JP2019073609A - 光硬化性組成物、硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体 - Google Patents

光硬化性組成物、硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体 Download PDF

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Seiichiro Hayakawa
誠一郎 早川
亨 金
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亨 金
西川 学
Manabu Nishikawa
西川  学
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Abstract

【課題】透明な液体であり、速硬化が可能で、アッベ数が低く、ガラス転移温度が高く、耐久性に優れた硬化物を得ることができる光硬化性組成物、その硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体の提供。【解決手段】光インプリント用の光硬化性組成物であって、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン等のビス(メルカプトフェニル)スルホン骨格含有ジ(メタ)アクリレート化合物(成分A)を40〜90質量%と、N−(メタ)アクリロイルカルバゾール(成分B)を10〜60質量%と、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール及び1,3,5−ベンゼントリチオールから選ばれる少なくとも1種以上の芳香族系多官能チオール(成分C)を0.1〜15質量%と、光重合開始剤(成分D)と、を含有し、透明な液体である光硬化性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、光硬化性組成物、硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体に関する。
近年、イメージングセンサー、ディスプレイ、光通信、太陽電池、照明等の光産業の進展とともに、光線透過率等の光学性能に優れた透明樹脂が必要とされている。例えば、イメージングセンサー又はディスプレイに使用される光学部品においては、基材上にマイクロレンズを形成するための光インプリント材料、反射防止又は干渉縞防止のためのコート層を形成するコーティング剤、半導体の封止剤、各種光学接着剤等が要望されている。特に、近年発展が著しい微細な光インプリントプロセスに適用できる材料への要望が強い。
上述した光インプリントとは、ガラス等の透明基材と微細な表面形状を有する成形型の間隙で光硬化性組成物を光硬化し、成形型を剥離(脱型)することにより、透明基材と硬化物の積層体を得る手法である。かかる手法により、硬化物表面には、成形型の微細な表面形状が転写される。微細な表面形状は、周期的な凹凸を有するレンチキュラー形状、曲率を有するマイクロレンズ形状等、多様であり、サイズもナノメートルサイズからミリサイズまで多様である。一般的に、ガラス表面を、切削等の機械的な手法で微細加工するのは困難であり、またウェット又はドライエッチングで微細加工する手法は、コストが高く、大面積化及び量産化が困難である。しかし、光インプリント法を用いれば、精度良く、かつ生産性良く、微細加工が施された光学部品を製造することができる。なお、微細形状がナノメートルサイズの場合は、光ナノインプリントと呼ばれる。
光インプリント材料においては、光で速硬化する液体材料が幅広く使用されている。特に、光線透過率及び耐熱性に優れる多官能(メタ)アクリレート系化合物が汎用されている。
このような状況のなか、光学設計の多様化に対応するため、光線透過率、色分散等の光機能と速硬化性の両方を併せ持つ材料が要望されている。特に、色分散性に優れた硬化物が得られ、かつ速硬化性の液状材料が求められている。ここでいう色分散とは、屈折率の波長依存性を意味し、一般的にアッベ数で表される。色分散性に優れる材料ほど低アッベ数となり、近年はアッベ数23以下の材料が要望されている。
アッベ数が低い材料としては、例えば硫黄含有ジ(メタ)アクリレート系化合物(例えば、特許文献1、2及び3参照。)、ポリチオールを配合した組成物(例えば、特許文献4参照。)、N−ビニルカルバゾールと特定のフルオレン系化合物を含有してなる光学材料(例えば、特許文献5参照。)、フルオレン骨格含有ジ(メタ)アクリレート系組成物(例えば、特許文献6参照。)等が提案されている。
しかしながら、特許文献1、2及び3に開示される化合物は、アッベ数が24程度であり、さらなる低減が求められていた。また、高純度化すると結晶化して固体となるため、単独での使用は困難であった。特許文献4の組成物は、アッベ数が30程度であり、熱硬化が必要なため硬化が遅く、また、多量のチオール基が存在するため臭気が耐えがたいものとなる。特許文献5の材料は、アッベ数が20以下であるが、室温(25℃)で固体であり、透明液状化するためには80℃で加温する必要があった。また、硬化物から成分がブリードアウトしやすく、硬化物を加熱した際に表面に析出物が発生する傾向があった。特許文献6の組成物は、アッベ数が23程度であるが、熱硬化を併用しなければならないため、速硬化は困難であった。
一般的に、(メタ)アクリレート系材料は、低アッベ数化するほど室温付近で固体化し、速硬化が難しいため、近年の高色分散化の要望への対応は困難であった。溶剤希釈による透明液状化も考えられるが、環境負荷低減の観点から無溶剤化が好ましいうえ、上述した光インプリントといった微細成形プロセスにおいては溶剤を使用できない場合が多い。
当然のことながら、硬化物には、光学部品として必要な諸性能が求められる。例えば、吸湿又は脱湿に伴う変形を低減するための低吸水性、たわみに対する剛性等である。用途によっても様々な性能が求められ、例えば、イメージングセンサー用途においては、赤外線カット性能又は帯電防止性能を求められることが多い。
また、光インプリントプロセスに対応するには、基材との密着性及び型からの剥離性(脱型性)が必要である。さらに、光インプリントで得られる透明基材と硬化物の積層体には、光学部品として高度な耐久性が要求される。例えば、耐熱性、耐光性、耐高温高湿性、耐熱衝撃性等の耐久性試験を行っても、光学性能が変動しないことが求められる。
特開昭61−72748号公報 特開平9−157332号公報 特開2001−172253号公報 特開平11−349658号公報 特開2006−232907号公報 特開2014−80572号公報
本発明は、透明な液体であり、速硬化が可能で、アッベ数が低く、ガラス転移温度が高く、耐久性に優れた硬化物を得ることができる光硬化性組成物、その硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体を提供することを目的とする。
本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定のスルホン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート系化合物、特定のカルバゾール系化合物及び特定の芳香族系多官能チオールを組み合わせることにより、相溶性が良好で溶剤を含まずとも均一で透明な液体であり、速硬化性に優れた光硬化性組成物が得られることを見出した。また、この光硬化性組成物により、アッベ数が低く、ガラス転移温度が高い硬化物を得ることができ、さらに硬化物の耐熱性、耐光性、耐高温高湿性、耐熱衝撃性等の耐久性が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、光インプリント用の光硬化性組成物であって、下記成分A、成分B、成分C及び成分Dを含有し、透明な液体である光硬化性組成物が提供される。
