<概要>
典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。図1〜図7は、本実施形態に係る視力検査装置を説明する図である。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。また、以下において符号に付されるLとRは、それぞれ左眼用と右眼用を示すものとする。
例えば、本実施例における視力検査装置は、被検者が呈示窓を覗き込むことによって、筐体内部の視標窓に呈示された検査視標を確認し、被検眼の視力検査を行う視力検査装置であってもよい。例えば、視力検査装置は、被検者に検査視標を呈示する視標呈示部(例えば、視標呈示部20)を備えていてもよい。例えば、視標呈示部は、検査視標が形成された視標板(例えば、視標板21)を照明することで、被検者に検査視標を呈示する構成であってもよい。また、例えば、視標呈示部は、ディスプレイに検査視標を表示することで、被検者に検査視標を呈示する構成であってもよい。
また、例えば、視力検査装置は、視標窓部(例えば、視標窓部12)を備えていてもよい。視標窓部としては、検査視標が呈示される視標窓(例えば、視標窓15)と、視標窓の周辺に形成される視標窓周辺部(例えば、視標窓周辺部16)と、を有する構成であってもよい。例えば、視標窓及び視標窓周辺部の少なくとも一方は、透過性を有する光学部材によって形成されていてもよい。これによって、検査視標と、視標窓周辺部と、の間の距離を短くすることが可能となり、被検眼の視力を精度よく測定することができる。
また、例えば、視力検査装置は、視標呈示部及び視標窓部を収納する筐体(例えば、筐体2)を備えていてもよい。また、例えば、視力検査装置は、検査視標を筐体の内部から外部に向けて呈示するための呈示窓であって、筐体に設けられた呈示窓(例えば、呈示窓2)を備えていてもよい。
<視標窓周辺部>
例えば、視標窓周辺部は、光学部材として、透過性を有する第1光学部材で形成されていてもよい。例えば、透過性を有する第1光学部材は、ガラス板、アクリル板、塩化ビニル板、ポリカーボネイト板、等の少なくともいずれかであってもよい。
例えば、視標窓周辺部には、検査視標の光束の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部が形成されている。例えば、このような遮蔽部としては、検査視標からの光束を完全に遮光する構成(つまり、光束の0%が透過する構成)であってもよい。検査視標からの光束の一部を遮光する構成(例えば、光束の30%が透過する構成等)であってもよい。すなわち、遮蔽部は、検査視標からの光束が、視標窓周辺部よりも視標窓を多く透過する構成であってもよい。
なお、第1光学部材には、コーティング処理を施すことにより、遮蔽部が形成されてもよい。例えば、この場合には、浸漬、蒸着、塗装、等の少なくともいずれかがコーティング処理として行われてもよい。もちろん、第1光学部材には、シルク印刷等の印刷を施すことにより、遮蔽部が形成されてもよい。また、マスキングテープ、シール、等の少なくともいずれかを貼り付けることにより、遮蔽部が形成されてもよい。
また、例えば、遮蔽部は、第1光学部材における少なくとも視標呈示部側の面に形成されている。例えば、遮蔽部は、少なくとも視標呈示部側の面として、第1光学部材における視標呈示部側の面にのみ形成されていてもよい。また、例えば、遮蔽部は、少なくとも視標呈示部側の面として、第1光学部材における視標呈示部側の面と、視標呈示部側以外の少なくともいずれかの面と、に形成されてもよい。この場合の一例としては、遮蔽部が、第1光学部材における視標呈示部側の面と、呈示窓側の面と、に形成された構成等が挙げられる。これによって、被検眼が検査視標の周辺(すなわち、視標窓周辺部)に焦点を合わせていても、検査視標と視標窓周辺部との間の距離が短くなるので、精度よく視力検査を行うことができる。
なお、例えば、遮蔽部は、第1光学部材の少なくとも視標呈示部側の面において、その全面に形成されてもよい。もちろん、遮蔽部は、第1光学部材の少なくとも視標呈示部側の面において、その一部分に形成されてもよい。
<視標窓>
例えば、視標窓は、光学部材として、透過性を有する第2光学部材で形成されていてもよい。例えば、透過性を有する第2光学部材は、ガラス板、アクリル板、塩化ビニル板、ポリカーボネイト板、等の少なくともいずれかであってもよい。例えば、視標窓は、視標呈示部からの検査視標の光束を透過し、被検者に検査視標を呈示する。例えば、このような視標窓を検査視標の光束が透過することで、被検眼に対して、検査視標を実際に配置された距離よりも手前側にみせることができる。このため、被検眼が検査視標の周辺に焦点を合わせていても、検査視標と視標窓周辺部との間の距離が光学的に短くなり、精度よく視力検査を行うことができる。
