本発明の好適な実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。図1に示すように、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インクジェットヘッド5(以下、単にヘッド5とも称す)、ホルダ6、給紙ローラ7、排紙ローラ8、パージ装置9、フラッシング受け10、温度センサ160、タッチパネル161(図4参照)、及び制御装置100等を備えている。尚、以下では、図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、前後、左右、上下の各方向語を適宜使用して説明する。
プラテン2の上面には、被記録媒体である用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。
キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って左右方向に移動可能である。また、キャリッジ3には、駆動ベルト17が取り付けられている。駆動ベルト17は、2つのプーリ18,19に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ18はキャリッジ駆動モータ20(図4参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ20によってプーリ18が回転駆動されることで駆動ベルト17が走行し、これにより、キャリッジ3が左右方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ3上に搭載されたヘッド5は、このキャリッジ3とともに左右方向に往復移動することになる。
ホルダ6は、左右方向に並ぶ4つのカートリッジ装着部41を備えている。各カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42が着脱可能に装着される。4つのカートリッジ装着部41に装着される4つのインクカートリッジ42には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが貯溜されている。また、各カートリッジ装着部41は、図2に示すように、その内部に形成された内部流路41aと、内部流路41aの一端に接続された、筒状の樹脂針からなるニードル41bとを有している。カートリッジ装着部41にインクカートリッジ42が装着されたときに、インクカートリッジ42内のインクは、ニードル41b及び内部流路41aを経て、外部に供給される。尚、本実施形態では、各インクカートリッジ42に貯溜されるインクは、顔料インクである。
図1に戻って、ヘッド5は、キャリッジ3に搭載されている。このヘッド5は、ヘッド本体13と、サブタンク14とを有する。サブタンク14にはチューブジョイント21が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント21には、可撓性を有する4本の供給チューブ22それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本の供給チューブ22それぞれの他端は、ホルダ6の4つのカートリッジ装着部41の内部流路41a(図2参照)それぞれに接続されている。カートリッジ装着部41に装着された4つのインクカートリッジ42内のインクは、この4本の供給チューブ22を介して、サブタンク14に供給される。
ヘッド本体13は、サブタンク14の下部に取り付けられている。ヘッド本体13は、図3(a)に示すように、複数のノズル46及び複数のノズル46にそれぞれ連通する複数の圧力室83が形成された流路ユニット44と、流路ユニット44の上面に配置されたアクチュエータ45とを備えている。
図3(c)に示すように、流路ユニット44は4枚のプレートが積層された構造を有する。この流路ユニット44の下面には複数のノズル46が形成されている。図3(a)に示すように、複数のノズル46は前後方向(用紙Pの搬送方向)に配列されており、4色のインクにそれぞれ対応した、4列のノズル列47を構成している。4列のノズル列47からは、走査方向の右側に位置するノズル列47から順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。複数の圧力室83は、複数のノズル46と同様に4列に配列されている。
さらに、図3(a),(b)に示すように、流路ユニット44には、それぞれ前後方向に延在する4本のマニホールド84が形成されている。4本のマニホールド84は、4列の圧力室列に、4色のインクをそれぞれ供給する。また、4本のマニホールド84は、流路ユニット44の上面に形成された4つのインク供給孔85に接続されている。4つのインク供給孔85には、サブタンク14から4色のインクがそれぞれ供給される。また、マニホールド84から圧力室83へインクを供給する流路の途中には、流路抵抗が大きい絞り部82(図3(c)参照)が設けられている。以上の構成より、流路ユニット44内には、各マニホールド84から分岐して、絞り部82及び圧力室83を経てノズル46に至る個別流路が複数形成されている。
図3(c)に示すように、アクチュエータ45は、複数の圧力室83を覆う振動板87と、この振動板87の上面に配置された圧電層88と、複数の圧力室83に対応した複数の個別電極89とを備えている。圧電層88の上面に位置する複数の個別電極89は、アクチュエータ45を駆動するドライバIC90とそれぞれ電気的に接続されている。
圧電層88の下面に位置する振動板87は金属材料で形成されており、圧電層88を挟んで複数の個別電極89と対向する共通電極の役割を果たす。尚、この振動板87はドライバIC90のグランド線に接続されて常にグランド電位に保持される。
