JP2019089671A - ニオブ酸リチウム単結晶の育成方法 - Google Patents

ニオブ酸リチウム単結晶の育成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高収率で安定的に高品質のニオブ酸リチウム(LN)単結晶をチョコラルスキー法により育成する方法を提供する。【解決手段】チョコラルスキー法によるLN単結晶の育成方法において、原料融液から切り離された育成後のLN単結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程で、上記LN単結晶を、900℃以上1100℃以下の範囲内の一定の保持温度(T)で、下記数式(1)で求められる最短保持時間以上20時間以下保持することを特徴とする。最短保持時間=0.00035(T)2−0.77(T)+425 (1)上記保持操作によりLN単結晶内におけるマイクロボイドの発生が抑制される。【選択図】図6

Description

本発明は、表面弾性波素子の基板材料等に用いられるニオブ酸リチウム単結晶を育成する方法に係り、特に、高収率で安定的に高品質のニオブ酸リチウム単結晶をチョコラルスキー法により育成する方法に関するものである。
ニオブ酸リチウム(LiNbO3;LNと略称する場合がある)単結晶は、融点が約1250℃、キュリー温度が約1140℃の人工の強誘電体結晶である。LN単結晶から切り出され、研磨加工して得られるLN単結晶基板は、主に移動体通信機器に搭載される表面弾性波素子(SAWフィルター)の材料として用いられている。
LN単結晶は、産業的には、主にチョコラルスキー(Czと略称する場合がある)法で、通常、白金坩堝を用い、大気雰囲気下若しくは酸素濃度が20%程度の窒素−酸素混合ガス雰囲気下で育成されている。育成されたLN単結晶は、無色透明若しくは透明感の高い淡黄色を呈している。育成されたLN単結晶は、育成、冷却時の熱応力による残留歪みを取り除くための「アニール処理」と、結晶全体の電気的な極性を揃え単一分極とするための「ポーリング処理」を行った後に基板加工工程へ引き渡される。
ここで、Cz法とは、坩堝内にある原料融液の表面に種結晶を接触させた後に、種結晶を回転させながら連続的に引き上げることで、種結晶と同一結晶方位の単結晶を得る方法である。所望のサイズ(結晶径×結晶長さ)まで結晶育成を行った後は、結晶の引上速度や融液温度の調整によって育成結晶を原料融液から切り離し、その後、室温近傍まで冷却を行い育成炉から結晶を取り出す。尚、結晶育成は、結晶成長界面で原料融液の固化によって発生する潜熱を効率良く種結晶を通して上方に伝導することが重要であるため、適切に調整された温度勾配下で実施される。Cz法では、一般的に、種結晶の直径に対して数倍〜数十倍の直径を持つ単結晶を得ることができる。
Cz法では温度勾配下で結晶の育成が行われ、原料融液から切り離された後に同様の温度勾配下で室温までの冷却を行うので、育成炉から取り出された結晶は、炉内の温度勾配に応じて生じる結晶内の温度差に起因する残留歪を内在している。残留歪は、その後の工程において、結晶にクラックを生じさせる等の収率悪化の要因となる。そこで、この残留歪を取り除くため、育成炉から取り出した結晶を育成炉とは別の電気炉を用いて均熱下で再び融点近傍まで加熱し、室温まで徐冷するという上記「アニール処理」を実施する。
また、上記「ポーリング処理」とはLNのような強誘電体結晶特有の工程で、強誘電体結晶の特性である自発分極で生じる電気的な極性を育成結晶全体で一方向に揃える工程である。自発分極は、キュリー温度以上では結晶が常誘電体となるために消失し、キュリー温度以下で発生するので、「ポーリング処理」の方法は、一般的に、「アニール処理」後の結晶に電極を取り付けて電気炉内に設置し、キュリー温度以上まで加熱する。次に、結晶に取り付けた電極を介して結晶に所定の電圧を印加し、その電圧印加を維持したままキュリー温度以下まで結晶温度を降下させる。
このような育成工程、「アニール処理」工程、「ポーリング処理」工程を経た結晶は、クラックの有無等の外観検査や、オシロスコープを用いた分極方向の極性確認、および、緑色レーザー光や白色光を用いた結晶内部検査を行って、合格品が切断、研磨等を行う基板加工工程に引き渡される。
レーザー光や白色光を用いた結晶内部検査とは、結晶内に散乱体が無いことを確認する工程である。「ポーリング処理」が不十分で分極方向が揃っていない領域(マルチドメイン部)がある場合や、結晶内に異物や気泡等が存在する場合に散乱体として検出される。レーザー光による検査は主にポーリング不良の検出に用いられ、白色光の検査は主に異物や気泡の検出に用いられている。散乱体が検出された結晶は不合格品となる。