成分A:下記一般式(1)で示されるビス(メルカプトフェニル)スルホン骨格含有ジ(メタ)アクリレート化合物
Figure 2019073609
(一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基を表す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
成分B:N−(メタ)アクリロイルカルバゾール
成分C:1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール及び1,3,5−ベンゼントリチオールから選ばれる少なくとも1種以上の芳香族系多官能チオール
成分D:光重合開始剤
さらに、本発明によれば、上記光硬化性組成物の硬化物、上記光硬化性組成物の硬化物であるマイクロレンズアレイ及び当該マイクロレンズアレイとカラーフィルターの積層体が提供される。
本発明によれば、透明な液体であり、速硬化が可能で、アッベ数が低く、ガラス転移温度が高く、耐久性に優れた硬化物を得ることができる光硬化性組成物、その硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体を提供することができる。
本発明の一実施の形態の積層体の構成を示す断面図である。
以下、本発明の光硬化性組成物、その硬化物、マイクロレンズアレイ及び積層体の詳細を説明するが、以下に説明する構成は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、本発明は説明した内容に限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリレート」の記載は、アクリレートとメタクリレートの両方を示す。「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」等の記載についても同様である。
(光硬化性組成物)
本発明の光硬化性組成物は、下記成分A、成分B、成分C及び成分Dを含有し、透明な液体である。
なお、本発明において「透明な液体」とは、常態(温度25℃、1気圧)で、全成分が透明な液体である状態(均一溶液)のみならず、相溶又は溶解した状態も含む趣旨である。
(成分A)
本発明で使用される成分Aは、下記一般式(1)で示されるビス(メルカプトフェニル)スルホン骨格含有ジ(メタ)アクリレート化合物である。この化合物は分子構造中にスルホン基と芳香環を有し、これらの電子リッチな原子団を隣接させることで、硬化物のアッベ数を低減することができる。さらに、スルホン基とフェニレン基を直接結合させることにより、化合物を構成する他の原子が同じでも、硬化物のアッベ数を効果的に低減できる。
Figure 2019073609
本発明において、上記一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、速硬化の観点からは水素原子が好ましく、硬化物のガラス転移点を高くする観点からはメチル基が好ましい。
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基を表す。R及びRは、透明液状化の観点からは炭素数2以上のアルキレン基が好ましく、アッベ数を低くする観点からは炭素数2以下のアルキレン基が好ましく、透明液状化及び低アッベ数を両立する観点からは、炭素数2のアルキレン基が好ましい。
上記一般式(1)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Xは、化合物の安定性の点で酸素原子であることが好ましい。
上記一般式(1)で示されるビス(メルカプトフェニル)スルホン骨格含有ジ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルチオ〕ジフェニルスルホン、4−β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ−4′−〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4−β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ−4′−〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオプロピルチオ〕ジフェニルスルホン等が挙げられる。
これらのなかでも、低アッベ数化の点では、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン、2,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,3′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、2,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,3′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4−(β−(メタ)アクリロイルオキシメチルチオ)―4‘−(β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ〕ジフェニルスルホン、2,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,3′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオメチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、2,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、3,3′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン等の比較的アルキル鎖が短いものが好ましく、より好ましくは、透明液状化の点では、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホン、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルチオエチルチオ〕ジフェニルスルホン、特に好ましくは、化合物の安定性の点で、4,4′−ビス〔β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルホンである。これらの化合物は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。透明液状化の点では、左右非対称の構造を有する化合物が好ましく、入手の容易性の点では、左右対称の構造を有する化合物が好ましい。
(成分B)
本発明で使用される成分Bは、N−(メタ)アクリロイルカルバゾールである。好ましくは速硬化性の点で、N−アクリロイルカルバゾールである。N−アクリロイルカルバゾールとN−メタクリロイルカルバゾールは、併用してもよい。N−(メタ)アクリロイルカルバゾールは、分子構造中に芳香族系の複素環を有し、アッベ数を低減することができる。また、成分Bは、成分Aと同様に(メタ)アクリロイル基を分子中に有することから、成分Aとの相溶性が高く、均一で透明な液体が得られると推定される。
