以下、添付図面を参照して、本発明による綴じ処理装置を用いた画像形成システムの実施の形態を説明する。なお、添付図面では、同一又は類似の構成要素には、同じ参照符号を付して表すこととする。
図1は、本発明による綴じ処理装置を用いた画像形成システムを示している。画像形成システムは、画像形成装置Aと、シート処理装置Bとを含んで構成され、シート処理装置Bにはユニットとしてシート綴じ装置Cが組み込まれており、シート処理装置Bにおいて、画像形成装置Aによって画像形成されたシートを部揃え集積し、集積されたシート束にシート綴じ装置Cで綴じ処理を施して、下流側のスタックトレイに収納する。以下、画像形成装置A、シート処理装置B及びシート綴じ装置Cについて詳細に説明する。
[画像形成装置]
画像形成装置Aは、給紙部1と画像形成部2と排紙部3と信号処理部(図示せず)を装置ハウジング4内に備えている。給紙部1は、シートを収納する複数のカセット5で構成され、異なるサイズのシートを収納可能になっている。各カセット5にはシートを繰り出す給紙ローラ6と、シートを一枚ずつ分離する分離爪や分離ローラなどの分離手段(図示せず)とが内蔵されている。
また、給紙部1には、給紙経路7が設けられており、各カセット5からシートを画像形成部2に給送するようになっている。この給紙経路7の経路端には、レジストローラ対8が設けられており、各カセット5から送られたシートを先端揃えして待機させ、画像形成部2の画像形成タイミングに応じて給紙を行う。
画像形成部2は、給紙部1から送られたシートに画像を形成するように構成されていればよく、シート上に画像形成する種々の画像形成機構が採用可能である。図示されている実施形態では、画像形成部2として、静電式画像形成機構が用いられている。しかしながら、画像形成部2は、図示されている静電式画像形成機構に限定されるものではなく、インクジェット式画像形成機構、オフセット式画像形成機構などを採用することも可能である。図示されている実施形態では、図1に示されているように、装置ハウジング4内に感光体(ホトコンダクタ)で構成される感光ドラム9が色成分に応じて複数設けられると共に、各感光ドラム9ごとに、レーザヘッドなどの発光器10と、現像器11とが設けられており、発光器10で各感光ドラム9に潜画像(静止画像)を形成し、現像器11でトナーインクを付着させるようになっている。感光ドラム9上に付着されたインク画像は、色成分ごとに転写ベルト12に転写され画像合成される。
転写ベルト12に形成された転写画像は、給紙部1から送られたシートに転写チャージャ13で画像転写され、定着器(加熱ローラ)14で定着された後に排紙部3に送られる。排紙部3は、装置ハウジング4内に形成された排紙空間15にシートを排出する排紙口16と、画像形成部2からのシートを排紙口16に案内するシート搬送経路17とによって構成されている。なお、排紙部3には、後述するデュープレックス経路18が連設されており、表面に画像形成したシートを裏表反転して再び画像形成部2に給送できるようになっている。
このように構成された画像形成装置Aの上部には、画像原稿を読み取る画像読取ユニットDが設けられており、画像読取ユニットDのさらに上部に、原稿給送ユニットEが搭載されている。画像読取ユニットDは、透明ガラスで形成されたプラテン19aと、プラテン19aに沿って往復動する読取キャリッジ19bとを備え、プラテン19a上に載置された原稿シートの画像を読取キャリッジ19bで走査して読み取るようになっている。また、原稿給送ユニットEは給紙トレイ20aと排紙トレイ20bとを含み、給紙トレイ20a上に載置された原稿シートを一枚ずつ分離して画像読取ユニットDのプラテン19aに自動的に給送し、画像を読み取った後に排紙トレイ20bに収納するようになっている。
[シート処理装置]
シート処理装置Bは画像形成システムの端末装置として構成されており、シート処理装置Bには、綴じユニットとしてシート綴じ装置Cが内蔵されている。
図示されている実施形態では、シート処理装置Bは、装置ハウジング21と、装置ハウジング21内に設けられたシート搬送路22と、シート搬送経路22の排紙口22bの下流側に配置された処理トレイ23と、処理トレイ23のさらに下流側に配置されたスタックトレイ24とを備えている。
処理トレイ23には、シートを搬入するシート搬入手段25と、搬入されたシートを所定の綴じ位置に位置決めする位置規制手段としてのシート端規制部材26及び側縁整合部材27と、シート束(シートを積み重ねて集積させたもの)に綴じ処理を施すシート綴じ装置Cとが配置されている。図示されている実施形態では、シート綴じ装置Cとして、ステープル針を用いてシート束を綴じるステープル綴じ装置28と、ステープル針を用いずに圧着によりシート束を綴じる圧着綴じ装置29とが設けられている。
