法により質点系としてモデル化した伝熱管群10全体の質量マトリクス、剛性マトリクスおよび減衰マトリクスを上述した固有モード座標系で表した行列である。以下の説明においては、処理13にて、伝熱管群10全体について算出された固有振動数と固有モードから得られるモーダル質量、モーダル剛性、モーダル減衰およびモーダル変換行列を、それぞれ、モーダル質量M、モーダル剛性K、モーダル減衰Cおよびモーダル変換行列Φと表記する。
例示的な一実施形態では、モーダル質量Mおよびモーダル剛性Kは、モード変換行列を用いた以下の線形変換式により算出してもよい。
なお、処理S13におけるモーダル質量M
dおよびモーダル剛性K
dの算出方法についても、独立振動管30として振る舞う個々の伝熱管3を対象として実行される点を除いて上記と同様である。
また、例示的な一実施形態では、モーダル減衰Cは、以下のように複数の固有モードのそれぞれについて算出されるモーダル減衰定数ベクトルによって構成される行列としても良い。例示的な一実施形態では、i次の固有モードに対応するモーダル減衰定数ベクトルc
iは、以下のように算出されても良い。i次の固有モードに対応するモーダル質量をm
i、i次の固有モードに対応するモーダル剛性をk
i、i次の固有モードに対応する減衰比をζ
iとすればi次の固有モードに対応するモーダル減衰定数ベクトルc
iは次のようになる。
なお、独立振動管30のモーダル減衰C
dの算出方法についても上記と同様である。
処理S14では、加振時における独立振動管30の固有モード座標系で表された第1応答変位量を求める。具体的には、処理S14では、独立振動管30についての振動方程式に処理S13で得られたモーダル・パラメータを入力し、当該振動方程式を解く。これによって、処理S14では、加振時における独立振動管30の固有モード座標系で表された第1応答変位量が求められる。
以上より、独立振動管30の第1応答変位量が、固有モード座標系で表された応答変位量(モーダル変位)φdとして求まる。
処理S24では、処理S23で得られたモーダル・パラメータを入力した振動方程式を解くことによって、加振時における伝熱管群10全体の固有モード座標系で表された応答変位量を求める。具体的には、処理S24では、伝熱管群10全体についての振動方程式に処理S23で得られたモーダル・パラメータを入力し、当該振動方程式を解く。これによって、処理S24では、加振時における伝熱管群10全体の固有モード座標系で表された第1応答変位量が求められる。
以上より、伝熱管群10全体の第1応答変位量が、固有モード座標系で表された応答変位量(モーダル変位)φとして求まる。
例示的な実施形態においては、処理S24におけるこの振動方程式は、伝熱管群10全体の固有モード座標系で表された応答変位量(モーダル変位)φを独立変数とする以下の運動方程式で表されても良い。なお、以下の式において、Φ’はΦの転置行列を示す。
以上より、伝熱管群10全体の応答変位量が、固有モード座標系で表された応答変位量(モーダル変位)φとして求まる。
なお、処理S14において独立振動管30の第1応答変位量を固有モード座標系で表された応答変位量(モーダル変位)φdとして求めるための振動方程式は、以下のようにして得られてもよい。すなわち、独立振動管30についての振動方程式は、独立振動管30として振る舞う個々の伝熱管3について、モーダル・パラメータ(モーダル質量Md、モーダル剛性Kd、モーダル減衰Cdおよびモーダル変換行列Φd)を含む上記式(5)と同様の運動方程式として得られても良い。
処理S14において、独立振動管30の第1応答変位量をモーダル変位φdとして求めた後に、処理フローは処理S15に進む。処理S15では、モーダル変位φdを、以下において複数個(Nc個)の衝突自由度方向にそれぞれ沿った変位量に変換することにより、独立振動管30の第2応答変位量(変位ベクトルXd)を算出する。衝突自由度方向とは、伝熱管群10内で同一の管列8に含まれる隣接伝熱管31が独立振動管30と衝突する各衝突位置(図4のTC1など)において独立振動管30が振動する自由度に対応する方向である。図4には、独立振動管30と隣接伝熱管31とが衝突する位置としてTC1のみが示されているが、一般に面内方向D2において独立振動管30と隣接伝熱管31とが衝突する位置は、複数個(Nc個)存在する。その場合、Nc個の衝突位置は、添え字cjを用いてncj(j= 1,2,…,Nc)と表記され、Nc個の衝突位置ncj(j= 1,2,…,Nc)の各々における衝突自由度方向は、2本の直交ベクトルのペア(xcj,ycj)によって表される。
