JP2019085468A - アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法 - Google Patents

アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を低減することができるアルミニウム用熱間圧延油、この熱間圧延油を含むアルミニウム用熱間圧延クーラント及びこのクーラントを用いて行うアルミニウム圧延板の製造方法を提供する。【解決手段】アルミニウム用熱間圧延油は、50〜65質量%の鉱油と、0.70〜5.0質量%の非イオン性乳化剤と、を含有し、残部が天然油脂、合成エステル及び脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上の油性剤から構成されている。非イオン性乳化剤は、脱イオン水を溶媒とする濃度1.0質量%の水溶液における曇点が65〜100℃となり、かつ、脱イオン水を溶媒とする濃度1000質量ppmの水溶液における表面張力が27〜32mN/mとなる特性を有している。【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム用熱間圧延油、アルミニウム用熱間圧延クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法に関する。
アルミニウム材(アルミニウム及びアルミニウム合金を含む。以下同じ。)の熱間圧延においては、圧延ロールとアルミニウム材との潤滑性の確保や、圧延ロール及びアルミニウム材の冷却等を目的として、アルミニウム用熱間圧延クーラントが使用されている。クーラントは、通常、アルミニウム用熱間圧延油が水中に分散された、水中油滴型のエマルションである。また、熱間圧延油中には、水中に熱間圧延油の油滴を形成するための乳化剤が含まれている。
アルミニウム材の熱間圧延においては、熱間圧延機におけるタンク内や、タンクから吐出された後圧延ロールに到達するまでの間にクーラントの温度が上昇する。クーラントの温度が上昇すると、クーラント中の油滴が合一し、熱間圧延油と水との分離や熱間圧延油の浮上が起こりやすくなる。その結果、クーラント中における熱間圧延油の濃度が低下し、プレートアウト量、つまり、圧延ロールとクーラントとが接触した後に圧延ロールの表面に付着する熱間圧延油の量の減少を招く。そして、圧延ロールの表面に付着する熱間圧延油の量が不足すると、圧延ロールとアルミニウム材との潤滑性が低下するおそれがある。
かかる問題を回避するためには、クーラントの乳化安定性を高くし、熱間圧延油の油滴同士の合一を抑制することが好ましい。しかし、クーラントの乳化安定性が高くなると、熱間圧延の際にクーラントが解乳化しにくくなる。そのため、この場合にもプレートアウト量が低下し、圧延ロールとアルミニウム材との潤滑性の低下を招くおそれがある。従って、クーラントには、熱間圧延油の油滴同士の合一を抑制し、かつ、熱間圧延の際に容易に解乳化するように、適度に高い乳化安定性が求められる。
クーラントの乳化安定性を前述した範囲に調整するため、特許文献1には、イオン性乳化剤としてトリエタノールアミンと脂肪酸とからなる有機せっけんを含有し、かつ、非イオン性乳化剤としてポリオキシエチレングリコール型非イオン界面活性剤を含有する熱間圧延油が記載されている。
特許第2899224号
しかし、特許文献1の熱間圧延油を用いて熱間圧延を行う場合、圧延ロールとアルミニウム材との間に形成される油膜の厚みにむらが生じやすく、油膜の厚みの薄い部分が局所的に形成されやすい。その結果、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が大きくなり、圧延後におけるアルミニウム材の表面品質の悪化を招くおそれがある。
また、従来の熱間圧延油においては、前述したようにクーラントの乳化安定性を適度に高くしつつ、油膜の厚みのむらを低減することは困難であった。それ故、これらの特性を兼ね備え、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦をより低減することができる熱間圧延油が望まれていた。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を低減することができるアルミニウム用熱間圧延油、この熱間圧延油を含むアルミニウム用熱間圧延クーラント及びこのクーラントを用いて行うアルミニウム圧延板の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、50〜65質量%の鉱油と、
0.70〜5.0質量%の非イオン性乳化剤と、を含有し、
残部が天然油脂、合成エステル及び脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上の油性剤からなり、
前記非イオン性乳化剤は、脱イオン水を溶媒とする水溶液の曇点を65〜100℃にすることができ、かつ、前記水溶液の表面張力を27〜32mN/mにすることができる特性を有している、
アルミニウム用熱間圧延油にある。
本発明の他の態様は、前記の態様のアルミニウム用熱間圧延油が水中に分散されたアルミニウム用熱間圧延クーラントであって、
25℃における導電率が1000μS/cm以下であり、
前記アルミニウム用熱間圧延油の含有量が3〜10体積%であり、
体積基準の粒度分布に基づく前記アルミニウム用熱間圧延油の油滴のメジアン径が1〜7μmである、
アルミニウム用熱間圧延クーラントにある。
本発明の更に他の態様は、前記の態様のアルミニウム用熱間圧延クーラントを用いてアルミニウム材の熱間圧延を行う、アルミニウム圧延板の製造方法にある。
