JP2019052344A - 円筒形スパッタリングターゲットの製造方法及び円筒形スパッタリングターゲット - Google Patents

円筒形スパッタリングターゲットの製造方法及び円筒形スパッタリングターゲット Download PDF

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Abstract

【課題】ターゲット材とバッキングチューブとの間のクリアランスの下端部における接合層の接合率を向上させ、接合強度を高めることが可能な円筒形スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。【解決手段】円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と円筒状のバッキングチューブとのクリアランスに溶融した接合材が充填される円筒形スパッタリングターゲットの製造方法であって、ターゲット材の下端面に円筒状の第1のダミーパイプを連結し、ターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に設置する配置工程S1と、第1のダミーパイプが連結されたターゲット材と、バッキングチューブとの間のクリアランスに接合材を充填する充填工程S3と、接合材を冷却し、ターゲット材とバッキングチューブとを接合する接合工程S4とを有する。【選択図】図2

Description

本発明は、マグネトロン型回転カソードスパッタリング装置によるスパッタリングに使用される、円筒形スパッタリングターゲットの製造方法及び円筒形スパッタリングターゲットに関する。
従来から、スパッタリングターゲットとしては、平板状のターゲット材をバッキングプレートに接合した平板形スパッタリングターゲットが一般的に利用されている。平板形スパッタリングターゲットを使用して、マグネトロンスパッタリング法によりスパッタリングを行った場合におけるターゲット材の使用効率は、20%〜30%に留まっている。その理由は、マグネトロンスパッタリング法では磁場によってプラズマをターゲット材の特定箇所に集中して衝突させるため、ターゲット材の表面の特定箇所にエロージョン(erosion)が進行する現象が起こり、ターゲット材の最深部がバッキングプレートまで達したところで、ターゲット材の寿命となってしまうためである。
この問題に対して、スパッタリングターゲットの形状を円筒形にすることで、ターゲット材の使用効率を上げることが提案されている。この方法は、円筒形のバッキングチューブと、その外周部に形成された円筒形のターゲット材とからなる円筒形スパッタリングターゲットを用い、バッキングチューブの内側に磁場発生設備と冷却設備を設置して、円筒形スパッタリングターゲットを回転させながらスパッタリングを行うものである。この方法により、ターゲット材の使用効率を60%〜70%にまで高めることができるとされている。
円筒形スパッタリングターゲットにおけるターゲット材の材料としては、円筒形状への加工が容易で機械的強度の高い金属材料が広く使用されているものの、セラミックス材料については、機械的強度が低く脆いという特性から、未だ普及するに至っていない。
現在、セラミックス製の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Pressing)により円筒形セラミックス成形体を成形し、これを焼結することにより円筒形セラミックス焼結体を得ている。そして、この製造方法では、円筒形セラミックス焼結体をバッキングチューブと接合材を用いてボンディング(接合)することにより、円筒形スパッタリングターゲットを形成することが一般的になっている。
円筒形スパッタリングターゲットの製造方法において、通常、オーステナイト系ステンレス鋼、チタン等の金属製のバッキングチューブが使用される。円筒形ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスは、通常1.5mm以下であり、このクリアランスを均等に保ち、接合材を隙間なく充填することが重要である。
例えば、特許文献1では、円筒形ターゲット材を垂直に積み上げ、バッキングチューブとの間に生じたクリアランスに複数のスペーサーを設けることでクリアランスを均等に保ち、接合材を流し込む方法が開示されている。
特開2011−252237号公報
上述した特許文献1の製造方法では、バッキングチューブの外周面上に垂直に円筒形ターゲット材を積み重ねた円筒形基材を加熱し、その後、接合材を上方から円筒形ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに流し込んでいる。この時、クリアランスの最下部は、架台や耐熱Oリング等が配置されており、これらは、バッキングチューブ等と比べ熱伝導率などが劣り、十分に加熱されず、接合材を完全にクリアランスに充填できない場合がある。これは、クリアランスの最下部には、空隙が発生しやすいからである。例えば、最下部の底面のターゲット材の内周面とクリアランスに充填された接合材の間や、バッキングチューブと接合材の間にリング状の空隙ができることがある。特に、最下部の底面から10mm以内の高さ位置で発生しやすい。
このため、バンドヒータなどを使用する場合には、クリアランスの最下部だけを強く加熱するなどの工夫が必要である。しかしながら、上述したように、架台や耐熱Oリング等の熱伝導率が低いため、ターゲット材の最下部のみの温度を制御することが難しく、ターゲット材を過剰加熱し破損したりするおそれがある。また、ターゲット材を破損するまでもなく、ターゲット材の上端側と下端側とでは熱膨張率が異なるために、冷却時においてターゲット材にクラックが入ってしまう。このように、円筒形スパッタリングターゲットの接合方法においては、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスの最下部にリング状の空隙を発生させないようにするという要請がある。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて考案されたものであり、ターゲット材とバッキングチューブとの間のクリアランスの下端部における接合層の接合率を向上させ、接合強度を高めることが可能な、新規かつ改良された円筒形スパッタリングターゲットの製造方法及び円筒形スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
