JP2019065355A - 溶融塩電解槽 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融塩電解槽の使用に伴い、電解槽内に配置される鋼製器具の溶融塩界面近傍に発生し得る腐食による損傷を有効に防止できる溶融塩電解槽の提供。【解決手段】溶融塩電解槽1は、内部を溶融塩浴とし、溶融塩を電気分解するとともに、電気分解により溶融金属が生成される電解槽2と、電解槽2内に配置した陽極3a及び陰極3bを含む電極3と、電解槽2内で溶融塩浴に浸漬させて配置されて、少なくとも周囲が鉄を含有する材料からなる鋼製器具4とを備えるものであって、鋼製器具4に、鋼製器具4の、少なくとも溶融金属の気液界面GLに位置する界面近傍部分の外面を覆う保護スリーブ8が設けられてなる。【選択図】図1

Description

この発明は、電解槽の内部を溶融塩浴とし、溶融塩浴に浸漬させた温度調整管その他の所定の鋼製器具を用いて、その溶融塩を電気分解することにより、溶融金属を生成する溶融塩電解槽に関するものであり、特には、溶融塩電解槽の使用に伴う、鋼製器具への損傷の発生を防止することのできる技術を提案するものである。
たとえば、クロール法による金属チタンの製造に際し、副次的に生成される塩化マグネシウムは、溶融塩電解槽を用いて、電気分解により金属マグネシウムと塩素ガスとに分解され、それぞれ四塩化チタンの還元およびチタン鉱石の塩素化に用いられて再利用されることがある。
この種の電気分解では一般に、電解槽内で塩化マグネシウム等の溶融塩を貯留させて溶融塩浴とし、電解槽の内部の溶融塩を貯留室から電解室へ流して、ここで電極への通電に基き、金属マグネシウム等の溶融金属と塩素等のガスとに分解する。電解室で生成された溶融金属は電解槽内でさらに循環して、溶融塩との密度差によって溶融塩浴の液面上に浮上した後に回収され、また、ガスは電解槽に設けられたガス排出通路を経て電解槽の外部に排出される。このような技術としては従来、特許文献1〜4に記載されたもの等がある。
ところで、電気分解の途中での溶融塩の温度低下は、電気分解により生成される溶融金属の固化に起因する短絡現象を引き起こすおそれがある。一方、溶融塩の温度上昇は、電気分解した溶融金属と塩素ガスが反応し、溶融塩となる再反応性が増大し、金属回収率の低下を招く。これらに対処するため、溶融塩の温度を厳密に管理するべく、溶融塩電解槽には、気体等の流体を流して溶融塩との間で熱エネルギーを交換する熱交換器その他の鋼製の器具を、電解槽内の溶融塩浴に浸漬させて配置している。
また、このような溶融塩電解槽では、周囲を鋼製のチューブにより保護されて溶融塩浴に浸漬される電熱対等の温度計や、溶融塩浴に浸漬させて配置されて内部に供給されたアルゴン等の圧力値から液面のレベルを測定する鋼製管状のレベル計、溶融塩浴に浸漬させて配置されて内部に供給されたアルゴン等により溶融塩を押し出して液面を上昇させる鋼製管状の浴面調整器、溶融塩浴に溶融塩化マグネシウム等を投入するための鋼製筒状の溶融塩投入パイプが用いられることがある。さらに、金属マグネシウムを抜き出すための鋼製筒状のマグネシウム抜出パイプ、溶融塩および金属ポンプの配管、バブリングパイプ等が用いられ得る。
特開2005−089801号公報 特開2005−171357号公報 特開2007−231388号公報 特開2015−140459号公報
溶融塩電解槽を用いて、溶融塩の電気分解を繰り返し行っていたところ、使用に伴い、上述した温度調整管や温度計その他の鋼製器具の、特に電気分解により生成された溶融金属とその液面上の気体とが接する気液界面に位置する界面近傍部分が、溶融金属等に接する外面側から腐食により部分的に損傷し、さらに損傷が進むと使用不能となるという問題があることが解かった。腐食が進行し、開口が生じると、温度調整管等の内部に溶融金属および溶融塩が入り込み、温度調整管等が使用不能となり、操業に支障をきたすこととなる。
