JP2019059121A - 転写フィルム - Google Patents

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直樹 辻内
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Abstract

【課題】基材フィルムに離型層などを介在せずに直接に転写層を積層した場合であっても、転写層の剥離性が良好であり、かつ転写層に艶消し外観を付与することができる転写フィルムを提供する。【解決手段】基材フィルム上に転写層を有する転写フィルムであって、前記基材フィルムの前記転写層側の表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上であり、前記転写層が少なくとも第1転写層を含み、前記第1転写層は転写層のうち最も基材フィルムに近い層であり、前記第1転写層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有することを特徴とする、転写フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、転写フィルムに関する。詳細には、艶消し層を含む転写層を被転写部材に転写するための転写フィルムに関する。
家電製品や自動車内装部品などの樹脂成形体の表面保護あるいは加飾のために、ハードコート層や加飾層などを含む転写層を転写させることが行われている。また、回路基板表面に加熱プレスにより絶縁層や導電層などを含む転写層を転写させることが行われている。
上記した転写層には、艶消し外観が求められることがあり、転写層に艶消し外観を付与することが提案されている。
例えば、特許文献1は、基材シート、基材シートから剥離しないマット層、離型層およびハードコート層(転写層)を有する転写シートであって、マット層は離型層を介してハードコート層(転写層)にマット(艶消し)外観を付与する発明を開示する。
また、特許文献2は、ポリエステル支持層、艶消し層および離型層がこの順で積層された転写用積層ポリエステルフィルムであって、艶消し層は離型層を介して転写層(ハードコート層など)に艶消し外観を付与する発明を開示する。
特許文献3は、基材フィルムの一方の面に、マット層、マット離型層、ハードコート層および接着層をこの順に積層してなる転写フィルムであって、マット層およびマット離形層を介してハードコート層(転写層)にマット(艶消し)外観を付与する発明を開示する。
特開2011−148103号公報 特開2013−129076号公報 特開2015−214032号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3は、ハードコート層などの転写層にマット(艶消し)外観を付与するために、マット層(艶消し層)や離型層が設けられており、積層数が多くなることによる生産性低下や材料コスト増などの課題がある。
一方、基材上に離型層などを介在せずに直接に転写層を積層すると、一般的には転写層の剥離性が低下する。
従って、本発明の目的は、従来技術の課題に鑑み、基材フィルムに離型層などを介在せずに直接に転写層を積層した場合であっても、転写層の剥離性が良好であり、かつ転写層に艶消し外観を付与することができる転写フィルムを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
[1]基材フィルム上に転写層を有する転写フィルムであって、前記基材フィルムの前記転写層側の表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上であり、前記転写層が少なくとも第1転写層を含み、前記第1転写層は転写層のうち最も基材フィルムに近い層であり、前記第1転写層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有することを特徴とする、転写フィルム。
[2]前記第1転写層が艶消し層である、[1]に記載の転写フィルム。
[3]前記第1転写層がメラミン化合物を含有する、[1]または[2]に記載の転写フィルム。
[4]前記第1転写層が、熱硬化性組成物からなる硬化層または活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化層である、[1]〜[3]のいずれかに記載の転写フィルム。
[5]前記第1転写層の厚みが0.3μm以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の転写フィルム。
[6]前記転写層が第1転写層と少なくとも1層の機能性転写層を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の転写フィルム。
[7]前記基材フィルム上に直接に前記第1転写層が積層されている、[1]〜[6]のいずれかに記載の転写フィルム。
[8]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、[1]〜[7]のいずれかに記載の転写フィルム。
本発明によれば、基材フィルムに離型層などを介在せずに直接に転写層を積層した場合であっても、転写層の剥離性が良好であり、かつ転写層に艶消し外観を付与することができる転写フィルムを提供することができる。
本発明の転写フィルムは、基材フィルム上に転写層を有する。転写層は、少なくとも第1転写層を含み、第1転写層は転写層のうち最も基材フィルムに近い層であり、第1転写層は炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有する。第1転写層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有することによって、第1転写層の剥離性が良好となる。
基材フィルムの転写層側の表面の中心線平均粗さRaは、0.30μm以上が必要である。このような表面形状をもつ基材フィルムに第1転写層を積層することによって、第1転写層の表面に微細凹凸構造が形成されて艶消し外観が付与されるので好ましい。つまり、第1転写層に艶消し層としての機能を付与することができるので好ましい。すなわち、本発明の転写フィルムにおいて、第1転写層が艶消し層であることが好ましい。
本発明において、第1転写層は、基材フィルム上に他の層、例えば離型層を介して積層されてもよいが、基材フィルム上に直接に積層されることが好ましい。基材フィルム上に第1転写層が直接に積層されることによって、積層回数を減らすことができるので生産性向上および材料コスト低減が図られる。また、基材フィルム上に第1転写層が直接に積層されることによって、基材フィルム表面の微細凹凸が第1転写層に効率よく転写されるので、第1転写層に有効な艶消し外観を付与することができる。
第1転写層が基材フィルムに直接に積層された場合であっても、第1転写層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有することによって、基材フィルムと第1転写層との剥離性が良好となる。
[第1転写層]
第1転写層は、炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有する。炭素数8以上のアルキル基は、直鎖あるいは分岐のアルキル基を含む。以下、炭素数8以上のアルキル基を「高級アルキル基」ということがあり、また、炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を「高級アルキル基含有化合物」ということがある。
第1転写層の剥離性を向上させるという観点から、高級アルキル基含有化合物のアルキル基の炭素数は10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上が特に好ましい。また、上記アルキル基の炭素数は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。
高級アルキル基含有化合物としては、側鎖に高級アルキル基を有する化合物が好ましく用いられる。具体的には、高級アルキル基含有アクリル樹脂、高級アルキル基含有アルキド樹脂、高級アルキル基含有ポリビニル樹脂、高級アルキル基含有ポリエステル樹脂、高級アルキル基含有エーテル化合物、高級アルキル基含有アミン化合物等が挙げられる。
上記化合物の中でも、第1転写層の剥離性を向上させるという観点から、高級アルキル基含有アクリル樹脂、高級アルキル基含有アルキド樹脂、高級アルキル基含有ポリビニル樹脂が好ましく、さらに高級アルキル基含有アクリル樹脂、高級アルキル基含有アルキド樹脂が好ましく、特に高級アルキル基含有アクリル樹脂が好ましい。