即ち、上記目的を達成するための本発明の一態様では、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と円筒状のバッキングチューブとのクリアランスに溶融した接合材が充填される円筒形スパッタリングターゲットの製造方法であって、前記ターゲット材の下端面に円筒状の第1のダミーパイプを連結し、前記ターゲット材の中空部に前記バッキングチューブを同軸に設置する配置工程と、前記第1のダミーパイプが連結された前記ターゲット材と、前記バッキングチューブとの間のクリアランスに前記接合材を充填する充填工程と、前記接合材を冷却し、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを接合する接合工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の一態様では、前記配置工程において、前記ターゲット材の下端面に前記第1のダミーパイプを連結し、さらに該ターゲット材の上端面に円筒状からなる第2のダミーパイプを連結することが好ましい。
また、本発明の一態様では、前記充填工程において、前記第2のダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに該第2のダミーパイプの所定の高さ位置まで前記接合材をさらに充填することが好ましい。
また、本発明の一態様では、前記ダミーパイプの長さは20mm以上であることが好ましい。
また、本発明の一態様では、前記接合工程の後に、前記接合材の冷却により形成された接合層の両端面を平滑に切削する切削工程をさらに設けることが好ましい。
さらに、本発明の他の態様では、スパッタリングで使用される円筒形スパッタリングターゲットであって、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と、前記ターゲット材の内周面側に有する中空部に、同軸に配置するバッキングチューブと、前記ターゲット材および前記バッキングチューブの間のクリアランスに形成される接合層とを備え、前記接合層の両端面は、平滑な面で形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、ターゲット材とバッキングチューブとの間のクリアランスの下端部における接合層の接合率を向上させ、接合強度を高めることができる。
本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの概略断面図である。 第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。 (A)ないし(E)は、第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を模式的に示す断面図である。 第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法に含まれる押さえ工程を示す断面図である。 第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で使用される第1の押さえ機構を示す概略平面図である。 (A)ないし(F)は、第2の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実
施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本
実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
[1.円筒形スパッタリングターゲットの概要]
まず、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの概略断面図である。
図1に示すように、円筒形スパッタリングターゲット1は、円筒形のターゲット材10が円筒形のバッキングチューブ20の外周面に設置されたものであり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが接合層30を介して接合されている。本実施形態では、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材10の内周面側に有する中空部にバッキングチューブ20を同軸に配置して、これらターゲット材10とバッキングチューブ20の中心軸が一致した状態で接合層30を介して接合されたものとなっている。すなわち、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とを接合層30を介して一体となるように接合されたものとなっている。
円筒形スパッタリングターゲット1のサイズは、材質や顧客の要望等に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。例えば、外径が100mm〜200mm、内径が80mm〜180mm、全長が50mm〜200mmの円筒形セラミックス焼結体をターゲット材10として用いた場合には、そのターゲット材10を単独で用いるとき、分割して用いるとき、あるいは複数で用いるとき等があり、その状況により円筒形スパッタリングターゲット1のサイズが適宜決定される。
ターゲット材10は、円筒形セラミックス焼結体からなり、当該円筒形セラミックス焼結体は、用途に応じて材料を適宜選択することができ、特に限定されることはない。例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種を主成分とする酸化物等から構成される円筒形セラミックス焼結体を使用することができる。
特に、後述する低融点接合材と馴染みやすい酸化インジウムを主成分とする円筒形セラミックス焼結体、具体的には、スズを含有する酸化インジウム(ITO)、セリウム(Ce)を含有する酸化インジウム(ICO)、ガリウム(Ga)を含有する酸化インジウム(IGO)、ガリウム及び亜鉛を含有する酸化インジウム(IGZO)等から構成される円筒形セラミックス焼結体がターゲット材10として好適に利用される。
ターゲット材10の外径及び全長は、円筒形スパッタリングターゲットのサイズに応じて適宜調整することが可能である。ターゲット材10の内径は、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面との間のクリアランスの幅及びバッキングチューブの外径に応じて適宜調整することが可能であり、これらは、特に限定されるものではない。また、ターゲット材10としては、1つの円筒形セラミックス焼結体から構成されるものだけでなく、複数の円筒形セラミックス焼結体を連結したものを使用することができる。円筒形セラミックス焼結体同士の連結方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
