JP2019072686A - 水蒸気吸着材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、デシカント空調では外気から導入される空気中の湿分を取り除くことが目的であるため、夏場の高湿度の空気からでも効率的に湿分を取り除けることが必要とされているばかりでなく、様々な空気の状態においても空気中の湿分を取り除く必要があるため、どの湿度領域においても水蒸気を吸着できる物質が求められている。
例えば、特許文献3には、特定の細孔容積、比表面積、構造を有する非晶質・高純度の調湿剤用シリカゲルに、調湿補助剤としてのアルカリ金属塩(吸湿性塩)を担持させる技術が開示されている。
また、特許文献4には、多孔性無機微粒子をポリテトラフルオロエチレンで結着した担持部材に、潮解性無機化合物を担持する技術が開示されており、多孔性無機微粒子としては、シリカゲルやゼオライト等の微粒子が挙げられている。
また、特許文献2に記載の非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性層状粘土鉱物との複合体においては、該複合体に吸湿性の塩を担持させ、吸着性能を向上させた粉体が開発された(特許文献6参照)。
そこで、吸着材を収容した吸着材収容塔を用い、外気の水分の吸着材への吸着、及び吸着した前記水分の吸着材からの脱離を交互に行うようにしたものが用いられている。
しかしながら、吸着材を収容塔に詰めて気体を流す場合、吸着材が粉体のままでは気体が流れずに止まってしまうか或いは気体の抵抗が大きくなるため、吸着材を造粒体にして抵抗を小さくすることが好ましい。
そこで、本発明者らは、非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる粉体を用いてマクロな細孔を有する造粒体を製造し、得られた造粒体に吸湿性の塩を担持させることを提案している(特許文献7参照)。
しかしながら、この方法では過剰に吸湿性の塩を添加すると、造粒体が水蒸気吸着時に膨張して、或いは再生のための乾燥時に収縮して、崩壊してしまい、吸脱着が繰り返し可能な造粒体を作製することは不可能であることが判明した。また、水蒸気の吸脱着工程において、吸湿性塩が造粒体の外に出てしまうことがあることも判明した。
[1]少なくとも非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体と吸湿性の塩とを含む造粒体からなる水蒸気吸着材であって、該造粒体の大気圧下において温度25℃、相対湿度95%における水蒸気吸着量が、その造粒体が有する細孔直径が1nm〜10μmのナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の合計による細孔容積以下となる量の前記吸湿性の塩を含むことを特徴とする水蒸気吸着材。
[2]少なくとも非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体に吸湿性の塩を含む造粒体からなる水蒸気吸着材の製造方法であって、非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体に吸湿性の塩を添加する際に、得られた造粒体の大気圧下において温度25℃、相対湿度95%における水蒸気吸着量が、その造粒体が有する細孔直径が1nm〜10μmのナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の合計による細孔容積以下になるように吸湿性の塩の量を調整することを特徴とする水蒸気吸着材の製造方法。
[3]水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液をSi/Alモル比が0.8以上、1.2以下となるように混合し、これに酸又はアルカリを添加してpH5〜9に調整した後、加熱することにより前記非晶質アルミニウムケイ酸塩を得ることを特徴とする[2]に記載の水蒸気吸着材の製造方法。
以下、本発明について、順に詳細に説明する。
(基材及びその製造方法)
本発明において、造粒体の基材材料として用いられる非晶質アルミニウムケイ酸塩は、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)及び水素(H)を構成元素とし、多数のSi−O−Al結合で組み立てられた水和ケイ酸アルミニウムである。
該非晶質アルミニウムケイ酸塩は、通常、ケイ素源及びアルミニウム源となる原料として、無機ケイ素化合物及び無機アルミニウム化合物を用い、これらの水溶液を混合攪拌して得られた前駆体を、加熱処理及び脱塩処理(洗浄)することにより人工的に得ることが可能である。
また、上記ケイ酸塩分子と結合させる無機アルミニウム化合物は、アルミニウムイオンを生成するものであればよく、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物が挙げられる。
