JP2019059848A - 可食性顔料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】顔料の平均分散粒子径が小さく分散性に優れ、インクジェット用水性インク組成物への適用により、医薬品や食品等の錠剤等に対して、インクジェット方式で直接印刷することが可能な可食性顔料組成物を提供する。【解決手段】本発明に係る可食性顔料組成物は、四三酸化鉄を含む顔料と、リン酸ナトリウムとを含み、前記四三酸化鉄の平均分散粒子径D50が30nm〜300nmの範囲であり、前記四三酸化鉄の最大分散粒子径D99が500nm未満であることを特徴とする。【選択図】 なし

Description

本発明は可食性顔料組成物に関し、より詳細には、分散性に優れ、医薬品や食品等の錠剤等に対して、インクジェット方式で直接印刷することが可能な可食性のインクジェット用水性インク組成物に適用し得る可食性顔料組成物に関する。
化粧品におけるサンスクリーン剤や、インクジェット用水性インク組成物等においては、顔料の平均分散粒子径D50が100nm程度で、非常に良好な分散性を有すると共に、生体為害性が低いことが要求される。
この点に関し、例えば、四三酸化鉄(Fe)は日本、アメリカ及び欧州の三極において可食性顔料として認可された数少ない黒色系顔料であり、これを分散媒に分散させた状態の顔料組成物(顔料分散体)が化粧品や可食性インク等に応用されている。しかし、四三酸化鉄からなる顔料は磁性を有しているため、当該顔料同士における凝集力が強い。そのため、四三酸化鉄顔料を用いた顔料組成物においては、顔料の平均分散粒子径を小さくし、良好な分散性を実現するのが困難である。
特開2011−236279号公報
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、顔料の平均分散粒子径が小さく分散性に優れ、インクジェット用水性インク組成物への適用により、医薬品や食品等の錠剤等に対して、インクジェット方式で直接印刷することが可能な可食性顔料組成物を提供することにある。
本願発明者等は、前記問題点を解決すべく、可食性顔料組成物について検討した結果、下記構成を採用することにより前記の問題点を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る可食性顔料組成物は、前記の課題を解決する為に、四三酸化鉄を含む顔料と、リン酸ナトリウムとを含み、前記四三酸化鉄の平均分散粒子径D50が30nm〜300nmの範囲であり、前記四三酸化鉄の最大分散粒子径D99が500nm未満であることを特徴とする。
前記四三酸化鉄の顔料は磁性を有しているため、当該顔料同士の凝集力が強いが、リン酸ナトリウムが当該四三酸化鉄に吸着し顔料分散剤として機能することで、四三酸化鉄同士の再凝集を防止することができる。その結果、四三酸化鉄を含む顔料を、平均分散粒子径D50が30nm〜300nmの範囲内であり、かつ最大粒子径D99が500nm未満の範囲内に抑制して分散させることができ、分散性に優れた顔料分散体を提供することができる。
ここで、前記四三酸化鉄の平均分散粒子径D50を30nm以上にすることにより、四三酸化鉄の分散安定性が低下しすぎるのを防止することができる。また、前記構成の可食性顔料組成物をインクジェット用インク組成物に適用する場合には、インクジェットノズルからの吐出安定性を良好に維持することができ、インクジェット方式にて医薬品や食品等の錠剤又はカプセル剤等に直接印刷することを可能にする。その一方、前記四三酸化鉄の平均分散粒子径D50を300nm以下、かつ最大分散粒子径D99を500nm未満にすることにより、四三酸化鉄の分離や沈降を防止し、良好な分散安定性を維持することができる。
また、四三酸化鉄及びリン酸ナトリウムはいずれも、日本における薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方及び食品添加物公定書の基準に適合したものである。さらに、四三酸化鉄及びリン酸ナトリウムは米国薬局方の基準並びに欧州薬局方の基準に適合したものである。従って、前記構成の顔料組成物は、医薬品や食品等の錠剤又はカプセル剤等に直接印刷するためのインク組成物に適用することができる。尚、本発明においてリン酸ナトリウムは、顔料分散剤として機能させ含有させる場合に限定されるものではなく、例えば、可食性顔料組成物のpHを調整するためのpH調整剤として機能させる場合も含む。
前記の構成に於いて、前記リン酸ナトリウムは、リン酸基、及び/又は前記リン酸基における水素原子の少なくとも一つがNaイオンで置換されたリン酸塩基を、1分子当たり平均して1〜23個有していることが好ましい。リン酸ナトリウムとして前記リン酸基及び/又はリン酸塩基を有するものを用いることにより、四三酸化鉄を含む顔料の分散性能を一層向上させることができる。
