JP2019072696A - 酸素貯蔵材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高く理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料を提供すること。【解決手段】 セリウム、ジルコニウム、ランタノイド系元素(但し、セリウムは除く。)、並びに、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素を含む複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素の少なくとも一部及び前記第5族元素の少なくとも一部が固溶しており、かつ、前記複合酸化物が以下の化学式(1):CewLnxZryMzOδ(1)(化学式(1)中、Ln及びMはそれぞれ前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素を示し、w、x、y及びzはそれぞれ、w=0.3〜0.65、x=0〜0.19(但し、x=0は含まない。)、y=0.3〜0.65、z=0〜0.19(但し、z=0は含まない。)、w+x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)で表される組成を有するものである、ことを特徴とする酸素貯蔵材料。【選択図】 なし

Description

本発明は、酸素貯蔵材料及びその製造方法に関する。
自動車エンジンなどの内燃機関から排出される排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化すると同時に、窒素酸化物(NOx)を還元できる排ガス浄化触媒としていわゆる三元触媒が知られている。
そして、排ガス浄化触媒を用いて排ガスを浄化するにあたって、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときに酸素を吸蔵でき、排ガス中の酸素濃度が低いときに酸素を放出できる酸素貯蔵能(Oxygen Storage Capacity(OSC))を有する材料を、排ガス浄化触媒の担体や助触媒として用いることが知られている。
このようなOSCを有する酸素貯蔵材料としては、従来からセリアが好適に用いられており、近年では、セリアを含有する様々な種類の複合酸化物が研究され、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法、固相法などによって得られる種々のセリア−ジルコニア系複合酸化物が開発されている。
例えば、特開2015−182931号公報(特許文献1)には、セリウムとジルコニウムとこれら以外の鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属元素とを含み、結晶構造としてパイロクロア相を含むセリア−ジルコニア系複合酸化物をいわゆる熔融法により製造する方法が開示されている。
しかしながら、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高い酸素貯蔵材料が求められるようになっており、前記特許文献1に記載のような従来の酸素貯蔵材料では必ずしも十分なものではなかった。
特開2015−182931号公報
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高い酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素としてセリウム以外のランタノイド系元素とニオブ又はタンタルとを選択し、かつ、いわゆる溶液燃焼合成法によりそれらの元素を所定の組成で含有する複合酸化物を製造することによって、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法、固相法などの他の方法では固溶させることが困難であったニオブやタンタルをランタノイド系元素(セリウムは除く)と共にセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることが可能となり、それによって約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高く理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の酸素貯蔵材料は、セリウム、ジルコニウム、ランタノイド系元素(但し、セリウムは除く。)、並びに、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素を含む複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、
前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素の少なくとも一部及び前記第5族元素の少なくとも一部が固溶しており、かつ、
前記複合酸化物が以下の化学式(1):
CeLnZrδ (1)
(化学式(1)中、Ln及びMはそれぞれ前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素を示し、w、x、y及びzはそれぞれ、w=0.3〜0.65、x=0〜0.19(但し、x=0は含まない。)、y=0.3〜0.65、z=0〜0.19(但し、z=0は含まない。)、w+x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