これらのケイ素源及びアルミニウム源は、上記の化合物に限定されるものではなく、それらと同程度の効果を有するものであれば同様に使用することができる。
得られた粉体の粒径は、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μmである。
本発明における吸湿性の塩としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどのハロゲン化金属塩、硝酸リチウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウムなどの金属硝酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛などの金属硫酸塩、酢酸カリウムなどの金属酢酸塩、塩酸ジメチルアミンなどのアミン塩、オルトリン酸などのリン酸化合物、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジンなどのグアニジン塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などを挙げることができるが、中でも、ハロゲン化金属塩、グアニジン塩が好ましい。
本発明の水蒸気吸着材は、少なくとも前記の非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体と、前記の吸湿性の塩とを含む造粒体からなるものであって、該造粒体の大気圧下において、温度25℃、相対湿度95%における水蒸気吸着量が、その造粒体が有する細孔直径が1nm〜10μmのナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の合計による細孔容積以下となる量の前記吸湿性の塩を含むことを特徴とするものである。
吸着材に、大気圧下において、25℃、相対湿度95%において6時間水蒸気を吸着させ、その後100℃にて18時間乾燥させる。この乾燥後の吸着材の質量をaとする。次に、所定の相対湿度条件にて水蒸気を6時間吸着させ、吸着させた後の吸着材の質量をbとする。そして(b−a)/a×100(単位:mass%)を水蒸気吸着量cとする。
非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる粉体に添加する吸湿性塩の量は、得られた造粒体が吸着する水蒸気吸着量が、細孔直径が1nm〜10μmのナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の合計による細孔容積以下になるような量を添加する。
また、添加する水の量は、非晶質アルミニウムケイ酸塩に対し、50〜200mass%添加するのが好ましく、より好ましくは100〜150mass%である。
また、目的を満たす造粒体を作製するには、バインダーの添加量を、非晶質アルミニウムケイ酸塩の重量に対し、0〜50mass%添加する必要があるが、好ましくは0〜5mass%であり、全く添加しなくても可能である。
無機バインダーとしては、無機ゾルや粘土系バインダーが挙げられる。無機ゾルとしては、例えばアルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、セピオライトゾル、アタパルジャイトゾル、水ガラスなどが挙げられる。粘土系バインダーとしては、白土、カオリナイト、モンモリロナイト、アロフェン、蛙目粘土、セピオライト、アタパルジャイトなどが挙げられる。
有機バインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)等のセルロース系バインダー、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系バインダー、澱粉、小麦粉、ブリティシュガム、キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、プルラン等の多糖類系バインダー、ゼラチン等の動物系バインダー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系バインダー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル等のアクリル系バインダー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール等のその他樹脂系バインダーなどが挙げられる。
これらのバインダーの一種又は二種以上を混合して用いてもよい。
[造粒体の製造]
本発明における水蒸気吸着材の基材である非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体を、以下のようにして得た。