このことは、溶融塩電解槽の繰り返しの使用により、電解槽の内部を電解室と貯留室とに区画する隔壁の経年劣化により、そこを通過して電解室から、当該鋼製器具のある貯留室への塩素等のガスの流入量が増大すると顕著になり、この場合、鋼製器具の寿命は一層短くなる。
なお、このように鋼製器具が部分的に腐食すると、鋼製器具を構成する金属が、溶融金属に混入する結果として、電気分解により生成しようとする金属の純度の低下を招くおそれも否めない。
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、その目的とするところは、溶融塩電解槽の使用に伴い、電解槽内に配置される鋼製器具の所定の部分に発生し得る腐食による損傷を有効に防止することのできる溶融塩電解槽を提供することにある。
この発明の溶融塩電解槽は、内部を溶融塩浴とし、溶融塩を電気分解するとともに、電気分解により溶融金属が生成される電解槽と、電解槽内に配置した陽極及び陰極を含む電極と、電解槽内で溶融塩浴に浸漬させて配置されて、少なくとも周囲が鉄を含有する材料からなる鋼製器具とを備えるものであって、前記鋼製器具に、該鋼製器具の、少なくとも溶融金属の気液界面に位置する界面近傍部分の外面を覆う保護スリーブが設けられてなるものである。
この発明の溶融塩電解槽では、保護スリーブが耐塩素材料を含んで構成されることが好ましい。
具体的には、保護スリーブは、炭素、窒化珪素または炭化珪素を含んで構成されることが好ましい。
また、この発明の溶融塩電解槽では、前記保護スリーブが、溶融塩浴の深さ方向で溶融金属の気液界面を隔てて上下各々10mm〜500mmの範囲にわたって配置されることが好適である。
また、保護スリーブの厚みは、5mm〜100mmであることが好ましい。
この発明の溶融塩電解槽は、前記鋼製器具が、電解槽内の温度調整を行う温度調整管であり、前記保護スリーブの内径が、温度調整管の当該界面近傍部分の外径に対して101〜110%の大きさであることが好ましい。
この発明の溶融塩電解槽は、電解槽の内部に配置された隔壁をさらに備え、前記隔壁により、電解槽の内部が、前記電極が配置される電解室と、電解室での電気分解により得られた溶融金属が流入する貯留室とに区画されるものとすることができる。
ここでは、前記鋼製器具は、電解槽の前記貯留室内に配置することができる。
この発明の溶融塩電解槽では典型的には、溶融塩が塩素を含むものであり、また、溶融塩が溶融塩化マグネシウムである。
この発明の溶融塩電解槽によれば、鋼製器具に、該鋼製器具の、少なくとも溶融金属の気液界面に位置する界面近傍部分の外面を覆う保護スリーブを設けたことにより、当該界面近傍部分が保護スリーブによって溶融金属から保護されることになるので、鋼製器具の当該界面近傍部分への腐食による損傷の発生を有効に防止することができる。
この発明の一の実施形態の溶融塩電解槽を示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 図1のII−II線に沿う断面図である。 図1の溶融塩電解槽が備える鋼製器具としての温度調整管を取り出して示す斜視図である。 図3の温度調整管を示す側面図である。 図3の温度調整管の主管の要部を拡大して示す側面図及び、そのb−b線に沿う横断面図である。 鋼製器具としての温度計の周囲に保護スリーブを設けた例を示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 鋼製器具としてのレベル計の周囲に保護スリーブを設けた例を示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 鋼製器具としての浴面調整器の周囲に保護スリーブを設けた例を示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。 鋼製器具としての溶融塩投入パイプの周囲に保護スリーブを設けた例を示す、溶融塩浴の深さ方向に沿う断面図である。
