JP2019071186A - リチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】過充電防止剤である炭酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池において、電極体の外部への分解ガスの排出を良好に行い得る技術の提供。【解決手段】容器と、容器に収容されている正極1、セパレータ2、負極3、及び電解液と、容器の内圧の上昇に応じて作動する感圧式安全機構と、を有し、セパレータ2は、2枚のセパレータ板20が周縁部20rで固着された袋状をなし、正極1は、一般集電部と、一般集電部から延びる一般集電部よりも幅の狭いタブ部12と、を有する正極集電体と、正極活物質及び炭酸リチウムを含み一般集電部上に設けられている正極活物質層と、タブ部12に設けられている多孔質層と、を有し、一般集電部及び正極活物質層はセパレータ2の内部に収容され、タブ部12及び多孔質層はセパレータ2の内外に連続している、リチウムイオン二次電池【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に関するものであり、より詳しくは、過充電防止剤を用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池には、当該リチウムイオン二次電池が満充電の状態であるにも関わらず、さらに充電が進行するとのいわゆる過充電に関する問題が存在する。リチウムイオン二次電池が過充電状態になると、正極、負極、電解液、セパレータなどのリチウムイオン二次電池の構成要素が分解又は変質し、その結果、過剰な発熱が生じたり、正極及び負極の短絡を招いたりする可能性がある。
リチウムイオン二次電池の過充電を抑制する方法として、電解液中に過充電防止剤を添加することが提案されている。例えば特許文献1には、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、及びジフェニルエーテルのうち少なくとも一種を電解液中に添加する技術が知られている旨が記載されている。
ところで、特許文献1には、上記の過充電防止剤は比較的低い電位で分解されること、及び、上記の過充電防止剤を含有する電池を高い電圧で使用する場合には、通常の電池使用時においても過充電防止剤が分解される虞があることも記載されている。
そして当該特許文献1には、炭酸リチウムの分解開始電圧は上記の各過充電防止剤に比べて高い電圧であり、当該炭酸リチウムは高電位で使用する電池の過充電防止剤として好適である旨が記載されている。
特開2016−192338号公報
過充電防止剤としての炭酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の充電時における電圧が炭酸リチウムの分解開始電圧以上になると、分解して二酸化炭素ガスや酸素ガスを生じる。炭酸リチウムの分解により生じたこれらの分解ガスにより、リチウムイオン二次電池の容器内圧が高まると、感圧式安全機構が作動して、リチウムイオン二次電池の充電が停止する。
上記した特許文献1にも記載されているが、過充電防止剤としての炭酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の正極活物質層に用られる。したがって、リチウムイオン二次電池の過充電時には正極活物質層内において分解ガスが生じる。過充電時に感圧式安全機構を迅速に動作させるためには、正極活物質層で生じた分解ガスを、正極、負極およびセパレータで構成される電極体の外部に迅速に排出し、リチウムイオン二次電池の容器内圧を迅速に高めることが好ましい。
特許文献1では、分解ガスの排出を考慮して、正極活物質層(特許文献1においては正極活物質合材層といわれる)の充填密度を2.2〜2.9g/cmとし、かつ、正極活物質層の空隙率を30〜40%とすることが提案されている。つまり、特許文献1では、正極活物質層をさほど密にしないことで、正極活物質層を分解ガスの流路として利用するものと考えられる。
しかし、近年、電池の更なる高容量化が望まれており、リチウムイオン二次電池においても、高容量化を実現するために、正極活物質層や負極活物質層を密にすることが求められている。この要求は、正極活物質層をさほど密にしないという上述した特許文献1の技術と相反する。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、過充電防止剤である炭酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池において、電極体の外部への分解ガスの排出を良好に行い得る新たな技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のリチウムイオン二次電池は、
容器と、前記容器に収容されている正極、セパレータ、負極、及び電解液と、前記容器の内圧の上昇に応じて作動する感圧式安全機構と、を有し、
前記セパレータは、2枚のセパレータ板が周縁部で固着された袋状をなし、
前記正極は、
一般集電部と、前記一般集電部から延びる前記一般集電部よりも幅の狭いタブ部と、を有する正極集電体と、
正極活物質及び炭酸リチウムを含み前記一般集電部上に設けられている正極活物質層と、
前記タブ部に設けられている多孔質層と、を有し、
前記一般集電部及び前記正極活物質層は前記セパレータの内部に収容され、前記タブ部及び前記多孔質層は前記セパレータの内外に連続している、リチウムイオン二次電池である。
本発明の技術によると、過充電防止剤である炭酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池において、電極体の外部への分解ガスの排出を良好に行い得る。
実施例1のリチウムイオン二次電池における正極、負極及びセパレータを模式的に表す説明図である。 実施例1のリチウムイオン二次電池における正極を模式的に表す一部切り欠き説明図である。 実施例1のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを図1中のX−X位置で切断した様子を表す説明図である。 実施例1のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを図1中のY−Y位置で切断した様子を表す説明図である。 実施例1のリチウムイオン二次電池における容器内部の様子を模式的に表す説明図である。 実施例2のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを模式的に表す一部切り欠き説明図である。 実施例3のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータの要部を模式的に表す一部切り欠き説明図である。 参考リチウムイオン二次電池における正極、負極及びセパレータを模式的に表す説明図である。 参考リチウムイオン二次電池における正極を模式的に表す一部切り欠き説明図である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「x〜y」は、下限xおよび上限yをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで新たな数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、
容器と、前記容器に収容されている正極、セパレータ、負極、及び電解液と、前記容器の内圧の上昇に応じて作動する感圧式安全機構と、を有し、
前記セパレータは、2枚のセパレータ板が周縁部で固着された袋状をなし、
前記正極は、
一般集電部と、前記一般集電部から延びる前記一般集電部よりも幅の狭いタブ部と、を有する正極集電体と、
正極活物質及び炭酸リチウムを含み前記一般集電部上に設けられている正極活物質層と、前記タブ部に設けられている多孔質層と、を有し、
前記一般集電部及び前記正極活物質層は前記セパレータに収容され、前記タブ部及び前記多孔質層は前記セパレータの内外に連続している、リチウムイオン二次電池である。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、集電体のタブ部に多孔質層を設け、かつ、タブ部及び当該多孔質層をセパレータの内外に連続するよう設けることで、炭酸リチウムの分解に伴い生じた分解ガスの電極体近傍での滞留を抑制でき、ひいては、電極体の外部への分解ガスの排出を良好に行い得る。その理由を以下に説明する。
既述したように、炭酸リチウムは正極活物質層に配合されるため、分解ガスは正極活物質層で生じる。正極活物質層で生じた分解ガスが電極体の近傍に滞留すると、後続の分解ガスの移動が阻害され、その結果、過充電時においてリチウムイオン二次電池の容器内圧を迅速に高めるのが困難になる。
過充電時における感圧式安全機構の応答性は、過充電時におけるリチウムイオン二次電池の容器内圧の上昇速度に密接に関連する。したがって、過充電時における感圧式安全機構の応答性を高めるためには、正極活物質層で生じた分解ガスを迅速に電極体の外部に排出することが肝要である。
ところで、リチウムイオン二次電池の高容量化を図るためには、電極体のうち、正極の正極活物質層及び負極の負極活物質層を密に形成する必要がある。密に形成された正極活物質層及び負極活物質層には、分解ガスの流路となり得る細孔の数も多くはないと考えられる。これに対して、正極活物質層と負極活物質層との間に設けられるセパレータは、比較的低密度であり、正極活物質層及び負極活物質層に比べて分解ガスの通過を許容し得る細孔を多く有すると考えられる。
このため、電極体における分解ガスの流路としての機能は、主としてセパレータが担うと考えられる。
ここで、セパレータとして袋状のものを用い、当該袋状のセパレータに正極を収容する場合には、セパレータの分解ガスの流路としての機能が充分に発揮されない場合がある。
以下、図8及び図9を用いて、袋状のセパレータを用いたリチウムイオン二次電池における分解ガスの流路について説明する。なお、図8及び図9に示すリチウムイオン二次電池は、集電体のタブ部に多孔質層を有さない点において、本発明のリチウムイオン二次電池とは本質的に異なるものである。以下、図8及び図9に示される当該リチウムイオン二次電池を、参考リチウムイオン二次電池と称する。
参考リチウムイオン二次電池における正極、セパレータ及び負極を模式的に表す説明図を図8に示す。図8に示す正極を一部切り欠いた様子を模式的に表す説明図を図9に示す。
図8及び図9に示すように、参考リチウムイオン二次電池は、負極103と、袋状のセパレータ102に収容された正極101と、が交互に重ねられたものであり、負極103、セパレータ102及び正極101で構成される電極体160は、図略の電解液とともに図略の容器に収容される。
図8及び図9に示すように、袋状のセパレータ102は、2枚のセパレータ板120が周縁部120rで固着されたものであり、セパレータ102のうち当該周縁部120rに囲まれる中央の部分は、一方の面で正極活物質層115に接し、他方の面で負極活物質層135に接する。既述したように、正極活物質層115及び負極活物質層135は分解ガスの流路となり難いため、正極活物質層115で生じた分解ガスの大部分は、セパレータ102を介して電極体160の内部から電極体160の外部に排出されると考えられる。
