JP2019070578A - 電流検出器 - Google Patents
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Abstract
Description
その上で、外部磁界に対する耐性をより向上するためには、外部磁界が磁気回路を通過する際の漏れ(錯交)磁束の量にも着目しなければならない。
電流センサ10は、複数の磁性体コア部材20,21を備えている。これら磁性体コア部材20,21は、互いに組み合わされた状態で1つの磁気回路を構成する。本実施形態では、2つの磁性体コア部材20,21によって矩形状に閉じた磁気回路が構成されている。この磁気回路の内側を貫通して2本の一次導体60が配置されており、電流センサ10の使用時において被検出電流は2本の一次導体60を導通する。図1、図2に示される状態では、ちょうど磁気回路が直立した姿勢にあるため、2本の一次導体60は磁気回路の内側を水平方向に貫通している。また、これら一次導体60は、磁気回路を貫通した両側でいずれも一方向(図1,図2では下方向)に屈曲され、それぞれの両端部が同一方向に延びて全体として逆U字形状をなしている。なお、2本の一次導体60は図示しない筐体に支持された状態で磁気回路の内側に配置されている。一次導体60の数は2本に限定されるものではなく、1本でもよいし3本以上でもよい。また、一次導体60の形状は逆U字形状に限られないし、図1,図2に示す向きとは逆向きに屈曲されていてもよい。
電流センサ10は、2つのボビンユニット30,40を備えており、各ボビンユニット30,40は、内側に磁性体コア部材20,21を収容するとともに、外側に二次巻線30a,40aを保持している。図1,図2に示される状態では、一方のボビンユニット30が上方に位置し、他方のボビンユニット40が下方に位置している。各ボビンユニット30,40は上記の二次巻線30a,40aを有する他、複数のリード端子30b,40bを有している。電流センサ10は、これらリード端子30b,40bを介して回路基板に実装したり、他の電子機器に接続したりすることができる。なお、ボビンユニット30,40の他にも図示しないボビンユニットが配置される構成であってもよい。
電流センサ10は、プローブコイルユニット50を備えており、プローブコイルユニット50は、下方のボビンユニット40の内側に収容されている。より詳しくは、2つの磁性体コア部材20がボビンユニット40の内部で収容部(図1、図2には示されていない)を構成しており、その収容部内にプローブコイルユニット50が配置された状態でボビンユニット40の内側に収容されている。また、プローブコイルユニット50は図示されていないプローブコイル(フィールドプローブ)を有しており、電流センサ10の組み立て状態において、プローブコイルは磁気回路上(エアギャップ内)に配置されている。プローブコイルユニット50もまた、複数のリード端子50bを有しており、これらリード端子50bを通じてプローブコイルに対する接続がなされるものとなっている。
プローブコイルユニット50は回路基板(図示されていない)を有しており、この回路基板上に信号出力IC(同じく図示されていない)が実装されている。電流センサ10の使用時において、被検出電流の導通により一次導体60の周囲(磁気回路)で磁界が発生すると、信号出力ICは二次電流(帰還電流)を二次巻線30a,40aに出力して逆方向の磁界を発生させ、プローブコイルの出力電流を消失させる制御を行う。このとき、信号出力ICは二次電流をシャント抵抗で電圧信号に変換し、被検出電流に応じた検出信号として出力する。
図3中(B):電流センサ10の動作について概略的に説明する。プローブコイル50aは上記の信号出力IC80に接続されており、信号出力IC80には図示しないパルス電源回路が内蔵されている。プローブコイル50aはフラックスゲートコア50cに巻かれており、パルス電源回路から高周波矩形波電流がプローブコイル50aに供給されると、フラックスゲートコア50c内の磁束密度が周期的に飽和する。そのため、一次導体60を流れる被検出電流Ipによって磁気回路(磁性体コア部材20,21)内に磁界が発生すると、プローブコイル50aに印加される電圧の波形には、磁気回路内に発生した磁界により歪みが生じることになる。