高級アルキル基含有アクリル樹脂は、高級アルキル基を有するアクリル酸エステルモノマーあるいはメタクリル酸エステルモノマー、例えば、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシルなどの単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。
上記共重合体に用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレンなどが挙げられる。
高級アルキル基含有アルキド樹脂は、高級アルキル基を有する多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を脂肪油や脂肪酸などで変性したものが挙げられる。多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和多塩基酸や、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物などのその他多塩基酸が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトールなどの四価以上のアルコールが挙げられる。変性剤としては、大豆油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油などの脂肪油、及びこれらの脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸などの油脂及び油脂脂肪酸、ロジン、コバール、コハク、セラックなどの天然樹脂、エステルガム、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、ステアリン酸変性アルキド樹脂及び/又はステアリン酸変性アクリル樹脂とアミノ樹脂との硬化樹脂も塗布性と剥離性のバランスの観点から好ましい。
高級アルキル基含有ポリビニル樹脂は、ポリビニルアルコール重合体(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含む)、エチレン−ビニルアルコール重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を含む)あるいはビニルアルコール−アクリル酸共重合体(酢酸ビニル−アクリル酸共重合体の部分ケン化物を含む)と、高級アルキル基含有イソシアネート化合物とを反応させることによって合成することができる。この場合、高級アルキル基含有イソシアネート化合物の添加量を調整することにより高級アルキル基含有ポリビニル樹脂中に水酸基を含有させることができる。高級アルキル基含有ポリビニル樹脂中に水酸基を含有させることにより、後述する架橋剤との併用によって離型層の架橋が促進され、その結果、剥離力を小さくすることができる。
高級アルキル基含有イソシアネート化合物としては、炭素数が8以上のアルキル基を有するモノイソシアネート化合物が挙げられ、具体的には、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネートなどが挙げられる。
第1転写層は、剥離性を向上させるという観点から、架橋剤を含有することが好ましい。かかる架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、特にメラミン系架橋剤が好ましく用いられる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートトリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
オキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤としては、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。
メラミン系架橋剤として用いられるメラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子の少なくとも1つがメチロール化されたものが好ましく、さらに、メチロール化メラミン化合物のメチロール基を炭素数が1〜4の低級アルコールで部分もしくは完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン化合物が好ましい。
エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールが挙げられる。
メラミン系架橋剤は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、DIC(株)の”スーパーベッカミン(登録商標)”J−820−60、同J−821−60、同J−1090−65、同J−110−60、同J−117−60、同J−127−60、同J−166−60B、同J−105−60、同G840、同G821、三井化学(株)の”ユーバン(登録商標)”20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28−60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166−60、同169、同2061、住友化学(株)の”スミマール(登録商標)”M−100、同M−40S、同M−55、同M−66B、日本サイテックインダストリーズの”サイメル(登録商標)”303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルの”ニカラック(登録商標)”MS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM−975、同SM−960、日立化成(株)の”メラン(登録商標)”265、同2650Lなどが挙げられる。
第1転写層は、硬化を促進させるために酸触媒を含有することが好ましい。酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、p−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
本発明の転写フィルムにおいて、前記第1転写層が、熱硬化性組成物からなる硬化層または活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化層であることが好ましい。
第1転写層が熱硬化性組成物からなる硬化層である場合、前記熱硬化性組成物は高級アルキル基含有化合物と架橋剤を含有することが好ましい。ここで、高級アルキル基含有化合物および架橋剤は、前述の化合物を用いることができる。熱硬化性組成物は、さらに上記の酸触媒を含有することが好ましい。
熱硬化性組成物における高級アルキル基含有化合物の含有量は、第1転写層の剥離性を向上させるという観点から、熱硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。一方、高級アルキル基含有化合物の含有量が多くなり過ぎると、第1転写層の強度(硬度)が低下することがあるので、上記含有量は、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
熱硬化性組成物における架橋剤の含有量は、剥離性を向上させるという観点から、熱硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。一方、架橋剤の含有量が多くなり過ぎると、剥離性が低下することあるので、上記含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
熱硬化性組成物における酸触媒の含有量は、剥離性を向上させるという観点から、熱硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましく、0.5〜3質量%が特に好ましい。
熱硬化性組成物を硬化させる際の条件(加熱温度、時間)は特に限定されないが、加熱温度は70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上が特に好ましい。上限は300℃程度である。加熱時間は3〜300秒が好ましく、5〜200秒がより好ましい。
また、第1転写層が活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化層である場合、前記活性エネルギー線硬化性組成物は高級アルキル基含有化合物を含有することが好ましい。
