JP2019090780A - 分析用試料埋込樹脂の作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂材料中の粒状試料の粒子の凝集を十分に抑制し、また、粒状試料と混合させた液体状樹脂材料を硬化させるための、粒状試料の沈降差による不均一な分布を招く加熱処理を行う必要のない分析用試料埋込樹脂の作製方法を提供する。【解決手段】粒径が不均一な粒子からなり複数種類の単体及び/又は化合物を含む分析対象の粒状試料2を、樹脂材料3に埋め込んで、樹脂材料3中に粒状試料2を固定した試料埋込樹脂を作製する方法であって、粒状試料2を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料3と混合させるとともに、容器1内に、粒状試料2と液体状樹脂材料3との混合物4を投入し、混合物入りの前記容器1を、自転公転撹拌機で自転させつつ自転とは逆の回転方向又は自転と同じ回転方向に公転させることにより、容器1内の混合物4を攪拌した後、混合物4に紫外線を照射して混合物4中の液体状樹脂材料3を硬化させる、分析用試料埋込樹脂の作製方法。【選択図】図1

Description

この発明は、分析の対象とする微小な粒状試料を、分析に先立ち、樹脂材料に埋め込んで固定して、分析用試料埋込樹脂を作製する方法に関するものであり、特には、樹脂材料中の粒状試料の分散性の向上を図るとともに、粒状試料の偏りを抑制することのできる技術を提案するものである。
たとえば、鉱石、スラグ、汚泥、粉塵もしくは、電気電子機器等のリサイクル原料その他の不均一な組成および粒径の粒子からなる粒状試料の元素含有量、粒度分布、単体分離度などを計測して分析するに際しては、その粒状試料を構成する粒子が微小であることから、分析装置にセットする前に、当該粒状試料を樹脂材料に埋め込んで固定して、試料埋込樹脂を得ることが一般に行われている。なお、このような分析装置の一例として、鉱物解析システム(Mineral Liberation Analyzer、MLA)は、SEM−EDSをベースとして鉱石粒子の解析を行うものであり、特に鉱物資源の分野で用いられている。
かかる試料埋込樹脂では、分析精度を高めるため、樹脂材料中の粒状試料の粒子の凝集をできる限り取り除き、粒状試料が樹脂材料中に十分に分散し、分離偏析がない代表組成になっていることが求められる。
それゆえに従来は、試料埋込樹脂を作製する場合、はじめに、粒状試料に対して篩別を行って篩上と篩下に分けた後にさらにそれらを混合し、その混合試料を液体状樹脂材料とともに容器に投入し、容器内を手動作業でかき混ぜるとともに、真空デシケーターを用いた液体状樹脂材料の脱泡、超音波撹拌機による容器内の攪拌を行った後、液体状樹脂材料を大気中で硬化させることとしていた。またここでは、試料埋込樹脂中の粒状試料の分散性を高めるため、容器に、液体状樹脂材料を投入するに先立って、グラファイトを投入し、これを粒状試料と混合させることもある。さらに断面を作製して測定する場合もある。
しかるに、このようにして試料埋込樹脂を作製しても、分析装置で分析した際に、微小な粒子の凝集が少なからず存在し、当該凝集を十分に抑制できなかったので、分析装置が凝集粒子を一個の粒子として誤認することに起因する分析精度の低下が否めないという、粒子の凝集による分散性悪化の問題があった。また、上述した作製方法では、試料埋込樹脂の作製に多くの時間および手間を要する他、手動作業が含まれることから、作業者に応じて、作製される試料埋込樹脂の粒状試料の分散性にばらつきが生じる。しかも、そのような労力にもかかわらず、小さな粒子の凝集は十分に防止することができなかった。
また、上述したようにして、混合物の攪拌を行ったとしても、その後にエポキシ樹脂等の熱可塑性の液体状樹脂材料を加熱することで硬化させる場合は、加熱開始から液体状樹脂材料の昇温を経て液体状樹脂材料の硬化が完了するまで比較的長い時間を要することから、その硬化の完了までの間に、液体状樹脂材料中の粒状試料のうち、重量の軽い粒子は上方側に浮上する一方で、重量の重い粒子は下方側に沈降して、樹脂材料中の粒状試料に偏りが生じる。特に、分析の測定面となることがある下方側には、重量の重い粒子が多く存在することになり、そのような試料埋込樹脂を用いて粒子の分析や解析を行うと、その測定面が当該粒状試料を代表するものではないことに起因して、所期した分析ないし解析の結果が得られないという、沈降差による粒状試料の分布の偏りの問題がある。
上記の粒子の凝集による問題に関し、特許文献1の従来の技術の項目には、磁性材料、金属粉射出成形材料その他の種々の粉体の性状を測定ないし評価するに際し、特に磁石原料粉などの粉体を粒子単位に分離するため、水、アルコール、液状樹脂、油等の溶媒に観察対象とする粉体を溶かし、場合によっては超音波振動を与えることが記載されている。