前記の構成に於いては、顔料分散剤としての前記リン酸ナトリウムの前記四三酸化鉄に対する含有比が、質量基準で、0.1〜0.3の範囲内であることが好ましい。四三酸化鉄とリン酸ナトリウムの含有比を0.1以上にすることで、四三酸化鉄の分散性が低下し過ぎるのを抑制することができる。その一方、四三酸化鉄とリン酸ナトリウムの含有比を0.3以下にすることにより、剪断力等を加えて、凝集した顔料粒子を微細化し分散させるまでの進行時間(分散時間)を短縮することができ、四三酸化鉄の最大分散粒子径D99が大きくなり過ぎるのを抑制することができる。
また前記の構成においては、顔料分散剤としての前記リン酸ナトリウムのpH値が、当該リン酸ナトリウムの濃度1質量%の水溶液中において5未満であることが好ましい。これにより、顔料の分散の進行を促進することができ、分散時間の短縮化が図れる。また、顔料の平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99を一層小さくすることができ、分散性の向上が図れる。
本発明によれば、リン酸ナトリウムは、例えば、顔料である四三酸化鉄に吸着し顔料分散剤として機能させることができ、その結果、分散性に優れた顔料分散体としての可食性顔料組成物を提供することができる。また、四三酸化鉄及びリン酸ナトリウムは、日本における薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方及び食品添加物公定書の基準、米国薬局方の基準並びに欧州薬局方の基準に適合するので、医薬品や食品等の錠剤及びカプセル剤等に印刷するためのインク組成物に適用することができる。さらに、四三酸化鉄の平均分散粒子径D50は30nm〜300nmであり、最大分散粒子径D99は500nm未満であるので、インクジェット方式での印刷も可能であり、これにより、錠剤等の固体製剤に対し直接印刷することを可能にする。
本実施の形態に係る可食性顔料組成物について、以下に説明する。本実施の形態の可食性顔料組成物は、顔料としての四三酸化鉄と、リン酸ナトリウムとを少なくとも含む顔料分散体である。尚、以下においては、リン酸ナトリウムが、前記四三酸化鉄を分散させる顔料分散剤として用いる場合を例にして説明する。
本明細書において「可食性」とは、医薬品若しくは医薬品添加物として経口投与が認められている物質、及び/又は食品若しくは食品添加物として認められている物質のみからなることを意味し、「可食性顔料組成物」とはその様な可食性を有する顔料組成物を意味する。
前記四三酸化鉄としては、FeO・Fe、Feが挙げられる。これらの顔料は適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。また、本実施の形態の可食性顔料組成物を医薬品やサプリメント等の固体製剤表面への印刷用として用いる場合、四三酸化鉄は、日本における薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方及び食品添加物公定書、米国薬局方の基準並びに欧州薬局方の基準に適合するものであることが好ましい。
尚、「固体製剤」とは食品製剤及び医薬製剤を含む意味であり、固体製剤の形態としては、例えばOD錠、素錠、FC錠、糖衣錠等の錠剤又はカプセル剤が挙げられる。
前記四三酸化鉄の平均一次粒子径(体積平均粒子径)は30nm〜800nmが好ましく、50nm〜500nmがより好ましく、75nm〜400nmが特に好ましい。四三酸化鉄の平均一次粒子径が30nm以上であると、耐光性の低下を抑制することができる。その一方、四三酸化鉄の平均一次粒子径が800nm以下であると、高色彩化が図れる。尚、四三酸化鉄の平均一次粒子径は、分散媒に分散させる前の四三酸化鉄の粒子をSEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して求めた算術平均径である。また、本実施の形態に於いては、単分散の粒径分布を持つ四三酸化鉄を用いてもよく、あるいは多分散の粒径分布を持つ四三酸化鉄を用いてもよい。
前記四三酸化鉄の含有量は、例えば、本実施の形態の可食性顔料組成物をインクジェット用水性インク組成物に適用する場合には、画像濃度に直接影響するものである。また、保存性や粘度、pH、固体製剤に印刷する場合には印刷濃度等に影響を及ぼすものである。従って、四三酸化鉄の含有量はこれらの点を考慮して適宜設定すればよい。通常は、可食性顔料組成物の全質量に対し1質量%〜40質量%の範囲が好ましく、1質量%〜25質量%の範囲内がより好ましい。四三酸化鉄の含有量を1質量%以上にすることにより、画像濃度の低下を抑制することができる。その一方、四三酸化鉄の含有量を40質量%以下にすることにより、可食性顔料組成物の粘度が過度に大きくなり過ぎるのを抑制する。これにより、例えば、分散機を用いた四三酸化鉄の分散処理の際に、分散メディア(例えば、ジルコニアビーズ等)の動きが妨げられるのを回避することができる。
