JP2019053880A - 絶縁電線とその製造方法及び絶縁電線の皮膜形成用水系耐熱性樹脂組成物と絶縁塗料 - Google Patents

絶縁電線とその製造方法及び絶縁電線の皮膜形成用水系耐熱性樹脂組成物と絶縁塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】絶縁電線の導体上に形成される絶縁皮膜として水溶性ポリアミドイミド樹脂を適用するときに、高温焼成後も銅やアルミ等の導体への密着性に優れ、且つ、可とう性や摩耗特性に優れる塗膜を形成することができる絶縁電線と該絶縁電線の製造方法、及び該絶縁電線の皮膜形成用として使用するときに環境にやさしい水系耐熱性樹脂組成物と、この水系耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料を提供する。【解決手段】本発明の絶縁電線は、導体上に形成される絶縁皮膜としてポリアミドイミド樹脂を有する絶縁電線であって、前記ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が20000〜30000であり、前記ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基とアルキルアミンとの反応によって形成される親水性基を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁電線とその製造方法及び前記絶縁電線の皮膜形成用水系耐熱性樹脂組成物と絶縁塗料に関する。
近年、環境保全面、安全衛生面、経済性及び塗装作業性等の面から有機溶媒に代わり媒体に水を使用する水性樹脂溶液が注目され、樹脂末端に残存するカルボキシル基と塩基性化合物を作用させるポリアミドイミド樹脂の水溶化方法が報告されており(例えば、特許文献1)、様々な用途に適用されている。
耐熱性、耐薬品性および耐加水分解性に優れるなどの理由で、ポリアミドイミド樹脂は、重要な絶縁材料として、種々の用途に使用されている。特に、自動車用モータ(ハイブリッド自動車用モータを含む)はトランスミッションオイル存在下に設置されることが多く、モータへ用いられる巻線への要求特性として、ミッションオイルに侵されないこと、また、オイル中の水分による加水分解を抑制することが必要であり、高温下での使用に耐える必要もある。このような観点から、ポリアミドイミド樹脂が巻線用の絶縁塗料として欠かせないものとなっている。
一般的に、ポリアミドイミド樹脂を用いた絶縁塗料を用いてエナメル線等の絶縁電線を製造する場合には、ポリアミドイミド樹脂をN−メチル−2−ピロリドン等の高沸点極性有機溶剤に溶解した塗料をエナメル線に塗布後、300〜500℃近辺の高温で焼成することが必要となる。
特開2010−111844号公報
近年、絶縁電線の皮膜材として一般的に使用される有機溶剤型のポリアミドイミド樹脂に代えて、環境に対する負荷を低減する目的から水溶性ポリアミドイミド樹脂が検討されるようになっている。しかしながら、従来の水溶性ポリアミドイミド樹脂を用いる場合、絶縁エナメル線の皮膜は、高温焼成後に銅やアルミ等の導体との密着性、及び可とう性や摩耗性が劣るという問題があった。
本発明の目的は、導体上に形成される絶縁皮膜として水溶性ポリアミドイミド樹脂を適用するときに、高温焼成後も銅やアルミ等の導体への密着性に優れ、且つ、可とう性や摩耗特性に優れる塗膜を形成することができる絶縁電線とその製造方法、及び前記絶縁電線の皮膜形成用として使用できる、環境にやさしい水系耐熱性樹脂組成物と、この水系耐熱性樹脂組成物を塗膜成分としてなる塗料を提供することにある。
高温焼成後も銅やアルミ等の導体への密着性に優れ、且つ、可とう性や摩耗特性に優れる塗膜を形成することのできる水系耐熱性樹脂組成物に関して検討した結果、前記水系耐熱性樹脂組成物としてポリアミドイミド樹脂に着目し、該ポリアミドイミド樹脂に親水性基を導入して水溶化する際に用いる塩基性化合物としてアルキルアミンを使用すること、及び、前記ポリアミドイミド樹脂に対して、適正な分子量を持たせることによって、従来の水系ポリアミドイミド樹脂から得られた塗膜と比較して、高温焼成後も銅やアルミ等の導体への密着性を大きく向上させ、且つ、可とう性や摩耗性も向上させることが可能であることを見出して本発明に至った。
すなわち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)導体上に形成される絶縁皮膜としてポリアミドイミド樹脂を有する絶縁電線であって、前記ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が20000〜30000であり、前記ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基とアルキルアミンとの反応によって形成される親水性基を有することを特徴とする絶縁電線。
(2)前記ポリアミドイミド樹脂が、前記アルキルアミンを、前記ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して2.5〜5当量で反応させることにより形成される親水性基を有することを特徴とする前記(1)に記載の絶縁電線。
(3)前記ポリアミドイミド樹脂が、極性溶媒中で、アミン成分としてジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、酸成分として三塩基酸無水物又は三塩基酸無水物クロライドとを共重合させて得られてなるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の絶縁電線。
(4)(A)数平均分子量が20000〜30000であるポリアミドイミド樹脂と、(B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤と、を含む水系耐熱性樹脂組成物を均一な溶液として調整した絶縁塗料を、導体上に塗布、焼付けることにより前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の絶縁電線を製造する絶縁電線の製造方法。
(5)前記(4)に記載の絶縁電線の製造に使用する水系耐熱性樹脂組成物であって、(A)数平均分子量が20000〜30000であるポリアミドイミド樹脂と、((B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤とを含むことを特徴とする水系耐熱性樹脂組成物。
