JP2004307914A - 溶融塩用熱交換器及びこれを使用するTi材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶融塩30に浸漬され、内部に流通される気体冷媒により溶融塩30を冷却する空冷式の熱交換器10において、その母材を鉄又はステンレス鋼により構成する。母材の外面及び内面に溶融Alメッキを施し、これら両面を、母材を構成する材料とAlの合金層により被覆する。製造された電解Mg31をクロール法の還元工程に使用して高純度の金属Tiを製造する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Mgの電解製造等に使用される溶融塩の温度コントロールに用いられる溶融塩用熱交換器、及びこれを使用して製造された電解Mgを用いて金属Tiを製造するTi材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属Tiを工業的に製造する方法の一つとしてクロール法がある。クロール法は還元工程と真空分離工程とに分かれており、還元工程では反応容器内の溶融MgにTiCl4 を滴下することによりスポンジチタンが製造される。還元工程に続く真空分離工程では、スポンジチタンが入った反応容器内を加熱しつつ真空排気することにより、スポンジチタン中に含まれる未反応Mg及び副生物が分離除去される。こうして製造されたスポンジチタンは破砕、電極形成、アーク溶融の各工程を経てTiインゴットとされる。
【0003】
クロール法の還元工程で使用される金属Mgは通常、電解反応により製造されたものが使用される。電解反応による金属Mgの製造では、MgCl2 を主成分とする溶融塩が電解槽に投入される。電解槽は電解室とこれに隣接する捕集室とを備えており、電解室では、溶融塩中のMgCl2 がMgの融点以上の温度で電気分解される。この電気分解により生じた溶融状態の金属Mgが捕集室に導かれ、溶融塩上に浮上して溶融Mg層を形成する。これを間欠的に汲み出すことにより、金属Mgが得られる。
【0004】
このような金属Mgの電解製造では、電解槽内、特に捕集室内における溶融塩の温度コントロールが重要であり、その温度コントロールのために熱交換器が使用される。この熱交換器としては、安全性の点から水冷式の採用が難しいために、内部に空気を流通させる空冷式が使用されており、これを電解槽内の溶融塩中に浸漬して内部に空気を流通させることにより、溶融塩を冷却する。熱交換器の材質としては鉄又はステンレス鋼が用いられている。
【0005】
溶融塩は、それ自体が強い腐食性の物質であることに加え、塩素ガスなどの腐食性ガスも発生する。このため、熱交換器は電解槽に比べて寿命が相当に短く、頻繁な交換を余儀なくされている。このため、熱交換器の寿命を延ばすことが電解操業コスト削減のための重要な技術課題となっている。また、熱交換器が腐食すると、腐食部分から溶融塩中にFe等の金属が溶出し、Mg中の不純物となるため、製造されるMgの品質が低下する。このため、Mg品質の点からも熱交換器の腐食防止、寿命延長は重要である。
【0006】
そして、熱交換器の腐食を抑え、その寿命を延ばす技術の一つとして、溶融塩上のMg層と接触する熱交換器の上部外面にセラミックスコーティングを施すことが特許文献1に記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−214889号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
セラミックスは耐食性に優れており、これを熱交換器の上部外面にコーティングすることにより、コーティング部分の腐食は防止される。しかし、熱交換器全体としての使用寿命は依然として短い。これは、セラミックスコーティングが施されておらず、しかも溶融塩と直接接触する熱交換器の下部外面の腐食が顕著であること、更には、後で詳しく説明するが、溶融塩との接触がなく、腐食を生じないはずの熱交換器の内面にも無視できない腐食が起こることなどが理由である。
【0009】
外面腐食が生じると、そこからFeが溶出することは前述したとおりであるが、この腐食部分からの溶出とは別に、熱交換器の交換当初に新品の熱交換器から溶融塩中へFeが溶出し、電解Mgが汚染される問題もある。近年クロール法に限らず、Ti製造、特に半導体配線用高純度Tiの製造に用いるMgにはFe濃度の低減が強く要求されており、この点からも電解MgのFeによる汚染は大きな問題である。