前記リン酸ナトリウムは、顔料である四三酸化鉄に吸着し顔料分散剤として機能することができる。四三酸化鉄の顔料は磁性を有しているため、粒子間での凝集力が強いが、リン酸ナトリウムは反発力等により、四三酸化鉄の顔料同士の再凝集を防止することができる。その結果、分散性及び分散安定性に優れた顔料分散体を提供することができる。
前記リン酸ナトリウムとしては、例えば、リン酸一ナトリウム(NaHPO・HO)、リン酸二ナトリウム(NaHPO・12HO)、リン酸三ナトリウム(NaPO・12HO)、無水リン酸一ナトリウム(NaHPO)、無水リン酸二ナトリウム(NaHPO)、無水リン酸三ナトリウム(NaPO)、ピロリン酸ナトリウム(Na・10HO)、無水ピロリン酸ナトリウム(Na)、酸性ピロリン酸ナトリウム(Na)、トリポリリン酸ナトリウム(Na10)、テトラポリリン酸ナトリウム(Na13)、ペンタポリリン酸ナトリウム(Na16)、ヘキサメタリン酸ナトリウム((NaPO、但し、nは10〜23である。)等が挙げられる。これらのリン酸ナトリウムは適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
また、前記に例示したリン酸ナトリウムのうち、本実施の形態に於いては、平均して、1分子当たり1〜23個のリン酸基及び/又はリン酸塩基を含有するものが好ましい。ここで、本明細書において「リン酸基」とは−OPO(OH)又は(−O)P(O)OHで表される官能基を意味し、「リン酸塩基」とは−OPO(OH)又は(−O)P(O)OHで表される官能基における水素原子の少なくとも一つがNaイオンで置換された塩の状態で存在する官能基を意味する。そのようなリン酸ナトリウムとしては、具体的には、無水リン酸二ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのリン酸ナトリウムであると、一定の分散時間以上で顔料を分散させることにより、顔料の平均分散粒子径D50を30nm〜300nmの範囲とし、かつ、最大分散粒子径D99を500nm未満の範囲とすることができ、一層優れた分散性能を付与することができる。
尚、本実施の形態の可食性顔料組成物を医薬品やサプリメント等の固体製剤表面への印刷用として用いる場合、リン酸ナトリウムは、日本における薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方及び食品添加物公定書の基準に適合するものであることが好ましい。さらに、リン酸ナトリウムは米国薬局方及び欧州薬局方の基準に適合するものであることが好ましい。
また、例示したリン酸ナトリウムのうち、本実施の形態に於いては、リン酸ナトリウムの濃度1質量%の水溶液中におけるpH値が5未満のものが好ましい。pH値が5未満のリン酸ナトリウムであると、顔料の分散の進行を促進することができ、分散時間の短縮化が可能になる。また、顔料の平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99の値をより小さくできる傾向がある。pH値が5未満のリン酸ナトリウムとしては、例えば、酸性ピロリン酸ナトリウム(pH3.8〜4.5)等が挙げられる。尚、本明細書におけるpH値は、25℃におけるリン酸ナトリウムの濃度1質量%の水溶液における値を意味する。
リン酸ナトリウムの質量平均分子量は特に限定されないが、通常は100〜3000であり、好ましくは120〜2000、より好ましくは200〜1500である。
リン酸ナトリウムの四三酸化鉄に対する含有比は、質量基準で0.1〜0.3であることが好ましい。リン酸ナトリウムの四三酸化鉄に対する前記含有比を0.1以上にすることにより、四三酸化鉄の分散性が低下しすぎるのを抑制することができる。その一方、リン酸ナトリウムの四三酸化鉄に対する前記含有比を0.3以下にすることにより、剪断力等を加えて、凝集した顔料粒子を微細化し分散させるまでの進行時間(分散時間)を短縮することができ、四三酸化鉄の最大分散粒子径D99が大きくなり過ぎるのを抑制することができる。
分散状態にある前記四三酸化鉄の平均分散粒子径D50は30nm〜300nmの範囲内が好ましく、40nm〜200nmの範囲内がより好ましく、50nm〜100nmの範囲内が特に好ましい。また、前記四三酸化鉄の分散粒子径D99(体積積算粒度分布における積算粒度で99%の粒径)は、500nm未満が好ましく、300nm未満がより好ましく、200nm未満が特に好ましい。前記D50を30nm以上にすることにより、分散安定性、耐光性及び吐出安定性の悪化を防止し、印刷濃度の低下も防止することができる。その一方、前記D50を300nm以下、かつD99を500nm未満にすることにより、前記四三酸化鉄の分離や沈降を防止し、分散安定性の維持が図れる。尚、四三酸化鉄の平均分散粒子径D50又は最大分散粒子径D99は、マイクロトラックUPA−EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した値である。
