JP6734746B2 - 円筒形スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネトロン型回転カソードスパッタリング装置によるスパッタリングに使用される、円筒形スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
従来から、スパッタリングターゲットとしては、平板状のターゲット材をバッキングプレートに接合した平板形スパッタリングターゲットが一般的に利用されている。平板形スパッタリングターゲットを使用して、マグネトロンスパッタリング法によりスパッタリングを行った場合におけるターゲット材の使用効率は、20%〜30%に留まっている。その理由は、マグネトロンスパッタリング法では磁場によってプラズマをターゲット材の特定箇所に集中して衝突させるため、ターゲット材の表面の特定箇所にエロージョン(erosion)が進行する現象が起こり、ターゲット材の最深部がバッキングプレートまで達したところで、ターゲット材の寿命となってしまうためである。
この問題に対して、スパッタリングターゲットの形状を円筒形にすることで、ターゲット材の使用効率を上げることが提案されている。この方法は、円筒形のバッキングチューブと、その外周部に形成された円筒形のターゲット材とからなる円筒形スパッタリングターゲットを用い、バッキングチューブの内側に磁場発生設備と冷却設備を設置して、円筒形スパッタリングターゲットを回転させながらスパッタリングを行うものである。この方法により、ターゲット材の使用効率を60%〜70%にまで高めることができるとされている。
円筒形スパッタリングターゲットにおけるターゲット材の材料としては、円筒形状への加工が容易で機械的強度の高い金属材料が広く使用されているものの、セラミックス材料については、機械的強度が低く脆いという特性から、未だ普及するに至っていない。
現在、セラミックス製の円筒形スパッタリングターゲットの製造手段は、円筒形のバッキングチューブの外周にセラミックス粉末を溶射して付着する溶射や、円筒形のバッキングチューブの外周にセラミックス粉末を充填し、高温高圧の不活性雰囲気下でセラミックス粉末を焼成する、熱間静水圧プレス(HIP:Hot Isostatic Pressing)等に限られている。しかしながら、溶射には、高密度のターゲット材が得られにくいという問題があり、熱間静水圧プレスには、イニシャルコストやランニングコストが高く、熱膨張差による剥離、更にはターゲット材のリサイクルができないといった問題がある。
このため、冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Pressing)により円筒形セラミックス成形体を成形し、これを焼成することにより円筒形セラミックス焼結体を得て、これをバッキングチューブとボンディング(接合)することにより、円筒形スパッタリングターゲットを形成することが一般的になっている。
円筒形スパッタリングターゲットでは、通常、オーステナイト系ステンレス鋼、チタン等の金属製のバッキングチューブが使用される。ところが、円筒形スパッタリングターゲットとバッキングチューブとのクリアランスは、通常1.5mm以下であり、接合材を隙間なく充填することは困難である。
たとえば、特許文献1では、円筒形スパッタリングターゲット材を垂直に積み上げ、バッキングチューブとの間に生じたクリアランスに上方より接合材を流し込む方法が開示されている。また、特許文献2では、円筒形スパッタリングターゲット材を垂直に積み上げ、バッキングチューブとの間に生じたクリアランスに接合材を加圧充填して接合層を形成する方法が開示されている。さらに、特許文献3では、円筒形スパッタリングターゲット材を垂直に積み上げ、バッキングチューブとのクリアランスに接合材を充填後冷却する際、下端より冷却し接合材を順次下端より固化する方法が開示されている。また、接合材を充填する際、バイブレーターなどを使用して溶融状態の接合材に振動を加えることが開示されている。
特開2008−184640号公報 特開2010−070842号公報 特開2010−018883号公報
しかしながら、これら先行文献では、円筒形スパッタリングターゲットとバッキングチューブを垂直方向の組上げた状態で接合材を充填する方法である。特許文献1に記載された方法によれば、単に接合材を上方より流し込むだけでは、クリアランスに存在している空気が抜けることは困難である。
また、特許文献2に記載された方法では、例えば、長さが2mのバッキングチューブを用いる場合には、2m相当の加圧の装置を準備しなくてはならず、装置が大掛かりであり、大幅なコストの増加となり現実的ではない。また、圧力差により接合材を充填した場合、長さ2m相当の接合材を余分に使用することになりコスト増加となる。
さらに、特許文献3に記載された方法では、加熱ヒーターをターゲットの長さに合わせ個別に制御する機構が必要でありヒーター装置が高価となり、かつ技術的にも高度に制御が必要である。また、接合材を充填する際、バイブレーターなどを使用して溶融状態の接合材に振動を加える場合、振動により、円筒形ターゲット材が位置ズレを起こしたり、接合材が封止部から漏れることがある。
そのような問題を解決する方法として、例えば、ボンディングを行う装置そのものを減圧することも考えられるが、実用に至っていない。また、加圧充填とは逆に接合層を吸引することも考えられるが、吸引などで生じる空気の流れが原因となり、接合層の温度管理が困難であり、さらに実用が困難であるか、あるいは装置が高額になる。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて考案されたものであり、円筒形のセラミックス焼結体からなるターゲット材とバッキングチューブとを、高い接合率及び十分な接合強度でもって接合材を介して接合することにより、スパッタリングを行った場合に、割れ、欠け、剥離等の不具合が生じない、新規かつ改良された円筒形スパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者は、接合材の充填方法について、鋭意研究を重ねた。その結果、バッキングチューブおよびスパッタリングターゲットを接合材充填のために水平に設置させた後、少なくとも一方のクリアランスの開口端の上部を部分的に開放させ、当該解放部から充填材を充填することでクリアランスに存在する空気が効果的に抜け、ターゲットと接合材、接合材とバッキングチューブに空孔を生成させないことがわかった。