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線によって重合し硬化する化合物(以下、活性エネルギー線硬化性化合物)を含有する。かかる活性エネルギー線硬化性化合物としては、分子中にエチレン性不飽和基を有する化合物(モノマーやオリゴマー)が挙げられる。ここで、エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性組成物に含有される高級アルキル基含有化合物は、活性エネルギー線硬化性化合物であってもよいし、なくてもよいが、活性エネルギー線硬化性化合物であることが好ましい。つまり、活性エネルギー線硬化性組成物に含有される高級アルキル基含有化合物は、分子中にエチレン性不飽和基と高級アルキル基を含む化合物(以下、「活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)」ということがある)であることが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性化合物ではない高級アルキル基含有化合物を非硬化性高級アルキル基含有化合物ということがある。
活性エネルギー線硬化性組成物に含有される高級アルキル基含有化合物が、非硬化性高級アルキル基含有化合物である場合は、前述した高級アルキル基含有化合物、すなわち、高級アルキル基含有アクリル樹脂、高級アルキル基含有アルキド樹脂、高級アルキル基含有ポリビニル樹脂、高級アルキル基含有ポリエステル樹脂、高級アルキル基含有エーテル化合物、高級アルキル基含有アミン化合物等を用いることができる。この場合の活性エネルギー線硬化性組成物は、分子中に高級アルキル基(炭素数8以上のアルキル基)を有しない活性エネルギー線硬化性化合物(以下、「活性エネルギー線硬化性化合物(β)」ということがある)を含有する必要がある。活性エネルギー線硬化性化合物(β)については、詳細は後述する。
活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)と、非硬化性高級アルキル基含有化合物あるいは活性エネルギー線硬化性化合物(β)を併用することができる。特に、活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)と活性エネルギー線硬化性化合物(β)を併用することが好ましい。
以下、活性エネルギー線硬化性組成物が、活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)を含有する態様について、詳細に説明する。
尚、以下の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」とは、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」の総称である。
活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)は、分子中にエチレン性不飽和基と高級アルキル基を含む化合物である。
活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)としては、例えば、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
特に、以下に示す活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)が好ましく用いられる。かかる化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを分子中にそれぞれ1個以上有する(メタ)アクリレート化合物(a)と、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b)と、炭素数が8〜30の高級アルコール(c)とを反応させて得られる化合物が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート化合物(a)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−アシッドフォスフェート、エポキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、分子中に2〜30個のアルキレンオキシ基(例えば、エンチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基など)を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記化合物の中でも、剥離性を向上させるという観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、分子中に2〜30個のアルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
ポリイソシアネート化合物(b)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、さらにはこれら各種ジイソシアネート化合物と水とを反応させて得られるビウレット型ポリイソシアネート化合物、または各種ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の多価アルコールとを反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート化合物、または各種化合物をイソシアヌレート化せしめて得られる多量体等の公知のものが挙げられる。
上記ポリイソシアネート化合物の中でも、分子量が50〜500の化合物が好ましく、分子量が100〜400の化合物がより好ましく、特に分子量が130〜300の化合物が好ましい。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)、ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)が好ましい化合物として例示される。
高級アルコール(c)としては、例えば、直鎖状の高級アルコールとして、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニールアルコールなど、直鎖状の不飽和高級アルコールとしてオレイルアルコールなど、分岐型高級アルコールとして2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラドデカノールなどが挙げられる。
高級アルコール(c)としては、市販品を使用することができる。例えば、直鎖状の飽和高級アルコールとしては、”コノール(登録商標)”10WS、コノール1098、コノール1275、コノール20F、コノール20P、コノール1495、コノール1670、コノール1695、コノール30CK、コノール30OC、コノール30RC、コノール30F、コノール30S、コノール30SS、コノール30T、コノール2265、コノール2280(新日本理化株式会社製の商品名)、”カルコール(登録商標)”0898、カルコール0880、カルコール1098、カルコール2098、カルコール4098、カルコール6098、カルコール8098、カルコール200GD、カルコール2475、カルコール2474、カルコール2473、カルコール2463、カルコール2455、カルコール2450、カルコール4250、カルコール6870、カルコール6850、カルコール8688、カルコール8665、カルコール220−80(花王(株)の商品名)、直鎖状の不飽和高級アルコールとしては、”リカコール(登録商標)”60B、リカコール70B、リカコール75BJ、リカコール85BJ、リカコール90B、リカコール90BR、リカコール90BHR、リカコール110BJ、”アンジェコール(登録商標)”50A、アンジェコール60AN、アンジェコール70AN、アンジェコール80AN、アンジェコール85AN、アンジェコール90AN、アンジェコール90NR、アンジェコール90NHR(新日本理化(株)商品名)、分岐型の高級アルコールとしては”エヌジェコール(登録商標)”160BR、エヌジェコール200A、エヌジェコール240A(新日本理化(株)の商品名)などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性組成物に含有することができる活性エネルギー線硬化性化合物(β)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート−トルエンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート−イソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマーなどが挙げられる。
