JP2019069617A - ボールペン - Google Patents

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Abstract

【課題】0.4mm以下のボール径においても、受座摩耗や紙詰まりによる筆記不能を発生させることなく、快適な筆記感が得られるボールペンを提供する。【解決手段】円柱材の一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部と、テーパー部の内周を切削して形成したボールハウスと、ボールハウス内に挿入される直径0.4mm以下の筆記ボールと、円柱材の他端からボールハウスの近傍まで穿孔して形成したバック孔と、ボールハウスの底面であって筆記ボールをバック孔方向へ押圧した際に筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、テーパー部の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部とを備えるとともに、筆記ボールの直径(mm)と筆記ボールをボールハウスの底面に押圧する距離(μm)との積として定義されるタタキ係数を9.5以上〜16以下に設定したボールペンチップが形成された。【選択図】図2

Description

本発明は、ボールペン、特にインクに顔料を含有するボールペンに関する。
ボールペンの先端には、筆記ボールを保持するためのボールペンチップが装着されている。このボールペンチップは、通常、下記の各工程によって形成される。
まず、ボールペンの先端側から、筆記ボールが収容されるボールハウスが切削加工される。このとき形成されるボールハウス底面には、最終的にボール受座が形成される。
続いて、ボールハウス底面の裏側からは、ボールペン内のインクを前方へと導く流路となるバック孔が切削加工される。
そして、これらのボールハウスとバック孔とを切削加工等にて貫通させ、インク孔が形成される。このインク孔は、バック孔に至ったインクをさらに先端へ導く流路となる。なお、インク孔の径は、ボールハウスの径よりも小さく、またバック孔の径よりも小さい。
次に、インク孔の周囲には、複数本の溝が放射状に切削される。この溝がチャンネル溝である。このチャンネル溝は、インク孔に至ったインクをボールハウスへ導く流路となる。
そして、筆記ボールは、ボールハウスへ挿入された後、後方へ叩かれて押圧される。この工程を「タタキ」と称する。このタタキによって、ボールハウス底面に筆記ボールの曲面が転写される。このボールハウス底面の曲面がボール受座となる。
最後に、ボールペンチップの先端部分を内方にかしめることで、筆記ボールの脱落を防ぐカシメ部が形成される。
上記各工程で形成されるボールペンチップの各部位のうち、ボール受座は、筆記ボールの座りを安定させる部位であって、これにより筆記ボールの回転を安定させ、円滑な筆記に寄与するものである。
このボール受座の形成について、下記の特許文献1には、筆記ボールの直径(mm)と該筆記ボールを前記ボールハウス底面に押圧する距離(μm)との積として定義されるタタキ係数を28に設定したことで、円滑な筆記に寄与可能とした発明が開示されている。
特許第4646203号
しかし、上記特許文献1では、直径0.7mmの筆記ボールを用いており、直径0.4mm以下のボール径においても同様にタタキ係数を28に設定すると、ボール受座が大きくなってしまって快適な筆記感が得られない不具合があった。
そこで、本発明は0.4mm以下のボール径においても、快適な筆記感が得られるボールペンを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成を備える。
(第1の発明)
本発明のうち第1の発明に係るボールペン1は、円柱材の一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部21と、前記テーパー部21の内周を切削して形成したボールハウス31と、前記ボールハウス31内に挿入される直径0.4mm以下の筆記ボール30と、当該円柱材の他端から前記ボールハウス31の近傍まで穿孔して形成したバック孔40と、前記ボールハウス31の底面であって前記筆記ボール30をバック孔40方向へ押圧した際に該筆記ボール30の曲面が転写されたボール受座33と、前記テーパー部21の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部22とを備えるとともに、前記筆記ボール30の直径(mm)と該筆記ボール30を前記ボールハウス31の底面に押圧する距離(μm)との積として定義されるタタキ係数を9.5以上16以下に設定したボールペンチップ20であって、前記ボールペンチップ20が装着されたことを特徴とする。