以上の構成において、ドライバIC90から個別電極89に対して所定の駆動波形を有する駆動信号が、吐出周期の各々において入力されることにより、これに対応する圧電層88の容積が変形して圧力室83内のインクに圧力(吐出エネルギー)が付与され、ノズル46からインク滴が吐出される。なお、上述したようにマニホールド84と圧力室83との間には、絞り部82が設けられている。従って、この絞り部82により、圧力室83内で生じた圧力波がマニホールド84へ漏れることは抑制されている。
図2に示すように、サブタンク14は、合成樹脂で成形された部材であり、水平面に沿って延在する板状の本体部分60と、この本体部分60の一端部から鉛直下方に延びてヘッド本体13に接続される連結部分61とを有する。サブタンク14には、ヘッド本体13のインク供給孔85にインクを供給する供給流路62が形成されている。なお、図2では、サブタンク14については、鉛直断面図として図示している一方で、ヘッド本体13については断面図とせず、側面図として図示している。
本体部分60の上面には、供給チューブ22が接続可能なチューブジョイント21が取り付けられている。このチューブジョイント21に供給チューブ22が接続されることで、インクカートリッジ42に貯溜されたインクを供給流路62に供給することが可能となる。
供給流路62は、本体部分60に形成された本体流路63と、連結部分61に形成された上下方向に延びる連結流路64とを有する。本体流路63は、水平面に沿って延在している。一方で、連結流路64は、本体流路63と接続される一端部(上端部)から鉛直下方に延在している。また、連結流路64は、下端においてヘッド本体13のインク供給孔85に接続されている。この連結流路64の上端部は、エアを一時的に貯溜可能なエア貯溜室65である。エア貯溜室65は、本体流路63の各位置と同じく、本体流路63及び連結流路64において最も上方となる位置である。このため、供給流路62に存在するエアを、ヘッド本体13に流れ込ませずに、このエア貯溜室65内に一時的に留めることができる。尚、以下では、説明の便宜上、図2に示すように、ニードル41bから複数のノズル46に至る流路全体をインク流路30と総称する。
また、本体部分60には、連結流路64に接続された排気流路(図示省略)も形成されている。この排気流路は、サブタンク14の右側面に設けられた排気部23(図1参照)まで延びている。排気部23の先端は開口となっている。また、排気部23の内部には、外部との連通/閉止を切り換える弁が設置されている。
図1に戻って、給紙ローラ7と排紙ローラ8は、搬送モータ29(図4参照)によってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ7と排紙ローラ8は協働して、プラテン2に載置された用紙Pを前方(搬送方向)に搬送する。
そして、プリンタ1は、給紙ローラ7と排紙ローラ8によって用紙Pを搬送方向に搬送させる搬送動作と、キャリッジ3とともにヘッド5を左右方向(走査方向)に移動させながらインクを吐出させる記録パス動作とを交互に繰り返し行うことにより、用紙Pに所望の画像等を印刷する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
フラッシング受け10は、プラテン2よりも左側に配置されている。キャリッジ3を移動させてヘッド5をフラッシング位置に位置付けさせたとき、複数のノズル46が、フラッシング受け10と上下に対向する。そして、プリンタ1では、ヘッド5をフラッシング位置に位置付けさせた状態で、ヘッド5のアクチュエータ45を駆動して、ノズル46からフラッシング受け10に向けて増粘したインク等を吐出して排出させるフラッシングを行わせることができる。
パージ装置9は、ヘッド5のノズル46の吐出性の低下の抑制や、吐出性の回復のためのメンテナンス動作を行うためのものであり、キャップユニット50、吸引ポンプ51、切換装置52、及び廃液タンク53等を備えている。
キャップユニット50は、プラテン2よりも右側に配置されている。キャリッジ3がプラテン2よりも右側に移動したときにはこのキャップユニット50と上下に対向する。また、キャップユニット50は、キャップ昇降モータ54(図4参照)により駆動されて、上下方向に昇降可能である。このキャップユニット50は、ヘッド5に接触して装着可能な、キャップ55を備えている。キャップ55は、例えばゴム材料によって構成されており、ノズルキャップ55a及び排気キャップ55bを備えている。
ヘッド5がキャップユニット50と対向した状態では、ノズルキャップ55aがヘッド本体13の下面と対向し、排気キャップ55bがサブタンク14の排気部23の下面と対向する。この状態で、ヘッド5から下方に離間した離間位置に位置しているキャップユニット50を、キャップ昇降モータ54により、離間位置よりも上方のキャッピング位置まで上昇させると、キャップユニット50がヘッド5に装着される。このとき、ノズルキャップ55aにより、4列のノズル列47に属する全てのノズル46が共通に覆われるとともに、排気キャップ55bが排気部23に接続される。排気キャップ55bには、排気部23内の弁をそれぞれ開閉する棒状の開閉部材27が取り付けられている。排気キャップ55bが排気部23に接続された状態で、棒状の開閉部材27が、排気モータ28(図4参照)によって上下に駆動されて、下方から排気部23内に挿入されることによって内部の弁を駆動する。
ノズルキャップ55a及び排気キャップ55bは、切換装置52を介して吸引ポンプ51に接続されている。この吸引ポンプ51は、ロータリーポンプである。切換装置52は、吸引ポンプ51の連通先を、ノズルキャップ55aと、排気キャップ55bとの間で選択的に切り換える。この切換装置52の連通先を切り換えることにより、4列のノズル列47に属する全てのノズル46からインクを強制的に排出させる吸引パージと、サブタンク14のエア貯溜室65内のエアを排気する排気パージとを、選択的に実行できる。