Si源としてSi濃度が495mmol/Lの水ガラス水溶液1000mLと、Al源としてAl濃度が450mmol/Lの硫酸アルミニウム水溶液1000mLを用いた。硫酸アルミニウム水溶液に水ガラス水溶液を加え、約15分間攪拌を行った。このときのSi/Alモル比は1.1である。攪拌後、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHが7程度になるまで添加した。水酸化ナトリウム水溶液の滴下量は12mLであった。このようにして生成させた懸濁液を1時間攪拌し前駆体懸濁液を作成した。
調整した1000mLの前駆体懸濁液を、2000mL用の耐熱容器に入れ、98℃で18時間加熱を行った。反応後、遠心分離にて3回洗浄し、60℃で1日乾燥させた後に、粉砕して粒径1〜50μmの粉体を得た。
得られた上記造粒体に、大気圧下にて、25℃、相対湿度95%において6時間水蒸気を吸着させ、その後100℃にて18時間乾燥後、温度25℃、相対湿度60%、70%、80%、90%、及び95%の各条件にて恒温恒湿槽で6時間水蒸気を吸着させ、それぞれの条件下における質量変化から水蒸気吸着量(mass%)を求め、水蒸気吸着性能評価を行った。
このとき、吸湿性の塩を担持させていない造粒体、すなわち、塩化リチウムを添加しないこと以外は上記実施例と同様にして得られた造粒体(以下「未処理品」とする)、シリカゲル、ゼオライト13Xを比較試料とした。
上記造粒体において、大気圧下にて、上記造粒体を温度25℃、相対湿度95%において6時間吸着させ、その後温度100℃にて18時間乾燥を20回繰り返して行った。
その結果20回繰り返し吸脱着を行っても、造粒体の崩壊はなく、構造劣化しないことを目視によって確認した。
上記造粒体において、大気圧下にて、上記造粒体を温度25℃、相対湿度95%において6時間吸着させ、その後温度100℃にて18時間乾燥を20回繰り返して行った。20回繰り返し吸脱着を行った際の水蒸気吸着量の結果を図2及び表2に示す。
実施例1で得られた造粒体の細孔容積を、細孔直径1nm〜100nmについては窒素吸着による測定から、細孔直径100nm〜10μmについては水銀ポロシメーターによる測定から、それぞれ求めたところ、細孔直径1nm〜100nmの細孔容積は0.661cm3/g、細孔直径100nm〜10μmの細孔容積は0.107cm3/gであり、ナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の細孔容積の和は0.768cm3/gであった。この細孔容積から求められる、実施例1の吸湿性塩の塩化リチウムが造粒体の外に出ない水蒸気吸着量の最大値は76.8mass%となり、相対湿度95%での吸着量58.3mass%よりも大きいことから、吸湿性塩の塩化リチウムが造粒体の外に出ないことが確認された。
実施例1で得られた造粒体において、X線CTにより観察した写真を図3に示す。図3に示すように、サブミクロン〜マイクロメートルオーダーのマクロ細孔が存在することが確認された。
[造粒体の製造]
実施例1と同じ非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体を用いて、非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体20gに、メチルセルロース0.8g及び塩化リチウム一水和物0.5gを水29.5gに溶解させた溶液を添加し、手で混練した後、クレイガンにて押出造粒を行った。このときの添加した塩化リチウムの量は非晶質アルミニウムケイ酸塩の2mass%にあたる。生成されたひも状の成型体を切断し、60℃で1日乾燥することにより、直径2mm、長さ4〜8mmの円柱状の造粒体を得た。このときに得られた造粒体の嵩密度は0.39g/mLであった。
実施例2で得られた造粒体を用いて、実施例1と同様にして、水蒸気吸着性能評価を行った。
実施例2の、非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体に対し2mass%の塩化リチウムを添加した際の水蒸気吸着量の結果を図4に示す。
図4に示すように、実施例2の、非晶質アルミニウムケイ酸塩に対し2mass%の塩化リチウムを添加した造粒体の水蒸気吸着量は、吸着時の相対湿度が、60%で28.3mass%、70%で29.4mass%、80%で35.7mass%、90%で44.8mass%、95%で50.6mass%であった。
また、相対湿度95%の吸着時における水蒸気吸着後の造粒体において、造粒体表面において濡れはなく、吸湿性塩の塩化リチウムを含む水が溢れていないことを確認した。
上記造粒体において、大気圧下にて、上記造粒体を温度25℃、相対湿度95%において6時間吸着させ、その後100℃にて18時間乾燥を20回繰り返して行った。