ここで、筆記ボール30をボールハウス底面32に押圧する距離とは、タタキ量をいう。そして、「タタキ係数」とは、mm単位で表した筆記ボール30の直径の数値と、μm単位で表したタタキ量の数値との積をいう。
また、筆記ボール30は、直径0.38mmのものを用いると、本発明の作用効果を得るのに特に好適なものとされる。
第1の発明は、タタキ係数を9.5以上16以下に設定することで、直径0.4mm以下の筆記ボール30を用いた場合であっても、適切な大きさのボール受座33を形成することができる。そのため、快適な筆記感が得られるとともに、タタキ係数の増加に伴ってボールの破損を招く加工不良が発生することのないボールペンチップ20を備えたボールペン1を提供することができる。なお、ボールペンチップ20は、ボールペン1内に直接充填されたインクと接触し、毛細管現象によりそのインクを誘導するインク誘導芯17の先端に装着されるものであってもよく、ボールペン1内に収容された管状のインク収容管を備えたインクリフィルの先端に装着されるものであってもよい。
(第2の発明)
本発明のうち第2の発明に係るボールペン1は、前記した第1の発明の特徴に加え、前記ボールハウス31の開き角度である仕上角を150°以上170°以下の間で形成したことを特徴とする。
第2の発明は、ボールハウス31の開き角度である仕上角を150°以上170°以下の間で形成したことで、摩耗時においてもインク流路を確保することができるものである。特に仕上角を160°とすると本発明の作用効果を最大限に発揮可能なボールペンチップ20を備えたボールペン1を提供することができる。
(第3の発明)
本発明のうち第3の発明に係るボールペン1は、前記した第1、第2の発明の特徴に加え、前記ボールペンチップ20には、前記ボールハウス31と前記バック孔40との間を貫通して形成した断面円形の孔であるインク孔41と、前記インク孔41の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス31側から切削して該インク孔41に開放するように形成した幅0.03mm以上0.06mm以下の溝であるチャンネル溝42とが形成され、前記チャンネル溝42の数をa、前記チャンネル溝42の幅をb、前記インク孔41の径をc、前記筆記ボール30の径をdとしたときに、(a×b×c)÷dで表される数値Zを0.05≦Z≦0.10としたボールペンチップ20であって、前記ボールペンチップ20が装着されたことを特徴とする。
第3の発明は、第1、第2の発明におけるタタキ係数の範囲を満たせば、インク孔41とチャンネル溝42と筆記ボール30との関係には一定の法則があることを示したものである。 具体的には、数値Zが0.05未満であると、筆記時において紙等の繊維がボールハウス内に詰まってしまい、終筆に至らない場合が生じる。一方、数値Zが0.10を超えた場合においては、摩耗が大きくなるとチャンネル溝42の開口部が閉塞してしまい、インクを筆記ボール30に供給不能となることで終筆に至らない場合が生じる。
なお、インク孔41はボールペン1内のインクを前方へと導く流路として用いられ、チャンネル溝42はこのインク孔41に至ったインクをボールハウス31へ導く流路として用いられる。
(第4の発明)
本発明のうち第4の発明に係るボールペン1は、前記した第1、第2又は第3の発明の特徴に加え、前記リフィルは、その内部に水を基材とした溶媒中に着色剤として主に顔料を分散させたインクを収容し、インク誘導芯17を通じて前記筆記ボール30にインクが導通することを特徴とする。
第4の発明で用いられるインクは、特に、水を基材としてこれに擬塑性を付与した溶媒中に着色剤として主に顔料を分散させた水性ゲルインクを使用することが好適である。
すなわち、水性ゲルインクは油性インクより粘度が低いため、ボール受座33の形状による書き味の差が出やすいので、ボールペンチップ20を備えたボールペンには水性ゲルインクを用いることが特に適している。
(第5の発明)
本発明のうち第5の発明に係るボールペン1は、前記した第1、第2、第3又は第4の発明の特徴に加え、前記ボールペンチップ20を用いることで、筆記可能距離が1,000m以上となることを特徴とする。
ボールペンチップ20を備えたボールペンにおいては、筆記距離が伸びることに伴って、ボール受座33及びカシメ部22の摩耗が大きくなることで、インクを使い切ることなく筆記不能となることもしばしば見受けられた。特に、このことは筆記ボール30が直径0.4mm以下のボールペンにおいては、筆記ボール30が直径0.7mmのボールペンと比べて如実に表れていた。
しかし、本発明においては、仕上角を最適な角度で形成することで、摩耗時においてもインク流路を確保できるため、筆記可能距離を1,000m以上まで向上させることができたものである。