図4は、電流センサ10の外部磁界に対する耐性について解説する図である。例えば、磁性体コア部材20,21で構成される磁気回路に対し、外部磁界MOがある一方向から到来した場合を考える。この場合の到来方向としては、例えば磁性体コア部材20,21同士の接触面、より詳しくは長辺部20b,21b同士が重なり合う接触面に沿う方向を想定するものとする。外部磁界MOは、例えば地磁気のような自然磁界だけでなく、電流センサ10が置かれる多様な使用環境において電気的に発生し得る各種の磁界が該当する。
(1)磁束経路MRAは、磁性体コア部材20,21の外壁部20d,21d同士が僅かに空隙を置いて近接する領域に沿って形成される。
(2)磁束経路MRBは、磁性体コア部材20,21の内壁部20c,21c同士が間に空隙を開けて互いに連なる領域に沿って形成される。
(3)磁束経路MRCは、磁性体コア部材20,21の長辺部20b,21b同士が重なり合って接触する領域(接触面)に沿って形成される。
なお、磁性体コア部材20,21の短辺部20a,21a同士については、外部磁界MOの到来方向に対して充分に大きく離れているため、今回の磁束経路としては考えない。
このような状況を踏まえて本発明の発明者等は、通常、磁束は磁気抵抗の小さい箇所を通過することから、ギャップG1,G2の開きが平均より大きくなって磁束経路MRA,MRCの磁気抵抗が増大すると、各磁束経路MRA,MRCを通過できなくなった磁束が漏れ磁束となってプローブコイル50aに錯交する磁束の量が増加し、結果的に電流センサ10の特定が悪化することに着目した。
図5は、磁束経路MRCの磁気抵抗を低下させる対策について解説する図である。図5中(A)が図1に示す方向からみた斜視図であり、図5中(B)がその逆方向からみた斜視図である。
図6中(A):磁性体コア部材20,21は、上述したボビンユニット30,40(ここでは図示していない)に長手方向の両側から挿入するようにして組み合わされる。この図では、一方の長辺部20bが他方の長辺部21bの上に重なるようにして組み合わされ、ボビンユニット30内で互いに接触した状態となる。これら長辺部20b,21bは、ボビンユニット30内で接触又は密着するとはいえ、そのままの状態では磁気抵抗を能動的に低下させるための要素がない。外壁部20d,21dについては、本来の設計がギャップG1を設けた構造としているため、ある程度のギャップG1の変動(組み立て公差等)は許容し得るものであり、その変動が磁気抵抗を極端に高下させるものではない。
図示していないが、本発明の発明者等がX線画像を用いて検証したところ、本実施形態ではギャップG2が常に小さく維持されているのに対し、クリップ70による固定を行わない比較例においてはギャップG2が大きくなっていることが明らかとなっている。
図8は、外部磁界に対する耐性の向上について検証した結果を示す図である。ここでは、図7に示すX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれの向きで外部磁界環境に電流センサ10を置き、その際の出力電圧Voutを測定して以下の式から変化量(変動量)の合計(mV)を求め、外部磁界強度H(A/m)との関係で表した。
変化量合計=√(ΔVof2 X+ΔVof2 Y+ΔVof2 Z)
ここに、
ΔVofX:X軸方向に置いたときの出力電圧変動量
ΔVofY:Y軸方向に置いたときの出力電圧変動量
ΔVofZ:Z軸方向に置いたときの出力電圧変動量
また、負荷抵抗はオープンとし、周囲温度は25℃とした。
以上より、本実施形態の電流センサ10は外部磁界に対する耐性が高いことが立証された。
図9は、本実施形態で用いるクリップ70の構成を示す縦断面図(図7中のIX−IX断面図)である。クリップ70は、例えば板状ばね材料を曲げ加工して形成されている。断面形状から明らかなように、ここでは板状ばね材料をコ字形状に曲げ加工して背部分70aとその両端に連なる外側部分70bを形成し、さらに背部分70aと反対側には、各外側部分70bに連なる円弧部分70cを形成するとともに、各円弧部分70cから内側に折り返した圧着板70dを外側部分70bとほぼ平行に形成し、各圧着板70dから延びる2つの先端部70eをクリップ70の抜き取り方向に拡がった形状としている。
図10は、その他の実施形態について説明する図である。ここでは、ボビンユニット30を含む磁性体コア部材20,21の角部分を拡大した断面を示している。
