以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る乗員保護装置の概略構成を示す図である。図1に示す乗員保護装置11は、乗員1が着座するシートクッション10の背もたれを構成する、手動操作式のシートバック15と、シートバック15の上端部に支持されたヘッドレスト18とを備えている。シートバック15内の下部には、シートバック15のリクライニング角度(図1において鉛直方向に対してシートバック15が傾斜している角度θR)を検出するためのリクライニング角度検出センサ102が設けられている。さらに、シートバック15の車両前方側には、シートクッション10に着座した乗員1の背部からシートバック15に加わる圧力を検出するシートバック圧力検出センサ103が設けられている。なお、リクライニング角度の検出には、例えば、ホール素子、加速度センサ、ポテンショメータ、又はロータリーエンコーダ等を使用できる。また、シートバック圧力検出センサ103として、シートバック15の車両前方側の全面にわたって配置したシート状の圧力センサシートを用いることができる。
リクライニング角度検出センサ102及びシートバック圧力検出センサ103は、検出されたリクライニング角度及びシートバック圧力に応じた検出信号を、それぞれリクライニング角度検出信号及びシートバック圧力検出信号として、後述する電子制御ユニットECU(Electronic Control Unit)100に出力する。また、表示装置110には、例えば、乗員1への所定の警報等が可視表示される。なお、図1において、着座している乗員1の後頭部とヘッドレスト18の前面部(車両の前進方向の最前面)との水平方向の距離Lがバックセット量であり、シートバック15のリクライニング角度が変化したことにより、シートバック15の上端部に支持されたヘッドレスト(H/R)18が移動する移動量がMであり、リクライニング角度が適正になったときの頭部とヘッドレスト間の距離Sがバックセット設定量である。
バックセット量は、その値が小さいほど、後突時などに乗員の頭部の拘束性が高まるが、一方で、乗員の頭部とヘッドレストとの距離が小さいため乗員にとって煩わしいものとなる。また、バックセット量が大きいほど、乗員にとって快適なものとなるが、一方で、後突時などの乗員の頭部の拘束性が低くなる。そこで、乗員の頭部の拘束性と乗員にとっての快適性とのバランスを考慮した適正値を「バックセット設定値(目標値)」として予め定めておく。バックセット設定値は、乗員1の頸椎保護に関する安全要件等に基づいて設定され、例えば、35mmとすることができる。
図2は、乗員保護装置11におけるリクライニング角度の検出部を含むリクライニング機構の概略構成を示す図である。乗員保護装置11における手動式のリクライニング機構(リクライナともいう)は、例えば、一般的な遊星歯車機構を利用したシートバックの角度調整機構であり、シートバック15のフレーム30側において、センターシャフト(回転軸)27に取付けられた外歯ギヤ(不図示)と、シートクッション10のフレーム40側に形成した内歯ギヤ(不図示)とを有し、図示しないカム機構により外歯ギヤと内歯ギヤとを噛合させることにより、シートバック15を所定のリクライニング角度にロックする構成になっている。
センターシャフト27には、その中心と略一致するように渦巻き形状のスプリング25が取付けられている。このスプリング25の一端がシートクッション10側に係止され、他端がシートバック15側に係止されることで、スプリング25の弾性復元力によりシートクッション10に対してシートバック15を所定方向へ倒するように付勢力が作用する。また、センターシャフト27の軸端部には、ケース23とレバー21aとを備えたリクライニング角度検出センサ102が設けられている。ケース23は、フレーム40に固定され、ケース23のリクライナ側の軸端は、センターシャフト27の軸方向の回転と非同期にセンターシャフト27に摺動可能に支持されている。また、レバー21aは、ケース23の中心軸(図中、一点鎖線で示す)を基準にして回転可能な構造になっており、レバー21aの先端側には、ブラケット24に設けたガイド孔(不図示)に貫入される棒状突起部28aが設けられている。この棒状突起部28aを介してレバー21aとフレーム30とが連結され、フレーム30の回転に伴ってレバー21aも回転する。