(成分C)
本発明で使用される成分Cは、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール及び1,3,5−ベンゼントリチオールから選ばれる少なくとも1種以上の芳香族系多官能チオールである。これらの芳香族系多官能チオールのなかでも、光硬化性組成物の透明液状化の点で、非対称構造を有する1,2−ベンゼンジチオールと1,3−ベンゼンジチオールが好ましい。これらの芳香族系多官能チオールは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。成分Cの芳香族系多官能チオールは、分子構造中に芳香環とチオール基を有し、このような電子リッチな原子団を直接結合させることで、アッベ数を効果的に低減することができる。また、脂肪族系多官能チオールを用いると、光硬化性組成物の保存安定性が低下し、ゲル化しやすい傾向にあるが、芳香族系多官能チオールを用いることにより、かかる保存安定性を向上することができる。なお、チオール系化合物は、通常、光重合の際に連鎖移動剤として添加されるが、本発明においては、チオール系化合物のなかでも上記芳香族系多官能チオールが、硬化物のアッベ数を低減するために積極的に配合される。
本発明において、光硬化性組成物中の成分A、成分B及び成分Cの含有量は、下記範囲であることが好ましい。
成分A:40〜90質量%
成分B:10〜60質量%
成分C:0.1〜15質量%
より好ましくは、下記範囲である。
成分A:50〜85質量%
成分B:15〜55質量%
成分C:1〜10質量%
さらに好ましくは、下記範囲である。
成分A:50〜85質量%
成分B:20〜50質量%
成分C:1〜5質量%
成分Aの含有量が上記範囲内であると、光硬化性組成物の十分な速硬化性が得られやすい傾向にある。成分Bの含有量が10質量%以上であると、硬化物のアッベ数を十分に低減しやすい傾向にあり、60質量%以下であると、光硬化性組成物が十分に透明液状化しやすい傾向がある。成分Cの含有量が0.1質量%以上であると、光硬化性組成物の低アッベ数化を図りやすい傾向にあり、15質量%以下であると、硬化物の十分な耐熱性が得られやすい傾向にある。
なお、成分Aであるビス(メルカプトフェニル)スルホン骨格含有ジ(メタ)アクリレート化合物と成分BであるN−(メタ)アクリロイルカルバゾールは、いずれも単独では室温付近で固体であるが、成分A、成分B及び成分Cを混合することにより、室温付近で透明な液体に調整することができる。さらに、上記範囲で混合すれば、室温付近での透明液状化が容易になる。
透明液状化を容易にする観点からは、比較的多量の成分Cを用いることが好ましく、光硬化性組成物中の成分Cの含有量が後述の成分Dの含有量に対してほぼ同量以上、具体的には0.8倍以上、好ましくは0.9〜3倍である。
ガラス転移点を高くする観点からは、成分Bに対する成分Aの含有量(A/B)が、0.8質量倍以上であることが好ましく、1質量倍以上がより好ましく、2質量倍以上がさらに好ましく、3.5質量倍以上が特に好ましく、さらに5質量倍以上が好ましい。低アッベ数化の観点から、成分Bに対する成分Aの含有量(A/B)は、100質量倍以下であることが好ましい。
低アッベ数化の観点からは、成分Cに対する成分Aの含有量(A/C)が、30〜400質量倍であることが好ましく、40〜200質量倍がより好ましい。
同様に、低アッベ数化の観点から、成分Cに対する成分Bの含有量(B/C)が、10〜600質量倍であることが好ましく、50〜520質量倍がより好ましい。
(成分D)
本発明における成分Dの光重合開始剤としては、光の作用によりラジカルを発生する化合物であれば、公知の光重合開始剤が使用できる。成分Dの光重合開始剤としては、例えば、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピレンフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアンスラキノン、4′,4″−ジエチルイソフタロフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、α−アシロキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらのなかでも、他成分への影響が少ない点では、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましく、光による分解性が高く、添加量を減らせる点では、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが、好適に用いられる。上記光重合開始剤は、複数用いることも可能である。
光重合開始剤の含有量は、成分Aと成分Bの合計100質量部に対して、通常0.01〜5質量部であり、好ましくは1〜5質量部、より好ましくは1.5〜3質量部である。成分Dである光重合開始剤を、比較的多量に用いることにより、速硬化性に優れる光硬化性組成物が得やすい。
本発明において、上記光重合開始剤とともに光重合開始剤の助剤を使用することができる。使用できる光重合開始剤の助剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤とともに熱硬化開始剤を使用してもよい。使用できる熱硬化開始剤としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等のパーオキシエステル、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。これら熱硬化開始剤は、複数併用してもよい。
(成分E、F、G及びH)
本発明においては、光硬化性組成物が、さらに、下記成分E、成分F、成分G及び成分Hから選ばれる少なくとも1種以上を含有することが、耐久性に優れ、目的の光学特性を有する硬化物を得やすく、好ましい。
成分E:酸化防止剤
成分F:紫外線吸収剤
成分G:近赤外吸収剤
成分H:帯電防止剤
本発明における成分Eの酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、n−オクタデシル−β−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4′−ジ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−トリ−チオビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド、N,N′−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、カルシウム(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)モノエチルフォスフォネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、テトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスファイト−ジエチルエステル等の化合物が挙げられ、これらの化合物は、単独又は2種以上併用してもよい。これらのなかでも、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又はテトラキス[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが、硬化物の黄変を抑制する点から好ましい。これら酸化防止剤は、複数併用することも可能である。