前記アルミニウム用熱間圧延油(以下、「熱間圧延油」という。)中には、前記特定の範囲の鉱油、非イオン性乳化剤及び油性剤が含まれている。また、非イオン性乳化剤は、脱イオン水を溶媒とする水溶液における曇点及び表面張力をそれぞれ前記特定の範囲にすることができる特性を有している。前記アルミニウム用熱間圧延油は、かかる特性を備えた非イオン性乳化剤を使用することにより、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を低減することができる。
即ち、前記非イオン性乳化剤は、前記水溶液の曇点を65〜100℃にすることができる特性を有するため、熱間圧延機のタンク内等において前記アルミニウム用熱間圧延クーラント(以下、「クーラント」という。)の温度が上昇した際に、クーラント中の油滴の合一を抑制することができる。その結果、圧延ロールに到達するまでの間にクーラント中の熱間圧延油の濃度が減少することを抑制し、ひいてはプレートアウト量の減少を抑制することができる。更に、前記非イオン性乳化剤は、圧延ロールとの接触によってクーラントを容易に解乳化することができる。このように、前記非イオン性乳化剤を使用することにより、クーラントの乳化安定性を適度に高めることができる。
また、前記非イオン性乳化剤は、前記水溶液の表面張力を27〜32mN/mにすることができる特性を有するため、クーラント中の油滴の過度の微細化を抑制することができる。これにより、プレートアウト量の減少を抑制することができる。また、前記非イオン性乳化剤は、クーラントの表面張力を適度に低下させ、クーラントを圧延ロールの表面に濡れ拡がりやすくすることができる。その結果、圧延ロールの表面に接触するクーラントの量の偏りを低減し、ひいては圧延ロールの表面に形成される油膜の偏りを低減することができる。
更に、クーラントが圧延ロールの表面に容易に濡れ拡がることにより、クーラント中の水分が圧延ロールとの接触によって速やかに蒸発し、圧延ロールの表面に効率よく熱間圧延油を付着させることができる。
従って、前記熱間圧延油中に前記の特性を備えた非イオン性乳化剤を添加することにより、クーラントの乳化安定性を適度に高め、かつ、表面張力を適度に低下させることができる。その結果、プレートアウト量、つまり、圧延ロールの表面に付着する熱間圧延油の量を十分に多くすることができる。更に、前記熱間圧延油によれば、クーラントの濡れ性を向上させ、圧延ロールの表面に形成される油膜の厚みの偏りを抑制することができる。そして、これらの効果が相乗的に作用することにより、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を低減することができる。
前記クーラントは、前記熱間圧延油が水中に分散されたエマルションである。前記クーラントは、前記特定の範囲の導電率を有するとともに、前記クーラント中の熱間圧延油の含有量及び熱間圧延油の油滴の体積平均粒径は、それぞれ、前記特定の範囲内にある。前記クーラントは、かかる構成を有することにより、アルミニウムの熱間圧延用として好適なものとなる。
実施例における、潤滑性評価のために実施した熱間圧延の要部を示す側面図である。
前記アルミニウム用熱間圧延油における各成分の限定理由について説明する。
・鉱油:50〜65質量%
前記熱間圧延油中には、基油としての鉱油が含まれている。鉱油としては、未精製の鉱油及び精製鉱油から選択した1種または2種以上の鉱油を使用することができる。鉱油の含有量を前記特定の範囲とすることにより、熱間圧延油の材料コストの上昇を抑制しつつクーラントの乳化安定性を適正な範囲にすることができる。
鉱油の含有量が50質量%未満の場合には、熱間圧延油中に含まれる他の成分の含有量が多くなるため、材料コストの増大を招くおそれがある。また、かかる熱間圧延油を用いてアルミニウム圧延板を作製した場合には、アルミニウム圧延板の製造コストの増大をまねくおそれもある。
鉱油の含有量が65質量%を超える場合には、熱間圧延油の所要HLB値、つまり、クーラントにした場合に最適な乳化状態となるHLB値と、非イオン性乳化剤のHLB値との差が大きくなり、乳化安定性の低下を招くおそれがある。その結果、クーラント中において油滴の合一が起こりやすくなり、熱間圧延油の濃度の減少を招くおそれがある。
鉱油としては、精製鉱油を使用することが好ましい。精製鉱油は未精製の鉱油に比べて流動点が低く、低温環境において固化しにくい。そのため、例えば熱間圧延油を冬季の屋外タンク等の低温環境で貯蔵する場合に、タンク内での熱間圧延油の凍結を抑制し、熱間圧延油の取り扱い性をより向上させることができる。
精製鉱油としては、例えば、ナフテン系精製鉱油、パラフィン系精製鉱油及び芳香族系精製鉱油等を使用することができる。より具体的には、精製鉱油としては、例えば、SUN40N、SUN100N、SUN500N、SUN2400N、SUNPAR(登録商標)110、SUNPAR115、SUNPAR150(以上、日本サン石油株式会社);SNH−95、SNH−220(以上、三共油化工業株式会社)、NCL−100、NCL−210(以上、谷口石油株式会社);E.P.X−1(富士興産株式会社)等を使用することができる。
・非イオン性乳化剤:0.70〜5.0質量%
前記熱間圧延油中には、0.70〜5.0質量%の非イオン性乳化剤が含まれている。非イオン性乳化剤の含有量を0.70質量%以上とすることにより、クーラントの乳化安定性を適度に高めるとともに、クーラントの表面張力を適度に低下させることができる。クーラントの乳化安定性及び表面張力をより好適な範囲にする観点からは、非イオン性乳化剤の含有量を0.90質量%以上とすることが好ましい。
