JP2019065482A - 木造耐力壁 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、壁パネルの両端部に、その厚み方向中間部で側方に突出する中間耳部を設けるとともに、中間耳部の厚み方向両側に線材が設けられ、これら中間耳部と線材とが、柱(垂直材)に形成された落とし込み溝に挿入される構成が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、壁パネルを固定するために、垂直材に落とし込み溝を形成しなければならず、その加工に手間がかかる。また、壁パネルを厚み方向に1枚のみ設けるものであり、耐力壁として必要な耐力と剛性を備えるものではない。壁パネルを複数枚設けるには、枚数分の溝を設けなければならず、施工の手間がかかるうえ、複数枚の壁パネルを設けたとしても、壁パネル同士は一体化するわけではなく、耐力壁として必要な耐力と剛性とが得られるとは限らない。
特許文献2に開示されたような構成では、枠材の一方の側にのみ複層面材が設けられており、耐力壁として必要な耐力と剛性を備えるものではない。特許文献2に開示されたような構成を用い、枠材の両側に複層面材を設けるには、枠材の両側の複層面材のそれぞれを、ドリルネジで枠材に固定することになり、施工の手間がかかる。
特許文献3に開示されたような構成では、石膏ボード、構造用合板を壁枠に取り付けるには、壁枠の一方の側と他方の側とで、それぞれ釘を打ち込まなければならず、施工の手間がかかる。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の木造耐力壁は、柱材と、土台や梁材で構成される木造軸組の両側構面に、其々板材が接合された木造耐力壁であって、前記板材は、前記柱材、前記土台、前記梁材の其々の側面に設けられた受材を挟む位置に配置される、または、前記柱材と、前記土台、及び/又は前記梁材を挟む位置に配置され、一方の前記板材の表面から、前記受材または前記柱材と、前記土台、及び/又は前記梁材を貫通して、他方の前記板材に至るまで線状材が挿入され、該線状材は前記板材の内部に留まっていることを特徴とする。
このような構成によれば、本発明の木造耐力壁では、一方の板材側からのみ、受材、または柱材と、土台や梁材で構成される木造軸組を挟んで、対向する他方の板材の内部まで線状材が挿入されていることで、両側の板材より其々線状材を打ち込む場合と比較して、線状材の数を低減しつつ、木造軸組と両側の板材との間において、同等なせん断抵抗力を確保することができる。また、線状材は、一方の板材側から打ち込み、他方の板材の内部に留めることで、線状材が他方の板材側の表面には突出されておらず、他方の板材の断面欠損を防止できる。
また、受材、または土台や梁材からなる水平木材と、受材または柱材からなる鉛直木材との両側に板材が接合されていることで、板材が筋交いとして機能し、トラス形状の圧縮筋交い効果(トラス効果)が発揮される。よって、柱と土台、及び梁で構成される木造軸組と、当該木造軸組を挟んだ両側の板材が其々独立して抵抗するのではなく、木造軸組と両側の板材が一体として抵抗することで、木造耐力壁のせん断剛性やせん断耐力を増大させることができる。
このような構成によれば、板材の面材隅角部が斜め、または矩形に切り落とされて、欠込み部(隙間部分)が設けられていることで、地震時に板材の面材隅角部に隙間部分が設けられているために、柱材、または土台や梁材にめり込むことを防止できる。よって、板材、柱材、土台や梁材の損傷を抑えることが可能である。また、板材と柱材、土台や梁材との間での損傷を抑えることができるために、木造耐力壁に優れた性能を確保できる。
このような構成によれば、柱内部や板材同士の間にPC鋼材を配置し、そのPC鋼材を、木造耐力壁を支える基礎部から土台を貫通し、最上階の梁材まで貫通させて、その上端面に定着させることで、柱材と板材に加えて、PC鋼材が鉛直抵抗材として機能するために、木造耐力壁の鉛直方向の引張耐力が増大される。これによって、木造耐力壁を備えた構造体の強度が高まり、地震時等に土台や梁材に対して柱材が水平方向に変位・変形するのを抑えることができる。したがって、柱材の変位や変形によって、柱材の下端部が土台や梁材にめり込むのを抑え、柱材の下端部や、柱材の下端部が接合される土台や梁材が損傷するのを抑えることができる。