ターゲット材10の内周面に対して、めっき処理などによりニッケルや銅からなる下地層を形成したり、超音波はんだごてを用いて、接合材を接合面になじませる濡らし作業を行ったりといった前処理を行なってもよい。
バッキングチューブ20は、その材質が円筒形スパッタリングターゲット1の使用時に、接合層30が劣化及び溶融しない十分な冷却効率を確保できる熱伝導性があり、スパッタリング時に、放電可能な電気伝導性、円筒形スパッタリングターゲット1の支持が可能な強度等を備えているものであればよい。バッキングチューブ20として、例えば、一般的なオーステナイト系ステンレス製、特にSUS304製のものに加えて、銅又は銅合金、チタン又はチタン合金、モリブデン又はモリブデン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の各種材質を使用することができる。
また、バッキングチューブ20は、公知の表面処理を施すことができる。例えば、旋盤加工等で得られたバッキングチューブ20の表面をブラスト加工により、クリーニングすることが好ましい。このようにブラスト加工を行うことによって、旋盤加工で付着した異物、油分をクリーニングすると共に、比表面積増加による接合材の濡れ性が向上できる。
バッキングチューブ20の全長は、円筒形スパッタリングターゲット1のサイズに応じて適宜調整することが可能である。内径は、スパッタリング装置に応じて適宜調整することが可能であり、これらは特に限定されるものではない。また、バッキングチューブ20の外径は、下地層の厚さと共に、ターゲット材10とバッキングチューブ20との線膨張率の差を考慮して設定することが好ましい。
例えば、ターゲット材10として、20℃における線膨張率が7.2×10−6/℃のITOを使用し、バッキングチューブとして、20℃における線膨張率が17.3×10−6/℃であるSUS304を使用する場合には、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅が、好ましくは0.3mm〜3.0mm、より好ましくは0.5mm〜1.0mmとなるように、バッキングチューブ20の外径を設定する。
ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスの幅が0.3mm未満では、溶融した接合材をこの隙間に注入した場合に、バッキングチューブ20が熱膨張し、ターゲット材10が割れてしまうおそれがある。一方、隙間の幅が3.0mmを超えると、ターゲット材10の中空部に、バッキングチューブ20を同軸に配置し、これらの中心軸が一致した状態で接合することが困難となる。
接合層30は、例えば、インジウムからなり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する。接合層30の役割は、放電により円筒形スパッタリングターゲット1上に発生した熱をバッキングチューブ20の内側を流れる冷却液で放熱するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20との熱的な伝達を行うことにある。すなわち、接合層30は、円筒形スパッタリングターゲット1を使用する際に、バッキングチューブ20と同様にして、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等を備えていればよい。
[2.円筒形スパッタリングターゲットの製造方法]
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法について、図面を使用しながら説明する。図2は、第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。図3(A)ないし(E)は、第1の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を模式的に示す断面図である。第1の実施形態は、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と円筒状のバッキングチューブとのクリアランスに接合材が充填される。そして、本実施形態は、図2に示すように、配置工程S1と押さえ工程S2と充填工程S3と接合工程S4と切削工程S5とを有する。以下、各工程S1〜S5について図面を使用しながら説明する。
配置工程S1は、ターゲット材の下端面に円筒状の第1のダミーパイプを連結し、このターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に配置して、第1のダミーパイプとバッキングチューブとのクリアランスに複数の固定具等を用いて円周方向に等間隔に取り付ける工程である。
まず、図3(A)に示すように、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材10の下端面11に第1のダミーパイプ40を連結する。
第1のダミーパイプ40は、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに形成される接合層の下端側に空隙を発生させないという機能を有する。前述したように、従来、ターゲット材およびバッキングチューブのクリアランスに接合材を充填する際、このクリアランスの最下部は架台や耐熱Oリングと接触し、部分的に低温となりやすいため、最下部においてリング状に空隙部が発生しやすかった。そこで、第1の実施形態では、ターゲット材10の下端面11側に第1のダミーパイプ40を設置することで、第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20との間のクリアランスに接合材を充填した際に、このクリアランスに空隙部を発生させている。これにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスには、空隙部が発生しない。その結果、上記クリアランスに充填する接合材の接合率を向上することができる。