即ち、バッキングチューブおよびスパッタリングターゲットが水平であることで充填される溶融した接合材が充填位置の180度対向の最下点より充填され、水平に広がる。その後充填された接合材面が水平に上昇していくことで空気が押し出され、熱伝導を妨げる空孔を生成させないとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明の一態様に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に配置する配置工程と、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとのクリアランスに接合材を充填する充填工程と、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを放冷させることにより前記接合材を冷却し、該ターゲット材と該バッキングチューブとを接合する接合工程とを有し、前記充填工程および前記接合工程では、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとが水平に配置されていることを特徴とする。
本発明の一態様では、前記充填工程において、少なくとも一方の前記クリアランスの開口端に、空気抜きとして用いられる連通孔を設けることが好ましい。また、前記連通孔の周縁には、段差を設けることができる。
本発明の一態様では、前記充填工程後に、少なくとも一方の前記クリアランスの開口端から前記接合材を加圧する脱気工程をさらに有することが好ましい。また、前記脱気工程では、少なくとも一方の前記クリアランスの開口端を支点として前記ターゲット材と前記バッキングチューブを前記同軸に対して±20度の角度範囲に収まるように傾斜させて、該クリアランスの開口端から前記接合材を加圧することがより好ましい
本発明の一態様では、前記配置工程では、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを水平に配置した際に、少なくとも1つの固定具を該ターゲット材と該バッキングチューブとの間に取り付けることができる。
本発明の一態様では、前記バッキングチューブの同軸上には、前記ターゲット材が複数連結されていてもよい。
本発明によれば、接合材とバッキングチューブとの接合率を向上することができ、スパッタリング時の熱負荷によって、ターゲット材に割れや剥離等の不具合が生じることのない円筒形スパッタリングターゲットを得ることができる。
本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法により作製される円筒形スパッタリングターゲットを示す図であり、(A)は長手方向の概略断面図であり、(B)はA−A断面図である。 本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。 従来の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填のされ方を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填のされ方を模式的に示す円筒形スパッタリングターゲットの断面図であり、(A)は接合材の充填直後を示す図であり、(B)は接合材を充填している経過途中を示す図であり、(C)は接合材の充填終了直前を示す図であり、(D)は接合材の充填終了後を示す図である。 本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填を説明するための円筒形スパッタリングターゲットの長手方向の概略断面図である。 本発明の他の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填を説明するための円筒形スパッタリングターゲットの長手方向の概略断面図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、円筒形スパッタリングターゲットの概要を説明し、次いで本実施の形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における工程についてそれぞれ説明する。
[1.円筒形スパッタリングターゲットの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法により作製される円筒形スパッタリングターゲットを示す図であり、(A)は長手方向の概略断面図であり、(B)はA−A断面図である。図1(A)および図1(B)に示すように、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材10がバッキングチューブ20の外周部に設置されたものであり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが接合層30を介して接合されている。より詳細には、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を同軸に配置し、これらの中心軸が一致した状態で接合されたものである。
円筒形スパッタリングターゲット1のサイズは、材質や顧客の要望等に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。例えば、外径が100mm〜200mm、内径が80mm〜180mm、全長が50mm〜200mmの円筒形セラミックス焼結体をターゲット材10として用いた場合には、そのターゲット材10を単独で用いる場合、分割して用いる場合、或いは複数で用いる場合等があり、その状況により円筒形スパッタリングターゲット1のサイズが適宜決定される。
(ターゲット材)
円筒形のターゲット材10として使用可能な円筒形セラミックス焼結体は、用途に応じて材料を適宜選択することができ、特に限定されることはない。例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種を主成分とする酸化物等から構成される円筒形セラミックス焼結体を使用することができる。
特に、後述する低融点接合材と馴染みやすい酸化インジウムを主成分とする円筒形セラミックス焼結体、具体的には、スズを含有する酸化インジウム(ITO)、セリウム(Ce)を含有する酸化インジウム(ICO)、ガリウム(Ga)を含有する酸化インジウム(IGO)、ガリウム及び亜鉛を含有する酸化インジウム(IGZO)等から構成される円筒形セラミックス焼結体が、ターゲット材10として好適に利用される。