(6)(B)アルキルアミンの配合量が、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、2.5〜5当量である前記(5)に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
(7)(C)水の含有量が、(C)水と、(D)有機溶剤との合計質量に対して、30〜80質量%である前記(5)又は(6)に記載の絶縁塗料用水系耐熱性樹脂組成物。(8)(D)有機溶剤の含有量が、(C)水と、(D)有機溶剤との合計質量に対して、20〜70質量%である前記(5)〜(7)のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
(9)(A)ポリアミドイミド樹脂が、極性溶媒中で、アミン成分としてジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、酸成分として三塩基酸無水物又は三塩基酸無水物クロライドとを共重合させて得られてなるポリアミドイミド樹脂である前記(5)〜(8)のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
(10)(A)ポリアミドイミド樹脂の、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価が、25〜50mgKOH/gである前記(5)〜(9)のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
(11)前記(5)〜(10)のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物を塗膜成分として有する絶縁塗料。
本発明によれば、数平均分子量を最適化したポリアミドイミド樹脂を用いて、該ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基と、特定の塩基性化合物であるアルキルアミンとの反応により親水性基を導入した水溶性ポリアミドイミド樹脂を導体上の絶縁皮膜として形成することにより、高温焼成後も銅やアルミ等の導体への密着性に優れ、且つ、可とう性や摩耗特性に優れる塗膜を有する絶電電線を得ることができる。また、前記水溶性ポリアミドイミド樹脂は、水により任意の濃度への希釈が可能であり、ポリアミドイミド樹脂を使用した環境に優しい水系塗料として使用できるため、本発明の絶縁電線を製造するときに環境への負荷を小さくできる。これらの特徴を有する本発明の水系耐熱性樹脂組成物は、絶縁電線用の皮膜形成だけでなく、基板や基体との密着性に優れる耐熱性樹脂コーティング膜の形成が求められる電子・電気機器等の幅広い分野で好適に使用することができる。
本発明に係る絶縁電線は、導体上に形成される絶縁皮膜としてポリアミドイミド樹脂を有する絶縁電線であって、前記ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が20000〜30000であり、前記ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基とアルキルアミンとの反応によって形成される親水性基を有することを特徴とする。このような特徴を有する本発明の絶縁電線は、(A)数平均分子量が20000〜30000であるポリアミドイミド樹脂と、(B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤と、を含む水系耐熱性樹脂組成物を均一な溶液として調整した絶縁塗料を、導体上に塗布、焼付けることにより製造することができる。
<水系耐熱性樹脂組成物>
前記絶縁塗料に含まれる水系耐熱性樹脂組成物は、(A)数平均分子量が20000〜30000である変性ポリアミドイミド樹脂と、(B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤とを含むことを特徴としている。
本発明に係る(A)ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物若しくはその誘導体(「酸成分」ということがある)とジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物とを反応させて得られる。
上記トリカルボン酸無水物としては、下記一般式(I)又は(II)で示される酸無水物基を有する3価のカルボン酸無水物があるが、イソシアネート基又はアミノ基と反応する酸無水物基を有する3価のカルボン酸であれば、その誘導体を含め特に制限はない。耐熱性を考慮すると芳香族基を有するものが好ましく、耐熱性、コスト面等を考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。これらは、目的に応じて単独又は混合して用いられる。
Figure 2019053880
(Yは−CH−、−CO−、−SO−又は−O−を示す。)
Figure 2019053880
また、酸成分の一部に、必要に応じて、ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、m−ターフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカルボン酸二無水物等などのテトラカルボン酸二無水物などを使用することができる。
また、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、下記一般式(III)、(IV)、(V)で示される二価のアミノ基又はイソシアネート基を有する芳香族化合物が使用できる。
Figure 2019053880
Figure 2019053880
Figure 2019053880
[これらの式中、Rはアルキル基、水酸基又はアルコキシ基であり、Rはアミノ基またはイソシアネート基である。ここで、Rのアルキル基又はアルコキシ基としては炭素数1〜20のものが好ましい。]