装置ハウジング21内には、図2に示されているように、搬入口22aと排紙口22bを有するシート搬送経路22が設けられている。図示されている実施形態では、給紙口22aを経てシートを受け取り、略水平方向に搬送して排出口22bから搬出するように構成されている。このシート搬送経路22には、シートを搬送するための搬送機構が内蔵されている。
上記搬送機構は、経路長に応じて所定間隔に配置された搬送ローラ対によって構成され、搬入口22aの近傍に搬入ローラ対30が、排紙口22bの近傍に排紙ローラ対31が配置されている。搬入ローラ対30と排紙ローラ対31とは、同一の駆動モータ(図示せず)によって駆動され、同一周速度でシートを搬送する。また、シート搬送経路22には、シートの先端と後端との少なくとも一方を検出するシートセンサSe1が設けられている。
シート搬送経路22の排紙口22bの下流側には、排紙口22bと段差を隔てた下方に処理トレイ23が配置されている。処理トレイ23は、排紙口22bから搬出されたシートを上方に積み重ねて束状に集積するために、シートの少なくとも一部を支持する紙載面23aを備えており、紙載面23a上に束状に集積されたシートが所定姿勢に整合された後に、綴じ処理を施され、下流側のスタックトレイ24に搬出されるようになっている。
また、排紙口22bの近傍には、シート搬入手段25が設けられており、排紙口22bから搬出されたシートを処理トレイ23の所定位置に搬送する。図示されている実施形態では、シート搬入手段25として、パドル回転体が設けられており、さらに、処理トレイ23には、シートの先端がシート端規制部材26に突き当たるように案内する掻き込み搬送手段32が設けられている。掻き込み搬送手段32は、シート端規制部材26の上流側に配置され、図示されている実施形態では、掻き込み搬送手段32として、リング形状のベルト部材が設けられており、このベルト部材が紙載面23a上のシート束の最上のシートと係合するとともにシート端規制部材26に向けてシートを搬送する方向に回転するようになっている。
処理トレイ23の先端部(図2中における排紙方向後端部)には、シートを位置決めするシート端規制部材26が設けられており、排紙口22bから搬出され、掻き込み搬送手段32によって処理トレイ23内に搬入されたシートの先端がシート端位置規制部材26に突き当てられ、その位置が規制される。このようにして、シート端位置規制部材26は、処理トレイ23条に集積されたシートを所定の処理位置に整合させる。
また、処理トレイ23には、シート端規制部材26に位置決めされたシートの幅方向を所定の基準ライン(センタ基準又はサイド基準)に位置決めする側縁整合部材27が設けられている。図示されている実施形態では、側縁整合部材27は、左右一対の整合板によって構成されており、排紙口22bから搬出されシート端規制部材26に位置決めされたシートを処理トレイ23の紙載面23a上で排紙方向と直交する方向に幅寄せして、所定の基準ラインに位置決め、整合する。
処理トレイ24には、シート綴じ装置Cとして、シート端規制部材26に突き当て規制され、側縁整合部材27で幅方向を位置決めされたシート束に綴じ処理を施すステープル綴じ装置28と圧着綴じ装置29とがさらに設けられている。ステープル綴じ装置28によるシート綴じ処理機構及び綴じ処理動作は、既によく知られているので、その説明を省略する。
[圧着綴じ装置]
圧着綴じ装置29は、束状に集積された複数のシートを互いに噛み合うように加圧変形させて綴じ合わせる。このため、圧着綴じ装置29は、対向して形成された凹凸部を噛み合わせるように複数のシートを挟んで圧着するクランプ機構を備えている。