本発明の第1の特徴は、木造軸組を挟んだ一方の板材表面から他方の板材内部まで線状材を挿入させ、線状材を他方の板材内部に留めることである。また、第2の特徴は、木造軸組に接合させる両側の板材は、面材隅角部が斜めまたは矩形状に取り除かれて欠込み部が形成されている点である(図12)。第3の特徴は、木造耐力壁を構成する柱材に削孔された貫通孔、または両側の板材同士の間には、基礎部から前記土台と、前記梁材とを貫通して最上階の前記梁材の上端面までPC鋼材が配置されている点である(図11)。
本発明の第一実施形態は、木造耐力壁を構成する柱材、梁材、または土台の各側面に受材を設置し、その受材を挟んだ両側に板材を接合させた真壁式の木造耐力壁である。また、木造軸組を挟んだ一方の板材表面から他方の板材内部まで線状材が挿入された木造耐力壁である(図1〜図5)。
両側の板材同士の間には、PC鋼材が配置されてもよいし、配置されていなくともよい(図1〜図5、図12)。
第1変形例は、PC鋼材が、当該木造耐力壁を構成する柱材に形成された貫通孔内に配置されたものである(図11)。
第2変形例は、木造耐力壁を構成する柱材、梁材、または土台を挟んだ両側に板材を接合させた大壁式の木造耐力壁であり、柱材や梁材は板材間の内部に配置され、木造耐力壁の表面には柱材や梁材は現れていない(図13)。
以下、添付図面を参照して、本発明による木造耐力壁を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示されるように、各種の建物の木造軸組を構成する構造体5は、地盤中に構築された基礎部1上に設けられている。構造体5は、基礎部1上に設けられて水平方向に延びる土台2と、土台2上に設けられて鉛直上方に向かって延びる複数本の柱材3と、水平方向で互いに隣り合う柱材3間に架設された梁材4と、を有している。これら土台2、柱材3、梁材4は、木造で、例えば断面矩形の木材から構成されている。
図2に示されるように、受材11は、互いに隣接する柱材3同士の対向する表面3fに沿って上下方向に延びる鉛直受材11vと、互いに上下に位置する梁材4同士、または互いに上下に位置する土台2と梁材4において、互いに対向する表面4f、2fに沿って、水平方向に延びる水平受材11hと、を有している。鉛直受材11v、水平受材11hは、それぞれ断面矩形の木材からなり、釘やネジビス(図示無し)によって、柱材3、土台2,梁材4に固定されている。また、本実施形態においては、受材11として、上下の水平受材11hの間に、水平方向両側の鉛直受材11v間に架設された中間受材11cが、例えば2本設けられている。また、互いに上下に位置する水平受材11h、中間受材11cの間には上下方向に延びる連結部材11dが設けられている。
図5に、図4に示す木造耐力壁の柱材と両側板材との接合部分の拡大断面図を示す。
木造耐力壁10を構成する板材12A、12Bは、図5に示されるように、一方の板材12Aの表面12fから、受材11を挟んだ他方の板材12Bの厚み方向中間部(内部)まで、ネジビスまたは釘からなる線状材15を挿入して、受材11に固定されている。具体的には、線状材15は、一方の板材12Aの表面12fから、受材11を貫通し、その先端部15sが、他方の板材12Bの厚み方向中間部に到達している。すなわち、線状材15は、その全長が、一方の板材12Aの表面12fから他方の板材12Bの表面12gまでの壁厚さより短い。これにより、一方の板材12A側から見ると、一方の板材12Aの表面12fに線状材15の頭部15tが露出し、先端部15sが、他方の板材12Bの表面12gに露出しないようになっている。
また、図3に示されるように、板材12A、12Bには、その四隅において、柱材3と梁材4とが接する部分、柱材3と土台2が接する部分に対向する位置に、面材隅角部14が形成されている。面材隅角部14は、板材12A,12Bが斜めに切截されることで略直角三角形形状に形成されている。これにより、柱材3、梁材4、土台2と、板材12A,12Bの面材隅角部14の間の部分に隙間が形成されて切込み部16となっている。または、切込み部は、板材に加工する際の欠込み精度や作業効率の面から矩形状に設けられていてもよい。
また、本実施形態において、PC鋼材20は、上下方向に複数本の鋼棒21を接続することで構成されている。各鋼棒21は、構造体5の例えば2階層分に対応した長さを有し、その上端部21tは、梁材4上に配置された定着プレート22を貫通して上方に突出し、ナット23が螺着されている。各鋼棒21は、ナット23を締め付けることで、所定のプレストレスが導入される。また、定着プレート22とナット23との間には、定着プレート22に対してナット23を上方に離間するよう付勢する付勢力を発揮するバネ座金24が設けられている。このバネ座金24により、経年等による木材の収縮等による変位を吸収する。また、互いに上下に位置する鋼棒21同士は、下方の鋼棒21の上端部21tが接続されたカプラとしてのナット23に、上方の鋼棒21の下端部21sが螺着されることで、互いに接続されている。