具体的には、正極活物質層115で生じた分解ガスの一部は、多孔質のセパレータ板120の細孔を通って電極体160の外部に流出すると考えられる。
また、当該分解ガスの他の一部は、セパレータ板120を経てセパレータ板120と負極活物質層135との界面に流出すると考えられる。セパレータ板120と負極活物質層135との界面に流出した分解ガスは、そのままセパレータ板120と負極活物質層135との間隙を伝って、電極体160の外部に流出すると考えられる。
一方、正極活物質層115で生じた分解ガスの他の一部は、正極活物質層115とセパレータ板120との界面に流出すると考えられる。
ここで、セパレータ102の周縁部120rには、2枚のセパレータ板120が固着された部分(固着周縁部128と称する)が形成される。2枚のセパレータ板120を固着する方法としては、溶着や接着等、種々の方法を採用し得るが、何れの場合にも、固着周縁部128において細孔の大部分はシールされるか潰されるため、固着周縁部128は分解ガスの流路として充分に機能し難い。したがって、正極活物質層115とセパレータ板120との界面に流出した分解ガスは、セパレータ102の袋内部102c、つまり、2枚のセパレータ板120の間隙に封入された状態となる。
分解ガスの気泡が微細でありセパレータ板120の細孔が分解ガスの気泡に対して充分に大きければ、正極活物質層115とセパレータ板120との界面に流出した分解ガスは、セパレータ板120の細孔を通過してセパレータ板120の内部に進入し得る。この場合、分解ガスはセパレータ板120の細孔を通ってセパレータ102及び電極体160の外部に流出し得る。しかし、セパレータ102の袋内部102cにおいて分解ガスの気泡が凝集し大きく成長してしまうと、分解ガスの気泡はセパレータ板120の細孔を通過し難くなり、セパレータ102の袋内部102cから外部への分解ガスの流路は、ほぼ、固着周縁部128の切れ間129のみとなる。
図8及び図9に示されるように、固着周縁部128の切れ間129には、タブ部112が挿通される。セパレータ102の袋内部102cの分解ガスは、当該切れ間129において、セパレータ板120とタブ部112との間隙を伝って、セパレータ102の外部かつ電極体160の外部に流出し得ると考えられる。
ここで、固着周縁部128の切れ間129において、セパレータ板120がタブ部112に密着してしまうと、セパレータ板120とタブ部112との間隙、つまり、セパレータ102の袋内部102cから外部に至る分解ガスの流路が閉じられる。この場合には、分解ガスがセパレータ102の袋内部102cにおいて正極101の近傍に滞留したまま、リチウムイオン二次電池の外部に良好に排出されない。
本発明の発明者は、セパレータ102の袋内部102cから外部に分解ガスを好適に流出させ、過充電時における感圧式安全機構の応答性を高めるためには、固着周縁部128の切れ間129において、セパレータ板120とタブ部112との間に充分な分解ガスの流路を確保することが有効であると考え、本発明に到達した。
実施例1にて詳細に説明するが、図1及び図2に一例を示すように、本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極集電体10のタブ部12に多孔質層18を設け、かつ、タブ部12及び当該多孔質層18をセパレータ2の内外に連続するよう設ける。ここでいうセパレータ2の内外とは、当然乍ら、セパレータ2の袋内部2cと外部とを意味する。多孔質層18はタブ部12とセパレータ板20との間でスペーサとして機能し、かつ、多孔質層18自身が分解ガスの流路となり得る。このためセパレータ2の袋内部2cに滞留した分解ガスは、多孔質層18を通ってセパレータ2の袋内部2cから外部に流出するか、又は、タブ部12とセパレータ板20との間隙を通ってセパレータ2の袋内部2cから外部に流出すると考えられる。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池によると、過充電時に炭酸リチウムの分解に伴い生じた分解ガスが電極体6の近傍で滞留することを抑制でき、ひいては過充電時における感圧式安全機構の応答性を高め得る。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池を構成要素毎に説明する。なお、正極、負極の両方に共通する事項については、特に正極、負極の区別を付さず説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池における正極は、正極集電体及び正極集電体上に形成された正極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。このうちアルミニウムは、正極の電位をリチウム対極基準で4V以上とする場合の集電体として好ましく使用される。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
正極集電体は、一般集電部とタブ部とで構成される。このうち一般集電部は、正極活物質層が形成される部分であるとともに、袋状のセパレータに収容される部分でもある。一方タブ部は、一般集電部から延びる部分であり、一般集電部よりも幅の狭い部分である。ここでいう「幅」とは、タブ部の延びる方向に直交する方向の長さを指す。つまり、タブ部の延びる方向を第1方向、当該第1方向に直交する方向を第2方向とすると、「一般集電部の幅」とは、第2方向における一般集電部の長さを意味する。また、「タブ部の幅」とは、当該第2方向におけるタブ部の長さを意味する。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池において、「タブ部が一般集電部よりも幅の狭い」とは、タブ部の第2方向における長さが、当該第2方向における一般集電部の長さよりも短いことを意味する。
一般集電部の幅及び長さ、並びに、タブ部の幅及び長さに特に制限はなく、リチウムイオン二次電池に要求される性能や形状に応じて適宜設計すれば良い。
正極活物質層は、正極活物質及び炭酸リチウムを必須とし、必要に応じて導電助剤や結着剤等の添加剤を含み得る。
正極活物質は特に限定されず、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能なものであれば良い。
例えば、正極活物質としては、層状化合物のLiNiCoMn(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、LiNiCoAl(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル、及びスピネルと層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の各組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも正極活物質として使用可能である。また、正極活物質として、充放電に寄与するリチウムイオンを含まない正極活物質材料、たとえば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。
上記の正極活物質のうち、LiFePOに代表されるオリビン構造の化合物は熱安定性に優れた正極活物質であることが知られている。これらの正極活物質は、高容量と熱安定性との両立を図るために、例えば層状化合物のLiNiCoMn等の他の正極活物質に併用される場合がある。
このようなオリビン構造の正極活物質は、比較的硬質である。このため、正極活物質として当該オリビン構造の正極活物質を主に含む正極活物質層は、他の正極活物質を主に含む正極活物質層に比べて、剛性が高く、リチウムイオン二次電池内においても圧縮され難い。そうすると、オリビン構造の正極活物質を主に含む正極活物質層は、多孔質層同様に分解ガスの流路として機能し得るといえる。
以下、必要に応じて、オリビン構造の正極活物質をオリビン活物質と称する。また、必要に応じて、オリビン活物質を主に含む正極活物質層を、オリビン正極活物質層と称する。なお、ここでいう「主に含む」とは、正極活物質層に含まれる正極活物質の50質量%以上をオリビン活物質が占めることを意味する。
正極の容量を高く維持しつつ、分解ガスの好適な流路としてオリビン正極活物質層を機能させることを考慮すると、オリビン正極活物質層と、オリビンを含まない正極活物質層とを別々に設けるのが好ましい。以下、必要に応じて、オリビンを含まない正極活物質層を一般正極活物質層と称する。
炭酸リチウムは、オリビン正極活物質層と一般正極活物質層との何れに含まれても良いが、オリビン正極活物質層が分解ガスの流路となることを考慮すると、少なくともオリビン正極活物質層が炭酸リチウムを含むのが好ましい。
例えば、集電体の一般集電部上に、一般正極活物質層とオリビン正極活物質層とを帯状に交互に形成しても良い。この場合、分解ガスをセパレータ及び電極体の外部に好適に排出するためには、一般正極活物質層及びオリビン正極活物質層は、その長手方向を既述した第1方向と一致させるのが好ましい。換言すれば、この場合、帯状をなす一般正極活物質層及びオリビン正極活物質層は、同じく帯状をなすタブ部とその長手方向を一致させるのが好ましい。
更にこの場合、一般正極活物質層及びオリビン正極活物質層は、一般集電部の幅方向に沿って交互に配置されるところ、オリビン正極活物質層は一般集電部の幅方向においてタブ部と同位置に配置されるのが好ましい。こうすることで、オリビン正極活物質層を流出した分解ガスが多孔質層に好適に移動し得るため、セパレータ及び電極体から外部への分解ガスの排出が好適に行われる。この場合、多孔質層はオリビン正極活物質層と隣接するのが好ましく、多孔質層はオリビン正極活物質層と接触するのがより好ましい。
また、一般集電部上に一般正極活物質層とオリビン正極活物質層との一方を形成し、その上に他方を形成しても良い。
この場合、オリビン活物質の熱安定性を有効に利用する為には、オリビン正極活物質層は、一般正極活物質層の下層、つまり集電体側に形成されるのが好ましい。換言すると、オリビン正極活物質層は、一般正極活物質層と一般集電部との間に介在するのが好ましい。この場合、一般正極活物質層の一面全体がオリビン正極活物質層に接触するのがより好ましい。こうすることで、一般正極活物質層のうち分解ガスの流路に接触する部分の面積を非常に大きくでき、一般正極活物質層で生じた分解ガスを効率良く電極体の外部に排出できる。
オリビン活物質としては、オリビン構造のLiMPO(MはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、B、Te、Moから選ばれる少なくとも1の元素、0<h<2)を挙げることができる。