酸化防止剤の含有量は、光硬化性組成物100質量部に対して、通常、0.01〜1質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.5質量部である。酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると硬化物の耐熱性の低下を抑制できる傾向があり、上記上限値以下であると硬化物を加熱した時の析出物の増加を抑制できる傾向がある。
本発明における成分Fの紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、トリアゾール系、ヒドロキシベンゾエート系、シアノアクリレート系等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独で用いてもよいし複数を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、光硬化性組成物中の他の成分との相溶性の点で、ベンゾフェノン系又はトリアゾール系、具体的には、2−[2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルへキシルー1−オキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシ−フェニル)−フェニル−メタノン、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4−tert−オクチル−フェノール等の紫外線吸収剤が好ましい。これら紫外線吸収剤は、複数併用することも可能である。
紫外線吸収剤の含有量は、光硬化性組成物100質量部に対して、通常、0.01〜1質量%であることが好ましく、特に好ましくは0.02〜0.5質量%である。紫外線吸収剤が、上記下限値以上であると硬化物の耐光性の低下を抑制する傾向があり、上記上限値以下であると速硬化しやすい傾向がある。
本発明における成分Gの近赤外吸収剤は、650〜3000nmの波長域に最大吸収波長を有し、光を熱に変換するものであれば特に限定されないが、光硬化性組成物への溶解性の点で、有機系色素が好ましい。かかる有機系色素としては、例えば、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、スクアリリウム系色素、キノン系色素、ポリメチン系色素、ジイモニウム系色素、アゾ系色素、フェニレンジアミン系色素、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン系色素、ピロロピロール系色素、金属錯体系色素等が挙げられる。これらの中では、耐久性に優れる点で、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素が好ましい。また。太陽光に比較的多く含まれる650〜1500nmに最大吸収波長があるものが好ましく、より好ましくは、比較的高エネルギーな650〜1000nmに最大吸収波長があるものが好ましい。当然のことながら、使用量削減の点から、グラム吸光係数が大きいものが好ましい。
上記近赤外線吸収剤としては市販品も使用することができる。使用できる近赤外線吸収剤の市販品としては、例えば、「ABS−626」、「ABS−642」、「ABS643」、「ABS654」、「ABS667」、「ABS670T」、「ABS−699」「IRA−677」、「IRA693N」、「IRA735」、「IRA800」、「IRA850」、「IRA868」(Exciton社製);「TAP−15」、「IR−706」(山田化学工業製);「PD−320」「YKR−2900」「YKR−3080」(山本化成社製);「IR−1」、「IR−10A」、「IR−12」、「IR−14」、「TX−EX906B」、「TX−EX910B」(日本触媒社製);「Kayasorb IRG−068」、「Kayasorb IRG−069」、「Kayasorb IRG−079」(日本化薬社製);「CIR−1085」、「CIR−RL」(日本カーリット社製);「Lumogen IR765」、「Lumogen IR788」(BASF社製)等を挙げることができる。これらのなかでは、可視光領域の吸収が少ない点で、「IRA−677」、「ABS−626」又は「ABS−699」が好ましい。
近赤外吸収剤の含有量は、光硬化性組成物100質量部に対して、0.001〜1質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.2質量部である。近赤外吸収色素が、上記下限値以上であると硬化物の近赤外吸収能力の低下を抑制する傾向があり、上記上限値以下であると、光硬化性組成物から析出しにくい傾向がある。近赤外線吸収剤は、複数用いることも可能であるし、より長波長の赤外線吸収剤と併用することも可能である。
本発明における成分Hの帯電防止剤としては、例えば、エチルメチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレート、エチルメチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミド、トリ−n−ブチルメチルアンモニウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミド、(2−アクリロキシエチル)トリメチルアンモニウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミド等のイオン液体型帯電防止剤、イミダゾリウム塩、テトラアルキルアンモニウムスルホン酸塩等のカチオン型帯電防止剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールアルコールアルキレンオキサイド付加物リン酸エステル塩等のアニオン型帯電防止剤、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、塩化リチウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等があげられる。これらの中では、帯電防止能力の点で、イオン液体型帯電防止剤が好ましく、より好ましくは、光硬化性組成物への溶解性の点で、エチルメチルイミダゾリウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミド、トリ−n−ブチルメチルアンモニウム・ビストリフルオロメタンスルホンイミドである。これらの帯電防止剤は、複数用いることも可能である。
帯電防止剤の含有割合は、光硬化性組成物100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜3質量部である。帯電防止剤が、上記下限値以上であると硬化物の帯電防止能力の低下を抑制できる傾向があり、上記上限値以下であると、光硬化性組成物から析出しにくい傾向がある。
本発明においては、低アッベ数化を妨げない範囲で、さらに、希釈モノマーを含有してもよい。
