以下において、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に示す本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構成、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の調整を加えることができる。
本明細書において、「自動運転」とは、乗員が関与せずに車両の操舵、制動及び駆動のすべてが自動的に制御される運転を意味する。また、「手動運転」とは、車両の操舵、制動及び駆動の全てを運転者が操作する運転の他、車両の操舵、制動及び駆動の一部が自動的に制御される運転を含む。
(ヘッドレスト装置)
本発明の実施形態に係るヘッドレスト装置は、図1及び図2に示すように、車両の車両用シート(1,2,3)に搭載される。車両用シート(1,2,3)は、乗員が着座するシートクッション1と、シートクッション1の後部に下端が連結され、乗員の背面を支持するシートバック2と、シートバック2の上端に連結され、乗員の頭部を支持可能なヘッドレスト3とを備える。
本発明の実施形態に係るヘッドレスト装置は、ヘッドレスト3の乗員の頭部を支持する表面(支持面)の前後位置及び傾斜角を調整する。本発明の実施形態において、「ヘッドレスト3の支持面の傾斜角」は、図1に示すように、ヘッドレスト3の側面視においてヘッドレスト3の支持面の基準線L4に対する角度θ2として定義される。基準線L4は例えば水平面内の線を選択できる。例えば、一般的にはヘッドレスト3の支持面は曲面であるが、ヘッドレスト3の側面視において、ヘッドレスト3の支持面上の基準点P2と参照点P3とを結ぶ直線L3をヘッドレスト3の支持面と仮定する。
本発明の実施形態において、「ヘッドレスト3の支持面の前後位置」は、シートバック2のシートバック角度を基準角度(例えば水平面に対して62°の傾斜角)で固定した状態におけるヘッドレスト3の支持面の車両前後方向の位置である。ヘッドレスト3の支持面の前後位置の基準は、ヘッドレスト3の支持面上の基準点P2の位置によって定義できる。
ヘッドレスト3の支持面上の基準点P2及び参照点P3は任意の位置に設定可能である。ヘッドレスト3の支持面上の基準点P2は、例えば乗員の後頭部に接触し易い位置に設定される。ヘッドレスト3の支持面上の参照点P3は、例えば基準点P2より下方の頚椎の上部に対応する位置に設定される。
ヘッドレスト3は、シートバック2の上端にステー等で固定された固定部3bと、固定部3bの前側に配置され、ヘッドレスト3の支持面を有する可動部3aを備える。固定部3bにはヘッドレストアクチュエータ31が取り付けられている。ヘッドレストアクチュエータ31は、可動部3aを移動させることにより、可動部3aの支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。図1ではヘッドレストアクチュエータ31を簡略化して模式的に示すが、ヘッドレストアクチュエータ31の構成は特に限定されず、例えばモータ等を用いて構成することができる。ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の調整は、個別に行ってもよく、同時に連動して行ってもよい。
本発明の実施形態に係る車両用シートは、ヘッドレストセンサ21、シートスライドセンサ22及びシートバックセンサ23を備える。シートスライドセンサ22は、例えばシートクッション1に内蔵されたリニアセンサ等で構成され、シートクッション1の車両前後方向のスライド位置を検出する。
シートバックセンサ23は、例えばシートバック2に内蔵されたロータリエンコーダ等で構成され、鉛直方向に対してシートバック2の車両後方に傾斜する角度をシートバック角度(リクライニング角度)として検出する。ここで、乗員のヒップポイントP1と肩部とを結ぶ直線(トルソライン)L2を基準線として、鉛直線L1と、トルソラインL2とのなす角度(トルソ角)θ1をシートバック角度とする。乗員のヒップポイントP1は、車両用シート(1,2,3)の形状や任意の乗員モデル等から適宜設定可能である。乗員モデルとしては、例えば米国成人男性の50パーセンタイルのダミー人形であるAM50が使用可能である。ヘッドレストセンサ21は、例えばヘッドレスト3に内蔵されており、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を検出する。
次に、図2〜図4を参照して、本発明の実施形態に係るヘッドレスト3の動作の一例を説明する。図2〜図4は、シートバック角度を水平面に対して62°の傾斜角で固定した状態において、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を変化させた状態を示す。図2に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置は、図1に示したヒップポイントP1を通る鉛直線L1と基準点P2との距離(換言すれば、ヒップポイントP1と基準点P2との水平方向距離)D1が250mm程度の位置で定義できる。ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2は80°程度である。図2に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2は、シートバック角度θ1が25°〜35°程度の場合に適している。
