JP6341146B2 - 円筒形スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

円筒形スパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネトロン型回転カソードスパッタリング装置によるスパッタリングに使用される円筒形スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
従来から、スパッタリングターゲットとしては、平板状のターゲット材をバッキングプレートに接合した平板形スパッタリングターゲットが一般的に利用されている。平板形スパッタリングターゲットを使用して、マグネトロンスパッタリング法によりスパッタリングを行った場合におけるターゲット材の使用効率は、20%〜30%に留まっている。その理由は、マグネトロンスパッタリング法では、磁場によってプラズマをターゲット材の特定箇所に集中して衝突させるため、ターゲット材の表面の特定箇所にエロージョン(erosion)が進行する現象が起こり、ターゲット材の最深部がバッキングプレートまで達したところで、ターゲット材の寿命となってしまうためである。
この問題に対して、スパッタリングターゲットを円筒形にすることで、ターゲット材の使用効率を上げることが提案されている。この方法は、円筒形のバッキングチューブと、その外周部に形成された円筒形のターゲット材とからなる円筒形スパッタリングターゲット(以下、単に「円筒形ターゲット」と呼称する場合がある。)を用いて、バッキングチューブの内側に磁場発生設備と冷却設備を設置して、円筒形ターゲットを回転させながらスパッタリングを行うものである。この方法により、ターゲット材の使用効率を60%〜70%にまで高めることができるとされている。
また、スパッタリング時に円筒形ターゲットの割れや剥離等が発生しないバッキングチューブとターゲット材との接合方法として、例えば、特許文献1には、円筒形基材と円筒形ターゲット材との間に空隙層を設けて半田で接合する方法が開示されている。さらに、例えば、特許文献2には、複数の円筒形ターゲット材と円筒形基材とを接合する際に、円筒形ターゲット材同士の接続部に所定幅の間隙を設ける方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法では、例えば、バッキングチューブとターゲット材との間の空間に、低融点半田等の接合材を注入して接合層を形成する場合に、空間の幅が1mm程度と狭いため、円筒形ターゲットの端部から接合材を注入する際に空気を取り込み、巣(鬆)が入ったり、ひけが生じたりして、均一な接合層を得ることは容易ではなく、それが原因で円筒形ターゲットに割れが発生する。
また、ターゲット材とバッキングチューブの熱膨張係数差、及び接合材の凝固収縮により接合材に空隙が発生することがある。例えば、内径135mm、長さ200mmの酸化亜鉛ターゲット材を、外径133mmのチタン製バッキングチューブに融点156℃のインジウムを190℃に溶融して充填し、冷却して接合する場合、バッキングチューブとターゲット材との間の空間体積は酸化亜鉛とチタンの熱膨張係数差により5.0%大きくなり、接合材のインジウムは凝固収縮により5.8%収縮する。その結果、バッキングチューブとターゲット材の間に計算上10.3%の接合材未充填部が生じることになる。
この問題を解決するために、例えば、特許文献3には、セラミックス円筒形ターゲット材と円筒形基材とにより形成されたキャビティに溶融状態の接合材(溶融材)を充填し、円筒軸方向の一端より冷却を開始し、他端に向けて接合材を順次冷却する方法が開示されている。この方法によれば、冷却時のバッキングチューブとターゲット材との間の空間体積の増大分と接合材の凝固収縮により接合材で満たされなくなった分に対して、溶融状態の接合材を上方から新たに補充することで、バッキングチューブとターゲット材との間の接合材未充填部が減少し、接合材の充填率が96.8%以上に高まるとされている。
特開2008−184627号公報 特開2008−184640号公報 特開2010−018883号公報
しかしながら、セラミックス円筒形ターゲット材と円筒形基材とにより形成されたキャビティに溶融状態の接合材を充填し、円筒軸方向の一端より冷却を開始して、他端に向けて順次冷却を行うためには、複数のヒーターと温度制御装置を用意して、各ヒーター温度を順次制御する必要があるので、冷却作業等が複雑になるという問題があった。すなわち、円筒形スパッタリングターゲットを製造する際に、バッキングチューブとターゲット材との間の接合材の充填率を高めながら、順次冷却や接合材補充等の作業の手間を要することなく、円筒形スパッタリングターゲットを効率的に製造することが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、順次冷却や接合材補充を行うことなく、接合材の未充填欠陥の少ない円筒形スパッタリングターゲットを効率的に製造することの可能な、新規かつ改良された円筒形スパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、円筒形のターゲット材を円筒形のバッキングチューブの外周面に接合層を介して接合した円筒形スパッタリングターゲットの製造方法であって、前記ターゲット材の内周面及び前記バッキングチューブの前記外周面のそれぞれに接合材を塗布する塗布工程と、前記ターゲット材の内周面側に有する中空部に前記バッキングチューブを同軸に配置する配置工程と、前記ターゲット材の内周面と前記バッキングチューブの前記外周面との間の空隙部に前記接合材を充填する充填工程と、前記空隙部に充填された接合材を撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程後に前記ターゲット材と前記バッキングチューブを冷却して前記接合層を形成する冷却工程と、を含み、前記バッキングチューブは、SUS304又はチタンから形成され、前記塗布工程では、前記バッキングチューブの前記外周面に対して表面粗さRaが2.0μm以上12μm以下、Rzが10μm以上50μm以下となるようにブラスト加工後に超音波はんだ付け装置のコテ先を加圧する際の加圧力を0.2kg/cm以上、10.0kg/cm以下にして超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら前記接合材を塗布し、前記ターゲット材の前記内周面に対して超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら前記接合材を塗布することを特徴とする。