上記LiMPOのMは、Mn、Fe、Co、Ni、Mg、V、Teから選ばれる少なくとも1の元素であるのが好ましく、また、hは0.6<h<1.1であるのが好ましい。当該Mは、Mn及び/又はFeであるのがより好ましく、また、h=1であるのがより好ましい。LiMPOとしては、MnとFeが共存するLiMnFePO(x+y=1、0<x<1、0<y<1)で表されるものが、さらに好ましい。xとyの範囲として、0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9、0.2≦x≦0.8、0.2≦y≦0.8も例示できる。
LiMPOの具体例としては、例えば、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、LiVPO、LiTePO、LiV2/3PO、LiFe2/3PO、LiMn7/8Fe1/8PO、LiMn0.67Fe0.33POが挙げられる。
オリビン活物質は、比較的導電性が低いことが知られている。したがって、オリビン活物質の正極活物質としての機能を充分に活かすためには、オリビン活物質を導電助剤と併用するのが好ましい。具体的には、当該オリビン活物質は炭素で被覆するのが好ましい。
分解ガスの流路として好適に機能することを考慮すると、オリビン正極活物質層における細孔の孔径は大きい方が良い。大きな細孔を有するオリビン正極活物質層を形成するためには、オリビン活物質として粒径の大きなものを用いるのが有効である。具体的には、オリビン活物質の平均粒子径は、正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径よりも大きいと良い。
正極活物質層に含まれる正極活物質の平均粒子径は、100μm以下が好ましく、0.1〜50μmの範囲内がより好ましく、1〜20μmの範囲内がさらに好ましく、3〜12μmの範囲内が特に好ましい。
これに対して、オリビン活物質の平均粒子径は、100μm以下が好ましく、1〜50μmの範囲内がより好ましく、5〜30μmの範囲内がさらに好ましく、12〜21μmの範囲内が特に好ましい。
炭酸リチウムは、感圧式安全機構に必要とされる分解ガスの量に応じた量で、正極活物質層に含まれれば良い。
例えば、炭酸リチウムと正極活物質との配合割合は、質量比で、炭酸リチウム:正極活物質=1:10〜1:100の範囲内であるのが好ましく、1:20〜1:80の範囲内であるのがより好ましく、1:30〜1:60の範囲内とであるのが特に好ましい。
また、炭酸リチウムとしては、過充電時の反応性を考慮して、粉末状態のものを用いるのが好ましい。炭酸リチウムの好適な平均粒子径としては、0.1〜50μm、0.5〜30μm、1〜20μmを例示できる。なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した場合のD50を意味する。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.01〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.03〜1:0.1であるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
炭酸リチウムに優れた導電性を付与する為に、導電性に優れる導電助剤を当該炭酸リチウムに併存させても良い。この場合には、炭酸リチウムに効率的に電圧を印加でき、過充電時における炭酸リチウムの分解、つまり分解ガスの発生を効率的かつ迅速に行い得る。炭酸リチウムに導電助剤を併存させる態様として、炭酸リチウムと導電助剤とをともに正極活物質層中に配合する態様の他、炭酸リチウムを導電助剤でコートする、炭酸リチウムを導電助剤と複合化する、等の態様を挙げることもできる。炭酸リチウムを導電助剤と複合化する方法としては、ミリング等の一般的な方法を選択し得る。
結着剤は、活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、活物質:結着剤=1:0.001〜1:0.3であるのが好ましく、1:0.005〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.01〜1:0.15であるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
本発明のリチウムイオン二次電池は、後述する多孔質層を有する。多孔質層は分解ガスの流路として機能し得る。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池における正極活物質層には、分解ガスの流路としての機能はあまり要求されない。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極活物質層の目付量や密度を大きくできる。具体的には、正極活物質層の目付量の上限は、集電体における一般集電部の一面あたり、30mg/cm以下、40mg/cm以下、又は50mg/cm以下にまで大きくできる。正極活物質層の目付量に下限はないが、敢えて挙げるとすると、10mg/cm以上、15mg/cm以上、20mg/cm以上の各範囲が挙げられる。
また、正極活物質層の密度の上限は、3.6g/cm以下、4.0g/cm以下、又は4.5g/cm以下にまで大きくできる。正極活物質層の密度にも下限はないが、敢えて挙げるとすると、2.6g/cm以上、2.7g/cm以上、2.8g/cm以上、2.9g/cm以上、2.9g/cm超の各範囲が挙げられる。
同様に、本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極活物質層の空隙率を小さくすることができる。正極活物質層の空隙率の上限として、40%以下、30%以下、30%未満、25%以下、20%以下の各範囲を挙げることができる。正極活物質層の空隙率の下限としては、5%以上、10%以上、15%以上の各範囲が挙げられる。なお、空隙率は、正極活物質層に含まれる成分の質量比及び真密度、並びに、正極活物質層の質量及び体積から算出することができる。なお、本明細書で説明する他の空隙率についても同様である。
同様に、本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極活物質層の厚さを大きくすることができる。正極活物質層の厚さの下限として、40μm以上、60μm以上、80μm以上、100μm以上の各範囲が挙げられる。正極活物質層の厚さの上限としては、500μm以下、400μm以下、200μm以下の各範囲が挙げられる。
既述したように、正極はセパレータに収容される。セパレータは、2枚のセパレータ板が周縁部で固着された袋状をなすものであり、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンや電解液の通過を許容する。
セパレータ板としては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータ板は多層構造としてもよい。セパレータ板は正極と負極とを隔離できれば良く、その厚さは特に限定されない。
2枚のセパレータ板を固着する方法としては、接着、溶着等の既知の方法を採用し得る。接着により2枚のセパレータ板を固着する場合には、接着剤は、電気絶縁性を有するとともに、本発明のリチウムイオン二次電池の使用条件下において物理的及び化学的に安定なものであるのが好ましい。具体的には、接着剤としては、上記のセパレータ板の材料や、結着剤として挙げた樹脂材料を用い得る。セパレータ板が熱可塑性樹脂製であれば、2枚のセパレータ板を固着する方法として溶着を採用するのが合理的である。
セパレータにおける固着周縁部は、セパレータの周縁部に連続的に設けても良いし、断続的に設けても良い。つまり、セパレータは上記した固着周縁部の切れ間を一つだけ有しても良いし、複数有しても良い。固着周縁部の切れ間には、正極集電体のタブ部を、後述する多孔質層とともに配置しても良い。
場合によっては、固着周縁部はセパレータの周縁部全周にわたって連続的に設けても良い。この場合、固着周縁部の切れ間はなくなるため、タブ部は固着周縁部を貫通してセパレータの袋内部から外部に連続しても良い。この場合、例えば矩形の2枚のセパレータ板を重ね、その周縁部の三辺を予め溶着しておき、当該周縁部の空いている一辺から外部に向けてタブ部を出しつつ2枚のセパレータ板の間に正極を収容し、最後に上記の周縁部の空いている一方をタブ部ごと溶着すれば良い。この場合、実際には、後述する多孔質層がタブ部とセパレータ板との間に介在し、セパレータ板は多孔質層の表面に溶着される。
本発明のリチウムイオン二次電池においては、正極集電体のタブ部に多孔質層が形成される。多孔質層は文字通り多孔質であり、多孔質層の細孔は分解ガスの流路となる。多孔質層における細孔の孔径は特に問わないが、比較的大きく成長した分解ガスの気泡を通過させ得る程度に大径であるのが好ましい。多孔質層における細孔の好ましい孔径として、例えば、0.1μm〜300μm、0.2μm〜200μm、0.3μm〜100μm、0.5μm〜50μmの各範囲を挙げ得る。
分解ガスの流通を好適に行うためには、多孔質層における細孔の割合は多い方が良いと考えられる。具体的には、多孔質層は、少なくとも正極活物質層よりも粗であるのが良い。
物体の粗、密の程度を表す指標として空隙率を採用すると、正極活物質層の空隙率は、一般に、10〜40%である。これを考慮すると、多孔質層の空隙率は、15%以上であるのが好ましく、20%以上であるのがより好ましく、30%以上であるのが更に好ましく、40%以上であるのがなお好ましく、50%以上であるのが特に好ましい。
一方、タブ部とセパレータ板との間でスペーサとして好適に機能するためには、多孔質層にはある程度の剛性が要求されるため、剛性の点では多孔質層の空隙率は小さい方が良いと考えられる。これを上記の条件に加えて考慮すると、多孔質層の空隙率は、15〜75%であるのが好ましく、20〜73%であるのがより好ましく、30〜70%であるのが特に好ましいといえる。
多孔質層は、上記の細孔を有し、かつ、本発明のリチウムイオン二次電池の使用条件下において、物理的及び化学的に安定なものが好ましく、その材料は特に問わない。具体例として、各種のセラミックスや、合成樹脂等の高分子を主成分とする発泡材を例示できる。
セラミックスとしては、Al、SiO、TiO、ZrO、MgO、SiC、AlN、BN、CaCO、MgCO、BaCO、タルク、マイカ、カオリナイト、CaSO、MgSO、BaSO、CaO、ZnO、ゼオライトを例示できる。セラミックスを採用する場合は、セラミックス粒が結着剤で固着された複合体を採用しても良いし、当該複合体が焼結された低密度セラミックス板を採用しても良いし、その他の態様のものを採用しても良い。
上記の発泡材を構成する高分子としては、ポリエチレン及びポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル、ポリイミド、ポリアミド及びポリアミドイミドに代表されるアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系樹脂、並びに、シリコーン樹脂を例示できる。