【0010】
熱交換器の内面や下部外面の腐食を防止するために、これらの部分にセラミックコーティングを施すことは一応可能である。下部外面へのセラミックスコーティングは、交換当初の熱交換器から溶融塩へのFe溶出の防止にも有効と考えられる。しかしながら、セラミックスは鉄やステンレス鋼と比べて熱伝導度が低いので、熱交換器の内面や下部外面に被覆することより、熱交換器の能力を低下させる。このため、熱交換器の内面や下部外面へのセラミックスコーティングは採用し難い。
【0011】
本発明の目的は、熱交換能力を低下させることなく腐食を防止して耐用期間の延長を図り、且つ溶融塩へのFeの溶出をも効果的に防止できる溶融塩用熱交換器を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、その熱交換器を使用して製造したMgを用いてスポンジチタンを製造することにより、Fe濃度の低い高純度Ti材を製造できるTi材の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
ところで、近時の傾向としてモノポーラ型電解槽からマルチポーラ型電解槽への転換が図られている。熱交換器の腐食による交換は以前から発生していた問題であるが、マルチポーラ型熱交換器に変更されて特に交換頻度が増している。また、熱交換器を交換した直後の鉄濃度の上昇もマルチポーラ型になってから顕著化している。その原因を調査したところ、溶融塩の対流に巻き込まれている塩素とMgがこのこの主原因であることが判明した。
【0014】
即ち、対流は電解室でのガスリフトによって生じる現象であり、殆どの塩素は電解室上部の塩素回収室で回収され、ごく僅かの塩素が対流にのってMg回収室へ移送される場合があるが、Mg回収室での溶融塩の対流は比較的遅いので、Mg回収室へ移送された塩素の殆どが浮力で浴面上へ浮上する。しかし、マルチポーラ型電解槽ではMg回収室といえども対流速度が速いため、塩素がMg回収室で浮上せず対流にのって下降する比率が増加する傾向となる。その結果、熱交換器への塩素ガスの接触量が増加して、熱交換器の腐食速度が上がる。
【0015】
加えて、塩素の場合と同様に、電解室で生成されたMgも、マルチポーラ型の場合の方がMg回収室での対流に巻き込まれて下降する比率が増加する。この点からも、マルチポーラ型電解槽で従来型の鉄製熱交換器の腐食が促進されていたことも、本発明者による調査から明らかとなった。ちなみに、Mgは溶融塩中に各種の大きさの液胞として混在しているが、Mg回収室での対流速度が小さいモノポーラ型電解槽の場合は、殆どのMgが浮上するために、下降して熱交換器に接触するMgは少量である。
【0016】
また、熱交換器を止むを得ずにMg回収室での浴対流に直接当たる位置に設置する場合、浴循環量の多いマルチポーラ型電解槽においては、腐食への影響が更に大きくなることも分かった。
【0017】
マルチポーラ型電解槽においては又、モノポーラ型電解槽よりも入熱量が多いので、熱交換器の奪熱量を多くする必要があり、熱交換器の内部も腐食しやすくなる。
【0018】
このような腐食が顕著なマルチポーラ型電解槽においても有効な腐食防止策、溶融塩へのFeの溶出防止策の開発を目的として、本発明者らは熱交換器の腐食形態等について詳細に調査検討した。その結果、以下のことが判明した。
【0019】
腐食形態については、空冷式では、温度が650〜700℃の溶融塩に熱交換器が浸漬されているため、空冷式とはいえ内面温度も相当高くなる。加えて、温度制御のために空冷を停止したときは、内面温度は最高700℃程度まで上昇する。このような高温の内面に空気が長時間接触すると、内面の酸化が進み、孔あきに至る場合が少なくない。こうした内面からの腐食損傷も、外面腐食と共に、熱交換器の寿命を縮める大きな原因になっていることが判明した。
【0020】
母材の腐食対策及びFe溶出対策については、熱交換能力の低下を回避するために金属被覆に着目した。そして耐食性の程度や溶融塩への被覆金属の溶出の程度及びMg品質への影響度、更には電解槽における電流効率への影響度などを総合的に考慮した結果、被覆金属としては、溶融塩に対する耐久性に優れるAl、Si、Tiの3種類が望ましく、そのなかでも被覆施工が容易で経済性も優れるAlが望ましく、最も望ましい被覆は母材金属との合金層を簡単に形成できる溶融Alメッキであることが判明した。そして、これらの被覆は前述したマルチポーラ型電解槽での腐食防止に有効であり、内面腐食の抑制にも有効である。