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に例示する溶融塩電解槽1は、たとえば主としてAl23等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる容器形状を有し、その内部に供給された溶融塩が貯留してなる溶融塩浴で、溶融塩を電気分解するとともに、その電気分解により溶融金属が生成される電解槽2と、図2に図1のII−II線に沿う断面図で示すように、電解槽2内に溶融塩浴の深さ方向と平行に並べて配置した略平板形状の陽極3a及び陰極3bを含む電極3と、電解槽2内の温度調整を行う温度調整管4とを備えてなる。
なおここでは、溶融塩を溶融塩化マグネシウム(MgCl2)とした場合を例として説明し、この場合、溶融塩化マグネシウムの電気分解により、図1に示すように、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素ガス(Cl2)が発生する。金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、同法におけるチタン鉱石の塩素化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。但し、この発明の溶融塩電解槽は、溶融塩化カルシウム(CaCl2)、溶融塩化アルミニウム(AlCl3)、溶融塩化亜鉛(ZnCl2)等の他の溶融塩の電気分解にも用いることができる。
ここで、図示の実施形態では、溶融塩電解槽1は、電解槽2の内部に、図1に示すところでは図の略中央域に配置された隔壁5をさらに備えるものであり、かかる隔壁5により、電解槽2の内部が、図1の右側に位置して電極3が配置される電解室2aと、図1の左側に位置し、電解室2aでの電気分解により得られた溶融金属が流れ込んで該溶融金属が溶融塩との密度差により上方側に溜まる貯留室2bとに区画される。具体的には、この隔壁5は、電解槽2の上方側開口を覆蓋する、ここでは図示しない蓋部材に近接させて配置されることにより、電解槽2の下方側の底部との間に、溶融塩が貯留室2bから電解室2aへと移動することを可能にする溶融塩循環路5aが形成されている。また、隔壁5自体に貫通孔状に設けられた溶融金属流路5bにより、電解室2aから貯留室2bへの溶融金属の流入が可能になる。
またここで、電解室2aに配置された電極3は、少なくとも、整流器等に接続された平板形状の陽極3a及び陰極3bを有し、たとえばMgCl2→Mg+Cl2等といった所定の反応に基き、陽極3aの表面で酸化反応により塩素等のガスが生じるとともに、陰極3bの表面で還元反応により金属マグネシウム等の溶融金属が生成される。
この実施形態の溶融塩電解槽1では、電極3がさらに、図2に示すように、陽極3aと陰極3bとの間に配置されて、陽極3a及び陰極3b間への電圧の印加によって分極する、これも実質的に平板形状の二枚のバイポーラ電極3c、3dを有し、これにより電気分解の生成効率の向上等を図っているも、このようなバイポーラ電極3c、3dは必ずしも必要ではない。
そしてまた、貯留室2b内に延びるように配置された温度調整管4は典型的には、溶融金属や溶融塩が所期した温度になるように、内部に気体その他の流体が流されて当該流体と溶融塩浴との間で熱エネルギーの交換を行う熱交換器等として機能するものである。それにより、溶融金属や溶融塩の温度を、溶融塩化マグネシウムの電気分解では一般に650〜670℃の範囲、たとえば660℃といった所定の適切な範囲に管理できるので、溶融金属の固化に起因する短絡現象や、電気分解した溶融金属と塩素ガスが反応して溶融塩となる再反応性の増大を有効に防止することができる。