で表される組成を有するものであることを特徴とするものである。
また、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法は、
セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
セリウム以外のランタノイド系元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のランタノイド系元素含有化合物と、
ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素含有化合物と、
親水性有機化合物と、
を溶媒中で混合し、得られた混合物から溶液燃焼合成によって前記複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする方法である。
本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
1≦{(I111/I222)×100}≦5 (2)
を満たす前記複合酸化物からなるものであることが好ましい。
また、本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記複合酸化物がカチオン秩序構造を有していることが好ましい。
さらに、本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法においては、前記複合酸化物がパイロクロア相を含んでいることが好ましい。
なお、このような本発明の酸素貯蔵材料及びその製造方法によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、セリア−ジルコニア系複合酸化物に添加する元素としてセリウム以外のランタノイド系元素とニオブ又はタンタルとを選択し、かつ、いわゆる溶液燃焼合成法によりそれらの元素を所定の組成で含有する複合酸化物を製造することによって、ニオブやタンタルをランタノイド系元素(セリウムは除く)と共にセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶させることが可能となる。そのため、本発明の酸素貯蔵材料を構成する前記複合酸化物においては、ニオブ又はタンタルが固溶しているZrサイトと、ランタノイド系元素が固溶しているCeサイトとの相対的なイオン半径の差によってカチオン秩序化が生じ、比較的結合力の弱い酸素サイトが形成されるようになる。それによって、本発明の酸素貯蔵材料においては約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)が発揮されるようになり、含有されるセリウムの利用効率が十分に高く理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料が得られるようになると本発明者らは推察する。
本発明によれば、約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高く理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することが可能となる。
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた複合酸化物のX線回折パターンを示すグラフであり、(a)はXRDの全角パターン、(b)は2θ=13〜16°のパターン、(c)は2θ=25〜35°のパターンである。 実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた複合酸化物の格子定数の解析結果を示すグラフである。 実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた複合酸化物の400℃におけるセリウム利用効率を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の酸素貯蔵材料について説明する。すなわち、本発明の酸素貯蔵材料は、セリウム、ジルコニウム、ランタノイド系元素(但し、セリウムは除く。)、並びに、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素を含む複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、
前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素の少なくとも一部及び前記第5族元素の少なくとも一部が固溶しており、かつ、
前記複合酸化物が以下の化学式(1):
CeLnZrδ (1)
(化学式(1)中、Ln及びMはそれぞれ前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素を示し、w、x、y及びzはそれぞれ、w=0.3〜0.65、x=0〜0.19(但し、x=0は含まない。)、y=0.3〜0.65、z=0〜0.19(但し、z=0は含まない。)、w+x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