レーザー光を用いた検査で発見されるポーリング不良結晶の場合は、当該結晶を、再度「ポーリング処理」を実施することで合格品とすることが可能であるが、白色光を用いた検査で結晶内に異物や気泡が発見された場合は、育成工程に発生要因があり、育成後の処理で不良を取り除くことができないために、その結晶はスクラップとなる。
白色光を用いた結晶内部検査における不合格率は、同一坩堝を用いた育成の繰返し回数が多くなるに従って高くなり、LN育成工程の生産性悪化、コスト悪化の要因となっていた。白色光を用いた結晶内部検査で検出される散乱体について電子顕微鏡(TEM)を用いて調査したところ、異物起因は0.1%未満で、殆ど全てがマイクロボイド(直径が数十nmの気泡)の集合体であることが判った。因みに、レーザー光検査で発見されるポーリング不良結晶の発生率は、育成の繰返し回数に依存せず、1%未満である。
ところで、特許文献1においては、同一坩堝を用いて結晶育成が繰り返し行われた場合、坩堝の変形により坩堝底面に融液が滞留し易くなるため、成長界面で発生した気泡が結晶内に取込まれてしまう問題が指摘されている。そして、この問題は、坩堝底面側の板厚を側面方向の板厚よりも薄くして融液対流を促進させることで防止できるとしている。
尚、成長界面で気泡が発生する理由は、ガス成分の溶解度が融液よりも結晶の方が低いため、融液が結晶化する際、結晶に取込むことができないガス成分(すなわち結晶の溶解度に対して余剰となるガス成分)が、成長界面の融液側に吐き出されることによって成長界面近傍の融液中におけるガス成分濃度が高くなり、その温度(≒融点)における飽和濃度を超えてしまう結果、融液内に溶けていることができなくなった余剰のガス成分が凝集するためと考えられる。つまり、特許文献1で問題としている気泡は、成長界面で既に気泡となっているものである。
特開2012−250874号公報(段落0006、段落0011参照)
特許文献1では、上述したように坩堝底面側の板厚を側面方向の板厚よりも薄くして融液対流を促進させることで気泡が結晶に取込まれる前に取り除くことを可能としている。但し、特許文献1の方法が機能するには、成長界面の前進速度に対して融液の対流速度が圧倒的に速いことが必要になる。実際、一般的なCz法によるLN結晶の育成では、成長界面の平均前進速度は精々0.001mm/s程度のオーダーであるが、上記融液の対流速度は数mm〜数十mm/s程度と3〜4桁異なる。このため、成長界面で既に生じている気泡が結晶内に取込まれる問題は回避される。
しかしながら、マイクロボイド(直径が数十nmの気泡)の発生機構が、以下に説明するように特許文献1とは異なるため、特許文献1の方法を例え適用したとしても上記マイクロボイドに起因する問題は解決しない。
本発明はこのような問題に着目してなされたもので、その課題とするところは、成育不良の主要因であるマイクロボイドの発生を抑制し、高収率で安定的に高品質のニオブ酸リチウム単結晶をチョコラルスキー法により育成する方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者がマイクロボイドの発生機構について調査を進めたところ、過飽和濃度で結晶中に取込まれたガス成分が、育成後の冷却過程(原料融液から切り離された育成後の結晶を室温近傍まで冷却する過程)で過飽和度がより高くなり、析出、凝集することで形成される気泡が存在することが分かった。
特許文献1の説明で述べたように、融液中に溶解しているガス成分は、融液が結晶化する際、融液と結晶の溶解度差のために融液中に吐き出されるが、結晶成長は非平衡状態で進行するので、成長界面で結晶に取り込まれるガス成分の濃度は成長界面温度(≒融点)における飽和濃度と同じ(平衡状態)とはならない。
そして、非平衡状態での結晶成長によって結晶に取り込まれるガス成分の濃度は、飽和濃度よりも高い値になっていると考えられる。加えて、結晶に対するガス成分の飽和濃度は温度に依存し、温度が高いほど飽和濃度も高く、温度が低くなるに従って飽和濃度も低くなる。このため、原料融液から切り離された育成後の結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程において、結晶の温度が下がるに伴って結晶内に取込まれたガス成分の過飽和度は高くなり、限界を超えると析出すると考えられる。しかし、ある温度以下になると、結晶内の原子の位置は実質的に動かなくなるため、結晶中に溶解しているガス成分は析出できずに凍結(結晶中に取り込まれたままになる)されてしまうと考えられる。
そこで、結晶中に溶解しているガス成分の濃度を下げるためには、上記凍結温度よりも高い温度で結晶を十分な時間保持し、保持温度における飽和濃度まで過飽和ガス成分を結晶外に吐き出すことで達成される。