吸引パージでは、まず、ノズルキャップ55aがヘッド本体13に装着されて複数のノズル46を覆った状態で、切換装置52により吸引ポンプ51をノズルキャップ55aに連通させる。この状態で吸引ポンプ51を駆動し、ノズルキャップ55a内を負圧(吸引)することで、ヘッド本体13の複数のノズル46からそれぞれインクを吸引して排出させる。これにより、インク流路30内の高粘度化したインクがノズル46から排出されて、ノズル46の吐出性の回復等を行うことができる。
排気パージでは、排気キャップ55bが排気部23に接続され、且つ、開閉部材27により排気部23内の弁が開放された状態で、切換装置52により吸引ポンプ51を排気キャップ55bに連通させる。この状態で吸引ポンプ51を駆動し、排気部23に負圧を作用させる。これにより、サブタンク14のエア貯溜室65内のエアを、ヘッド本体13に流れ込む前に排気キャップ55bに排気することができ、その結果として、ノズル46の吐出性が悪化することを抑制することができる。吸引パージや排気パージによって、ヘッド5から排出されたインクは、吸引ポンプ51に接続された廃液タンク53に送られる。
温度センサ160は、ホルダ6近傍に配置されており、周囲温度を計測する。タッチパネル161は、ユーザからの各種操作入力の受け付けや、各種の設定画面や動作状態等をユーザに対して表示することが可能なユーザインターフェースである。
制御装置100は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(印刷データ等)が一時的に記憶される。不揮発性メモリ104には、後述する総供給量カウント情報121等が記憶される。ASIC105には、ヘッド5、キャリッジ駆動モータ20等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、ASIC105は、通信インターフェース110を介してPC等の外部装置200と接続されている。
尚、以下の説明では、制御装置100が行う各種処理は、CPU101が行うものとして説明するが、CPUと、ASICとの協動で行ってもよい。また、制御装置100が複数のCPUを備え、複数のCPUによって処理を分担して行ってもよい。また、制御装置100が複数のASICを備え、複数のASICによって処理を分担してもよい。あるいは、1つのASIC単独で処理を行ってもよい。
CPU101は、外部装置200から受信した印刷指示に基づいて、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、用紙Pに画像等を印刷する印刷処理を実行する。また、CPU101は、パージ装置9に吸引パージを行なわせたり、ヘッド5のアクチュエータ45にフラッシングを行なわせたりして、ヘッド5のノズル46からインクを排出させる排出処理を実行する。
ここで、本実施形態では、上記排出処理として、大きく分類して、印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、ユーザパージ処理、及び定期パージ処理の5種類がある。以下、これらの排出処理について説明する。尚、以下では、説明の便宜上、4色のインクのうちの1色のインクに関連した排出処理について焦点を当てて説明する。
印刷前フラッシング処理は、外部装置200から印刷指令を受信した後の、印刷処理を実行する直前に、アクチュエータ45に上記フラッシングを行わせる排出処理である。印刷処理を実行する直前に印刷前フラッシング処理を実行することで、印刷処理の開始時においてノズル46の吐出性を良好な状態にすることができる。その結果として、印刷処理により用紙Pに印刷される画像の品質を向上させることができる。
印刷前パージ処理は、外部装置200から印刷指令を受信した後、印刷処理を実行する前に、パージ装置9に吸引パージを行なわせる排出処理である。この印刷前パージ処理は、ノズル46内のインクの粘度が高いこと等を理由により、上記印刷前フラッシング処理だけでは、ヘッド5内の増粘したインクを排出させることができないときに実行される。つまり、ノズル46内のインクの粘度が所定の閾値(以下、第1閾値)以上のときに、印刷前パージ処理は実行される。この印刷前パージ処理を実行することで、ノズル46の吐出性をより確実に回復することができ、その結果として、印刷処理により用紙Pに印刷される画像の品質を向上させることができる。なお、印刷前パージ処理を実行した後、印刷処理を開始するまでには、キャップユニット50をキャッピング位置から離間位置に下降させる等の処理が必要である。このため、印刷前パージ処理を実行したとしても印刷処理の開始時までの期間、ノズル46内のインクが乾燥により増粘する。従って、本実施形態では、CPU101は、印刷前パージ処理を実行した場合でも、印刷処理を実行する直前に、上記印刷前フラッシング処理を実行するように構成されている。