本実施の形態の可食性顔料組成物に用いられる分散媒としては水が挙げられ、より詳細には、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものが挙げられる。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、分散媒の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の可食性顔料組成物の製造方法において、四三酸化鉄、リン酸ナトリウム、分散媒及び必要に応じて配合するその他の添加剤の混合方法や添加順序は、特に限定されない。例えば、四三酸化鉄、リン酸ナトリウム及び分散媒としての水等を一度に混合し、この混合液に対し通常の分散機を用いて分散処理を施すことにより、本実施の形態の可食性顔料組成物を得ることができる。このときの分散時間は特に限定されないが、顔料の平均分散粒子径D50が30nm〜300nmであり、最大分散粒子径D99が500nm未満となるように設定するのが好ましい。顔料の平均分散粒子径D50が300nm以下であり、かつ、最大分散粒子径D99が500nm未満となる様に分散時間を設定することにより、四三酸化鉄の粗大粒子が大量に残存するのを低減し、リン酸ナトリウムの四三酸化鉄表面への吸着が不十分となって分散安定性や保存安定性が悪くなるのを防止することができる。その一方、顔料の平均分散粒子径D50が30nm以上となる様に分散時間を設定することにより、顔料の分散安定性及び保存安定性が低下するのを防止することができる。また、本実施の形態の可食性顔料組成物をインクジェット用インク組成物に用いる場合には、インクジェットノズルからの吐出安定性が低下するのも防止することができる。さらに、印刷濃度の低下も抑制することができる。
顔料の分散処理の際に使用される分散機としては特に限定されず、一般に使用されるものを用いることができる。具体的には、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、ナノマイザー等が挙げられる。
以上の通り、本実施の形態の可食性顔料組成物は、四三酸化鉄を含む顔料に対し、顔料分散剤としてリン酸ナトリウムを用いることにより、分散性に優れた顔料分散体を提供することができる。また、四三酸化鉄及びリン酸ナトリウムは、何れも日本における薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方及び食品添加物公定書の基準、米国薬局方の基準並びに欧州薬局方の基準に適合するので、医薬品や食品等の錠剤及びカプセル剤等に印刷するインク組成物に適用可能である。さらに、四三酸化鉄の平均分散粒子径D50を30nm〜300nmの範囲内とし、かつ最大分散粒子径D99を500nm未満の範囲内に制御しているので、医薬品や食品等の錠剤やカプセル剤等の固体製剤に対しインクジェット方式で直接印刷することができる。
さらに、可食性顔料組成物においては、染料の代わりに四三酸化鉄を用いているので、例えば、医薬品等の固体製剤表面にインクジェット方式で印刷しても、印刷画像は耐光性に優れ、かつ、滲みの発生を防止することができる。また、本実施の形態の可食性顔料組成物は、例えば、最終製品たるインクジェット用水性インク組成物の形態のほか、当該水性インク組成物を調製するための顔料分散液の形態をも包含するものである。
尚、本実施の形態に於いては、リン酸ナトリウムとして、四三酸化鉄を含む顔料に対し顔料分散剤として機能させる場合を例にして説明した。但し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、例えば、リン酸ナトリウムを可食性顔料組成物のpH調整剤として用いることも可能である。その場合、リン酸ナトリウムとしては、制御するpH値の範囲に応じて適宜選択される。また、リン酸ナトリウムの四三酸化鉄に対する含有比も、制御するpH値の範囲に応じて設定される。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。尚、各材料としては何れも日本における薬事法で定める医薬品添加物、日本薬局方及び食品添加物公定書の基準、米国薬局方の基準並びに欧州薬局方の基準に適合するものを用いた。
(可食性顔料組成物の各組成及び配合比)
各実施例及び比較例で調製した可食性顔料組成物の各組成及び配合比は、以下の通りとした。尚、各組成で用いた顔料分散剤の種類は表1に示す通りである。
<組成A>
組成Aの含有成分は下記表2に示す通りであり、黒色顔料として四三酸化鉄(酸化鉄S、癸巳化成株式会社製)、顔料分散剤として無水リン酸二ナトリウム(燐化学工業株式会社製)、及び分散媒として純水を用いた。また、各成分の配合比は表2に示す通り、四三酸化鉄20.0質量%、無水リン酸二ナトリウム2.0質量%、純水78.0質量%とした。尚、表2中の数値は、特に記載がない限り全て質量%で表したものである。
<組成B>