一方、沈降差による問題に関し、特許文献2には、「粒状試料が樹脂に包埋されてなる樹脂包埋試料の作製方法であって、前記粒状試料と粒状のペレット用樹脂との混合物を固形化して、ペレット成形体を得る固形化工程と、前記ペレット成形体に含まれる前記ペレット用樹脂を溶融固化させて、固化ペレットを得る溶融固化工程と、を有することを特徴とする樹脂包埋試料の作製方法」が提案されている。そして、この方法によれば、「試料作製時に、試料に含まれる鉱石粒子の比重差に起因する鉱物の存在状態の偏りを生じさせず、かつ分析試料数が増える等の分析時の負担を軽減できる樹脂包埋試料およびその作製方法を提供することができる」とされている。
また特許文献3には、「分析対象である粒状試料、熱硬化性樹脂および固形潤滑剤を含む試料含有材料を固形化し、ペレット成形体を形成する固形化工程と、前記ペレット成形体を加熱し、前記熱硬化性樹脂を溶融固化させることにより、前記粒状試料および前記固形潤滑剤が前記熱硬化性樹脂に包埋されて構成される固化ペレットを形成する溶融固化工程と、を有することを特徴とする、樹脂包埋試料の作製方法」が記載されており、これによると、「粒状試料の比重差に起因する存在状態の偏りが小さく、かつ取り扱うのに十分な強度を有する樹脂包埋試料が得られる」とされている。
特開平7−43275号公報 特開2016−50918号公報 特開2017−62223号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような超音波振動の付与によっては、先述したように粒子の凝集を確実になくすことはできないので、より高い精度で分析を行うには分散性が不十分となる。また、エタノールによる洗浄や固液分離、乾燥は手間がかかり、分析前の作業工数を増大させる。
また、特許文献2及び3では、液体状樹脂材料に代えて粒状樹脂材料を用いることとしているが、この場合、粒状試料を粒状樹脂の間に偏りなく均等に存在するよう混ぜることは容易ではなく、さらに凝集がなくならない。それにより、特許文献2及び3に記載された方法によっては、樹脂材料中に粒状試料が均一に分布した試料埋込樹脂を確実に作製できるとは言い難い。
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、樹脂材料中の粒状試料の粒子の凝集を十分に抑制し、また、粒状試料と混合させた液体状樹脂材料を硬化させるための、粒状試料の沈降差による不均一な分布を招く加熱処理を行う必要のない分析用試料埋込樹脂の作製方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、容器内に投入した粒状試料と液体状樹脂材料との混合攪拌に、自転公転撹拌機を用いることにより、粒子の凝集が効果的に抑制されて、樹脂材料中の粒状試料の分散性を有効に向上でき、分離偏析もない代表組成を得ることを見出した。これは、粒状試料および液体状樹脂材料を投入した容器を自転させながら公転させることで、渦巻流と上下対流の相互効果に基いて、液体状樹脂材料の硬化時の粒子の凝集が抑制されること、ならびに、自転公転撹拌機で粒状試料の粒子どうしが混練されて、粒子表面に付着した他の粒子が剥ぎ取られること、さらに、摩擦熱による温度上昇があり、液体状樹脂材料の硬化時間が短縮されること等によるものと考えられるが、この発明は、このような理論に限定されるものではない。
また、これまでに用いていたエポキシ樹脂等の熱可塑性の液体状樹脂材料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料とすることにより、攪拌後の紫外線の照射で比較的短い時間で、当該液体状樹脂材料を硬化できることを見出した。この場合、液体状樹脂材料の硬化のための加熱処理が不要になるとともに、樹脂材料中の粒状試料の不均一な分布を抑制することができる。
このような知見に基き、この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法は、粒径が不均一な粒子からなり複数種類の単体及び/又は化合物を含む分析対象の粒状試料を、樹脂材料に埋め込んで、該樹脂材料中に前記粒状試料を固定した試料埋込樹脂を作製する方法であって、前記粒状試料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料と混合させるとともに、容器内に、粒状試料と液体状樹脂材料との混合物を投入し、混合物入りの前記容器を、自転公転撹拌機で自転させつつ該自転とは逆回りに公転させることにより、容器内の混合物を攪拌した後、前記混合物に紫外線を照射して該混合物中の液体状樹脂材料を硬化させることにある。