上記化合物の中でも、分子中に2〜7個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、特に分子中に3〜6個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
活性エネルギー線硬化性組成物における高級アルキル基含有化合物の含有量(活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α)および非硬化性高級アルキル基含有化合物の合計量)は、剥離性を向上させるという観点から、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が特に好ましい。一方、高級アルキル基含有化合物の含有量が多くなり過ぎると強度(硬度)が低下することがあるので、上記含有量は、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性組成物における活性エネルギー線硬化性化合物(β)の含有量は、第1転写層の強度(硬度)を高めるという観点から、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、活性エネルギー線硬化性化合物(β)の含有量が多くなり過ぎると、第1転写層表面の剥離性が低下することがあるので、上記含有量は90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
活性エネルギー線硬化性組成物は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えばアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製の”イルガキュア(登録商標)”184、イルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、”DAROCUR(登録商標)” TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製の”Speedcure(登録商標)”MBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、”Esacure(登録商標)” ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製の”KAYACURE(登録商標)” DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
上記光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%が適当であり、0.5〜8質量%が好ましい。
活性エネルギー線硬化性組成物の硬化させるための活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、β線、γ線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、紫外線および電子線が好ましく、特に紫外線が好ましく用いられる。
紫外線を照射するための光源としては、特に限定されないが、例えば、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく用いられる。また、紫外線を照射するときに、低酸素濃度下の雰囲気下、例えば、酸素濃度が500ppm以下の雰囲気下で照射を行なうことによって効率よく硬化させることができる。
紫外線の照射光量は、50mJ/cm以上が好ましく、100mJ/cm以上がより好ましく、特に150mJ/cm以上が好ましい。上記紫外線照射光量は、2000mJ/cm以下が好ましく、1000mJ/cm以下がより好ましい。
第1転写層の厚みは、艶消し外観を付与するという観点から、0.3μm以上が好ましい。これによって、基材フィルム表面の微細凹凸構造が第1転写層に形成されやすくなり、第1転写層に艶消し外観が付与されやすくなる。また、中心線平均粗さRaが0.30μm以上である基材フィルム表面に、第1転写層を均一に塗布形成するという観点からも、第1転写層の厚みは0.3μm以上が好ましい。
上記観点から、第1転写層の厚みは、さらに、0.5μm以上が好ましく、特に0.7μm以上が好ましい。また、第1転写層の厚みは、10.0μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下が特に好ましい。
第1転写層は、前述した組成物を含む塗工液を基材フィルム上にウェットコーティング法により塗布し、乾燥および硬化させることによって形成されることが好ましい。かかるウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
[転写層]
本発明における転写層は、第1転写層のみで構成されていてもよいし、第1転写層と少なくとも1層の機能性転写層で構成されていてもよい。機能性転写層は、基材フィルム上に積層された第1転写層の上に積層される。
機能性転写層としては、特に限定されないが、例えば、ハードコート層、プライマー層、加飾層、保護層、絶縁層、導電層、隠蔽層、接着層などが挙げられ、これらの機能性転写層は単独であってもよいし、2種以上が積層されたものであってもよい。
機能性転写層の積層は、第1転写層が積層された基材フィルムの第1転写層上に、機能性転写層の塗工液をウェットコーティング法により塗布し、乾燥および必要に応じて硬化させることによって形成することができる。
[基材フィルム]
本発明における基材フィルムは、転写層側の表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上であることが重要である。中心線平均粗さRaが0.30μm以上である基材フィルム表面に、第1転写層を積層することによって、基材フィルム表面の微細凹凸構造が第1転写層に転写されて第1転写層表面に微細凹凸構造が形成され、その結果、第1転写層に艶消し外観が付与されるので好ましい。つまり、第1転写層に艶消し層としての機能を付与することができる。
第1転写層に有効な艶消し外観を付与するという観点から、基材フィルムの転写層側表面の中心線平均粗さRaは、さらに0.35μm以上が好ましく、0.40μm以上がより好ましく、0.45μm以上が特に好ましい。基材フィルム表面の中心線平均粗さRaが大きくなり過ぎると、第1転写層の塗布性や剥離性が悪化することがあるので、中心線平均粗さRaは1.00μm以下が好ましく、0.90μm以下がより好ましく、0.80μm以下が特に好ましい。
基材フィルム表面に中心線平均粗さRaが0.30μm以上の微細凹凸構造を形成する方法としては、基材フィルムに粒子を含有させる方法、基材フィルム表面をサンドブラスト処理する方法、基材フィルム表面を化学処理する方法などが挙げられる。これらの中でも、基材フィルムに粒子を含有させる方法が好ましい。詳細は後述する。
基材フィルムとしては、特に限定されず、各種プラスチックフィルムを使用することができる。例えば、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルムフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、環状オレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
これらのプラスチックフィルムの中でも、耐熱性や耐溶剤性が良好であるポリエステルフィルムが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材フィルムの厚みは、基材フィルム表面に中心線平均粗さRaが0.30μm以上の微細凹凸構造を形成するという観点から、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μmが特に好ましい。また、基材フィルムの厚みは、加工性の観点から、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、80μm以下が特に好ましい。
以下、基材フィルムの好ましい態様について、ポリエステルフィルムを例に挙げて詳細に説明する。
ポリエステルとは、主鎖における主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称である。そして、ポリエステル樹脂は、通常、ジカルボン酸あるいはその誘導体と、グリコールあるいはその誘導体とを重縮合反応させることによって得ることができる。
ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、並びに、それらの誘導体を挙げることができる。ジカルボン酸の誘導体として、より具体的には、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2−ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどのエステル化物を挙げることができる。