なお、PC鋼棒20は、図1では2階層分の上部梁材4の上端面にて定着プレート22を介して固定されている。しかし、各階ごとにPC鋼棒20に異なる張力を導入することができるために、PC鋼棒20は各階ごとに梁材の上端面に固定するのがより好ましい。また、上記PC鋼材20は、いわゆるPC鋼棒に限らず、鉄筋やPC鋼より線等を用いることもできる。
このような構成によれば、木造耐力壁10において、一方の板材12A側からのみ、受材11を挟んで対向する他方の板材12Bの内部まで、線状材15が挿入されていることで、両側の板材12A,12Bのそれぞれから線状材15を打ち込む場合に比較し、線状材15の数を低減しつつ、木造軸組5と両側の板材12A,12Bとの間において、同等なせん断抵抗力を確保することができる。また、線状材15は、他方の板材12Bの内部に留めることで、他方の板材12Bを室内側に設ける場合においては、板材12B表面に線状材が現れることのない木造耐力壁10を実現できるとともに、他方の板材12Bの断面欠損を防止できる。
また、受材11を挟んだ両側に板材12A,12Bを設けて線状材15で固定することで、水平受材11hまたは梁材4からなる水平木材5hと、鉛直受材11vまたは柱材3からなる垂直木材5vとの間に、板材12A,12Bが設けられることになる。これによって、板材12A,12Bが、水平木材5hと垂直木材5vとの間を斜めに結ぶ筋交いT(図3に2点鎖線で図示)のように機能する。これによって、木造耐力壁10のせん断剛性やせん断耐力が増大するので、大がかりな補強材を設けることなく、剛性及び耐力が高く、しかも変形性能に優れた、2面せん断抵抗機構を有する木造耐力壁10を構築することができる。したがって、必要な耐力と剛性を備えつつ、施工が容易な木造耐力壁10を提供することが可能となる。
このような構成によれば、柱3内部や板材12A,12B同士の間にPC鋼材20を配置し、そのPC鋼材20を、木造耐力壁10を支える基礎部1から土台2を貫通し、最上階の梁材4まで貫通させて、その上端面に定着させることで、柱材2と板材12A,12Bに加えて、PC鋼材20が鉛直抵抗材として機能するために、木造耐力壁10の鉛直方向の引張耐力が増大される。これによって、木造耐力壁10を備えた構造体5の強度が高まり、地震時等に土台2や梁材4に対して柱材3が水平方向に変位・変形するのを抑えることができる。したがって、柱材3の変位や変形によって、柱材3の下端部が土台2や梁材4にめり込むのを抑え、柱材3の下端部や、柱材3の下端部が接合される土台2や梁材4が損傷するのを抑えることができる。
このような構成によれば、板材12A,12Bの面材隅角部14が斜めに切り落とされて、欠込み部16が設けられていることで、地震時に板材12A,12Bの面材隅角部14が柱材3、または土台2や梁材4にめり込むことを防止できるために、板材12A,12B、柱材3、土台2や梁材4の損傷を抑えることが可能である。よって、板材12A,12Bと柱材3、土台2や梁材4との間での損傷を抑えることができるために、木造耐力壁に優れた性能を確保できる。
木造耐力壁のせん断性能を確認するために、木造耐力壁を構成する受材を挟んだ両側板材を一方の板材表面からのみ線状材を挿入させて一体化させた真壁式の接合部構造、及び耐力壁を対象として、2種類の性能確認実験(接合部実験、面内せん断実験)を行った。
接合部実験では、真壁式による「板材−受材−板材(以降、受材軸組と呼ぶ)」の構成による接合部構造を対象に、受材軸組を一体化する線状材として、ねじビスを使用した場合と、太径の鉄丸釘を使用した場合について、其々3体ずつ試験体を製作し、合計6体の縮小試験体について、圧縮型のせん断加力実験を行った。
また、図7(a)に、線状材に太径の鉄丸釘を使用したT2シリーズの比較試験体の正面図を、及び図7(b)に側面図を、それぞれ示す。T2シリーズの比較試験体は、図6に示すねじビスを使用したT1シリーズの試験体と比較した場合、柱材3、鉛直受材11v、水平受材11h、板材12A,12B、及び線状材95A,95Bの挿入位置は同一であるが、線状材95A、95Bに太径の鉄丸釘(JIS規格品、CN75、鉄製釘で長さ76.2mm、胴部径3.76mm)を使用した点のみが異なる。ここで、T1、T2シリーズの試験体について、受材軸組の接合仕様に着目すると、次のように整理される。T1シリーズの試験体は、受材11v、11h両面に配した板材t=24mmを長さ90mmのビスを片面側から1本で貫通するように打ちとめた2面せん断型の接合仕様である。T2シリーズの試験体は、一般的に利用されている釘を用いたもので、受材11v、11hを挟んだ両側の板材t=24mm表面より1接合部あたり2−CN75(両面から各1本ずつ)を止めつけた従来型の両側に1面せん断型を有する接合仕様である。