次に、沈降排出パージ処理を説明するに先立って、前提となる事項について説明する。上述したように、インクカートリッジ42に貯溜されているインクは顔料インクである。顔料インクは、顔料が溶媒中に分散された状態で存在しており、長時間静置状態にあると比重の大きい顔料がインクカートリッジ42の底部に沈降する。このため、インクカートリッジ42内においては、長時間静置状態にあると、インクカートリッジ42の底部に顔料が多量に沈降する。その結果として、インクカートリッジ42の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなり、その粘度も局所的に非常に高くなる。このように顔料の沈降により高粘度化した顔料インクがノズル46内に供給されると、上記印刷前パージ処理を実行したとしても、ノズル46の吐出性を回復することができない。そこで、CPU101は、外部装置200から印刷指令を受信した際において、顔料の沈降に起因してノズル46内の顔料インクの粘度が上記第1閾値よりも大きい第2閾値以上であるときには、沈降排出パージ処理を印刷前パージ処理の代わりに実行する。この沈降排出パージ処理は、顔料の沈降に起因して増粘した顔料インクを確実に排出するために、印刷前パージ処理と比べて、排出するインクの排出量が多くなるように、吸引ポンプ51の駆動条件が設定されている。例えば、沈降排出パージ処理では、印刷前パージ処理と比べて、吸引ポンプ51の回転時間が長くなるように設定されている。この沈降排出パージ処理を実行することにより、ノズル46の吐出性をより確実に回復することができる。
ユーザパージ処理は、タッチパネル161を介したユーザによる操作入力に応じて、パージ装置9に吸引パージを行なわせる排出処理である。例えば、CPU101は、タッチパネル161を介したユーザによる操作入力や外部装置200から受信した印刷指令に基づき、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、不吐出ノズルチェック用(ノズル抜けチェック用)のテストパターンを用紙Pに印刷する。その後、CPU101は、タッチパネル161を介して、そのテストパターンの印刷結果に対するユーザの評価を受け付ける。そして、CPU101は、そのユーザの評価が、不吐出ノズルの数が所定数以上であることを示す評価である場合には、当該評価をユーザパージの実行指令として、ユーザパージ処理を実行する。なお、本実施形態では、このユーザパージ処理は、印刷前パージ処理と比べて、吸引ポンプ51の回転速度が速く、且つ吸引ポンプ51の回転時間も長い吸引パージをパージ装置9に行わせる。このユーザパージ処理を実行することにより、ノズル46の吐出性を確実に回復することができる。
定期パージ処理は、所定期間経過する毎(本実施形態では1か月経過する毎)に、パージ装置9に吸引パージを行なわせる排出処理である。ここで、ノズル46から長期間インクが吐出されなかった場合、ノズル46内のインクは乾燥により増粘する。このように長期間インクが吐出されない場合でも、印刷処理の前に、印刷前フラッシング処理や印刷前パージ処理を実行することでノズル46の吐出性を回復させることは可能である。しかしながら、ノズル46内のインクが乾燥により非常に高粘度になると、印刷前フラッシング処理や印刷前パージ処理において、ノズル46の吐出性を回復させるためには、ノズル46から非常に多くのインクを排出する必要がある。そこで、CPU101は、1か月経過する毎に定期パージ処理を実行して、ノズル46の吐出性が低下することを定期的に抑制する。これにより、ノズル46内のインクが乾燥により非常に高粘度になることを抑制することができ、定期パージ処理を行なわない構成と比べて、インクの総消費量を抑えることができる。
また、本実施形態では、定期パージ処理において、供給チューブ22内に存在するエアAをサブタンク14のエア貯溜室65に移動させることも目的としている。以下、具体的に説明する。供給チューブ22内には、インク中に含まれる微少のエアや、供給チューブ22内のインクが経時により水分が蒸発することで生成されるエア、インクカートリッジ42をカートリッジ装着部41に装着した際にニードル41bから流入した噛み込みエア等が存在する。これらの供給チューブ22内のエアAは、印刷処理や排出処理によりノズル46からインクが吐出又は排出されると、次第にエア貯溜室65側に移動する。そして、このエアAは、エア貯溜室65側に到達したときに実行される上記排気パージにより、インクと共に外部に排出されることになる。
ところで、供給チューブ22は、サブタンク14等とは異なり、気体透過性が高い(ガスバリア性が低い)流路部材である。このため、供給チューブ22内のエアAは、供給チューブ22の外壁を介して大気が浸透することで時間の経過とともに成長する。従って、エアAが供給チューブ22内に長時間滞在していた場合には、エア貯溜室65に到達したときのエアAの体積が非常に大きくなる。その結果として、排気パージによりこのエアAを排出しようとすると、排出量を多くする必要があり、その際に排出されるインクの排出量が増えるなどの問題が生じる。
そこで、本実施形態では、定期パージ処理により排出するインクの排出量は、エアAが供給チューブ22内に滞在する時間を短くすべく、以下のように設定されている。即ち、供給チューブ22内の各種エアがエア貯溜室65に到達したときの体積が、当該エア貯溜室65の容量未満となるように、各定期パージ処理により排出するインクの排出量が設定されている。例えば、上記噛み込みエアは、供給チューブ22内に流入時の体積が他のエアと比べて高く、また、その体積は実験等により予め推定することができる。従って、この噛み込みエアが供給チューブ22内に流入した後、定期パージ処理のみにより供給チューブ22内を移動してエア貯溜室65に到達した際の、当該噛み込みエアの体積がエア貯溜室65の容量未満となるよう、各定期パージ処理におけるインクの排出量が設定される。このように各定期パージ処理のインクの排出量を設定することで、排気パージにより排出されるインクの排出量が増加することを抑制することができる。