その結果20回繰り返し吸脱着を行っても、造粒体の崩壊はなく、構造劣化しないことを目視によって確認した。
上記造粒体において、大気圧下にて、上記造粒体を温度25℃、相対湿度95%において6時間吸着させ、その後100℃にて18時間乾燥を20回繰り返して行った。20回繰り返し吸脱着を行った際の水蒸気吸着量の結果を図5及び表3に示す。
実施例2で得られた造粒体の細孔容積を実施例1と同様にして求めたところ、細孔直径1nm〜100nmの細孔容積は0.702cm3/g、細孔直径100nm〜10μmの細孔容積は0.115cm3/gであり、ナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の細孔容積の和は0.817cm3/gであった。この細孔容積から求められる、実施例2の吸湿性塩の塩化リチウムが造粒体の外に出ない水蒸気吸着量の最大値は81.7mass%となり、相対湿度95%での吸着量50.6mass%よりも大きいことから、吸湿性塩の塩化リチウムが造粒体の外に出ないことが確認された。
[造粒体の製造]
実施例1と同じ非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体を用いて、非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体20gに、メチルセルロースを0.8g、塩化リチウム一水和物1.7gを水28.3gに溶解させた後に添加し、手で混練した後、クレイガンにて押出造粒を行った。このときの添加した塩化リチウムの量は非晶質アルミニウムケイ酸塩の6mass%にあたる。生成されたひも状の成型体を切断し、60℃で1日乾燥することにより、直径2mm、長さ4〜8mmの円柱状の造粒体を得た。このときに得られた造粒体の嵩密度は0.40g/mLであった。
比較例で得られた造粒体を用いて、実施例1と同様にして、水蒸気吸着性能評価を行った。
比較例の、非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体に対し6mass%の塩化リチウムを添加した際の水蒸気吸着量の結果を図6に示す。図6に示すように、非晶質アルミニウムケイ酸塩に対し6mass%の塩化リチウムを添加して得られた造粒体の水蒸気吸着量は、吸着時の相対湿度が60%で33.0mass%、70%で38.8mass%、80%で50.1mass%、90%で70.4mass%、95%で87.2mass%であった。
また、相対湿度95%では、造粒体表面に吸湿性塩の塩化リチウムを含む水が付いていることから、塩化リチウムを含む水が造粒体の外に出てしまうことが確認された。
比較例で得られた造粒体の細孔容積を実施例1と同様にして求めたところ、細孔直径1nm〜100nmの細孔容積は0.578cm3/g、細孔直径100nm〜10μmの細孔容積は0.093cm3/gであり、ナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の細孔容積の和は、0.671cm3/gであった。この細孔容積から求められる、比較例の吸湿性塩が造粒体の外に出ない水蒸気吸着量の最大値は67.1mass%となり、湿度95%での吸着量87.2mass%よりも小さいことから、吸湿性塩の塩化リチウムが造粒体の外に出てしまうことが確認された。
Claims (3)
- 少なくとも非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体と吸湿性の塩とを含む造粒体からなる水蒸気吸着材であって、該造粒体の大気圧下において温度25℃、相対湿度95%における水蒸気吸着量が、その造粒体が有する細孔直径が1nm〜10μmのナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の合計による細孔容積以下となる量の前記吸湿性の塩を含むことを特徴とする水蒸気吸着材。
- 少なくとも非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体に吸湿性の塩を含む造粒体からなる水蒸気吸着材の製造方法であって、
非晶質アルミニウムケイ酸塩の粉体に吸湿性の塩を添加する際に、得られた造粒体の大気圧下において温度25℃、相対湿度95%における水蒸気吸着量が、その造粒体が有する細孔直径が1nm〜10μmのナノ細孔・メソ細孔・マクロ細孔の合計による細孔容積以下になるように吸湿性の塩の量を調整することを特徴とする水蒸気吸着材の製造方法。 - 水ガラスと硫酸アルミニウム水溶液をSi/Alモル比が0.8以上、1.2以下となるように混合し、これに酸又はアルカリを添加してpH5〜9に調整した後、加熱することにより前記非晶質アルミニウムケイ酸塩を得ることを特徴とする請求項2に記載の水蒸気吸着材の製造方法。
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