非イオン性乳化剤の含有量が0.70質量%未満の場合には、乳化能が不十分となるため、クーラントの乳化安定性の低下を招くおそれがある。また、この場合には、クーラントの表面張力が高くなり、圧延ロールに対する濡れ性が低下するおそれもある。これらの結果、プレートアウト量が低下し、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦の増大を招くおそれがある。
また、非イオン性乳化剤の含有量を5.0質量%以下とすることにより、クーラントの乳化安定性が過度に高くなることを回避し、圧延ロールと接触した際にクーラントを容易に解乳化させることができる。圧延ロールと接触した際にクーラントをより解乳化しやすくする観点からは、非イオン性乳化剤の含有量を4.0質量%以下とすることが好ましい。
非イオン性乳化剤の含有量が5.0質量%を超える場合には、乳化能が過度に高くなるため、圧延ロールと接触した際のクーラントの解乳化が起こりにくくなる。また、この場合には、クーラント中の油滴が微細化しやすくなる。これらの結果、プレートアウト量が低下し、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦の増大を招くおそれがある。
また、非イオン性乳化剤は、脱イオン水を溶媒とする水溶液の曇点を65〜100℃とし、かつ、表面張力を27〜32mN/mとすることができる特性を有している。
前記水溶液における曇点が65℃以上となる非イオン性乳化剤は、熱間圧延機のタンク内等において前記クーラントの温度が上昇した際に、クーラント中の油滴の合一を抑制することができる。これにより、熱間圧延機のタンク内等におけるクーラント中における熱間圧延油の濃度の低下を抑制することができる。油滴の合一を抑制する効果をより高める観点からは、前記水溶液における曇点が75℃以上となる非イオン性乳化剤を使用することが好ましい。
前記水溶液における曇点が65℃未満となる非イオン性乳化剤を用いた場合には、クーラント中の油滴の合一を抑制する効果が低くなり、クーラント中における熱間圧延油の濃度が低下しやすくなる。その結果、プレートアウト量が低下し、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦の増大を招くおそれがある。
また、前記水溶液における曇点が100℃以下となる非イオン性乳化剤は、クーラントと圧延ロールとが接触した際に、クーラント中の油滴を容易に解乳化することができる。これにより、プレートアウト量、つまり、クーラントと圧延ロールとが接触した際に圧延ロールの表面に付着する熱間圧延油の量を多くすることができる。
前記水溶液における曇点が100℃を超える非イオン性乳化剤を用いた場合には、圧延ロールと接触した際にクーラントの解乳化が起こりにくくなるおそれがある。その結果、プレートアウト量が低下し、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦の増大を招くおそれがある。
前記の曇点は、以下の方法により測定することができる。まず、脱イオン水と非イオン性乳化剤との合計質量に対して1.0質量%の非イオン性乳化剤を含む水溶液を作製する。この水溶液の温度を20℃にした後、温度を徐々に上昇させながら水溶液の外観を目視観察し、水溶液が白濁し始めた時点の温度を前記の曇点とすることができる。なお、脱イオン水とは、脱イオン処理が施された、25℃における導電率が10μS/cm以下の水をいう。脱イオン処理としては、例えば、逆浸透膜によるろ過処理や、イオン交換樹脂や電気再生式イオン交換装置を用いたイオン交換処理を採用することができる。
前記特定の水溶液における表面張力が32mN/m以下となる非イオン性乳化剤は、クーラントの表面張力を適度に低下させ、圧延ロールの表面に対するクーラントの濡れ性を向上させることができる。これにより、圧延ロールとアルミニウム材との間に形成される油膜の厚みのむらを低減するとともに、圧延ロールの表面に効率的に熱間圧延油を付着させることができる。これらの作用効果をより高める観点からは、前記特定の水溶液における表面張力を31mN/m以下とすることが好ましい。
前記特定の水溶液における表面張力が32mN/mを超える非イオン性乳化剤を用いた場合には、クーラントの表面張力が高くなり、圧延ロールの表面に濡れ拡がりにくくなる。これにより、圧延ロールの表面に形成される油膜の厚みのむらが大きくなり、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦の増大を招くおそれがある。
また、前記特定の水溶液における表面張力が27mN/m以上となる非イオン性乳化剤は、クーラントの表面張力を適度に高くすることができる。これにより、熱間圧延機のタンク内におけるクーラントの攪拌や、タンク外部へのクーラントの吐出等によって前記クーラントがせん断応力を受けた場合に、クーラント中の油滴が微細化することを抑制することができる。これにより、プレートアウト量を多くすることができる。油滴の微細化を抑制する効果をより高める観点からは、前記特定の水溶液における表面張力を28.5mN/m以上とすることが好ましい。
前記特定の水溶液における表面張力が27mN/m未満となる非イオン性乳化剤を用いた場合には、クーラント中の油滴がせん断応力によって微細化しやすくなる。これにより、プレートアウト量が低下し、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦の増大を招くおそれがある。
前記の表面張力は、以下の方法により測定することができる。まず、脱イオン水と非イオン性乳化剤との合計質量に対して1000質量ppmの非イオン性乳化剤を含む水溶液を作製する。この水溶液の温度を25℃に保ち、ウィルヘルミー法により測定された表面張力の値を前記の表面張力とすることができる。なお、表面張力の測定に用いる脱イオン水は、曇点の測定に用いる脱イオン水と同様である。
非イオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキレンアルキルエーテル、ポリオキイアルキレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記熱間圧延油中には、前記の特性を備えた非イオン性乳化剤による作用効果を損なわない範囲であれば、前記の特性を有しない非イオン性乳化剤、つまり、曇点及び表面張力の少なくとも一方が前記特定の範囲外となる非イオン性乳化剤が更に含まれていてもよい。
・油性剤
前記熱間圧延油中には、油性剤が含まれている。熱間圧延油中の油性剤の量は、例えば、20質量%以上とすることができる。油性剤の量を20質量%以上とすることにより、圧延ロールの表面に油性剤を含む油膜を付着させることができる。その結果、圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦を低減することができる。
油性剤としては、例えば、天然油脂、合成エステル及び脂肪酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を使用することができる。天然油脂としては、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とする植物油および動物油等を使用することができる。より具体的には、例えば、ハイリノールサフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、大豆油、ハイエルシック菜種油、ローエルシック菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油、豚脂、牛脂等を天然油脂として使用することができる。
天然油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ油、ハイエルシック菜種油、ハイオレイックサフラワー油及び牛脂のうち1種以上を使用することが好ましい。これらの天然油脂は、炭素数が多い脂肪酸とグリセリンとのエステルを比較的多く含むため、圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦をより低減することができる。圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦を更に低減する観点からは、天然油脂として、パーム油、パーム核油、ヤシ油、及び牛脂のうち1種以上を使用することが好ましい。
合成エステルとしては、アルコールとカルボン酸との縮合反応によって得られるカルボン酸エステルを使用することができる。前記縮合反応に供するカルボン酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物を採用することができる。これらの化合物における炭化水素鎖の構造は、直鎖構造、分岐鎖構造または環状構造のいずれであってもよい。また、カルボン酸は一塩基酸であってもよいし、二塩基酸及びそれ以上の電離可能なプロトンを備えた多塩基酸であってもよい。
より具体的には、カルボン酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸等を使用することができる。
前記縮合反応に供するアルコールとしては、1価アルコールを用いてもよく、多価アルコールを用いてもよい。1価アルコールとしては、例えば、ブチルアルコール等を使用することができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等を採用することができる。圧延ロールとアルミニウム材との摩擦をより低減する観点からは、多価アルコールとして、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのうち1種または2種以上を使用することが好ましい。
アルコールとして多価アルコールを用いる場合、合成エステルは、多価アルコールの全ての水酸基がエステル化されたフルエステルであってもよく、多価アルコールの一部の水酸基がエステル化された部分エステルであってもよい。熱間圧延時の潤滑性を向上させる観点からは、合成エステル中のフルエステルの比率を高くすることが好ましい。
合成エステルにおける、カルボン酸に由来する構成単位の炭素数は10以上24以下であることが好ましい。カルボン酸に由来する構成単位の炭素数は10以上とすることにより、圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦をより低減することができる。また、カルボン酸に由来する構成単位の炭素数は24以下とすることにより、熱間圧延油の粘度の増大を抑制することができる。それ故、カルボン酸に由来する構成単位の炭素数を前記特定の範囲とすることにより、熱間圧延油の粘度の増大に伴う取り扱い性の悪化を回避しつつ、圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦をより低減することができる。
脂肪酸としては、炭素数10〜22の脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上の脂肪酸を使用することができる。脂肪酸の炭素数を10以上とすることにより、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦をより低減することができる。また、脂肪酸の炭素数を22以下とすることにより、脂肪酸を前記熱間圧延油中に容易に溶解させることができる。
脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、これらの脂肪酸における炭化水素鎖の構造は、直鎖構造、分岐鎖構造または環状構造のいずれであってもよい。より具体的には、脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸等を使用することができる。
・アルカノールアミン:0.10〜1.0質量%
前記熱間圧延油中には、更に、アニオン性乳化剤としてのアルカノールアミンが含まれていてもよい。アルカノールアミンの含有量は、例えば、0.10〜1.0質量%とすることができる。熱間圧延油中に前記特定の範囲のアルカノールアミンを添加することにより、クーラントの乳化安定性を調節し、プレートアウト量をより多くするとともに、圧延ロールとアルミニウム材との間に形成される油膜の厚みのむらをより低減することができる。その結果、圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦をより低減することができる。
アルカノールアミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン等を使用することができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
・その他の添加剤
前記熱間圧延油中には、更に、熱間圧延油の酸化を抑制するための酸化防止剤、熱間圧延油の腐敗を抑制するための防腐剤、圧延時の潤滑性を向上するための極圧剤等が含まれていてもよい。酸化防止剤としては、例えば、アルキルフェノール類、芳香族アミン類、硫化油脂及び硫化オレフィン等の硫黄化合物等を用いることができる。防腐剤としては、例えば、フェノール系化合物、ホルムアルデヒド供与体化合物、サルチルアニリド系化合物等を用いることができる。極圧剤としては、例えば、トリクレジルフォスフェート及びジラウリル水素化ホスファイト等のリン化合物、硫化油脂及び硫化オレフィン等の硫黄化合物等を用いることができる。
前記熱間圧延油の粘度特性は特に限定されるものではないが、例えば、40℃における動粘度を20〜80mm/秒の範囲内から適宜設定することができる。40℃における動粘度を20mm/秒以上とすることにより、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦をより低減することができる。圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を更に低減する観点からは、40℃における動粘度を30mm/秒以上とすることがより好ましい。
また、40℃における動粘度を80mm/秒以下とすることにより、熱間圧延油の送液をより容易に行うことができる。更に、この場合には、水中に前記熱間圧延油の油滴をより容易に分散させることができる。送液性をより向上させるとともに、油滴をより容易に分散させる観点からは、40℃における動粘度を60mm/秒以下とすることがより好ましい。
・クーラント
前記熱間圧延油と水とを混合し、水中に前記熱間圧延油の油滴を分散させることにより、前記クーラントを調製することができる。25℃におけるクーラントの導電率は、1000μS/cm以下とする。クーラントの導電率を前記特定の範囲内とすることにより、熱間圧延油の油滴に静電反発による斥力を作用させ、油滴の合一を抑制することができる。その結果、クーラントの乳化安定性の低下を回避することができる。クーラントの乳化安定性をより高める観点からは、25℃におけるクーラントの導電率を700μS/cm以下とすることが好ましい。
25℃におけるクーラントの導電率が1000μS/cmを超える場合には、熱間圧延油の油滴同士の静電反発による斥力が小さくなりやすい。そのため、この場合には、油滴の合一が起きやすくなり、乳化安定性の低下を招くおそれがある。
前記クーラントにおける前記熱間圧延油の含有量は、3〜10体積%である。これにより、熱間圧延時の潤滑性を適正な範囲に保つことができる。熱間圧延油の含有量が3体積%未満の場合には、圧延ロールの表面に付着する前記熱間圧延油の量が不足するため、圧延ロールとアルミニウム材との間の摩擦の増大を招くおそれがある。
一方、熱間圧延油の含有量が10体積%を超える場合には、相対的に水の量が不足するため、圧延ロールの冷却効率が低下するおそれがある。圧延ロールの冷却効率をより向上させる観点からは、熱間圧延油の含有量を8体積%以下とすることが好ましい。
また、前記クーラント中に分散した熱間圧延油の油滴のメジアン径は1〜7μmである。これにより、熱間圧延時の潤滑性を適度に高めるとともに、エマルションを安定化させることができる。油滴のメジアン径が1μm未満の場合には、熱間圧延中に、クーラント中の油滴と圧延ロールの表面との間に沸騰膜が生じやすくなる。そのため、圧延ロールへ供給される熱間圧延油の量が不足し、潤滑性の低下を招くおそれがある。一方、油滴のメジアン径が7μmを超える場合には、エマルション中の油滴が浮力によって浮上しやすくなり、場合によっては熱間圧延油と水とが分離するおそれがある。
上述した油滴のメジアン径は、レーザ回折/散乱法により得られた体積基準での粒度分布における累積中位径である。油滴のメジアン径の測定には、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製「LA−950」)を用いることができる。
前記熱間圧延油及びこの熱間圧延油を含むクーラントの実施例について説明する。なお、本発明に係る熱間圧延油、クーラント及びアルミニウム圧延板の製造方法は以下の態様に限定されるものではなく、その要旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