なお、第1光学部材と第2光学部材は同一の光学部材であってもよい。例えば、本実施例においては、視標窓周辺部を形成する第1光学部材と、視標窓を形成する第2光学部材と、にアクリル板が用いられている。これによって、容易な構成で視標窓と視標窓周辺部とを形成することができる。もちろん、本実施例に限定されず、第1光学部材と第2光学部材は異なる光学部材であってもよい。例えば、この場合、第1光学部材としてアクリル板を用い、第2光学部材としてガラス板を用いる、等の構成としてもよい。
また、第1光学部材と第2光学部材は、一体的に配置することで、視標窓と視標窓周辺部とをそれぞれ形成する構成であってもよい。もちろん、第1光学部材と第2光学部材とを連結して配置することで、視標窓と視標窓周辺部とをそれぞれ形成する構成であってもよい。
例えば、本実施例において、透過性を有する第1光学部材は、空気より大きな屈折率をもつ光学部材であってもよい。また、例えば、本実施例において、透過性を有する第2光学部材は、空気より大きな屈折率をもつ光学部材であってもよい。空気より大きな屈折率をもつ光学部材としては、ガラス板、アクリル板、塩化ビニル板、ポリカーボネイト板、等の少なくともいずれかが用いられてもよい。例えば、光学部材が空気より大きな屈折率をもつことで、検査視標と視標窓周辺部との間の距離をより短くすることができる。従って、検者は、被検眼が視標窓周辺部に焦点を合わせていても、視力検査を精度よく行うことができるようになる。
<実施例>
以下、本実施例に係る視力検査装置について説明する。図1は、視力検査装置1の外観図である。例えば、視力検査装置1は筺体9を備える。例えば、筺体9の前側の上部には、呈示窓2が設けられている。呈示窓2は、検査視標を筺体9の内部から外部に向けて呈示する。例えば、本実施例における呈示窓2は、左眼用呈示窓2Lと右眼用呈示窓2Rとを有している。例えば、被検者は呈示窓2(左眼用呈示窓2L及び右眼用呈示窓2R)を覗き込むことによって、筺体9内部の視標窓15(図3参照)に呈示された検査視標を確認し、被検眼の視力検査を行うことができる。例えば、筺体9の前側の中央部には、スピーカ6が設けられている。スピーカ6は左右一対であり、音声ガイド等が出力される。例えば、筺体9の前側の下部には、入力ボタン3、応答ボタン4、応答レバー(ジョイスティック)5、が設けられている。入力ボタン3は、被検者が視力検査を開始する信号を入力する際に用いる。応答ボタン4は、被検者が呈示された検査視標を判読できない際に用いる。応答レバー5は、被検者が呈示された検査視標を判読して、その方向を応答する際に用いる。例えば、本実施例における応答レバー5は、呈示される検査視標の上下左右の4つの方向に対応する前後左右の4つの方向に傾倒可能であり、4つの方向の信号を入力することができる。
例えば、筺体9の側部には、プリンタ7が設けられている。プリンタ7は検査結果を出力するために用いる。例えば、筺体9の上部には、ランプ8が設けられている。ランプ8は、検者に検査状況や検査結果等を報知する。ランプ8は、被検者が呈示窓2を覗き込んだときにみえない位置に配置されている。ランプ8は、複数のLED(発光ダイオード)を備えており、多色(例えば、緑色と橙色の2色)発光が可能である。もちろん、ランプ8は1つのLEDからなり、単色発光する構成であってもよい。
また、例えば、筺体9の側部には、ケーブル42を介してコントロールボックス40が接続されている。コントロールボックス40は、視力検査装置1のパラメータ等を入力するための操作部と、入力されたパラメータ等を確認するための表示部と、を兼ねるタッチパネル式のモニタ41を備える。
図2は視力検査装置1の光学系と制御系を示す概略図である。なお、図2は、筐体9の内部を上部からみた図を示している。例えば、筐体9の内部は、接眼レンズ10L及び10R、内部カバー14L及び14R、内部照明ランプ17L及び17R、視標窓部12L及び12R、視標呈示部20、を備える。
接眼レンズ10L及び10Rは、左眼用呈示窓2Lと右眼用呈示窓2Rとにそれぞれ配置されている。これによって、呈示窓2(左眼用呈示窓2L及び右眼用呈示窓2R)に対して奥側に設けられた視標窓15(視標窓15L及び視標窓15R)に検査視標を配置すると、被検眼Eにはみかけ上の遠用距離(例えば、5m)だけ先に検査視標が呈示されているようにみえる。内部照明ランプ17L及び17Rは、内部カバー14L及び14Rによる視野空間を照明する。内部カバー14L及び14Rは、中央に仕切り板をもつ筒状のカバーである。これによって、左被検眼ELと右被検眼ERとが検査視標をみるための視野空間を個別に確保し、左右の光路を区分けすることができる。