シリコーン樹脂は、RSiO(4−y)×0.5(Rは、それぞれ独立に、置換されていても良い炭素数1〜20の一価又は二価の炭化水素基であり、yは0〜3である。)で表される単位構造を複数有し、シロキサン結合による骨格を有する高分子である。Rで表される一価又は二価の炭化水素基の炭素数として、1〜14、1〜12の範囲を挙げることができる。当該炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基又はアルキレン基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Rの2以上はアルケニル基であっても良い。当該アルキル基の具体例としてはメチル基が挙げられる。当該アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基又はヘプテニル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。当該アリール基の具体例としてはフェニル基が挙げられる。yは2が好ましい。
なお、発泡材が高分子を主成分とする場合、その製造過程における発泡機序は特に限定しない。一般に、高分子を主成分とする発泡材は、マトリックスとなる高分子と、気体を生じる発泡剤とを含有する組成物を原料として製造される。発泡剤としては、発泡開始剤と化学反応して気体を生じるものが一般的であるが、これに限らず、熱分解されることで気体を生じるものや熱により体積の増大するもの等を用いても良い。
公知の発泡剤の一例を挙げると、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸化合物、アゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、および、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、ベンゼンスルフォニルヒドラジド、ベンゼン−1,3−スルフォニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルフォニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)、および、パラトルエンスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,および、N’−ジメチルフタルアミド等のニトロソ化合物、テレフタルアジド、および、p−t−ブチルベンズアジド等のアジド化合物である。
その他、熱により体積の増大する発泡剤として、熱可塑性樹脂からなる外殻に揮発性有機溶剤が封入されたカプセル発泡剤を挙げることができる。カプセル発泡剤における外殻と揮発性有機溶剤との組み合わせや発泡温度等の条件を適宜設定することで、外殻が欠損して、細孔が連絡し合う連泡型の発泡材を得ることが可能である。
上述した材料を単独で用いて又は併用して、タブ部に多孔質層を形成すれば良い。タブ部に多孔質層を形成する方法は、タブ部の表面に上述した材料を圧着する方法、タブ部の表面に上述した材料を熱融着する方法、接着剤を用いてタブ部の表面に上述した材料を接着する方法、タブ部の表面に上述した材料若しくは当該材料の前駆体であるモノマー及び溶剤を含有するペーストを塗布し、乾燥若しくは重合させる方法を例示できる。
多孔質層はタブ部とともにセパレータの内外に連続すれば良く、タブ部におけるその他の領域においては、その形状や大きさ等は特に問わない。例えば、タブ部における上記のその他の領域において、多孔質層は連続的に形成されても良いし、断続的に形成されても良いし、形成されなくても良い。タブ部とセパレータ板との間に分解ガスの流路を形成するためのスペーサとしての機能を考慮すると、多孔質層は、タブ部において少なくともセパレータの内外に連続し得る一部に形成されれば良い。一方、分解ガスの流路としての機能を考慮すると、多孔質層はタブ部の延び方向に連続的に形成されるのが好ましい。なお、多孔質層は、正極集電体のうち正極活物質層と同じ側の面に形成されるのが好ましい。正極集電体の両面に正極活物質層が形成される場合には、多孔質層はタブ部の両面に形成されるのが好ましい。
分解ガスの流路として好適に機能することを考慮すると、多孔質層は正極活物質層と隣接するのが好ましい。例えば正極活物質層が一般集電部の全面に形成されない場合、一般集電部に形成された正極活物質層とタブ部に形成された多孔質層とが離れる。したがって、この場合には、多孔質層を一般集電部の表面にも形成して、多孔質層と正極活物質層とを隣接させるのが良い。なお、多孔質層と正極活物質層とは僅かに離間しても良いが、接触し連続的に設けられるのが好ましい。
多孔質層の厚さは特に問わないが、分解ガスの流路として好適に機能することを考慮すると、正極活物質層の厚さの1/3以上であるのが好ましく、1/2以上であるのがより好ましく、2/3以上であるのが更に好ましい。多孔質層の厚さに上限は特にないが、リチウムイオン二次電池の大きさを徒に大きくしないためには、正極活物質層の厚さの2倍以下であるのが好ましく、3/2倍以下であるのがより好ましく、1倍以下であるのが更に好ましい。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものと同様のものを、適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料を使用可能である。したがって、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。ケイ素などを負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となるが、リチウムの吸蔵及び放出に伴う体積の膨張及び収縮が顕著となるとの問題が生じる恐れがあるため、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属などの他の元素を組み合わせた合金又は化合物を負極活物質として採用するのも好適である。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiO(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質として、Nb、TiO、LiTi12、WO、MoO、Fe等の酸化物、又は、Li3−xN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
より具体的な負極活物質として、黒鉛や、ケイ素系材料を例示できる。ケイ素系材料は、ケイ素を含む材料をいい、Siを含有し、負極活物質として機能するものであればよい。
ケイ素系材料はリチウムイオンの吸蔵及び放出に伴い、大きく体積変化する。具体的には、ケイ素系材料はリチウムイオン二次電池の充電時にリチウムイオンを吸蔵して膨張する。
過充電時に炭酸リチウムが分解すると、分解ガスとともにリチウムイオンも生じる。したがって、過充電時には、正極活物質から放出されるリチウムイオンだけでなく、炭酸リチウムから放出されるリチウムイオンもまた負極に供給される。このため、ケイ素系材料を負極活物質として用いる場合には、過充電時に負極活物質層が大きく膨張し、負極活物質層の膨張によりセパレータ板や正極活物質層が圧縮されると考えられる。このとき、セパレータ板や正極活物質層に存在する分解ガスが押し出され、セパレータ板や正極活物質層の外部に排出される。
なおこのとき、負極活物質層により圧縮されて、セパレータ板や正極活物質層における分解ガスの流路は小さく又は少なくなる。このため、従来型のリチウムイオン二次電池において、炭酸リチウムと負極活物質としてのケイ素系材料とを組み合わせて用いる場合には、セパレータの袋内部や電極体中における分解ガスの滞留が生じ易くなる可能性がある。
しかし、本発明のリチウムイオン二次電池は、分解ガスの流路となる多孔質層を有する。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池は、炭酸リチウムを有するにも拘わらず、負極活物質としてケイ素系材料を選択しても、分解ガスの排出が良好に行われ、セパレータの袋内部や電極体中における分解ガスの滞留が解消されると考えられる。
なお、負極活物質としてケイ素系材料を選択する場合、多孔質層として比較的剛性の高いものを選択するのが良く、具体的には、セラミックスを含む多孔質層を選択するのが有効である。更にこの場合には、上記したオリビン正極活物質層を併用することも有効である。
具体的なケイ素系材料としては、ケイ素単体、SiO(0.3≦x≦1.6)、Siと他の金属との合金、国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料を例示できる。ケイ素系材料は炭素で被覆されていてもよい。炭素で被覆されたケイ素系材料は導電性に優れる。
国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」ということがある。)について詳細に説明する。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
国際公開第2014/080608号に記載のシリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオン等の電荷担体が効率的に吸蔵及び放出を行うためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
負極活物質層における負極活物質の質量%は、60〜100質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましく、85〜98質量%がさらに好ましい。
負極用の結着剤としては、上記したものを用いても良いが、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーを結着剤として用いることで、リチウムイオン二次電池の容量が好適に維持される。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。中でも、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸などの分子中にカルボキシル基を含むポリマー、又は、ポリ(p−スチレンスルホン酸)などのスルホ基を含むポリマーが好ましい。
ポリアクリル酸、あるいはアクリル酸とビニルスルホン酸との共重合体など、カルボキシル基及び/又はスルホ基を多く含むポリマーは水溶性となる。親水基を有するポリマーは、水溶性ポリマーであることが好ましく、化学構造でいうと、一分子中に複数のカルボキシル基及び/又はスルホ基を含むポリマーが好ましい。
分子中にカルボキシル基を含むポリマーは、例えば、酸モノマーを重合する方法や、ポリマーにカルボキシル基を付与する方法などで製造することができる。酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、クロトン酸、ペンテン酸、アンジェリカ酸、チグリン酸など分子中に一つのカルボキシル基をもつ酸モノマー、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸など分子内に二つ以上のカルボキシル基をもつ酸モノマーなどが例示される。
