JP2019087709A - 窒化物半導体発光素子の製造方法、及び窒化物半導体発光素子 - Google Patents
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つまり、非特許文献1、2の窒化物半導体発光素子は、トンネル接合層にGaInN層を用いると、MOCVD法によって電気抵抗が小さいトンネル接合層を得ることができる。
具体的には、先ず、MOCVD法を実行することができるMOCVD装置を用いてp−GaN層214やトンネル接合層215のp型不純物を高濃度に添加したGaN層215A(以下、p++GaN層215Aという)までを基板の表面に積層して作製する。そして、基板をMOCVD装置の反応炉から取り出して、N2(窒素)とO2(酸素)とを用いてアニール処理してp++GaN層215Aの表面を酸化させる。そして、MBE法を実行することができるMBE装置の反応炉に基板をセットして、n型不純物を高濃度に添加したGaN層215B(以下、n++GaN層215Bという)から後の部分をp++GaN層215Aの表面に積層して形成する。つまり、光吸収ロスを抑制した窒化物半導体発光素子を作る方法とは、MOCVD法と、Mgの表面偏析が少ないMBE法とを用いるハイブリッド成長法である。
このハイブリッド成長法を用いて作製された非特許文献3、4の窒化物半導体発光素子は、p++GaN層215Aとn++GaN層215Bとの界面215Cに極めて高い濃度のO(酸素)(1×1020cm-3以上)が存在する状態を形成し、電流密度7〜10kA/cm2の範囲において1.5×10-4Ωcm2という低い微分抵抗を得ている。
しかし、このハイブリッド成長法は、MOCVD装置の反応炉から取り出した基板をMBE装置の反応炉にセットして窒化物半導体発光素子の再成長を行うことになる。つまり、このハイブリッド成長法は高価な二種類の結晶成長装置(MOCVD装置、及びMBE装置)を用いなければならない。
有機金属気相成長法を用い、基板の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
p型不純物を添加してp型トンネル接合層を形成するp型トンネル接合層形成工程と、
前記p型トンネル接合層形成工程を実行後、前記p型トンネル接合層の表面に活性酸素を供給する活性酸素供給工程と、
前記活性酸素供給工程を実行後の前記p型トンネル接合層の表面に、n型不純物を添加してn型トンネル接合層を形成するn型トンネル接合層形成工程と、
を備えることを特徴とする。
窒化物半導体によって形成されたトンネル接合層を備えた窒化物半導体発光素子であって、
前記トンネル接合層は、
p型不純物が添加されたp型トンネル接合層と、
前記p型トンネル接合層の表面に積層され、n型不純物が添加されたn型トンネル接合層と、
を有し、
前記p型トンネル接合層と前記n型トンネル接合層との界面のO(酸素)の濃度は少なくとも4×1018cm-3以上、かつ1×1019cm-3以下であることを特徴とする。
反応炉内へ供給するキャリアガスをH2からN2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を720℃にする。そして、反応炉内の圧力を20MPaから40MPaにし、NH3の流量を3400sccmから7200sccmにする。そして、反応炉内にTEGa、及びCp2Mgを供給する。
このとき、実施例1、2、及び比較例1、3で、反応炉内に供給するCp2Mgの流量を変化させる。具体的には、実施例1及び比較例1、3のMg/Gaのモル比が2.17×10-3であり、実施例2のMg/Gaのモル比が9.15×10-3である。つまり、実施例2のCp2Mgの流量は実施例1及び比較例1、3のおよそ4倍である。
こうして、4nmの厚みのp++−GaN層15Aを成長させ、p++−GaN層15Aに添加されるMgの濃度が1×1020cm-3以上になるようにする。こうして、p++−GaN層15Aの結晶成長を終了する。そして、反応炉内へのTEGa、及びCp2Mg、及びNH3の供給を停止する。つまり、p型トンネル接合層形成工程では、アクセプタであるMgを1×1020cm-3以上含むp++−GaN層15AをMOCVD法により成長させる。