で表される組成を有するものであることを特徴とするものである。
本発明にかかる前記複合酸化物は、セリウム(Ce)と、ジルコニウム(Zr)と、セリウム以外のランタノイド系元素(Ln)と、ニオブ(Nb)及び/又はタンタル(Ta)とを含む複合酸化物である。セリア−ジルコニア複合酸化物にニオブやタンタルを添加しても、いわゆる共沈法、逆共沈法、水熱合成法、熔融法、固相法といった方法ではセリア−ジルコニア複合酸化物にそれらの元素を固溶させることが困難であるため酸素貯蔵能(OSC)の向上に寄与しないのに対し、本発明においては、後述するようにいわゆる溶液燃焼合成法により前記複合酸化物を製造することによって、セリア−ジルコニア複合酸化物にニオブやタンタルをランタノイド系元素(セリウムは除く)と共に固溶させることが可能となり、それによって得られる複合酸化物の低温におけるOSC及びセリウムの利用効率が著しく向上する。したがって、本発明にかかる前記複合酸化物においては、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素(Ln)の少なくとも一部及び前記第5族元素(M)の少なくとも一部が固溶していることが必要である。
なお、前記のセリウム以外のランタノイド系元素(Ln)としては、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられるが、中でも、イオン半径がCeのものよりも大きいという観点からランタン(La)が特に好ましい。
また、前記のニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)はいずれも周期律表の第5族に属する元素であり、互いに化学的な性質がよく似た元素であるが、イオン半径がZrのものよりも小さいという観点からニオブ(Nb)がより好ましい。
なお、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素(Ln)及び前記第5族元素(M)の少なくとも一部が固溶していることとその固溶の程度は、
(i)格子定数がベガード則に従って前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素の含有率(組成比[at%])の増加に伴って大きくなっていること、
(ii)(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素の含有率(組成比[at%])の増加に伴って大きくなっていること、
によって確認することができる。
本発明の酸素貯蔵材料においては、前記ランタノイド系元素(Ln)の少なくとも一部及び前記第5族元素(M)の少なくとも一部が前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に固溶していればよいが、酸素貯蔵能(OSC)及びセリウムの利用効率がより向上するという観点から、前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素(Ln)及び前記第5族元素(M)の90at%以上が固溶していることが好ましく、95at%以上が固溶していることが特に好ましい。なお、このように前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素(Ln)及び前記第5族元素(M)の90at%以上(特に好ましくは95at%以上)が固溶していることは、後述するX線回折(XRD)測定において、固溶していない前記ランタノイド系元素(Ln)及び前記第5族元素(M)の酸化物(LnMO)に相当するピーク(CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が28.5°、31.5°に現れるピーク)の存在が認められない、すなわち固溶していない前記酸化物(LnMO)の量が検出限界以下となっていることによって確認することができる。なお、このようなX線回折(XRD)測定としては、測定装置として理学電機社製の商品名「RINT−Ultima」を用いて、CuKα線を用い、40KV、40mA、2θ=5°/minの条件で測定する方法を採用することができる。また、回折線の「ピーク」とは、ベースラインからピークトップまでの高さが30cps以上のものをいう。
このような本発明にかかる複合酸化物の組成は、以下の化学式(1):
CeLnZrδ (1)
(化学式(1)中、Ln及びMはそれぞれ前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素を示し、w、x、y及びzはそれぞれ、w=0.3〜0.65、x=0〜0.19(但し、x=0は含まない。)、y=0.3〜0.65、z=0〜0.19(但し、z=0は含まない。)、w+x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
で表される組成を有するものである。