例えば、本実施例において、内部カバー14L及び14Rは同一形状である。また、例えば、内部カバー14L及び14Rは、後述する視標照明ランプ24Lから出射して接眼レンズ10Lを通過する光軸S1Lと、視標照明ランプ24Rから出射して接眼レンズ10Rを通過する光軸S1Rと、のそれぞれを中心として、左右の内壁面が対称に形成されている。また、例えば、内部カバー14L及び14Rの背面には視標窓部12L及び12Rがそれぞれ設けられ、視標窓部12L及び12Rの上下左右における同位置に、後述する視標窓15L及び視標窓15R(図3参照)がそれぞれ配置されている。このため、両被検眼(すなわち、左被検眼ELと右被検眼ERの両眼)で呈示窓2を覗き込んだ場合には、視標窓15L及び視標窓15Rが融像して1つにみえるとともに、内部カバー14L及び14Rにおける左右の内壁面が1つの視野空間として観察される。例えば、これにより、被検者はみかけ上の遠用距離に置かれる検査視標を違和感なくみることができる。
例えば、内部カバー14(内部カバー14L及び14R)の内壁面は黒色であるとよい。この場合には、コーティング処理等により内部カバー14の内壁面を黒色にしてもよいし、黒色の部材を用いて内部カバー14を形成してもよい。例えば、後述する視標窓周辺部16は白色であるため、内部カバー14と視標窓周辺部16との境目をつくることにより、前述した融像を促すことができる。
<視標呈示部>
視標呈示部20は、視標窓15に検査視標を切り換えて配置するために用いられる。例えば、視標呈示部20は、視標板21、モータ22、視標照明ランプ24L及び24R、を備える。視標板21は透光性をもつガラス板からなる。このガラス板上には、方向性のある検査視標(例えば、上下左右に方向性をもつランドルト環視標等)が、遮光性をもつクロムコートによって形成されている。例えば、このような検査視標は、視力値0.1〜1.0、1.2、1.5、の12段階で形成されていてもよい。また、例えば、このような検査視標は、左被検眼EL及び右被検眼ERに対して、対となる同一の左眼用検査視標と右眼用検査視標を同時に呈示できるように、それぞれを視標窓15L及び15Rの位置に対応させて形成してもよい。
モータ22は、視標板21を回転させる。これにより、左眼用検査視標と右眼用検査視標とが、視標窓15Lと視標窓15Rとにそれぞれ配置される。視標照明ランプ24L及び24Rは、視標板21を背面から照明する。これにより、視標窓15L及び15Rに配置された検査視標は、呈示窓2L及び呈示窓2Rに向けて呈示される。
<視標窓部>
図3は視標窓部12L及び12Rを拡大して示す図である。視標窓部12L及び12Rは、視標窓15L及び15Rと、視標窓周辺部16L及び16Rと、をそれぞれ備える。例えば、視標窓15(視標窓15L及び15R)及び視標窓周辺部16(視標窓周辺部16L及び16R)の少なくとも一方は、透過性を有する光学部材により形成されている。例えば、透過性を有する光学部材としては、ガラス板や樹脂板(例えば、アクリル板、塩化ビニル板、ポリカーボネイト板、等)を用いることができる。
例えば、視標窓15は、筐体9とは異なる部材で形成される。もちろん、視標窓15は、内部カバー14とは異なる部材で形成されてもよい。また、例えば、視標窓15は、透過性を有する第2光学部材により形成される。例えば、本実施例においては、視標窓15を形成するための第2光学部材としてアクリル板18が配置されている。このため、視標窓15は、視標呈示部20における検査視標からの光束を透過させ、被検者の被検眼Eに検査視標を呈示することができる。
例えば、視標窓周辺部16は、筐体9とは異なる部材で形成される。もちろん、視標窓周辺部16は、内部カバー14とは異なる部材で形成されてもよい。また、例えば、視標窓周辺部16は、透過性を有する第1光学部材により形成される。例えば、本実施例においては、視標窓周辺部16を形成するための第1光学部材としてアクリル板18が配置されている。つまり、本実施例においては、第1光学部材と第2光学部材とに同一の光学部材が用いられている。