先ず、MOCVD装置の反応炉から基板9を取り出す。そして、反応炉から取り出した基板9をUVオゾン処理装置内にセットし、基板9の表面に対して表面処理(UVオゾン処理)を行う。具体的には、実施例1、2では空気中でp++−GaN層15Aの表面に対してUV光の照射を15分間行う。また、比較例3では空気中でp++−GaN層15Aの表面に対してUV光の照射を5分間行う。これによりUV光が照射されたp++−GaN層15Aの表面近傍に活性酸素が生成されて、生成された活性酸素がp++−GaN層15Aの表面に供給され、p++−GaN層15Aの表面にO(酸素)を吸着させる。
ここで、活性酸素供給工程を実行する実施例1、2、及び比較例3との比較を行うための比較例1、2の作製手順を説明する。具体的には、比較例1は基板9をMOCVD装置の反応炉から取り出した後、活性酸素供給工程を実行しない。また、比較例2は基板9をMOCVD装置の反応炉から取り出した後、活性酸素供給工程に代えて、O2(酸素)雰囲気中で基板9に対してアニール処理(725℃、5分)を施す。
なお、XPSにおいて、試料の表面に対するX線の入射角度は45°である。このため、図4に示す各試料のグラフは、試料の表面だけでなく、試料の表面より深い位置におけるGa 3dの結合エネルギーも含んでいると考えられる。
また、実施例1、及び比較例1、3の試料の、図4に示すGa 3dの結合エネルギーのグラフのそれぞれをGa−NとGa−Oとに分離した結果を図5(A)〜(C)に示す。Ga 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比は、活性酸素供給工程を実行後において、p++−GaN層15Aの表面を露出した状態での値であり、Ga−Oの強度を示すグラフの面積の値をGa−Nの強度を示すグラフの面積の値で除した値である。
比較例1の試料のGa 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比はおよそ0.06である(図5(A)参照。)。
比較例3の試料のGa 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比はおよそ0.47である(図5(B)参照。)。
実施例1の試料のGa 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比はおよそ2.30である(図5(C)参照。)。
実施例1、2、及び比較例3ではUVオゾン処理装置から基板9を取り出し、アセトン、メタノールで有機洗浄を行う。また、比較例1は基板9をアセトン、メタノールで有機洗浄を行う。また比較例2は基板9にアニール処理を施した後、アセトン、メタノールで有機洗浄を行う。
そして、MOCVD装置の反応炉内に基板9を再びセットする。そして、反応炉内にキャリアガスのH2、及びNの原料であるNH3を供給し、反応炉内の温度を調節して基板9の温度を720℃にする。そして、反応炉内の圧力を40MPa、NH3の流量を7200sccmにする。そして、反応炉内にTEGa、及びSiH4を供給して2nmのn++−GaN層15Bを成長させる。このとき、n++−GaN層15Bに添加されるSiの濃度が2×1020cm-3になるようにTEGa、及びSiH4の流量を調節する。つまり、n型トンネル層形成工程では、ドナーであるSiを2×1020cm-3以上含むn++−GaN層15Bを成長させる。こうして、トンネル接合層15を形成する。
次に、第2n−GaN層16の表面にn−GaNコンタクト層17を積層して結晶成長する。n−GaNコンタクト層17の厚みは10nmである。
そして、反応炉内へのTMGa及びSiH4の供給を停止して結晶成長を終了する。そして、反応炉内へ供給するキャリアガスをH2からN2に切り替える。そして、反応炉内の温度を調節して基板9の温度が400℃以下になった時点で、反応炉内へのNH3の供給を停止する。そして、基板9の温度が室温になった後、反応炉内のパージを行い、基板9を反応炉から取り出す。こうして、図1に示す層構造を有した実施例1、2、及び比較例1〜3の基板9を作成することができる。