リクライニング角度検出センサ102は、上述したように鉛直方向に対するシートバック15の傾斜角度θRを検出するためのセンサである。ケース23は、センターシャフト27の回転と同期せず、レバー21aの回転は、フレーム30の角度(すなわち、リクライニング角度)と同期する。ここでは、ケース23の内部に、レバー21aと同軸に回転する永久磁石(N極とS極とからなる)と、その永久磁石と所定距離、離間して対向するホール素子とが配置され、これらがリクライニング角度検出センサ(交番検知タイプ角度センサ)102を構成している。永久磁石は、レバー21aの一部を構成する回転軸の一方端に固定され、その回転軸の他方端がケース23の外部に突出して、レバー21aに接続されている。そして、フレーム30と同期してレバー21aが回転すると永久磁石も回転し、その永久磁石のN極とS極による交番磁界をホール素子が検知することによって、リクライニング角度がケース23の中心軸を基準に検出される。なお、レバー21aは、単位角度あたりの変化量が大きいので、リクライニング角度の検出精度を向上できる。
図3は、第1の実施形態に係る乗員保護装置の制御系の構成を示すブロック図である。図3において、電子制御ユニットECU100は、乗員保護装置11全体の制御を司る中央制御部(CPU:Central Processing Unit)101、オペレーティングシステム(OS)等の基本プログラムや後述する警報を発するため制御(便宜上、シートバック制御ともいう)手順のプログラム等が格納された読み取り専用メモリ(ROM)120、及びシートバック制御等に用いる各種データを一時的に記憶するための随時読出し/書込みメモリ(RAM)121を備える。また、ROM120には、乗員の頭部とヘッドレストとのバックセットの適正値であるバックセット設定値が記憶されている。さらに、ECU100は、CPU101からの信号を受けて、表示装置110を制御するための表示制御回路117を有する。
CPU101には、不図示の入力ポートを介して、上述したリクライニング角度検出センサ102、及びシートバック圧力検出センサ103での検出信号が入力されるとともに、CPU101がシートバック制御に入る前提条件として、乗員1がシートベルトを装着しているかどうかを判定するため、シートベルト装着スイッチ106のON/OFF信号が入力される。シートベルト装着スイッチ106は、例えば、シートベルトのバックル部分に配置され、CPU101は、シートベルトに配したタングプレートのバックルへの嵌合/抜去に対応したON/OFF信号をもとに、シートベルトの装着の有無を判定する。
次に、第1の実施形態に係る乗員保護装置におけるシートバック制御について詳細に説明する。図4は、第1の実施形態に係る乗員保護装置におけるシートバック制御の手順を示すフローチャートである。図4のステップS101において、CPU101は、シートベルト装着スイッチ106のON/OFF状態を判定する。シートベルト装着スイッチ106がONであれば、乗員1はシートベルトを装着しているので、シートバック制御に移行する。CPU101は、最初にステップS103においてシートバック圧力検出センサ103からの検出信号を取り込み、シートバック圧力の値を取得する。続くステップS105では、CPU101は、リクライニング角度検出センサ102からの検出信号を取り込み、シートバック15の傾斜角であるリクライニング角度を取得する。
図5は、乗員1がシート10に着座した際にシートバック15に加わる圧力(シートバック圧力)と、そのときの乗員の胴体の傾斜角であるトルソ後傾角との関係を、リクライニング角度毎に定めて示す図である。すなわち、図5は、乗員1がシート10に着座した際のシートバック圧力値及びトルソ後傾角を、複数のリクライニング角度において計測して、それらの関係を定めたものである。図5から理解されるように、トルソ後傾角は、シートバック圧力が設定値Psよりも小さい領域では、ほぼ一定であるが、シートバック圧力が設定値Ps以上の領域では、シートバック圧力の増加に伴って大きくなる。また、シートバック圧力が設定値Ps以上の領域において、トルソ後傾角は、同一のシートバック圧力に対してリクライニング角度が大きくなるに従って大きくなる。なお、トルソ後傾角は、図1に示すように、乗員1がシートに着座した際の垂直線に対する乗員の胴体中心線の傾斜角θTであり、着座している乗員1の重心位置であるヒップポイントHを中心とする角度である。
ステップS107において、CPU101は、上記ステップS103で取得したシートバック圧力が所定の値(これを、図5に示すように設定値Psとする。)以上か否かを判定する。シートバック圧力が設定値Ps以上であれば、CPU101は、ステップS109で、予め乗員保護装置11のROM120に記憶されている、図5に示すシートバック圧力とトルソ後傾角との関係に基づいて、上記のステップS103,S105で取得したシートバック圧力とリクライニング角度とからトルソ後傾角を推定する。一方、シートバック圧力が設定値Psよりも小さい場合は、トルソ後傾角は、例えば、乗員1の着座状態(着座姿勢)等から一義的に決まる。そのため、シートバック圧力が設定値Psよりも小さい場合には、CPU101は、ステップS109におけるトルソ後傾角の推定は行わない。