ターゲット材10の外径及び全長は、円筒形スパッタリングターゲット1のサイズに応じて適宜調整することが可能である。また、その内径は、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅及びバッキングチューブ20の外径に応じて適宜調整することが可能であり、これらは特に限定されるものではない。ターゲット材10としては、1つの円筒形セラミックス焼結体から構成されるものだけでなく、複数の円筒形セラミックス焼結体を連結したものを使用することができる。円筒形セラミックス焼結体同士の連結方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
ターゲット材10の内周面に対して、めっき処理などによりニッケルや銅からなる下地層を形成したり、超音波はんだごてを用いて、接合材を接合面になじませる濡らし作業を行ったりといった前処理を行なってもよい。
(バッキングチューブ)
円筒形のバッキングチューブ20の材質は、円筒形スパッタリングターゲット1の使用時に、接合層30が劣化及び溶融しない十分な冷却効率を確保できる熱伝導性があり、スパッタリング時に、放電可能な電気伝導性や、円筒形スパッタリングターゲット1の支持が可能な強度等を備えているものであればよい。
バッキングチューブ20として、オーステナイト系ステンレス製、特にSUS304製のものを使用することが一般的である。もちろん、これ以外の素材も利用することができ、例えば、SUS304以外のステンレス、チタン又はチタン合金、モリブデン又はモリブデン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、更には、強固な不動態皮膜の無い銅又は銅合金等の各種材質を使用することができる。例えば、インジウムを主成分とする接合材を用いた場合には、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等の観点から、バッキングチューブ20の材質として、ステンレス又はチタンを用いることが好ましい。
バッキングチューブ20の全長は、円筒形スパッタリングターゲット1のサイズに応じて適宜調整することが可能である。内径は、スパッタリング装置に応じて適宜調整することが可能であり、これらは特に限定されるものではない。また、バッキングチューブ20の外径は、下地層の厚さと共に、バッキングチューブ20とターゲット材10との線膨張率の差を考慮して設定することが好ましい。
例えば、ターゲット材10として、20℃における線膨張率が7.2×10−6/℃のITOを使用し、バッキングチューブ20として、20℃における線膨張率が17.3×10−6/℃であるSUS304を使用する場合には、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅が、好ましくは0.3mm〜3.0mm、より好ましくは0.5mm〜1.0mmとなるように、バッキングチューブ20の外径を設定する。
ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅が0.3mm未満では、溶融した接合材をクリアランスに注入した場合に、バッキングチューブ20が熱膨張し、ターゲット材10が割れてしまうおそれがある。一方、上記クリアランスの幅が3.0mmを超えると、ターゲット材10の中空部に、バッキングチューブ20を同軸に配置し、これらの中心軸が一致した状態で接合することが困難となる。
さらに、バッキングチューブ20は、公知の表面処理を施すことができる。例えば、旋盤加工等で得られたバッキングチューブ20の表面をブラスト加工により、クリーニングすることが好ましい。このようにブラスト加工を行うことによって、旋盤加工で付着した異物、油分をクリーニングすると共に、比表面積増加による接合材の濡れ性が向上できる。
(接合材)
接合材は、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに接合材を充填し、ターゲット材10とバッキングチューブ20を水平の状態で放冷することにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20を接合する。
接合層30に、上述のバッキングチューブ20と同様にして、上述の熱伝導性等の特性を持たせるためには、接合層30の形成に用いる接合材を選定する必要がある。例えば、インジウムを主成分とする接合材は、スズを主成分とする接合材に比べて凝固時の硬度が低い。そのため、インジウムを主成分とする接合材を用いて接合層30を形成する場合には、溶融した接合材を注入してから固化するまでの過程において、ターゲット材10の割れ等の不具合を効果的に防止することができる。
インジウムを主成分とする接合材を用いて接合層30を形成する場合には、インジウムを50質量%以上、好ましくは70質量%〜100質量%、より好ましくは80質量%〜100質量%含有するものを使用する必要がある。特に、インジウムを80質量%以上、好ましくは90質量%〜100質量%含有する低融点接合材を、接合材として用いることが好ましい。このような低融点接合材であれば、原子又は分子間の結合が弱いため軟らかく、冷却固化後の硬度が適切な範囲にあるため、作業性に優れている。また、低融点接合材は、作業性に優れるだけでなく、溶融時の流動性が高いため、巣(鬆)やひけが極めて少ない、均一な接合層30を容易に形成することができる。
例えば、インジウムの含有量が100質量%であるインジウム金属を接合材として用いた場合には、インジウム金属の熱伝導率が81.6W/m・Kと熱伝導性に優れることから好ましい。また、インジウム金属は、液化して固化することによりターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する際に、これらを密着性よく接合できることから好ましい。
一方、インジウムの含有量が50質量%未満では、バッキングチューブ20側との濡れ性が低いため、そのような接合材を加熱して溶融した接合材を、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに、高い充填性をもって隙間なく注入することができない。
接合材としては、上述したインジウム系低融点接合材の他に、インジウム粉末を含有する樹脂ペースト、導電性樹脂等を用いることができるが、導電性や展延性の観点から、インジウム系低融点接合材が好ましく、融点が130℃〜160℃のインジウム系低融点接合材がより好ましい。なお、インジウム以外の成分については、特に制限されることはなく、例えば、スズ、アンチモン(Sb)、亜鉛等を必要に応じて含有することができる。インジウム以外の成分の含有量は、50質量%未満であり、30質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましい。