上記の酸モノマーから選ばれる二種以上の酸モノマーを重合してなる共重合ポリマーを結着剤として用いてもよい。
また、例えば特開2013―065493号公報に記載されたような、アクリル酸とイタコン酸との共重合体のカルボキシル基どうしが縮合して形成された酸無水物基を分子中に含んでいるポリマーを結着剤として用いることも好ましい。一分子中にカルボキシル基を二つ以上有する酸性度の高いモノマー由来の構造が結着剤にあることにより、充電時に電解液分解反応が起こる前にリチウムイオンなどを結着剤がトラップし易くなると考えられている。さらに、当該ポリマーは、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸に比べてモノマーあたりのカルボキシル基が多いため、酸性度が高まるものの、所定量のカルボキシル基が酸無水物基に変化しているため、酸性度が高まりすぎることもない。そのため、当該ポリマーを結着剤として用いた負極をもつ二次電池は、初期効率が向上し、入出力特性が向上する。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーを、ジアミンで架橋した架橋ポリマーを負極用の結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
また、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーと、ポリアミドイミドとの混合物又は反応物を負極用の結着剤として用いてもよい。
ポリアミドイミドとは、分子内にアミド結合とイミド結合をそれぞれ2つ以上有する化合物を意味する。ポリアミドイミドは、アミド結合及びイミド結合におけるカルボニル部分となる酸成分と、アミド結合及びイミド結合における窒素部分となるジアミン成分又はジイソシアネート成分を反応させることで製造される。ポリアミドイミドを得るには、当該方法で製造しても良いし、また、市販のポリアミドイミドを購入しても良い。
ポリアミドイミドの製造に用いられる酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビス(カルボキシフェニル)スルホン、ビス(カルボキシフェニル)エーテル、ナフタレンジカルボン酸、及び、これらの無水物、酸ハロゲン化物、誘導体を挙げることができる。酸成分としては、上記の化合物を単独で又は複数で採用すればよいが、ただし、イミド結合を形成させる点から、カルボキシル基が結合している炭素の隣接炭素にカルボキシル基が存在する酸成分又はその同等物が、必須となる。酸成分としては、反応性、耐熱性などの点から、トリメリット酸無水物が好ましい。また、ポリアミドイミドの引っ張り強度、引っ張り弾性率、電解液耐性の点から、トリメリット酸無水物に加えて、酸成分の一部として、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物を採用するのが好ましい。
ポリアミドイミドの製造に用いられるジアミン成分としては、上述した架橋ポリマーに用いられるジアミンを採用すればよい。耐熱性、溶解性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−トリレンジアミン、o−トリジン、ナフタレンジアミン、イソホロンジアミンが好ましい。ポリアミドイミドの引っ張り強度、引っ張り弾性率の点からはo−トリジン、ナフタレンジアミンが好ましい。
ポリアミドイミドの製造に用いられるジイソシアネート成分としては、上記ジアミン成分のアミンをイソシアネートで置き換えたものを挙げることができる。
負極活物質層における結着剤の質量%は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。結着剤が少なすぎると成形性が低下し、他方、結着剤が多すぎるとエネルギー密度が低くなるためである。
本発明のリチウムイオン二次電池における負極活物質層には、正極活物質層と同様に、分解ガスの流路としての機能はあまり要求されない。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池においては、負極活物質層の目付量や密度を大きくできる。具体的には、負極活物質層の目付量の上限は、集電体における一般集電部の一面あたり、20mg/cm以下、30mg/cm以下、又は35mg/cm以下にまで大きくできる。負極活物質層の目付量に下限はないが、敢えて挙げるとすると、8mg/cm以上、10mg/cm以上の各範囲が挙げられる。
また、負極活物質層の密度の上限は、1.6mg/cm以下、2.0mg/cm以下、又は2.5mg/cm以下にまで大きくできる。負極活物質層の密度にも下限はないが、敢えて挙げるとすると、1.2g/cm以上、1.3g/cm以上、1.5g/cm以上の各範囲が挙げられる。
同様に、本発明のリチウムイオン二次電池においては、負極活物質層の空隙率を小さくすることができる。負極活物質層の空隙率の上限として、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下の各範囲を挙げることができる。負極活物質層の空隙率の下限としては、10%以上、15%以上、20%以上の各範囲が挙げられる。
同様に、本発明のリチウムイオン二次電池においては、負極活物質層の厚さを大きくすることができる。負極活物質層の厚さの下限として、50μm以上、60μm以上、70μm以上の各範囲が挙げられる。負極活物質層の厚さの上限としては、300μm以下、200μm以下、150μm以下の各範囲が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池の電解液としては、特に限定は無い。電解液における、リチウム塩を含む電解質の濃度としては、1.5〜3mol/L、1.6〜2.8mol/L、1.8〜2.6mol/L、2〜2.5mol/Lを例示できる。更には、下記一般式(1)で表されるリチウム塩を含む電解質を含有する電解液が好ましい。
(R)(RSO)NLi 一般式(1)
(Rは、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
は、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、CN、SCN、OCNから選択される。
また、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、R又はRと結合して環を形成しても良い。)
上記一般式(1)で表される化学構造における、「置換基で置換されていても良い」との文言について説明する。例えば「置換基で置換されていても良いアルキル基」であれば、アルキル基の水素の一つ若しくは複数が置換基で置換されているアルキル基、又は、置換基を有さないアルキル基を意味する。
「置換基で置換されていても良い」との文言における置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和シクロアルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン、OH、SH、CN、SCN、OCN、ニトロ基、アルコキシ基、不飽和アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、シリル基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基で置換されてもよい。また置換基が2つ以上ある場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。
リチウム塩は下記一般式(1−1)で表されるものが好ましい。
(R13)(R14SO)NLi 一般式(1−1)
(R13、R14は、それぞれ独立に、CClBr(CN)(SCN)(OCN)である。
n、a、b、c、d、e、f、g、hはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
また、R23とR24は、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+e+f+g+hを満たす。
は、SO、C=O、C=S、RP=O、RP=S、S=O、Si=Oから選択される。
、Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基で置換されていても良いアルキル基、置換基で置換されていても良いシクロアルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和アルキル基、置換基で置換されていても良い不飽和シクロアルキル基、置換基で置換されていても良い芳香族基、置換基で置換されていても良い複素環基、置換基で置換されていても良いアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和アルコキシ基、置換基で置換されていても良いチオアルコキシ基、置換基で置換されていても良い不飽和チオアルコキシ基、OH、SH、CN、SCN、OCNから選択される。
また、R、Rは、R23又はR24と結合して環を形成しても良い。)
上記一般式(1−1)で表される化学構造における、「置換基で置換されていても良い」との文言の意味は、上記一般式(1)で説明したのと同義である。
上記一般式(1−1)で表される化学構造において、nは0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜2の整数が特に好ましい。なお、上記一般式(1−1)で表される化学構造の、R13とR14が結合して環を形成している場合には、nは1〜8の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
リチウム塩は、下記一般式(1−2)で表されるものがさらに好ましい。
(R15SO)(R16SO)NLi 一般式(1−2)
(R15、R16は、それぞれ独立に、CClBrである。
n、a、b、c、d、eはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+eを満たす。
また、R15とR16は、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+b+c+d+eを満たす。)
上記一般式(1−2)で表される化学構造において、nは0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜2の整数が特に好ましい。なお、上記一般式(1−2)で表される化学構造の、R15とR16が結合して環を形成している場合には、nは1〜8の整数が好ましく、1〜7の整数がより好ましく、1〜3の整数が特に好ましい。
また、上記一般式(1−2)で表される化学構造において、a、c、d、eが0のものが好ましい。
リチウム塩は(CFSONLi、(FSONLi、(CSONLi、FSO(CFSO)NLi、(SOCFCFSO)NLi、(SOCFCFCFSO)NLi、FSO(CHSO)NLi、FSO(CSO)NLi、又はFSO(CSO)NLiから選択されるものが特に好ましい。