続くステップS111では、CPU101は、上記のステップS109で推定されたトルソ後傾角、あるいは一義的に求まったトルソ後傾角と、リクライニング角度とからバックセット量を推定する。バックセット量の推定にあたって、例えば、シート構造から定まるシート面からヘッドレスト18の所定位置までの長さ、及び一般的な人体モデルあるいは標準体格のダミーから定まる、シート面から頭部の所定位置までの長さを予め定めておく。そして、これらの長さ、リクライニング角度、及びトルソ後傾角に基づいてバックセットを幾何学的に演算し、演算されたバックセットを現在のバックセット量として推定する。
図6は、リクライニング角度とバックセットとの関係をグラフ化して示す図である。また、図7は、リクライニング角度とバックセットとの関係を模式的に示しており、点Oを中心にシートバック15が傾いたとき、鉛直線41となす角度がリクライニング角度である。したがって、シートバック15が鉛直線41より離れるにつれてリクライニング角度が大きくなる。
ステップS112において、CPU101は、ステップS111で推定したバックセット量(以降において、推定バックセット量ともいう)、又は一義的に求まったトルソ後傾角と、予め定めたバックセットの目標値であるバックセット設定値(図1に示すS)とを対比する。推定バックセット量(Leとする)が、図6において実線で示す範囲(例えば、43mm〜75mm)にあって、バックセット設定値Sよりも大きい場合(Le>S)、図6及び図7に示すリクライニング角度とバックセットとの関係から、バックセットが大きくなるにしたがってリクライニング角度が大きくなるので、推定バックセット量Leに対応するリクライニング角度θeはバックセット設定値Sに対応するリクライニング角度θsよりも大きい(θe>θs)と判定される。このときのLeとθeの関係を、図6及び図7において一点鎖線で示す。よって、θe>θsの場合、CPU101は、ステップS113において、シートバック15を車両の前方側に起こす、すなわち、乗員1の頭部とシートバック15の上端部に設けられたヘッドレスト本体18との水平方向の距離が離れすぎているとして、リクライニング角度を小さくする変更を要すると判断する。
一方、推定バックセット量Leが、図6において実線で示す範囲にあって、バックセット設定値Sよりも小さい場合(Le<S)は、図6及び図7に示すリクライニング角度とバックセットとの関係から、推定バックセット量Leに対応するリクライニング角度θeはバックセット設定値Sに対応するリクライニング角度θsよりも小さい(θe<θs)と判定される。このときのLeとθeの関係を、図6及び図7において二点鎖線で示す。よって、θe<θsの場合、CPU101は、ステップS113において、シートバック15を車両の後方側へ倒す(すなわち、乗員1の頭部とシートバック15の上端部に設けられたヘッドレスト本体18との水平方向の距離が近すぎるとして、リクライニング角度を大きくする)変更を要すると判断する。
なお、推定バックセット量Leがバックセット設定値Sと等しい場合は、現在のシートバック15のリクライニング角度が目標とする角度にある(換言すれば、ヘッドレスト本体18が適正な位置にある)として、ステップS113において、リクライニング角度の変更は不要と判断する。
このようにステップS113において、リクライニング角度の変更が必要と判定された場合には、表示装置110を介した乗員1に対する警報の処理に入る。より具体的には、CPU101は、ステップS115において、警報の内容を可視表示する場合は、予めROM120に記憶させた、その可視表示に対応する画面表示データを選択する。警報を音声あるいは警報音とする場合には、予めROM120に記憶された、その音声あるいは警報音に対応する音声データあるいは警報音データを選択する。そして、ステップS117で、ステップS115における選択にしたがった警報を表示装置110に表示し、あるいは不図示のスピーカより発する。
ここでの可視表示の例としては、ステップS113においてリクライニング角度を小さくする変更を要すると判断した場合は、「シートバック(背凭れ)を戻してください。」等の表示をし、リクライニング角度を大きくする変更を要すると判断した場合には、「シートバック(背凭れ)を倒してください。」等を表示装置110に表示する。また、音声による警報としては、例えば、「後突時にむち打ちになる可能性があります。シートバックを倒してください。」等を不図示のスピーカより音声出力する。