本例では、まず、表1〜表4に示す比率で各成分を混合し、熱間圧延油(試験剤1〜38)を調製した。表1〜表4に記載した成分の具体的な内容は以下の通りである。
・鉱油
鉱油A1:ナフテン系精製鉱油(日本サン石油株式会社製、40℃における動粘度 99.1mm2/秒)
鉱油A2:ナフテン系精製鉱油(日本サン石油株式会社製、40℃における動粘度 420.6mm2/秒)
・油性剤
天然油脂:精製パーム油(ミヨシ油脂株式会社製、40℃における動粘度 39mm2/秒)
合成エステル:トリメチロールプロパントリオレイン酸エステル(日油株式会社製「ユニスター(登録商標)H381R」)
脂肪酸:オレイン酸(和光純薬工業株式会社製、炭素数18)
・非イオン性乳化剤
非イオン性乳化剤B1:ノイゲン(登録商標)NL−Dash410(第一工業製薬株式会社製、曇点66℃、表面張力31.4mN/m)
非イオン性乳化剤B2:ノイゲンTDS−90(第一工業製薬株式会社製、曇点67℃、表面張力28.3mN/m)
非イオン性乳化剤B3:ノイゲンSD−80(第一工業製薬株式会社製、曇点80℃、表面張力27.3mN/m)
非イオン性乳化剤B4:ノイゲンXL−140(第一工業製薬株式会社製、曇点100℃、表面張力27.7mN/m)
非イオン性乳化剤B5:ノイゲンNL−100(第一工業製薬株式会社製、曇点100℃、表面張力31.0mN/m)
非イオン性乳化剤B6:ノイゲンLF−100X(第一工業製薬株式会社製、曇点73℃、表面張力31.8mN/m)
非イオン性乳化剤B7:ノイゲンNL−80(第一工業製薬株式会社製、曇点76℃、表面張力28.5mN/m)
非イオン性乳化剤B8:ノイゲンSD−70(第一工業製薬株式会社製、曇点64℃、表面張力26.2mN/m)
非イオン性乳化剤B9:ノイゲンET−160(第一工業製薬株式会社製、曇点100℃以上、表面張力37.6mN/m)
非イオン性乳化剤B10:ノイゲンCL−230(第一工業製薬株式会社製、曇点56℃、表面張力33.7mN/m)
・アニオン性乳化剤
トリエタノールアミン(三井化学株式会社製)
ジエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製)
Naスルホネート(株式会社MORESCO製「SUL465」)
なお、非イオン性乳化剤の曇点及び表面張力は、以下の方法により測定した値である。
曇点については、まず、イオン交換樹脂を用いて水道水に脱イオン処理を施し、25℃における導電率が10μS/cm以下である脱イオン水を作製した。この脱イオン水に非イオン性乳化剤を溶解させ、脱イオン水と非イオン性乳化剤との合計質量に対して1.0質量%の非イオン性乳化剤を含む水溶液を作製した。この水溶液の温度を20℃にした後、温度を徐々に上昇させながら水溶液の外観を目視観察し、水溶液が白濁し始めた時点の温度を前記の曇点とした。
表面張力については、前記と同様に脱イオン水を作製した後、この脱イオン水に非イオン性乳化剤を溶解させ、脱イオン水と非イオン性乳化剤との合計質量に対して1000質量ppmの非イオン性乳化剤を含む水溶液を作製した。この水溶液の温度を25℃に保ち、ウィルヘルミー法により測定された表面張力の値を前記の表面張力とした。
<熱間圧延油の評価>
以上のようにして準備した試験剤1〜38について、JIS K2283に準拠した方法により、キャノン−フェンスケ粘度計を用いて40℃における動粘度を測定した。40℃における各試験剤の動粘度は、表1〜表4に示した通りであった。
<クーラントの評価>
まず、イオン交換樹脂を用いて水道水に脱イオン処理を施し、25℃における導電率が10μS/cmである脱イオン水を作製した。また、この脱イオン水に塩化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、純度99.5%)を溶解し、導電率を1000μS/cmまたは1800μS/cmのいずれかに調整した水を作製した。なお、導電率の測定は交流2極法により行った。測定装置としては、株式会社堀場製作所製「ポータブル型電気伝導率系 ES−71」を使用した。
このようにして得られた脱イオン水、導電率が1000μS/cmに調整された水または導電率が1800μS/cmに調整された水のいずれかを分散媒とし、表1〜表4に示す濃度で分散媒中に試験剤1〜38を分散させてクーラントを調製した。25℃における各クーラントの導電率は、表1〜表4に示した通りであった。
このクーラントを用い、以下の方法により乳化安定性、プレートアウト性及び潤滑性の評価を行った。なお、本例において得られたクーラントは、いずれも水中油滴型のエマルションであった。また、試験剤24、28、30及び37における油滴の体積平均粒径は0.3〜0.8mmであり、これら以外の試験剤における油滴の体積平均粒径は1〜7μmであった。
・乳化安定性
400mLのクーラントを注ぎ入れた分液ロートを65℃の恒温槽内に入れ、コックを下方に向けた状態で60分間を静置した。60分経過後、分液ロートのコックを開き、分液ロートの足から吐出されるクーラントのうち、最初に吐出される100mL及び最後に吐出される100mLを採取した。そして、最初に吐出された100mLのクーラントにおける熱間圧延油の濃度Vi[体積%]及び最後に吐出された100mLのクーラントにおける熱間圧延油の濃度Vf[体積%]を測定した。
クーラントの乳化状態の安定性を示す乳化安定性指数ESIは、これらの熱間圧延油の濃度Vi及びVfを用いて下記式(1)により表すことができる。
ESI=Vi/Vf ・・・(1)