以上説明した各排出処理それぞれにおいて、ノズル46の吐出性を回復させるためには、ノズル46内のインクの粘度に応じて排出条件を変更する必要がある。例えば、ノズル46内のインクの粘度が高いほど、排出処理において排出するインクの排出量が多くなるように排出条件を変更する必要がある。従って、ノズル46内のインクの粘度を精度よく推定する必要がある。尚、排出条件とは、パージ装置9にパージを行なわせる排出処理の場合には、吸引ポンプ51の回転時間、回転速度、トルク等の吸引ポンプ51の駆動条件である。一方で、アクチュエータ45にフラッシングを行わせる排出処理の場合には、排出条件は、個別電極89に対して出力する駆動信号の駆動波形の形状や、個別電極89に対して出力する駆動信号の数(フラッシング発数)等のアクチュエータ45の駆動条件である。
そこで、CPU101は、ノズル46内のインクの粘度を推定する以下のノズル内粘度推定処理を実行する。このノズル内粘度推定処理では、所定期間経過する毎(本実施形態では、1か月毎)に、インクカートリッジ42から供給されるインクの粘度を推定するカートリッジ内粘度推定処理を実行し、このカートリッジ内粘度推定処理の推定結果を用いてノズル46内のインクの粘度を推定する。以下、まず、カートリッジ内粘度推定処理について詳細に説明する。
上述したように、インクカートリッジ42内では、長時間静置状態にあると、インクカートリッジ42の底部に顔料が多量に沈降する。その結果として、インクカートリッジ42の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなり、その粘度も局所的に高くなる。このため、インクカートリッジ42から供給されるインクの粘度は常に一定とはならず、変化する。カートリッジ内粘度推定処理では、このインクカートリッジ42から供給されるインクの粘度を推定する。
ここで、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量は、当該インクカートリッジ42が静置状態に置かれていた期間が長いほど多くなる。また、インクカートリッジ42内に沈降する顔料の沈降量は、インクカートリッジ42内からのインクの供給頻度が少ないほど多くなる。加えて、顔料インクは、インクカートリッジ42内の温度が高いほど、粘度が低くなるため、顔料の沈降が促進される。
そこで、不揮発性メモリ104には、図4に示すように、総供給量カウント情報121、経過時間情報122、及び温度履歴情報123を有している。
総供給量カウント情報121は、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着された装着時点からの、インクカートリッジ42内から供給されたインクの総供給量を示すカウント情報である。CPU101は、印刷処理、及び排出処理等を実行することにより、インクカートリッジ42内からインクが供給される毎に、その供給量を算出して、総供給量カウント情報121のカウント値に加算する。なお、印刷処理やフラッシングの際にヘッド5のノズル46から吐出されるインクの吐出量については、アクチュエータ45の駆動態様等により算出することは可能である。また、吸引パージの際に、ノズル46から排出されるインクの排出量については、吸引ポンプ51の回転速度や回転時間などの駆動条件から算出することができる。
経過時間情報122は、上記装着時点からの経過時間を示す情報であり、装着時点以降において、制御装置100の内部時計により逐次更新される。温度履歴情報123は、上記装着時点から温度センサ160により計測された温度の履歴情報である。CPU101は、内部時計により一定時間を計時する毎に、そのときに温度センサ160により計測されていた温度を温度履歴情報123に追加する。
CPU101は、カートリッジ内粘度推定処理では、これら総供給量カウント情報121、経過時間情報122、及び温度履歴情報123に基づいて、顔料の沈降量に関する沈降情報を推定して取得し、この沈降情報に基づいて、インクカートリッジ42から供給されるインクの粘度を推定する。このカートリッジ内粘度推定処理により推定したインクの粘度は、総供給量カウント情報121のカウント値と関連付けられてカートリッジ内粘度情報として、不揮発性メモリ104のカートリッジ内粘度テーブル124に記憶される。カートリッジ内粘度テーブル124には、このカートリッジ内粘度情報の履歴が記憶されている。以下、このカートリッジ内粘度推定処理に関するインクジェットプリンタの処理動作について、図5を参照しつつ説明する。
CPU101は、まず、カートリッジ内粘度推定処理の前回実行時点から1か月経過したか否かを判断する(A1)。そして、前回実行時点から1か月経過したと判断した場合(A1:YES)には、総供給量カウント情報121、経過時間情報122、及び温度履歴情報123に基づいて、インクカートリッジ42から供給されるインクの粘度を推定するカートリッジ内粘度推定処理を実行する(A2)。そして、CPU101は、この推定したインクの粘度と、総供給量カウント情報121の現在のカウント値とを関連付けてカートリッジ内粘度情報として、カートリッジ内粘度テーブル124に記憶する(A3)。このA3の処理が終了すると、A1の処理に戻る。
以上により、カートリッジ内粘度テーブル124には、インクカートリッジ42から供給されるインクの推定粘度が、総供給量カウント情報121のカウント値と関連付けられて記憶されることになる。ノズル内粘度推定処理では、このカートリッジ内粘度テーブル124と、総供給量カウント情報121の現在のカウント値に基づいて、現在、ノズル46内にあるインクが、インクカートリッジ42からインク流路30内に流入した時点における粘度(以下、流入時点粘度)を推定する。具体的には、まず、総供給量カウント情報121の現在のカウント値から、インク流路30の流路容量に対応するカウント分だけ減算した減算カウント値を算出する。そして、カートリッジ内粘度テーブル124において、この減算カウント値に最も近いカウント値に関連付けられた粘度を、流入時点粘度と推定する。