乗員1は、ステップS117での警報によって、その警報時におけるシートバック15のリクライニング角度では、後面衝突時等においてむち打ちの可能性等があり、リクライニング角度を変更しなければならないことを知る。そこで、乗員1は、上記の警報内容にしたがって、手動でシートバック15の角度を変更する。CPU101は、次のステップS119において、リクライニング角度検出センサ102からの検出信号をもとに、乗員1が変更したシートバック15のリクライニング角度が所定の角度、すなわち、バックセット設定値Sに対応するリクライニング角度θsとなったかどうかを判定する。
乗員1による変更後のリクライニング角度がθsとなった場合、シートバック15のリクライニング角度が適正な角度に変更された(着座している乗員1の後頭部とヘッドレスト18の前面部とが適正な距離となった)として、CPU101は、ステップS121で警報をリセットして、本シートバック制御を終了する。しかし、ステップS119において、変更後のシートバック15のリクライニング角度が依然として適正な角度になっていないと判断した場合には、CPU101は、処理をステップS101に戻し、上記と同様の処理を行う。
このように、変更後のシートバック15のリクライニング角度が適正な角度になっていない場合、最初の処理に戻して、再度、シート処理を実行することによって、乗員1に対してシートバック15のリクライニング角度の再変更を促す。また、警報を受けた乗員1が、シートバック15のリクライニング角度を変更せずに着座姿勢を変えたり、座り直したこと等により、シートバック圧力がそれ以前の処理時における圧力と異なる圧力となる場合も想定される。そのような場合、再度、シート処理を実行することで、ステップS113でリクライニング角度の変更が不要と判断されれば、ステップS121で警報をリセットして、本シートバック制御を終了する。
一方、ステップS111で推定されたバックセット量Leが、図6の実線で示す範囲内にない場合は、その推定バックセット量Leに対応するリクライニング角度θeも、図6の実線の範囲内にない。この場合、CPU101は、リクライニング角度が大きすぎる(例えば、図5に示す28°を超えている)か、あるいは小さすぎる(例えば、図5の20°より小さい)として、ステップS112における推定バックセット量Leとバックセット設定値Sとの対比を行わず、直ちにステップS113で、リクライニング角度の変更が必要と判断する。そして、上記の場合と同様、乗員1に対する警報処理を実行する(ステップS115,S117)。
このように、推定バックセット量Leが、図6の実線で示す範囲内にない場合において上記警報を受けた乗員1が、手動でシートバック15の角度を変更し、その変更後のリクライニング角度が、予め定めたリクライニング角度(標準値)θsとなった場合、CPU101は、シートバック15が適正なリクライニング角度となったとして、ステップS121で警報をリセットする。そして、本シートバック制御を終了する。
以上説明したように、第1の実施形態に係る乗員保護装置では、シートバック圧力が設定値以上の場合、そのときのリクライニング角度とトルソ後傾角とに基づいて推定したバックセット量をもとにシートバックのリクライニング角度が適正かどうかを判断し、リクライニング角度が適切でない場合に所定の警報を発する。こうすることで、例えば乗車時に、乗員に対してリクライニング角度の変更が必要であることを促すととも、その警報により、乗員がリクライニング角度を適切な角度に調整した場合、それにより乗員の頭がヘッドレストで支持され、急激な後方移動がなくなるので、後面衝突によりむち打ちとなる可能性を有効に回避できる。
また、アクチュエータによるシートバックの位置調整を行わずに、警報を受けた乗員が自ら手動でシートの位置調整(リクライニング角度の変更)をする構成としたので、乗員保護装置を安価、かつ軽量化できる。
<第2の実施形態>
図8は、本発明の第2の実施形態に係る乗員保護装置の概略構成を示す図である。なお、図8において、図1に示す第1の実施形態に係る乗員保護装置11と同一構成要素には同一符号を付して、ここでは、それらの説明を省略する。図8に示す乗員保護装置211において、シートバック15内の下部に、シートバック15のリクライニング角度(図8において鉛直方向に対してシートバック15が傾斜している角度θR)を検出するためのリクライニング角度検出センサ102が設けられ、シートクッション10内には、着座している乗員1からシートクッション10に加わる体重を検出するシートクッション体重検出センサ108が設けられている。このシートクッション体重検出センサ108は、例えば、シートクッション10の座面下部に所定間隔で埋め込んだ複数の圧力センサからなる。