一般式(III)、(IV)又は(V)で示される芳香族ジイソシアネート化合物又は芳香族ジアミノ化合物として、例えば、4,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4′−ジイソシアナトビフェニル、3,3′−ジイソシアナトビフェニル、3,4′−ジイソシアナトビフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジイソシアナト−2,2′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジエチルビフェニル、4,4′−ジイソシアナト−2,2′−ジエチルビフェニル、4,4′−ジイソシアナト−3,3′−ジメトキシビフェニル、4,4′−ジイソシアナト−2,2′−ジメトキシビフェニル、1,5−ジイソシアナトナフタレン、2,6−ジイソシアナトナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、3,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジアミノ−2,2′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジエチルビフェニル、4,4′−ジアミノ−2,2′−ジエチルビフェニル、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメトキシビフェニル、4,4′−ジアミノ−2,2′−ジメトキシビフェニル、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等があり、これらを単独でも、また、組み合わせても使用することができる。
また、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、その他の芳香族ジイソシアネート化合物又は芳香族ジアミノ化合物、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジイソシアナトジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4′−イソシアナトフェノキシ)フェニル]プロパン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4′−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等を使用することができる。
ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノイソホロン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,4−ジアミノトランスシクロヘキサン、水添m−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアナトイソホロン、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,4−ジイソシアナトトランスシクロヘキサン、水添m−キシリレンジイソシアネート等の脂肪族若しくは脂環式イソシアネート化合物を使用することができるが、これらを使用するときは、前記した芳香族ジイソシアネート化合物又は芳香族ジアミノ化合物を併用することが好ましい。これらの使用量は、得られる樹脂の耐熱性等の観点から、ジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物全量の50モル%以下が好ましい。3官能以上のポリイソシアネート化合物を併用することもできる。
本発明におけるジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物としては、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面等のバランスを考慮すれば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
また、経日変化を避けるために必要な場合ブロック剤でイソシアネート基を安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としてはアルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
(a)成分(前記酸成分を意味する)と(b)成分(前記したジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物の成分を意味する)とは、酸成分のカルボキシル基及び酸無水物基、並びに反応性の水酸基が存在するときは、それらの官能基の総数に対するジイソシアネート化合物若しくはジアミノ化合物のイソシアネート基及びアミノ基の総数の比が0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が小さくなりすぎると樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向があり、この比が大きくなりすぎると、発泡反応が激しくなり、未反応物の残存量が多くなり、樹脂の安定性が悪くなる傾向がある。
また、(B)アルキルアミンは、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、2.5〜5当量用いると好ましい。2.5当量以上であると樹脂の水溶化が容易となり、さらに、2.5等量以上で5当量以下であるときに高温焼成後の銅やアルミ等の導体への密着性や、摩耗性が向上する傾向にある。これらの観点から、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、特に、3.5〜4.5当量とすることが好ましい。
合成溶媒の反応時の使用量は、(a)成分と(b)成分の合計量100質量部に対して、100〜300質量部とすることが好ましく、150〜250質量部とすることがより好ましい。合成溶媒の使用量が少なすぎると、発泡反応が起こりやすくなり、多すぎると合成時間が長くなる傾向があり、また、樹脂濃度が低くなるため、合成溶媒を使用して塗料化した際に厚膜化しにくくなる傾向がある。合成溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N′−ジメチルプロピレン尿素〔1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジミン−2(1H)−オン〕、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン等の極性溶媒、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などが使用される。