図3及び図4を参照すると、圧着綴じ装置29は、対向して配置され且つ歯列方向に平行に並んだ複数の圧着歯が対向する面に形成されている一対の圧着部材33(33a,33b)と、一対の圧着部材33を互いに対して接近離反させる綴じ処理駆動機構34とを備え、一対の圧着部材33の間にシート束Sを挟み、一対の圧着部材33に形成された複数の圧着歯35からなる凹凸部を互いに噛み合わせてシート束Sを加圧することによってシート束Sを圧着させる。綴じ処理駆動機構34は、一対の圧着部材33の間にシート束Sが配置されたときに一対の圧着部材33の圧着歯35によりシート束Sの裏表を加圧してシート束Sを圧着させる圧着位置Ap(図6参照)と、圧着位置Apから一対の圧着部材33を互いから離れる方向に移動させてシート束Sから離れさせる待機位置(噛合解除位置)Wp(図6参照)との間で一対の圧着部材33を相対移動させるように制御される。一対の圧着部材33a,33bは、それぞれ、フレーム部材36,37に支持されたブロック38a,38b上に固定されており、一方のフレーム部材36が他方のフレーム部材37に搖動支軸39によって搖動可能に連結されている。一対のフレーム部材36,37は、それぞれに支持される一対の圧着部材33が圧着位置Apと待機位置Wpとの間で移動できるようにユニットフレーム40に取り付けられている。
図示されている実施形態では、固定側のフレーム部材(以下、「固定フレーム」と記載する。)36に支持されたブロック(以下、「固定側ブロック」と記載する。)38aに取り付けられた圧着部材(以下、「固定側部材」と記載する。)33aと、可動側のフレーム部材(以下、「可動フレーム」と記載する。)37bに支持されたブロック(以下、「可動側ブロック」と記載する。)38bに取り付けられた圧着部材(以下、「可動側部材」と記載する。)33bと、固定フレーム36に対して可動フレーム37を搖動させて固定側部材33aに対して可動側部材33bを接近離反させる綴じ処理駆動機構34とによってクランプ機構が構成されており、処理トレイ23上に載置されたシート束Sを固定側部材33aと可動側部材33bとの間で挟圧するようになっている。
また、固定フレーム36は、ユニットフレーム40に一体的に固定されており、可動フレーム37は、固定フレーム36に固定された搖動支軸39を中心に搖動可能に軸支されている。搖動支軸39は、固定フレーム36ではなく、ユニットフレーム40など他の部材に固定されてもよい。さらに、固定フレーム36の先端部には固定側ブロック38aが、可動フレーム37の先端部には可動側ブロック38bが支持されている。このようにして、固定フレーム36に支持される固定側ブロック38aに取り付けられた固定側部材33aと可動フレーム37に支持される可動側ブロック38bに取り付けられた可動側部材33bとは、固定フレーム36に対して可動フレーム37を搖動支軸39を中心に搖動させることにより、シート束Sを挟圧する加圧状態(圧着位置Ap)と、シート束Sから離れた非加圧状態(待機位置Wp)との間で移動する。
図3及び図4に示されている圧着綴じ装置29では、固定フレーム36が金属や強化樹脂などから形成された断面コ字形状(チャンネル形状)の枠部材によって構成され、固定フレーム36の両側壁36a,36bの間に可動フレーム37が搖動支軸39によって搖動可能に支持されている。このような構成により、可動フレーム37は固定フレーム36の両側壁36a,36bに案内され搖動支軸39を中心に搖動運動をする。また、可動フレーム37には、可動フレーム37を待機位置Wpへ向けて付勢する復帰スプリング41が接続されている。図示されている実施形態では、復帰スプリング41は可動フレーム37とユニットフレーム40との間に配置されているが、固定フレーム36と可動フレーム37との間に配置されてもよい。
なお、本実施形態では、二つのフレーム部材36,37のうちの一方のフレーム部材36をユニットフレーム40に固定し、他方のフレーム部材37をユニットフレーム40に対して移動可能に支持する構造を採用しているが、二つのフレーム部材36,37が共にユニットフレーム40に対して移動可能に支持される構造を採用することも可能である。
一対の圧着部材33は、互いと対向する面にそれぞれ形成されている複数の圧着歯35からなる凹凸が互いに噛み合うように配置されている。各圧着歯35の形状(特にエッジ形状)は、圧着歯35によりシート束Sを加圧したときにシートに損傷を与えないように配慮し、且つ、重なり合うシート同士が噛み合うように変形する最適の形状に構成する。また、各圧着歯35の歯列方向を向いた二つの側面のうちの少なくとも一方は、圧着歯の先端の歯列方向の幅が圧着歯の根元よりも細くなるように傾斜して形成されており、一方の圧着部材33aの複数の圧着歯35の傾斜した側面と他方の圧着部材33bの複数の圧着歯35の傾斜した側面とが一対の圧着部材33a,33bを噛み合わせるときに対向して位置するように配置される。図示されている実施形態では、各圧着歯35の歯列方向を向いた両方の側面が圧着歯35の先端の歯列方向の幅が細くなるように傾斜している。このような複数の圧着歯35により構成される凹凸面によって挟圧されたシートは、一方の圧着部材33aの圧着歯(凸部)35の頂部と他方の圧着部材33bの圧着歯(凸部)35の頂部とで正反対方向に押されてギャザ状(波形状)に変形され引き伸ばされた状態で圧着歯35の側面の間で加圧してシートの繊維を絡み合わせることにより、重なり合うシート同士が結束される。