いずれの伝熱管3が独立振動管30となるかに応じて処理S15を実行するための例示的な一実施形態として、処理S14でモーダル変位φ
dとして求めた応答変位量をN
c個の衝突自由度方向(x
cj,y
cj)(j= 1,2,…,N
c)にそれぞれ沿った応答変位量に変換した変位ベクトルX
dは、以下の式により算出される。
ここで、行列C
xyは、モード変換行列Φ
dからN
c個の衝突自由度方向(x
cj,y
cj)(j= 1,2,…,N
c)に対応する方向成分を固有モード座標系の部分空間として抽出した出力行列である。これにより、処理S14において、独立振動管30についてモーダル変位φ
dとして求めた応答変位量が、N
c個の衝突自由度方向(x
cj,y
cj)(j= 1,2,…,N
c)に沿った第2応答変位量である変位ベクトルX
dとして得られる。
処理S25では、処理S24において伝熱管群10全体についてモーダル変位φとして求めた変位量を複数個(Nc個)の衝突自由度方向に沿った変位量に変換することにより、伝熱管群10全体の第2応答変位量(変位ベクトルXio)を算出する。
処理25を実行するための例示的な一実施形態として、伝熱管群10全体について処理S24でモーダル変位φとして求めた変位量をN
c個の衝突自由度方向(x
cj,y
cj)(j= 1,2,…,N
c)にそれぞれ沿った変位量に変換した変位ベクトルX
ioは、以下の式により算出される。
ここで、行列A
xyは、モード変換行列ΦからN
c個の衝突自由度方向(x
cj,y
cj)(j= 1,2,…,N
c)に対応する方向成分を固有モード座標系の部分空間として抽出した出力行列である。これにより、処理S24において伝熱管群10全体についてモーダル変位φとして求めた応答変位量が、衝突自由度方向(x
cj,y
cj)(j= 1,2,…,N
c)に沿った第2応答変位量である変位ベクトルX
ioとして得られる。
以上のように、処理S15およびS25では、伝熱管群10全体および独立振動管30について求めたモーダル変位φおよびφdを、Nc個の衝突自由度方向(xcj,ycj)(j= 1,2,…,Nc)に沿った変位ベクトルXioおよびXdに変換している。処理S15およびS25において応答変位量を上記のように変換することで、処理P3において、独立振動管30と隣接伝熱管31との間の接触荷重を算出することが容易になる。何故なら、伝熱管群10全体および独立振動管30について求めたモーダル変位(φおよびφd)を、上述した衝突自由度方向に沿った応答変位量(XioおよびXd)に変換することで、独立振動管30と隣接伝熱管31との間の相対変位量を、上述した衝突自由度方向に沿って計算することが可能となるからである。
幾つかの実施形態では、処理P1において伝熱管群10全体の第1応答変位量として、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)および他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)により形成される伝熱管群10全体の加振力に応じた応答変位量(変位ベクトルXio)を算出してもよい。
これにより、加振力の加振周波数の変化に応じ、伝熱管群10全体の中で他の伝熱管から独立して振動する一の伝熱管30(独立振動管30)が別の伝熱管に変わったとしても、伝熱管群10全体の応答変位量をいちいち再計算する必要がない。また、一の伝熱管30(図4の独立振動管30)が他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)から受ける接触荷重および他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管)の応答変位量を算出する際に、伝熱管群10全体から一の伝熱管30(独立振動管30)を除いた他の伝熱管の振動特性のみを取り出して考慮する必要がない。