ポリアミドイミド樹脂の合成条件は、多様であり、一概に特定できないが、通常、80
〜180℃の温度で行われ、空気中の水分の影響を低減するため、窒素等の雰囲気下で行
うことが好ましい。
上記方法によって合成された(A)ポリアミドイミド樹脂は、例えば、前記溶媒に溶解
したポリアミドイミド樹脂溶液として得られる。(A)ポリアミドイミド樹脂を、本発明
の水系耐熱性樹脂組成物に用いる場合は、前記ポリアミドイミド樹脂溶液の状態で用いる
ことも可能である。
本発明で用いる(A)ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が20000〜3000
0のものを使用する。数平均分子量が20000未満では、高温焼成後に磨耗性や耐熱性等の諸特性が低下する傾向があり、数平均分子量が30000を超えると、水への溶解性が低下すると共に、導体との密着性も低下する。これらの観点から、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、特に、22000〜27000とすることが好ましく、24000〜26000とすることがより好ましい。
尚、(A)ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、樹脂合成時にサンプリングしてゲ
ルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用い
て測定し、目標の数平均分子量になるまで合成を継続することにより、上記範囲に調整することができる。
本発明で用いる(A)ポリアミドイミド樹脂は、カルボキシル基及び開環させた酸無水
物基を合わせた酸価が25〜50mgKOH/gであることが好ましい。酸価が25mg
KOH/g以上であると、塩基性化合物と反応するカルボキシル基が十分となり、水溶化
が容易になると共に、高温焼成後の陶器基材やアルミ基材への密着性も向上する傾向にあ
る。また、酸価が、50mgKOH/g以下であると、最終的に得られる水系耐熱性樹脂
組成物が、経日にてゲル化しにくくなる。これらの観点から、カルボキシル基及び開環さ
せた酸無水物基を合わせた酸価は、特に、32〜42mgKOH/gとすることがより好
ましい。
尚、(A)ポリアミドイミド樹脂のカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせ
た酸価は、以下の方法で得ることができる。先ず、(A)ポリアミドイミド樹脂を0.5
gとり、これに1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを0.15g加え、更に
、N−メチル−2−ピロリドンを60g、及びイオン交換水を1ml加え、(A)ポリア
ミドイミド樹脂が、完全に溶解するまで攪拌する。これを、0.05モル/l(リットル)のエタノール性水酸化カリウム溶液を使用して、電位差滴定装置で滴定し、ポリアミドイミド樹脂の、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価を得る。
本発明で使用する(B)アルキルアミンは、(A)ポリアミドイミド樹脂の水溶化を行うための塩基性化合物として使用される。(B)アルキルアミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N′,N′−トリメチルアミノエチルピペラジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられ、中でもトリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミンが好ましい。
また、アルキルアミンと併用する形で、N−メチルモルフォリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、シクロヘキサノールアミン、N−メチルシクロヘキサノールアミン、N−ベンジルエタノールアミン等の、極性基を有するアミン等を使用することが可能である。上記の塩基性化合物以外に、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の苛性アルカリ又はアンモニア水等を併用してもよい。
(B)アルキルアミンは、(A)ポリアミドイミド樹脂の末端にあるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基と塩を形成して親水性基となる。塩形成する手法としては、(A)ポリアミドイミド樹脂成分、(B)アルキルアミン成分、及び、後述の(C)水を、10〜150℃にて混ぜ合わせてもよいし、(A)ポリアミドイミド樹脂成分、(B)アルキルアミン成分を混ぜ合わせた後に、上記温度にて後述の(C)水を加えてもよい。塩を形成させる温度は、30〜100℃がより好ましい。
本発明の水系耐熱性樹脂組成物としては、(C)水を含有するが、(C)水としては、
イオン交換水が好ましく用いられる。(C)水成分の配合量は、(C)水成分と、後述の
(D)有機溶剤成分との合計質量に対して、好ましくは、30〜80質量%配合される。
この配合量が、30質量%以上では、含有する水が十分であることから水溶性が向上し、
80質量%以下では、ゲル化若しくは濁り等を生じにくくなる傾向がある。これらの観点
から、特に、40〜70質量%とすることがより好ましい。
本発明の水系耐熱性樹脂組成物は、上記(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)アルキルアミン及び(C)水に加えて、(D)有機溶剤を含有する。(D)有機溶剤としては、特に制限はないが、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。(A)ポリアミドイミド樹脂を溶媒に溶解してポリアミドイミド樹脂溶液として用いる場合は、(D)有機溶剤として、同様の有機溶剤を用いることも可能である。(D)有機溶剤の配合量としては、(C)水成分と、(D)有機溶剤成分との合計質量に対して、20〜70質量%であることが好ましい。
<絶縁塗料>