リクライニング角度検出センサ102及びシートクッション体重検出センサ108は、検出されたリクライニング角度及びシートクッションに加わる体重に応じた検出信号を、それぞれリクライニング角度検出信号及びシートクッション体重検出信号として、電子制御ユニットECU(Electronic Control Unit)200に出力する。また、表示装置110には、例えば、乗員1への所定の警報等が可視表示される。
図9は、乗員保護装置211におけるリクライニング角度の検出部を含むリクライニング機構の概略構成を示す図である。なお、図9において、図2に示す乗員保護装置11におけるリクライニング機構と同一の構成要素には同一の符号を付して、ここでは、それらの説明を省略する。
図9に示す、乗員保護装置211のリクライニング機構において、センターシャフト27の軸端部には、ケース23とレバー21bとを備えてなるリクライニング角度検出センサ102が設けられている。ケース23は、フレーム40に固定されている。レバー21bのリクライナ側の軸端は、センターシャフト27の軸方向の回転とは同期せず、センターシャフト27に摺動可能に支持されている。また、レバー21bは、ケース23の中心軸(図中の一点鎖線)を基準にして回転できる構造になっており、レバー21bの先端側には、ブラケット24に設けたガイド孔29に貫入される棒状突起部28bが設けられている。レバー21bとフレーム30は、棒状突起部28aを介して連結されており、フレーム30の回転に連動してレバー21bも回転する。ケース23は、センターシャフト27の回転と同期せず、レバー21bの回転は、フレーム30の角度(リクライニング角度)と同期する。また、リクライニング角度検出センサ102をリクライナの外側に設けて、リクライニング角度をケース23の中心軸を基準に検出する。
リクライニング角度の検出部を構成する上記のレバー21bについては、図9に示すようにケース23の中心軸からレバー21bの先端部までの距離をレバー長とした場合、レバー21bのレバー長X2の方が、図2に示すレバー21aのレバー長X1よりも短く設定されている。レバー21bは、それよりもレバー長の長いレバー21aに比べてリクライニング角度の検出精度を上げることができ、部品価格の点においても有利となる。なお、図9に示すリクライニング機構におけるリクライニング角度の検出部の構成も、図2に示す、上記第1の実施形態に係るリクライニング角度の検出部と同一であるため、ここでは、それらの説明を省略する。
図10は、第2の実施形態に係る乗員保護装置の制御系の構成を示すブロック図である。なお、図10において、図3に示す第1の実施形態に係る乗員保護装置と同一構成要素には同一符号を付して、それらの説明を省略する。図10に示すように、第2の実施形態に係る乗員保護装置211の中央制御部101には、乗員1がシートベルトを装着しているか否かを判定するため、シートベルト装着スイッチ106のON/OFF信号が入力されるとともに、リクライニング角度検出センサ102、及びシートクッション体重検出センサ108での検出信号が入力される。
次に、第2の実施形態に係る乗員保護装置におけるシートバック制御について詳細に説明する。図11は、第2の実施形態に係る乗員保護装置におけるシートバック制御の手順を示すフローチャートである。図11のステップS201において、CPU101は、シートベルト装着スイッチ106のON/OFF状態を判定する。ステップS201で、シートベルト装着スイッチ106がONと判定されれば、CPU101は、ステップS203においてシートクッション体重検出センサ108からの検出信号を取り込む。そして、続くステップS205で、上記ステップS203で取り込んだシートクッション体重検出センサ108からの検出信号をもとに、シートクッション10における乗員1の体重分布を求め、その体重分布から乗員1のヒップポイントHの位置を推定する。ここでは、例えば、シートクッション10に埋め込んだ複数の圧力センサのうち、周囲の圧力センサに比べて高い圧力値を示す圧力センサの位置を求める。そして、その位置を求めた圧力センサの鉛直線上方の所定位置を、シートクッション10に着座している乗員1のシート座面上での荷重中心点、つまり、乗員1のヒップポイントHと推定する。
ステップS207で、CPU101は、上記ステップS205で推定したヒップポイントHと、シートバック15の回転軸中心との水平距離dを推定する。ここでは、シート全体においてシートバック15の回転軸中心は、シートバック15のリクライニング角度にかかわらず一定の位置にあり、シートクッション10に埋設した複数の圧力センサ各々も、シートバック15の回転軸中心から水平方向に一定の距離にある。そこで、シートバック15の回転軸中心からヒップポイントHまでの水平方向の距離を水平距離dとする。