[2.円筒形スパッタリングターゲットの製造方法]
図2は、本実施の形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。本実施の形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、図2に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを配置する配置工程S1と、クリアランスに接合材を充填する充填工程S2と、接合材を冷却する接合工程S4とを有する。そして、接合材を加圧する脱気工程S3とをさらに有することが好ましい。以下、各工程S1〜S4についてそれぞれ説明する。
[2−1.配置工程]
配置工程S1は、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に配置する工程である。
(バッキングチューブとターゲット材の配置)
バッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に、即ち、これらの中心軸が一致した状態で配置し、両者を接合することが重要となる。両者の中心軸がずれた状態で接合すると、得られる円筒形スパッタリングターゲット1の外径の中心と内径の中心がずれてしまう。その結果、スパッタリング時の熱負荷により、円筒形スパッタリングターゲット1が不均一に膨張し、ターゲット材10に割れや剥離が生じるおそれがある。
円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を同軸に配置する。このとき、ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を水平で組み込んでも、ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を垂直で組み込んだ後に傾転してこれらのターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を水平に配置してもかまわない。但し、ターゲット材10とバッキングチューブ20を垂直方向から水平に傾転させる際に、円筒形ターゲット材と円筒形基材の中心軸がずれることがある。したがって、ターゲット材10とバッキングチューブ20は、水平で組み込むことが望ましい。
ターゲット材10とバッキングチューブ20の組み込みでは、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを水平に配置する際に、少なくとも1つの固定具を水平上部側のクリアランスに取り付けることにより、クリアランスを維持することが好ましい。これにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20のクリアランスの幅を維持することができる。この結果、スパッタリング時の熱負荷によって、ターゲット材10に割れや剥離等の不具合が生じることのない円筒形スパッタリングターゲット1を得ることができる。
さらに、ターゲット材10とバッキングチューブ20の組み込みでは、複数の固定具をターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とのクリアランスに等間隔取り付けることが特に好ましい。これにより、クリアランスの幅をより確実に維持することができる。
固定具としては、例えばクリアランスの幅と同等のスペーサーやくさびやシックネスゲージを用いることができる。また、スペーサーは、耐熱性を有する材料であればよく、例えばCu材やテフロン(登録商標)などが挙げられる。
ターゲット材10とバッキングチューブ20とを水平に配置した際、クリアランスの開口端側は、支持板40および封止板50を配置する。支持板40及び封止板50には挿通孔が形成されバッキングチューブ20に挿通して、挿通されたバッキングチューブ20の少なくとも一方の端部の外周面をクランプ(不図示)等で挟持する。これにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20との中心軸が一致したままであるので、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスが維持される。
さらに、バッキングチューブ20の同軸上には、ターゲット材10が1つ配置されるだけでなく、バッキングチューブ20の同軸上には、ターゲット材10が複数連結されていてもよい。例えば、ターゲット材10と隣り合うターゲット材10との間には、シリコンパッキン70を介在することでターゲット材10が一定間隔で配列されるので、生産効率を向上させることができる。
なお、バッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に配置する方法としては、特に制限されることなく、公知の手段を用いることができる。例えば、バッキングチューブを上下左右に微調整できるように多軸ステージを用いて位置決めをすることにより、バッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に配置することができる。
[2−2.充填工程]
充填工程S2は、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに接合材を充填する工程である。そして、この充填工程S2では、接合材を充填するにあたり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが水平に配置されている。
図3は、従来の垂直での円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填のされ方を模式的に示す断面図である。円筒形スパッタリングターゲット200を垂直で製造する場合には、図3に示すように、充填される接合材210の液面が矢印方向に互いに衝突し、接合材210のない空孔部220を生成しやすくなる。そこで、本実施形態の充填工程S2では、空孔部を生成しないように、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが水平に配置して、接合材を充填する。