例えば、第1光学部材(本実施例においては、アクリル板18)には、検査視標からの光束の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部19が形成される。つまり、遮蔽部19は、検査視標からの光束を完全に遮光する構成(光束の0%が透過する構成)であってもよいし、検査視標からの光束の一部を遮光する構成(例えば、光束の30%が透過する構成、光束の50%が透過する構成、等)であってもよい。言い換えると、遮蔽部19を通過する検査視標からの光束が、視標窓15を通過する検査視標からの光束よりも、少なくなる構成であればよい。
なお、例えば、遮蔽部19は、第1光学部材にコーティング処理を施すことによって形成されてもよい。コーティング処理としては、浸漬、蒸着、塗装、等の少なくともいずれかによる処理が行われてもよい。例えば、本実施例では、第1光学部材にコーティング処理を施すことで、視標窓周辺部16を形成するとともに、前述の視標窓15を形成している。もちろん、遮蔽部19は、第1光学部材にシルク印刷等の印刷を施すことによって形成してもよい。また、遮蔽部19は、第1光学部材にマスキングテープやシール等を貼り付けることによって形成してもよい。
例えば、本実施例では、遮蔽部19が第1光学部材における少なくとも視標呈示部20側の面(言い換えると、第1光学部材の裏面側)に形成されている。例えば、遮蔽部19は、第1光学部材の裏面側にのみ形成されてもよい。また、例えば、遮蔽部19は、第1光学部材の裏面側と表面側(言い換えると、第1光学部材の呈示窓10側)とに形成されてもよい。この場合には、呈示窓2を介して第1光学部材の裏面側を確認できる程度に、第1光学部材の表面側がコーティング処理されることで、遮蔽部19を形成してもよい。なお、本実施例においては、遮蔽部19を第1光学部材の裏面側にのみ形成する場合を例に挙げる。
例えば、このような遮蔽部19は、第1光学部材の全面に設けられてもよい。例えば、第1光学部材の全面とは、第1光学部材の裏面側を含む面であってもよい。また、遮蔽部19は、第1光学部材の一部分にのみ設けられてもよい。なお、例えば、遮蔽部19は、第1光学部材に白色のコーティング処理を施すことによって形成されてもよい。もちろん、白色以外のコーティング処理が施されてもよく、この場合には内部カバー14とは異なる色であるとよい。
図4は第1光学部材に形成される遮蔽部19の一例を示す図である。図4(a)は第1光学部材の呈示窓10側に遮蔽部19を形成した状態である。図4(b)は第1光学部材の視標呈示部20側に遮蔽部19を形成した状態である。なお、図4では内部カバー14Lに設けられた第1光学部材のみを図示するが、内部カバー14Rに設けられた第1光学部材についても同様に考えることができる。
例えば、本実施例において、第1光学部材は内部カバー14Lの背面を兼ねており、第1光学部材と、視標呈示部20が備える視標板21とは、互いに接触しないように、奥行方向に一定距離をあけて配置される。しかし、例えば、被検者が呈示窓2を覗くことによってみえる視標窓周辺部16と、視標板21と、の距離Dは、第1光学部材に形成する遮蔽部19の位置によって異なる。つまり、第1光学部材における視標呈示部20側の面に遮蔽部19が形成された場合(すなわち、図4(a)に示す状態)は、第1光学部材の呈示窓10側の面に遮蔽部19が形成された場合(すなわち、図4(b)に示す状態)よりも、視標窓周辺部16と視標板21との距離Dが、第1光学部材の厚みの分だけ短くなる。例えば、本実施例では、図4(a)に示すように、第1光学部材に形成する遮蔽部19を視標呈示部20側の面に設けることで、視標窓周辺部16と視標板21との距離Dをより短くしている。
なお、例えば、本実施例においては、第1光学部材と視標板21とが、図示なき同一の部品に固定された構成となっている。このため、第1光学部材と視標板21とを複数の部品を用いて固定する構成よりも、部品の組み付けによる公差等が抑えられ、視標窓周辺部16と視標板21との距離Dをより短くすることができる。
また、例えば、本実施例において、遮蔽部19は、第1光学部材の視標窓15とする領域を除く領域に形成されている。これによって、第1光学部材に視標窓15を形成し、第1光学部材の周辺部分(すなわち、遮蔽部19)に視標窓周辺部16を形成することができる。
例えば、本実施例において、透過性を有する光学部材(すなわち、第1光学部材及び第2光学部材の少なくともいずれか)は、空気より大きな屈折率を有する光学部材であってもよい。例えば、空気より大きな屈折率を有する光学部材は、ガラス板や樹脂板(例えば、アクリル板、塩化ビニル板、ポリカーボネイト板、等)であってもよい。このような光学部材であることによって、視標窓周辺部16と、視標板21に形成された検査視標と、の距離を光学的に近づけることができる。以下、これについて詳細に説明する。