図3に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置は、図2に示したヘッドレスト3の状態に対して、ヘッドレスト3の支持面を車両前後方向に50mm程度前方へ移動している。図3に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置は、図1に示したヒップポイントP1を通る鉛直線L1と基準点P2との距離D1が200mm程度の位置で定義できる。また、図3に示したヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2は、図2に示したヘッドレスト3の状態に対して、10°程度前傾している。ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2は90°程度である。図3に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2は、シートバック角度θ1が35°〜45°程度の場合に適している。
図4に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置は、図2に示したヘッドレスト3の状態に対して、ヘッドレスト3の支持面を車両前後方向に50mm程度後方へ移動している。図4に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置は、図1に示したヒップポイントP1を通る鉛直線L1と基準点P2との距離D1が300mm程度の位置で定義できる。また、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2は、図2に示したヘッドレスト3の状態に対して、20°程度後傾している。ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2は60°程度である。図3に示したヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2は、シートバック角度θ1が45°〜55°程度の場合に適している。
本発明の実施形態に係るヘッドレスト装置は、シートバック角度θ1又は乗員の活動状態に応じて、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2をある一定の関係(関数)の下に連動させて調整することにより、乗員の頭部を適切に支持又は保持(サポート)するものである。本発明の実施形態に係る車両用シートは、図5に示すように、処理回路10、センサ20、入力装置24、モード選択スイッチ25、自動運転スイッチ26、ヘッドレストアクチュエータ31及びシートバックアクチュエータ32を備える。
センサ20は、ヘッドレストセンサ21、シートスライドセンサ22及びシートバックセンサ23を備える。ヘッドレストセンサ21により検出されたヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2、シートスライドセンサ22により検出されたシートクッション1のスライド位置、及びシートバックセンサ23により検出されたシートバック角度θ1は処理回路10に出力される。ヘッドレストアクチュエータ31及びシートバックアクチュエータ32のそれぞれは処理回路10により制御される。
入力装置24としては、例えばタッチパネル、スイッチ、音声入力装置等が採用可能であり、車室内に乗員により操作可能に配置されている。入力装置24は、乗員によりヘッドレスト3の支持面の前後位置、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2、シートスライド位置、シートバック角度θ1等を調整する入力情報を受け付ける。なお、モード選択スイッチ25及び自動運転スイッチ26を個別に備えず、入力装置24がモード選択スイッチ25及び自動運転スイッチ26の機能を兼ねていてもよい。
自動運転スイッチ26は、車室内に乗員により操作可能に配置されている。自動運転スイッチ26を操作することで、手動運転から自動運転に切り替えることができる。また、自動運転スイッチ26を操作することで、自動運転から手動運転に切り替えることができる。
モード選択スイッチ25は、車室内に乗員により操作可能に配置されている。モード選択スイッチ25は、自動運転中における乗員の活動モード(活動状態)を選択する入力情報を受け付ける。ここで、乗員の活動モードは、例えば「第1モード(緊張モード)」、「第2モード(リラックスモード)」及び「第3モード(睡眠モード)」に区別できる。
「緊張モード」は、乗員が手動運転に復帰し易いように外界を監視したり、仕事をしたりして緊張感を保つ状態に対応する。「緊張モード」のシートバック角度θ1は25°〜35°程度が適している。
「リラックスモード」は、「緊張モード」よりも乗員の活動量が低く、乗員が外界の景色を眺めたり、映画やテレビ番組を見たり、読書したりしてリラックスする状態に対応する。「リラックスモード」のクライニング角度は、「緊張モード」のシートバック角度θ1よりも大きく、35°〜45°程度が適している。
「睡眠モード」は、「リラックスモード」よりも乗員の活動量が低く、乗員が上体を倒して体を休めたり、睡眠したりする状態に対応する。「睡眠モード」のシートバック角度θ1は、「リラックスモード」のシートバック角度θ1よりも大きく、45°〜55°程度が適している。
処理回路10は、本発明の実施形態に係るヘッドレスト装置が行う動作に必要な処理の算術論理演算を行う電子制御ユニット(ECU)等のコントローラであり、例えば、プロセッサ、記憶装置及び入出力インターフェースを備えてもよい。プロセッサには、算術論理演算装置(ALU)、制御回路(制御装置)、各種レジスタ等を含む中央演算処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)等に等価なマイクロプロセッサ等を対応させることができる。処理回路10に内蔵又は外付けされる記憶装置は、半導体メモリやディスクメディア等からなり、レジスタ、キャッシュメモリ、主記憶装置として使用されるROM及びRAM等の記憶媒体を含んでいてもよい。例えば、記憶装置に予め記憶された、本発明の実施形態に係るヘッドレスト装置の動作に必要な一連の処理を示すプログラムをプロセッサが実行し得る。