図4は、本発明の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材充填工程について接合材の充填のされ方を模式的に示す断面図であり、(A)は接合材の充填直後を示す図であり、(B)は接合材を充填している経過途中を示す図であり、(C)は接合材の充填終了直前を示す図であり、(D)は接合材の充填終了後を示す図である。
図4に示すように、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とのクリアランスに、接合材31を注入し、嵌合した接合層30を形成する。これは、図4(A)に示すように、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とのクリアランスに液体の接合材31を充填した場合に、充填された液体の接合材31がクリアランスの最下部より充填される。したがって、充填された液体の接合材31により支持板40や封止板50と接するクリアランスの最下部に存在している空気が押し出せることで、この空気が接合材31の下部に存在しないことになる。
次に、図4(B)に示すように、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とのクリアランスにさらに液体の接合材31の充填を継続すると、空気を下部に滞留させることなく接合材31の液面が上昇し順次空気が水平に追い出されていく。その後、図4(C)に示すように、順次空気がクリアランスの系外へと水平に追い出された後、接合材31の液面が上昇することで接合層30が、未充填部分が僅かとなり、図4(D)に示すように、接合材31の未充填部分がなくなりほとんどの空気がクリアランスの系外へと追い出させる。そして、後述する接合工程S4により接合層30が形成される。
したがって、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とのクリアランスに液体の接合材31を充填する際に、ターゲット材10とバッキングチューブ20を水平にすることで、クリアランスに存在する空気が効果的に抜け、ターゲット材10と接合材31、接合材31とバッキングチューブ20に空孔が生成されない。
次に、接合材を充填する際に用いた器具の一例を説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填を説明するための円筒形スパッタリングターゲットの長手方向の断面図である。図6は、本発明の他の実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法における接合材の充填を説明するための円筒形スパッタリングターゲットの長手方向の断面図である。
図5に示すように、接合層30を形成するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20との一方のクリアランスの開口端を、耐熱性の支持板40などの支持手段を用いて支持する。なお、支持板40には挿通孔を設け、バッキングチューブ20を挿通している。必要に応じて、挿通されたバッキングチューブ20の端部の外周面をクランプで挟持してもよい。ここの支持板40には、支持板40の上方に接合材31の充填状況を確認するための連通孔41を設ける。この連通孔41は、接合材31を充填する時にクリアランス内の空気を排出する空気孔としての役割もある。よって、連通孔41はクリアランスの開口端と連結されている。他方のクリアランスの開口端から接合材31を充填した際に、クリアランスに僅かでも空気が残ったままだと、接合層の接合率が低く、スパッタ時におけるターゲット材の割れや欠けの要因になるおそれがある。そこで、連通孔を設けることにより、クリアランスに溜まった空気を排出させることができる。
また、接合層30を形成するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20との他方のクリアランスの開口端を、耐熱性の封止板50などの封止手段を用いて封止する。なお、封止板50に備わる挿通孔に、バッキングチューブ20を挿通して、挿通されたバッキングチューブ20の端部の外周面をクランプ(不図示)で挟持した。この封止板50には、クリアランスの上端部より上方に、接合材31をクリアランスへ流し込むための流入孔51が設けられる。さらに、封止板50の上端部には、耐熱性のロート60が設けられ、この上端部よりロート60を介して溶解した接合材31をクリアランスへ流し込む。よって、流入孔51はクリアランスの開口端と連結されている。なお、封止板50は、接合材31を固化するまで溶融された接合材31を封止し、またクリアランスを保持するといった目的を有する。
次いで、ターゲット材10とバッキングチューブ20を加熱するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20にバンドヒータ(不図示)など加熱装置を設置する。また、封止板50の上方にあるロート60にも同時にバンドヒータなど加熱装置を設置する。バンドヒータ等加熱装置を加熱し、封止板50の上方にあるロート60より固形状の接合材を投入する。投入された接合材31は、ロート60で融解された液体の接合材が、封止板の流入孔51を通りクリアランスに流れ込み、前述した図4(A)〜(D)に示すように充填される。
ターゲット材10およびバッキングチューブ20は、予め、その表面温度が接合材31の融点以上、好ましくは融点より10℃〜30℃高い温度となるように加熱しておくことが必要である。ターゲット材10およびバッキングチューブ20の表面温度が接合材の融点以下では、接合材がターゲット材10またはバッキングチューブ20に接触すると同時に硬化し、十分な量の接合材を流し込むことが困難となる。
前述した支持板40の上方にある連通孔41は、図5に示すように、接合材31を充填した時のクリアランス内の空気を排出する役割がある。これと同時にクリアランス内の接合材31の充填状況を確認することもできる。連通孔41の上面は、クリアランスの上端部より上方に設置されている。例えば、クリアランスの上端部より50mm程度に設定している。接合材31がクリアランス内を全て充填されれば、当然、連通孔41の底面に同じ高さの位置に接合材31が流れ込んでくる。このため、この連通孔41の底面に接合材31の有無を確認することでクリアランス内の充填の有無を確認できる。より好ましくは、クリアランスの上面より連通孔41に流れ込んだ接合材31の上面が高くなる位置まで充填することがよい。例えば、クリアランス上面より10mm以上高くする。なお、バッキングチューブ20の同軸上に配置されたターゲット材10同士の間には、シリコンパッキン70を挟むことで複数のターゲット材10を一定間隔で配列されている。