ステップS209において、CPU101は、リクライニング角度検出センサ102からの検出信号を取り込み、シートバック15の傾斜角であるリクライニング角度を取得する。続くステップS211では、上記推定したシートバック15の回転軸中心からヒップポイントHまでの水平距離dと、シートバック15のリクライニング角度とからトルソ後傾角を推定する。図12に示すように、リクライニング角度が大きくなれば、着座している者は上半身を後傾させてシートバックに凭れるのでトルソ後傾角も大きくなる。そこで、乗員保護装置211では、図13に示す、シートバック15の回転軸中心からヒップポイントHまでの水平距離dと、そのときの乗員1の後傾角であるトルソ後傾角との関係についてリクライニング角度毎に定めたグラフを予めROM120に記憶しておく。図13から理解されるように、トルソ後傾角は、水平距離dが大きくなるにしたがって大きくなる。トルソ後傾角が大きくなる度合いは、リクライニング角度によって異なり、同一の水平距離dに対してリクライニング角度が大きくなるにしたがって大きくなる。CPU101は、図13を参照してトルソ後傾角を推定する。
ステップS213で、CPU101は、上記推定されたトルソ後傾角とリクライニング角度とからバックセット量を推定する。ここでは、上述した第1の実施形態に係る乗員保護装置11におけるバックセット量の推定方法と同様の方法によりバックセット量を推定する。そして、CPU101は、上述した第1の実施形態と同様の方法で、ステップS214において、上記ステップS213で推定したバックセット量(推定バックセット量ともいう)と、予め定めたバックセットの目標値であるバックセット設定値(図8に示すS)とを対比し、続くステップS215において、リクライニング角度の変更が必要か否かを判定する。
ステップS215において、リクライニング角度の変更が必要と判定された場合、CPU101は、ステップS217で、上述した第1の実施形態と同様、予めROM120に記憶された、可視表示に対応する画面表示データ、又は音声あるいは警報音に対応する音声データあるいは警報音データを選択し、ステップS219で、その警報の内容を表示装置110に可視表示、又は音声あるいは警報音として表示装置110に表示する。これにより、乗員1は、その警報表示時点におけるシートバック15のリクライニング角度のままでは、後面衝突時等においてむち打ちの可能性があり、リクライニング角度を変更しなければならないことを知る。
上記の警報を知った乗員1は、その警報にしたがって手動でリクライニング角度を変更する。CPU101は、ステップS221において、リクライニング角度検出センサ102からの検出信号をもとに、乗員1による変更後のシートバック15のリクライニング角度が適正かどうかを判定する。なお、その判定方法は、上述した第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。そして、CPU101は、乗員1によりシートバック15のリクライニング角度が適正な角度に変更されたと判断した場合、ステップS223で警報をリセットして、本シートバック制御を終了する。
一方、CPU101は、ステップS221において、シートバック15のリクライニング角度が適正な範囲にないと判断した場合には、処理をステップS201に戻し、上述した処理と同様の処理を、乗員1がシートバック15のリクライニング角度を変更した後における再度のシートバック制御として実行する。これにより、上記の第1の実施形態と同様、乗員1によるシートバック15のリクライニング角度の再変更を促すことができる。また、警報を受けた乗員1が、シートバック15のリクライニング角度を変更せずに着座姿勢を変えたり、座り直した等により、シートクッション10に加わる乗員1の体重分布が変わったり、あるいはヒップポイントHの位置が変わったことで、ステップS215でリクライニング角度の変更が不要と判断された場合には、ステップS223で警報をリセットして、本シートバック制御を終了する。
このように、第2の実施形態に係る乗員保護装置では、着座している乗員のシートクッションに加わる体重及びその分布から推定したヒップポイント位置、そのヒップポイント位置とリクライナとの距離、及びリクライニング角度からトルソ後傾角を推定し、さらに、これらリクライニング角度とトルソ後傾角とから推定したバックセット量をもとに、シートバックのリクライニング角度が適正かどうかを判断する。そして、リクライニング角度が適切でない場合に所定の警報を発する構成をとる。こうすることで、例えば乗車時、乗員にリクライニング角度の変更が必要であることを知らせ、それにより乗員がリクライニング角度を適切な角度に調整することによって、後面衝突時、乗員の頭がヘッドレストで支持され、急激な後方移動がなくなるので、むち打ちとなる可能性を有効に回避できる。