処理回路10は、論理ブロックを機能的若しくは物理的なハードウェア資源として備える。これらの論理ブロックを、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)等で物理的に構成してもよく、汎用の半導体集積回路中にソフトウェアによる処理で等価的に設定される機能的な論理回路等でも構わない。また、処理回路10を構成する論理ブロックは、単一のハードウェアから構成されてもよく、それぞれ別個のハードウェアから構成されてもよい。
処理回路10は、シートバック角度θ1に応じてヘッドレスト3の前後位置及び傾斜角θ2の目標値を設定する。処理回路10は、設定された目標値と、ヘッドレストセンサ21により検出されたヘッドレスト3の現在の前後位置及び傾斜角θ2に基づき、ヘッドレスト3の現在の前後位置及び傾斜角θ2から設定した目標値に移動させる制御量を算出する。処理回路10は、算出した制御量に基づき、ヘッドレストアクチュエータ31を制御することにより、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。処理回路10は更に、乗員の活動状態に応じて、シートバックアクチュエータ32を制御することにより、シートバック角度θ1を調整してもよい。
例えば、モード選択スイッチ25により「緊張モード」が選択された場合、図6に示すように、ステアリングホイール8の内側から操作可能なディスプレイ9が登場し、乗員Mはディスプレイ9を操作して仕事をすることができる。或いは、ステアリングホイール8の内側からテーブルが登場し、乗員Mはテーブル上で作業してもよい。
この際、処理回路10は、モード選択スイッチ25により選択された「緊張モード」に応じて、図6に示すように25°〜35°程度にシートバック角度θ1を調整する。更に、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置を、「リラックスモード」よりも後方で、且つ「睡眠モード」よりも前方に調整する。ヘッドレスト3の支持面の前後位置は、ヒップポイントP1を通る鉛直線L1と基準点P2との距離D1が250mm程度である。更に、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2を、「リラックスモード」よりも小さく、且つ「睡眠モード」よりも大きい80°程度に調整する。即ち、図6に示したヘッドレスト3の状態は、図2に示したヘッドレスト3の状態に対応する。この結果、調整されたヘッドレスト3により、緊張した状態にある乗員の頭部を適切に支持又は保持することができる。また、緊張状態にある乗員の頭部にヘッドレスト3が接触した場合、乗員が煩わしさを感じることも考えられるが、頭部の拘束性を高めることができるため、緊急動作時の鞭打ち等を防止でき、安全面で有効である。
なお、乗員Mの手動又は入力装置24を介した操作によりシートバック角度θ1が25°〜35°程度に設定された場合、処理回路10は、乗員の活動モードが「緊張モード」であると推定し、図6に示すように、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整してもよい。
また、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する際に、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2のそれぞれの動作開始タイミング及び動作終了タイミングの少なくとも一方を一致させてもよい。即ち、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置の調整を開始すると同時に、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2の調整を開始してもよい。また、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置の調整を終了すると同時に、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2の調整を終了してもよい。
また、モード選択スイッチ25により「リラックスモード」が選択された場合、処理回路10は、図7に示すように、シートバック角度θ1を35°〜45°程度に調整する。更に、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置を、「緊張モード」及び「睡眠モード」よりも前方に調整する。例えば、図6に示したヘッドレスト3の状態のままシートバック角度θ1を35°〜45°程度に後傾した場合に対して、ヘッドレスト3の支持面の前後位置が、水平方向に対して10°程度後傾した方向に平行に、50mm程度前方に移動している。更に、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2を、「緊張モード」及び「睡眠モード」よりも大きい80°程度に調整する。例えば、図6に示したヘッドレスト3の状態に対して、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2を、水平方向に対して10°前傾している。即ち、図7に示したヘッドレスト3の状態は、シートバック角度θ1が異なるが、図3に示したヘッドレスト3の状態に対応する。この結果、調整されたヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2により、リラックスした状態にある乗員の頭部を適切に支持又は保持することができる。
なお、乗員Mの手動又は入力装置24を介した操作によりシートバック角度θ1が35°〜45°程度に設定された場合、処理回路10は、「リラックスモード」であると推定し、図7に示すように、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整してもよい。