また、図6に示すように、支持板140に形成された連通孔141の周縁には、段差142を設けている。具体的には、連通孔141の周縁には、支持板140の上端部を切り欠いて形成された上面が平坦である段差142が設けられる。この連通孔41の上端縁から段差142までの内径はd1であり、この高さはh1である。また、この段差142から連通孔141の底面までの内径はd2であり、この高さはh2である。前述したように、支持板140の上端を切り欠いて段差142が設けられているので、d1はd2よりも大きい。例えば、d1とd2との差が10mm程度あれば、接合材31を充填する際に、段差142で接合材31の液面の面積が急に切り替わるため、適切な量の接合材31をクリアランスに流し込むことができる。このため、接合材31の充填終了をより容易に確認することができる。このような連通孔141は、図5に示す連通孔41と同様に、クリアランス内の空気を排出するため、または接合材31の充填状況を確認するためといった多様な役割を有する。
[2−3.脱気工程]
脱気工程S3は、少なくとも一方のクリアランスの開口端から接合材31を加圧する工程である。これは、図5に示す開口端に接続される支持板40に形成された連通孔41に内在する接合材31の液面を加圧することで、クリアランス内にある空気を脱気する。
ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を同軸に水平に配置し、接合材31を充填しても、クリアランス上面部に一部気泡が残る場合がある。このとき、接合材31の充填後に、連通孔41の内径とほぼ同径のシリコン製の棒を挿入し、上下に可動作し接合材を加圧しても良い。接合材31を加圧することにより液状の接合材31が左右に波をうつので、クリアランス内の空気をより効率的にクリアランス外より排出される。連通孔41の大きさは、特に限定はないが、棒を挿入し上下に可動作し接合材を加圧する必要がありφ5〜φ15mmが好ましい。
脱気工程S3では、ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を含む全体を数回傾けても良い。空気が連通孔41より確実に排出されやすくなる。ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を含む全体を傾けることが容易にできるように、ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20等を配置する時、これら全体を傾けるような専用の台を使用してもよい。傾きの角度に制限はないが、傾けた時、ロート60や流入孔51から充填した接合材31が漏れないように設定する。さらに、支持板40を設けたクリアランスの開口端を支点としてターゲット材10とバッキングチューブ20を同軸に対して±20度の角度範囲に収まるように傾斜させて、クリアランスの開口端から接合材31を加圧することがより好ましい。なお、ターゲット材10とバッキングチューブ20を同軸に対して±20度の角度範囲を超えた場合には、空気をクリアランス外に排出させることができても、ターゲット材10とバッキングチューブ20との設定した中心軸がずれるおそれがある。
ターゲット材10とバッキングチューブ20を傾斜させて接合材31を加圧することにより液状の接合材31が左右に大きな波をうつので、クリアランス内に僅かに残った空気をより確実にクリアランス外に逃がすことができる。例えば、ターゲット材10が複数連結されている場合には、ターゲット材10とターゲット材10との間にシリコンパッキン70を固定するため、クリアランスとシリコンパッキン70との間に接合材31を流しこむと空気が溜まり易い。そこで、ターゲット材10とバッキングチューブ20を傾斜させて接合材31を加圧することは、この溜まった空気を抜くために非常に有用である。
[2−4.接合工程]
接合工程S4は、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを放冷させることにより接合材31を冷却し、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する工程である。そして、この接合工程S4では、接合材31を冷却するにあたり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが水平に配置されている。
従来の接合方法では、ターゲット材とバッキングチューブとを直立状態で放冷することにより、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに充填された接合材が冷却時にクリアランスの下側から冷却されるので空乏部が発生しやすくなる。このため、作製された円筒形スパッタリングターゲットでスパッタリングを行った場合に、空乏部を起因として、割れ、欠け、剥離等の不具合が生じるおそれがある。
一方、本実施形態の接合工程S4では、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが水平に配置された状態で、水平のターゲット材10およびバッキングチューブ20の表面に熱をかけるのを停止し、室温(20℃)まで冷却する。これにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに充填された接合材31はほぼ均一に冷却されるので空乏部が抑制される。
また、接合材31は冷却され固化する際に、固化収縮し体積減少が生じる。さらに、前述したターゲット材10とバッキングチューブ20との材質を勘案すれば、ターゲット材10の熱膨張係数はバッキングチューブ20の熱膨張係数より小さいため、接合材31の融点から常温に冷却する際に、ターゲット材10とバッキングチューブ20とにより形成されるクリアランスの体積が増加し、接合材31が不足する場合がある。このため、接合材31の固化により形成された接合層30が不足すると熱伝導が不良となり割れ、欠けが発生したり、電気伝導が不良となり異常放電が発生したりすることがある。本実施形態では、支持板40の上方にある連通孔41等にクリアランスの上面より接合材31の上面が高くなる位置まで充填することで、接合層30の体積減少を抑制することができる。
そして、従来の接合方法では直立状態で冷却するため、この体積減少は特にクリアランス端面のうち、上端面側に発生しやすく上端面の一部が窪み形状になる場合がある。これに対し、本実施形態では、クリアランスの端面は、支持板40と封止板50の平面でそれぞれ封止され、クリアランスに充填された接合材31が均一に冷却されるので、窪み形状を抑制することができる。