また、この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法は、粒径が不均一な粒子からなり複数種類の単体及び/又は化合物を含む分析対象の粒状試料を、樹脂材料に埋め込んで、該樹脂材料中に前記粒状試料を固定した試料埋込樹脂を作製する方法であって、前記粒状試料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料と混合させるとともに、容器内に、粒状試料と液体状樹脂材料との混合物を投入し、混合物入りの前記容器を、自転公転撹拌機で自転させつつ該自転と同じ回転方向に公転させることにより、容器内の混合物を攪拌した後、前記混合物に紫外線を照射して該混合物中の液体状樹脂材料を硬化させることにある。
ここで、自転公転撹拌機による攪拌時の公転速度は、400rpm〜2000rpmとすることが好ましい。
この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、自転公転撹拌機による攪拌の少なくとも終期段階を、真空雰囲気で行うことが好ましい。
また、この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、自転公転撹拌機による攪拌の初期段階を、大気雰囲気で行うことが好ましい。
自転公転撹拌機による攪拌時間は、1分〜30分とすることが効果的である。
ところで、容器に投入する液体状樹脂材料に対する粒状試料の割合は、100体積%〜300体積%とすることが好適である。
この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、前記紫外線硬化樹脂をアクリル樹脂とすることが好ましい。
またこの発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、液体状樹脂材料を硬化させる際に、前記混合物の周囲に隈なく紫外線を照射することが好ましい。
特にこの場合は、液体状樹脂材料を硬化させる際に、前記混合物の周囲に全方向から同時に紫外線を照射することがより一層好ましい。
この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、前記混合物に照射する紫外線の照度を、20000mW/cm2〜36000mW/cm2とすることが好ましい。
また、この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、前記混合物への紫外線の照射時間を、1分〜10分とすることが好ましい。
この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、前記混合物の攪拌後、液体状樹脂材料の硬化が完了するまでの時間を、1分〜10分、さらに1分〜5分とすることが好適である。
なお、この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、前記粒状試料を構成する粒子を鉱石粒子とすることが好ましい。
この発明の分析用試料埋込樹脂の作製方法では、自転公転撹拌機で自転させる前記容器として、混合物入りの容器が複数個配置されたものを用いることができる。
この発明によれば、前記粒状試料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料と混合させ、その混合物を投入した容器を、自転公転撹拌機で自転させつつ公転させて、容器内を攪拌して液体状樹脂材料中で粒状試料を分散させた後、混合物に紫外線を照射することにより、樹脂材料中の粒状試料の粒子の凝集が十分に抑制されるとともに、粒状試料の沈降差による不均一な分布を招く加熱処理を行うことなしに、混合物中の液体状樹脂材料を硬化させることができる。
この発明の一の実施形態で、粒状試料および液体状樹脂材料の混合物入りの容器を自転させつつ公転させる際の様子を模式的に示す斜視図である。 他の実施形態で、粒状試料および液体状樹脂材料の混合物入りの容器を自転させつつ公転させる際の様子を模式的に示す斜視図である。 さらに他の実施形態で、粒状試料および液体状樹脂材料の混合物入りの容器を複数個配置した容器を自転させつつ公転させる際の様子を模式的に示す斜視図である。
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