Ceの含有量が前記下限未満では十分なOSCが得られにくくなり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる。また、Zrの含有量が前記下限未満では十分なOSCが得られにくくなり、他方、前記上限を超えると単相として得ることができなくなる。さらに、前記ランタノイド系元素(Ln)の含有量が前記下限未満ではその元素(Ln)の添加によるOSC及びセリウムの利用効率の向上効果が十分に得られなくなり、他方、前記上限を超えると固溶していない酸化物(LnMO)が析出してセリウムの利用効率が低下する。また、前記第5族元素(M)の含有量が前記下限未満ではその元素(M)の添加によるOSC及びセリウムの利用効率の向上効果が十分に得られなくなり、他方、前記上限を超えると固溶していない酸化物(LnMO)が析出してセリウムの利用効率が低下する。
また、同様の観点から、wはより好ましくは0.4〜0.6であり、xはより好ましくは0〜0.1(但し、x=0は含まない。)であり、yはより好ましくは0.3〜0.5であり、zはより好ましくは0〜0.1(但し、z=0は含まない。)である。
なお、δは酸素原子(O)の組成であって、含まれる元素の価数から算出することによって1.9〜2.0の範囲内で変動するが、δ=2であることがより好ましい。
また、酸素欠陥の生成量を抑制するという観点から、前記ランタノイド系元素(Ln)と前記第5族元素(M)との比率(モル比)が、Ln:M=60:40〜50:50であることが好ましく、55:45〜50:50であることがより好ましい。
さらに、本発明にかかる前記複合酸化物においては、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
1≦{(I111/I222)×100}≦5 (1)
を満たしていることが好ましい。前記強度比(I111/I222)が前記下限未満では前記ランタノイド系元素(Ln)及び前記第5族元素(M)の固溶により形成されるカチオン秩序構造によるOSC及びセリウムの利用効率の向上効果が十分に得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとOSCを測定するための温度域(400〜600℃)において分相しやすくなる傾向にある。また、OSCの向上がより十分に得られるという観点から、前記強度比{(I111/I222)×100}が2以上であることがより好ましく、他方、OSCを測定するための温度域(400〜600℃)における分相がより十分に防止されるという観点から、前記強度比{(I111/I222)×100}が5以下であることがより好ましい。
また、本発明にかかる前記複合酸化物の平均結晶子径は、特に制限されないが、10〜100nmであることが好ましく、20〜80nmであることがより好ましい。このような平均結晶子径が前記下限未満ではOSCを測定するための温度域(400〜600℃)において分相しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとOSC及びセリウムの利用効率の向上効果が十分に得られにくくなる傾向にある。なお、このような平均結晶子径は、X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから市販の解析ソフト(例えば、リートベルト解析ソフト「Jana2006」)を用いて算出することができる。
さらに、本発明にかかる前記複合酸化物の比表面積は、特に制限されないが、1〜50m/gであることが好ましく、5〜20m/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満ではOSC及びセリウムの利用効率の向上効果が十分に得られにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとOSCを測定するための温度域(400〜600℃)において分相しやすくなる傾向にある。なお、このような比表面積は吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができ、例えば、市販の全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製、マイクロソープ MODEL−4232)を用いて得ることができる。
また、本発明にかかる前記複合酸化物としては、カチオン秩序構造を有していることが好ましい。すなわち、セリア−ジルコニア系複合酸化物は基本的に蛍石構造を有しているが、本発明にかかる前記複合酸化物においては、空間群が蛍石構造であるFm−3mからカチオン秩序構造であるP312に変化して、カチオン秩序構造が形成されていることを示す(111)面に帰属する回折線の超格子ピークが確認されることが好ましい。このような本発明にかかる前記複合酸化物においては、ニオブ又はタンタルが固溶しているZrサイトと、ランタノイド系元素が固溶しているCeサイトとの相対的なイオン半径の差によってカチオン秩序化が生じ、比較的結合力の弱い酸素サイトが形成されるようになるため、酸素貯蔵能(OSC)及びセリウムの利用効率がより向上する傾向にある。なお、カチオン秩序構造の空間群は一般的にP312であり、このようなカチオン秩序構造の空間群(P312)を仮定した場合に格子定数変化が直線性を示すことによって、カチオン秩序構造を有する固溶相が形成されていることを確認することができる。
さらに、本発明にかかる前記複合酸化物としては、パイロクロア相を含んでいることが好ましい。本発明にかかる前記複合酸化物がパイロクロア相を含んでいると、酸素が抜けるために必要なエネルギーの低下により、OSC及びセリウムの利用効率がより向上する傾向にある。なお、パイロクロア構造の空間群は一般的にFd−3mであり、X線回折(XRD)測定においてパイロクロア構造に由来するピーク(CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.0°〜16.0°に現れるピーク)の存在を認識することによって、複合酸化物がパイロクロア相を含んでいることを確認することができる。