また、モード選択スイッチ25により「睡眠モード」が選択された場合、処理回路10は、図8に示すように、シートバック角度θ1を45°〜55°程度に調整する。更に、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置を、「緊張モード」及び「リラックスモード」よりも後方に調整する。例えば、図6に示したヘッドレスト3の状態のままシートバック角度θ1を45°〜55°程度に後傾した場合に対して、ヘッドレスト3の支持面の前後位置が、水平方向に対して30°程度後傾した方向に平行に、50mm程度後方に移動している。更に、処理回路10は、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2を、「緊張モード」及び「リラックスモード」よりも小さい60°程度に調整する。例えば、図6に示したヘッドレスト3の状態に対して、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2が20°程度後傾している。即ち、図8に示したヘッドレスト3の状態は、シートバック角度θ1が異なるが、図4に示したヘッドレスト3の状態に対応する。この結果、調整されたヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2により、睡眠状態にある乗員の頭部を適切に支持又は保持することができる。
なお、乗員Mの手動又は入力装置24を介した操作によりシートバック角度θ1が45°〜55°程度に調整された場合、処理回路10は、「睡眠モード」であると推定し、図8に示すように、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整してもよい。
図9は、シートバック角度θ1を25°〜35°の「緊張モード」に対応する仕事をする状態(Working)、シートバック角度θ1を35°〜45°の「リラックスモード」に対応する映画を見る状態(Watching)、シートバック角度θ1を45°〜55°の「睡眠モード」に対応する睡眠状態(Sleeping)のそれぞれにおいて、被験者が適切と感じるヘッドレスト3の支持面の前後位置と傾斜角90°−θ2との関係の測定結果を示す。横軸は、シートバック角度θ1を固定した状態での、被験者が適切と感じるヒップポイントP1からヘッドレスト3の支持面上の基準点P2までの水平方向距離である。縦軸は、ヘッドレスト3を車両前後方向(水平方向)に対して62°前傾した基準角度からの変化量である。
図9に矢印線で示すように、ヘッドレスト3の支持面の前後位置と傾斜角θ2は蛇行(メアンダ)状の曲線の軌跡を描き、一定の関係性があることが分かる。そこで、図9の矢印線に対応する関数を用いてヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整することにより、乗員の頭部を適切に支持又は保持することができる。例えば、乗員の活動モードが「緊張モード」、「リラックスモード」、「睡眠モード」のそれぞれの場合に、図9の矢印線上の位置A,B,Cで示すヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2にそれぞれ調整することにより、乗員Mの頭部を適切に支持又は保持することができる。
また、乗員Mの嗜好や後頭部形状には個人差があり、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を自動的に調整後に、乗員Mによりヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する操作入力が更に行われる場合がある。処理回路10は、図6に示した「緊張モード」、図7に示した「リラックスモード」、図8に示した「睡眠モード」のそれぞれのヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に調整後、入力装置24が乗員Mによりヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する入力情報を受け付けた場合には、乗員Mの入力情報に応じてヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を更に調整する。この際、乗員Mによるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2のいずれか一方の入力情報に応じて、図9に示した矢印の軌跡の関係に対応する関数を用いて、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の両方を連動させて調整してもよい。
更に、処理回路10は、乗員Mの入力情報に応じた調整後の乗員Mが適切と感じるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を学習して、学習結果を記憶装置14に格納する。そして、処理回路10は、学習後の次回以降のリクライニング時には、学習した乗員Mが適切と感じるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に調整することにより、乗員Mの嗜好や後頭部形状を反映したヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に調整できるので、乗員Mの違和感を低減することができる。
(ヘッドレストの調整方法)
次に、図10のフローチャートを参照しながら、本発明の実施形態に係るヘッドレスト3の調整方法の一例を説明する。
ステップS1において、モード選択スイッチ25が、乗員の活動モードを選択する選択データを入力情報として受け付ける。ここでは、乗員の活動モードとして「緊張モード」、緊張モードより活動量が低い「リラックスモード」、リラックスモードより活動量が低い「睡眠モード」のいずれかを選択するものとする。また、入力装置24が、乗員によるシートクッション1のスライド位置やシートバック角度θ1等のシート位置を調整する調整データを入力情報として受け付ける。