したがって、この接合工程S4では、接合材31を冷却するにあたり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが水平に配置されている状態で、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを放冷する。
次いで、接合材31が完全に固化して接合層30が形成されたことを確認した後、使用したマスキングテープや封止板、余分な接合材等を取り除き、円筒形スパッタリングターゲット1が得られる。
[2−5.まとめ]
以上で説明した通り、本実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を同軸に配置する配置工程S1と、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに接合材31を充填する充填工程S2と、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを放冷させることにより接合材を冷却し、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する接合工程S4とを有する。そして、充填工程S2および接合工程S4では、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが水平に配置されていることを特徴とする。
その結果、円筒形スパッタリングターゲット1の作製時に高い接合率を有する接合層30を形成することができる。そして、円筒形スパッタリングターゲットの製造方法では、スパッタリング時に割れ、欠け、剥離等の不具合が発生しない円筒形スパッタリングターゲット1を得ることができる。また、円筒形スパッタリングターゲットの製造方法では、このような円筒形スパッタリングターゲット1を、工業規模の生産において、容易に得ることができるので、その工業的意義は極めて大きい。
[3.実施例]
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、外径100mm、内径81mm、全長200mmのITO製の円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材10を5つ用意した。次に、全てのターゲット材10について、接合面となる内周面以外の部分に余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱性のマスキングテープでマスキングを行った。その後、全てのターゲット材10について、接合面となる内周面をインジウムで濡らすと共に、全長が1002mmとなるように、5個のターゲット材10を厚み0.5mmのシリコンパッキンで挟んで一定間隔で配列し、外周面を耐熱テープで固定することにより、ターゲット材を得た。
次に、実施例1では、外径80mm、内径70mm、全長1100mmのSUS304製の旋盤加工で得られた円筒形バッキングチューブ20を用意した。この円筒形バッキングチューブ20のうち、接合面以外の部分については、余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱テープでマスキングを行った。その後、投射材としてガラスビーズ♯80を使用し、円筒形バッキングチューブ20について、ブラスト加工を行った。
その後、超音波ハンダ付け装置(会社名:黒田テクノ株式会社、製品名:サンボンダ(登録商標)USM−528)を使用し、インジウム系低融点ハンダを用いた公知の濡らし作業を行った。
次に、実施例1では、多軸ステージによる位置決めおよびクリアランスを維持するシックネスゲージの使用により、円筒形バッキングチューブ20をターゲット材の中空部に同軸に配置し、両者を水平にした。そこで、クリアランスの軸方向一端部を厚さ25mmの支持板40(テフロン(登録商標))によって支持し、この支持板40の上方にφ10mm深さ50mmの連通孔を開けクリアランスの上端部と連結した。また、支持板40に形成された挿通孔をバッキングチューブ20に挿通した。
反対の一端部には、厚さ70mmの封止板50(テフロン(登録商標))によって封止し、この封止板50の上方にφ10mm深さ50mmの流入孔51を開けクリアラスの上端部と連結した。そして、この流入孔51から接合材31を流し込むため50mm角、高さ200mmロート(テフロン(登録商標))を流入孔の上端部に設置した。さらに、封止板50に形成された挿通孔をバッキングチューブ20に挿通して、挿通されたバッキングチューブ20の端部の外周面をクランプで挟持した。なお、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスは、0.5mmであった。
続いて、実施例1では、ターゲット材10の外周面にバンドヒータを取り付け、設定温度を180℃として加熱した。また、インジウム系低融点ハンダを用意し、これをロート60の内部でバンドヒータにより190℃まで加熱して溶融した。
実施例1では、バンドヒータが設定温度に達したことを確認した後、ロート60により封止板50で封止したクリアランスの開口側から、溶融した接合材を注入した。所定量(1017g)の接合材31を注入した後、バンドヒータのスイッチを切り、室温(20℃)まで冷却した。接合材31が完全に固化して接合層30が形成されたことを確認した後、マスキングテープと支持板40、封止板50、余分な接合材を取り除き、円筒形スパッタリングターゲット1を得た。
実施例1では、得られた円筒形スパッタリングターゲット1に対して、超音波探傷装置(会社名:株式会社KJTD、製品名:SDS−WIN)を用いて、接合材31の充填量を測定し、この測定値より、ターゲット材10と円筒形バッキングチューブ20との接合率を評価した。具体的には、これらの接合率が95.0%以上のものを「優(◎)」、90.0%以上95.0%未満のものを「良(○)」、90.0%未満のもの、又は、ターゲット材10が円筒形バッキングチューブ20から脱落し、接合率を評価できなかったものを「不良(×)」として評価した。
実施例1では、得られた円筒形スパッタリングターゲット1の接合率を、上記方法により評価した結果、何れも優れたものであることが確認された。また、円筒形スパッタリングターゲット1をマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置に取り付け、0.6Paのアルゴン雰囲気中、出力300Wで放電試験を実施したところ、スパッタリング中に、ターゲット材に割れや欠け等が生じることはなかった。