本発明の絶縁塗料は、基本的に、上記で述べた(A)数平均分子量が20000〜30000であるポリアミドイミド樹脂と、(B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤とを含む水系耐熱性樹脂組成物を均一な溶液として調整することにより得られる。さらに必要に応じて、本発明の水溶性ポリイミド樹脂に着色剤等の添加剤を添加し、前記の合成溶媒と同様の溶媒に溶解、または、該溶媒で希釈され、適当な粘度に調整して絶縁塗料とすることができる。塗料とする場合、一般に固形分は10〜50質量%とされる。このような絶縁塗料の作製には、水溶性ポリアミドイミド樹脂の合成溶液を使用してもよい。
<絶縁電線の製造方法>
本発明の絶縁塗料は、被塗物に塗装後、230〜400℃で20〜60分の熱処理で乾燥・硬化させることができる。低温で硬化させると溶剤が残り、基材を保護する塗膜特性が劣る可能性がある。また、250℃未満の硬化では、塗膜の硬化が不十分で、極性溶媒に溶解又は膨潤する可能性がある。加熱時間は20分未満であると塗膜に残存溶媒がのこり、基材に塗布された塗膜の特性が劣ることがあり、60分を超えると、長期に熱を加えることにより、塗料として固体潤滑剤等を加えたときに副反応を起こすことがあり、塗膜の特性を劣化させることがある。
前記被塗物としては、銅線等の金属線その他の絶縁性が付与されるものがある。金属線を使用した場合、耐薬品性、耐加水分解性、耐熱性、絶縁破壊電圧特性などに優れたエナメル線等の絶縁電線が得られる。金属線の断面形状は、円形であっても、正方形又は矩形状若しくは平角状であってもよい。本発明の絶縁電線は、本発明のポリアミドイミド樹脂によって形成される絶縁皮膜の上下には密着性向上のための密着層等の他の皮膜を使用してもよく、また、前記絶縁皮膜の上に自己潤滑層や自己融着層等を設けてもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
無水トリメリット酸:1056.7g、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート:
1390.2g、N−メチル−2−ピロリドン:2169.9gを、温度計、攪拌機、冷
却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、2時間かけて徐々
に昇温して、130℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しなが
ら、130℃を保持し、このまま6時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイ
ミド樹脂溶液を得た。
得られたポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は50質量%で、粘
度(30℃)は182.4Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子
量は26000で、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価は35mg
KOH/gであった。尚、数平均分子量は、次の条件にて測定した。
機種:株式会社日立製作所製 商品名:L6000
検出器:株式会社日立製作所製 商品名:L4000型UV
波長:270nm
データ処理機:ATT 8
カラム:日立化成工業株式会社製 商品名:Gelpack GL−S300MDT−
5×2
カラムサイズ:直径8mm×300mm
溶媒:DMF/THF=1/1(リットル)+リン酸0.06M+臭化リチウム0.0
6M 試料濃度:5mg/1ml
注入量:5μl
圧力:4.8×106Pa(49kgf/cm2)
流量:1.0ml/min
このポリアミドイミド樹脂溶液900gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコ
に入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら徐々に昇温して70℃まで上げた。70℃
に達したところで、トリエチルアミンを127.8g(4.5当量)添加し、70℃に保
ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら、徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオ
ン交換水が3533.0g(溶剤比70質量%)となるまで加えて、透明で均一な水系耐
熱性樹脂組成物を得た。
(実施例2)
無水トリメリット酸:480.3g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート:
669.4g、N−メチル−2−ピロリドン:1061.3gを、温度計、攪拌機、冷却
管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、1時間かけて徐々に
昇温して、90℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら9
0℃を保ち、加熱開始から8時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹
脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は50質量%で、粘度(
30℃)は161.0Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は
22000で、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価は45mgKO
H/gであった。
このポリアミドイミド樹脂溶液:500gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラス
コに入れ、乾燥させた窒素気流中で、攪拌しながら徐々に昇温して、90℃まで上げた。
90℃に達したところで、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミンを81.
6g(3.5当量)添加し、90℃に保ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら、徐々
にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交換水が、459.2g(溶剤比50質量%)
となるまで加えて、透明で均一な水系耐熱性樹脂組成物を得た。
(実施例3)
無水トリメリット酸:672.4g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート:
902.2g、N−メチル−2−ピロリドン:1705.8gを、温度計、攪拌機、冷却
管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で、攪拌しながら1時間かけて徐々に
昇温して、120℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら
、徐々に昇温して150℃まで上げ、加熱開始から5時間加熱を続けた後、反応を停止さ
せ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は40質量%で、粘度(
30℃)は156.6Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は
27000で、カルボキシル基及び酸無水物基を合わせた酸価は32mgKOH/gであ
った。
このポリアミドイミド樹脂溶液200gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコ
に入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、徐々に昇温して50℃まで上げた。50
℃に達したところでトリブチルアミンを、42.3g(5当量)添加し、50℃に保ちな
がら十分に攪拌した後、攪拌しながら、徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交
換水が、94.2g(溶剤比40質量%)となるまで加えて、透明で均一な水系耐熱性樹
脂組成物を得た。
(実施例4)
無水トリメリット酸:1216.3g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート
:1216.3g、N−メチル−2−ピロリドン:1918.2gを、温度計、攪拌機、
冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、1時間かけて徐
々に昇温して、120℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しな
がら120℃を保ち、加熱開始から7時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミド
イミド樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は50質量%で、粘度(
30℃)は180.8Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は
29000で、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価は35mgKO
H/gであった。
このポリアミドイミド樹脂溶液700gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコ
に入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、徐々に昇温して80℃まで上げた。80
℃に達したところでトリエチルアミンを477.3g(4.7当量)添加し、80℃に保
ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら、徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオ
ン交換水が、600.0g(溶剤比65質量%)となるまで加えて、透明で均一な水系耐
熱性樹脂組成物を得た。
(比較例1)
無水トリメリット酸:1106.2g、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート:
1455.8g、N−メチル−2−ピロリドン:2562.0gを、温度計、攪拌機、冷
却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、2時間かけて徐々
に昇温して130℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら
130℃を保持し、このまま6時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド
樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は50質量%で、粘度(
30℃)は85.0Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は1
7000で、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価は、40mgKO
H/gであった。
このポリアミドイミド樹脂溶液2700gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラス
コに入れ、乾燥させた窒素気流中で、攪拌しながら徐々に昇温して50℃まで上げた。5
0℃に達したところでトリエチルアミンを447.1g(4当量)添加し、50℃に保ち
ながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交
換水が、1348.8g(溶剤比50質量%)となるまで加えて、透明で均一な水系耐熱
性樹脂組成物を得た。
(比較例2)
無水トリメリット酸:382.9g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート:
503.9g、N−メチル−2−ピロリドン:886.8gを、温度計、攪拌機、冷却管
を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、1時間かけて徐々に昇
温して80℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら80℃