幾つかの実施形態では、処理P1において、一の伝熱管30(独立振動管30)と他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との相互作用を考慮せずに伝熱管群10全体の第1応答変位量(変位ベクトルXio)を算出してもよい。
これにより、加振力の加振周波数の変化に応じ、伝熱管群10全体の中で他の伝熱管3から独立して振動する一の伝熱管30(独立振動管30)が別の伝熱管に変わったとしても、一の伝熱管30および他の伝熱管3の応答変位量をいちいち再計算する必要がない。また、一の伝熱管30(独立振動管30)と他の伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との相互作用を考慮せずに伝熱管群10全体の応答変位量(変位ベクトルXio)をまず算出し、当該算出した伝熱管群10全体の応答変位量(変位ベクトルXio)に基づいて、一の伝熱管30(独立振動管30)の第2応答変位量を、上記相互作用を考慮する形で算出することができる。その結果、本実施形態に係る応力評価方法を単純化し、計算コストと計算時間を減らすことができる。
幾つかの実施形態では、図5に示す処理P3において、一の伝熱管30(独立振動管30)と隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との間における接触荷重を、以下において図6を参照しながら後述する隙間量の大きさに応じて算出してもよい。以下、独立振動管30と隣接伝熱管31の間における上述した隙間量と相対変位量について、図6Aおよび図6Bを用いて説明する。
図6Aおよび図6Bは、図4に示した独立振動管30と隣接伝熱管31が加振前の初期状態から加振力を受けることにより変位した際の変位量を示す。図6Aにおいては、独立振動管30と隣接伝熱管31のそれぞれについて、加振前の初期状態における形状を実線で表し、加振力を受けることにより変位した際の変位後の形状を破線で表している。図6Bにおいては、独立振動管30と隣接伝熱管31のそれぞれについて、加振前の初期状態における形状を実線で表し、加振力を受けることにより変位した際の変位後の形状を一点鎖線で表している。
従って、図6Aにおいては、独立振動管30と隣接伝熱管31のそれぞれについて、実線上の特定の位置から破線上の対応する位置までの変位幅が加振力に応じた応答変位量を表していることになる。また、図6Aにおいては、実線で表された独立振動管30の特定の位置から実線で表された隣接伝熱管31の対応する位置までの距離は、加振前の初期状態における独立振動管30と隣接伝熱管31との間の隙間幅を表すので、初期隙間δ0と呼ばれる。また、図6Aにおいては、独立振動管30の応答変位量が変位幅rdで表されている。また、図6Aにおいては、面内方向D2において、独立振動管30の外側に隣接する隣接伝熱管31aの応答変位量が変位幅routで表され、独立振動管30の外側に隣接する隣接伝熱管31bの応答変位量が変位幅rinで表されている。
同様に、図6Bにおいては、独立振動管30と隣接伝熱管31のそれぞれについて、実線上の特定の位置から一点鎖線上の対応する位置までの変位幅が加振力に応じた応答変位量を表していることになる。また、図6Bにおいては、実線で表された独立振動管30の特定の位置から実線で表された隣接伝熱管31の対応する位置までの距離は、独立振動管30と隣接伝熱管31との間の初期隙間δ0を表し、独立振動管30の応答変位量が変位幅rdで表されている。また、図6Bにおいては、面内方向D2において、独立振動管30の外側に隣接する隣接伝熱管31aの応答変位量が変位幅routで表され、独立振動管30の外側に隣接する隣接伝熱管31bの応答変位量が変位幅rinで表されている。