上記の中でも、耐熱性、取り扱い性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および、それらのエステル化物が好ましく用いられる。特に、少なくともテレフタル酸を用いることが好ましい。
グリコールあるいはその誘導体としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、並びに、それらの誘導体が挙げられる。
上記の中でも、耐熱性および取り扱い性の点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。特に、少なくともエチレングリコールを用いることが好ましい。
ポリエステルフィルムは、2層あるいは3層の積層構成であることが好ましい。そして、このような積層構成のポリエステルフィルムの転写層側の最表層に粒子を含有させることが好ましい。
2層積層構成のポリエステルフィルムとしては、例えば、A層/B層の構成が挙げられる。この構成において、A層表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上となるようにA層に粒子を含有させることが好ましい。そして、A層表面に第1転写層が積層される。
3層積層構成のポリエステルフィルムとしては、例えば、A層/B層/A層、あるいはA層/B層/C層が挙げられる。これらの積層構成において、A層表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上となるようにA層に粒子を含有させることが好ましい。そして、A層表面に第1転写層が積層される。A層/B層/A層の場合は、どちらか一方のA層表面に転写層が積層される。
上記した2層積層構成および3層積層構成において、A層、B層およびC層はいずれも組成が異なることを意味する。
A層/B層/A層の積層構成における両側のA層は、少なくとも組成が同一であることを意味する。さらに、両側のA層は、厚みが実質的に同一であることが好ましい。ここで、両側のA層の厚みが実質的に同一であるとは、2つのA層の平均厚みに対する2つのA層の厚み差の比率が10%以下であることを意味する。
A層/B層/C層の積層構成において、C層は粒子を含有してもよいし、含有しなくてもよい。
B層は、粒子を含有してもよいが、粒子は含有しないことが好ましい。ここで、粒子とは、平均粒子径が1μm以上の粒子を指す。つまり、B層は平均粒子径が1μmの粒子は含有しないことが好ましい。一方、B層は、ポリエステルフィルムの色調を調整するための平均粒子径が1μm未満の顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウムなどを含有することができる。
基材フィルムおよび転写フィルムのカールを抑制するという観点から、ポリエステルフィルムは3層積層構成であることが好ましく、さらに、A層/B層/A層の3層積層構成であることが好ましく、特に、両側のA層の厚みが実質的に同一であることが好ましい。
ここで、A層に含有させることができる粒子としては、無機粒子や有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミなどが挙げられる。有機粒子としては、例えば、スチレン、シリコーン、アクリル酸類、メタクリル酸類、ポリエステル類、ジビニル化合物などを構成成分とする粒子が挙げられる。これらの粒子は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記粒子の中でも、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミなどの無機粒子、およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼンなどを構成成分とする有機粒子が好ましい。特に、A層表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上となるように効率よく制御できるという観点から、湿式あるいは乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミが特に好ましく用いられる。
A層表面の中心線平均粗さRaを比較的容易に制御できるという観点から、粒子の平均粒子径は、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが特に好ましい。
A層における粒子の含有量は、A層の固形分総量100質量%に対して1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、3〜7質量%が特に好ましい。
A層の厚みは、A層表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上の微細凹凸構造を比較的容易に形成できるという観点から、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが特に好ましい。
C層の厚みは、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましく、3〜7μmが特に好ましい。B層の厚みは、ポリエステルフィルムの合計厚みに応じて適宜設定される。
上記した2層積層構成および3層積層構成において、A層と第1転写層との剥離性を良好にするという観点から、A層は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有することが好ましい。上記ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも、熱プレス後の剥離性向上および結晶性の観点から、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルとの共重合体がより好ましい。さらに、上記ポリエーテルとしてポリテトラメチレングリコールを用いた共重合体が好ましい。
上記ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体としては、東レ・デュポン(株)社製のハイトレル(登録商標)の製品番号2751、同3046、同4047、同4767、同7247などが市販されており、使用することができる。
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂のA層における含有量は、A層の固形分総量100質量%に対して5〜35質量%が好ましく、8〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。
また、B層においても、熱プレス後の剥離性向上および結晶性の観点から、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂を含有することが好ましい。上記ポリブチレンテレフタレート樹脂のB層における含有量は、B層の固形分総量100質量%に対して5〜35質量%が好ましく、8〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。
前述した2層積層構成(A層/B層)のポリエステルフィルム、および3層積層構成(A層/B層/A層)のポリエステルフィルムにおいて、A層およびB層の好ましい樹脂組成を以下に示す。
A層の好ましい樹脂組成としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(a)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(a)に粒子を含有させた粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(b)、および上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(c)を含有する樹脂組成が挙げられる。
B層の好ましい樹脂組成としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(a)、上記ポリブチレンテレフタレート樹脂(c)含有する樹脂組成が挙げられる。
ポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル樹脂を単軸押出機に供給し溶融押出することによって製造することができる。ポリエステル樹脂の温度は265℃〜295℃に制御し、ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を行い、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出し、冷却固化し、未延伸フィルムを得ることができる。このとき、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムとポリエステル樹脂シートを密着させる静電印加法を採用することが好ましい。
ポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸延伸することが好ましい。二軸延伸フィルムは、未延伸フィルムを長手方向および幅方向に逐次延伸する方法、または、未延伸フィルムを長手方向および幅方向にほぼ同時に延伸する方法によって得ることができる。
上記延伸方法において、長手方向の延伸倍率は2.8〜3.4倍が好ましく、2.9〜3.3倍がより好ましい。長手方向の延伸温度は、70〜100℃とすることが好ましい。幅方向の延伸倍率は2.8〜3.8倍が好ましく、3.0〜3.6倍がより好ましい。幅方向の延伸温度は、80〜150℃とすることが好ましい。
さらに、二軸延伸後に熱処理を行うことが好ましい。この熱処理はオーブン中で定長もしくは順次収縮させながら1〜30秒間行うことが好ましい。この熱処理工程では工程前半からの昇温条件を段階的に設定することが好ましく、熱処理前半温度を熱処理後半温度より−30〜−15℃とし、熱処理後半温度は140〜245℃とすることが好ましい。
[転写フィルムの適用例]
本発明の転写フィルムは、家電製品や自動車内装部品などの樹脂成形体の表面に艶消し外観を付与するための艶消し層の転写フィルムとして、あるいは艶消し層と機能性転写層(例えばハードコート層、接着層など)とを組み合わせて転写するための転写フィルムとして適用することができる。
また、本発明の転写フィルムは、上記樹脂成形体を成型する際にインモールド成形用転写箔として適用することができる。
また、回路基板表面に、加熱プレスにより、艶消し層と機能性転写層(絶縁層、導電層、接着層など)とを組み合わせて転写するための転写フィルムとして適用することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[測定方法および評価方法]
(1)基材フィルム(ポリエステルフィルム)の中心線平均粗さRaの測定
JIS B 0601に従い、光干渉型顕微鏡((株)菱化システム社製、VertScan2.0、型式:R5300 GL−Lite−AC)を用いて測定した。測定は、3回行い、その平均値を採用した。測定条件を以下に示す。
なお、ポリエステルフィルムがA層/B層/A層の3層積層構成の場合は、両面の中心線平均粗さRaを測定し、Ra値が大きい方の面のRa値を採用し、第1転写層の塗布面とした。両面のRa値が同一の場合は、どちらか一方の面を選択した。
<測定条件>
・カメラ:CCDカメラ(SONY HR−57 1/2インチ)
・対物レンズ: 5倍
・中間レンズ: 0.5倍
・波長フィルター:530nmWhite
・測定モード:Focus
・測定ソフトウェア :VS−Measure Version5.5.1
・解析ソフトフェア :VS−Viewer Version5.5.1
・測定面積:1.252mm×0.939mm
(2)転写サンプルの熱プレス試験
転写フィルムを70mm×70mmサイズに切り出し、このサンプルの転写層面に、被転写基材として同サイズのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)の「ルミラー」(登録商標)SF20;厚み188μm)を重ねて試験用積層体を作製した。この積層体を、加熱プレス装置(ミカドテクノス(株)製の2ton真空ヒータープレス 型番MKP−150TV−WH)に挿入し、プレス温度180℃、プレス圧3MPaにて10分間プレスした。その後、積層体を取り出し、常温で1時間放置後、以下の剥離性および艶消し外観を評価した。
(3)剥離性の評価
上記(2)で熱プレスされた積層体について、転写フィルムの基材フィルムと転写層(第1転写層)との間の剥離力を下記方法で測定し、剥離性を評価した。
<剥離力の測定>
積層体を幅25mm×長さ70mmに切り出して測定用サンプルとした。この測定用サンプルについて、引張り試験機にて、300mm/minの速度で、基材フィルム側を180°に引き剥したときの剥離力を測定した。
<剥離性の評価>
A(最良);剥離力が0.15N/25mm未満。
B(良);剥離力が0.15N/25mm以上、0.40N/25mm未満。
C(不可);剥離力が0.40N/50mm以上、または基材フィルムと第1転写層との界面で剥離されず基材フィルムもしくは第1転写層が破壊された場合、または、転写層と被着基材との界面で剥離された場合。
(4)転写層の艶消し外観の評価
上記(2)で熱プレスされた積層体から転写フィルムの基材フィルムを剥離し、転写層(第1転写層)を露出させた。転写層(第1転写層)の露出表面の60度光沢度を以下の方法にて測定した。
<60度光沢度の測定>
JIS−Z−8741(1997年)に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV−5Dを用いて、測定を行った。測定は5回行い、最大値と最小値を除いた平均値を採用し、以下の基準で評価した。
A(最良);60度 光沢度が15未満。
B(良);60度光沢度が15以上30未満。
C(不可);60度光沢度が30以上。
D;基材フィルムと転写層(第1転写層)との界面で剥離できないため評価不能。
(5)各層の厚み
転写フィルムの断面観察用サンプルをマイクロサンプリングシステム(日立製FB−2000A)を使用してFIB法により(具体的には「高分子表面加工学」(岩森暁著)p.118〜119に記載の方法に基づいて)作製した。透過型電子顕微鏡(日立製H−9000UHRII)により、加速電圧300kVとして、断面観察用サンプルの断面を観察し、基材フィルムおよび転写層の厚みを測定した。
(6)基材フィルムに含有する粒子の平均粒子径の測定
基材フィルムの断面を電子顕微鏡で観察し、その断面写真から、無作為に選択した30個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを平均した値を粒子の平均粒子径とした。
[ポリエステル樹脂の製造]
ポリエステルフィルムの製造に用いたポリエステル樹脂を以下に示す。
<ポリエステル樹脂a>
テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、固有粘度0.65のポリエステル樹脂を得た。
<ポリエステル樹脂b>
上記ポリエステル樹脂aに平均粒子径3.5μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度20質量%で含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート粒子マスターを調製した。
<ポリエステル樹脂c>
テレフタル酸100質量部、1,4−ブタンジオール110質量部の混合物を窒素雰囲気下で140℃まで昇温して均一溶液とした後、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.054質量部、モノヒドロキシブチルスズオキサイド0.054質量部を添加し、常法によりエステル化反応を行った。次いで、オルトチタン酸テトラ−n−ブチル0.066質量部を添加して、減圧下で重縮合反応を行い、固有粘度0.88のポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。その後、固相重合を行い固有粘度1.20のポリブチレンテレフタレート樹脂を得た。
<ポリエステル樹脂d>
ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体として、東レ・デュポン(株)社製の「ハイトレル」(登録商標)7247を用いた。
[ポリエステルフィルムの製造]
<製造例1;ポリエステルフィルム1の製造>
下記のA層樹脂組成およびB層樹脂組成を用いて、A層/B層/A層からなる3層積層構成のポリエステルフィルムを以下の要領で製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを50質量%、ポリエステル樹脂bを25質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを75質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