電解液において、一般式(1)で表されるリチウム塩の1種類を採用しても良いし、複数種を併用しても良い。また、電解液には、一般式(1)で表されるリチウム塩以外の電解質を含んでいてもよい。
一般式(1)で表されるリチウム塩以外の電解質としては、LiPF、LiPF(OCOCOO)、LiBF、LiAsF及びLiSiFを具体的に例示できる。
電解液は、電解質を溶解するための有機溶媒を含有する。有機溶媒としては、非水系二次電池に使用可能な有機溶媒を採用すればよく、特に、アルミニウムを溶解し難い低極性の有機溶媒を採用するのが好ましい。
低極性の有機溶媒として、下記一般式(2)で表される鎖状カーボネートを挙げることができる。
20OCOOR21 一般式(2)
(R20、R21は、それぞれ独立に、鎖状アルキルであるCClBr、又は、環状アルキルを化学構造に含むCClBrのいずれかから選択される。nは1以上の整数、mは3以上の整数、a、b、c、d、e、f、g、h、i、jはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b+c+d+e、2m−1=f+g+h+i+jを満たす。)
上記一般式(2)で表される鎖状カーボネートにおいて、nは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。mは3〜8の整数が好ましく、4〜7の整数がより好ましく、5〜6の整数が特に好ましい。
上記一般式(2)で表される鎖状カーボネートのうち、下記一般式(2−1)で表されるものが特に好ましい。
22OCOOR23 一般式(2−1)
(R22、R23は、それぞれ独立に、鎖状アルキルであるC、又は、環状アルキルを化学構造に含むCのいずれかから選択される。nは1以上の整数、mは3以上の整数、a、b、f、gはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+b、2m−1=f+gを満たす。)
上記一般式(2−1)で表される鎖状カーボネートにおいて、nは1〜6の整数が好ましく、1〜4の整数がより好ましく、1〜2の整数が特に好ましい。mは3〜8の整数が好ましく、4〜7の整数がより好ましく、5〜6の整数が特に好ましい。
上記一般式(2−1)で表される鎖状カーボネートのうち、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」ということがある。)、ジエチルカーボネート(以下、「DEC」ということがある。)、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」ということがある。)、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートが特に好ましい。
鎖状カーボネートは、1種類を電解液に用いても良いし、複数種類を併用しても良い。鎖状カーボネートの複数を併用することで、電解液の低温流動性や低温でのリチウムイオン輸送性などを好適に確保することができる。鎖状カーボネートの併用例として、DMC、DEC及びEMCから選択される2種又は3種の併用を挙げることができる。DMCと、DEC又はEMCとの併用において、これらのモル比は、DMC:DEC又はEMC=60:40〜95:5の範囲内が好ましく、70:30〜95:5の範囲内がより好ましく、80:20〜95:5の範囲内がさらに好ましい。
電解液においては、上記鎖状カーボネート以外に、リチウムイオン二次電池などの電解液に使用可能である他の有機溶媒(以下、単に「他の有機溶媒」ということがある。)が含まれていてもよい。
電解液には、電解液に含まれる全有機溶媒に対し、上記鎖状カーボネートが、70体積%、70質量%以上若しくは70モル%以上で含まれるのが好ましく、80体積%、80質量%以上若しくは80モル%以上で含まれるのがより好ましく、90体積%、90質量%以上若しくは90モル%以上で含まれるのがさらに好ましく、95体積%、95質量%以上若しくは95モル%以上で含まれるのが特に好ましい。電解液に含まれる有機溶媒すべてが上記鎖状カーボネートであってもよい。
他の有機溶媒を具体的に例示すると、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル、マロノニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル等のエーテル類、フルオロエチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフッ素含有環状カーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のフッ素非含有環状カーボネート類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、イソプロピルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、クロロメチルイソシアネート等のイソシアネート類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等のエステル類、グリシジルメチルエーテル、エポキシブタン、2−エチルオキシラン等のエポキシ類、オキサゾール、2−エチルオキサゾール、オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン等のオキサゾール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物、ジメチルスルホン、スルホラン等のスルホン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン等のニトロ類、フラン、フルフラール等のフラン類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル類、チオフェン、ピリジン等の芳香族複素環類、テトラヒドロ−4−ピロン、1−メチルピロリジン、N−メチルモルフォリン等の複素環類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類を挙げることができる。
電解液における電解質全体に対する一般式(1)で表されるリチウム塩の割合としては、30〜100モル%が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、70〜90モル%がさらに好ましい。電解液における、一般式(1)で表されるリチウム塩を含む電解質の濃度としては、1.5〜3mol/L、1.6〜2.8mol/L、1.8〜2.6mol/L、2〜2.5mol/Lを例示できる。
更には、電解液には、一般式(2)で表される鎖状カーボネートが、一般式(1)で表されるリチウム塩に対して、モル比2〜8で含まれているのが好ましく、モル比2.5〜7.5で含まれているのがより好ましく、モル比3〜6で含まれているのが特に好ましい。
ところで、一般的な電解液における電解質の濃度は1mol/L程度であるため、リチウム塩の割合、電解質の濃度、又は、一般式(2)で表される鎖状カーボネートと一般式(1)で表されるリチウム塩とのモル比が上記範囲内にある電解液は、比較的高濃度だといい得る。
高濃度の電解液は、低濃度の電解液に比べて粘度が高く、分解ガスの流動に干渉し易い。したがって、高濃度の電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、低濃度の電解液を用いたリチウムイオン二次電池に比べて、セパレータの袋内部や電極体中における分解ガスの滞留が生じ易いと考えられる。
しかし、本発明のリチウムイオン二次電池は、分解ガスの流路となる多孔質層を有し、当該多孔質層を通じて分解ガスを電極体の外部に効率良く排出できるため、高濃度の電解液を好適に選択し得る。
電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の添加剤を加えてもよい。公知の添加剤の一例として、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)に代表される不飽和結合を有する環状カーボネート;フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネートに代表されるカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物に代表されるカルボン酸無水物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン;1,4−ジオキサンに代表される環状エーテル;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィドに代表される含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシンイミドに代表される含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩に代表されるリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタンに代表される飽和炭化水素化合物;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフランに代表される不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
本発明のリチウムイオン二次電池において、正極、セパレータ及び負極を積層した電極体は、当該電極体を捲いた捲回型であっても良いし、正極、セパレータ及び負極が平面状態で積層されたままの積層型であっても良い。但し、本発明のリチウムイオン二次電池におけるセパレータは2枚のセパレータ板から形成され袋状をなす。このため、本発明のリチウムイオン二次電池を捲回型とする場合には、捲回後のセパレータの内外周差を考慮して、2枚のセパレータ板を異なる大きさにする必要がある。したがって、生産性を考慮すると、本発明のリチウムイオン二次電池は、積層型とするのが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池の容器の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、樹脂、アルミニウムなどの金属と樹脂を積層した積層体を例示できる。本発明のリチウムイオン二次電池の容器の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
感圧式安全機構は、過充電時に分解ガスが生じ、当該分解ガスによりリチウムイオン二次電池の容器内圧が所定値以上にまで高まった際に、リチウムイオン二次電池の構造を変化させて、当該リチウムイオン二次電池の電池としての機能を停止させる機構である。