ここで、SIMSの測定条件を以下に示す。測定装置:CAMECA IMS−6F、一次イオン種:Cs+、一次加速電圧、5.0kV、検出領域:60μmφである。測定濃度はそれぞれイオン注入した標準試料を用いて較正した。
また、O2(酸素)雰囲気中でのアニール処理(725℃、5分)した比較例2の試料における、トンネル接合層15の界面15C付近のO(酸素)濃度は2×1019cm-3である(図2(B)参照。)。
これに対して、活性酸素供給工程を実行した実施例1、2の試料におけるトンネル接合層15の界面15C(p++−GaN層15Aとn++−GaN層15Bとの界面15C)付近のO(酸素)濃度は、4×1018cm-3以上、1×1019cm-3以下であった(図2(C)、(D)参照。)。具体的には、実施例1の試料におけるトンネル接合層15の界面15C付近のO(酸素)濃度が1×1019cm-3であり、実施例2の試料におけるトンネル接合層15の界面15C付近のO(酸素)濃度が4×1018cm-3であった。これは、p型トンネル接合層形成工程において、実施例1、2とで反応炉内へのCp2Mgの流量を変化させたことによるものである。
つまり、比較例1の試料はトンネル接合層15の界面15CのO(酸素)濃度が最も低く、比較例2の試料はO(酸素)濃度が最も高い。実施例1、2の試料のトンネル接合層15の界面15CのO(酸素)濃度は比較例1より高く、比較例2より低い値である。
また、比較例2の試料はトンネル接合層15を形成する前に形成されたp−AlGaN層13、及びp−GaN層14におけるO(酸素)濃度が高くなっている。つまり、比較例2の試料はO(酸素)がp−AlGaN層13、及びp−GaN層14に大きく拡散している。
比較例1の試料の5kA/cm2における駆動電圧は8.7Vである。
比較例2の試料の5kA/cm2における駆動電圧は8.0Vである。
実施例1の試料(トンネル接合層15の界面15CのO(酸素)濃度が1×1019cm-3)の5kA/cm2における駆動電圧は6.7Vである。
実施例2の試料(トンネル接合層15の界面15CのO(酸素)濃度が4×1018cm-3)の5kA/cm2における駆動電圧は4.9Vである。
実施例1、2の試料は比較例1の試料に比べて駆動電圧が小さい。
また比較例2の試料は、比較例1の試料に比べて駆動電圧が小さくなっているが、実施例1、2の試料に比べて駆動電圧が大きい。これは、比較例2の試料は実施例1、2の試料に比べて基板9側(p−AlGaN層13、及びp−GaN層14側)にO(酸素)が大きく拡散していることが原因と考えられる(図2(B)参照。)。
実施例2の試料の駆動電圧は、GaInNを用いることによって電気抵抗を小さくしたトンネル接合層や、従来の金属によるp電極コンタクト品(すなわち、トンネル接合層を備えない)で得られた駆動電圧と同等の大きさである(図示せず。)。
次に、電流注入が可能な素子に形成された実施例1、及び比較例1、3の試料について電流電圧特性を測定した結果を図6に示す。
図6に示すように、比較例1の試料の5kA/cm2における駆動電圧は8.7Vである。
比較例3の試料の5kA/cm2における駆動電圧は9.0Vである。
実施例1の試料の5kA/cm2における駆動電圧は6.7Vである。
比較例3の試料は、UVオゾン処理を行っているにもかかわらず、UVオゾン処理を行っていない比較例1の試料と同等の大きな駆動電圧である。つまり、比較例1、3の試料のようにGa 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比が0.47以下では5kA/cm2における駆動電圧を小さくする効果はなく、実施例1の試料のように、UVオゾン処理において、p++−GaN層15Aの表面に対してUV光を15分間照射し、Ga 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比を2.30以上に高めることによって5kA/cm2における駆動電圧を小さくできることがわかった。
こうして、p++−GaN層15Aの表面に活性酸素を供給する活性酸素供給工程を実行することで、バンドギャップの大きいGaNであっても極めて電気抵抗が小さいトンネル接合層15が形成できることがわかった。