図5は、透過性及び屈折率をもつ光学部材を透過する光束を示す図である。なお、図5では、透過性及び屈折率をもつ光学部材としてアクリル板18を用いた場合を例に挙げる。また、図5では、視標板21に形成された検査視標を検査視標13として図示する。例えば、光束は屈折率の小さな物質から屈折率の大きな物質へと進むとき、入射角αが屈折角βよりも大きくなる。例えば、空気の屈折率は1.00であり、アクリル板18の屈折率は1.49である。このため、本実施例では、検査視標13からの光束が空気中を通過してアクリル板18に到達すると、入射角α>屈折角βとなるように折れ曲がって、アクリル板18中を通過する。また、例えば、光束は屈折率の大きな物質から屈折率の小さな物質へと進むとき、入射角γが屈折角ηよりも小さくなる。このため、本実施例では、検査視標13からの光束がアクリル板18中を通過して、アクリル板18と空気との境界に到達すると、入射角γ<屈折角ηとなるように折れ曲がって、空気中に放出される。なお、本実施例において、アクリル板18の表面と裏面とは平行である。従って、入射角αと入射角γとは等しくなり、また、屈折角βと屈折角ηとは等しくなる。
例えば、このような状態であるとき、被検眼Eには、アクリル板18から空気中に放出された光束の延長線(すなわち、図5に示す点線)上にある点Pに、検査視標13があるようにみえる。つまり、被検眼Eには、検査視標13が実際に配置された位置よりも、検査視標13が手前側に位置してみえる。例えば、透過性及び屈折率をもつ光学部材を用いると、このように被検眼Eに対して検査視標13を手前側にみせることができるため、視標窓周辺部16と検査視標13との距離D(すなわち、視標窓周辺部16と視標板21との距離D)を見かけ上の距離dとすることができる。なお、例えば、被検眼Eは、接眼レンズ10L及び10Rを介して検査視標13を観察するので、レンズを介さずに検査視標13を観察した場合に比べて見かけ上の距離dが短くなり、検査視標13はより手前側に配置されているようにみえる。
<制御系>
例えば、制御部30(図2参照)は、視力検査装置1の各部を統括・制御する。例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を含んで構成されてもよい。例えば、CPUは、視力検査装置1における各部材の駆動を制御する。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、CPUが実行するプログラム等が記憶されている。なお、制御部30は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
例えば、制御部30には、入力ボタン3、応答ボタン4、応答レバー5、スピーカ6、プリンタ7、ランプ8、内部照明ランプ17L及び17R、モータ22、視標照明ランプ24L及び24R、記憶部(メモリ)31、コントロールボックス40、等が電気的に接続されている。例えば、メモリ31は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、メモリ31としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、視力検査装置1に着脱可能に装着されるUSBメモリ、等を使用することができる。例えば、メモリ31には、検査プログラム(例えば、後述する自動検査モードにおいて用いられる自動検査プログラム、後述する手動検査モードにおいて用いられる手動検査プログラム、等)が記憶されていてもよい。
<モニタ表示>
図6はコントロールボックス40が備えるモニタ41の表示画面を説明する図である。なお、図6に示す表示画面は、後述する手動検査モード設定時の表示画面である。例えば、モニタ41には、方向選択部50及び視力値選択部60が表示される。方向選択部50は、検査視標の方向を選択するための方向選択スイッチを備える。例えば、方向選択スイッチは検査視標の上下左右の4つの方向に対応している。また、方向選択スイッチには、検者が検査視標の方向を視覚的に判断できるように、検査視標の方向を示すマークが付されている。例えば、本実施例においては、このような方向選択スイッチとして、検査視標を上方向(ランドルト環視標の切れ目を上方向)とするための信号を入力するスイッチ51と、右方向とするための信号を入力するスイッチ52と、下方向とするための信号を入力するスイッチ53と、左方向とするための信号を入力するスイッチ54と、が設けられている。