その後、この推定した流入時点粘度に対して、乾燥による粘度上昇分を加算した値を、現在のノズル46内のインクの粘度と推定する。尚、乾燥による粘度上昇分については、印刷処理や排出処理によりノズル46からインクが吐出又は排出された前回の実行時点からの経過時間に基づいて算出する。以上により、現在のノズル46内のインクの粘度を精度よく推定することができる。
ところで、各排出処理において、ノズル46内のインクの粘度が上昇したときにインクの排出量を増やすように排出条件を変更すると、インクの消費量が多くなる問題が生じる。加えて、ノズル内粘度推定処理により推定されるノズル46内のインクの粘度が変化する毎に、各排出処理の排出条件を変更すると、CPU101の処理負担が増大する。
そこで、本願発明者は、鋭意検討したところ、上記5種類の排出処理のなかには、ノズル46の吐出性の低下を抑制できればよく、ノズル46の吐出性を回復させる必要が必ずしもない排出処理があることを見出した。以下、具体的に説明する。
上記5種類の排出処理のうち、印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、及び、沈降排出パージ処理の3種類の排出処理は、それぞれ、外部装置200から印刷指令を受信した後、印刷処理を実行する前に行われる排出処理である。ここで、印刷処理の際に、ノズル46の吐出性が良好な状態ではない場合、用紙Pに記録される画像の品質が劣化する。従って、これら3種類の排出処理では、図6に示すように、ノズル46の吐出性を回復させる必要がある。
また、ユーザパージ処理は、上述したように、ユーザからの操作入力(排出処理の実行指令)を契機にして実行される排出処理である。このユーザパージ処理後においても、ノズル46の吐出性が回復されておらず、用紙Pに記録される画像の品質が劣化した状態のままであると、ユーザがプリンタ1に対して不信感を抱く虞がある。従って、ユーザパージ処理についても、図6に示すように、ノズル46の吐出性を回復させる必要がある。
以上より、印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理の4種類の排出処理それぞれの排出条件については、それぞれの排出処理においてノズル46から液体を排出させる際にノズル46の吐出性の回復に必要な最小限の排出量以上の排出量で排出させるような排出条件に設定されている。そして、これらの排出条件は、排出処理においてノズル46の吐出性を回復させるために、ノズル46内のインクの粘度に応じて変更する必要がある。なお、上記4種類の排出処理それぞれの、ノズル46の吐出性の回復に必要な最小限の排出量は、実験やシミュレーション等に基づいて設定される。例えば、本実施形態では、印刷前フラッシング処理の、ノズル46の吐出性の回復に必要な最小限の排出量は、絞り部82から圧力室83を経てノズル46に至るまでの流路の流路容量に相当する量に設定されている。
これに対して、定期パージ処理は、外部装置200から印刷指示を受信した後、印刷処理を実行する前に行う排出処理ではない。加えて、ユーザパージ処理のように、ユーザからの操作入力を契機にして実行される排出処理でもない。このため、図6に示すように、この定期パージ排出処理により、ノズル46の吐出性の低下を抑制することができれば、ノズル46の吐出性を必ずしも回復させる必要はない。従って、定期パージの排出条件については、この定期パージ排出処理においてノズル46から液体を排出させる際にノズル46の吐出性の回復に必要な最小限の排出量よりも少ない排出量で排出させるような排出条件に設定されている。
また、上述したように、本実施形態では、定期パージ処理におけるインクの排出量は、供給チューブ22内のエアAが定期パージ処理のみによって移動してエア貯溜室65に到達した際に、そのエアAの体積が、エア貯溜室65の容量未満となるように設定されている。ここで、ニードル41bからノズル46までのインク流路30内に存在するインクの粘度が上昇すると、各定期パージ処理により実際に排出されるインクの排出量は、厳密には、設定されたインクの排出量よりも少なくなる。従って、供給チューブ22内のエアAがエア貯溜室65に到達したときの体積が、エア貯溜室65の容量よりも大きくなる場合も想定され得る。しかしながら、供給チューブ22内のエアAは、定期パージ処理以外の排出処理や印刷処理が実行されたときにも、エア貯溜室65側に移動する。このため、供給チューブ22内のエアAがエア貯溜室65に到達したときの体積が、エア貯溜室65の容量以上となる可能性は極めて小さい。
以上により、定期パージ排出処理の排出条件を、ノズル46内のインクの粘度に応じて厳密に設定する必要はない。
そこで、本実施形態では、CPU101は、印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理の4種類の排出処理については、ノズル内粘度推定処理により推定したノズル46内のインクの粘度情報に基づいて、その排出条件を変更する条件変更処理を実行する。
本実施形態では、印刷前フラッシング処理については、ノズル46内のインクの粘度に応じて、フラッシング発数の条件のみを変更するように構成されている。変形例として、ノズル46内のインクの粘度に応じて、個別電極89に対して出力する駆動信号の駆動波形の形状についての条件のみを変更するように構成されていてもよく、フラッシング発数の条件、及び駆動波形の形状についての条件の両方を変更するように構成されていてもよい。
また、本実施形態では、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理については、それぞれ、ノズル46内のインクの粘度に応じて、吸引ポンプ51の回転時間、回転速度、及びトルクの3つの条件を変更するように構成されている。尚、吸引ポンプ51の回転時間、回転速度、及びトルクの3つの条件を変更する必要は必ずしもなく、これら3つの条件のうち少なくとも1つを、ノズル46内のインクの粘度に応じて、変更するように構成されていてもよい。