つまり、UVオゾン処理によって発生する活性酸素によってp++−GaN層15Aの表面を酸化処理することは駆動電圧の低減に有効であることがわかった。これにより、本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法は従来困難であったMOCVD法のみによって、電気抵抗が小さいトンネル接合層15を形成できることがわかった。
(1)実施例1、2では、トンネル接合層の裏面側は一般的な青色LED構造であるが、これに限らず、高電流密度領域における電圧降下が大きく改善されることから、端面レーザダイオードや、第1n−GaN層の裏面側に、多層膜反射鏡を設けた面発光レーザ構造としても良い。
(2)実施例1、2では、p型不純物としてMgを用いているが、これに限らず、p型不純物である、Zn,Be、Ca、Sr、及びBa等であっても良い。
(3)実施例1、2では、n型不純物としてSiを用いているが、これに限らず、n型不純物である、Ge、Te等であっても良い。
(4)実施例1、2では、GaInN/GaN5重量子井戸活性層の表面にp−AlGaN層を積層して形成しているが、これに限らず、GaInN量子井戸活性層の表面にp−AlGaN層を積層して形成しなくても良い。
(5)実施例1、2では、サファイア基板を用いているが、これに限らず、窒化ガリウム基板やAlN基板等の他の基板を用いても良い。
(6)実施例1、2では、トンネル接合層のp++−GaN層の厚みを4nmとしているが、これに限らず、トンネル接合層のp++−GaN層の厚みを4nmより小さくしても良く、4nmより大きくしても良い。
(7)実施例1、2では、トンネル接合層のn++−GaN層の厚みを2nmとしているが、これに限らず、トンネル接合層のn++−GaN層の厚みを2nmより小さくしても良く、2nmより大きくしても良い。
(8)実施例1、2では、トンネル接合層にGaNを用いているが、活性層の発光波長の長さに応じて、GaInNやAlGaNをトンネル接合層の材料として用いても良い。
(9)実施例1、2では、UVオゾン処理において、p++−GaN層の表面に対してUV光を15分間照射しているが、UV光を15分以上照射してもよい。
15…トンネル接合層
15A…p++−GaN層(p型トンネル接合層)
15B…n++−GaN層(n型トンネル接合層)
15C…界面
Claims (4)
- 有機金属気相成長法を用い、基板の表面に窒化物半導体を用いたトンネル接合層を形成する窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
p型不純物を添加してp型トンネル接合層を形成するp型トンネル接合層形成工程と、
前記p型トンネル接合層形成工程を実行後、前記p型トンネル接合層の表面に活性酸素を供給する活性酸素供給工程と、
前記活性酸素供給工程を実行後の前記p型トンネル接合層の表面に、n型不純物を添加してn型トンネル接合層を形成するn型トンネル接合層形成工程と、
を備えることを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法。 - 前記活性酸素供給工程は、前記p型トンネル接合層の表面をUVオゾン処理することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 前記活性酸素供給工程を実行後において、前記p型トンネル接合層の表面を露出した状態でのGa 3dの結合エネルギーにおけるGa−O/Ga−Nの強度比が2.30以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子の製造方法。
- 窒化物半導体によって形成されたトンネル接合層を備えた窒化物半導体発光素子であって、
前記トンネル接合層は、
p型不純物が添加されたp型トンネル接合層と、
前記p型トンネル接合層の表面に積層され、n型不純物が添加されたn型トンネル接合層と、
を有し、
前記p型トンネル接合層と前記n型トンネル接合層との界面のO(酸素)の濃度は少なくとも4×1018cm-3以上、かつ1×1019cm-3以下であることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
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