A層およびB層の原料をそれぞれ酸素濃度0.2体積%とした別々の単軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃に設定し、樹脂温度280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度85℃で長手方向に3.1倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。その後、テンター式横延伸機にて延伸前半温度110℃、延伸中盤温度125℃、延伸後半温度140℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理前半220℃、熱処理後半240℃で熱処理を行った後、徐冷温度170℃で幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、総厚みが50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。A層/B層/A層の厚みは、5μm/40μm/5μmであった。
<製造例2;ポリエステルフィルム2の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを63質量%、ポリエステル樹脂bを25質量%、ポリエステル樹脂cを12質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを88質量%、ポリエステル樹脂cを12質量%含む。
<製造例3;ポリエステルフィルム3の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを45質量%、ポリエステル樹脂bを25質量%、ポリエステル樹脂cを30質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを70質量%、ポリエステル樹脂cを30質量%含む。
<製造例4;ポリエステルフィルム4の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを67質量%、ポリエステル樹脂bを8質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを75質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
<製造例5;ポリエステルフィルム5の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを58質量%、ポリエステル樹脂bを25質量%、ポリエステル樹脂dを17質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを83質量%、ポリエステル樹脂dを17質量%含む。
<製造例6;ポリエステルフィルム6の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを43質量%、ポリエステル樹脂bを40質量%、ポリエステル樹脂dを17質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを83質量%、ポリエステル樹脂dを17質量%含む。
<製造例7;ポリエステルフィルム7の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを33質量%、ポリエステル樹脂bを50質量%、ポリエステル樹脂dを17質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを83質量%、ポリエステル樹脂dを17質量%含む。
<製造例8;ポリエステルフィルム8の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを75質量%、ポリエステル樹脂bを25質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを100質量%含む。
<製造例9;ポリエステルフィルム9の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを72質量%、ポリエステル樹脂bを3質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを75質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
<製造例10;ポリエステルフィルム10の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを74質量%、ポリエステル樹脂bを1質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを75質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
<製造例11;ポリエステルフィルム11の製造>
A層およびB層の樹脂組成を下記のように変更する以外は、製造例1と同様にして製造した。
A層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを75質量%、ポリエステル樹脂cを25質量%含む。
B層樹脂組成;ポリエステル樹脂aを88質量%、ポリエステル樹脂cを12質量%含む。
[実施例1]
ポリエステルフィルム1の一方の面に、下記の第1転写層用塗工液p1(活性エネルギー線硬化性組成物)をグラビアコーターで塗布し、100℃で乾燥後、紫外線を400mJ/cm照射し硬化させて第1転写層を形成し、転写フィルムを得た。第1転写層の厚みは1.5μmであった。
<塗工液p1>
下記合成の活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α1)を35質量部、活性エネルギー線硬化性化合物(β)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を65質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%にして塗工液を調製した。
<活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α1)の合成>
撹拌機および温度計を装備したフラスコに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(a)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)の「BHEA」を100質量部、ポリイソシアネート化合物(b)としてジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)の「ミリオネートMT」)を240質量部、高級アルコール(c)としてステアリルアルコール(新日本理化(株)の「コノール30SS」)26質量部を仕込み、100℃まで昇温して7時間保温して反応させ、赤外線吸収スペクトル測定(IR測定)の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、反応を終了させた。
[実施例2]
下記の塗工液p2(活性エネルギー線硬化性性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして転写フィルムを作製した。
<塗工液p2>
下記合成の活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α2)を30質量部、活性エネルギー線硬化性化合物(β)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)を70質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)を10質量部仕込み100℃に昇温してから1時間混合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。この組成物をトルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度4質量%にして塗工液を調製した。
<活性エネルギー線硬化性高級アルキル基含有化合物(α2)の合成>
撹拌機および温度計を装備したフラスコに、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(a)として2−ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒(株)の「BHEA」を100質量部、ポリイソシアネート化合物(b)としてヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)の商品名「HDI」)を86質量部、高級アルコール(c)としてステアリルアルコール(新日本理化(株)の「コノール30SS」)46質量部を仕込み、100℃まで昇温して7時間保温して反応させ、IR測定の結果イソシアネート基が消失したことを確認し、反応を終了させた。