この発明の一の実施形態に係る分析用試料埋込樹脂の作製方法では、粒径が不均一な粒子からなり複数種類の単体及び/又は化合物を含む分析対象の粒状試料を、樹脂材料に埋め込んで、該樹脂材料中に前記粒状試料を固定した試料埋込樹脂を作製するに当り、前記粒状試料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料と混合させるとともに、容器内に、粒状試料と液体状樹脂材料との混合物を投入し、次いで、混合物入りの前記容器を、自転公転撹拌機で自転させつつ該自転とは逆の回転方向に、又は該自転と同じ回転方向に公転させることにより、容器内の粒状試料および液体状樹脂材料を攪拌し、その後、前記混合物に紫外線を照射して該混合物中の液体状樹脂材料を硬化させる。
(粒状試料)
分析の対象とする粒状試料は、鉱石、スラグ、汚泥、粉塵もしくは、電気電子機器を含むそのリサイクル原料等に対して所定の処理を施すこと等によって、比較的小さい粒子となったものとすることができる。このような粒状試料は通常、組成および粒径の意図的な均一化が行われていないので、組成が異なるとともに粒径も異なる不均一な多種類の粒子からなる。
なかでも、鉱石粒子からなる粒状試料を対象とする場合、このような鉱石粒子は銅鉱石を含むことがあり、これには、たとえば、輝銅鉱、銅藍、黄銅鉱、班銅鉱、硫砒銅鉱、ブロシャン銅鉱等が含まれ得る。銅鉱石以外にも黄鉄鉱、磁鉄鉱、ケイ酸塩鉱物、輝水鉛鉱、金粒子等も含まれ得る。なおケイ酸塩鉱物としては、正長石、曹長石、斜長石、白雲母、黒雲母、石英等がある。
スラグからなる粒状試料を対象とする場合、スラグ自体がSiO2、CaO、Al23、FeO及びFe34等を含む複雑な組成を持ち、さらにスラグ中にマット粒子やメタル粒子を含む場合がある。
電気電子機器からなる粒状試料の場合、基板に含まれる樹脂部や回路を構成する金属部、難燃剤部等の様々な組成を持つ粒子が存在する。
汚泥、粉塵に至っては単一の組成となっている場合はまず無い。
粒状試料を構成する粒子の粒径は、たとえば1μm〜700μm、典型的には20μm〜200μmの範囲で、比較的全体的に分布していて不均一である。なお、粒度分布計で測定できる粒度は、たとえば0.243μm〜2000μmである場合があるが、上述したような粒状試料の粒径はこの範囲で不均一に分布している。
(樹脂材料)
この発明の実施形態では、上述した粒状試料2を埋め込んで固定するための樹脂材料3は、後述するように粒状試料2と混合させる際および攪拌の際に液体状に維持できるものであって、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂を含むものとする。このような紫外線硬化樹脂を含む樹脂材料3を用いることにより、液体の状態のものに紫外線を照射すると比較的瞬時に硬化することから、液体状樹脂材料3を硬化させる際に、粒状試料2の沈降が生じやすい加熱処理を施すことが不要になる。それにより、粒状試料2の各粒子の沈降差に起因する試料埋込樹脂における粒状試料2の不均一な分布を抑制することができる。
紫外線硬化樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル・アルキド樹脂、UVエポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂等を挙げることができる。なかでも、アクリル樹脂は、MLA等による分析の際に照射され得る電子線に対して十分な強度を有することから、試料埋込樹脂の樹脂材料3として特に有効に用いることができる。
このような紫外線硬化樹脂は市販されており、当該市販品を用いることが可能である。
(分析用試料埋込樹脂の作製方法)
上記の粒状試料および樹脂材料にて分析用の試料埋込樹脂を作製するには、はじめに、図1及び2に示すように所定の透明な容器1に、粒状試料2を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料3とともに投入して、粒状試料2を液体状樹脂材料3と混合させ、粒状試料2と液体状樹脂材料3との混合物4を得る。
この実施形態では、後述するように自転公転撹拌機により液体状樹脂材料3中に粒状試料2を十分に分散させることができるので、グラファイト等をさらに投入することを要しない。すなわち、容器1には、樹脂硬化剤を除き粒状試料2および液体状樹脂材料3のみを投入することができる。またここでは、手作業および超音波による容器1内の粒状試料2および液体状樹脂材料3の攪拌を行わないこととすることができる。さらに、従来行っていた粒状試料2の容器1への投入前の篩別も不要である。したがって、この実施形態では、試料埋込樹脂の作製に要する作業を飛躍的に簡略化することができ、作業工数の低減、作業時間の短縮を実現することができる。