【0021】
なお、溶融Alメッキの優位性及び合金層の優位性は後で詳しく説明する。
【0022】
本発明はかかる知見を基礎に完成されたものであり、その第1の溶融塩用熱交換器は、溶融塩に浸漬され、内部に流通される気体冷媒により前記溶融塩を冷却する空冷式の熱交換器において、当該熱交換器の母材を鉄又はステンレス鋼により構成し、該母材の外面をTi、Si、Alのうちの1以上の金属層により被覆したものである。
【0023】
また、第2の溶融塩用熱交換器は、溶融塩に浸漬され、内部に流通される気体冷媒により前記溶融塩を冷却する空冷式の熱交換器において、当該熱交換器の母材を鉄又はステンレス鋼により構成し、該母材の外面を、母材を構成する材料とAlの合金層により被覆したものである。
【0024】
Mgの電解製造に使用される溶融塩の温度コントロールに特に適した熱交換器は、母材を鉄により構成し、その母材の外面及び内面ともに、母材を構成する材料とAlの合金層により被覆したものである。
【0025】
また、本発明のTi材の製造方法は、これらの溶融塩用熱交換器をMg製造用の電解槽に使用し、該電解槽で製造された金属Mgをクロール法の還元工程に使用して金属Tiを製造するものである。
【0026】
溶融塩の主成分としては次の4種類を挙げることができる。NaCl、CaCl2 、MgCl2 及びMgF2 であり、MgCl2 は電解Mgの製造に使用される。
【0027】
第1の溶融塩用熱交換器における被覆材料はTi、Si又はAlの何れかであり、これらの被覆を単層又は複数層に行うことができる。複数層の場合、被覆材料は同種、異種の何れでもよい。Ti、Si又はAlのなかでは、被覆施工の容易さ及び安価さからAlが特に望ましい。そして、このAlは耐熱性及び耐久性の面から母材との合金層を形成していることが好ましく、これが第2の溶融塩用熱交換器である。
【0028】
溶融塩用熱交換器においては、前述したとおり気体冷媒の流通を停止することがある。このとき熱交換器の温度がAlの融点を超えたとしても、Al被覆層の内側はAlとFeの合金層になっているため、その溶融塩温度では溶出は概ね起こらず、若干のAl溶出があるが問題となる程度ではない。
【0029】
これに対し、Al合金被覆なしの熱交換器では、使用初期に電解Mg中のFe濃度が急上昇する。これは熱交換器を溶融塩に浸漬した当初に表層のかなりの厚さのFeがMgに浸食され、その後、安定するためと考えられる。ただし、安定した後もFeの溶出量は少なくないため、全運転時間の平均で比較しても電解MgのFe濃度は上昇し、熱交換器の寿命も短くなる。
【0030】
このように、Al合金被覆を施した場合でも、熱交換器の始動時と交換時に若干のFe濃度の上昇が見られるが、被覆なしの場合とは比較にならないものである。
【0031】
Tiの製造に使用するMgの製造を目的とする電解槽においては、Al濃度よりもFe濃度の低減のほうが重要である。それは、電解槽で製造された電解Mgはその後に内面Fe張りの還元炉で使用されるため、Feについてはその後も混入機会が多いが、Alは還元炉などで混入することは殆どないことも理由の一つである。このような事情から、クロール法により製造されるTi材におけるFe濃度低減の要求を実現するためにも、電解MgにおけるFe濃度の低減が強く求められているのである。
【0032】
Al合金被覆は、溶融Alメッキ(代表例:アルマー加工)によるのが合理的であり且つ効果的である。溶融Alメッキにより、母材との界面近傍では母材金属との間で合金化が起こり、母材表面に合金層、Al層、酸化Al層が順に形成される。この被覆方法は、熱交換器の形状が複雑な場合も、その外面に少ない工程で容易に強固なAl合金被覆を行うことができ、内面被覆についても、溶融Alが熱交換器内に流れ込むようにするだけで外面被覆と同時に行うことができるので、合理的でもある。この溶融Alメッキは、熱交換器が鉄製の場合のみならず、ステンレス鋼製の場合も有効である。
【0033】