ステップS2において、処理回路10が、自動運転スイッチ26の状態に基づき、自動運転スイッチ26がオンかオフかを判定する。自動運転スイッチ26がオフと判定された場合には、手動運転中であるため、処理を完了する。一方、自動運転スイッチ26がオンと判定された場合には、自動運転中であるため、ステップS3に移行する。
ステップS3において、ヘッドレストセンサ21は、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を検出する。更に、シートスライドセンサ22は、シートクッション1のスライド位置を検出する。シートバックセンサ23は、シートバック角度θ1を検出する。
ステップS4において、ステップS1でモード選択スイッチ25により乗員の活動モードが選択された場合、処理回路10は、選択された活動モードに応じて、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。或いは、ステップS1でシート位置が調整された場合、処理回路10は、調整されたシート位置に応じて、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。
ステップS5において、ステップS4のヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の調整後の所定時間以内に、入力装置24が乗員によるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する調整データを入力情報として受け付けた否かを判定する。ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する調整データを入力情報として受け付けなかったと判定された場合には処理を完了する。
一方、ステップS5でヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する調整データを入力情報として受け付けたと判定された場合には、ステップS6に移行する。ステップS6において、処理回路10は、乗員の操作に応じて、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。その後、ステップS7において、調整後のヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を乗員に適するものとして学習し、学習結果を記憶装置14に記憶する。その後、次回以降の車両用シート(1,2,3)のリクライニング時には、記憶装置14に記憶された学習結果に基づき、乗員に適したヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に予め調整してもよい。
次に、図10のステップS4におけるヘッドレスト3の調整処理の一例を図11のフローチャートを参照しながら説明する。ステップS11において、処理回路10は、ステップS1でシート位置が調整されたか否(モード選択スイッチ25により活動モードが選択された)かを判定する。シート位置が調整されたと判定された場合、ステップS12に移行し、調整されたシート位置に応じてヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。
一方、ステップS11でシート位置が調整されておらず、モード選択スイッチ25により活動モードが選択されたと判定された場合、ステップS13に移行する。ステップS13において、処理回路10は、選択された活動モードが「緊張モード」であるか否かを判定する。「緊張モード」であると判定された場合、ステップS14に移行する。ステップS14において、処理回路10は、「緊張モード」に応じて、図9中の位置Aの関係となるようにヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。
一方、ステップS13において「緊張モード」ではないと判定された場合、ステップS15に移行し、処理回路10は、選択された活動モードが「リラックスモード」であるか否かを判定する。「リラックスモード」であると判定された場合、ステップS16に移行する。ステップS16において、処理回路10は、「リラックスモード」に応じて、図9中の位置Bの関係となるようにヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。
一方、ステップS15において「リラックスモード」ではなく、選択された活動モードが「睡眠モード」であると判定された場合、ステップS17に移行する。ステップS17において、処理回路10は、「睡眠モード」に応じて、図9中の位置Cの関係となるようにヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。
本発明の実施形態によれば、シートバック角度θ1を検出し、検出されたシートバック角度θ1に基づきヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。これにより、支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整後のヘッドレスト3により乗員Mの頭部を適切に支持又は保持することができるため、乗員Mに快適な乗車空間を提供することができる。更に、自動的に適切にヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整することができるので、乗員Mの手動によるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の細かい調整作業は不要となる。