また、アクチュエータを使用してシートバックの位置調整を行う構成とはせずに、警報を受けた乗員自身が手動でシートの位置調整(リクライニング角度の変更)をするので、乗員保護装置そのものを安価、かつ軽量化できる。
<第3の実施形態>
図14は、本発明の第3の実施形態に係る乗員保護装置の概略構成を示す図である。なお、図14において、図1に示す第1の実施形態に係る乗員保護装置11と同一の構成要素には同一符号を付して、ここでは、それらの説明を省略する。図14に示す乗員保護装置311は、シートバック15内の下部に、シートバック15のリクライニング角度(図14において鉛直方向に対してシートバック15が傾斜している角度θR)を検出するためのリクライニング角度検出センサ102が設けられている。また、ブレーキペダル104は、乗員1がブレーキペダル104を踏んだか否かを検出するためのブレーキペダル踏込み検出センサ105を備えている。さらに、乗員1がリクライニング角度の調整を開始、あるいは停止する際に操作するリクライニング角度調整スイッチ107が、例えば、運転席の操作パネルに設けられている。
リクライニング角度検出センサ102からのリクライニング角度検出信号と、ブレーキペダル踏込み検出センサ105からのブレーキペダルの踏込み検出信号とが電子制御ユニットECU(Electronic Control Unit)300へ送られる。また、リクライニング角度調整スイッチ107からのON/OFF信号がECU300に入力される。表示装置110には、後述する乗員1への警報が可視表示あるいは音声表示される。
図15(a)は、乗員保護装置311におけるリクライニング角度の検出部を含むリクライニング機構の概略構成を示しており、図15(b)は、リクライニング角度の検出部の一部断面図である。なお、図15(a),(b)において、図2に示す乗員保護装置11におけるリクライニング機構と同一の構成要素には同一の符号を付して、ここでは、それらの説明を省略する。
リクライニング角度検出センサ102は、ケース33とピン35とを備えている。ケース33は、フレーム40に固定され、ピン35の先端部は、ブラケット24に設けた孔を貫通して、リクライニング角度検出センサ102に達し、ピン35のクライナ側の軸端は、センターシャフト27の軸方向の回転と非同期にセンターシャフト27に摺動可能に支持されている。また、ピン35は、ケース33の中心軸(図中、一点鎖線で示す)を基準にして回転できる構造になっている。そして、ピン35がブラケット24に支持され、そのブラケット24がフレーム30に接続されているため、フレーム30の回転によりピン35も回転する。よって、ピン35の回転は、フレーム30の角度(すなわち、リクライニング角度)と同期する。なお、ピン35の採用により、図2及び図7に示すリクライニング角度の検出部のブラケットとレバーを一体化でき、部品コストを低減できる。また、図15(a),(b)に示すリクライニング機構におけるリクライニング角度の検出部の構成は、ピン35の一部が永久磁石の回転軸を構成する点を除き、図2に示す、上記第1の実施形態に係るリクライニング角度の検出部と同一であるため、ここでは、それらの説明を省略する。
図16は、第3の実施形態に係る乗員保護装置の制御系の構成を示すブロック図である。なお、図16において、図3に示す第1の実施形態に係る乗員保護装置と同一構成要素には同一符号を付して、それらの説明を省略する。図16に示す第3の実施形態に係る乗員保護装置311の中央制御部101には、乗員1がシートベルトを装着しているか否かを判定するため、シートベルト装着スイッチ(不図示)のON/OFF信号、及びリクライニング角度調整スイッチ107からのON/OFF信号が入力されるとともに、リクライニング角度検出センサ102からのリクライニング角度検出信号、及びブレーキペダル踏込み検出センサ105からのブレーキペダル踏込み検出信号が入力される。
次に、第3の実施形態に係る乗員保護装置におけるシートバック制御について詳細に説明する。図17は、第3の実施形態に係る乗員保護装置311におけるシートバック制御の手順を示すフローチャートである。図17のステップS301において、CPU101は、シートベルト装着スイッチ106のON/OFF状態を判定する。ステップS301で、シートベルト装着スイッチ106がONと判定されれば、CPU101は、ステップS303において、リクライニング角度調整スイッチ107からの信号の有無を判定する。そして、リクライニング角度調整スイッチ107がONとなった場合、CPU101は、ステップS307において、ブレーキペダル踏込み検出センサ105からのブレーキペダル104の踏み込み検出信号の有無を判定する。