Si、Ti、Alの被覆についてはメッキ、溶射、蒸着、熱処理の他、溶接などにより熱交換器表面に被覆材を接合する方法でもよく、特にその種類を問わない。ただし、熱交換器の熱交換を行う部分では、熱伝導性や隙間腐食を防止する点から、被覆材と母材との間から微少隙間を排除できる接合性が良好な方法が望まれる。被覆材と被覆法の最も好ましい組み合わせは、前述したとおり施工が簡単で且つ合金層を形成できる溶融Alメッキである。合金層が形成される場合は、より強固な結合となり、熱応力に対する変形などを効果的に防止できる。
【0034】
被覆厚については、これを厚くすれば防食効果が大きいが、厚すぎると熱交換能力の低下やコストアップが問題になる。逆に薄すぎる場合は防食効果が不足する。この観点から、この厚さは50μm〜5mmが好ましく、100μm〜3mmが特に好ましく、更に好ましくは100μm〜1mmである。
【0035】
電解Mgの製造において、溶融塩上の溶融Mg層と接触する熱交換器上部については、熱交換能力が不要であり、むしろ抜熱すると溶融塩上の溶融Mgが凝固してしまい抜き取り作業に支障が生じる。このため、熱交換器上部、少なくとも溶融Mg層との接触部の外面については、熱伝導率の小さい耐火物でコーティングすることが望ましい。具体的には、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素などのセラミックをコーティングするなどすればよい。特に望ましい形態は、溶融塩上の外面がセラミックコーティング、溶融塩中の外面がAl合金被覆、内面全体がAl合金被覆である。
【0036】
熱交換器の母材を構成する材料は鉄又はステンレス鋼であるが、半導体配線用高純度Ti製造用のMgにおいてはNi、Crの混入は出来る限り回避すべきであるので、不純物汚染のリスクが高いステンレス鋼よりも鉄のほうが好ましい。加えて、本発明による被覆により鉄でも十分な寿命を確保できるので、高価なステンレス鋼をする必要は特にない。なお、本発明における鉄とはNi及びCrの含有量が少ないものをいい、具体的にはNi≦1重量%かつCr≦1重量%である。
【0037】
本発明による被覆は熱交換器、とりわけ対流速度が大きく熱交換量も大きいマルチポーラ型電解槽における熱交換器の寿命延長、Mg中のFe濃度低減に効果があり、その熱交換器を用いて製造した電解Mgをクロール法における還元工程に使用することにより、Feの濃度の低いスポンジチタンを得ることができる。従って、Fe濃度の低減を強く要求されている半導体配線用高純度Tiの製造に特に効果的である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0039】
図1は本発明の一実施形態を示す熱交換器の模式図である。本実施形態の熱交換器10は、Mg製造用のマルチポーラ型電解槽20における溶融塩30の温度コントロールに使用されている。
【0040】
この熱交換器10は、縦方向に複数段に配置され、それぞれが水平面内で環状に形成された複数の本管11,11・・と、気体冷媒としての空気を複数の本管11,11・・に並列的に流通させる2本の給排気用の副管12,12とを備えている。副管12,12は縦管であり、縦方向に複数段に配置された本管11,11・・と各接続されることにより、本管11,11・・の支持体を兼ねている。
【0041】
そして熱交換器10は、複数の本管11,11・・が副管12,12の下部と共に電解槽20の捕集室内の溶融塩30に浸漬される位置に固定されている。副管12,12の最上部は捕集室の蓋体21を貫通して外部へ突出している。
【0042】
ここで、本管11,11・・及び副管12,12は鉄により構成されており、本管11,11・・の各外面及び各内面には溶融AlメッキによるAl合金被覆が全面的に施されている。副管12,12においては、溶融塩30と接触する下部外面に対して溶融AlメッキによるAl合金被覆が施されている。一方、他の外面、即ち溶融塩30と殆ど接触せず主に溶融塩30上の溶融Mg31と接触する熱伝導が不要な上部外面には、セラミックコーティング13が施されている。他方、副管12,12の各内面には溶融AlメッキによるAl合金被覆が全面的に施されている。
【0043】
Mgの電解製造に使用される溶融塩30の温度コントロールに、内外面にAl合金被覆を施した熱交換器10を使用する利点は以下のとおりである。電解槽20で製造されるMg中のFe濃度の経時変化を、被覆ありの熱交換器と被覆なしの熱交換器とについて図2に示す。
【0044】