この実施形態においては、ボビンユニット30内にクリップ75が一体成形された形態である点が異なっている。クリップ75は、例えば断面円弧形状とした板ばね状部材であり、円弧形状の圧着板(符号なし)がボビンユニット30の内面から露出するようにして一体成形(インサート成形)されている。
上記の各実施形態では、磁性体コア部材20,22の長辺部20b,21bが互いに接触する一部分としているが、外壁部20d,21dを互いに接触する一部分としてもよい。この場合、図3中(A)等において磁性体コア部材20,21は外壁部20d,21dが隙間なく重なり合う形状とし、ボビンユニット40の両側に突出した長辺部20b,21bの両端部分(2箇所)にクリップ70を配置して互いに圧着させることができる。あるいは、ボビンユニット40内にクリップ75をインサート成形することで、外壁部20d,21dを圧着させる構成としてもよいし、外壁部20d,21d同士が互いに凸形状となることで圧着させる構成としてもよい。また、磁性体コア部材20,21同士を接触及び圧着させる位置としては、長辺部20b,21b同士及び外壁部20d,21d同士の少なくとも一方とすることができ、その際、クリップ70による圧着、インサート型のクリップ75による圧着、長辺部20b,21b同士が互いに凸形状となることによる圧着、外壁部20d,21d同士が互いに凸形状となることによる圧着のいずれか1つ、又は2つ以上の組み合わせのいずれを用いてもよい。
(1)磁性体コア部材20,21の組み合わせ状態で構成される磁気回路に対し、プローブコイル50a(フィールドプローブ)から離れた位置で磁気抵抗を恒常的、定常的に安定して低下させることができる。
(2)単なる接触や密着を図る手段に加えて、さらに能動的に2つの磁性体コア部材20,21を圧着させる力を発生させる手段を備えることにより、上記(1)の効果を確実に達成することができる。
(3)ボビンユニット30内に磁性体コア部材20,21をしまり嵌め(圧入等)しただけでは、経年による劣化があるが、本実施形態及び他の実施形態であれば、経年劣化の影響を受けることなく長期的に効果を発揮することができる。
(4)特に、一実施形態のクリップ70であれば、電流センサ10の使用途中でも適宜に取り替えが可能であるため、耐性向上の維持管理が容易である。
20,21 磁性体コア部材
20b,21b 長辺部
30,40 ボビンユニット
50 プローブコイルユニット
50a プローブコイル
60 一次導体
70 クリップ
Claims (4)
- 被検出電流が導通する一次導体の周囲に形成された磁気回路と、
前記磁気回路上に配置されたプローブコイルと、
被検出電流の導通により生じる磁界とは逆向きの磁界を前記磁気回路に発生させる二次巻線と、
前記プローブコイルの出力電流を消失させるのに必要な前記二次巻線の二次電流に基づいて、被検出電流に応じた検出信号を出力する検出回路と、
互いに組み合わされた状態で一部分同士が接触することで前記磁気回路を構成するとともに、前記磁気回路上に前記プローブコイルを配置するためのエアギャップを開けて他の一部分同士が非接触となる複数の磁性体コア部材と、
前記複数の磁性体コア部材を接触する一部分同士にて互いに圧着させる力を発生させる圧着手段と
を備えた電流検出器。 - 請求項1に記載の電流検出器において、
前記複数の磁性体コア部材は、
組み合わせ状態で互いに重なり合う板状の部位を含み、
前記圧着手段は、
前記板状の部位を重ね合わせ方向に挟み込む外力を加えることで互いに圧着させることを特徴とする電流検出器。 - 請求項1又は2に記載の電流検出器において、
前記複数の磁性体コア部材を組み合わせ状態で内側に収容し、外側に前記二次巻線を保持するボビン部材をさらに備え、
前記圧着手段は、
前記ボビン部材と一体に成形されることで、前記複数の磁性体コア部材の収容に伴い圧着させる力を発生させることを特徴とする電流検出器。 - 請求項1から3のいずれかに記載の電流検出器において、
前記複数のコア部材は、
組み合わせ状態で互いに重なり合う板状の部位を含み、
前記圧着手段は、
前記板状の部位が互いに分離した状態で重ね合わせ方向に凸形状をなし、重ね合わせ状態に保持されることで相互に圧着する力を発生する湾曲部として形成されていることを特徴とする電流検出器。
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