本発明の一態様によれば、接合材の塗布工程でバッキングチューブの外周面及びターゲット材の内周面のそれぞれに接合材を塗布する際に、ブラスト加工や超音波振動エネルギーの付与等の表面処理をしてから接合材を塗布することによって、必要最小限の接合材で順次冷却を行ことなく、接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成することができる。特に、バッキングチューブの外周面をブラスト加工後に超音波はんだ付け装置のコテ先で加圧して超音波振動エネルギーを付与するので、バッキングチューブの表面に形成される不動態皮膜を破壊して、活性面を発現させることによって接着力を確保し、バッキングチューブの表面に形成されるミクロ的頂点を塑性変形させることで、アンカー効果を向上させられ、バッキングチューブの旋盤加工で付着した異物、油分をクリーニングすると共に、比表面積増加による接合材の濡れ性を向上させられ、また、超音波エネルギーの付与によりバッキングチューブのミクロ的頂点を塑性変形させることができる。
発明の一態様では、前記塗布工程では、前記バッキングチューブの前記外周面の表面の凹凸の頂点部分の高さを不揃いにさせて表面粗さRaが2.0μm以上12μm以下、Rzが10μm以上50μm以下となるようにブラスト加工後に、前記超音波振動エネルギーを付与しながら前記接合材を塗布することとしてもよい。
このようにすれば、バッキングチューブの旋盤加工で付着した異物、油分をクリーニングすると共に、比表面積増加による接合材の濡れ性を向上させられ、また、超音波エネルギーの付与によりバッキングチューブのミクロ的頂点を塑性変形させることができる。
また、本発明の一態様では、前記塗布工程では、前記バッキングチューブの前記外周面での前記コテ先の移動速度を30cm/min以上、120cm/min以下とすることとしてもよい。
このようにすれば、バッキングチューブの表面に形成される不動態皮膜を破壊し、活性面を発現させることによって接着力を確保して、当該バッキングチューブの表面に形成されるミクロ的頂点を塑性変形させることで、アンカー効果を向上させることができる。
また、本発明の一態様では、前記充填工程では、前記空隙部の一端を封止部材で封止してから、該一端が底部側となるように前記バッキングチューブを鉛直に立て、前記空隙部の他端に2つの開口部が形成されるように該開口部以外の部位をシール部材で塞いで、前記開口部の何れか一方から前記接合材を充填することとしてもよい。
このようにすれば、バッキングチューブの外周面とターゲット材の内周面との間に充填する接合材の量を過剰とすることなく、接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成できる。
また、本発明の一態様では、前記充填工程では、前記空隙部の一端を封止部材で封止してから、該一端が底部側となるように、前記バッキングチューブを鉛直方向に対して35度以上55度以下の角度に傾けて、前記空隙部の他端に1つの開口部が形成されるように該開口部以外の部位をシール部材で塞いで、前記開口部から前記接合材を充填することとしてもよい。
このようにすれば、特に、長尺化された円筒形スパッタリングターゲットを製造する際に、バッキングチューブの外周面とターゲット材の内周面との間に過剰とすることなく適量な接合材を効率的に充填して、接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成できる。
以上説明したように本発明によれば、接合材未充填部を解消するために一方の端部より順次冷却を行うことなく、接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成することができる。また、必要最小限の接合材で当該接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成できるので、接合材の使用量を減らすことが可能となる。
本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の充填工程の一態様を示す動作説明図である。 本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の充填工程の他の一態様を示す動作説明図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
まず、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの概略断面図である。