容器1に投入する液体状樹脂材料3に対する粒状試料2の割合は、100体積%〜300体積%とすることが好適である。より好ましくは、200体積%〜300体積%とする。これはすなわち、粒状試料2の割合が少なすぎると、粒子が凝集する可能性が否めず、また粒状試料2の割合が多すぎると、固結できず、測定面を露出させる面だし研磨時に破損することが懸念されるからである。
次いで、混合物入りの容器1を、所定の自転公転撹拌機にセットし、当該自転公転撹拌機の機能に基き、図1及び2のそれぞれに矢印で示すように、混合物入りの容器1の自転および公転を同時に行って、容器1内の混合物4の粒状試料2および液体状樹脂材料3を攪拌する。より詳細には、底付き円筒状の容器1の底部を斜め下側に向けてその中心軸を傾斜させて配置し、その中心軸を自転軸として混合物入りの容器1を自転させるとともに、容器1から距離をおいて自転軸が所定の角度θで傾斜するように公転軸を設定し、その公転軸の周りに混合物入りの容器1を公転させる。
これにより、自転と公転の相互作用によって発生する渦巻流と上下対流によって、液体状樹脂材料3中の気泡を押し出し、泡を巻きこむことなく、粒状試料2および液体状樹脂材料3を撹拌させて、その分散を促進させることができる。
自転公転撹拌機としては、混合物入りの容器1のこのような自転および公転を行い得るものであれば特に問わず、たとえば公知のものを用いることができる。自転公転撹拌機での公転と自転は、図1に示すように、互いに逆の回転方向とすることができ、あるいは図2に示すように、互いに同じ回転方向とすることができる。つまり、公転と自転の相対的な回転方向は特に問わず、使用する自転公転撹拌機や、粒状試料2ないし液体状樹脂材料3の状態等に応じて適宜設定することができる。
また図3に示すように、混合物入りの容器1を複数個配置した容器1aを自転及び公転させることもできる。自転公転撹拌機によってはテーブルとも称され得るこの容器1aも、混合物入りの容器とみなすことができる。この場合、容器1aの中心軸を自転軸として容器1aを自転させるとともに、該自転軸が所定の角度θで傾斜するように公転軸を設定し、その公転軸の周りに容器1aを公転させる。図3に示すところでは、容器1aの中心軸の周囲に、混合物入りの容器1を互いに等間隔で四個配置しているが、容器1a内での混合物入りの容器1の配置態様や個数はこれに限定されるものではない。このように混合物入りの容器1を複数個配置した容器4aを自転及び公転させることにより、一度で複数個の混合物入りの容器1の粒状試料2を分散させることができるので、作業効率を大きく向上させることができる。
ここで、自転公転撹拌機による攪拌時の公転速度は、400rpm〜2000rpmとすることが好ましい。公転速度が遅すぎる場合、凝集粒ができることが懸念され、この一方で、公転速度が速すぎる場合、摩擦により粒が摩耗するおそれがある。この観点から、公転速度は400rpm〜2000rpmとすることが好ましい。
またここで、自転公転撹拌機による攪拌時の公転速度に対する自転速度の比率は、樹脂の上下対流が発生し、粒子同士が摩耗しない範囲であればよく、例えば公転速度に対して0.4〜0.6倍とすることが好適である。自転速度が遅すぎると、上下対流が起きないために凝集粒が存在することが考えられる。一方、自転速度が速すぎると、渦巻流と上下対流のスピードが早くなり、粒子同士が摩耗して本来の粒度とは異なってしまう懸念がある。
なお、上述した公転速度および自転速度は、自転公転撹拌機で設定可能である。
自転公転撹拌機による攪拌時の自転軸の、公転軸に対する角度θは、好ましくは30°〜60°、より好ましくは40°〜50°として、自転軸を公転軸から傾斜させて攪拌を行うことができる。自転軸の傾斜角度θが小さいと、比重の大きいものが容器底部に沈降しやすい状態となり、また傾斜角度θが大きいと容器から樹脂がこぼれ、必要な樹脂量を容器に充填できない状態となる可能性がある。傾斜角度θは、材料の性質に合わせて適宜設定することができる。
ところで、上述したような自転公転撹拌機による攪拌は、混合物入りの容器1の周囲の雰囲気を真空雰囲気として行うことが、液体状樹脂材料3に混入し得るマイクロバブルを除去できる点で好適である。このようなマイクロバブルは、粒子の凝集を生じさせる要因の一つになるところ、自転公転撹拌機で真空雰囲気にて攪拌することにより、マイクロバブル除去のためにこれまで行っていた真空デシケーターの使用を省略することができる。真空雰囲気とする場合、マイクロバブルを有効に除去するとの観点から、最大到達真空度は、たとえば1.0kPa以下、好ましくは0.67kPa以下とすることができる。なお、さらに圧力を低下させても効果はそれほど変化せず、またそのような低い圧力に到達するまでに時間がかかる。