視力値選択部60は、現在選択されている検査視標の視力値を表示する視力値表示部61と、検査視標の視力値を増加させるための信号を入力するスイッチ62と、検査視標の視力値を減少させるための信号を入力するスイッチ63と、を備える。
例えば、制御部30は、検者が選択した各種のスイッチから入力された信号に基づいて、視標呈示部20に所期する検査視標を呈示する。より詳細には、例えば、制御部30は、視力値表示部61に表示された視力値、かつ方向選択スイッチ(すなわち、スイッチ51〜54)により入力された方向をもつ検査視標が視標窓15に配置されるように、モータ22を駆動して視標板22を回転させる。
<制御動作>
上記の構成を備える視力検査装置1の制御動作について、遠用視力を検査する場合を例に挙げて説明する。なお、本実施例における視力検査装置1では、遠用視力検査が右眼、左眼、両眼の順に連続して進行する。また、本実施例における視力検査装置1は、制御部30が被検眼Eに呈示する検査視標を自動で選択する自動検査モードと、検者が被検眼Eに呈示する検査視標を手動で選択する手動検査モードと、を備える。例えば、検者が視力検査装置1の図示なき電源を入れると、自動検査モードに設定される。もちろん、モニタ41を操作して、検査モードを選択するようにしてもよい。
例えば、検者は、被検者に呈示窓2を覗かせて、入力ボタン3を押す。被検者に入力ボタン3を押すよう指示してもよい。制御部30は、入力ボタン3からの信号に応じて視力検査を開始する。このとき、スピーカ6からは、「視力を自動で計ります。軽くレバーを倒して下さい。」というように、最初の音声ガイドが発生される。被検者が音声ガイドに従って応答レバー5をいずれかの方向に倒すと、制御部30はその信号を受けて視力検査装置1を可動状態にする。
例えば、制御部30は、内部照明ランプ17(内部照明ランプ17L及び17R)と、視標照明ランプ24(視標照明ランプ24L及び24R)と、を点灯させる。また、例えば、制御部30は、モータ22を駆動することにより視標板21を回転させ、視標窓15(視標窓15L及び15R)に初期検査視標(例えば、視力値0.5の検査視標等)を配置する。スピーカ9からは「右手で軽くレバーを持ち、左手は手前のボタンに添えて、窓を覗いて下さい。」との音声ガイドが発生される。次に、「視力を計ります。輪の切れた方向(検査視標がランドルト環視標である場合)に軽くレバーを倒して下さい。輪の切れた方向が分からないときは、手前のボタンを押して下さい。」との音声ガイドが発生される。被検者が応答レバー5または応答ボタン4を用いて応答すると、被検眼の視力を判定するための視力検査プログラムが実行される。
例えば、視力検査プログラムでは、制御部30の制御によってスピーカ6から「方向は?」との音声ガイドが発生される。被検者は、視標窓15に呈示された検査視標の方向を判読して、応答レバー5をその方向に傾倒する。制御部30は、検査視標の方向と、被検者が傾倒した応答レバー5の方向と、が一致しているかを判別する。例えば、制御部30は、被検者の応答が正答であれば(すなわち、検査視標の方向と応答レバー5の方向とが一致していれば)、視標板21を回転させて1段階高い視力値の検査視標を呈示する。また、例えば、制御部30は、被検者の応答が誤答であれば(すなわち、検査視標の方向と応答レバー5の方向とが一致していなければ)、視標板21を回転させて1段階低い視力値の検査視標を呈示する。
例えば、被検眼Eに呈示された検査視標の視力値及び方向は、メモリ31に遂次記憶される。例えば、1段階高い視力値の検査視標を呈示した場合に、被検者の応答が誤答であったとき、または判読不能であったとき(応答ボタン4が操作されたとき)は、制御部30が、検査視標の視力値を被検眼がみえていた段階まで戻し、検査視標の方向を変えて視力検査を続ける。例えば、制御部30は、このようにして視標窓15に呈示される検査視標を順次変更し、被検者の応答結果の正誤を判別する。例えば、制御部30は、同一視力値の検査視標で2回以上の正答があれば、被検眼にその視力値があるものと判定する。
例えば、右被検眼に対して上述の遠用視力検査を行うと、左被検眼に対しても同様に遠用視力検査が行われる。これによって、被検者の右被検眼と左被検眼において、それぞれの検査結果が取得される。
ここで、例えば、制御部30は、自動検査モードで得られた最終的な検査結果(最終視力値)と、手動検査モード設定時の判定基準(基準視力値)と、に基づいて、再検査の有無を判定する。なお、本実施例では、このような基準視力値が視力値0.7に設定されている。例えば、制御部30は、自動検査モードで取得した最終視力値が、基準視力値である0.7を下回ったか否かを判定する。例えば、制御部30は、最終視力値が基準視力値を上回るか、あるいは同じであった場合には、遠用視力検査を終了すると判定してもよい。また、例えば、制御部30は、最終視力値が基準視力値を下回っていた場合には、再検査を行うと判定してもよい。