このような試験装置100を用い、試験体T1、比較試験体T2に対し、アクチュエータ102により、加える荷重を段階的に増大させながら、試験体T1、比較試験体T2のそれぞれに、繰り返し加力を行った。
表1に示す実験結果によると、1本のねじビス15を貫通させた2面せん断型の接合仕様のT1シリーズ試験体の初期剛性と、降伏耐力は、受材軸組の両側に其々1本ずつ、太径の鉄丸釘95A、95Bを配置して、2組の1面せん断型の接合仕様を設けたT2シリーズ試験体と比べた場合、約93%と約86%であった。受材軸組を1本のねじビス15で接合させたT1シリーズ試験体の実験値は、2本の太径の鉄丸釘95A、95Bを用いたT2シリーズ試験体の半分である50%を大きく上回る実験結果であり、2面せん断型の接合仕様について、線状材1本あたりの性能向上効果が確認できた。
試験体は、表2に示すように、両面の板材厚さが各24mmでビス間隔が@100mmのt24@100試験体と、板材厚さが24mmでビス間隔が@75mmのt24@75試験体と、板材厚さが12mmでビス間隔が@100mmのt12@100試験体である。面内せん断実験の試験体は、図3に示されるような形態のものであり、柱材3、梁材4には、150mm角のヒノキ材を用い、板材12A,12Bには、厚さ24mm、幅858mm×長さ1668mmの構造用合板を用いた。受材11には、厚さ45mmのスギ材を用いた。
板材12A,12Bは、一方の板材12A側から受材11を挟んで他方の12Bの内部まで到達する線状材15で接合した。線状材15には、外径6mm、長さ90mmのビスネジを用い、鉛直受材11v、水平受材11hに対しては50mmの間隔で、中間受材11cに対しては100mmの間隔で配置した。また、板材12A,12Bには、その四隅に、水平方向397mm×上下方向110mmの大きさで、面材隅角部14には欠込み部16を形成し、隙間を設けた。
加力は、図9に示されるように、木造耐力壁10を構成する上部に設ける梁材4の一方端部面を、アクチュエータ202を用いて、水平荷重を漸増載荷した。アクチュエータ202では、変形角が漸次段階的に大きくなるように、繰り返し加力を行い、柱材3の下端部における変形量を変位計(図示無し)で検出した。
面内せん断実験では、3試験体ともに、試験体の軸組がせん断変形するにともない、その内側に納まっている板材と柱材、及び土台、梁材がトラス形態を形式して抵抗していることが板材表面の変形状況が確認された(圧縮筋交い効果)。また、試験体の最大耐力時には、柱が部分的に曲げ変形を起こし、板材と受材との間でねじビスの破壊、または引抜けがみられた。
図10に、木造耐力壁の面内せん断実験で得られた水平荷重と、土台と梁材との間での部材変形角の関係を示す。
変形性能は、3試験体ともに、構造安全性能の目安として設定した部材変形角(1/20rad)を確保でき、かつ1/20radに至る水平荷重と部材変形角の関係も安定した包絡線が確認された。最大荷重は、3試験体のなかでは、両面の板材厚さが各24mmでビス間隔が@75mmのt24@75試験体が最も大きく、次は板材厚さが24mmでビス間隔が@100mmのt24@100試験体で、その次は、板材厚さが12mmでビス間隔が@100mmのt12@100試験体であった。
初期剛性については、t24@75試験体とt24@100試験体は略同等であり、ビス間隔の違いは明確にはみられなかった。また、最大荷重後の水平荷重と部材変形角の関係については、t24@100試験体は最大荷重後は徐々に荷重低下がみられたが、ねじビスの間隔を狭くし、ビス本数が多いt24@75試験体では最大荷重時に柱脚部で局所的に破壊が発生した後、水平荷重が急激に低下した。
よって、初期剛性と、最大荷重後の水平荷重と部材変形角の関係に着目すると、受材両側に高強度材である厚さ24mmの板材を設ける場合には、ねじビス間隔を100mmとしたt24@100試験体が、高剛性を確保しながら、最大荷重後の水平荷重と部材変形角の関係でも徐々に低下する包絡関係を示し、エネルギー吸収性能に優れているために、本発明の木造耐力壁の構成として望ましいことが確認された。
なお、本発明の木造耐力壁は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、PC鋼材20を、板材12A,12B同士の間に設けるようにしたが、これに限らない。