第1のダミーパイプ40は、ターゲット材10と同じ材料が好ましい。ターゲット材10と同じ材料とすることで、上述のリング状の空隙は第1のダミーパイプ40に発生し易くなる。あるいは、ターゲット材10の材料より熱伝導率が高いCu材やSUS材でもよい。また、前述した前処理等を行わない。これにより、接合工程S4において接合層30を形成した後、第1のダミーパイプ40に接着した接合材は、容易に剥離させることができる。この第1のダミーパイプ40の外径及び内径は、ターゲット材10と略同一に設定する。形状を略同一にすることで、ターゲット材10と同等に扱うことができる。
第1のダミーパイプ40の長さは、特に限定されないが、上述したリング状の空隙の深さ以上に設定する。リング状の空隙の深さは後述する充填工程S3での加熱温度や接合材の種類等により変化はするものの、10mm前後であるので、第1のダミーパイプ40の長さは、例えば20mm以上が好ましい。より好ましくは、20mm以上30mm以下である。なお、第1のダミーパイプ40の長さが30mmを越えても効果は同一である。
ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40は、各々の外周または内周を基準に中心軸が同一になるように配置する。中心軸を合わせる方法としては、特に限定されない。例えば、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40とほぼ同径の基準パイプを用いて、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40の内側に配置して中心軸を合わせてもよい。また、バッキングチューブ20を活用し、バッキングチューブ20とターゲット材10及び第1のダミーパイプ40とのクリアランスに円周方向に均等に複数のスペーサーを入れて中心軸を合わせてもよい。このように、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40との中心軸を一致させた状態で、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40を連結する。なお、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40を連結した後、中心軸を合わせるために使用した基準パイプやスペーサーを取り外す。
ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40の連結手段は、特に限定されない。例えば、ターゲット材10と第1のダミーパイプ40とのつなぎ目周辺の外周を、耐熱テープ等を巻くことで連結する。また、ターゲット材10を複数用いる場合には、ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40との連結方法と同様に、ターゲット材10同士のつなぎ目周辺の外周を、耐熱テープ等を巻くことで連結してもよい。
次いで、図3(B)に示すように、バッキングチューブ20を、第1のダミーパイプ40と連結されたターゲット材10の中空部に同軸に設置する。すなわち、ターゲット材10及びバッキングチューブ20の中心軸が一致した状態で配置し、両者を接合することが重要となる。両者の中心軸がずれた状態でターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合材31を介して接合すると、得られる円筒形スパッタリングターゲットの外径の中心と内径の中心が必然的にずれる。その結果、スパッタリング時の熱負荷により、円筒形スパッタリングターゲットが不均一に膨張し、ターゲット材に割れや剥離が生じるおそれがある。
まず、バッキングチューブ20を、第1のダミーパイプ40と連結されたターゲット材10の中空部に同軸に配置する。この位置に配置する方法としては、特に制限されることなく、公知の手段を用いることができる。例えば、X−Yステージと固定具を用いて位置決めをすることにより、バッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に配置することができる。詳細には、バッキングチューブ20は、X−Yステージによる位置決め可能な架台50に一方の端を、上記架台50の上面に形成された凹部51に固定して設置する。なお、この時、後述する第2の押さえ機構70(図4参照)でバッキングチューブ20の上端面21を押圧してもよい。押圧することにより、このバッキングチューブ20がさらに固定される。バッキングチューブ20は、凹部51に固定する他に、接着剤等を塗布した接着面に固定してもよい。
このバッキングチューブ20には、軸方向の端部を耐熱Oリング52によって封止し、その後、バッキングチューブ20にターゲット材10の中空部に配置するとともに、この封止側が下方となるように、ターゲット材10とバッキングチューブ20を直立させて配置する。
また、図3(B)のような配置状態とするため、上述した手順と異なり、ターゲット材
10とダミーパイプ40との中空部にバッキングチューブ20を同軸に設置した後、ダミーパイプ40の上端面にターゲット材10を連結してもよい。
詳細には、X−Yステージを用いて位置決めをすることにより、バッキングチューブ20を、第1のダミーパイプ40の中空部に同軸に配置する。バッキングチューブ20は、X−Yステージによる位置決め可能な架台50に一方の端を、上記架台50の上面に形成された凹部51に固定して設置する。このバッキングチューブ20には、軸方向の端部を耐熱Oリング52によって封止し、その後、バッキングチューブ20に第1のダミーパイプ40の中空部に同軸に配置するとともに、この封止側が下方となるように、第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20を直立させて配置する。
そして、第1のダミーパイプ40の上端面には、ターゲット材10を連結させる。ここで、ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40の中心軸を一致させるために、ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスに、ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40の長さを超えるスペーサー(不図示)を円周方向に等間隔に配置し、ターゲット材10及び第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20とが同軸になるように位置合わせを行う。その後、ターゲット材10と第1のダミーパイプ40との外周面のつなぎ目を耐熱テープで巻き同一の位置に固定すればよい。なお、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40を連結した後、中心軸を合わせるために使用したスペーサーを取り外す。