また、本発明にかかる前記複合酸化物においては、ランタノイド系元素(ここではセリウムを含む)以外の希土類元素、及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有していてもよい。このような元素を含有させることで、本発明にかかる前記複合酸化物を排ガス浄化用触媒の担体として用いた場合に、より高い排ガス浄化能が発揮される傾向にある。このようなランタノイド系元素以外の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Yがより好ましい。また、アルカリ土類金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、中でも、貴金属を担持させた際に、貴金属との相互作用が強くなり、親和性が大きくなる傾向にあるという観点から、Mg、Ca、Baが好ましい。このような電気陰性度の低いランタノイド系元素以外の希土類元素及びアルカリ土類金属元素は、貴金属との相互作用が強いため、酸化雰囲気において酸素を介して貴金属と結合し、貴金属の蒸散やシンタリングを抑制し、排ガス浄化の際の活性点である貴金属の劣化を十分に抑制することができる傾向にある。
さらに、ランタノイド系元素以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有する場合においては、前記元素の含有量が、前記複合酸化物中に1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。このような元素の含有量が前記下限未満では、得られた複合酸化物に貴金属を担持させた場合に、貴金属との相互作用を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、酸素貯蔵能が低下してしまう傾向にある。
本発明の酸素貯蔵材料は、前記複合酸化物からなるものであり、約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高い。そのため、本発明の酸素貯蔵材料は、排ガス浄化触媒の担体や助触媒として好適に用いられる。このような本発明の酸素貯蔵材料を用いた好適な例としては、前記本発明の酸素貯蔵材料からなる担体と、前記担体に担持された貴金属とからなる排ガス浄化用触媒が挙げられる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金、銀などが挙げられる。また、他の例としては、他の触媒担体微粒子に貴金属が担持された排ガス浄化触媒の周囲に、前記本発明の酸素貯蔵材料を配置してなるものが挙げられる。
次に、前記本発明の酸素貯蔵材料を製造するための本発明の方法について説明する。
本発明の酸素貯蔵材料の製造方法は、
セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
セリウム以外のランタノイド系元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のランタノイド系元素含有化合物と、
ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素含有化合物と、
親水性有機化合物と、
を溶媒中で混合し、得られた混合物から溶液燃焼合成によって前記複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする方法である。
また、目的とする前記複合酸化物にランタノイド系元素以外の希土類元素及びアルカリ土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を更に含有させる場合は、その元素の化合物(その元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種)を更に添加して混合してもよい。
本発明で採用する溶液燃焼合成法は、金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の金属化合物を酸化剤、親水性有機化合物を還元剤(溶液燃焼合成法においては「燃料」という)とする液相酸化還元反応の一種である。具体的には、原料(酸化剤及び燃料)を水などの溶媒中で混合し、得られた混合物(溶液又はゲル)を加熱すると酸化剤と燃料との間で急激な発熱反応が生じ、そのまま所定温度で燃焼させることによって用いた金属の複合酸化物の微粉体が得られる。
本発明においては、溶液燃焼合成法における酸化剤として、
セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
セリウム以外のランタノイド系元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のランタノイド系元素含有化合物と、
ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素含有化合物と、
を用いる。