各試験剤を含むクーラントの乳化安定性指数の値は、表1〜表4に示した通りであった。また、乳化安定性指数の値が0.8を超えた場合には、表1〜表4の「評価」欄に記号「A+」を、0.7以上0.8以下の場合には同欄に記号「A」を、0.7未満の場合には同欄に記号「B」を記載した。
乳化安定性の評価においては、乳化安定性指数の値が1.0に近いほど油滴の合一が起こりにくく、油滴が沈降しにくいことを示している。それ故、乳化安定性指数の値が0.7以上である記号「A+」及び「A」の場合を、優れた乳化安定性を有し、クーラント中の油滴の合一を抑制できるため合格と判定した。また、乳化安定性指数の値が0.7未満である記号「B」の場合には、乳化安定性に劣り、クーラント中の油滴の合一が起こりやすいため不合格と判定した。
・プレートアウト性
長さ80mm、幅25mm、厚さ5mmのアルミニウムブロックを準備し、このアルミニウムブロックの温度を100℃に維持した状態で、65℃まで加温したクーラントをアルミニウムブロックに吹き付けた。クーラントの吹き付け条件は、吐出圧0.3MPa、吐出時間0.1ミリ秒とした。
アルミニウムブロックを冷却した後、デシケータ内でクーラントを24時間乾燥させ、クーラント中の水分を除去した。乾燥後のアルミニウムブロックに付着した試験剤の質量(単位:g)を測定した。そして、この試験剤の質量を単位面積当たりの質量に換算した値(単位:g/m2)をプレートアウト量とした。
各試験剤のプレートアウト量は、表1〜表4に示した通りであった。また、プレートアウト量が1.1g/m2を超えた場合には、表1〜表4の「評価」欄に記号「A+」を、0.7〜1.1g/m2の場合には同欄に記号「A」を、0.7g/m2未満の場合には同欄に記号「B」を記載した。
プレートアウト性の評価においては、プレートアウト量が多いほど圧延ロールと接触した際に解乳化が起こりやすく、圧延ロールの表面に多量の熱間圧延油を付着させることができることを示している。それ故、プレートアウト量が0.7g/m2以上である記号「A+」及び「A」の場合を、圧延ロールの表面に付着する熱間圧延油の量を多くできるため合格と判断した。また、プレートアウト量が0.7g/m2未満である記号「B」の場合には、圧延ロールの表面に付着する熱間圧延油の量が不足するおそれがあるため不合格と判断した。
・潤滑性
JIS A5182合金からなる幅40mm、長さ500mm、厚さ5.0mmのアルミニウム材1を準備し、20%の圧下率で予備圧延を行った。次に、板幅方向に測定したときの算術平均粗さRaが0.3〜0.4μmであり、かつ、最大高さRz=3.5〜4.0μmである一対の圧延ロール2(図1参照)を準備した。なお、圧延ロールについては、研磨紙を用いてロール表面を圧延方向に研磨することにより、前記の表面粗さに調整した。
図1に示すように、一対の圧延ロール2(2a、2b)のうち一方の圧延ロール2aの側面に複数のポンチ21を取り付けた状態でアルミニウム材1の熱間圧延を行った。なお、熱間圧延における圧延条件は以下の通りとした。
圧延開始時の板温度:450℃
圧延速度:40m/min
圧下率:60%
熱間圧延が完了した後、圧延ロール2aの周方向におけるポンチ21同士の距離L1[mm]と、アルミニウム材1に転写されたポンチ痕11同士の距離L2とを測定し、下記式(2)に基づいて先進率δを算出した。
δ=(L1−L2)/L1 ・・・(2)
これとは別に、圧延ロール2のロール径R[mm]、圧延ロール2のポアソン比ν、圧延ロール2のヤング率E[kgf/mm2]、圧延荷重P[kgf]、圧延前のアルミニウム材1の板厚h1[mm]、圧延後のアルミニウム材1の板厚h2[mm]、アルミニウム材1の板幅b[mm]の値を使用し、下記式(3)に基づいて圧延ロール2の扁平ロール径R2[mm]を算出した。
2=R×{1+16×(1−ν2)×P/[π×E×b×(h1−h2)]} ・・・(3)
そして、前記式(2)〜(3)の結果と圧下率rの値とを使用し、下記式(4)に基づいて圧延ロール2とアルミニウム材1との動摩擦係数μを算出した。
μ=0.5×[(h1−h2)/R20.5/{1−2×[(1−r)×δ/r]0.5} ・・・(4)
なお、前記式(2)〜(4)において、アルミニウム材1の圧延前の板厚h1は5.0[mm]、圧延後の板厚h2は2.0[mm]、圧下率rは0.6、板幅bは40[mm]とした。また、圧延ロール2のロール径Rは80[mm]、ポアソン比νは0.33、ヤング率Eは21000[kgf/mm2]とした。なお、ポアソン比ν及びヤング率Eは、圧延ロール用鋼の典型的な値である。
以上により得られた動摩擦係数μの値を、表1〜表4の「動摩擦係数」の欄に記載した。また、表1〜表4中の「評価」欄には、動摩擦係数が0.30以下の場合に記号「A+」を、0.30超え0.35以下の場合に記号「A」を、0.35を超えた場合に記号「B」を記載した。
潤滑性の評価においては、動摩擦係数の値が小さいほど圧延ロールとアルミニウム材との潤滑性が高く、圧延板の表面を平滑にできることを示している。それ故、動摩擦係数が0.35以下である記号「A+」及び「A」の場合を、圧延板の表面粗さの増大を十分に抑制できるため合格であると判定した。また、動摩擦係数が0.35を超えた記号「B」の場合を、圧延板の表面粗さの増大を招くおそれがあるため不合格と判定した。
Figure 2019085468
Figure 2019085468
Figure 2019085468