なお、接触荷重routおよび接触荷重rinは、伝熱管3の曲率中心を原点とする極座標系において半径方向(r方向)に沿った成分(法線方向成分)を表している。ここで、当該法線方向成分は、半径方向(r方向)に沿った独立振動管30および隣接伝熱管31の変位量に対応する。しかし、独立振動管30および隣接伝熱管31の変位量を表す変位ベクトルは、上記法線方向成分のみならず、上述した極座標系のθ座標軸方向に沿った成分(接線方向成分)も含み得る。その場合、当該接線方向成分は、θ座標軸方向に沿った接線方向における独立振動管30および隣接伝熱管31の変位量に対応する。
図6Aは、変位幅rdに応じた応答変位後の独立振動管30と変位幅routに応じた応答変位後の隣接伝熱管31とが互いに接触していない状態(離れた状態)を図示する。その一方で、図6Bは、独立振動管30と隣接伝熱管31aとは互いに接触状態にあり、独立振動管30が隣接伝熱管31aから接触荷重を受けている場合に対応する変位幅rd、routおよびrinを示す。ここで、独立振動管30と隣接伝熱管31aおよび31bの応答変位量に相当する変位幅rd、routおよびrinは、独立振動管30と隣接伝熱管31との間の接触状態や当該接触状態において生じる接触荷重を考慮しないで算出された第1応答変位量に対応する。従って、図6Bにおいては、変位幅rdに応じた応答変位後の独立振動管30と変位幅routに応じた応答変位後の隣接伝熱管31とはあたかも空間的に重なり合っているように図示されている。なお、図6Aおよび図6Bにおいては図面の見やすさと紙面上での表記の都合上、変位幅rd、routおよびrinは、互いに異なる半径方向に沿った変位幅として表記されている。しかし、実際には、変位幅rd、routおよびrinは、伝熱管3の曲率中心を原点とする極座標系において同一の半径方向(r方向)に沿った半径方向値(r値)である。
図6Aを参照すると、変位幅rdに応じた応答変位後の独立振動管30(30の破線部分)と変位幅routに応じた応答変位後の隣接伝熱管31a(31aの破線部分)との間の隙間幅δは正である。その一方で、図6Bを参照すると、変位幅rdに応じた応答変位後の独立振動管30(30の一点鎖線部分)と変位幅routに応じた応答変位後の隣接伝熱管31a(31aの一点鎖線部分)との間の隙間幅δは負である。以上から、図6Aに例示したように、破線または一点鎖線で表された応答変位後の独立振動管30と隣接伝熱管31aとの間の隙間量δが正であれば、独立振動管30と隣接伝熱管31aとは非接触状態であり、接触荷重は生じていないと言える。他方、図6Bに例示したように、破線または一点鎖線で表された応答変位後の独立振動管30と隣接伝熱管31aとの間の隙間量δが負であれば、独立振動管30と隣接伝熱管31aとは互いに接触している状態にあり、接触荷重が作用していると言える。
なお、独立振動管30の応答変位量が変位幅rdは、処理P1(処理S11〜S15)において独立振動管30の衝突自由度方向に沿った応答変位量として算出された変位ベクトルXdを極座標変換して得られる変位量である。上記極座標変換に使用される極座標系は、複数の伝熱管3の曲り部6が共有する曲率中心を原点とし、曲り部6の曲率半径方向に沿った半径軸を有する極座標系である。また、隣接伝熱管31aおよび31bの応答変位量に対応する変位幅routおよびrinは、処理P2(処理S21〜S25)において算出された応答変位量から導出される。具体的には、変位幅routおよびrinは、伝熱管群10全体の衝突自由度方向に沿った応答変位量として算出された変位ベクトルXioを極座標変換して得た変位量から導出され、当該極座標変換は、隣接伝熱管31aおよび31bの伝熱管群10内における設置位置に応じて行われる。その結果、図6に示す実施形態においては、処理P1(処理S11〜S15)および処理P2(処理S21〜S25)において算出された応答変位量(XioおよびXd)を使用して、独立振動管30と隣接伝熱管31との間の隙間量を算出するのに必要な変位幅rd、routおよびrinを得ることができる。