更に、自動運転中に、乗員Mの活動モードに応じてシートバック角度θ1を設定し、設定されたシートバック角度θ1に応じてヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する。これにより、自動運転中に、乗員の活動モードに応じて調整されたヘッドレスト3が乗員の頭部を適切に支持又は保持することができるため、自動運転中において乗員に快適な乗車空間を提供することができる。
更に、自動運転中はハンズオフのため、手動運転中にステアリングホイールを把持する場合よりも乗員Mの姿勢の保持が難しく、姿勢が崩れやすい。これに対して、自動運転中にヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整することにより、自動運転中のハンズオフにおいても乗員Mの頭部を適切に支持又は保持できるため、乗員Mの姿勢の支持につながり、ひいては快適な自動運転空間の提供につながる。
更に、自動運転中はアイズオフのため、乗員Mが予期しない挙動が発生し、鞭打ち等が発生することが予想される。これに対して、自動運転中にヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整することにより、乗員Mの頭部を適切に支持又は保持することができ、頭部がヘッドレスト3に常に接触する状態にもできる。このように、乗員Mの頭部の拘束性を高めることができるので、乗員Mが予期しない挙動が発生した場合でも、鞭打ち等の発生を抑制し、頭部及び頸部を有効に保護することができる。
更に、乗員の嗜好や後頭部形状の個人差等により、乗員がヘッドレスト3を調整する入力を行った場合には、入力した調整データを検出し、検出した調整データに応じてヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を乗員が適切と感じる状態へ調整する。これにより、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に乗員の意図を反映することができる為、より快適な乗車空間を提供することができる。また、乗員による微調整が必要な場合に、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の一方の調整データを入力情報すれば、予め決められた関係式に基づいてヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の他方も自動的に調整することができるので、乗員は簡単な1自由度の入力操作を行うだけで乗員の意図を反映することができる。
更に、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を、図9に矢印線で示すような予め決められた関係式(関数)に基づいて調整することにより、ヘッドレスト3の幅広い前後位置及び傾斜角θ2に対応して適切にヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整することができる。
更に、乗員の入力操作による乗員が適切と感じるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を学習し、記憶する。そして、学習後のシートリクライニング時に、学習されたヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に調整する。これにより、乗員が適切と感じるヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2に自動的に調整できるので、乗員の頭部の支持や保持を、乗員の意向に沿って繰り返し提供することができる。
更に、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2を調整する際には、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2のそれぞれの動作開始タイミング及び動作終了タイミングを一致させてもよい。即ち、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2のそれぞれの動作開始タイミングを一致させてもよく、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2のそれぞれの動作終了タイミングを一致させてもよい。これにより、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2のいずれか一方に偏って変化することを抑制することができ、ヘッドレスト3の支持面の前後位置及び傾斜角θ2の調整動作が乗員に与える違和感を軽減することができる。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
本発明の実施形態においては、乗員の活動モードとして「緊張モード」、緊張モードより活動状態が低い「リラックスモード」、リラックスモードより活動状態が低い「睡眠モード」の3種類を選択する場合を例示したが、3種類に限定されない。即ち、例示した「緊張モード」、「リラックスモード」、「睡眠モード」以外の他の種類の活動モードに分類してもよく、2種類以下又は4種類以上の活動モードに分類してもよい。例えば、車室内の天井にプロジェクタで映像を投影することにより映画を見る場合には、シートバック角度θ1を「睡眠モード」の場合よりも小さくするとともに、乗員が天井を見易いように、ヘッドレスト3の支持面の傾斜角θ2をシートバック角度θ1より小さく調整してもよい。
本発明の実施形態においては、ヘッドレスト3が、手動運転中の運転席となる車両用シート(1,2,3)に搭載された場合を例示したが、助手席及び後方の車両用シートに搭載されていてもよい。
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。