この温度調整管4は、その周囲を構成する管壁面が鉄を含有する材料からなり、この発明でいう鋼製器具に相当する。なお、温度調整管4以外の鋼製器具については後述する。
温度調整管4は、貯留室2bの温度を均一にするため、図3及び4に示すように、互いに離隔して位置して溶融塩浴の深さ方向に延びる二本以上の主管6と、電気分解の実施に際して溶融塩浴の内部に位置し、それらの主管6の相互を連通させる一本以上の枝管7とを有するものとすることができる。但し、主管6は一本とすることもでき、枝管7は必ずしも設けることを要しない。
以上に述べたような溶融塩電解槽1を用いて溶融塩の電気分解を行うと、電解室2aで生成された溶融金属は、隔壁5の溶融金属流路5bを通って貯留室2bに流入し、その後、溶融塩に対する比重の小さい溶融金属は、貯留室2bの浅い箇所に浮上してそこに溜まることになり、これを図示しないポンプ等により回収することができる。
ところで、従来の溶融塩電解槽では、使用するに伴って、貯留室で溶融金属とその液面上の気体とが接する気液界面に位置する温度調整管の管部分が、その外面側から徐々に腐食し、最終的には温度調整管が使用不能になって寿命が尽きるという問題があった。また、この場合、温度調整管の管部分から腐食して剥がれた金属が、溶融塩浴に混入し、電気分解により生成する金属の純度が低下する懸念もある。
このことに関し、発明者は、従来の温度調整管の腐食現象について詳細に検討したところ、溶融金属の気液界面に位置する管部分近傍のみで局所的に腐食が生じている点に着目し、溶融塩化マグネシウムの電気分解の場合、該腐食には、塩素、金属マグネシウム、溶融塩、空気等の複数の要因が複合的に作用していることを見出した。
さらに鋭意検討の結果、温度調整管4は一般に鋼等の鉄を含有する材料により構成されるが、腐食は、鉄の塩化という単独の反応だけでなく、鉄の塩化および、その後の鉄塩化物の酸化という複数段階の反応により加速的に生じることを究明した。すなわち、気液界面GL近傍の管部分の外面では、第一段階の反応として、はじめに、Fe+Cl2→FeCl2および3FeCl2+2O2→Fe34+3Cl2と、2Fe+3Cl2→2FeCl3および6FeCl3+4O2→2Fe34+9Cl2の反応が生じ、次いで、2Fe34+3Mg+2O2→3MgFe24の反応が生じていることが解かった。
なお、温度調整管4を構成する鋼には、たとえば炭素鋼またはステンレス鋼等が含まれる。この炭素鋼は、炭素を、一般に0.02質量%〜2.1質量%、典型的には0.02質量%〜0.3質量%で含有し、さらに場合によっては珪素、マンガン、リン、硫黄等の所定の不純物を含有し、残部が鉄からなる。また、上記のステンレス鋼は、クロムを、一般に10.5質量%〜49質量%、典型的には11質量%〜26質量%で含有し、さらに場合によってはニッケル、マンガン、モリブデン、炭素等の所定の不純物を含有し、残部が鉄からなる。
このような鋼製の温度調整管では上述した腐食の問題が生じ得る。後述する他の鋼製器具を構成する鋼についても同様である。
このような反応を防止するため、この発明では、温度調整管4に、その温度調整管4の、少なくとも溶融金属の気液界面GLに位置する界面近傍部分である管部分の外面を覆う保護スリーブ8を設ける。
このことによれば、温度調整管4の当該管部分は、その周囲を取り囲む保護スリーブ8によって、塩素や酸素との接触が抑制されるので、上述した反応に基づく温度調整管4の当該管部分の腐食を有効に防止することができて、温度調整管4の寿命を延ばすことができる。
なお、保護スリーブ8は、温度調整管4の当該管部分の外径よりも大きい内径を有するものとして、当該管部分に円管状に成形した保護スリーブ8を挿入して取り付けることができる。また、摩擦係合により嵌め合わせることによって、温度調整管4に取り付けることができる。また、半割れ管のような複数部品を、ボルト締結やあられ組みで組合せて、取り付けることができる。いずれにしても、保護スリーブ8は、温度調整管4の当該管部分にある程度近接させて取り付けることが、管部分の腐食防止の点では効果的である。