を保ち、加熱開始から7時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶
液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は50質量%で、粘度(
30℃)は82.6Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は1
5000で、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価は、50mgKO
H/gであった。
このポリアミドイミド樹脂溶液200gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコ
に入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、徐々に昇温して90℃まで上げた。90
℃に達したところでN−メチルモルホリンを70.8g(8当量)添加し、90℃に保ち
ながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交
換水が180.5g(溶剤比65質量%)となるまで加えて、透明で均一な水系耐熱性樹
脂組成物を得た。
(比較例3)
無水トリメリット酸:233.8g、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸:98.0
g、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート:384.6g、N−メチル−2−ピ
ロリドン:1671.6gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥さ
せた窒素気流中で攪拌しながら、1時間かけて徐々に昇温して120℃まで上げた。反応
により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら、徐々に昇温して150℃まで上げ、
加熱開始から5時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た

このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は30質量%で、粘度(
30℃)は2.1Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は23
000で、カルボキシル基及び酸無水物基を合わせた酸価は30mgKOH/gであった

このポリアミドイミド樹脂溶液200gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラスコ
に入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、徐々に昇温して110℃まで上げた。1
10℃に達したところでN,N−ジメチルエタノールアミンを17.6g(6当量)添加
し、110℃に保ちながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた
。最終的にイオン交換水が217.6g(溶剤比60質量%)となるまで加えて、透明で
均一な水系耐熱性樹脂組成物を得た。
(比較例4)
無水トリメリット酸:999.0g、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート:1
314.4g、N−メチル−2−ピロリドン:2051.5gを、温度計、攪拌機、冷却
管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、2時間かけて徐々に
昇温して140℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら、
140℃を保持し、このまま8時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド
樹脂溶液を得た。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃−2h)は45質量%で、粘度(
30℃)は153.4Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は
40000で、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価は25mgKO
H/gであった。
このポリアミドイミド樹脂溶液1000gを、温度計、攪拌機、冷却管を備えたフラス
コに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら、徐々に昇温して60℃まで上げた。6
0℃に達したところでトリエチルアミンを101.5g(5当量)添加し、60℃に保ち
ながら十分に攪拌した後、攪拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交
換水が1189.0g(溶剤比70質量%)となるまで加えて、透明で均一な水系耐熱性
樹脂組成物を得た。
〔エナメル線の製造例〕
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた水系耐熱性樹脂組成物を用いて下記に示す焼付け条件に従って直径1.0mmの銅線に塗布し、焼付けを行い、絶縁電線であるエナメル線を製造した。
〔焼付条件〕
塗装回数:ダイス8回
焼付け炉:熱風式竪炉(炉長5m)
炉温:入口/出口=320℃/430℃
線速:16m/分
得られたエナメル線皮膜は、いずれも外観上良好であった。各エナメル線皮膜の特性を下記の方法により試験し、結果を表1に示した。
(1)外観:目視により、樹脂組成物ワニスの外観及び塗膜の濁り、表面の肌荒れを調べた。
(2)一方向式耐摩耗性:JIS C3216−3に準じて行った。
(3)密着性:JIS C3216‐5JAに準じて行った。
(4)可とう性:JIS C3216−3JAに準じて調べた。
(5)絶縁破壊電圧:JIS C3216−5JA(2個より法)に準じて調べた。
なお、表1において、(A)ポリアミドイミド樹脂の酸価は、該樹脂のカルボキシル基