上述した隙間量とは、一の伝熱管30(独立振動管30)と隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との間における初期隙間δ0から、独立振動管30と隣接伝熱管31との間における相対変位量を減算して得られる量である。独立振動管30と外側に隣接する隣接伝熱管31aとの間における相対変位量とは、独立振動管30の第1応答変位量に対応する変位幅rdと、伝熱管群10全体の応答変位量から得られる隣接伝熱管31の応答変位量に対応する変位幅routとの差に基づいて得られる相対的な変位量である。独立振動管30と内側に隣接する隣接伝熱管31bとの間における相対変位量とは、独立振動管30の第1応答変位量に対応する変位幅rdと、伝熱管群10全体の応答変位量から得られる隣接伝熱管31の応答変位量に対応する変位幅rinとの差に基づいて得られる相対的な変位量である。
ここで、独立振動管30が隣接伝熱管31と面内方向D2において衝突する際のN
c個の衝突位置を、添え字cjを用いてn
cj (j= 1,2,…,N
c)と表記し、衝突位置n
cjにおける変位幅r
dを、変位幅r
cjで表すとする。また、独立振動管30と外側の隣接伝熱管31aとの間における隙間量をδ
outとし、独立振動管30と内側の隣接伝熱管31bとの間における隙間量をδ
inとする。すると、初期隙間δ
0、変位幅r
cjおよび変位幅r
outまたは変位幅r
inとの間に以下の関係式が成り立つ。
従って、上記式(8)に基づいて、初期隙間δ
0、変位幅r
cjおよび変位幅r
outまたは変位幅r
inから、独立振動管30と隣接伝熱管31aまたは31bとの間における隙間量δ
outまたはδ
inを求めることができる。
図6に示す実施形態では、一の伝熱管30(独立振動管30)と隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との間における隙間量δoutまたはδinを算出し、隙間量δoutまたはδinがゼロ以上(δout≧0またはδin≧0)なら、独立振動管30が隣接伝熱管31から受ける接触荷重をゼロとしてもよい。また、当該隙間量δoutまたはδinが負になったとき(δout<0またはδin<0)には、当該接触荷重を隙間量δoutまたはδinの大きさに応じて算出してもよい。
以下、図7を参照しながら、独立振動管30と隣接伝熱管31との間における隙間量δoutまたはδinを算出し、隙間量δoutまたはδinが負になったとき(δout<0またはδin<0)に、当該接触荷重を隙間量δoutまたはδinの大きさに応じて算出する際の具体的な方法について説明する。
独立振動管30と外側の隣接伝熱管31aとの間における隙間量をδ
outとし、独立振動管30が外側の隣接伝熱管31aから受ける接触荷重をf
outとすると、δ
0とf
outとの間の関係は、図7に示す単純化された力学系によって近似されてもよい。同様に、独立振動管30と内側の隣接伝熱管31bとの間における隙間量をδ
inとし、独立振動管30が内側の隣接伝熱管31bから受ける接触荷重をf
inとすると、δ
0とf
inとの間の関係もまた、図7に示す単純化された力学系によって近似されてもよい。つまり、図7に示すように、隙間量δ
outと接触荷重f
outとの間の関係は、バネ定数k
cを有するバネ要素と減衰係数c
cを有するダンパー要素とが並列結合した力学系によって近似されてもよい。同様に、隙間量δ
inと接触荷重f
inとの間の関係も、バネ定数k
cを有するバネ要素と減衰係数c
cを有するダンパー要素とが並列結合した力学系によって近似されてもよい。従って、隙間量と接触荷重との間において以下の関係式が成り立つ。
従って、独立振動管30と外側の隣接伝熱管31aとの間における隙間量δoutおよび独立振動管30と内側の隣接伝熱管31bとの間における隙間量δinが求まれば、上記式(9)に基づいて独立振動管30が外側の隣接伝熱管31aから受ける接触荷重foutおよび独立振動管30が内側の隣接伝熱管31bから受ける接触荷重finを算出することができる。なお、接触荷重foutおよび接触荷重finは、伝熱管3の曲率中心を原点とする極座標系において半径方向(r方向)に沿った成分(法線方向成分)を表している。ここで、当該法線方向成分は、半径方向(r方向)に沿って独立振動管30から隣接伝熱管31に作用する押圧荷重に対応する。しかし、接触荷重を表す力ベクトルは、上記法線方向成分のみならず、上述した極座標系のθ座標軸方向に沿った成分(接線方向成分)も含み得る。その場合、当該接線方向成分は、θ座標軸方向に沿った接線方向において独立振動管30から隣接伝熱管31に作用する摩擦力荷重に対応する。