図5(a)に示すところでは、温度調整管4の外面で保護スリーブ8の下端部の直下位置に、同側面視で「L」字形状を有し保護スリーブ8を下端部側から支持するスリーブ支持部材9を取り付けて設けている。
保護スリーブ8の内径は、温度調整管4の当該管部分の外径の101〜110%の大きさとすることが好ましく、それにより、温度調整管4の加熱時の熱膨張、冷却時の熱収縮による保護スリーブ8への荷重を緩和することができる。
ここでは、保護スリーブ8は耐食材料、特に耐塩素材料を含んで構成されることが好ましい。それにより、温度調整管4に代わって保護スリーブ8が上記の第一段階の塩化反応により腐食することを防止できるからである。
耐食材料として具体的には、炭素、窒化珪素、炭化珪素等を挙げることができる。なかでも、耐腐食性に優れる炭素、窒化珪素、炭化珪素が好ましく、さらに価格面から、炭素、特にグラファイトが一層好適である。保護スリーブ8の少なくとも外周面およびその他の露出部分が、このような材料からなるものであればよい。
保護スリーブ8は、多孔質材料を含むものであってもよい。このような多孔質材料であっても、多孔質材料の細孔内に溶融塩が染み込んで細孔が埋まるので、保護スリーブ8内への塩素等の気体の進入、さらに温度調整管4の当該管部分への気体の到達は生じない。また多孔質材料とすることにより、比較的安価に製作できるという利点がある。
多孔質材料の具体例としては、炭素、窒化珪素、炭化珪素等を挙げることができる。
保護スリーブ8は、溶融塩浴の深さ方向で溶融金属の気液界面GLを隔てて上下各々10〜500mmの範囲にわたって配置されることが好ましい。図4に示すように、気液界面GLが変動する場合は、変動幅の上限値GLmaxよりも上方に10〜500mm、変動幅の下限値GLminよりも下方に10〜500mmの範囲にわたって配置されることが好ましい。言い換えれば、溶融塩浴の深さ方向で、保護スリーブ8の、溶融金属の気液界面GL(又はその上限値GLmax)の上方側に位置する部分の軸線方向長さLaと、気液界面GL(又はその下限値GLmin)の下方側に位置する部分の軸線方向長さLbとをともに、上記の範囲内とすることが好適である。保護スリーブ8が短すぎると、保護スリーブ8の覆蓋領域から外れる温度調整管4の露出部分が腐食により劣化することが考えられ、また、保護スリーブ8が長すぎると、熱交換機能低下、スリーブコスト増大となるおそれがある。
保護スリーブ8の厚みは、5mm〜100mmとすることが好ましい。これはすなわち、保護スリーブ8の厚みが薄すぎる場合は、強度不足となることが懸念され、この一方で、厚みが厚すぎる場合は、スリーブコスト増大となる可能性がある。
以上に述べたところでは、電解槽2内に配置される鋼製器具を温度調整管4としたが、鋼製器具は、温度調整管4に限らず、図6〜9にそれぞれ示すような温度計10、レベル計11、浴面調整器12、溶融塩投入パイプ13や、図示は省略するがマグネシウム抜出パイプ、溶融塩および金属ポンプの配管、バブリングパイプ等とすることもできる。
これらの鋼製器具は、電解槽2内で溶融塩浴の貯留室2bに浸漬させて配置されて、少なくとも周囲が鉄を含有する材料からなるものであり、温度調整管4について上述したところと同様の損傷の問題が生じ得る。したがって、このような鋼製器具の、溶融金属の気液界面GLに位置する界面近傍部分の外面を覆って保護スリーブ8を配置することにより、そこの腐食による損傷の発生を有効に防止することができる。
図6に示す温度計10は、電熱対14の周囲を底付きの鋼製チューブ15で取り囲んで構成されたものであり、溶融塩浴に浸漬させた際に鋼製チューブ15が電熱対14を溶融塩浴から保護するべく機能する。但し、鋼製チューブ15の、溶融金属の気液界面GLに位置する界面近傍部分は、先述したような鉄の塩化および、その後の鉄塩化物の酸化により腐食が進むことから、これを防止するため、図示のように鋼製チューブ15の当該界面近傍部分の周囲に保護スリーブ8を設けている。なお図中、符号16は、溶融塩電解槽1の蓋部材を示す。