使用できる希釈モノマーとしては、成分A、成分B及び成分Dを除くものであり、なかでも安価な単官能(メタ)アクリレートがより好ましく、例えば、2−(o−フェニルフェノキシ)メチル(メタ)アクリレート、2−(m−フェニルフェノキシ)メチル(メタ)アクリレート、2−(p−フェニルフェノキシ)メチル(メタ)アクリレート、2−(o−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(m−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(p−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(o−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(m−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(p−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート等のビフェニル系モノマー、2−フェニル−2′−(β−(メタ)アクリロイルオキシメトキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2′−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2−フェニル−2′−(β−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン等のビスフェノールA系モノマーが挙げられる。これらのなかでも、低アッベ数化の点から、ビフェニル系モノマーが好ましく、速硬化性の点から、アクリレートがより好ましく、低粘度の点から、2−(o−フェニルフェノキシ)エチルアクリレートが特に好ましい。希釈モノマーは、単独でも複数用いてもよい。
本発明における、希釈モノマーの配合量は、成分Aと成分Bの合計100質量部に対して30質量部以下が好ましく、より好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは2〜10質量部である。希釈モノマーの配合量が多すぎると、アッベ数が増大する傾向にある。
また、本発明の光硬化性組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を用いてもよい。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、界面活性剤、シランカップリング剤、フィラー、染顔料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、充填剤、補強剤、艶消し剤等が挙げられる。
本発明の光硬化性組成物は、金属イオン、ハロゲン等の不純物が、通常の分析手法では検出されないことが好ましい。金属イオンとしては、例えばカドミウム、鉛、水銀、クロムであり、ハロゲンとしては、例えば塩素、臭素等である。通常の分析手法とは、例えば、IEC 62321 Edition 1.0:2008に準じる手法である。
(光硬化性組成物の製造方法)
本発明の光硬化性組成物の製造方法は、特に限定されないが、(S1)常温では固体である成分Aを40〜60℃で加温して溶融させて液状にした後、(S2)常温では固体である成分Bを添加して40〜60℃で溶解させ、(S3)最後に成分C及び成分Dを添加して40〜60℃で均一になるまで撹拌することが好ましい。成分A、成分B及び成分Cを含有する光硬化性組成物は、上述した好ましい含有量の範囲内であると、室温付近に冷却しても、室温付近で長期保管しても、透明で均一な液体状態を維持しやすく、保存安定性に優れる。
上記製造工程(S1)〜(S3)において、温度が低すぎると溶解に多大な時間を要し、逆に温度が高すぎると、冷却時に固体が析出する傾向にある。理由は判然としないが、一旦析出した固体は、40℃以上(例えば100℃)で長時間加温しても溶解しない。また、工程順を(S3)→(S2)→(S1)又は(S2)→(S3)→(S1)のように変更すると、ゲル状の固体が発生しやすい傾向にある。
本発明の光硬化性組成物は、常温25℃下において全成分が均一に相溶又は溶解した透明な液体であり、常温下で塗布作業等が可能である。そのため、本発明の光硬化性組成物は、光インプリント用として好適に使用することができる。
一般に、光硬化組成物の粘度は、高すぎると無溶剤で塗布しにくくなる傾向があり、低すぎると光インプリントによる微細構造のマイクロレンズの製造プロセスに適用しにくくなる傾向にある。したがって、本発明の光硬化性組成物の粘度は、温度25℃において2Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15Pa・s、さらに好ましくは1〜10Pa・sである。なお、光硬化性組成物の25℃における粘度の下限値は、通常、0.001Pa・sである。
本発明の光硬化性組成物のアッベ数νDは、23以下であることが好ましく、より好ましくは22以下、さらに好ましくは21以下である。光硬化性組成物のアッベ数νDが高すぎると、硬化物のアッベ数が増大する傾向にある。なお、光硬化性組成物のアッベ数の下限値は、通常、10である。
本発明の光硬化性組成物の硬化収縮率(%)は、5〜12%であることが好ましく、よりより好ましくは6〜11%、さらに好ましくは7〜10%である。硬化収縮率(%)が上記下限値以上であると、光インプリント法で微細な表面形状を転写する時に、硬化物を成形型から剥離(脱型)することが容易となる傾向にあり、上記上限値以下であると、成形型の微細な表面形状を精度よく転写することが容易となり、かつ基材と硬化物の密着性が向上する傾向にある。
(硬化物とその製造方法)
本発明の硬化物は、上述した本発明の光硬化性組成物の硬化物であり、本発明の光硬化性組成物を光硬化することにより得ることができる。
本発明の光硬化性組成物を光硬化する手法としては、光照射によって硬化させることができるのであれば、特に限定されない。照射する光としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、可視光線、赤外線等が利用できる。硬化速度、照射装置の入手の容易性等からは、紫外線が好ましい。
紫外線照射により重合硬化させる場合、200〜400nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LEDランプ等を用いて、0.1〜5J/cm程度の紫外線を照射すればよい。照射は、複数回に分けて行ってもよい。また、重合硬化を促進するため、紫外線照射と同時に赤外線又はマイクロ波を照射してもよい。
本発明においては、光照射後に、硬化物を加熱して、重合硬化を完結させることが好ましい。加熱の手法は、特に限定されないが、例えば、オーブン又は真空乾燥炉を用いる手法、赤外線又はマイクロ波を照射する手法、レーザーアニール等が挙げられる。これらのなかでも、簡便さの点で、オーブンを用いて加熱する手法が好ましい。加熱温度は、通常、80〜150℃である。加熱時間は、通常、0.1〜10時間である。
このような光硬化の手法は、本発明の光硬化性組成物を光インプリント材料として用いて、光インプリントによりマイクロレンズアレイ等の光学部品を製造する場合にも適用することができる。例えば、光インプリントは、一般的に、下記工程(1)〜(5)により実施されるが、上述した光硬化の手法は、下記工程(3)の光硬化に適用される。
工程(1):光硬化性組成物を、表面に微細な凹凸が形成された成形型に塗布する工程
工程(2):上記光硬化性組成物を、透明基材で覆う工程
工程(3):光照射により、光硬化性組成物を光硬化する工程
工程(4):基材と硬化物の積層体を、成形型から剥離する工程
工程(5):必要に応じて上記積層体を熱処理し、光学部品とする工程