例えば、遠用視力検査を終了する場合、制御部30の制御により、スピーカ6から「終わりました。装置の右側から検査結果が印刷されます。」と音声ガイドが発生される。このとき、プリンタ7から検査結果が出力される。また、このとき、検査結果がモニタ41に表示されるとともに、メモリ31に記憶される。なお、検査終了時の音声ガイド、検査結果の印刷と表示、等は再検査が終了した場合も同様である。
例えば、再検査を行う場合、制御部30は、検査モードを自動検査モードから手動検査モードに切り換える。手動検査モードが設定されると、制御部30は、自動検査モードで最終視力値を判定した際の検査視標(最終視力判定時視標)をメモリ31から読み出す。そして、制御部30は、最終視力判定時視標と同じ視力値であり、最終視力判定時視標の方向に対して直交する方向をもつ検査視標を視標窓15に呈示する。
また、制御部30は、コントロールボックス40が備えるモニタ41に、方向選択部50及び視力値選択部60を表示させる。なお、制御部30は、ランプ8を発光させて、検査モードが手動検査モードに設定されたこと(すなわち、再検査が必要になったこと)を検者に知らせてもよい。例えば、検者は、コントロールボックス40を操作して、再検査を手動で行う。このとき、検者は、被検者に検査視標の見え方を確認したり、矯正レンズ等を用いて被検者の視力を調整したりしながら、遠用視力検査を進める。再検査が終了すると、前述と同様にプリンタ7から検査結果が出力される。
以上説明したように、例えば、本実施例における視力検査装置は、検査視標が呈示される視標窓と、視標窓の周辺に形成される視標窓周辺部と、を有し、視標窓及び視標窓周辺部の少なくとも一方が、透過性を有する光学部材によって形成されている。例えば、これによって、被検者に検査視標を呈示する視標呈示部と、視標窓周辺部と、の間の距離を短くすることが可能となり、被検眼の視力を精度よく測定することができる。
また、例えば、本実施例における視力検査装置は、透過性を有する第1光学部材で視標窓周辺部が形成されている。また、第1光学部材には、検査視標の光束の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部が、少なくとも視標呈示部側の面に形成されている。これによって、被検眼が検査視標の周辺(すなわち、視標窓周辺部)に焦点を合わせていても、検査視標と視標窓周辺部との間の距離が短くなるので、精度よく視力検査を行うことができる。
また、例えば、本実施例における視力検査装置は、透過性を有する第2光学部材で視標窓が形成されている。このため、視標窓を介して視標呈示部からの検査視標の光束を透過させ、被検者に検査視標を呈示することができる。また、このような視標窓を検査視標の光束が透過することで、被検眼に対して、検査視標を実際に配置された距離よりも手前側にみせることができる。このため、被検眼が検査視標の周辺に焦点を合わせていても、検査視標と視標窓周辺部との間の距離が光学的に短くなり、精度よく視力検査を行うことができる。
また、例えば、本実施例における視力検査装置は、第1光学部材と第2光学部材とに同一の光学部材が用いられている。このため、容易な構成で視標窓と視標窓周辺部とを形成することができる。
また、例えば、本実施例における視力検査装置では、空気より大きな屈折率を有する光学部材が用いられている。例えば、本実施例では、このような光学部材としてアクリル板を用いており、光学部材が空気より大きな屈折率をもつことで、検査視標と視標窓周辺部との間の距離をより短くすることができる。従って、検者は、被検眼の視力検査を精度よく行うことができる。
<変容例>
なお、本実施例では、視標窓周辺部16を形成するための第1光学部材と、視標窓15を形成するための第2光学部材と、に同一の光学部材を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1光学部材と第2光学部材とには、異なる光学部材が用いられてもよい。例えば、この場合、第1光学部材としてアクリル板を用い、第2光学部材としてガラス板を用いる、等の構成としてもよい。