次いで、押さえ工程S2について図面を使用して説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法に含まれる押さえ工程を示す断面図である。図5は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で使用される第1の押さえ機構を示す概略平面図である。押さえ工程S2は、ターゲット材10の上端面12を第1の押さえ機構60で押圧することにより、ターゲット材10を固定し、かつバッキングチューブ20の上端面21を第2の押さえ機構70で押圧することにより、バッキングチューブ20を固定する工程である。第1の実施形態では、配置工程S1後に、この押さえ工程S2をさらに設けてもよい。
第1の押さえ機構60及び第2の押さえ機構70は、後述する充填工程S3及び接合工程S4においてターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスの幅を均等に維持するため、ターゲット材10及びバッキングチューブ20を固定する機能を有する。図4に示すように、前工程である配置工程S1でバッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に、即ち、これらの中心軸が一致した状態で配置するため、第1の押さえ機構60によりターゲット材10を固定し、かつ第2の押さえ機構70によりバッキングチューブ20を固定する。架台50の一端部には、支柱53が鉛直方向に設置され、この支柱53には、第1の押さえ機構60と第2の押さえ機構70とをそれぞれ取り付ける。
第1の押さえ機構60は、支柱53から水平方向に延在される第1のアーム部61とその第1のアーム部61の先端部の下方側に第1の押さえ部62が設けられる。また、第2の押さえ機構70は、支柱53から水平方向に延在される第2のアーム部71とその第2のアーム部71の先端部の下方側に第2の押さえ部72が設けられる。第1及び第2の押さえ機構60,70は、支柱53よりネジやばね等でターゲット材10及びバッキングチューブ20を鉛直下方に押圧することによりターゲット材10及びバッキングチューブ20を固定する。なお、バッキングチューブ20が、架台50に十分に固定されている場合は、ターゲット材10のみを第1の押さえ機構60で固定してもよい。つまり、押さえ工程S2では、ターゲット材10及びバッキングチューブ20のうち、少なくともターゲット材10の上端面12を第1の押さえ機構60で押圧することにより、ターゲット材10が固定されていればよい。
また、第1の押さえ部62は、次工程である充填工程S3でターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスに接合材31を供給するため、接合材31の供給に干渉せずに、効率的に鉛直方向にターゲット材10を固定することができるよう、ターゲット材10の上端面12のうち所定の領域に接するものであればよく、図5に示すように、例えばハーフリング状に形成されたものがよい。
次いで、充填工程S3は、ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスに接合材31を充填する工程である。すなわち、図3(C)に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20を直立させたまま、ターゲット材10の下側に第1のダミーパイプ40が配置される。
充填工程S3では、配置工程S1において接合層30を形成するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの両端開口部の下端側を、耐熱Oリング52などの封止手段を用いて封止されている。ターゲット材10とバッキングチューブ20は、これらの間のクリアランスに流し込まれる接合材31の融点以上にバンドヒータ(不図示)などで加熱される。
ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスの両端開口部のうち、封止されていない上端側から溶融状態にある接合材31を流し込む。例えば、ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスに、溶融した接合材31を充填する。充填された液体の接合材31は、第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20との間のクリアランスの最下部より充填される。
上述したように、クリアランスの最下部には、第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20との間のクリアランスに接合材31を充填した際に、接合材31の下端部の外周縁及び内周縁に形成されるリング状の空隙部Vが生じる。ターゲット材10の下端面11とクリアランス内に固化された接合層30の下端面との高さ位置を揃えるよう、後述する切削工程S5において接合層30の下端面を平滑に形成されるよう切削する。その結果、上記クリアランスにおける接合材31の接合率を向上させ、接合強度を高くすることができる。
また、クリアランスの上端部では、濡れ性への親和力が高いことで接合材31とターゲット材20及びバッキングチューブ20の接触面積が大きくなり、ターゲット材10またはバッキングチューブ20と接触している接合材の液面が上昇し、接合材31の液面の中心部がわずかに凹んでしまう。このような状態で、接合材31を冷却することで、上端部側に凹部を有する接合層30が形成される。
ターゲット材10及びバッキングチューブ20は、予め、その表面温度が接合材31の融点以上、好ましくは融点より10℃〜30℃高い温度となるように加熱しておくことが必要である。ターゲット材10及びバッキングチューブ20の表面温度が接合材31の融点以下では、接合材31がターゲット材10またはバッキングチューブ20に接触すると同時に硬化し、十分な量の接合材31を流し込むことが困難となる。