(第6の発明)
本発明のうち第6の発明に係るボールペン1は、前記した第1、第2、第3、第4又は第5の発明の特徴に加え、前記筆記ボール30は、ボールの表面粗さRaが4nm以下であることを特徴とする。
このとき、筆記ボール30は、最大でもボールの表面粗さRaが4nmで形成することとしている。なぜなら、筆記ボール30の表面粗さRaが4nmを超えると、筆記時に受座摩耗が激しくなるため、筆記距離が伸びるに連れてインクの流出量が低下していき、最悪の場合にはインクの流出が停止し、筆記不能となってしまうからである。なお、表面粗さRaは、非接触表面形状測定機(Zygo社製NewView7200)により、レンズ倍率50倍、評価長さ100μm、ガウシアンフィルタ25μmの条件で設定し、それ以外はJIS B0601(製品の幾何特性仕様−表面性状)に準拠するものとする。
本発明は、上述のように構成されているので、直径0.4mm以下の筆記ボールを備えたボールペンにおいても、適切な大きさのボール受座が形成され、かつ、タタキ係数を比較的小さく設定したため、適切なチップ加工と筆記によるボール受座摩耗を抑制しつつ快適な筆記感が得られるボールペンを提供することができる。
本発明の実施形態に係るボールペンの正面断面図である。 本発明の実施形態に係るボールペンの先端部分における拡大した正面断面図(A)及び拡大した平面断面図(B)である。 摩耗時における本発明の実施形態に係るボールペンの先端部分の拡大図(A)及び摩耗時における従来のボールペンの先端部分の拡大図(B)である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る筆記具として、軸筒10の先端から突出するボールペンチップ20を備えたボールペン1を例に説明する。なお、本発明において、ボールペン1及びその構成部品についての「前方」とはボールペンチップ20を備えた方向を示し、「後方」とはその反対側の方向を示すものとする。
(全体構造)
本発明の実施形態に係るボールペン1は、図1に示すように、先端は開口し、その後端は閉塞している筒形状の中軸12と、中軸12の開口部分に装着され、その先端にかけてテーパー形状を呈する先軸11と、中軸12の後端の外周面を覆うように装着され、その後端が閉塞している後軸13とからなる軸筒10を備え、この軸筒10内に収容されたインクタンク14に充填された図示しないインクを先軸11の先端に装着されたボールペンチップ20まで誘導し、ボールペンチップ20の先端に装着された筆記ボール30が紙面と接触することで筆記可能となるコレクター16式のボールペン1である。
(各部材の構造)
図1に示すように、軸筒10内には、後方から順に、図示しないインクが充填された筒形状のインクタンク14と、後端はインクタンク14と接触し、その先端は先軸11から突出しているインク誘導芯17を軸心に貫装した、複数枚の板状部材を軸方向に平行に配したコレクター16と、インク誘導芯17の先端付近を覆いつつ、コレクター16の先端に装着される継手18と、インク誘導芯17の先端から装着され、後端は継手18の先端の内周面とインク誘導芯17の先端の外周面との間に支持され、その先端は先軸11の先端から突出するボールペンチップ20とを備えている。なお、軸筒10の先端からその中央付近までは、軸筒10の外周を覆うように、インクの乾燥やボールペンチップ20の破損を回避すべく筒形状のキャップ15により保護されている。
(インクタンク14の構造)
インクタンク14とは、ボールペン1において、図示しないインクを直接収容する部材であり、後端が閉鎖している筒形状の外観を呈している。
このとき、本発明の実施形態にかかるインクは、水を基材としてこれに擬塑性を付与した溶媒中に着色剤として主に顔料を分散させた、いわゆる水性インクが用いられている。 また、水性インクは油性インクより粘度が低く、温度25℃において、コーンプレート型回転粘度計による回転数50rpmにおける粘度が1〜150mPa・sの範囲であるため、ボールペンチップ20と筆記ボール30との接触部分であるボール受座33の形状による書き味の差が出やすい。したがって、本発明のようなボールペンチップ20を備えたボールペンには、水性インクを用いることが好適なものとされている。
なお、上記した水性インクは、剪断減粘性を付与したゲルインクとしても良く、ゲルインクを用いる場合は、ゲルインクの後端と接する箇所にグリース状のインク追従体が充填される。このインク追従体は、インクの消費に伴い先端へ移動するとともに、インクの漏出を防止する機能を有している。
(インク誘導芯17の構造)