例示的な一実施形態では、図5の処理P4において独立振動管30の第2応答変位量を算出する処理は、以下のように実行されても良い。独立振動管30の第2応答変位量を算出するには、処理S14において第1応答変位量を求める処理を、独立振動管30と隣接伝熱管31との間における相互作用を考慮する形で実行しなおせばよい。具体的には、処理S14において独立伝熱管30のモーダル変位φ
dを求める処理を、独立振動管30と隣接伝熱管31との間における接触荷重F
φを考慮する形で再度実行すればよい。従って、独立伝熱管30のモーダル変位φ
dは、以下の運動方程式を解くことにより算出される。
ここで、M
d、K
d、C
dおよびΦ
dは、処理S12〜S13において独立振動管30のモーダル質量、モーダル剛性、モーダル減衰およびモード変換行列として算出したモーダル・パラメータであり、Φ’
dは、Φ
dの転置行列である。接触荷重F
φは、独立振動管30と隣接伝熱管31との間における相互作用に対応する接触荷重のモーダル力を表す。接触荷重ベクトルをF
c、入力行列をB
xyとすれば、全ての衝突位置n
cj (j= 1,2,…,N
c)に関する接触荷重のモーダル力F
φは次式のように得られる。
ここで、入力行列B
xyは、処理S15に関して上述した式(6)における出力行列C
xyの転置行列である。
また、接触荷重ベクトルF
cと独立振動管30が外側と内側の隣接伝熱管31aおよび31bから受ける接触荷重f
outおよびf
inとの間には以下の関係が成り立つ。
なお、上記事例においては、接触荷重ベクトルF
cのうち伝熱管3の曲率中心を原点とする極座標系において半径方向(r方向)に沿った成分(接触面に対する法線方向成分)のみを算出している。しかし、接触荷重ベクトルF
cは、当該r軸方向に沿った法線成分(法線方向荷重)と直交するθ座標方向に沿った摩擦方向荷重の成分(接触面に対する接線方向成分)を含む場合もある。従って、接触荷重ベクトルF
cは、接触面に対する法線成分(r軸方向荷重)と接触面に対する接線方向成分(θ座標に沿った摩擦方向荷重)の両者を含むベクトルとして定式化することができる。
ここで、θは、独立伝熱管30の面内方向D2に沿った応答変位量に対応する変位ベクトルXdと伝熱管3の曲り部6の曲率中心を中心点とする半径方向との間における角度である。以上のようにして、独立振動管30の第2応答変位量に対応するモーダル変位φdが算出される。
以上より、図6〜図7に示す実施形態では、一の伝熱管30(独立振動管30)と隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)との間の初期隙間から独立振動管30と隣接伝熱管31との間の相対変位量を減算することで、独立振動管30と隣接伝熱管31との間における隙間量を算出している。また、図6に示す実施形態では、一の伝熱管30(独立振動管30)が隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)から受ける接触荷重を上述した隙間量の大きさに応じて算出している。従って、図6に示す実施形態では、一の伝熱管30(独立振動管30)が隣接伝熱管31(図4の隣接伝熱管31)から受ける接触荷重を評価する際に、独立振動管30と隣接伝熱管31との間の相対的な動力学的挙動特性を記述する数値振動解析モデルを用いて詳細な解析を行う必要がない。
幾つかの実施形態では、伝熱管群10は、PWR原子力発電設備の蒸気発生器を構成する伝熱管群であってもよい。これにより、蒸気発生器などの熱交換器が加圧水型原子炉を含む原子力関連施設に設けられるものである場合には、伝熱管群10の耐震性評価のために、想定される地震動が個々の伝熱管3に作用した際に発生する応力を事前に評価することができる。その結果、伝熱管群10の構造を、耐震性を考慮して設計することが可能となる。