図7は、溶融塩浴の液面レベルを測定するレベル計11の界面近傍部分に、保護スリーブ8を設けた例を示したものである。このレベル計11は、両端が開放された鋼製の管の形態をなすものであり、溶融塩浴に浸漬させた状態で、内部にアルゴン等の気体を供給して得られる当該アルゴンの圧力値から、液面のレベルを測定するものである。これについても同様に、保護スリーブ8により、界面近傍部分の損傷を抑制することができる。
図8には、溶融塩浴の液面を上昇させる浴面調整器12を示す。図示の浴面調整器12は、チューブの下端にそれよりも径の大きな筒状部分を設けた形状を有するものであり、溶融塩浴に浸漬させて配置するとともに、その内部にアルゴン等の気体を供給することで、アルゴンが内部の溶融塩を押し出して、溶融塩浴の液面を上昇させる。浴面調整器12は鉄を含有する材料で構成されることが多いので、その界面近傍部分に保護スリーブ8を設けることが、損傷発生を防止できる点で好適である。
図9に示す溶融塩投入パイプ13は、鋼製の筒状部材からなり、溶融塩浴に浸漬されて上端から溶融塩が投入されるものである。これもまた、その界面近傍部分に保護スリーブ8を設けることが好ましい。
なお図6〜9に示すところでは、いずれの鋼製器具10〜13の周囲に設けた保護スリーブ8の下端側にも、先述したようなスリーブ支持部材9を設けているも、かかるスリーブ支持部材9の配設は任意である。
次に、この発明の溶融塩電解槽を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
図面に示すように温度調整管の所定の管部分に保護スリーブを設けた実施例の溶融塩電解槽と、そのような保護スリーブを設けないことを除いて実質的に同じ構造を有する比較例の溶融塩電解槽を準備した。
いずれの溶融塩電解槽も、電解槽を構成する内壁がAl23の含有率が95%以上の煉瓦からなる電解槽で、電解室が2m3、貯留室が1m3であり、囲い型電極の電極構造で、黒鉛製の陽極及び陰極ならびに二枚のバイポーラ電極を用いてN数をN3とした。電気分解初期の電極間距離は1cmとした。なお、貯留室のサイズは、1.6m×0.4m×H1.6m(液層1.3+気層0.3)=1.02m3とした。
温度調整管は、円形の横断面を有する直管状の主管を二本設けた形状とし、主管は、STPG370製、外径165mm、肉厚11mmである。
保護スリーブは、グラファイト製、内径170mm、外径190mm、肉厚10mm、高さ200mmである。保護スリーブの内径は、温度調整管の主管の外径の103%の大きさである。
これらの実施例及び比較例のそれぞれの装置を用いて、次の条件の下、溶融マグネシウムの電気分解を行った。溶融塩浴の浴組成と質量については、MgCl2、CaCl2、NaCl、MgF2がそれぞれ質量比で20%、30%、49%、1%からなる溶融塩2900kgとし、溶融塩浴の温度を660℃とし、電流密度0.48A/cm2で通電し、所定の期間にわたって運転を行った。理論マグネシウム生産量は21.8kg/hである。
電気分解開始から3ヶ月経過後および6ヶ月経過後のそれぞれの時期にて、実施例及び比較例の各装置で得られた金属マグネシウムのサンプルを採取し、その成分を分析した。3ヶ月経過後のサンプル採取では、実施例の装置で金属マグネシウム中のFe含有量が39ppmであり、また比較例の装置で金属マグネシウム中のFe含有量が200ppmであった。6ヶ月経過後のサンプル採取では、実施例の装置で金属マグネシウム中のFe含有量が41ppmであり、また比較例の装置で金属マグネシウム中のFe含有量が210ppmであった。