また、本発明においては、溶液燃焼合成法における酸化剤として、セリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩と前記ランタノイド系元素(Ln)の硝酸塩と前記第5族元素(M)の塩化物とを用いることが好ましい。このようなセリウム硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばCe(NH(NOが好ましい。また、ジルコニウム硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばZrO(NO・2HOが好ましい。さらに、前記ランタノイド系元素(Ln)の硝酸塩としては、特に制限されないが、例えばLn(NO・αHO(αはランタノイド系元素により異なる)が好ましい。また、前記第5族元素(M)の塩化物としては、特に制限されないが、例えばMClが好ましい。
また、溶液燃焼合成法における還元剤(燃料)として用いる親水性有機化合物としては、特に制限されないが、グリシン、グルコース、尿素、アラニン、オキサリルヒドラジンなどが好ましい。さらに、溶液燃焼合成法における溶媒としては、水が一般的に好適に用いられるが、硝酸イオンを含む水溶液(例えば、硝酸アンモニウムの水溶液)やエタノールなどの親水性有機溶媒であってもよい。
本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、先ず、前記酸化剤と前記還元剤(燃料)とを前記溶媒中で混合する。その際、目的とする前記複合酸化物の組成(ターゲット組成)に応じて金属原子が化学量論比となるように、酸化剤として用いる前記金属化合物(セリウム化合物、ジルコニウム化合物、ランタノイド系元素含有化合物及び第5族元素含有化合物)を混合することが好ましい。
また、溶液燃焼合成法においては、酸化剤と還元剤(燃料)の割合は重要である。一般に、酸化剤が還元されて金属又は金属酸化物になり、燃料が酸化されてCOやHOまで還元されると仮定した化学量論での酸化剤と還元剤(燃料)のモル比([酸化剤]/[還元剤])が1つの指標となる。この化学量論的モル比は用いる酸化剤や還元剤の種類によって異なる。溶液燃焼合成のために供給される原料のモル比(酸化還元反応に関与する酸化剤と還元剤(燃料)のモル比([酸化剤]/[還元剤])が化学量論的モル比に近くなるように酸化剤と還元剤とを混合することが好ましいが、還元剤(燃料)が過剰な状態で反応させて未反応物は燃焼反応の際に除去するようにしてもよい。
さらに、前記酸化剤及び前記還元剤(燃料)を混合する前記溶媒の量は、特に制限されないが、前記酸化剤と前記還元剤とを溶解させることが可能な最少量以上の量であればよく、最少量に近い(最少量の1〜2倍程度)ことが好ましい。
次に、本発明の酸素貯蔵材料の製造方法においては、前記酸化剤と前記還元剤(燃料)とを前記溶媒中で混合して得られた混合物から、沈殿処理なしで直接燃焼反応を経て合成することによって前記複合酸化物からなる本発明の酸素貯蔵材料が得られる。その際、燃焼反応に用いられる混合物は、用いた前記酸化剤と前記還元剤とが溶媒に溶解した溶液であることが好ましいが、酸化還元反応の中間生成物が生成したゲルであってもよい。また、燃焼反応の温度及び時間は、特に制限されないが、200〜600℃の温度範囲で1〜5時間程度であることが好ましい。さらに、燃焼反応の際の雰囲気は、特に制限されず、大気中であってもよいが、アルゴン、窒素、ヘリウムなどの不活性雰囲気であってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
試薬としては以下のものを用いた。
(1)セリウム硝酸塩:Ce(NH(NO(純度99.5%、和光純薬工業社製)
(2)ジルコニウム硝酸塩:ZrO(NO・2HO(純度97%、和光純薬工業社製)
(3)ランタン硝酸塩:La(NO・6HO(純度99.9%、和光純薬工業社製)
(4)ニオブ塩化物:NbCl(純度99.9%、和光純薬工業社製)
(5)親水性有機化合物:グリシン(CNO)(純度99%、和光純薬工業社製)
(6)硝酸塩:硝酸アンモニウム(NHNO)(純度98%、和光純薬工業社製)。
(実施例1)
ターゲット組成をCe0.45La0.05Zr0.45Nb0.05(La、Nbの組成(x)=0.05)として以下のようにして溶液燃焼合成法により前記組成を有する複合酸化物を得た。
すなわち、先ず、ニオブ塩化物を最少量の塩酸水溶液(濃度36%、和光純薬工業社製)に溶解してニオブ塩化物水溶液を調製した。次いで、前記ターゲット組成となるように化学量論比のセリウム硝酸塩とジルコニウム硝酸塩とランタン硝酸塩とニオブ塩化物水溶液とを表1に示す仕込み量で表1に示す最少量の純水に常温下にて溶解し、溶液が透明になったことを確認した後、全力チオン量に対して2当量に相当する表1に示す量のグリシンと全力チオン量に対して1当量に相当する表1に示す量の硝酸アンモニウムとを溶解して混合液(溶液)を得た。次に、得られた混合液をアルミナ坩堝に移し、脱脂炉にて400℃で2時間大気中で焼成して前記組成を有する複合酸化物の粉末を得た。得られた粉末の平均粒子径は約10μmであった。
(実施例2)
ターゲット組成をCe0.40La0.10Zr0.40Nb0.10(La、Nbの組成(x)=0.10)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有する複合酸化物の粉末を得た。
(実施例3)