但し、液体状樹脂材料3中に粒状試料2がほとんど分散していない攪拌の初期段階から、自転公転撹拌機内の混合物入りの容器1の周囲を真空雰囲気とすれば、容器1の開口の表面近傍に存在する粒状試料2が飛散することが懸念される。これを防止するため、攪拌の初期段階は、大気雰囲気として重力の作用の下で攪拌を行い、その後、真空雰囲気に切り替えてさらに攪拌することが好適である。つまり、攪拌の初期段階は大気雰囲気とし、その後の少なくとも終期段階は真空雰囲気とすることが好ましい。
ここで攪拌の初期段階は、自転公転撹拌機による攪拌の開始時点から、30秒〜60秒が経過したときまでとすることができる。その後に真空雰囲気とする時間は、60秒〜30分とすることができる。
自転公転撹拌機による攪拌時間は、上述したように途中で大気雰囲気から真空雰囲気に切り替える場合はそれらの合計の時間として、好ましくは1分〜30分、より好ましくは5分〜15分とすることができる。攪拌時間が短い場合は、液体状樹脂材料3中での粒状試料2の分散が不十分となることが懸念され、この一方で、攪拌時間が長すぎると、液体状樹脂材料3中で粒状試料2の粒子が相互に衝突することに起因する粒子の破壊が生じるおそれがある。
このように自転公転撹拌機を用いて、容器1内の粒状試料2および液体状樹脂材料3を攪拌した後は、容器1内の混合物4に紫外線を照射し、混合物4中の液体状樹脂材料3を硬化させる。なお、自転公転撹拌機による攪拌後、混合物4を、容器1とは異なる容器に移し替えてから紫外線硬化を行ってもよい。
ここでは、たとえば、自転公転撹拌機で撹拌しながら紫外線照射させることにより粒状試料2の分散性を保持したまま硬化させてもよく、あるいは、自転公転撹拌機にセットした容器1が透明であれば容器1を取り出して紫外線硬化させてもよい。透明な容器1の外側で、前方に紫外線を発する紫外線照射器を移動させながら、混合物4の周囲に隈なく紫外線を照射することが好ましい。あるいは、内部に、混合物4入りの容器1を収容配置可能な紫外線照射器を用いることもでき、この場合、その紫外線照射器の内部で、混合物の周囲に全方向から同時に紫外線を照射することができる。容器1内の、液体状樹脂材料3の粒状試料2で紫外線が遮られる部分にも十分に紫外線を当てることができて、その硬化がより有効に促進される。
なお、ここでいう紫外線は、波長が200nm〜400nmの範囲、典型的には365、385、405nmの範囲にある電磁波を意味する。
ここにおいて、混合物4に照射する紫外線の照度は、20000mW/cm2〜36000mW/cm2とすることが好適である。紫外線の照度が低すぎると、液体状樹脂材料3の硬化に時間がかかり、その際に粒状試料2が沈降することによる粒状試料2の偏りの発生が懸念される。一方、紫外線の照度が高すぎると、ラジカル重合反応が促進され、高熱になり、火災の原因となる可能性がある。このような観点から、混合物4に照射する紫外線の照度は、20000mW/cm2〜36000mW/cm2とすることが好ましい。
またここで、混合物へ紫外線を照射する時間は、好ましくは1分〜10分、より好ましくは2分〜3分とする。紫外線の照射時間が短すぎる場合は、液体状樹脂材料3の硬化が不十分となって、その後の分析に支障をきたすおそれがある。紫外線の照射時間が長すぎる場合は、粒状試料2の沈降差による粒状試料2の不均一な分布の問題が生じる可能性がある。
また、攪拌後に、紫外線を照射して液体状樹脂材料3の硬化が完了するまでの時間が長いと、この間に粒状試料2が沈降して粒状試料2の存在状態に偏りが生じることが懸念される。それ故に、攪拌が終了した時点から液体状樹脂材料3の硬化が完了するまでの時間は、1分〜10分とすることが好ましく、さらに2分〜3分とすることが一層好ましい。
なお、液体状樹脂材料3の硬化が完了したかどうかは、つまようじ等で押して、凹まないことにより確認する。
このようにして紫外線を照射することで液体状樹脂材料3を硬化させて、試料埋込樹脂を作製することができる。したがって、この実施形態では、液体状樹脂材料3の硬化のために、加熱処理を行うことを要しない。それにより、加熱処理時に生じ得る粒状試料2の沈降を防止することができる。
以上に述べたようにして作製された試料埋込樹脂は、試料埋込樹脂における樹脂材料中に分散した粒状試料の粒子の粒度分布が、埋め込み前の粒状試料の粒度分布とほぼ同一、つまりほぼ同様の傾向となっていることが、粒子どうしの凝集抑制の観点から好適である。
そして、このような試料埋込樹脂は、様々な分析装置を用いた粒状試料2の元素含有量、粒度分布、単体分離度などの分析に供することができる。特にここで、粒状試料2を構成する粒子を鉱石粒子とした場合、その試料埋込樹脂は、鉱物解析システム(Mineral Liberation Analyzer、MLA)による分析に有効に用いることができる。