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表1〜表3に示したように、試験剤1〜23中には、鉱油、油性剤及び非イオン性乳化剤が含まれている。また、これらの含有量は、前記特定の範囲内である。そして、試験剤1〜23に含まれる非イオン性乳化剤は、前記特定の水溶液における曇点及び表面張力を前記特定の範囲内にすることができる特性を有している。それ故、これらの試験剤は、乳化安定性及びプレートアウト性に優れ、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦を低減することができた。
一方、表3及び表4に示したように、試験剤24及び試験剤33中の非イオン性乳化剤は、前記特定の水溶液における表面張力が前記特定の範囲よりも低くなる特性を有している。そのため、クーラント中の油滴が微細化され、試験剤1〜23に比べてプレートアウト量が少なくなった。その結果、これらの試験剤については、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。
試験剤25及び試験剤34中の非イオン性乳化剤は、前記特定の水溶液における表面張力が前記特定の範囲よりも高くなる特性を有している。そのため、クーラントが圧延ロールの表面に濡れ拡がりにくくなり、試験剤1〜23に比べてプレートアウト量が少なくなった。その結果、これらの試験剤については、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。
試験剤26及び試験剤35中の非イオン性乳化剤は、前記特定の水溶液における表面張力が前記特定の範囲よりも高く、かつ、曇点が前記特定の範囲よりも高くなる特性を有している。そのため、クーラントが圧延ロールの表面に濡れ拡がりにくくなり、試験剤1〜23に比べてプレートアウト量が少なくなった。その結果、これらの試験剤については、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。また、これらの試験剤は、試験剤1〜23に比べて乳化安定性が低かった。
試験剤27及び試験剤36は、非イオン性乳化剤の含有量が前記特定の範囲よりも少なかった。そのため、クーラントが圧延ロールの表面に濡れ拡がりにくくなり、試験剤1〜23に比べてプレートアウト量が少なくなった。その結果、これらの試験剤については、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。
試験剤28及び試験剤37は、非イオン性乳化剤の含有量が前記特定の範囲よりも多かった。そのため、クーラント中の油滴が微細化され、試験剤1〜23に比べてプレートアウト量が少なくなった。その結果、これらの試験剤については、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。
試験剤29は、鉱油の含有量が前記特定の範囲よりも多かったため、非イオン性乳化剤の濃度が低くなった。その結果、試験剤1〜23に比べて乳化安定性が低下した。また、試験剤29は、油性剤の濃度が低くなったため、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。
試験剤30は、非イオン性乳化剤の含有量が前記特定の範囲よりも多かったため、クーラント中の油滴が微細化された。また、試験剤30を含むクーラントにおいては、クーラント中における熱間圧延油の濃度が前記特定の範囲よりも少なかった。これらの結果、試験剤30については、試験剤1〜23に比べてプレートアウト量が少なくなり、圧延ロールとアルミニウム材との摩擦が増大した。
試験剤31は、非イオン性乳化剤の含有量が前記特定の範囲よりも少なかった。また、試験剤31を含むクーラントにおいては、クーラント中における熱間圧延油の濃度が前記特定の範囲よりも多かった。これらの結果、試験剤31については、試験剤1〜23に比べて乳化安定性が低下した。
試験剤32を含むクーラントは、分散媒として導電率の高い水を使用したため、クーラントの導電率が前記特定の範囲よりも高くなった。それ故、このクーラントにおいては、油滴同士の静電反発による斥力が小さくなった。その結果、試験剤32については、試験剤1〜23に比べて乳化安定性が低下した。
試験剤38を含むクーラントにおいては、クーラント中における熱間圧延油の濃度が前記特定の範囲よりも少なかった。そのため、試験剤38については、試験剤1〜23に比べて乳化安定性が低下した。

Claims (4)

  1. 50〜65質量%の鉱油と、
    0.70〜5.0質量%の非イオン性乳化剤と、を含有し、
    残部が天然油脂、合成エステル及び脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上の油性剤からなり、
    前記非イオン性乳化剤は、脱イオン水を溶媒とする水溶液の曇点を65〜100℃にすることができ、かつ、前記水溶液の表面張力を27〜32mN/mにすることができる特性を有している、
    アルミニウム用熱間圧延油。
  2. 前記アルミニウム用熱間圧延油は、更に、アニオン性乳化剤としてのアルカノールアミンを0.10〜1.0質量%含んでいる、請求項1に記載のアルミニウム用熱間圧延油。
  3. 請求項1または2に記載のアルミニウム用熱間圧延油が水中に分散されたアルミニウム用熱間圧延クーラントであって、
    25℃における導電率が1000μS/cm以下であり、
    前記アルミニウム用熱間圧延油の含有量は3〜10体積%であり、
    体積基準の粒度分布に基づく前記アルミニウム用熱間圧延油の油滴のメジアン径は、1〜7μmである、
    アルミニウム用熱間圧延クーラント。
  4. 請求項3に記載のアルミニウム用熱間圧延クーラントを用いてアルミニウム材の熱間圧延を行う、アルミニウム圧延板の製造方法。
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