組成Bにおいては、下記表2に示す通り、顔料分散剤として酸性ピロリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)を用いた。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成C>
組成Cにおいては、下記表2に示す通り、顔料分散剤としてピロリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)を用いた。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成D>
組成Dにおいては、下記表2に示す通り、顔料分散剤としてトリポリリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)を用いた。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成E>
組成Eにおいては、下記表2に示す通り、顔料分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)を用いた。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成F>
組成Fにおいては、下記表3に示す通り、顔料分散剤として酸性ピロリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)を用いた。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成G>
組成Gにおいては、下記表3に示す通り、顔料分散剤である酸性ピロリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)の含有量を4.0質量%、分散媒である純水の含有量を76.0質量%に変更した。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成H>
組成Hにおいては、下記表3に示す通り、顔料分散剤である酸性ピロリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)の含有量を6.0質量%、分散媒である純水の含有量を74.0質量%に変更した。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
<組成I>
組成Iにおいては、下記表3に示す通り、顔料分散剤である酸性ピロリン酸ナトリウム(燐化学工業株式会社製)の含有量を8.0質量%、分散媒である純水の含有量を72.0質量%に変更した。それ以外は組成Aと同様の含有成分を用い、同様の配合比とした。
Figure 2019059848
Figure 2019059848
Figure 2019059848
(顔料の平均分散粒子径の測定)
後述の各実施例及び比較例における可食性顔料組成物の平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99は、マイクロトラックUPA−EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した。
(リン酸ナトリウムの質量平均分子量(Mw))
後述の各実施例及び比較例で用いたリン酸ナトリウムの質量平均分子量は、ポリエチレンオキサイド(PEO)/ポリエチレングリコール(PEG)を標準品として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる値である。
(比較例A−1、A−2)
比較例A−1及びA−2においては、それぞれ組成Aの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各比較例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表4に示す通り比較例A−1の場合を24時間、比較例A−2の場合を48時間とした。
さらに、比較例A−1及びA−2の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表4に示す。
(実施例A−1)
実施例A−1においては、組成Aの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で72時間(分散時間)分散させた。これにより、本実施例の可食性顔料組成物を作製した。
さらに、本実施例の可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表4に示す。
Figure 2019059848
(実施例B−1〜B−3)
実施例B−1〜B−3においては、それぞれ、組成Bの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各実施例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表5に示す通り実施例B−1の場合を24時間、実施例B−2の場合を48時間、実施例B−3の場合を72時間とした。