本実施形態の第1変形例の構成を図11に示す。
図11に示されるように、PC鋼材20は、互いに隣接する柱材3の各々に形成された貫通孔3hの内部を上下方向に貫通するように設けてもよい。
このような構成によれば、柱材3の内部に、木造耐力壁10を構成する土台2や梁材4を貫通してPC鋼材20が配置されることで、木造耐力壁10の鉛直方向の引張耐力が増大される。これによって、木造耐力壁10を備えた構造体5の強度が高まり、地震時等に土台2や梁材4に対して柱材3が水平方向に変位・変形するのを抑えることができる。したがって、柱材3の変位や変形によって、柱材3の下端部が土台2や梁材4にめり込むのを抑え、柱材3の下端部や、柱材3の下端部が接合される土台2や梁材4が損傷するのを抑えることができる。
さらに、図12に示されるように、PC鋼材20を備えない構成としてもよい。
また、上記実施形態では、板材12A,12Bを、互いに隣り合う柱材3同士、互いに上下に位置する土台2と梁材4、あるいは梁材4同士の間(内側)に配置するようにした、いわゆる真壁を構成しているが、これに限らない。
本実施形態の第2変形例の構成を図13に示す。
図13に示されるように、板材12C、12Dは、互いに隣り合う柱材3同士、互いに上下に位置する土台2と梁材4、あるいは梁材4の表面を覆う大壁方式による構成でもよい。すなわち、木造耐力壁10は、柱材3と、土台2及び梁材4で構成される木造軸組の構造体5の木材表面に、複数の板材12C,12Dが重ね合わされて配置された木造耐力壁10であって、板材12C,12Dは、柱材3と土台2、及び/又は梁材4を中に挟んで壁面を構成する位置に配置されている。そして、一方の板材12Cの表面12fから、柱材3と土台2、及び/又は梁材4を貫通して他方の板材12Dの内部に至るまで線状材15が挿入されている。
また、柱材3及び梁材4を挟んだ両側に板材12C,12Dを設けて線状材15で固定することで、水平受材11hまたは梁材4からなる水平木材5hと、鉛直受材11vまたは柱材3からなる垂直木材5vとの間に、板材12C,12Dが設けられることによって、板材12C,12Dが、水平木材5hと垂直木材5vとの間を斜めに結ぶ筋交いのように機能する。これによって、木造耐力壁10のせん断剛性やせん断耐力が増大するので、大がかりな補強材を設けることなく、剛性及び耐力が高く、しかも変形性能に優れた、2面せん断機構を構成する木造耐力壁10を構成することができる。
したがって、必要な耐力と剛性を備えつつ、施工が容易な木造耐力壁10を提供することが可能となる。
また、受材11として、水平受材11hと鉛直受材11vとに加えて、中間受材11c、連結材11dを設けるようにしたが、受材11は、少なくとも水平受材11hと鉛直受材11vとを備えていればよく、中間受材11c、連結材11dの有無や配置は、適宜変更することができる。
また、板材12A,12B、12C,12Dの固定に用いる線状材15の配置や本数についても、適宜変更することができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
2 土台 12A〜12D 板材
3 柱材 14 面材隅角部
3h 貫通孔 15 線状材
4 梁材 16 切込み部
5 構造体 20 PC鋼材
10 木造耐力壁
Claims (3)
- 柱材と、土台や梁材で構成される木造軸組の両側構面に、其々板材が接合された木造耐力壁であって、
前記板材は、前記柱材、前記土台、前記梁材の其々の側面に設けられた受材を挟む位置に配置される、または、前記柱材と、前記土台、及び/又は前記梁材を挟む位置に配置され、
一方の前記板材の表面から、前記受材または前記柱材と、前記土台、及び/又は前記梁材を貫通して他方の前記板材に至るまで線状材が挿入され、該線状材は前記板材の内部に留まっていることを特徴とする木造耐力壁。 - 前記柱材と前記土台、または前記梁材に接する前記板材の面材隅角部は、斜めまたは矩形に切截された欠込み部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の木造耐力壁。
- さらに、前記柱材に形成された貫通孔、または前記板材同士の間には、基礎部から前記土台と、前記梁材とを貫通して最上階の前記梁材の上端面までPC鋼材が配置され、該PC鋼材が各階ごとの前記梁材の前記上端面に固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木造耐力壁。
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