具体的には、容器内圧の上昇により作動して、リチウムイオン二次電池の電気経路を遮断する電流遮断装置(Current Interrupt Device:CID)を挙げることができる。CIDとしては、例えば特開2013−131402号公報、特開2014−10967号公報、既述の特許文献1等に開示される、電池の容器内圧が上昇したときに、リチウムイオン二次電池の端子と電極とを接続する電気経路を破断する装置を挙げ得る。又は、例えば特開2017−157341号公報等に開示される、電池の容器内圧が上昇した時に、正極電極端子と負極電極端子とを短絡させる装置を挙げ得る。
本発明のリチウムイオン二次電池は車両に搭載することができる。リチウムイオン二次電池は、大きな充放電容量を維持し、かつ優れたサイクル性能を有するため、これを搭載した車両は、高性能の車両となる。特に、本発明のリチウムイオン二次電池は、分解ガスの流路となる多孔質層を有するため、活物質層を目付量を大きくしたり、高密度にしたりする場合にも、炭酸リチウムに由来する分解ガスを電極体の外部に効率良く排出できる。したがって、本発明のリチウムイオン二次電池は高容量、高出力のリチウムイオン二次電池とするのに好適である。つまり、本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に代表される大型の電気機器に用いるリチウムイオン二次電池として有用である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、各種の具体例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの具体例によって限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1のリチウムイオン二次電池における正極、負極及びセパレータを模式的に表す説明図を図1に示し、実施例1のリチウムイオン二次電池における正極を模式的に表す一部切り欠き説明図を図2に示す。実施例1のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを図1中のX−X位置で切断した様子を表す説明図を図3に示す。実施例1のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを図1中のY−Y位置で切断した様子を表す説明図を図4に示す。実施例1のリチウムイオン二次電池における容器内部の様子を模式的に表す説明図を図5に示す。以下、タブ部の延び方向とは、図1に示す第1方向を意味する。また、幅方向とは図1に示す第2方向を意味する。第1方向と第2方向とは直交する。更に、以下、必要に応じて、第1方向の先側を単に先側といい、第1方向の後側を単に後側という場合がある。
本発明のリチウムイオン二次電池の一態様である実施例1のリチウムイオン二次電池は、
容器8と、前記容器8に収容されている正極1、セパレータ2、負極3、及び電解液4と、前記容器の内圧の上昇に応じて作動する感圧式安全機構55と、を有し、
前記セパレータ2は、2枚のセパレータ板20が周縁部20rで固着された袋状をなし、
前記正極1は、
一般集電部11と、前記一般集電部11から延びる前記一般集電部11よりも幅の狭いタブ部12と、を有する正極集電体10と、
正極活物質及び炭酸リチウムを含み前記一般集電部11上に設けられている正極活物質層15と、
前記タブ部12に設けられている多孔質層18と、を有し、
前記一般集電部11及び前記正極活物質層15は前記セパレータ2の内部に収容され、前記タブ部12及び前記多孔質層18は前記セパレータ2の内外に連続している、リチウムイオン二次電池である。
図1に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池は、複数の正極1、セパレータ2及び負極3を有する。このうちセパレータ2は、樹脂製であり矩形をなす2枚のセパレータ板20が周縁部20rで溶着された袋状をなす。セパレータ2の周縁部20rには、2枚のセパレータ板20が固着された固着周縁部28が形成される。固着周縁部28は、矩形のセパレータ2の周縁部20rにおいて、先側に位置する一辺に切れ間29を有し、それ以外は周縁部20rの全周に連続的に形成される。
正極1は、図2に示すように、正極集電体10と、正極活物質層15と、多孔質層18とで構成されている。
図2及び図3に示すように、正極集電体10は、略矩形の板状をなす一般集電部11と、当該一般集電部11における第1方向の一端部から当該第1方向に延びる帯状のタブ部12と、を有する。以下、必要に応じて、正極集電体10の一般集電部11を一般正極集電部11という場合がある。又、正極集電体10のタブ部12を正極タブ部12という場合がある。
正極タブ部12の基端12r、つまり、正極タブ部12における一般正極集電部11側の端部は、正極タブ部12の先端12tに対して、第1方向の後側に位置する。したがって、正極タブ部12の先端12tは正極タブ部12の基端12rに対して第1方向の先側に位置する。
正極活物質層15は、正極活物質、炭酸リチウム、導電助剤及び結着剤を含む。正極活物質層15は、正極集電体10における一般正極集電部11の両面に各々形成される。
より具体的には、正極活物質層15は、一般正極集電部11における後側の領域に形成される。当該後側の領域を塗工部11rという。
これに対して、一般正極集電部11のうち塗工部11rと反対側の領域、つまり、一般正極集電部11における先側の領域には、正極活物質層15は形成されない。換言すれば、正極集電体10は、正極活物質層15が形成される塗工部11rと正極タブ部12との間に、一般正極集電部11でありかつ正極活物質層15が形成されない未塗工部11fを有する。未塗工部11fは、一般正極集電部11の両面に各々存在する。
多孔質層18はセラミックス及び結着剤で構成され、正極タブ部12の両面に各々形成される。図2に示すように、多孔質層18は、正極タブ部12の基端12rから更に後側に延び、一般正極集電部11の未塗工部11fにまで達する。多孔質層18は正極タブ部12よりもやや幅の狭い帯状をなし、多孔質層18の後側端部18rの端面は正極活物質層15の先側端部15fの端面と接触する。つまり、実施例1のリチウムイオン二次電池においては、正極活物質層15と多孔質層18とが接触し連続的に設けられる。
正極1のうち、一般正極集電部11、正極活物質層15、正極タブ部12の基端12r、多孔質層18の後側端部18rは、各々、セパレータ2の袋内部2cに収容される。正極タブ部12及び当該正極タブ部12上に形成されている多孔質層18は、固着周縁部28の切れ間29に挿通され、正極タブ部12の先端12t及び多孔質層18の先側端部18fは、各々、セパレータ2の袋内部2cの外側に露出する。
したがって、正極タブ部12及び多孔質層18は、固着周縁部28の切れ間29を通じて、セパレータ2の内外に連続するといえる。
図1〜図3に示すように、切れ間29及び正極タブ部12のない領域においては、正極活物質層15の先側及び後側は固着周縁部28で遮蔽される。
一方、図1、図2及び図4に示すように、切れ間29及び正極タブ部12のある領域においては、正極活物質層15の先側に固着周縁部28はなく、正極活物質層15とセパレータ板20との間には多孔質層18が介在し、更に、固着周縁部28の切れ間29は多孔質層18によって拡げられる。
図1に示すように、負極3は、負極集電体30と、負極集電体30の両面に各々形成される負極活物質層35と、で構成される。負極集電体30は、略矩形の板状をなし一般正極集電部11よりもやや大型の一般負極集電部31と、当該一般負極集電部31の先側端部からさらに先側に延びる帯状の負極タブ部32と、を有する。
負極活物質層35は、一般負極集電部31の両面に各々形成される。
図5に示すように、実施例1のリチウムイオン二次電池は、正極1がセパレータ2に収容されてなる正極−セパレータ複合体7と、負極3と、容器8と、電解液4と、感圧式安全機構55と、で構成される。正極−セパレータ複合体7と、負極3とが交互に重ねられた電極体6は、容器8に収容され、その隙間には電解液4が注がれる。
各正極1の正極タブ部12は一纏めにされて、正極用導電部材51に溶接される。正極用導電部材51は感圧式安全機構55を介して正極端子52に接続される。
以下、実施例1のリチウムイオン二次電池の製造方法を説明する。
(正極)
正極活物質であるLiNi82/100Co14/100Al4/100を90質量部、炭酸リチウムを5質量部、導電助剤であるアセチレンブラックを2質量部、結着剤であるポリフッ化ビニリデンを3質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーとする。
厚み15μmのJIS A8000番系合金に該当するアルミニウム箔を準備し、このアルミニウム箔の一方の面における所定の部分に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布する。そして、スラリーが塗布されたアルミニウム箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去する。アルミニウム箔の他方の面にも、同様の作業を行う。その後、所定の形状に裁断することで、正極集電体と正極活物質層との一体品が得られる。当該正極集電体は一般正極集電部とタブ部とを有し、一般正極集電部は塗工部と未塗工部とを有する。正極活物質層は塗工部に形成され、未塗工部には形成されない。
これとは別に、セラミックスである粉末状のAlを96質量部、結着剤であるポリフッ化ビニリデンを4質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合し、多孔質スラリーを準備する。当該多孔質スラリーを、正極集電体の一方の面において、正極タブ部、及び、一般正極集電部の未塗工部の一部に、連続する帯型の膜状となるように塗布する。塗布後の正極集電体を乾燥し、N−メチル−2−ピロリドンを除去して、多孔質層を形成する。正極集電体の他方の面にも、同様の作業を行い、その後、プレス及び加熱乾燥することで、両面に正極活物質層および多孔質層が形成された正極が得られる。なお、各スラリーの塗布量及びプレス圧は、正極活物質層の密度が3.55g/cm、厚さが188μm、空隙率が20%となり、多孔質層の密度が1.36g/cm、厚さが5μm、空隙率が65.6%となるようにする。
(セパレータ)
セパレータ板として、厚さ16μmであり矩形のポリエチレン製多孔質膜を準備する。当該セパレータ板を2枚重ね、その周縁部の三辺を溶着して、袋状とする。当該袋の内部に、正極の一般正極集電部、正極活物質層、正極タブ部の基端部及び多孔質層の後側端部を収容する。このとき、正極タブ部及び当該正極タブ部上の多孔質層を、残りの一辺から袋の外側に出す。そして、セパレータ板の残りの一辺を、切れ間を残しつつ溶着することで、袋状のセパレータと、当該セパレータの袋内部に収容された正極と、を有する正極−セパレータ複合体が得られる。なお、セパレータ板の空隙率は41%、密度は0.53g/cmである。
(負極)
1質量%のフッ化水素を含有する濃塩酸を準備し、0℃の氷浴下、20mlの当該濃塩酸に5gのCaSiを加えて1時間攪拌し、その後水を加えて更に5分間攪拌して反応液を得る。当該反応液を濾過して得られた黄色の固形分を、水及びエタノールで洗浄し、これを減圧乾燥することにより、層状ポリシランを得る。この層状ポリシランを、アルゴン雰囲気下、500℃で加熱することにより、ポリシランから水素が離脱したシリコン材料を得る。