また、本実施例では、第1光学部材と第2光学部材とが1枚のアクリル板18によって一体的に構成されているがこれに限定されない。例えば、第1光学部材と第2光学部材とを連結して配置し、視標窓15と視標窓周辺部16とをそれぞれ形成する構成であってもよい。すなわち、例えば、第1光学部材と第2光学部材とが同一の光学部材である場合には、2枚のアクリル板が連結して配置されてもよい。また、例えば、第1光学部材と第2光学部材とが異なる光学部材である場合には、それぞれの光学部材(例えば、アクリル板とガラス板、等)が連結して配置されてもよい。
なお、本実施例では、視標呈示部20が視標板21と視標照明ランプ24を備え、視標板21を視標照明ランプ24で照明することにより、被検眼Eに検査視標を呈示する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、視標呈示部20はディスプレイを備え、その画面に検査視標を表示することで、被検眼Eに検査視標を呈示する構成であってもよい。例えば、ディスプレイとしては、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、等のいずれかを用いる構成としてもよい。
なお、本実施例では、第1光学部材を用いて視標窓15を形成し、第2光学部材を用いて視標窓周辺部16を形成する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1光学部材を配置せずに視標窓15を形成し、第2光学部材を配置して視標窓周辺部16を形成する構成であってもよい。すなわち、第1光学部材を配置せずに開口部とすることで、視標板21に形成された検査視標を呈示するための視標窓15を形成する構成であってもよい。
なお、本実施例では、第1光学部材が内部カバー14の背面を兼ねる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、内部カバー14の背面としては、内部カバー14の側面と同一の部材が用いられ、視標板21に形成された検査視標を呈示可能にするための開口部を設ける構成であってもよい。図7は内部カバー14の背面に開口部を設けた構成の一例を示す図である。例えば、このような構成である場合、第1光学部材(例えば、アクリル板18)は、図7(a)に示すように開口部内に設けられてもよい。また、例えば、このような構成である場合、第1光学部材は、図7(b)に示すように開口部の前面側(表面側)に設けられてもよい。例えば、このようにして検査視標を呈示する視標窓15を形成することによっても、開口部の奥側に配置された視標板21の検査視標を、実際の配置位置よりも手前側にみせることができる。なお、内部カバー14の背面に開口部を設けた構成である場合には、内部カバー14の背面における表面側を白色にコーティング処理して、視標窓周辺部16を形成するとよい。
なお、本実施例では、呈示窓2として、左眼用呈示窓2Lと右眼用呈示窓2Rの2つを備える構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、呈示窓は1つであってもよい。この場合には、左被検眼ELまたは右被検眼ERのいずれか一方で覗き込むことが可能な構成であってもよいし、両被検眼で覗き込むことが可能な構成であってもよい。また、例えば、呈示窓は複数であってもよい。この場合には、例えば、遠用視力を検査するための一対の呈示窓と、近用視力を検査するための一対の呈示窓と、がそれぞれ設けられた構成であってもよい。
なお、本実施例では、再検査時に、最終視力判定時視標と同じ視力値の検査視標を呈示する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、最終視力判定時視標の視力値よりも所定の段階だけ低い視力値をもつ検査視標を呈示してもよい。手動検査モードにおける判定基準の視力値をもつ検査視標を呈示してもよい。
また、本実施例では、再検査時に、最終視力判定時視標の方向と直交する方向の検査視標を呈示する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、最終視力判定時視標の方向とは異なる方向(本実施例では、3方向のいずれか)をランダムで選択してもよい。呈示可能な向き(本実施例では、4方向のいずれか)をランダムに選択してもよい。
なお、本実施例では、検査モードが切り換わったことをランプ8により報知する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、モニタ41への表示、スピーカ6からの音声ガイド、等により報知してもよい。また、検査モードが切り換えられた際に、ランプ8の発光色を変化させて(例えば、緑色から橙色に変化させる等)報知する構成でもよい。