上記工程(1)の塗布工程において、本発明の主旨から溶剤希釈は好ましくないが、ハンドリング性の向上を目的に、光硬化性組成物に少量の有機溶剤を添加することも可能である。その場合、有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等の公知の有機溶剤が挙げられる。有機溶剤の含有量は、多すぎると乾燥負荷が増大する傾向があることから、光硬化性組成物100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
(硬化物の特性)
本発明においては、硬化物のアッベ数νDが重要であり、23以下と低いことが好ましく、より好ましくは18〜22、さらに好ましくは19〜21である。硬化物のアッベ数νDが低い方が、近年の光学素子に対する光学性能の要求を満たしやすい傾向がある。逆に、低すぎると、硬化物が黄色くなる傾向があり、硬化物の下限値は通常、10である。
本発明においては、硬化物のガラス転移温度が、105℃以上であることが好ましい。より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。硬化物のガラス転移温度が105℃以上であると、耐熱性、耐光性、耐高温高湿性、耐熱衝撃性等の耐久性に優れた硬化物が得られ、光学素子としての利用性が向上する。なお、ガラス転移温度の上限値は通常500℃である。
本発明においては、硬化物の屈折率nDは、1.7以下であることが好ましく、より好ましくは1.62〜1.68であり、さらに好ましくは1.63〜1.67である。硬化物の屈折率が低すぎると、アッベ数νDが増大する傾向にあり、逆に、高すぎると硬化物の光反射率が増大する傾向にある。なお、本発明における屈折率nDは、NaD線を用いて23℃で測定される値である。
本発明においては、硬化物の光線透過率が、波長410nmにおいて60%以上であることが好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。硬化物の光線透過率が高い方が、光学素子としての使用が容易になる傾向にある。なお、光線透過率の上限値は通常99%である。
本発明においては、硬化物の吸水率が、2%以下であることが好ましい。より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。硬化物の吸水率は低い方が、アッベ数又は屈折率の変動が少ない。また、ガラス基材との密着性、耐高温高湿性等が向上しやすく、光学素子としての使用が容易になる傾向にある。なお、吸水率の下限値は通常0.001%である。
本発明においては、硬化物の曲げ弾性率が、2〜5GPaであることが好ましい。より好ましくは2.5〜4.5GPa、さらに好ましくは3〜4GPaである。硬化物の曲げ弾性率が上記上限値以上であれば、硬化物が変形しにくい傾向にあり、上記下限値以下であれば、硬化物が割れにくくなる傾向にある。
本発明においては、硬化物が、光学素子として各種溶剤又は各種薬品に耐性を有することが好ましい。溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、N−メチルピロリドン、γ−ブチルラクトン等が挙げられる。また、薬品としては、塩酸、アルカリ水溶液等が挙げられる。なお、ここで言う耐性とは、例えば、硬化物を、上記溶剤又は薬品に室温で10分間程度浸漬しても、外観に変化が生じないことを意味する。
本発明の硬化物は、必要に応じて赤外線カット性能を有していてもよい。赤外線カット性能とは、例えば、波長が700nm付近の近赤外線を吸収する性能である。具体的には、硬化物の波長700nmの光線透過率が、20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。このような赤外線カット性能により、可視光領域を扱う光学部品の耐久性を高め、光学デバイス全体の性能を高めることができる。
本発明の硬化物は、耐電防止性能を有することが好ましい。より好ましくは、硬化物の表面抵抗値(Ω/□)が、10×1013Ω/□以下、さらに好ましくは、5×1013Ω/□以下である。表面抵抗値が小さい方が、帯電しにくいため異物の付着及び光学デバイスの誤作動を抑制しやすい傾向にある。
(マイクロレンズアレイ)
本発明のマイクロレンズアレイは、上述した本発明の光硬化性組成物の硬化物である。
本発明のマイクロレンズアレイは、上記光インプリントにより製造することができ、上記工程(1)における成形型として、表面に所望のマイクロレンズアレイ形状を有する成形型を使用すればよい。透明基材としては、ガラス、樹脂フィルム等が挙げられる。透明基材の表面は、硬化物との密着性向上のため、シランカップリング剤等で表面処理することが好ましい。
(積層体)
本発明の積層体は、上述した本発明のマイクロレンズアレイを、カラーフィルター上に有する。
本発明の積層体は、例えば透明基材としてカラーフィルターが形成されたガラスを用いて、当該カラーフィルターの画素に合わせて、成形型表面のマイクロレンズの位置を調節し、上記工程(2)〜(5)を実施すれば得られる。工程(3)の光照射は、カラーフィルター側から行ってもよいが、成形型にガラス製の透明型を用いて、成形型側から行ってもよい。
図1は、本発明の一実施の形態の積層体の構成を示す。
図1に示すように、積層体10は、透明基材1の一方の面上にマイクロレンズアレイ2を有し、他方の面上にカラーフィルター3を有する。すなわち、積層体10は、透明基材1を挟んで、カラーフィルター3上にマイクロレンズアレイ2が積層されている。カラーフィルター3は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の各色のフィルターが2次元状に配列している。
本発明の硬化物、マイクロレンズ及び積層体は、光学部品として一般的に要望される耐熱性(光線透過率)、耐光性、耐高温高湿性、耐熱衝撃性等の耐久性に優れ、各試験前後で光学性能の変化が少ない。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例の記述に限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
光硬化性組成物、硬化物及び積層体を後述する製造方法により製造し、それぞれの物性を次のようにして測定した。
<測定条件>
(粘度(Pa・s))
東機産業社製、粘度計「TVE−25L」を用いて、25℃、回転数0.1rpm(コーンロータ:1°34′×R24)で測定した。
(速硬化性)
光量1.5J/cm(照度250mw/cm)の紫外線を6秒照射して、光硬化性組成物の硬化具合を観察し、下記の基準で評価した。
○:十分に硬化した
△:十分に硬化しておらず、柔らかい
×:硬化しておらず、ゲル状
(アッベ数νD及び屈折率nD)
長さ30mm×幅7mm×厚み0.5mmの硬化物を用意し、アタゴ社製の「3波長アッベ屈折計DR−M4」を用いて、23℃で、NaD線におけるアッベ数νDと屈折率nDを測定した。
(ガラス転移温度(℃))
長さ20mm×幅5mm×厚み0.5mmの硬化物を用意し、レオロジ社製、動的粘弾性装置「DVE−V4型 FTレオスペクトラー」の引っ張りモードを用いて、周波数10Hz、昇温速度3℃/分、歪0.025%で測定を行った。得られた複素弾性率実数部(貯蔵弾性率)に対する虚数部(損失弾性率)の比(tanδ)を求め、このtanδの最大ピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(光線透過率(%))
長さ50mm×幅50mm×厚み0.5mmの硬化物を用意し、島津製作所社製、島津分光光度計「UV−3150」を用いて、波長が410nm及び700nmの光線透過率(%)を測定した。
(吸水率(%))