さらに、実施例B−1〜B−3の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表5に示す。
Figure 2019059848
(比較例C−1、C−2)
比較例C−1及びC−2においては、それぞれ、組成Cの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各比較例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表6に示す通り比較例C−1の場合を24時間、比較例C−2の場合を48時間とした。
さらに、比較例C−1及びC−2の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表6に示す。
(実施例C−1)
実施例C−1においては、組成Cの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で72時間(分散時間)分散させた。これにより、本実施例の可食性顔料組成物を作製した。
さらに、本実施例の可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表6に示す。
Figure 2019059848
(比較例D−1、D−2)
比較例D−1及びD−2においては、それぞれ、組成Dの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各比較例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表7に示す通り比較例D−1の場合を24時間、比較例D−2の場合を48時間とした。
さらに、比較例D−1及びD−2の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表7に示す。
(実施例D−1)
実施例D−1においては、組成Dの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で72時間(分散時間)分散させた。これにより、本実施例の可食性顔料組成物を作製した。
さらに、本実施例の可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表7に示す。
Figure 2019059848
(比較例E−1、E−2)
比較例E−1及びE−2においては、それぞれ、組成Eの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各比較例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表8に示す通り比較例E−1の場合を24時間、比較例E−2の場合を48時間とした。
さらに、比較例E−1及びE−2の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表8に示す。
(実施例E−1)
実施例E−1においては、組成Eの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で72時間(分散時間)分散させた。これにより、本実施例の可食性顔料組成物を作製した。
さらに、本実施例の可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表8に示す。
Figure 2019059848
(実施例F−1及びF−2)
実施例F−1及びF−2においては、それぞれ、組成Fの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各実施例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表9に示す通り実施例F−1の場合を24時間、実施例F−2の場合を48時間とした。
さらに、実施例F−1及びF−2の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表9に示す。
Figure 2019059848
(実施例G−1及びG−2)
実施例G−1及びG−2においては、それぞれ、組成Gの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各実施例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表10に示す通り実施例G−1の場合を24時間、実施例G−2の場合を48時間とした。
さらに、実施例G−1及びG−2の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表10に示す。
Figure 2019059848
(比較例H−1〜H−3)