不揮発性メモリ104には、この条件変更処理の際に参照される排出条件変更情報125が記憶されている。この排出条件変更情報125は、上記4種類の排出処理それぞれの排出条件と、ノズル46内のインクの粘度との関係を示す情報である。従って、CPU101は、ノズル内粘度推定処理により推定したノズル46内のインクの粘度、及び排出条件変更情報125に基づいて、4種類の排出処理それぞれの排出条件を決定することができる。尚、本実施形態では、排出条件変更情報125は、ノズル46内のインクの粘度が高いほど、ノズル46から排出させるインクの排出量が多くなるように、4種類の排出処理それぞれの排出条件が規定されている。
一方で、定期パージ処理については、ノズル内粘度推定処理により推定したノズル46内のインクの粘度に基づいては、その排出条件を変更しない。つまり、各定期パージ処理の際の、吸引ポンプ51の回転時間、回転速度、及びトルクの3つの条件は、推定したノズル46内のインクの粘度に応じては、変化しない。その結果として、排出条件の変更に係るCPU101の処理負担を低減しつつ、インクの消費量が増大することを抑制することができる。不揮発性メモリ104には、定期パージ処理の排出条件を規定した定期パージ処理設定情報126が記憶されている。CPU101は、この定期パージ処理設定情報126に規定された排出条件に従って、各定期パージ処理を実行する
(インクジェットプリンタの動作)
次に、プリンタ1の排出処理に関する処理動作の一例について、図7を参照しつつ説明する。
CPU101は、まず、外部装置200から印刷指令を受信したか否かを判断する(S1)。印刷指令を受信したと判断した場合(S1:YES)には、CPU101は、総供給量カウント情報121の現在のカウント値、カートリッジ内粘度テーブル124、及び、印刷処理又は排出処理の前回の実行時点からの経過時間に基づいて、ノズル46内のインクの粘度を推定するノズル内粘度推定処理を実行する(S2)。次に、CPU101は、ノズル内粘度推定処理により推定したインクの粘度が第2閾値以上か否かを判断する(S3)。インクの粘度が第2閾値以上と判断した場合(S3:YES)には、CPU101は、沈降排出パージ処理を実行すると判断し、当該沈降排出パージ処理の排出条件を、S2の処理で推定したインクの粘度、及び不揮発性メモリ104の排出条件変更情報125に基づいて決定する(S4)。この後、CPU101は、決定した排出条件に従った吸引パージをパージ装置9に行わせる沈降排出パージ処理を実行する(S5)。
S3の処理で、S2の処理で推定したインクの粘度が第2閾値未満と判断した場合(S3:NO)には、CPU101は、その粘度が第1閾値以上か否かを判断する(S6)。粘度が第1閾値以上と判断した場合(S6:YES)には、CPU101は、印刷前パージ処理を実行すると判断し、当該印刷前パージ処理の排出条件を、S2の処理で推定したインクの粘度、及び不揮発性メモリ104の排出条件変更情報125に基づいて決定する(S7)。この後、CPU101は、決定した排出条件に従った吸引パージをパージ装置9に行わせる印刷前パージ処理を実行する(S8)。
S6の処理で、S2の処理で推定したインクの粘度が第1閾値未満と判断した場合(S6:NO)、S5の処理が終了した後、あるいは、S8の処理が終了した後において、CPU101は、印刷前フラッシング処理の排出条件を、S2の処理で推定したインクの粘度、及び不揮発性メモリ104の排出条件変更情報125に基づいて決定する(S9)。この後、CPU101は、決定した排出条件に従ったフラッシングをヘッド5のアクチュエータ45に行わせる印刷前フラッシング処理を実行する(S10)。この後、CPU101は、キャリッジ駆動モータ20、ヘッド5等を制御して、外部装置200から受信した印刷指令に従って、用紙Pに画像を印刷する印刷処理を実行する(S11)。この後、CPU101は、S1の処理で印刷指令を受信してから、当該印刷指令に係る印刷処理が終了するまでの間に、ノズル46から吐出又は排出されたインクの消費量を算出し、算出した消費量を総供給量カウント情報121のカウント値に加算する(S12)。このS12の処理が終了すると、S1の処理に戻る。
S1の処理で、印刷指令を受信していないと判断した場合(S1:NO)には、CPU101は、タッチパネル161を介して排出処理(ユーザパージ処理)の実行指令をユーザから受け付けたか否かを判断する(S13)。ユーザパージ処理の実行指令をユーザから受け付けたと判断した場合(S13:YES)には、S2の処理と同様な、ノズル内粘度推定処理を実行する(S14)。この後、CPU101は、ユーザパージ処理の排出条件を、S14の処理で推定したインクの粘度、及び不揮発性メモリ104の排出条件変更情報125に基づいて決定する(S15)。この後、CPU101は、決定した排出条件に従った吸引パージをパージ装置9に行わせるユーザパージ処理を実行する(S16)。そして、CPU101は、このユーザパージ処理の際にノズル46から排出されたインクの排出量を、総供給量カウント情報121のカウント値に加算して(S17)、S1の処理に戻る。
S13の処理で、ユーザパージ処理の実行指令をユーザから受け付けていないと判断した場合(S13:NO)には、CPU101は、定期パージ処理の前回実行時点から1か月経過したか否かを判断する(S18)。1か月経過したと判断した場合(S18:YES)には、CPU101は、定期パージ処理設定情報126に予め規定された排出条件に従った吸引パージをパージ装置9に行わせる定期パージ処理を実行する(S19)。そして、CPU101は、この定期パージ処理の際にノズル46から排出されたインクの排出量を、総供給量カウント情報121のカウント値に加算して(S20)、S1の処理に戻る。