第3の実施形態に係る乗員保護装置311では、リクライニング角度調整スイッチ107がONのときのみ、ブレーキペダル104の踏み込みの有無を検出する処理に移行する。こうすることで、乗員1がシートバック15のリクライニング角度を適正にしたいとして、シートバック制御の実行開始を、必要に応じて乗員保護装置311に対して指示できるとともに、停車時等において頻繁にブレーキペダル104を踏み込むたびに、後述する警報が発せられる煩わしさを回避できる。
乗員1がブレーキペダル104を踏むことは、自車両に対する後続車両の追突(後面衝突)の可能性があることを意味する。乗員保護装置311は、そのような追突に備えて、シートバック15の上端部に配置したヘッドレスト18の前面部と乗員1の後頭部とが適正な距離となるように、乗員1が後述する警報を受けてシートバック15のリクライニング角度を変えることで、ヘッドレスト18を適正な位置へ移動させるためのシートバック制御を行う。
CPU101は、ブレーキペダル踏込み検出センサ105からの検出信号を受けて、乗員1がブレーキペダル104を踏み込んだと判定した場合、ステップS309に進んで、リクライニング角度検出センサ102における検出信号をもとに、シートバック15のリクライニング角度を検出する。続くステップS311において、上記ステップで検出されたリクライニング角度をもとにバックセット量を推定する。ここでは、例えば、シート構造から定まるシート面からヘッドレスト18の所定位置までの長さ、及び一般的な人体モデルあるいは標準体格のダミーから定まる、シート面から頭部の所定位置までの長さを予め定めておき、これらの長さ、及びリクライニング角度に基づいてバックセットを幾何学的に演算し、演算されたバックセットを現在のバックセット量として推定する。
CPU101は、ステップS312において、ステップS311で推定したバックセット量(推定バックセット量ともいう)と、予め定めたバックセットの目標値であるバックセット設定値(図14に示すS)とを対比する。そして、CPU101は、ステップS313において、上述した第1の実施形態と同様の方法でリクライニング角度の変更が必要か否かを判定する。
ステップS313において、リクライニング角度の変更が必要と判定された場合、表示装置110による乗員1に対する警報処理に入る。具体的には、ステップS315において、CPU101は、上述した第1の実施形態と同様、警報の内容を可視表示する場合には、予めROM120に記憶させた、その可視表示に対応する画面表示データを選択する。また、警報を音声あるいは警報音とする場合は、ROM120に記憶された、それら音声あるいは警報音に対応する音声データあるいは警報音データを選択する。そして、ステップS317で、上記ステップS315における選択にしたがった警報を表示装置110に表示する。
乗員1は、上記の警報の表示によって、その警報表示時点におけるシートバック15のリクライニング角度では、例えば、後面衝突等された場合、乗員1がむち打ちとなる可能性があり、リクライニング角度を変更しなければならないことを知る。そこで、乗員1は手動でリクライニング角度を変更する。CPU101は、ステップS319において、上述した第1の実施形態と同様、リクライニング角度検出センサ102からの検出信号をもとに、変更後のシートバック15のリクライニング角度が適正であるかどうかを判定する。そして、CPU101は、乗員1によりシートバック15のリクライニング角度が適正な角度に変更されたと判断した場合には、ステップS321で警報をリセットして、本シートバック制御を終了する。
一方、CPU101は、ステップS319において、警報後においてもシートバック15のリクライニング角度が依然として適正な範囲にないと判断した場合には、処理をステップS301に戻し、上記と同様の処理を、乗員1がシートバック15のリクライニング角度を変更した後におけるシートバック制御として実行する。その結果、リクライニング角度が適正になれば、ステップS313において、リクライニング角度の変更は不要と判断する。そして、CPU101は、ステップS321で警報をリセットして、本シートバック制御を終了する。
以上説明したように、第3の実施形態に係る乗員保護装置では、乗員がブレーキペダルを踏み込んだ場合、そのときのシートバックのリクライニング角度からバックセット量を推定し、シートバックのリクライニング角度が適正かどうかを判断して、リクライニング角度が適切でない場合に所定の警報を表示する。この警報によって、乗員がリクライニング角度を適切な角度に調整することで、変更前のシートバックのリクライニング角度での後面衝突の可能性を解消し、乗員がむち打ちとなる可能性を有効に回避できる。
また、アクチュエータによるシートバックの位置調整を行わずに、警報を受けた乗員自身が手動でシートの位置調整をする構成としたことで、乗員保護装置自体を安価、かつ軽量化できる。