接合層30には、上述のバッキングチューブ20と同様にして、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等の特性を持たせるためには、接合層30の形成に用いる接合材31を選定する必要がある。例えば、インジウムを主成分とする接合材31は、スズを主成分とする接合材に比べて凝固時の硬度が低い。そのため、インジウムを主成分とする接合材31を用いて接合層30を形成する場合には、溶融した接合材31を注入してから固化するまでの過程において、ターゲット材10の割れ等の不具合を効果的に防止することができる。
次いで、接合工程S4では、図3(D)に示すように、ターゲット材10および第1のダミーパイプ40とバッキングチューブ20と間のクリアランスに充填した接合材31を冷却し、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する工程である。
ターゲット材10及びバッキングチューブ20の表面にバンドヒータで熱をかけることを停止し、室温(20℃)まで放冷することにより、充填した接合材31が固化することで接合層30を形成する。なお、冷却手段や冷却スピードは、適宜調整することができる。
次いで、切削工程S5では、接合材の冷却により形成された接合層の両端面を平滑に切削する工程である。具体的に、図3(E)に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20と間のクリアランスに充填された接合材31が完全に固化して、接合層30が形成されたことを目視で確認した後、配置工程S1で使用した第1のダミーパイプ40、架台50、耐熱Oリング52、固定具60等をそれぞれ取り除く。
そして、接合層30の両端面をターゲット材10と高さ位置が一致するよう平滑に切削する。このように、スパッタリングの際に割れや欠けの要因となりうる余分な接合層を切削することで、接合層30の両端面が平滑な面で形成されている円筒形スパッタリングターゲット1が作製される。なお、接合層30の両端面を切削する手段は、特に限定されない。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法について、図面を使用しながら説明する。なお、上述した第1の実施形態と重複する説明を割愛する。
図6(A)ないし(F)は、第2の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を模式的に示す断面図である。配置工程S1では、図6(A)に示すように、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材10の下端面11に第1のダミーパイプ40を連結する。
次いで、図6(B)に示すように、バッキングチューブ20を、第1のダミーパイプ40と連結されたターゲット材10の中空部に同軸に設置する。そして、ターゲット材10の上端側に第2のダミーパイプ45を配置する。この第2のダミーパイプ45は、ターゲット材10の上端面12に連結される。このターゲット材10の下端面11に連結された第1のダミーパイプ40を架台50に取り付ける。なお、ターゲット材10の上端面12に第2のダミーパイプ45を連結した後、ターゲット材10の下端面11に第1のダミーパイプ40を連結してもよい。
また、第1のダミーパイプ40側はX−Yステージによる位置決めをし、ターゲット材10の上端側に連結された第2のダミーパイプ45とバッキングチューブ20と間のクリアランスに、固定具(不図示)を取り付けてもよい。これにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20を同軸に配置されているため、ターゲット材10とバッキングチューブ20と間のクリアランスの幅は、一定に維持される。この固定具は、上記クリアランスに接合材を充填し、固化により接合層が形成された後、取り除かれる。なお、固定具としては、例えば、クリアランスの厚さと同等またはクリアランスより若干薄い厚さのスペーサー、くさび、及びシックネスゲージのいずれかを用いることができる。また、固定具の材料は、特に限定されないが、例えば、テフロン(登録商標)、SUS材、Cu材等が挙げられる。
押さえ工程S2では、図6(C)に示すように、第2のダミーパイプ45の上端面46を第1の押さえ機構60で押圧することにより、第2のダミーパイプ45を介してターゲット材10を固定し、かつバッキングチューブ20の上端面21を第2の押さえ機構70で押圧することにより、バッキングチューブ20を固定する。これにより、クリアランスの幅を維持することができる。
充填工程S3では、図6(D)に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20と間のクリアランスに溶融した接合材31を上部開口端から充填し、ターゲット材10の上端面12よりも高い位置にある上端側の第2のダミーパイプ45の所定の高さまで接合材31を充填する。上記クリアランスに接合材31を充填することにより、上述したように、クリアランスの最下部には、空隙部Vが生じる。切削工程S5において、接合層30の下端面の位置を、ターゲット材10の下端面11と同じ高さになるよう、接合層30の下端面を切削する。
また、クリアランスに充填した接合材31の液面は、上述したように、この接合材31が第2のダミーパイプ45及びバッキングチューブ20の材料に対する濡れ性への親和性が高いため、凹部状になる。第2の実施形態では、接合層30を形成する冷却時に接合材31が体積収縮しても、切削工程S5において接合層30の上端面の位置を、ターゲット材10の上端面12と同じ高さになるよう、接合層30の上端面を切削する。なお、上記所定の高さとしては、この接合層30の上端面の位置がターゲット材10の上端面12と同じ高さに調整するため、第2のダミーパイプ45の下端からターゲット材の高さの4%以上の位置まで接合材31を充填することが好ましい。この下限値は、インジウムの液体から固体への体積収縮率に基づき、接合材31を充填する第2のダミーパイプ45の高さ位置を算出したものである。
したがって、第2の実施形態では、第1のダミーパイプ40によりターゲット材10とバッキングチューブとの間のクリアランスの下端部の空孔を形成しないようにするだけでなく、第2のダミーパイプ45により接合材31の冷却による体積収縮しても接合層30の上端面の位置がターゲット材10の上端面12と同じ高さにすることができるので、接合材31の接合率をより確実に高くすることが可能となる。
接合工程S4では、図6(E)に示すように、接合材31を放冷することにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスに接合層30が形成される。