3ヶ月経過後および6ヶ月経過後のいずれの時期においても、サンプル中へのFeの含有量は、実施例よりも比較例で多く、比較例の装置では、温度調整管の腐食により金属マグネシウム中にFe等が混入したことが示唆された。
また同様に3ヶ月経過後および6ヶ月経過後のそれぞれの時期にて、実施例及び比較例の各装置の温度調整管を取り出し、その肉厚を測定したところ、3ヶ月経過後では、実施例の装置で温度調整管の所定の管部分で肉厚が11mmであり、比較例の装置で温度調整管の所定の管部分で肉厚が9mmであった。6ヶ月経過後では、実施例の装置で温度調整管の所定の管部分で肉厚が11mmであり、比較例の装置で温度調整管の所定の管部分で肉厚が7mmであった。
したがって、実施例の装置では、温度調整管の管部分の腐食による厚み減少が抑制されることが解かった。
1 溶融塩電解槽
2 電解槽
2a 電解室
2b 貯留室
3 電極
3a 陽極
3b 陰極
3c、3d バイポーラ電極
4 温度調整管(鋼製器具)
5 隔壁
5a 溶融塩循環路
5b 溶融金属流路
6 主管
7 枝管
8 保護スリーブ
9 スリーブ支持部材
10 温度計(鋼製器具)
11 レベル計(鋼製器具)
12 浴面調整器(鋼製器具)
13 溶融塩投入パイプ(鋼製器具)
14 電熱対
15 鋼製チューブ
16 蓋部材
GL 溶融金属の気液界面
GLmax 気液界面の変動幅上限値
GLmin 気液界面の変動幅下限値
La 保護スリーブの気液界面の上方側に位置する部分の軸線方向長さ
Lb 保護スリーブの気液界面の下方側に位置する部分の軸線方向長さ

Claims (10)

  1. 内部を溶融塩浴とし、溶融塩を電気分解するとともに、電気分解により溶融金属が生成される電解槽と、電解槽内に配置した陽極及び陰極を含む電極と、電解槽内で溶融塩浴に浸漬させて配置されて、少なくとも周囲が鉄を含有する材料からなる鋼製器具とを備える溶融塩電解槽であって、
    前記鋼製器具に、該鋼製器具の、少なくとも溶融金属の気液界面に位置する界面近傍部分の外面を覆う保護スリーブが設けられてなる溶融塩電解槽。
  2. 保護スリーブが耐塩素材料を含んで構成されてなる請求項1に記載の溶融塩電解槽。
  3. 保護スリーブが、炭素、窒化珪素または炭化珪素を含んで構成されてなる請求項1又は2に記載の溶融塩電解槽。
  4. 前記保護スリーブが、溶融塩浴の深さ方向で溶融金属の気液界面を隔てて上下各々10mm〜500mmの範囲にわたって配置されてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
  5. 前記保護スリーブの厚みが5mm〜100mmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
  6. 前記鋼製器具が、電解槽内の温度調整を行う温度調整管であり、前記保護スリーブの内径が、温度調整管の当該界面近傍部分の外径に対して101〜110%の大きさである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
  7. 電解槽の内部に配置された隔壁をさらに備え、前記隔壁により、電解槽の内部が、前記電極が配置される電解室と、電解室での電気分解により得られた溶融金属が流入する貯留室とに区画されてなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
  8. 前記鋼製器具が、電解槽の前記貯留室内に配置されてなる請求項7に記載の溶融塩電解槽。
  9. 溶融塩が塩素を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶融塩電解槽。
  10. 溶融塩が溶融塩化マグネシウムである請求項9に記載の溶融塩電解槽。
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