インク誘導芯17は、インクタンク14内のインクと接触し、毛細管現象によりそのインクを筆記ボール30まで誘導する部材であり、毛細管現象が発生する程度の太さで束ねられた棒状の繊維芯などから形成される。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るインク誘導芯17は、インクタンク14内にその後端が挿入されインクタンク14内のインクを毛細管現象により自己に誘導する中芯17aと、その後端が中芯17aの先端に挿入され、中芯17aが有するインクを毛細管現象により自己に誘導する先芯17bとから構成されている。
そして、先芯17bまで誘導されたインクは、ボールペンチップ20を通じて筆記ボール30にインクが供給される構造となっている。
(コレクター16の構造)
図1に示すように、本発明の実施形態に係るコレクター16は、ABS樹脂素材から形成され、複数のフィンが外周に設けられた略筒形状を呈する部材である。また、コレクター16は、複数枚の板状部材が軸方向に平行に配されており、この板状部材間に図示しないインクが保留可能となっている。さらに、そのコレクター16の軸心には、中芯17a及び先芯17bが貫装されている。また、コレクター16の先端には、合成樹脂製の素材から形成された継手18が装着されている。なお、継手18には、その後端から先端までを貫通する図示しない貫通孔が形成されている。
(ボールペンチップ20の構造)
ボールペンチップ20の先端部分は、図2(A)に示すような形状を呈する。
すなわち、円柱材の後端から先端付近までバック孔40がドリルにて切削加工にて形成される。そして、先端からこのバック孔40を貫通しない箇所までドリルにてボールハウス31が切削加工にて形成される。次に、このボールハウス31とバック孔40とをドリルにて貫通させ、インク孔41が形成される。なお、上記工程において、ボールハウス31の開き角度である仕上角は、160°で形成されている。
そして、ボールハウス底面32から、このインク孔41の周囲の複数箇所を、チャンネル切削ツールを用いて、インク孔41の中途までチャンネル溝42が放射状に切削加工される。さらに、筆記ボール30がボールハウス31内に挿入され、所定のタタキ量だけ後方にタタキ加工される。
このタタキ加工によって、ボールハウス底面32に筆記ボール30の球面が転写されて、ボール受座33が形成される。このボール受座33は、平面視では、図2(B)に示すように、インク孔41を取り囲むように、チャンネル溝42により等分された状態となっている。
最後に、円柱材の外周を先細に切削して形成したテーパー部21の先端が内方にかしめられてカシメ部22が形成され、これにより筆記ボール30が保持されることとなる。
(ボールペン1の特性)
本発明の実施形態に係るボールペン1は、上述のように構成されているため、以下の特性を有する。
なお、図3(A)及び(B)は、摩耗の発生により筆記ボール30が40μm後方に沈んだ状態を示すものであり、図3(A)は本発明の実施形態に係るボールペンチップ20であり、図3(B)は従来のボールペンチップを表したものである。
このとき、図3(B)に示す、従来のボールペンチップは仕上角を140°で形成され、図3(A)に示す、本発明の実施形態に係るボールペンチップ20は仕上角を160°で形成されている。
その結果、摩耗時におけるインク流路X又はインク流路Y(図3(A)及び(B)参照。)の幅は以下のような差異が確認された。従来のボールペンチップにおけるインク流路Yは、図3(B)に示すように0.015mmであったのに対し、本発明の実施形態に係るボールペンチップ20におけるインク流路Xは、図3(A)に示すように0.021mmの幅を確保可能となっている。
そのため、本発明の実施形態に係るボールペンチップ20においては、摩耗の発生により筆記ボール30が40μm後方に沈んだ状態でも、適切なインク量を筆記ボール30に供給可能となっているため、摩耗時でも筆記が継続できるボールペン1を提供可能となっている。
(1)機械筆記試験
(1−1)ボールペンの作成
上述したボールペン形態を基準とし、インクタンク内へのインク充填量は1.5mg、インク粘度(25℃、50rpm条件)を3mPa・sとした。
またボールペンインクの配合は、
顔料:カーボンブラックMA−100(三菱化学社製) 7.0重量%
分散剤:ジョンクリル61J(BASF JAPAN社製) 5.5重量%
潤滑剤:リン酸エステルRS−610(東邦化学工業社製) 0.5重量%
防錆剤:ベンゾトリアゾール 0.3重量%
防腐剤:ベストサイド600(日本曹達社製) 0.3重量%
pH調整剤:トリエタノールアミン 2.5重量%
溶剤:プロピレングリコール 12.0重量%
水:イオン交換水 残部
である。
(1−2)試験条件
JIS S6039に準拠した筆記試験機を用い、筆記速度4.5m/分、筆記角度60°、筆記荷重0.98Nの筆記条件で、JIS P3201に準拠した筆記試験紙上に螺旋筆記することにより筆記試験を行った結果を以下の表1〜表3に示す。