次に、図3及び図4に示されている実施形態を参照して、綴じ処理駆動機構34について説明する。固定フレーム36に搖動可能に支持される可動フレーム37には、先端部に、可動側部材33bが取り付けられている可動側ブロック38bが支持されている一方、搖動支軸39を挟んで先端部と反対側に位置する基端部に、フォロアコロ(カムフォロア)42が設けられている。可動側部材33bとフォロアコロ42とは搖動支軸39を介して梃子の作用(倍力機構)が働く位置関係で配置されている。
また、固定フレーム36の基端部には、カム部材(図示されている実施形態では、円筒カム)43が設けられている。カム部材43は固定フレーム36に回転可能に軸支されたカム軸44に支持されており、カム部材43とフォロアコロ42とは互いに係合する位置関係で配置されている。さらに、カム軸44には、伝動機構45を介して綴じ駆動モータDC1の回転が伝達され、カム部材43が綴じ駆動モータDC1の正逆回転に伴って正逆回転するようにカム軸44に連結されている。
図3に示されているように、綴じ駆動モータDC1は、ユニットフレーム40に取り付けられており、その駆動軸46の回転は、伝動機構45を構成する伝動歯車G1、G2、G3、G4及びG5を介してカム軸44に伝達され、カム軸44に連結されたカム部材43が回転する。図示されている実施形態では、綴じ駆動モータDC1の正逆転で、カム部材43が所定角度範囲で反時計回り方向回転(CCW)と時計回り方向回転(CW)とを繰り返すように構成されている。カム部材43のカム面43aは、フォロアコロ42と係合して、フォロアコロ42と一体の可動フレーム42を搖動支軸39周りに搖動運動させる。
図3に示されている綴じ処理駆動機構34では、カム部材43のカム面43aに、非係合部Cpx(図6(a)参照)が形成されており、フォロアコロ42がこの領域に係合しているときは、可動フレーム37がフォロアコロ42を介したカム面43aからの力の作用を受けず、復帰スプリング41の作用で待機位置(噛合解除位置)Wpへ向かって付勢される。したがって、フォロアコロ42が非係合部Cpxに係合しているとき、可動フレーム37は、復帰スプリング41のバネ力により待機位置Wpに移動し、その位置で停止する。この状態から、綴じ駆動モータDC1を図3中の反時計回り方向に回転すると、カム部材43がカム軸44周りに反時計回り方向に回転してフォロアコロ42を従動させ、これと一体の可動フレーム37が搖動支軸39を中心に反時計回り方向に搖動し、可動フレーム37に可動側ブロック38bを介して支持されている可動側部材33bが図6(a)に示されている待機位置Wpから図6(c)に示されている圧着位置Apへ向かって移動する。
詳細には、フォロアコロ42が図6(a)に示されているカム面43aの搖動開始位置Cpsに到達すると、カム面43aがフォロアコロ42を介して可動フレーム37に搖動支軸39周りに搖動させる力の付与を開始し、図6(b)に示されているカム面43a上の加圧開始位置Cpm(シート束Sの厚さによって位置が異なる)で、可動フレーム37に可動側ブロック38bを介して支持される可動側部材33bによるシート束Sへの加圧が開始され、さらに、図6(c)に示されている加圧終了位置Cpe(シート束Sの厚さによって位置が異なる)で、可動側部材33bが最大加圧力をシート束Sに作用させ、加圧動作が終了する。これにより、シート束Sの圧着が完了する。その後、綴じ駆動モータDC1の時計回り方向の回転によりカム部材43が時計回りに回転され、フォロアコロ42がカム面43aと係合する位置が加圧終了位置Cpeから加圧開始位置Cpm、搖動開始位置Cpsを経て非係合部Cpxへと移動し、待機位置Wpへの復帰動作が行われる。
なお、上述の実施形態では、フォロアコロ42を可動フレーム37に、カム部材43を固定フレーム36に設けているが、カム部材43を可動フレーム37に、フォロアコロ42を固定フレーム36に設けることも可能である。この場合、ユニットフレーム40に取り付けられた綴じ駆動モータDC1によりカム軸44に直接回転を伝達するようにするとよい。