ここで、上記保持温度は、高い方がガス成分の拡散速度が速いため、ガス成分の結晶中濃度が飽和濃度と平衡になるまでの時間は短くなる。しかし、保持温度が高過ぎるとガス成分の飽和濃度も高くなるため、結晶中のガス成分濃度が高い状態で維持され、その後の冷却過程の温度低下に応じて飽和濃度が低くなっていく際、ガス成分の析出が起こることが考えられる。反対に、保持温度が低い場合、結晶中におけるガス成分の平衡濃度は低くなるため、その後の冷却過程におけるガス成分の析出は起こり難くなるが、ガス成分の拡散速度は遅くなるので、平衡に到達するまでの保持時間は長くなってしまう。
本発明は上記技術分析と実験より得られた測定結果に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明は、
チョコラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法において、
原料融液から切り離された育成後のニオブ酸リチウム単結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程で、上記ニオブ酸リチウム単結晶を、900℃以上1100℃以下の範囲内の一定の保持温度(T)で、下記数式(1)で求められる最短保持時間以上20時間以下保持することを特徴とするものである。
最短保持時間=0.00035(T)2−0.77(T)+425 (1)
本発明に係るチョコラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法によれば、
収率を悪化させる主要因であるマイクロボイドの発生を抑制することが可能となり、この結果、高品質のニオブ酸リチウム単結晶を高収率で安定的に育成できるため生産性が向上し、生産コストを大幅に低減できる効果を有する。
チョコラルスキー法による単結晶育成装置の概略構成を模式的に示す断面図。 LN単結晶中におけるガス成分の飽和濃度の温度依存性を示すグラフ図。 LN単結晶中におけるガス成分の拡散速度の温度依存性を示すグラフ図。 原料融液から切り離された育成後のLN単結晶を室温近傍まで冷却する本発明に係る冷却過程の時間と温度との関係を示すグラフ図。 原料融液から切り離された育成後のLN単結晶を室温近傍まで冷却する従来法に係る冷却過程の時間と温度との関係を示すグラフ図。 原料融液から切り離された育成後のLN単結晶を室温近傍まで冷却する実施例と比較例に係る冷却過程の保持温度と保持時間との関係を示すグラフ図。
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて詳細に説明する。尚、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して重複する説明は省略する。
[単結晶育成および結晶評価手法の概要]
はじめに、図1を参照して、Cz法による単結晶育成装置10の構成例、および、単結晶育成方法の概要について説明する。
図1は、高周波誘導加熱式単結晶育成装置10の概略構成を模式的に示す断面図であるが、LN単結晶の育成では抵抗加熱式単結晶育成装置も用いられている。高周波誘導加熱式単結晶育成装置と抵抗加熱式単結晶育成装置の違いは、高周波誘導加熱式の場合は、ワークコイル15によって形成される高周波磁場によりワークコイル15内に設置されている金属製坩堝12の側壁に渦電流が発生し、その渦電流によって坩堝12自体が発熱体となり、坩堝12内にある原料の融解や結晶育成に必要な温度環境の形成を行う。抵抗加熱式の場合は、坩堝の外周部に設置されている抵抗加熱ヒーターの発熱で原料の融解や結晶育成に必要な温度環境の形成を行っている。どちらの加熱方式を用いても、Cz法の本質は変わらないので、以下、高周波誘導加熱式単結晶育成装置による単結晶育成方法に関して説明する。
図1に示すように、高周波誘導加熱式単結晶育成装置10は、チャンバー11内に坩堝12を配置する。坩堝12は、坩堝台13上に載置される。チャンバー11内には、坩堝12を囲むように耐火材14が配置されている。坩堝12を囲むようにワークコイル15が配置され、ワークコイル15が形成する高周波磁場によって坩堝12壁に渦電流が流れ、坩堝12自体が発熱体となる。チャンバー11の上部にはシード棒16が回転可能かつ上下方向に移動可能に設けられている。シード棒16の下端の先端部には、種結晶1を保持するためのシードホルダ17が取り付けられている。
Cz法では、坩堝12内の単結晶原料18の融液表面に種結晶1となる単結晶片を接触させ、この種結晶1をシード棒16により回転させながら上方に引き上げることにより、種結晶1と同一方位の円筒状単結晶を育成する。
種結晶1の回転速度や引上速度は、育成する結晶の種類、育成時の温度環境に依存し、これ等の条件に応じて適切に選定する必要がある。また、結晶育成に際しては、成長界面で融液の結晶化によって生じる固化潜熱を、種結晶を通して上方に逃がす必要があるため、成長界面から上方に向って温度が低下する温度勾配下で行う必要がある。加えて、育成結晶の形状が曲がったり、捩れたりしないようにするために、原料融液内においても、成長界面から坩堝壁に向って水平方向に、かつ成長界面から坩堝底に向って垂直方向に温度が高くなる温度勾配下で行う必要がある。