1、1a 容器
2 粒状試料
3 液体状樹脂材料(樹脂材料)
4 混合物

Claims (15)

  1. 粒径が不均一な粒子からなり複数種類の単体及び/又は化合物を含む分析対象の粒状試料を、樹脂材料に埋め込んで、該樹脂材料中に前記粒状試料を固定した試料埋込樹脂を作製する方法であって、
    前記粒状試料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料と混合させるとともに、容器内に、粒状試料と液体状樹脂材料との混合物を投入し、混合物入りの前記容器を、自転公転撹拌機で自転させつつ該自転とは逆の回転方向に公転させることにより、容器内の混合物を攪拌した後、前記混合物に紫外線を照射して該混合物中の液体状樹脂材料を硬化させる、分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  2. 粒径が不均一な粒子からなり複数種類の単体及び/又は化合物を含む分析対象の粒状試料を、樹脂材料に埋め込んで、該樹脂材料中に前記粒状試料を固定した試料埋込樹脂を作製する方法であって、
    前記粒状試料を、紫外線硬化樹脂を含む液体状樹脂材料と混合させるとともに、容器内に、粒状試料と液体状樹脂材料との混合物を投入し、混合物入りの前記容器を、自転公転撹拌機で自転させつつ該自転と同じ回転方向に公転させることにより、容器内の混合物を攪拌した後、前記混合物に紫外線を照射して該混合物中の液体状樹脂材料を硬化させる、分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  3. 自転公転撹拌機による攪拌時の公転速度を、400rpm〜2000rpmとする、請求項1又は2に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  4. 自転公転撹拌機による攪拌の少なくとも終期段階を、真空雰囲気で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  5. 自転公転撹拌機による攪拌の初期段階を、大気雰囲気で行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  6. 自転公転撹拌機による攪拌時間を、1分〜30分とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  7. 容器に投入する液体状樹脂材料に対する粒状試料の割合を、100体積%〜300体積%とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  8. 前記紫外線硬化樹脂をアクリル樹脂とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  9. 液体状樹脂材料を硬化させる際に、前記混合物の周囲に隈なく紫外線を照射する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  10. 液体状樹脂材料を硬化させる際に、前記混合物の周囲に全方向から同時に紫外線を照射する、請求項9に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  11. 前記混合物に照射する紫外線の照度を、20000mW/cm2〜36000mW/cm2とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  12. 前記混合物への紫外線の照射時間を、1分〜10分とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  13. 前記混合物の攪拌後、液体状樹脂材料の硬化が完了するまでの時間を、1分〜10分とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  14. 前記粒状試料を構成する粒子を鉱石粒子とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
  15. 自転公転撹拌機で自転させる前記容器として、混合物入りの容器が複数個配置されたものを用いる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の分析用試料埋込樹脂の作製方法。
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