図4に示されているように、圧着綴じ装置29は、一対の圧着部材33のうちの一方を他方に対して歯列方向に移動させる噛み合い位置移動機構47をさらに備える。図示されている実施形態では、噛み合い位置移動機構47によって可動側ブロック38bに対して固定側ブロック38aを歯列方向に移動させることにより、可動側部材33bに対して固定側部材33aを歯列方向に移動させている。しかしながら、噛み合い位置移動機構47は、固定側部材33aと可動側部材33bとを歯列方向に相対移動させることができれば、可動側部材33bが固定されている可動側ブロック38b及び固定側部材33aが固定されている固定側ブロック38aの両方を移動させてもよく、可動側部材33b又は固定側部材33aを直接的に歯列方向に移動させてもよい。
噛み合い位置移動機構47の一つの実施形態が図4に示されている。可動フレーム37の先端部には、凹形状の可動側ブロック受容部48が形成されており、可動側ブロック38bが可動側ブロック受容部48に圧入されて、可動フレーム37に固定的に支持されている。また、固定フレーム36の先端部にも、凹形状の固定側ブロック受容部49が形成されているが、固定側ブロック38aは、歯列方向の移動が許容されるように固定側ブロック受容部49に挿入されている。固定側ブロック49には歯列方向に延びる雌ねじ孔50が形成されており、固定側ブロック受容部49の歯列方向に対向する二つの側壁49a,49aに両端部を回転可能に支持された送りねじ51の外周部に形成された雄ねじ部51aが雌ねじ孔50に螺合されている。また、固定側ブロック38aの固定側部材33aが固定されている面側の端部には、歯列方向に外方へ突出して延びるタブ部52が形成されており、固定側ブロック受容部49の少なくとも歯列方向に対向する側壁49a,49aの上端面に当接している。送りねじ51には、伝動歯車G6及びG7を介して噛み合い駆動モータDC2が接続されており、送りねじ51が噛み合い駆動モータDC2の正逆回転に伴って回転するようになっている。なお、噛み合い駆動モータDC2はユニットフレーム40に取り付けられている。送りねじ51は、伝動歯車を介さず、噛み合い駆動モータDC2によって直接的に回転駆動されるようにすることも可能である。
このような構成により、噛み合い駆動モータDC2を正逆回転させると、送りねじ51が回転して、固定側ブロック38aがタブ部52により固定側ブロック受容部49の歯列方向に対向する側壁49a,49aの上端面に沿って案内されながら歯列方向に移動し、固定側ブロック38aに取り付けられた固定側部材33aが可動側ブロック38bに取り付けられた可動側部材33bに対して歯列方向に移動する。
噛み合い位置移動機構は図4に示されている構成に限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。例えば、図5に示されている他の実施形態の噛み合い位置移動機構47´のように、固定側部材33aが固定されている面と反対側の固定側ブロック38aの面に歯列方向に延びるラック部53を設け、噛み合い駆動モータDC2によって駆動されるピニオン54を係合させることによって、固定側ブロック38aを歯列方向に貫通して延び且つ両端部を固定側ブロック受容部49の側壁49a,49aに支持される案内軸55に沿って、固定側ブロック38aを歯列方向に移動させるようにしてもよい。
上述した圧着綴じ装置29では、一対の圧着部材33に形成された複数の圧着歯35の各々の歯列方向を向いた二つの側面のうちの少なくとも一方は、圧着歯35の先端の歯列方向の幅が圧着歯35の根元よりも細くなるように形成された概略山型形状を有しており、一方の圧着部材33aの複数の圧着歯35の傾斜した側面と他方の圧着部材33bの複数の圧着歯35の傾斜した側面とが一対の圧着部材33を噛み合わせるときに対向して位置するように配置される。したがって、一対の圧着部材33a,33bを互いに対して歯列方向に移動させると、噛み合い深さが変化する。例えば、一方の圧着部材33aの各圧着歯35の頂部が他方の圧着部材33bの隣合う圧着歯35の間に形成される凹部の最深部に噛合するような位置に一対の圧着部材33a,33bが配置される位置(通常位置)から歯列方向に一方の圧着部材33aを移動させた位置(オフセット位置)に配置すると、一対の圧着部材33a,33bを噛合させる方向に移動させたときに、一方の圧着部材33aの各圧着歯35の頂部は、他方の圧着部材33bの隣合う圧着歯35の間の凹部の最深部ではなく、圧着歯35の傾斜した側面と当接するようになる。この結果、一対の圧着部材33a,33bを通常位置からオフセット位置に移動させると、一方の圧着部材33bの各圧着歯35の頂部が他方の圧着部材33aに当接するまでの噛合方向の相対移動距離が短くなり、一対の圧着部材33a,33bの複数の圧着歯35の噛み合い深さが浅くなって、一対の圧着部材33a,33bの圧着歯35の側面間の接触面積も狭くなる。