(2) タタキ係数について
(2−1) 実施例
本発明の各実施例に係るボールペンチップにおいては、ボール径は0.38mmとした。また、タタキ量は、実施例1においては25μmとし、実施例2においては42μmとした。これにより、タタキ係数は、
実施例1:0.38×25=9.5
実施例2:0.38×42=16.0
となった。
終筆の評価は、インクタンク内のインクが無くなるまで筆記可能かつ十分な筆記距離を確保できたものを○とした。
(2−2) 比較例
比較例に係るボールペンチップにおいても、実施例と同様に、ボール径は0.38mmとし、タタキ量を25μm以上42μm以下の範囲外としてタタキ係数を測定した。すなわち、比較例1においては5.7と、比較例2においては6.8と、比較例3においては17.1とした。
その結果、タタキ量が25μm未満である比較例1及び比較例2においては、流量規格の上限を超えてしまい、終筆に至ったが1,000m以上の十分な筆記距離を確保することができなかった。
一方、タタキ量が42μmを超えた比較例3においては、摩耗が大きくなると、チャンネル溝の開口部が閉塞してしまい、インクを筆記ボールに供給不能となってしまったため終筆まで至らなかった。
上記の測定の結果、本発明の各実施例に係るボールペンチップは、タタキ量を25μm以上42μm以下に設定して、タタキ係数が9.5以上16以下の数値となるように形成することが望ましいものと結論される。
(3) 数値Zについて
(3)におけるボールペンチップは、上記(2)の構成に加えて、チャンネル溝の幅を0.03mm以上0.06mm以下、チャンネル溝の本数を3本又は4本とし、インク孔の径を0.17mm又は0.20mmとした。
このとき、チャンネル溝の数をa、チャンネル溝の幅をb、インク孔の径をc、筆記ボールの径をdとしたときに、
(a×b×c)÷dで表される数値Zが0.05≦Z≦0.10であると、インクの供給が滞ることなく、終筆まで至ることが可能であることが確認された。
また、表3の終筆の列に示す実験結果の評価基準は以下の通りとした。
A:インクの供給が滞ることなく、かつ、快適な筆記感を得ながら、終筆まで至った。
B:インクの供給が滞ることなく、終筆まで至った。
C:途中インク流量の低下が見られたが、終筆まで至った。
上記の測定の結果、実施例3〜実施例11に係るボールペンチップは、インクの供給が滞ることなく、終筆まで至ることが確認された。したがって、数値Zが0.05≦Z≦0.10となるようにボールペンチップを形成することで、インクの供給が滞ることなく、終筆まで至れることが結論される。
さらに、数値Zの範囲に着目すると、実施例5〜実施例9のように数値Zが0.063≦Z≦0.081となるように形成すると、快適な筆記感を得ながら終筆まで至るボールペンを提供可能なことが結論された。
1 ボールペン
10 軸筒 11 先軸
12 中軸 13 後軸
14 インクタンク 15 キャップ
16 コレクター 17 インク誘導芯
17a 中芯 17b 先芯
18 継手
20 ボールペンチップ 21 テーパー部
22 カシメ部
30 筆記ボール 31 ボールハウス
32 ボールハウス底面 33 ボール受座
40 バック孔 41 インク孔
42 チャンネル溝

Claims (1)

  1. 円柱材の一端の外周を先細に切削して形成したテーパー部と、
    前記テーパー部の内周を切削して形成したボールハウスと、
    前記ボールハウス内に挿入される直径0.4mm以下の筆記ボールと、
    当該円柱材の他端から前記ボールハウスの近傍まで穿孔して形成したバック孔と、
    前記ボールハウスの底面であって前記筆記ボールをバック孔方向へ押圧した際に該筆記ボールの曲面が転写されたボール受座と、
    前記テーパー部の先端部分を内側にカシメ加工して形成したカシメ部とを備えるとともに、
    前記筆記ボールの直径(mm)と該筆記ボールを前記ボールハウスの底面に押圧する距離(μm)との積として定義されるタタキ係数を9.5以上16以下に設定し、
    前記ボールハウスと前記バック孔との間を貫通して形成した断面円形の孔であるインク孔と、
    前記インク孔の周囲に等配された複数箇所を前記ボールハウス側から切削して該インク孔に開放するように形成した幅0.03mm以上0.06mm以下の溝であるチャンネル溝とが形成され、
    前記チャンネル溝の数をa、前記チャンネル溝の幅をb、前記インク孔の径をc、前記筆記ボールの径をdとしたときに、
    (a×b×c)÷dで表される数値Zを0.05≦Z≦0.10としたボールペンチップが装着されたことを特徴とするボールペン。
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