実施例1および後述する実施例2,3、並びに比較例1の結果を表1にまとめた。なお、表1中の「放電試験」には、放電試験後の円筒形スパッタリングターゲットの割れ、欠け、剥離等の不具合が生じたか否かの結果を、「有り」又は「無し」で示した。
(実施例2)
実施例2では、接合材31の充填後、空気を抜くための連通孔41にシリコン製の棒を挿入し、支持板40に形成された連通孔41に存在する接合材31を加圧する以外は実施例1と同様にして、円筒形スパッタリングターゲットを作製した。その円筒形スパッタリングターゲットの接合率、及び放電試験の結果を表1にまとめた。
(実施例3)
実施例3では、接合材31の充填後、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを水平のまま接合材31を冷却する前に、支持台を設けたクリアランスの開口端を支点としてターゲット材10とバッキングチューブ20を同軸に対して±20度に3回傾けて、連通孔にシリコン製の棒を挿入し、支持板40に形成された連通孔41に存在する接合材31を加圧する以外は実施例1と同様にして、円筒形スパッタリングターゲット1を作製した。その円筒形スパッタリングターゲット1の接合率、及び放電試験の結果を表1にまとめた。
(比較例1)
一方、比較例1では、ターゲット材およびバッキングチューブを従来と同様に垂直にして、空気抜きなどの工夫を一切行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、円筒形スパッタリングターゲットを作製した。表1に示す結果から、比較例1では、接合材を充填する際に、ターゲット材およびバッキングチューブを水平にさせることによりクリアランスに存在する空気を抜くといった、脱気効果が得られず、接合率が低く熱伝導が得られなかった。このため、比較例1では、放電試験中に、ターゲット材に割れ、欠けが入ったので、放電試験を行うことができなかった。
(実施例に基づく考察)
実施例1〜実施例3及び比較例1により得られた表1に示す結果から、水平にさせることでクリアランスに存在する空気が効果的に抜け、ターゲット10と接合材31、接合材31とバッキングチューブ20に空孔を生成させず、円筒形スッパタリングターゲット1の接合率及び接合強度を向上することができた。また、実施例2,3は、流し込んだ接合材を加圧し、またはターゲット材とバッキングチューブとを傾斜させて接合材を加圧することにより、空気を効率的に排出することができたので、実施例1よりも接合率が向上した。したがって、本実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法では、スパッタリング時の熱負荷によって、ターゲット材10に割れや剥離が生じることがない円筒形スパッタリングターゲット1が得られることを確認した。さらに、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅が0.5mmと狭くても、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを水平にさせることでクリアランスに接合材31を充填する際に、クリアランスに存在する空気が効果的に抜けることも確認した。
1 円筒形スパッタリングターゲット、10 ターゲット材、20 バッキングチューブ、30 接合層、31 接合材、40 支持板、41 連通孔、50 封止板、51 流入孔、60 ロート、70 シリコンパッキン、140 支持板、141 連通孔、142 段差、200 円筒形スパッタリングターゲット、210 接合材、220 空気孔

Claims (7)

  1. 円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に配置する配置工程と、
    前記ターゲット材と前記バッキングチューブとのクリアランスに接合材を充填する充填工程と、
    前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを放冷させることにより前記接合材を冷却し、該ターゲット材と該バッキングチューブとを接合する接合工程とを有し、
    前記充填工程および前記接合工程では、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとが水平に配置されていることを特徴とする円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 前記充填工程では、少なくとも一方の前記クリアランスの開口端に、空気抜きとして用いられる連通孔を設けることを特徴とする請求項1記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 前記連通孔の周縁には、段差を設けることを特徴とする請求項2記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 前記充填工程後に、少なくとも一方の前記クリアランスの開口端から前記接合材を加圧する脱気工程をさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 前記脱気工程では、少なくとも一方の前記クリアランスの開口端を支点として前記ターゲット材と前記バッキングチューブを前記同軸に対して±20度の角度範囲に収まるように傾斜させて、該クリアランスの開口端から前記接合材を加圧することを特徴とする請求項4記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  6. 前記配置工程では、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを水平に配置した際に、少なくとも1つの固定具を該ターゲット材と該バッキングチューブとの間に取り付けることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  7. 前記配置工程では、前記バッキングチューブの同軸上には、前記ターゲット材が複数連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
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