切削工程S5では、図6(F)に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20との間のクリアランスに充填された接合材31が完全に固化して、接合層30が形成されたことを目視で確認した後、配置工程S1で使用した第1及び第2のダミーパイプ40、45、架台50、耐熱Oリング52、押さえ工程S2で使用した押さえ機構60、70等をそれぞれ取り除く。そして、接合層30の両端面を平滑に形成されるよう切削する。これにより、円筒形スパッタリングターゲット1が作製される。
[3.まとめ]
以上で説明した通り、第1及び第2の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、ターゲット材の下端面に円筒状の第1のダミーパイプを連結し、ターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に設置する配置工程S1と、ターゲット材とバッキングチューブとの間のクリアランスに接合材を充填する充填工程S3と、接合材を冷却し、ターゲット材とバッキングチューブとを接合する接合工程S4とを有する。
また、このように作製された円筒形スパッタリングターゲットは、スパッタリングで使用されるものであって、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と、ターゲット材の内周面側に有する中空部に、同軸に配置するバッキングチューブと、ターゲット材及びバッキングチューブの間のクリアランスに形成される接合層とを備える。そして、接合層の両端面は、平滑な面で形成されている。
第1及び第2の実施形態では、簡素かつ低コストで、円筒形のセラミックス焼結体からなるターゲット材とバッキングチューブとの上端部および下端部でほぼ同一温度で加熱しながら、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに接合材を充填してもこのクリアランスに接合材を充填されて形成された接合層の下端部に空隙が発生しない。その結果、ターゲット材とバッキングチューブとの間のクリアランスで接合された接合層の下端部における接合率を向上させて、接合強度の高い円筒形スパッタリングターゲットを作製することができる。
また、第1及び第2の実施形態では、スパッタリング時の熱負荷によって、ターゲット材に割れや剥離等の不具合が生じることのない円筒形スパッタリングターゲットを得ることができる。
さらに、第1及び第2の実施形態では、工業規模の生産において、このような円筒形スパッタリングターゲットを容易に得ることができるので、その工業的意義は極めて大きい。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例1〜2では、上述した円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図(図2参照)を使用して以下説明する。
(実施例1)
実施例1では、外径100mm、内径81mm、全長200mmのITO製の円筒形セラミックス焼結体を5つ用意した。次に、全ての円筒形セラミックス焼結体について、接合面となる内周面以外の部分に余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱性のマスキングテープでマスキングを行った。その後、全ての円筒形セラミックス焼結体について、接合面となる内周面をインジウムで濡らすと共に、全長が1000mmとなるように、5個の円筒形セラミックス焼結体を一定間隔で配列し、外周面を耐熱テープで固定することにより、ターゲット材を得た。
次に、実施例1では、外径80mm、内径70mm、全長1100mmのSUS304製の旋盤加工で得られた円筒形バッキングチューブを用意した。この円筒形バッキングチューブのうち、接合面以外の部分については、余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱テープでマスキングを行った。その後、投射材としてガラスビーズ♯80を使用し、円筒形バッキングチューブについて、ブラスト加工を行った。
その後、超音波ハンダ付け装置(会社名:黒田テクノ株式会社、製品名:サンボンダ(登録商標)USM−528)を使用し、インジウム系低融点半田を用いた公知の濡らし作業を行った。
次に、配置工程S1では、ターゲット材と内径および外径が同じで長さが20mmの第1のダミーパイプ(ITO製)を用意した。5個のターゲット材と第1のダミーパイプとを第1のダミーパイプが最下端になるように並べターゲット材の内径と、外径がほぼ同等の基準パイプをターゲット材の中空部に設置した。次に、ターゲット材と第1のダミーパイプの外周面のつなぎ目を耐熱テープで巻き同一の位置に連結した。その後、基準パイプをターゲット材より取り外し、第1のダミーパイプと連結したターゲット材を得た。
次に、バッキングチューブを、X−Yステージによる位置決め可能な架台に一方の端を固定して設置した。このバッキングチューブには、軸方向の端部に耐熱Oリングを配置した。その後、このターゲット材の中空部にバッキングチューブを配置するとともに、Oリングによりクリアランスの下方側を封止するように、第1のダミーパイプを下側に配置してターゲット材とバッキングチューブを直立させて配置した。
また、第1のダミーパイプ側はX−Yステージによる位置決めし、ターゲット材の上側は、ターゲット材とバッキングチューブのクリアランスに長さ10mmの固定具を4ヶ所、円周方向に等間隔に配置してターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸になるように位置決めを行った。なお、ターゲット材とバッキングチューブのクリアランスは、0.5mmであった。
続いて、充填工程S3では、第1のダミーパイプおよびターゲット材の外周面にバンドヒータを取り付け、設定温度を180℃として加熱した。また、インジウム系低融点半田を用意し、これをバンドヒータにより190℃まで加熱して溶融した。
バンドヒータが設定温度に達したことを確認した後、上方のクリアランスの開口側から溶融した接合材を注入し、下端側から徐々に接合材が充填された。所定量(1017g)の接合材を注入された際に、ターゲット材の上端面の高さまで接合材が充填されたことを確認した。その後、接合工程S4では、バンドヒータのスイッチを切り、室温(20℃)まで放冷した。接合材が完全に固化して接合層が形成されたことを確認した後、第1のダミーパイプ、固定具、マスキングテープ、および耐熱Oリングを取り除き、接合層の下端面の位置を、ターゲット材の下端面と同じ高さになるよう、接合層の下端面を切削した。これにより、円筒形スパッタリングターゲットを得た。