長さ50mm×幅50mm×厚み0.5mmの試験片を用意し、23℃の水に1週間浸漬した後の質量増加から吸水率(%)を算出した。
(曲げ弾性率(GPa))
長さ25(mm)×幅10(mm)×厚み0.5mmの硬化物を用意し、島津製作所社製、「オートグラフAG−5kNE」(支点間距離20mm、0.5mm/分)にて25℃で測定した。
(耐溶剤性)
長さ50mm×幅50mm×厚み0.5mmの硬化物を用意し、イソプロピルアルコールに23℃で10分間浸漬した後、表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:変化なし
×:白濁や荒れ等の異常が見られる
(耐熱性(析出の有無))
長さ50mm×幅50mm×厚み0.5mmの硬化物を用意し、160℃で10分間加熱した後、表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:析出物が無く、耐熱性に優れる
×:析出物が有り、耐熱性が低い
(表面抵抗値)
三菱化学社製の抵抗率計「ハイレスターUP」を用いて、温度23℃、相対湿度50%RH環境下での表面抵抗値(Ω/□)を測定した。
(密着性)
ガラス上に厚み0.15mmの硬化物が形成された積層体を用意し、JIS K 5400(1990年版)に準じてクロスハッチ法により、ガラスと硬化物の密着性を下記のように評価した。
〇:硬化物の剥がれ無し
×:硬化物の剥がれ有り
(耐熱性(光線透過率))
ガラス上に厚み0.15mmの硬化物が形成された積層体を用意し、150℃で1時間の耐熱試験を行い、試験前後の波長550nmにおける光線透過率(%)を、島津製作所社製、島津分光光度計「UV−3150」を用いて測定した。測定した全光線透過率の変化から、耐熱性を下記の基準で評価した。
◎:全光線透過率の変化が1%未満であり、耐熱性が非常に高い
○:全光線透過率の変化が1〜2%であり、耐熱性が高い
×:全光線透過率の変化が2%を超え、耐熱性が低い
(耐光性)
ガラス上に厚み0.15mmの硬化物が形成された積層体を用意し、UVA0.8W/m100時間の耐光性試験を行い、色相を目視観察し、下記の基準で評価した。
◎:黄変が無い
○:かすかに黄変が有る
×:はっきりと黄変が有る
(耐高温高湿性)
ガラス上に厚み0.15mmの硬化物が形成された積層体を用意し、温度85℃湿度85%の環境下で500時間の耐高温高湿試験を行い、試験前後の波長550nmにおける光線透過率(%)を、島津製作所社製、島津分光光度計「UV−3150」を用いて測定した。測定した全光線透過率の変化から、耐高温高湿性を下記の基準で評価した。
◎:全光線透過率の変化が1%未満であり、耐高温高湿性が非常に高い
○:全光線透過率の変化が1〜2%であり、耐高温高湿性が高い
×:全光線透過率の変化が2%を超え、耐高温高湿性が低い
(耐熱衝撃性)
ガラス上に厚み0.15mmの硬化物が形成された積層体を用意し、−40℃で10分と85℃で10分のヒートサイクルを500サイクル繰り返す耐熱衝撃試験を行った。試験前後の波長550nmにおける光線透過率(%)を、島津製作所社製、島津分光光度計「UV−3150」を用いて測定した。測定した全光線透過率の変化から、耐熱衝撃性を下記の基準で評価した。
◎:全光線透過率の変化が1%未満であり、耐熱衝撃性が非常に高い
○:全光線透過率の変化が1〜2%であり、耐熱衝撃性が高い
×:全光線透過率の変化が2%を超え、耐熱衝撃性が低い
<実施例1>
(光硬化性組成物[I]の製造)
温度25℃で固体状の4,4′−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)ジフェニルスルホン(成分A)77部を、200mlの容器に入れ、ウォーターバスを用いて50℃に加温して溶融した。その後、温度25℃で固体状のN−アクリロイルカルバゾール(成分B)21部を投入して50℃で溶融した。次いで、温度25℃で液状の1,2−ベンゼンジチオール(成分C)2部を投入して50℃で溶解し、最後に、温度25℃で固体状の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「IRGACURE 184」)(成分D)2部を投入した。室温で均一に溶解するまで撹拌して、光硬化性組成物[I]を得た。得られた光硬化性組成物[I]の粘度は25℃において10Pa・sであり、浮遊物が見られず均一で透明な液体であった。
光硬化性組成物[I]に含まれる不純物を分析したところ、カドミウム、鉛、水銀、クロム等の金属イオンや、塩素、臭素等のハロゲンは検出されなかった。なお、分析手法と測定限界値は下記の通りである。
カドミウム:原子吸光光度法(測定限界値0.5ppm)
鉛 :原子吸光光度法(測定限界値5ppm)
水銀 :還元気化原子吸光光度法(測定限界値2ppm)
クロム :ジフェニルカルバジド吸光光度法(測定限界値1ppm)
塩素 :イオンクロマトグラフ法(測定限界30ppm)
臭素 :イオンクロマトグラフ法(測定限界30ppm)
(硬化物[I]の製造)
長さ100mm×幅100mm×厚さ1mmのガラス板2枚を、厚さ0.5mmのシリコンスペーサーを介して対向させ、硬化物製造用の成形型を用意した。この成形型に上記光硬化性組成物[I]を温度25℃で注液し、同温度で、高圧水銀ランプを用いて光量1.5J/cm(照度250mw/cm、6秒)の紫外線を照射した。両面のガラスを剥離して得られた成形体は十分に硬化しており、光硬化性組成物[I]は速硬化性を有していた。さらに、成形体をオーブンにより100℃で1時間加熱して、硬化物[I]を得た。得られた硬化物[I]は、表2に示される通り、波長410nmにおける光線透過率は80%、アッベ数νDは22、屈折率nDは1.65であり、良好な光学特性を有していた。また、ガラス転移温度は130℃と高く、吸水率、曲げ弾性率、耐溶剤性、耐熱性(析出)等の諸特性も、表2に示される通り、良好であった。
(積層体[I]の製造)
長さ100mm×幅100mm×厚さ1mmのガラスを1枚用意し、かかるガラスの片面(面A)を、シランカップリング剤で処理した。具体的な手法は、面Aに3−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM503」)の0.1質量%イソプロピルアルコール溶液をスピンコート法(500rpm、10秒)で塗布し、ホットプレート上で150℃、5分乾燥させた。
上記ガラスの面Aの外周部に、厚さ0.2mmのシリコンスペーサーを設置した後、面Aの中央部に上記光硬化性組成物[I]を滴下(滴下温度25℃)し、上部よりシランカップリング剤で処理されていない同サイズのガラスをかぶせて、光硬化性組成物[I]を型内に押し広げた。
高圧水銀ランプを用いて、光量1.5J/cm(照度250mw/cm、6秒)の紫外線を照射して光硬化を行った後、シランカップリング剤で処理されていないガラスを剥離して、ガラス(厚さ1mm)/硬化物(厚さ0.2mm)よりなる積層体を得た。該積層体をオーブンにより100℃で1時間加熱して積層体[I]とした。得られた積層体[I]は、ガラスと硬化物の密着性が良好であり、耐熱性(光線透過率)、耐光性、耐高温高湿性、耐熱衝撃性等の耐久性も、表3に示される通り、良好であった。
<実施例2〜8>
表1−1に示される組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物[II]〜[VIII]を得た。得られた光硬化性組成物[II]〜[VIII]の特性は表1−1に示される通りである。さらに、実施例1と同様にして硬化物[II]〜[VIII]と積層体[II]〜[VIII]を得た。得られた硬化物[II]〜[VIII]と積層体[II]〜[VIII]の特性は表2と表3に示される通りである。