ターゲット組成をCe0.35La0.15Zr0.35Nb0.15(La、Nbの組成(x)=0.15)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有する複合酸化物の粉末を得た。
(比較例1)
ターゲット組成をCe0.5Zr0.5(La、Nbの組成(x)=0)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有する複合酸化物の粉末を得た。
(比較例2)
ターゲット組成をCe0.30La0.20Zr0.30Nb0.20(La、Nbの組成(x)=0.20)とし、各試薬の量を表1に示す量としたこと以外は実施例1と同様にして前記組成を有する複合酸化物の粉末を得た。
<X線回折(XRD)測定>
実施例及び比較例で得られた複合酸化物の結晶相をX線回折法により測定した。なお、X線回折装置として理学電機社製の商品名「RINT−Ultima」を用いて、CuKα線を用い、40KV、40mA、2θ=5°/minの条件でX線回折パターンを測定した。
得られたX線回折パターンを図1に示す。図1において、(a)はXRDの全角パターン、(b)は2θ=13〜16°のパターン、(c)は2θ=25〜35°のパターンである。
得られたX線回折パターンから(222)面に帰属する回折線のメインピーク(2θ=28〜30°)の強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピーク(2θ=14〜16°)の強度(I111)の比率{(I111/I222)×100}を求めた結果を表2に示す。なお、比較例1及び比較例2で得られた複合酸化物においては超格子ピークは確認されず、前記強度比{(I111/I222)×100}は0%であった。
また、得られたX線回折パターンからリートベルト解析ソフト「Jana2006」をを用いて格子定数(Lattice parameter)の解析と平均結晶子径(Crystal size)の算出をし、得られた結果を表2及び図2に示す。なお、図2は空間群がカチオン秩序構造であるP312の場合の格子定数であり、表2中の格子定数の欄におけるカッコ内の数字は標準誤差である。
<比表面積の測定>
実施例及び比較例で得られた複合酸化物について、全自動比表面積測定装置(マイクロデータ社製、マイクロソープ MODEL−4232)を用いてBET1点法により比表面積(SSA)を測定した。得られた結果を表2に示す。
<酸素吸放出量(OSC)の測定>
実施例及び比較例で得られた複合酸化物について以下のようにして酸素吸放出量を測定した。すなわち、測定装置として熱重量測定装置「TGA‐50」(島津製作所社製)を用い、実施例及び比較例で得られた複合酸化物0.010gに対して400℃の条件下においてリーンガス(O(5容量%)+N(残量))とリッチガス(H(5容量%)+N(残量))とを5分毎に交互に切り替えて流し、複合酸化物の質量上昇値の3回平均から酸素吸放出量を求めた。さらに、複合酸化物に含有されるセリウム量に基づくOSCの理論値に対するOSCの実測値の割合からセリウムの利用効率(%)を算出した。得られた結果を表2及び図3に示す。
<複合酸化物の評価結果>
図1及び図2に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により実施例1〜3で得られた本発明の複合酸化物においては、カチオン秩序構造が形成されていることを示す(111)面に帰属する回折線の超格子ピークが確認され、(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する超格子ピークの強度(I111)の比率{(I111/I222)×100}が1〜5の範囲内であることが確認された。
また、本発明の製造方法により実施例1〜3で得られた本発明の複合酸化物においては、超格子のある空間群(P312)を仮定した場合に格子定数変化がより良い直線性を示したことから、空間群は蛍石構造であるFm−3mからカチオン秩序構造であるP312に変化していることが確認された。また、このような複合酸化物においては、X線回折(XRD)測定においてパイロクロア構造に由来するピーク(CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が14.0°〜16.0°に現れるピーク)の存在が認められたことから、パイロクロア相を含んでいることが確認された。
さらに、本発明の製造方法により実施例1〜3で得られた本発明の複合酸化物においては、格子定数がベガード則に従ってランタン及びニオブの含有率(La、Nbの組成(x))の増加に伴って直線的に大きくなっていることから、セリア−ジルコニア複合酸化物にランタン及びニオブが十分に固溶した状態となっていることが確認された。また、このような複合酸化物においては、固溶していないランタン及びニオブの酸化物(LaNbO)に相当するピーク(CuKαを用いたX線回折パターンの2θ角が28.5°、31.5°に現れるピーク)の存在が認められないことから、ランタン及びニオブの90at%以上がセリア−ジルコニア複合酸化物に固溶していることが確認された。
このような本発明の製造方法により実施例1〜3で得られた本発明の複合酸化物においては、400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)が発揮されており、含有されるセリウムの利用効率が十分に高く理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料であることが確認された。