及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価であり、(B)アルキルアミンの配合量(当量
)は、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物
基を合わせた酸価に対しての数値であり、(C)水の含有量及び(D)有機溶剤の含有量
は、それぞれ(C)水と(D)有機溶剤とを合わせた合計質量に対する数値である。
下記表1において、実用的に使用できるエナメル線の評価基準は、一方向式耐摩耗性が10N以上で、可とう性が2d以下であり、密着性評価として皮膜浮きが7mm以下である。また、絶縁破壊電圧は12kV以上が好ましい。
Figure 2019053880
表1より、実施例1〜4で得られたエナメル線(絶縁電線)は、比較例1〜4で得られたエナメル線(絶縁電線)と比較して、可とう性、密着性および一方向摩耗特性が向上しており、しかも絶縁破壊電圧も良好であることが分かる。
表1において実施例1〜4を比較例2〜3と対比すると、本発明のエナメル線は、アルキルアミンとの反応によってポリアミドイミド樹脂に導入される親水性基が、摩耗性と密着性の向上に大きく寄与することが確認できる。また、ポリアミドイミド樹脂はアルキルアミンとの反応によって形成される親水性基を有していても、数平均分子量が20000未満である場合(比較例1)は、摩耗性、可とう性及び密着性が実用レベルに到達することができなかった。一方、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量が30000を超える場合(比較例4)は、摩耗性及び可とう性がやや向上するものの、密着性が劣っていた。さらに、水への溶解性も低下する傾向にあった。このように、本発明の絶縁電線は、使用するポリアミドイミド樹脂の数平均分子量を2000〜30000の範囲にする必要がある。
以上のように、本発明の絶縁電線は、特定の数平均分子量を有するポリアミドイミド樹脂とアルキルアミンとの反応によって形成される親水性基を有する水溶性ポリアミドイミド樹脂を用いて導体上の皮膜を形成することにより、高温焼成後も銅やアルミ等の導体への密着性に優れ、且つ、可とう性や摩耗特性に優れる。さらに、前記水溶性ポリアミドイミド樹脂は、水により任意の濃度への希釈が可能であり、ポリアミドイミド樹脂を使用した環境に優しい水系塗料として使用できるため、本発明の絶縁電線を製造するときに環境への負荷を小さくできる。

Claims (11)

  1. 導体上に形成される絶縁皮膜としてポリアミドイミド樹脂を有する絶縁電線であって、
    前記ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が20000〜30000であり、前記ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基とアルキルアミンとの反応によって形成される親水性基を有することを特徴とする絶縁電線。
  2. 前記ポリアミドイミド樹脂が、前記アルキルアミンを、前記ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して2.5〜5当量で反応させることにより形成される親水性基を有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記ポリアミドイミド樹脂が、極性溶媒中で、アミン成分としてジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、酸成分として三塩基酸無水物又は三塩基酸無水物クロライドとを共重合させて得られてなるポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁電線。
  4. (A)数平均分子量が20000〜30000であるポリアミドイミド樹脂と、(B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤と、を含む水系耐熱性樹脂組成物を均一な溶液として調整した絶縁塗料を、導体上に塗布、焼付けることにより請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁電線を製造する絶縁電線の製造方法。
  5. 請求項4に記載の絶縁電線の製造に使用する水系耐熱性樹脂組成物であって、(A)数平均分子量が20000〜30000であるポリアミドイミド樹脂と、(B)アルキルアミンと、(C)水と、(D)有機溶剤とを含むことを特徴とする水系耐熱性樹脂組成物。
  6. (B)アルキルアミンの配合量が、(A)ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、2.5〜5当量である請求項5に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
  7. (C)水の含有量が、(C)水と、(D)有機溶剤との合計質量に対して、30〜80質量%である請求項5又は6に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
  8. (D)有機溶剤の含有量が、(C)水と、(D)有機溶剤との合計質量に対して、20〜70質量%である請求項5〜7のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
  9. (A)ポリアミドイミド樹脂が、極性溶媒中で、アミン成分としてジイソシアネート化合物又はジアミン化合物と、酸成分として三塩基酸無水物又は三塩基酸無水物クロライドとを共重合させて得られてなるポリアミドイミド樹脂である請求項5〜8のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
  10. (A)ポリアミドイミド樹脂の、カルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価が、25〜50mgKOH/gである請求項5〜9のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物。
  11. 請求項5〜10のいずれか一項に記載の水系耐熱性樹脂組成物を塗膜成分として有する絶縁塗料。
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