LN単結晶を育成する場合、LN結晶の融点が1250℃であり、育成雰囲気に酸素が必要であることから、融点が1760℃程度で化学的に安定な白金(Pt)製の坩堝12が用いられる。育成時の引上速度は、一般的には数mm/H程度、回転速度は数rpm程度で行われる。また、育成時の炉内は、大気若しくは酸素濃度20%程度の窒素−酸素の混合ガス雰囲気とするのが一般的である。このような条件下で、所望の大きさまで結晶を育成した後、引上速度の変更や融液温度を徐々に高くする等の操作を行うことで、育成結晶を融液から切り離し、その後、育成炉のパワーを所定の速度で低下させることで徐冷し、炉内温度が室温近傍となった後に育成炉内から結晶を取り出す。
このような方法で育成され、炉から取り出された結晶は、結晶内の温度差に起因する残留歪を内在している。この残留歪を除去するために、育成結晶を育成炉とは別の電気炉を用いて均熱下で融点近傍の温度まで加熱し、その温度で所定の時間保持した後に室温まで徐冷する「アニール処理」を実施する。
「アニール処理」を実施したLN結晶は、自発分極で発生する電気的な極性の方向が結晶内で揃っていないので、結晶の分極方向に電極を取り付け、電気炉内で再びLN結晶のキュリー温度1140℃以上に加熱した後、電極を介して結晶に所定の電圧を印加し、その電圧を保持したまま、キュリー温度以下まで降温させる「ポーリング処理」を行う。その後、結晶の温度がキュリー温度よりも十分に低くなるまで降温させたら電圧印加を停止し、室温まで冷却する。「ポーリング処理」によって、結晶内の分極方向は、印加電圧の方向に揃えることができる。
「ポーリング処理」後の結晶は、目視による外観検査でクラック等の不具合が発生していないことを確かめたら、緑色レーザー光および白色光を結晶に当てて、結晶内部の検査を行う。これ等の検査で、結晶内部に分極方向が揃っていない領域がある場合や、異物、気泡等が存在する場合は、散乱体として検出される。
「ポーリング処理」後の検査で合格となった結晶は、スライス、研磨等を行う加工工程へ引き渡される。
[結晶内部の散乱体]
「ポーリング処理」後の検査で検出される散乱体は、以下の3種類に大別される。
1) マルチドメイン 発生率1%未満
2) マイクロボイドの集合体(以下、モヤと呼ぶ) 発生率〜20%
3) 異物 発生率0.1%未満
これ等の中で、本発明が対象としているのは、発生率が最も高く、育成後の工程で救済することができない上記「モヤ」である。本発明によって上記「モヤ」の発生を抑制することが可能となる。
「ポーリング処理」後の結晶に白色光を当てると、「モヤ」部は、本来透明である結晶内に大きさ数mmから数cm程度で黒色の領域として観察される。「モヤ」が存在する結晶から試料を切り出し、「モヤ」部についてTEMを用いて詳細に観察したところ、大きさが数十nmのマイクロボイドが高密度で存在している領域であることが判った。
加えて、育成後、「アニール処理」後、それぞれの段階で結晶に白色光を当てて検査したところ、「モヤ」は育成後の結晶では検出されないが、「アニール処理」後の結晶では検出され、「モヤ」は「アニール処理」工程で生成していることも判った。
更に、「アニール処理」工程後に「モヤ」が検出された結晶は、その後にLN結晶の融点以下の温度で、如何なる温度プロファイル条件で、再度、熱処理しても「モヤ」を消滅させることはできなかった。
[モヤの生成原因]
これ等のことから、「モヤ」の生成原因として以下のことが推察される。
融液中に何からのガス成分が溶解している。そのガス成分は、融液に対する溶解度と結晶に対する溶解度に違いがあり、結晶に対する溶解度の方が小さい。従って、十分に平衡に近い状態で育成されれば、本来、成長界面で融液が結晶化するときにガス成分は融液中に吐き出されるが、実効的な結晶育成は非平衡状態で行われているので、ガス成分は吐き出されずに結晶内に取り込まれ、結晶中に過飽和状態で存在している。結晶の温度が融点に近い高温時は、過飽和溶解状態が維持されるが、結晶の温度が低くなるにつれて飽和溶解度も下がるので、ガス成分の過飽和度が大きくなる。このため、ガス成分は溶解状態を維持できなくなり結晶内に析出し、それらが移動してマイクロボイドを形成する。
育成後の結晶では「モヤ」が観察されず、「アニール処理」後の結晶で「モヤ」が観察される理由は、温度降下速度の違いによると考えられる。育成後の結晶は、高々数時間程度で融点近傍温度から室温近傍まで冷却される。これに対して、温度差起因の歪を取り除くために行っている「アニール処理」工程における冷却は、冷却中においても結晶内に温度差を極力生じさせないために、数十時間のオーダーで行われる。このため、育成後の結晶では、結晶内に過飽和状態で取込まれているガス成分が冷却時に析出しても、移動してマイクロボイドを形成する時間が無い。しかし、「アニール処理」工程の冷却速度であれば、ガス成分の析出後も、ガス成分が移動できる十分な時間があるので、ガス成分が集積してマイクロボイド形成に至ると考えられる。