[実施例3]
ポリエステルフィルム1の一方の面に、下記の第1転写層用塗工液p3(熱硬化性組成物)をグラビアコーターで塗布し、100℃で予備乾燥後、160℃で加熱乾燥し、第1転写層を形成して転写フィルムを作製した。第1転写層の厚みは1.5μmであった。
<塗工液p3>
撹拌機、窒素導入管、冷却管、ラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、オクタデシルメタクリレート70質量部、アクリル酸ブチル25質量部、アクリル酸5質量部およびトルエン150質量部を入れ、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部を加え、60℃に加熱して24時間重合反応を行い、アクリル系重合体の粘稠溶液を得た。このアクリル系重合体は、オクタデシルメタクリレートとアクリル酸ブチルとアクリル酸とのランダム共重合体からなり、側鎖に高級アルキル基としてオクタデシル基を有するとともに、官能基としてカルボキシル基を有するものであり、数平均分子量は9.6万であった。
このアクリル系重合体からなる粘稠溶液の100質量部当たり、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン誘導体を2質量部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1質量部とを配合し、よく混合して、塗工液を調製した。
[実施例4]
下記の塗工液p4(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例3と同様にして転写フィルムを作製した。
<塗工液p4>
・高級アルキル基含有化合物として高級アルキル基含有アクリル樹脂(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」(登録商標)HT)を固形分換算で10質量部
・架橋剤;メラミン系架橋剤(住友化学(株)の「スミマール」M66−B)を固形分換算で2.5質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC−700)を固形分換算で1.8質量部
・溶媒;トルエンを400質量部、メチルエチルケトンを130質量部
[実施例5]
下記の塗工液p5(熱硬化性組成物)に変更する以外は、実施例3と同様にして転写フィルムを作製した。
<塗工液p5>
・高級アルキル基含有化合物として高級アルキル基含有アルキド樹脂(日立化成(株)の「テスファイン」(登録商標)303;メラミン系架橋剤を含む)を固形分換算で100質量部
・酸触媒;p−トルエンスルホン酸(日立化成(株)の「ドライヤー」900)を固形分換算で1.2質量部
・溶媒;トルエンを450質量部
[比較例1]
下記の塗工液p6(活性エネルギー線硬化性性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして転写フィルムを作製した。
<塗工液p6>
活性エネルギー線硬化性化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ダイセルサイテック(株)の商品名「DPHA」)100質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184)10質量部を、トルエンとイソプロピルアルコールの混合溶媒(トルエン:IPA=3:1(質量比))で固形分濃度10質量%にして塗工液を調製した。
[比較例2]
下記の塗工液p7(活性エネルギー線硬化性性組成物)に変更する以外は、実施例1と同様にして転写フィルムを作製した。
<塗工液p7>
DIC(株)製の“ユニディック”(登録商標)RC29−117(ポリマー型アクリレート系UV硬化型フィルムコート剤)をメチルエチルケトンにて固形分濃度が2050質量%になるように調整した。
[比較例3]
下記の塗工液p8(熱硬化性性組成物)に変更する以外は、実施例3と同様にして転写フィルムを作製した。
<塗工液p8>
DICグラフィックス(株)製のハードコート剤(製品名「5LC114H」)100質量部と、該ハードコート剤用硬化剤3質量部をメチルエチルケトンにて固形分濃度が30質量%になるように調製した。
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の転写フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2019059121
[実施例11〜17および比較例11〜13]
ポリエステルフィルム2〜11に変更する以外は、実施例1と同様にしてそれぞれの転写フィルムを作製した。詳細を表2に示す。
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の転写フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表2に示す。
Figure 2019059121
[実施例21〜27および比較例21〜23]
ポリエステルフィルム2〜11に変更する以外は、実施例3と同様にしてそれぞれの転写フィルムを作製した。詳細を表3に示す。
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の転写フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2019059121
[実施例31〜35]
実施例1〜5のそれぞれの第1転写層の上に、機能性転写層として下記のハードコート層および接着層をこの順に積層して、それぞれの転写フィルムを作製した。
<ハードコート層の積層>
第1転写層上に、下記の塗工液をグラビアコーターで塗布し、100℃で乾燥後、紫外線を500mJ/cm照射し硬化させてハードコート層を積層した。このハードコート層の厚みは4.0μmであった。
<塗工液>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート58質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)の「UN−901T」)37質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)5質量部を有機溶剤(メチルイソブチルケトン)に溶解して、固形分濃度が20質量%の塗工液を調製した。
<接着層の積層>
上記ハードコート層上に、ホットメルト型接着層(東亞合成(株)製の「アロンメルト」(登録商標)PPET−1303S)を乾燥厚みが1.5μmとなるように積層した。
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の転写フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表4に示す。
Figure 2019059121

Claims (8)

  1. 基材フィルム上に転写層を有する転写フィルムであって、前記基材フィルムの前記転写層側の表面の中心線平均粗さRaが0.30μm以上であり、前記転写層が少なくとも第1転写層を含み、前記第1転写層は転写層のうち最も基材フィルムに近い層であり、前記第1転写層が炭素数8以上のアルキル基を含む化合物を含有することを特徴とする、転写フィルム。
  2. 前記第1転写層が艶消し層である、請求項1に記載の転写フィルム。
  3. 前記第1転写層がメラミン化合物を含有する、請求項1または2に記載の転写フィルム。
  4. 前記第1転写層が、熱硬化性組成物からなる硬化層または活性エネルギー線硬化性組成物からなる硬化層である、請求項1〜3のいずれかに記載の転写フィルム。
  5. 前記第1転写層の厚みが0.3μm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の転写フィルム。
  6. 前記転写層が第1転写層と少なくとも1層の機能性転写層を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の転写フィルム。
  7. 前記基材フィルム上に直接に前記第1転写層が積層されている、請求項1〜6のいずれかに記載の転写フィルム。
  8. 前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1〜7のいずれかに記載の転写フィルム。
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