実施例1では、得られた円筒形スパッタリングターゲットのターゲット材の下端面の空隙の有無を目視で確認した。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に第1のダミーパイプとターゲット材とバッキングチューブとを用意した。また、第2のダミーパイプも用意した。なお、第1のダミーパイプはSUS製で、長さは30mmとした。第2のダミーパイプはSUS製で、長さは50mmとした。次いで、配置工程S1では、バッキングチューブを、X−Yステージによる位置決め可能な架台に一方の端を固定して設置した。このバッキングチューブには、軸方向の端部に耐熱Oリングを配置した。
耐熱Oリングの上に第1のダミーパイプ、ターゲット材を積み重ね、ターゲット材の上端面には第2のダミーパイプを配置した。ターゲット材並びに第1及び第2のダミーパイプとバッキングチューブとのクリアランスにターゲット材と第1及び第2のダミーパイプとの長さを超えるスペーサーを3ヶ所配置し、同軸になるように位置合わせを行い、その後、ターゲット材と第1及び第2のダミーパイプとの外周面のつなぎ目をそれぞれ耐熱テープで巻き同一の位置に固定した。
次に、押さえ工程S2では、接合材充填時のクリアランスのずれを防止するため、第2のダミーパイプの上端面を押さえ機構により押さえた。押さえ機構で固定後、スペーサーを取り除いた。接合材が完全に固化して接合層が形成された後、第1のダミーパイプ、第2のダミーパイプ、固定具、マスキングテープ、および耐熱Oリングを取り除き、接合層の両端面の位置を、ターゲット材の両端面と同じ高さになるよう、接合層の両端面を切削した。その他条件は、実施例1と同様にして、円筒形スパッタリングターゲットを作製した。また、この円筒形スパッタリングターゲットのターゲット材の下端面の空隙の有無を確認した。結果を表1に示す。
(比較例1)
比較例1では、ダミーパイプを使用せず、耐熱Oリングの上に直接ターゲット材とバッキングチューブを配置し、接合材をクリアランスに充填して冷却したこと以外は実施例1と同様にして、円筒形スパッタリングターゲットを作製した。また、このターゲット材の下端面の1ヶ所で空隙の有無を確認した。結果を表1に示す。
(実施例による考察)
表1に示す結果から、実施例1及び実施例2では、ターゲット材下面で空隙部は発生がなく良好な円筒形スパッタリングターゲットが得られた。すなわち、これらの円筒形スパッタリングターゲットは、ターゲット材とバッキングチューブとの間のクリアランスに接合材を充填されて形成された接合層の下端部における接合率が向上し、接合強度の高いものといえる。
一方、比較例1では、ダミーパイプを使用せず、耐熱Oリングの上に直接ターゲット材とバッキングチューブを配置した。そのため、ターゲット材の下面に内周面とクリアランスに充填された接合材の間にリング状の空隙が確認された。そのため、比較例1で得られた円筒形スパッタリングターゲットは、実施例1及び実施例2と異なり、接合層の下端部における接合率が低いものといえる。
1 円筒形スパッタリングターゲット、10 ターゲット材、11 下端面、12 上端面、20 バッキングチューブ、21 上端面、30 接合層、31 接合材、40 第1のダミーパイプ、45 第2のダミーパイプ、46 上端面、50 架台、51 凹部、52 耐熱Oリング、53 支柱、60 第1の押さえ機構、61 第1のアーム部、62 第1の押さえ部、70 第2の押さえ機構、71 第2のアーム部、72 第2の押さえ部、S1 配置工程、S2 押さえ工程、S3 充填工程、S4 接合工程、S5 切削工程、V 空隙部

Claims (6)

  1. 円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と円筒状のバッキングチューブとのクリアランスに溶融した接合材が充填される円筒形スパッタリングターゲットの製造方法であって、
    前記ターゲット材の下端面に円筒状の第1のダミーパイプを連結し、前記ターゲット材の中空部に前記バッキングチューブを同軸に設置する配置工程と、
    前記第1のダミーパイプが連結された前記ターゲット材と、前記バッキングチューブとの間のクリアランスに前記接合材を充填する充填工程と、
    前記接合材を冷却し、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを接合する接合工程とを有することを特徴とする円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 前記配置工程では、前記ターゲット材の下端面に前記第1のダミーパイプを連結し、さらに該ターゲット材の上端面に円筒状の第2のダミーパイプを連結することを特徴とする請求項1記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 前記充填工程では、前記第2のダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに該第2のダミーパイプの所定の高さ位置まで前記接合材をさらに充填することを特徴とする請求項2記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 前記第1のダミーパイプの長さは、20mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 前記接合工程の後に、前記接合材の冷却により形成された接合層の両端面を平滑に切削する切削工程をさらに設けることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  6. スパッタリングで使用される円筒形スパッタリングターゲットであって、
    円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と、
    前記ターゲット材の内周面側に有する中空部に、同軸に配置するバッキングチューブと、
    前記ターゲット材及び前記バッキングチューブの間のクリアランスに形成される接合層とを備え、
    前記接合層の両端面は、平滑な面で形成されていることを特徴とする円筒形スパッタリングターゲット。
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