したがって、一対の圧着部材33a,33bの間でシート束Sを挟圧したときにも、一対の圧着部材33a,33bが通常位置に配置されているときと比較して、一対の圧着部材33a,33bがオフセット位置に配置されているときの圧着歯35の噛み合い深さは浅くなり、シート束Sが一対の圧着部材33a,33bの圧着歯35の側面間で押圧される領域の面積も狭くなるので、シート束Sの結束力が弱くなる。一方で、一対の圧着部材33a,33bの複数の圧着歯35の噛み合い深さが浅くなれば、シートの変形量が減少するので、シートの破れが生じにくくなる。一対の圧着部材33a,33bの通常位置として、一方の圧着部材33aの圧着歯35の頂部が他方の圧着部材33bの隣合う圧着歯35,35の間の凹部の最深部から歯列方向にずれて噛合方向に対向するような位置、すなわち一方の圧着部材33aの圧着歯35の頂部が他方の圧着部材33bの圧着歯35の傾斜した側面と噛合方向に対向するように、一対の圧着部材33a,33bが配置される位置が設定されていても、通常位置よりもオフセット位置において、一方の圧着部材33aの圧着歯35の頂部がより近い位置で他方の圧着部材33bと当接するように一対の圧着部材33a,33bが配置される限り、同様の効果が得られる。
[制御装置]
次に、図7を参照して、図1に示されている画像形成システムの制御装置60の構成について説明する。制御装置60は、画像形成装置Aの動作を制御する画像形成制御部65と、シート処理装置Bの動作を制御するシート処理制御部70とを含んでいる。画像形成処理部65は、画像形成装置制御CPUによって構成され、画像形成装置制御CPU65には、画像形成装置Aに設けられたコントロールパネル66とモード設定手段67とが接続されている。コントロールパネル66を通じて、画像形成形成条件及び綴じ処理モードが入力され、モード設定手段67に設定される。綴じ処理モードに関しては、ステープル綴じ装置28によって綴じ処理を実行するか、圧着綴じ装置29によって綴じ処理を実行するかが選択される。
シート処理制御部70は、シート処理装置制御CPUによって構成されており、シート処理装置制御CPUには、RAM71及びROM72が接続されている。シート処理装置制御CPU70は、ROM71に格納された実行プログラムを呼び出してシート処理を実行する。また、RAM72には、圧着綴じ装置29による綴じ動作の加圧時間などの制御データが格納されている。
シート処理制御部70は、集積制御部70aと、綴じ処理制御部70bと、噛み合い位置制御部70cと、スタック制御部70dとを含んでいる。集積制御部70aは、画像形成装置Aから送られたシートを処理トレイ23上に部揃え集積するようにシート処理装置Bの各部の動作を制御する。綴じ処理制御部70bは、ステープル綴じモードが選択されたときには、ステープル綴じ装置28を動作させて綴じ処理を行わせ、圧着綴じモードが選択されたときには、圧着綴じ装置29の綴じ処理駆動機構34を動作させて綴じ処理を行わせる。噛み合い位置制御部70cは、圧着綴じモードが選択されたときに、シートの枚数、厚さ、材質などの情報に応じて、又は、コントロールパネル66を通じて操作者が選択した結束力の大きさ、例えば『製本綴じ(強結束力)』又は『簡易綴じ(弱結束力)』に応じて、圧着綴じ装置29の噛み合い位置移動機構47の動作を制御して可動側ブロック38bに対して固定側ブロック38aを移動させ、通常位置とオフセット位置との間で一対の圧着部材33a,33bの噛み合い位置を変更する。スタック制御部70dは、処理トレイ23に設けられた図示されていない搬送機構を制御して、綴じ処理を施されたシート束Sをスタックトレイ24に排出する。