析出したガス成分は、分散して存在しているよりも集積してボイドを形成した方が表面エネルギーが低くなり安定なので、一度ボイドが形成されてしまうとその後にガス成分を再度分散させることはできない。また、形成されたボイドの大きさは、LN結晶を構成している各イオンの大きさと比較すると2桁以上大きいので、形成されたボイドが結晶内で移動することもできない。
「モヤ」部が黒色に見える原因は、結晶に当てた光がマイクロボイドに到達すると、ボイド内部で反射を繰返し、ボイドよりも先に行くことができなくなるため、つまりマイクロボイドが光の吸収体となっているためと考えられる。
[モヤの発生を抑制する本発明方法]
上記仮説に基づくと「モヤ」の発生を抑制するには、結晶内に過飽和に取込まれていると考えられるガス成分の濃度を下げることが有効と考えられる。
そこで、原料融液から切り離された育成後の結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程において、結晶中に取込まれたガス成分が結晶内を拡散可能な高温の温度(T)で、結晶の温度降下を一旦停止し、その温度(T)で結晶を十分な時間保持すれば、結晶中に取込まれたガス成分の濃度は、保持した温度(T)に対する飽和濃度で平衡に達すると考えた。
結晶中に取込まれたガス成分の飽和濃度は、図2に示すように温度が高いほど高く、温度が低いほど低くなると考えられる。このため、温度保持操作を行い保持温度(T)に対する飽和濃度に達した結晶中のガス成分濃度は、保持温度(T)が高いほど濃度が高く、低いほど濃度が低くなる。また、ガス成分の拡散速度は、図3に示すように、温度が高いほど速く、温度が低いほど遅くなると考えられる。このため、結晶中のガス成分濃度が飽和濃度に達するまでの時間は、保持温度(T)が高いほど短く、保持温度(T)が低いほど長くなる。
結晶中のガス成分濃度を短時間で低濃度にすることが理想であるが、上述したように飽和濃度と拡散速度はトレード・オフの関係にあるので、保持温度(T)の上限値は「アニール処理」工程で「モヤ」を発生させないガス成分の飽和濃度で決まり、下限値は従来法よりも冷却時間が延長される可能性があるので育成工程の生産性で決まる。
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
図1に示す高周波誘導加熱式単結晶育成装置を用いてCz法によるLN結晶の育成を行った。まず、Pt製坩堝12内に原料18としてLN粉をチャージし、原料18を融解させた後、種結晶1の先端部を坩堝12内の原料融液に浸し、回転させながら引上げることで直径4インチ、直胴部長120mmのLN単結晶を育成した。育成したLN単結晶を融液から切り離し、該結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程で、図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を1000℃、保持時間を5時間とした。
同様の条件で結晶育成を行い30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、全ての単結晶に「モヤ」不良の発生は見られなかった。
尚、冷却過程の保持温度と保持時間との関係を示す図6のグラフ図に実施例1に係る上記保持温度と保持時間を「〇」で示す。
[実施例2]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を1100℃、保持時間(h)を2時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、全ての単結晶に「モヤ」不良の発生は見られなかった。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に実施例2に係る保持温度と保持時間を「〇」で示す。
[実施例3]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を900℃、保持時間(h)を16時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、全ての単結晶に「モヤ」不良の発生は見られなかった。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に実施例3に係る保持温度と保持時間を「〇」で示す。