それに対して、比較例1で得られたランタン及びニオブを含有していないセリア−ジルコニア複合酸化物においては、超格子ピークは確認されなかったことから、カチオン秩序構造は形成されていないことが確認された。そしてこのようなランタン及びニオブを含有していないセリア−ジルコニア複合酸化物においては、酸素貯蔵能及びセリウムの利用効率がいずれも本発明の複合酸化物に比べて劣っていることが確認された。
また、比較例2で得られたランタン及びニオブの含有率(La、Nbの組成(x))が本発明の範囲を超えている複合酸化物においては、格子定数がベガード則から逸れており、また、X線回折測定においてLaNbOに相当するピークの存在が認められたことから、セリア−ジルコニア複合酸化物に固溶していないランタン及びニオブの酸化物の存在が確認された。また、このような複合酸化物においては、明確な超格子ピークは確認されなかったことから、カチオン秩序構造は十分に形成されていないことが確認された。そしてこのようなランタン及びニオブの含有率(La、Nbの組成(x))が本発明の範囲を超えている複合酸化物においては、酸素貯蔵能及びセリウムの利用効率がいずれも本発明の複合酸化物に比べて劣っていることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、約400℃という比較的低温においても優れた酸素貯蔵能(OSC)を発揮することができ、含有されるセリウムの利用効率が十分に高く理論限界に迫るOSCを発揮することが可能な酸素貯蔵材料及びその製造方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明の製造方法により得られる本発明の酸素貯蔵材料は、排ガス浄化用触媒の担体や助触媒、触媒雰囲気調整材などとして好適に利用されるものである。

Claims (5)

  1. セリウム、ジルコニウム、ランタノイド系元素(但し、セリウムは除く。)、並びに、ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素を含む複合酸化物からなる酸素貯蔵材料であって、
    前記セリウムと前記ジルコニウムとの複合酸化物に前記ランタノイド系元素の少なくとも一部及び前記第5族元素の少なくとも一部が固溶しており、かつ、
    前記複合酸化物が以下の化学式(1):
    CeLnZrδ (1)
    (化学式(1)中、Ln及びMはそれぞれ前記ランタノイド系元素及び前記第5族元素を示し、w、x、y及びzはそれぞれ、w=0.3〜0.65、x=0〜0.19(但し、x=0は含まない。)、y=0.3〜0.65、z=0〜0.19(但し、z=0は含まない。)、w+x+y+z=1の条件を満たす数であり、δは1.9〜2.0の数である。)
    で表される組成を有するものである、
    ことを特徴とする酸素貯蔵材料。
  2. X線回折測定により得られるCuKαを用いたX線回折パターンから求められる(222)面に帰属する回折線のメインピークの強度(I222)に対する(111)面に帰属する回折線の超格子ピークの強度(I111)の比率(I111/I222)が以下の条件(2):
    1≦{(I111/I222)×100}≦5 (2)
    を満たす前記複合酸化物からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の酸素貯蔵材料。
  3. 前記複合酸化物がカチオン秩序構造を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素貯蔵材料。
  4. 前記複合酸化物がパイロクロア相を含んでいることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の酸素貯蔵材料。
  5. セリウム塩化物、セリウム硝酸塩、セリウム硫酸塩、セリウム酢酸塩及びセリウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のセリウム化合物と、
    ジルコニウム塩化物、ジルコニウム硝酸塩、ジルコニウム硫酸塩、ジルコニウム酢酸塩及びジルコニウム酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のジルコニウム化合物と、
    セリウム以外のランタノイド系元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種のランタノイド系元素含有化合物と、
    ニオブ及びタンタルからなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び酸化物からなる群から選択される少なくとも一種の第5族元素含有化合物と、
    親水性有機化合物と、
    を溶媒中で混合し、得られた混合物から溶液燃焼合成によって請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の前記複合酸化物からなる酸素貯蔵材料を得ることを特徴とする酸素貯蔵材料の製造方法。
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