図示されている実施形態では、一対の圧着部材33a,33bを互いに接近離反させる方向に移動させるための綴じ駆動モータDC1と一対の圧着部材の噛み合い位置を変更するための噛み合い駆動モータDC2とが直流モータによって構成されている。綴じ処理制御部70bは、綴じ駆動モータDC1を駆動するためのモータドライバ73と、綴じ駆動モータDC1に取り付けられたエンコーダ74と、電流検出回路75とに接続されており、エンコーダ74により固定フレーム36に対する可動フレーム37の相対位置すなわち固定側部材33aに対する可動側部材33bの相対位置を把握すると共に、モータドライバ73に供給される電流値を電流検出回路75によって検出し、電流値が予め定められた閾値に達したときに、シート束Sへの加圧力が所定の値に到達し、固定側ブロック38aを介して固定フレーム36に支持される固定側部材33aに対して、可動側ブロック38bを介して可動フレーム37に支持される可動側部材33bを圧着位置まで移動させたと判断できるようになっている。また、噛み合い位置制御部70cは、固定側ブロック38aを歯列方向に移動させるための噛み合い駆動モータDC2を駆動するモータドライバ76と、噛み合い駆動モータDC2に取り付けられたエンコーダ77とに接続されており、エンコーダ77により固定側ブロック38aに固定される固定側部材33aの位置を検出することによって、可動側ブロック38bに固定される可動側部材33bに対する固定側部材33aの歯列方向の噛み合わせ位置を把握し、所望の位置関係に移動させることができる。
次に、図8を参照して、圧着綴じ装置29の綴じ処理動作について説明する。圧着綴じ装置29による圧着綴じに関し、弱い結束力の場合と強い結束力の場合とについてシート束Sの結束に必要な加圧力を得るために駆動モータDC1に供給されるべき電流値が予め実験によって予め設定され、RAM72に記憶されている。また、一対の圧着部材33a,33bの噛み合わせ位置が通常位置のときとオフセット位置のときとの位置の差が予め設定され、エンコーダ77からのパルス信号の数に換算されてRAM72に記憶されていると共に、通常位置とオフセット位置とを切り換えるときのシート枚数やシート束Sの厚さの閾値やシートの材質に関する情報がRAM72に記憶されている。
画像形成装置Aから画像形成されたシートがシート処理装置Bに送られてくると、集積制御部70aは、処理トレイ23上にシートを集積するようにシート処理装置Bの搬送機構等を制御する。このとき、シート処理制御部70は、画像形成装置Aからシート処理装置Bに送られるシートについての種類情報(厚さや材質に関する情報)や枚数に関する情報を取得して(ステップS1)、シートが所定枚数以上か否かを確認する(ステップS2)。噛み合わせ位置制御部70cは、一対の圧着部材33a,33bが待機位置Wpに配置されている状態で噛み合わせ位置移動機構47の噛み合い駆動モータDC2を駆動することにより、シートの枚数が所定値(閾値)以上のときには、可動側部材33bに対する固定側部材33aの圧着歯35の噛み合わせ位置が通常位置となるように固定側ブロック38aを移動させ(ステップS3)、シートの枚数が所定値より少ないときには、可動側部材33bに対する固定側部材33aの圧着歯35の噛み合わせ位置がオフセット位置になるように固定側ブロック38aを移動させる(ステップS10)。
また、画像形成装置Aのコントロールパネル66では、例えば「綴じ力強」モードと「綴じ力弱」モードなど結束力(綴じ力)が指定できるようになっており、一対の圧着部材33a,33bの噛み合わせ位置が通常位置になっている場合でも、「綴じ力弱」モードが指定されている場合には、一対の圧着部材33a,33bの噛み合わせ位置がオフセット位置となるように固定側ブロック38aが移動させられる(ステップS4)。
なお、ここでは、シートの枚数に応じて、一対の圧着部材33a,33bの噛み合わせ位置について通常位置とオフセット位置を切り換えているが、シート束Sの厚さや材質に応じて、噛み合わせ位置を切り換えてもよい。シート束Sの厚さは、例えば、シートの枚数とシートの厚さから算出することができる。また、図示されている実施形態では、噛み合わせ位置の設定は2種類となっているが、2つ以上のオフセット位置を設定して、切り換えることも可能である。
図9(a)に示されているように、一対の圧着部材33a,33bが待機位置Wpで通常位置に配置された後、図9(b)に示されているように、処理トレイ23上で集積されたシート束Sが一対の圧着部材33a,33bの間に配置されると、綴じ処理制御部70bが綴じ処理駆動機構34の綴じ駆動モータDC1を駆動させることにより、綴じ処理動作を開始し、固定側部材33aへ向かって可動側部材33bを接近させる(ステップS5)。このとき、綴じ処理制御部70bは、電流検出回路75を通じてモータドライバ73から綴じ駆動モータDC1に供給される電流値を監視し、綴じ駆動モータDC1へ供給される電流値がRAM72から読みだされた通常位置用の閾値Aに達するまで可動側部材の移動を継続させる(ステップS6)。図9(c)に示されているように可動側部材33b及び固定側部材33aの複数の圧着歯35の頂部がシート束Sに当接した状態から、図9(d)に示されているように、さらに固定側部材33aへ向かって可動側部材33bを接近させると、シート束Sの抵抗により、綴じ駆動モータDC1に供給される電流値が大きくなっていく。綴じ処理制御部70bは、綴じ駆動モータDC1へ供給される電流値が閾値Aに到達すると、図9(e)に示されているように、一対の圧着部材33a,33bが圧着位置Apに達してシート束Sへの加圧力が所定値に到達したと判断して、綴じ駆動モータDC1を停止させる(ステップS7)。