[比較例1]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を1000℃、保持時間(h)を3時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、30本中、5本の結晶に「モヤ」不良が検出された。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に比較例1に係る保持温度と保持時間を「×」で示す。
[比較例2]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を1100℃、保持時間(h)を1時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、30本中、4本の結晶に「モヤ」不良が検出された。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に比較例2に係る保持温度と保持時間を「×」で示す。
[比較例3]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を900℃、保持時間(h)を10時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、30本中、6本の結晶に「モヤ」不良が検出された。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に比較例3に係る保持温度と保持時間を「×」で示す。
[比較例4]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を1200℃、保持時間(h)を2時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、30本中、6本の結晶に「モヤ」不良が検出された。
結晶中のガス成分濃度は1200℃における飽和濃度に到達しているが、1200℃における飽和濃度は高いため、その後の冷却過程における結晶温度の低下に伴って飽和濃度が下がっていく際、結晶中のガス成分濃度が過飽和となり、過飽和ガス成分を析出してしまったと考えられる。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に比較例4に係る保持温度と保持時間を「×」で示す。
[比較例5]
図4に示す冷却プロファイルにおいて、保持温度(T)を800℃、保持時間(h)を20時間とした以外は実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、30本中、6本の結晶に「モヤ」不良が検出された。
また、実施例1と同様、図6のグラフ図に比較例5に係る保持温度と保持時間を「×」で示す。
[比較例6]
実施例1と同様の条件で結晶育成を行い、育成したLN単結晶を融液から切り離し、該結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程において、温度保持を設けない図5に示す従来の冷却プロファイル条件により30本の単結晶を得た。
得られた各単結晶の「アニール処理」と「ポーリング処理」を行った後、白色光を用いた結晶内部検査を行った結果、30本中、6本の結晶に「モヤ」不良が検出された。
[確 認]
図6のグラフ図において、実施例1、実施例2、実施例3の各点「〇」をつないで形成された曲線は、保持時間(h)=0.00035(T)2−0.77(T)+425 なる関係式で表されることが確認された。
そして、「モヤ」の発生を防止するために育成後の単結晶を900℃以上1100℃以下の範囲内の一定の保持温度(T)で保持する工程の際、上記曲線上に存在する保持時間(h)が最短となることが確認される。
本発明に係るチョコラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法によれば、マイクロボイドの発生が抑制されて高品質のニオブ酸リチウム単結晶を高収率で安定的に育成できるため、表面弾性波フィルタの基板材料として使用されるニオブ酸リチウム単結晶の製造に用いられる産業上の利用可能性を有している。
1 種結晶
10 単結晶育成装置
11 チャンバー
12 坩堝
13 坩堝台
14、19 耐火材
15 ワークコイル
16 シード棒
17 シードホルダ
18 単結晶育成原料

Claims (1)

  1. チョコラルスキー法によるニオブ酸リチウム単結晶の育成方法において、
    原料融液から切り離された育成後のニオブ酸リチウム単結晶を室温近傍まで冷却する冷却過程で、上記ニオブ酸リチウム単結晶を、900℃以上1100℃以下の範囲内の一定の保持温度(T)で、下記数式(1)で求められる最短保持時間以上20時間以下保持することを特徴とするニオブ酸リチウム単結晶の育成方法。
    最短保持時間=0.00035(T)2−0.77(T)+425 (1)
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