内外面にAl合金被覆を施した熱交換器の場合、熱交換器の外面腐食及び内面腐食が抑制され、その使用寿命が延びることにより、交換サイクルが長くなる。腐食が抑制されることにより、腐食部分から溶融塩へのFe溶出が抑制されると共に、新品熱交換器からのFe溶出が抑制される。更に、交換直後のFe溶出量も極めて僅かである。
【0045】
これらにより、操業の全期間を通して製造されるMg中のFe濃度が低位に抑制される。また、熱交換器の交換サイクルが長くなることにより、経済性が向上する。このようにして製造された電解Mgをクロール法における還元工程に使用することにより、Feの濃度の低いスポンジチタンを得ることができる。このスポンジチタンはFe濃度低減の要求が強い半導体配線用高純度Tiに特に好適である。
【0046】
Mg電解製造用マルチポーラ型電解槽(極数3以上)において溶融塩の温度コントールに使用される熱交換器の外面に溶融Alメッキ(アルマー加工)、Ti溶射、Si溶射を実施した場合、その熱交換器の内外面に溶融Alメッキ(アルマー加工)を実施した場合について、熱交換器寿命、熱交換能力及びMg中のFe濃度を調査した結果を、被覆なしの場合と比べて表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表中のメッキ厚はAl層厚と合金層厚の合計値であり、合金層厚は合計値の70〜85%である。Fe濃度の最大値は交換直後のピークが出たときの濃度である(図2参照)。熱交換器の母材はここでは鉄(炭素鋼)である。
【0049】
溶融Alメッキを施すことにより、対流速度が大きく熱交換量も大きいマルチポーラ型電解槽であっても、熱交換器の寿命が大幅に長くなり、Mg中のFe濃度も低下する。被覆厚は薄くても有効であるが、0.1mm以上が望ましい。被覆厚が必要以上に厚いと熱伝導性が悪化し、熱交換能力が低下すると共に、被覆コストが増大する。望ましい被覆厚は0.1〜1mmである。内外面被覆と比べて外面のみの被覆は、若干寿命を短くする。
【0050】
Ti溶射やSi溶射による被覆も効果は高いが、被覆コストが嵩み、内面被覆は困難である。その点、溶融Alメッキは安価に実施でき内面実施も簡単である。
【0051】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明の溶融塩用熱交換器は、鉄又はステンレス鋼からなる母材の少なくとも外面をTi、Si、Alのうちの1以上の金属層、若しくは母材を構成する材料とAlの合金層により被覆することにより、熱交換能力を低下させることなく腐食を防止して耐用期間の延長を図り、且つ母材から溶融塩へのFeの溶出を防止して製品の品質を高める効果がある。
【0052】
また、本発明のTi材の製造方法は、上記熱交換器を使用して製造したMgを用いてスポンジチタンを製造することにより、Fe濃度の低い高純度Ti材を製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融塩用熱交換器の一例について、その構造及び使用状態を示す模式図である。
【図2】電解Mg中のFe濃度の経時変化を、溶融Alメッキ被覆ありの熱交換器と被覆なしの熱交換器とについて示すグラフである。
【符号の説明】
10 熱交換器
11 主管
12 副管
13 セラミックスコーティング
20 電解槽
21 蓋体
30 溶融塩
31 溶融Mg
Claims (4)
- 溶融塩に浸漬され、内部に流通される気体冷媒により前記溶融塩を冷却する空冷式の熱交換器において、当該熱交換器の母材が鉄又はステンレス鋼からなり、該母材の外面がTi、Si、Alのうちの1以上の金属層により被覆されていることを特徴とする溶融塩用熱交換器。
- 溶融塩に浸漬され、内部に流通される気体冷媒により前記溶融塩を冷却する空冷式の熱交換器において、当該熱交換器の母材が鉄又はステンレス鋼からなり、該母材の外面が、母材を構成する材料とAlの合金層により被覆されていることを特徴とする溶融塩用熱交換器。
- 前記溶融塩はMgの電解製造に使用される溶融塩であり、且つ前記母材は鉄製であって、その外面と共に内面も前記合金層により被覆されていることを特徴とする請求項2に記載の溶融塩用熱交換器。
- 請求項1、2又は3に記載の溶融塩用熱交換器をMg製造用の電解槽に使用し、該電解槽で製造された金属Mgをクロール法の還元工程に使用して金属Tiを製造することを特徴とするTi材の製造方法。
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