次に、綴じ処理制御部70bは、予め定められた時間だけ加圧状態を維持した後、綴じ駆動モータDC1を逆回転させることにより固定側部材33aから離間する方向に可動側部材33bを移動させて(ステップS8)、一対の圧着部材33a,33bの圧着歯35が噛み合う状態を解除した待機位置Wpへ一対の圧着部材33a,33bを配置させ、綴じ動作を終了させる(ステップS9)。その後、スタック制御部70dは、綴じ処理を施されたシート束Sをスタックトレイ24に排出させる。
ステップS10で、一対の圧着部材33a,33bの噛み合わせがオフセット位置に切り換えられた場合には、図10(a)に示されているように、一対の圧着部材33a,33bが待機位置Wpでオフセット位置に配置される。この状態で、図10(b)に示されているように、処理トレイ23上で集積されたシート束Sが一対の圧着部材33a,33bの間に配置されると、綴じ処理制御部70bが綴じ処理駆動機構34の綴じ駆動モータDC1を駆動させることにより、綴じ処理動作を開始し、固定側部材33aに可動側部材33bを接近させる(ステップS11)。このとき、綴じ処理制御部70bは、電流検出回路75を通じてモータドライバ73から綴じ駆動モータDC1に供給される電流値を監視し、綴じ駆動モータDC1へ供給される電流値がRAM72から読みだされたオフセット位置用の閾値Bに達するまで可動側部材33bの移動を継続させる(ステップS12)。図10(c)に示されているように可動側部材33b及び固定側部材33aの複数の圧着歯35の頂部がシート束Sに当接した状態から、さらに固定側部材33aへ向かって可動側部材33bを接近させると、シート束Sの抵抗により、綴じ駆動モータDC1に供給される電流値が大きくなっていく。綴じ処理制御部70bは、綴じ駆動モータDC1へ供給される電流値が閾値Bに到達すると、図10(d)に示されているように、一対の圧着部材33a,33bが圧着位置Apに達してシート束Sへの加圧力が所定値に到達したと判断して、通常位置の場合と同様に、綴じ駆動モータDC1を停止させ(ステップS7)、予め定められた時間だけ加圧状態を維持した後、綴じ駆動モータDC1を逆回転させることにより固定側部材33aから離間する方向に可動側部材33bを移動させて(ステップS8)、一対の圧着部材33a,33bの圧着歯35が噛み合い状態を解除した待機位置へ一対の圧着部材33a,33bを配置させ、綴じ動作を終了させる(ステップS9)。その後、スタック制御部70dは、綴じ処理を施されたシート束Sをスタックトレイ24に排出させる。
オフセット位置では、可動側部材33aに対して固定側部材33aが通常位置から歯列方向に移動されているので、待機位置Wpから固定側部材33aへ向かって可動側部材33bを接近させたときに、可動側部材33bの圧着歯35の傾斜した側面が通常位置の場合よりも早く固定側部材33aの圧着歯35の傾斜した側面との間にシート束Sを挟圧した状態となると共に、可動側部材33bの圧着歯35の傾斜した側面が固定側部材33aの圧着歯35の傾斜した側面との間でシート束Sを加圧する領域の面積が小さくなる。すなわち、可動側部材33bの圧着歯35と固定側部材33aの圧着歯35との噛み合いが浅くなると共に、圧着歯35の間で加圧されるシート束Sの領域の面積が狭くなる。この結果、シート束Sの変形量と加圧面積の減少の相乗効果で、結束力が減少する。したがって、シート枚数が少ない場合などシート束Sの厚さが薄い場合に、オフセット位置を選択することで、シート束の厚さや材質に応じた適切な結束力の付与が可能になると共に、過剰な加圧や変形によるシートの破れを防止することが可能となる。
以上、図示されている実施形態を参照して、本発明による綴じ処理装置を説明したが、本発明は、図示されている実施形態に限定されるものではない。例えば、図示されている実施形態では、オフセット位置が一種類のみ設定されているが、二種類以上のオフセット位置を設定し、シート束Sの厚さなどに応じて、結束力をより細かく切り換えることも可能である。