当該シリコン材料を負極活物質として用い、以下のように負極を製造する。
負極活物質として上記のシリコン材料を78質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13質量部、及び、結着剤として、ポリアクリル酸をジアミンで架橋した架橋ポリマー9質量部を混合して混合物とする。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを製造する。
厚み20μmの銅箔を準備し、この銅箔の一方の面における所定の部分に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布する。そして、スラリーが塗布された銅箔を乾燥してN−メチル−2−ピロリドンを除去する。銅箔の他方の面にも同様の作業を行い、その後、プレス及び乾燥することで、負極活物質層が形成された銅箔が得られる。なお、このときのスラリーの塗布量及びプレス圧は、負極活物質層の密度が1.45g/cm、厚さが67μm、空隙率が34%となるようにする。その後、所定の形状に裁断することで負極が得られる。負極は負極集電体と負極活物質層とを有する。
(電解液)
ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとをモル比9:1で混合した溶媒に(FSONLiを溶解させて、(FSONLiの濃度が2mol/Lである電解液を製造する。当該電解液においては、有機溶媒がリチウム塩に対し、モル比4で含まれる。
(リチウムイオン二次電池の組立)
正極−セパレータ複合体と負極とを交互に重ねて電極体とし、容器に入れる。電極体の各負極タブ部は、一纏めにして負極用導電部材に溶着する。負極用導電部材は、負極外部端子に電気的に接続する。電極体の各正極タブ部についても同様に、一纏めにして正極用導電部材に溶着する。正極用導電部材は、正極外部端子に電気的に接続するが、正極用導電部材と正極外部端子との間には感圧式安全機構を介在させる。電極体の入った容器に電解液を入れ、容器を密閉して、実施例1のリチウムイオン二次電池とする。
実施例1のリチウムイオン二次電池は、多孔質層を有するため、過充電時に炭酸リチウムの分解により正極活物質層で生じた分解ガスは、多孔質層を通じてセパレータの袋外部、ひいては電極体の外部に排出され得る。電極体の外部に排出された分解ガスにより、容器内圧が上昇すると、感圧式安全機構の一部が破断して、正極タブ部と正極外部端子との間の電気的接続が損なわれ、実施例1のリチウムイオン二次電池の充電が停止する。
(実施例2)
実施例2のリチウムイオン二次電池は、正極活物質層が、オリビン正極活物質層を含むこと以外は、実施例1のリチウムイオン二次電池と概略同じである。実施例2のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを模式的に表す説明図を図6に示す。
図6に示すように、実施例2のリチウムイオン二次電池における正極1は、正極集電体10と、正極活物質層15と、多孔質層18とで構成される。正極活物質層15は、一般正極活物質層16と、オリビン正極活物質層17とで構成される。
正極集電体10は、実施例1のリチウムイオン二次電池における正極集電体10と同形であり、正極集電体10の両面において、一般正極集電部11には、一般正極活物質層16及びオリビン正極活物質層17が設けられる。
より具体的には、一般正極活物質層16及びオリビン正極活物質層17は、各々帯状をなし、長手方向を第1方向に向けつつ第2方向に沿って交互に配列する。オリビン正極活物質層17の一つは、正極タブ部12及び多孔質層18の後側に連なる。
各一般正極活物質層16の厚さは188μmであり、空隙率は20%であり、密度は3.55g/cmである。各オリビン正極活物質層17の厚さは176μmであり、空隙率は20.7%であり、密度は3.04g/cmである。
実施例2のリチウムイオン二次電池における一般正極活物質層は、正極活物質であるLiNi82/100Co14/100Al4/100を90質量部、炭酸リチウムを5質量部、導電助剤であるアセチレンブラックを5質量部、結着剤であるポリフッ化ビニリデンを7.5質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合したスラリーを用いて、実施例1の正極活物質層と同様の方法で形成する。
オリビン正極活物質層は、正極活物質であるLiFePOを87.5質量部、導電助剤であるアセチレンブラックを5質量部、結着剤であるポリフッ化ビニリデンを7.5質量部、及び適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合したスラリーを用い、実施例1の正極活物質層と同様の方法で形成する。
なお、一般正極活物質層16とオリビン正極活物質層17とは同時に塗工形成しても良いし、何れか一方を先に形成し他方を後に形成しても良い。
実施例2のリチウムイオン二次電池は、実施例1のリチウムイオン二次電池と同様に、正極タブ部12及び多孔質層18が、固着周縁部28の切れ間29を通じて、セパレータ2の内外に連続するため、固着周縁部28の切れ間29が多孔質層18によって拡げられ、更に、当該多孔質層18が分解ガスの流路として機能する。このため、過充電時に炭酸リチウムが分解することにより生じた分解ガスを、セパレータ2の袋内部2cや電極体中から外部に良好に排出し得る。
また、オリビン正極活物質層17は一般正極活物質層16に比べて剛性に優れるため、一般正極活物質層16の細孔が潰れる程度に正極1が圧縮状態になった場合にも、オリビン正極活物質層17の細孔は潰れ難い。このため、一般正極活物質層16に隣接するオリビン正極活物質層17もまたリチウムイオン二次電池における上記の分解ガスの流路として好適に機能し得る。つまり、実施例2のリチウムイオン二次電池は、分解ガスの排出流路を、多孔質層18及びオリビン正極活物質層17の2通り有する。このため、実施例2のリチウムイオン二次電池は、セパレータ2の袋内部2cや電極体中から外部への分解ガスの排出をより良好に行い得る。
(実施例3)
実施例3のリチウムイオン二次電池は、正極集電体上にオリビン正極活物質層が設けられ、オリビン正極活物質層上に更に一般正極活物質層が設けられること以外は、実施例1のリチウムイオン二次電池と概略同じである。実施例3のリチウムイオン二次電池における正極及びセパレータを模式的に表す説明図を図7に示す。
図7に示すように、実施例3のリチウムイオン二次電池における正極1は、正極集電体10と、正極活物質層15と、多孔質層18とで構成される。正極活物質層15は、一般正極活物質層16と、オリビン正極活物質層17とで構成される。正極集電体10は、実施例1のリチウムイオン二次電池における正極集電体10と同形であり、正極集電体10の両面において、一般正極集電部11の塗工部11r上にオリビン正極活物質層17が設けられ、オリビン正極活物質層17上には更に一般正極活物質層16が設けられる。
一般正極活物質層16の厚さは188μmであり、空隙率は20%であり、密度は3.55g/cmである。オリビン正極活物質層17の厚さは176μmであり、空隙率は20.7%であり、密度は3.04g/cmである。
実施例3のリチウムイオン二次電池における一般正極活物質層16及びオリビン正極活物質層17は、各々、実施例2のリチウムイオン二次電池における一般正極活物質層16及びオリビン正極活物質層17と同じ組成である。
実施例3のリチウムイオン二次電池は、実施例1のリチウムイオン二次電池と同様に、セパレータ2の内外に連続する多孔質層18により、セパレータ2の袋内部2cや電極体中から外部に、分解ガスを良好に排出し得る。
また、実施例2のリチウムイオン二次電池と同様に、オリビン正極活物質層17を分解ガスの排出流路として利用できるため、セパレータ2の袋内部や電極体中から外部への分解ガスの排出をより良好に行い得る。
1 :正極 2 :セパレータ
2c :袋内部 3 :負極
4 :電解液 55 :感圧式安全機構
6 :電極体 7 :正極−セパレータ複合体
8 :容器
10 :正極集電体 11 :一般正極集電部(一般集電部)
12 :正極タブ部(タブ部) 15 :正極活物質層
18 :多孔質層 20 :セパレータ板
20r :周縁部 28 :固着周縁部
29 :切れ間 30 :負極集電体
31 :一般負極集電部 32 :負極タブ部
35 :負極活物質層 101 :正極
102 :セパレータ 102c:袋内部
103 :負極 112 :タブ部
115 :正極活物質層 120 :セパレータ板
120r:周縁部 128 :固着周縁部
129 :切れ間 135 :負極活物質層
160 :電極体

Claims (6)

  1. 容器と、前記容器に収容されている正極、セパレータ、負極、及び電解液と、前記容器の内圧の上昇に応じて作動する感圧式安全機構と、を有し、
    前記セパレータは、2枚のセパレータ板が周縁部で固着された袋状をなし、
    前記正極は、
    一般集電部と、前記一般集電部から延びる前記一般集電部よりも幅の狭いタブ部と、を有する正極集電体と、
    正極活物質及び炭酸リチウムを含み前記一般集電部上に設けられている正極活物質層と、
    前記タブ部に設けられている多孔質層と、を有し、
    前記一般集電部及び前記正極活物質層は前記セパレータの内部に収容され、前記タブ部及び前記多孔質層は前記セパレータの内外に連続している、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記多孔質層の空隙率は、前記正極活物質層の空隙率よりも大きい、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記正極活物質層の空隙率は20%以下である、請求項2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記多孔質層の空隙率は20%以上である、請求項3に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記電解液はリチウム塩を含む電解質と鎖状カーボネートを含む有機溶媒とを含み、前記電解液中の前記電解質の濃度が1.5〜3mol/Lである、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記負極は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するシリコン材料を含有する、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113381131A (zh) * 2021-05-27 2021-09-10 万向一二三股份公司 一种锂离子电池极耳箔材断裂改善方法
CN116683058A (zh) * 2023-07-26 2023-09-01 宁德时代新能源科技股份有限公司 二次电池及用电装置

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