比較例H−1〜H−3においては、それぞれ、組成Hの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各比較例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表11に示す通り比較例H−1の場合を24時間、比較例H−2の場合を48時間、比較例H−3の場合を72時間とした。
さらに、比較例H−1〜H−3の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表11に示す。
(実施例H−1)
実施例H−1においては、組成Hの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で96時間(分散時間)分散させた。これにより、本実施例の可食性顔料組成物を作製した。
さらに、本実施例の可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表11に示す。
Figure 2019059848
(比較例I−1〜I−4)
比較例I−1〜I−4においては、それぞれ、組成Iの各成分を所定の配合比となる様に容器中に入れて混合し、分散機(ペイントシェーカー、浅田鉄工株式会社製)にて常温下で分散させた。これにより、各比較例の可食性顔料組成物を作製した。尚、分散時間は、表12に示す通り比較例I−1の場合を24時間、比較例I−2の場合を48時間、比較例I−3の場合を72時間、比較例I−4の場合を96時間とした。
さらに、比較例I−1〜I−4の各可食性顔料組成物における平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99をそれぞれ測定した。結果を表12に示す。
Figure 2019059848
(結果)
実施例A−1、C−1、D−1及びE−1に係る可食性顔料組成物は、それぞれ各種のリン酸ナトリウムを顔料分散剤に用いた組成A、C〜Eを有するものであり、表4、表6〜表8に示す通り、72時間以上の分散時間で分散させることで、顔料の平均分散粒子径D50を30nm〜300nmの範囲内、最大分散粒子径D99を500nm未満に制御することができ、分散性に極めて優れた顔料分散体を製造できることが確認された。
また、実施例B−1〜B−3に係る可食性顔料組成物は、顔料分散剤として酸性ピロリン酸ナトリウムを用いた組成Bを有するものであり、表5に示す通り、使用したリン酸ナトリウムのpH値がアルカリ性から中性の範囲内である他の実施例等と比較して、顔料の分散の進行を早め、短い分散時間で分散性に優れた顔料分散体を製造できることが確認された。また、最終的に到達する顔料の平均分散粒子径D50及び最大分散粒子径D99も他のリン酸ナトリウムを用いた場合と比較して小さくできることが確認された。
また、実施例F−1、F−2、G−1、G−2及びH−1に係る可食性顔料組成物は、顔料に対する顔料分散剤の含有比が質量基準で0.1〜0.3の範囲となる組成F〜Hを有するものであり、表9〜表11に示す通り分散性に極めて優れた顔料分散体を製造できることが確認された。
また、実施例F−1、F−2、G−1、G−2及びH−1に係る可食性顔料組成物は、顔料に対する顔料分散剤の含有比が質量基準で0.1〜0.3の範囲となる組成F〜Hを有するものであり、表9〜表11に示す通り、一定以上の分散時間で分散させることで、四三酸化鉄の平均分散粒子径D50を30nm〜300nm、最大分散粒子径D99を500nm未満に抑制できることが確認された。一方、比較例I−1〜I−4に係る可食性顔料組成物は、それぞれpH値が酸性の酸性ピロリン酸ナトリウムを用いたものであるが、顔料に対する顔料分散剤の含有比が0.1〜0.3の範囲外となる組成Iを有するものであり、また分散時間も短く不十分であった。そのため、これらの比較例では、表12に示す通り、分散時間を96時間以上行っても、顔料の平均分散粒子径D50を30nm〜300nm以内、最大分散粒子径D99を500nm未満に低減することができなかった。

Claims (4)

  1. 四三酸化鉄を含む顔料と、リン酸ナトリウムとを含み、
    前記四三酸化鉄の平均分散粒子径D50が30nm〜300nmの範囲であり、
    前記四三酸化鉄の最大分散粒子径D99が500nm未満である可食性顔料組成物。
  2. 前記リン酸ナトリウムは、リン酸基、及び/又は前記リン酸基における水素原子の少なくとも一つがNaイオンで置換されたリン酸塩基を、1分子当たり平均して1〜23個有している請求項1に記載の可食性顔料組成物。
  3. 顔料分散剤としての前記リン酸ナトリウムの前記四三酸化鉄に対する含有比が、質量基準で、0.1〜0.3の範囲内である請求項2に記載の可食性顔料組成物。
  4. 顔料分散剤としての前記リン酸ナトリウムのpH値が、当該リン酸ナトリウムの濃度1質量%の水溶液中において5未満である請求項2又は3に記載の可食性顔料組成物。
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