以上、本実施形態によると、定期パージ処理の排出条件については、ノズル内粘度推定処理により推定した粘度に応じては変更しない。その結果として、定期パージ処理に関する処理負担を低減しつつ、インクの消費量が増大することを抑制することができる。一方で、印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理の4種類の排出条件については、ノズル内粘度推定処理により推定した粘度に応じて変更することで、これら排出処理を実行した際に、ノズルの吐出性を確実に回復させることができる。
以上説明した実施形態において、パージ装置9、及び、ヘッド5のアクチュエータ45それぞれが「液体排出部」に相当する。CPU101が「制御部」に相当する。印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理の4種類の排出処理それぞれが「第1排出処理」に相当し、これら4種類の排出処理の排出条件が「第1排出条件」に相当する。定期パージ処理が「第2排出処理」に相当し、定期パージ処理の排出条件が「第2排出条件」に相当する。S4、S7、S9、S15の推定した粘度に応じて排出条件を決定する処理が、「条件変更処理」に相当する。S1の外部装置200から印刷指示を受信する処理が「印刷指示受付処理」に相当する。S13のユーザパージ処理の実行指令をユーザから受け付ける処理が「排出指示受付処理」に相当する。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、インクカートリッジ42に貯溜されているインクは、染料インクであってもよい。この場合、沈降排出パージ処理については行われない。また、印刷指令を受信した後、印刷処理を実行する前に、印刷前パージ処理や沈降排出パージ処理を実行する場合には、印刷前フラッシング処理を省略してもよい。
また、ユーザパージ処理は、タッチパネル161がユーザからの操作入力を受け付けることで実行されるように構成されていたが、外部装置200を介して通信インターフェース110がユーザからの操作入力を受け付けることで実行されるように構成されていてもよい。
また、「第1排出処理」は、印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理の4種類に限定されるものではなく、ノズル46からインクを排出させる際にノズル46の吐出性の回復に必要な最小限の排出量以上の排出量で排出させるような排出条件で、パージ装置9やアクチュエータを制御する処理であればよい。また、ノズル46内の粘度が高いほど、排出量が多くなるように印刷前フラッシング処理、印刷前パージ処理、沈降排出パージ処理、及びユーザパージ処理の4種類の排出条件を変更していたが、これに限定されるものではない。例えば、印刷前パージ処理、及びユーザパージ処理において、ノズル46内のインクの粘度が高いほど、ノズルキャップ55a内を負圧が高くなるように排出条件を変更してもよい。
「第2排出処理」は、定期パージ処理に限定されるものではなく、ノズル46からインクを排出させる際にノズル46の吐出性の回復に必要な最小限の排出量よりも少ない排出量で排出させる排出条件で、パージ装置9やアクチュエータを制御する処理であればよい。例えば、印刷指示を受信した後、印刷処理の開始前に、ノズル46からインクを排出させる排出処理が行われるのであれば、これ以外の契機で実行される排出処理を「第2排出処理」としてもよい。また、CPU101は、所定期間経過する毎に、ヘッド5のアクチュエータ45にフラッシングを行なわせる定期フラッシング処理を「第2排出処理」として実行可能に構成されていてもよい。この定期フラッシング処理についても、定期パージ処理と同様に、ノズル46の吐出性を回復させる必要はない排出処理である。このため、定期フラッシング処理の排出条件についても、ノズル46内のインクの粘度に応じて変更する必要はない。
ノズル内粘度推定処理は、少なくともノズル46を含む流路領域に存在するインクの粘度を推定する処理であればよい。従って、例えば、ノズル内粘度推定処理が、圧力室83からノズル46内に至る流路等、インク吐出に影響を及ぼす流路内に存在するインクの粘度を推定する処理であってもよい。
ノズル46内のインクに吐出エネルギーを付与するアクチュエータは、ノズル46に連通する圧力室83の容積を変化させてインクに吐出エネルギーを付与するアクチュエータであったが、これに限定されるものではなく、例えば、加熱により圧力室内に気泡を発生させてインクに吐出エネルギーを付与するアクチュエータであってもよい。
パージ装置9により実行されるインク排出動作は、ノズル46に吸引力を作用させる吸引パージであったが、例えば、供給チューブ22の途中部位に加圧ポンプを設け、この加圧ポンプを駆動して、ヘッド5にインクを供給することで、ノズル46からインクを排出させる加圧パージであってもよい。また、パージ装置が、これら吸引パージ及び加圧パージの両方を実行可能にされていてもよい。
また、本発明は、インクジェットヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を印刷する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。また、以上では、ノズルからインクを吐出して用紙Pに印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、配線基板に印刷する配線パターンの材料等のインク以外の液体を吐出して印刷を行う液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。