<比較例1>
表1−1に示される組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物[IX]を得た。得られた光硬化性組成物[IX]は25℃では固体であり、常温での光硬化は不可能であった。
<比較例2>
表1−1に示される組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物[X]を得た。得られた光硬化性組成物[X]は25℃では固体であり、常温での光硬化は不可能であった。
<比較例3>
表1−1に示される組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物[XI]を得た。得られた光硬化性組成物[XI]は調合後1時間でゲル化したため、光硬化は不可能であった。
<参考例4>
表1−1に示される組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物[XII]を得た。得られた光硬化性組成物[XII]の特性は表1−1に示される通りである。なお、常温において光硬化組成物[XII]は、粘度が10Pa・sの液状であった。さらに、実施例1と同様にして硬化物[XII]と積層体[XII]を得た。得られた硬化物[XII]と積層体[XII]の特性は表2と表3に示される通りである。
なお、硬化物[XII]の作製において、紫外線照射後に得られた成形体は柔らかく、十分に硬化していなかったが、実施例1と同様に、オーブン中で100℃、1時間加熱して、硬化物[XII]とした。また、硬化物[XII]の吸水率の測定中に、水への溶出成分が確認されたため、測定を中止した。
<参考例5>
表1−1に示される組成とする以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物[XIII]を得た。得られた光硬化性組成物[XIII]の特性は、表1−1に示す。さらに、実施例1と同様にして硬化物[XIII]と積層体[XIII]を得た。得られた硬化物[XIII]と積層体[XIII]の特性は表2と表3に示す。
なお、参考例4及び5において成分Bとして使用したN−メタリルカルバゾール中のメタリル基は、メチルアリル基とも呼ばれ、化学式は、CH=CH(−CH)−CH−で表される。
Figure 2019073609
表1−2は、表1−1中の記号が表す材料の名称を示す。
Figure 2019073609
Figure 2019073609
Figure 2019073609
実施例1〜8の光硬化性組成物は、本発明の特定組成であるため、均一で透明な液体でかつ速硬化性に優れ、得られた硬化物は、いずれもアッベ数が22以下と低く、各成分の表面への析出もないことがわかる。なお、実施例の光硬化性組成物を光インプリント材料として用いて、カラーフィルター上にマイクロレンズアレイを形成したところ、低アッベ数で、光学性能が実用性に優れる積層体が得られた。
一方、比較例1と比較例2の光硬化性組成物は、本発明の特定組成を満足しないため、固体であり、常温で光硬化できないことがわかる。また、比較例3の光硬化性組成物についても、本発明の特定組成を満足しないため、保存安定性に劣り、光インプリント材料として使用できないことがわかる。
また、参考例4及び5の光硬化性組成物は、透明液状化及び低アッベ数化できているもの、速硬化性が十分ではなく、ガラス転移温度も100℃以下であった。得られた硬化物は、耐熱試験後に表面への析出が有り、耐久性が十分でないことがわかる。また、参考例4及び5の光硬化性組成物を室温に戻してすぐは透明な液体であったため、その状態で光硬化を行ったが、室温に戻してから数時間から数日経過させた光硬化性組成物を観察すると、析出物が浮遊又は沈殿するか、ゲル状態になる様子が見られた。
10 積層体
1 透明基板
2 マイクロレンズアレイ
3 カラーフィルター
本発明の光硬化性組成物は、透明な液体で速硬化性を有し、低アッベ数でガラス転移点が高く、耐久性に優れた硬化物を形成することができるため、光インプリント材料、コーティング剤、接着剤、封止剤、粘着剤、塗料、インク、コーティングバインダー等として種々の用途に有用である。なかでも、マイクロレンズアレイを形成する光インプリント材料として好適に利用することができる。

Claims (11)

  1. 光インプリント用の光硬化性組成物であって、下記成分A、成分B、成分C及び成分Dを含有し、透明な液体であることを特徴とする光硬化性組成物。
    成分A:下記一般式(1)で示されるビス(メルカプトフェニル)スルホン骨格含有ジ(メタ)アクリレート化合物
    Figure 2019073609
    (一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキレン基を表し、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
    成分B:N−(メタ)アクリロイルカルバゾール
    成分C:1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール及び1,3,5−ベンゼントリチオールから選ばれる少なくとも1種以上の芳香族系多官能チオール
    成分D:光重合開始剤
  2. 前記光硬化性組成物中の成分A、成分B及び成分Cの含有量が、それぞれ下記範囲であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
    成分A:40〜90質量%
    成分B:10〜60質量%
    成分C:0.1〜15質量%
  3. さらに、下記成分E、成分F、成分G及び成分Hから選ばれる少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光硬化性組成物。
    成分E:酸化防止剤
    成分F:紫外線吸収剤
    成分G:近赤外吸収剤
    成分H:帯電防止剤
  4. 前記光硬化性組成物の硬化物のアッベ数νDが、22以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  5. 前記光硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が、105℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  6. 前記光硬化性組成物の硬化物の屈折率nDが、1.7以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  7. 前記光硬化性組成物の硬化物の光線透過率が、波長410nmにおいて60%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光硬化性組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物。
  9. 前記硬化物のガラス転移温度が、105℃以上であることを特徴とする請求項8に記載の硬化物。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の光硬化性組成物の硬化物であることを特徴とするマイクロレンズアレイ。
  11. 請求項10に記載のマイクロレンズアレイを、カラーフィルター上に有することを特徴とする積層体。

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