図1に示すように、円筒形スパッタリングターゲット1は、円筒形のターゲット材2が円筒形のバッキングチューブ3の外周面3aに設置されたものであり、ターゲット材2とバッキングチューブ3とが接合層4を介して接合されている。本実施形態では、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材2の内周面側に有する中空部2bにバッキングチューブ3を同軸に配置して、これらターゲット材2とバッキングチューブ3の中心軸が一致した状態で接合層4を介して接合されたものとなっている。すなわち、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材2の内周面2aとバッキングチューブ3の外周面3aとを接合層4を介して一体となるように接合されたものとなっている。
円筒形スパッタリングターゲット1のサイズは、材質や顧客の要望等に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。例えば、外径が100mm〜200mm、内径が80mm〜180mm、全長が50mm〜200mmの円筒形セラミックス焼結体をターゲット材2として用いた場合には、そのターゲット材2を単独で用いるとき、分割して用いるとき、あるいは複数で用いるとき等があり、その状況により円筒形スパッタリングターゲット1のサイズが適宜決定される。
ターゲット材2は、円筒形セラミックス焼結体からなり、当該円筒形セラミックス焼結体は、用途に応じて材料を適宜選択することができ、特に限定されることはない。例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種を主成分とする酸化物等から構成される円筒形セラミックス焼結体を使用することができる。
特に、後述する低融点接合材と馴染みやすい酸化インジウムを主成分とする円筒形セラミックス焼結体、具体的には、スズを含有する酸化インジウム(ITO)、セリウム(Ce)を含有する酸化インジウム(ICO)、ガリウム(Ga)を含有する酸化インジウム(IGO)、ガリウム及び亜鉛を含有する酸化インジウム(IGZO)等から構成される円筒形セラミックス焼結体がターゲット材2として好適に利用される。
ターゲット材2の外径及び全長は、円筒形スパッタリングターゲット1のサイズに応じて適宜調整することが可能である。ターゲット材2の内径は、ターゲット材2の内周面2aとバッキングチューブ3の外周面3aとの間の空隙部9の幅及びバッキングチューブ3の外径に応じて適宜調整することが可能であり、これらは、特に限定されるものではない。また、ターゲット材2としては、1つの円筒形セラミックス焼結体から構成されるものだけでなく、複数の円筒形セラミックス焼結体を連結したものを使用することができる。円筒形セラミックス焼結体同士の連結方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
バッキングチューブ3は、その材質が円筒形スパッタリングターゲット1の使用時に、接合層4が劣化及び溶融しない十分な冷却効率を確保できる熱伝導性があり、スパッタリング時に、放電可能な電気伝導性、円筒形スパッタリングターゲット1の支持が可能な強度等を備えているものであればよい。バッキングチューブ3として、例えば、一般的なオーステナイト系ステンレス製、特にSUS304製のものに加えて、銅又は銅合金、チタン又はチタン合金、モリブデン又はモリブデン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の各種材質を使用することができる。
バッキングチューブ3の全長は、円筒形スパッタリングターゲット1のサイズに応じて適宜調整することが可能である。内径は、スパッタリング装置に応じて適宜調整することが可能であり、これらは特に限定されるものではない。また、バッキングチューブ3の外径は、下地層の厚さと共に、バッキングチューブ3とターゲット材2との線膨張率の差を考慮して設定することが好ましい。
例えば、ターゲット材2として、20℃における線膨張率が7.2×10−6/℃のITOを使用し、バッキングチューブ3として、20℃における線膨張率が17.3×10−6/℃であるSUS304を使用する場合には、ターゲット材2とバッキングチューブ3との隙間の幅が、好ましくは0.3mm〜3.0mm、より好ましくは0.5mm〜1.0mmとなるように、バッキングチューブ3の外径を設定する。
ターゲット材2とバッキングチューブ3との隙間の幅が0.3mm未満では、溶融した接合材をこの隙間に注入した場合に、バッキングチューブ3が熱膨張し、ターゲット材2が割れてしまう虞がある。一方、隙間の幅が3.0mmを超えると、ターゲット材2の中空部に、バッキングチューブ3を同軸に配置し、これらの中心軸が一致した状態で接合することが困難となる。
接合層4は、例えば、インジウムからなり、ターゲット材2とバッキングチューブ3とを接合する。接合層4の役割は、放電により円筒形スパッタリングターゲット1上に発生した熱をバッキングチューブ3の内側を流れる冷却液で放熱するため、ターゲット材2とバッキングチューブ3との熱的な伝達を行うことにある。すなわち、接合層4は、円筒形スパッタリングターゲット1を使用する際に、バッキングチューブ3と同様にして、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等を備えていればよい。
接合層4に上述のバッキングチューブ3と同様にして、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等の特性を持たせるためには、接合層4の形成に用いる接合材を選定する必要がある。例えば、インジウムを主成分とする接合材は、スズを主成分とする接合材に比べて凝固時の硬度が低い。そのため、インジウムを主成分とする接合材を用いて接合層4を形成する場合には、溶融した接合材を注入してから固化するまでの過程において、ターゲット材2の割れ等の不具合を効果的に防止することができる。
また、インジウムを主成分とする接合材を用いて接合層4を形成する場合には、インジウムを50質量%以上、好ましくは70質量%〜100質量%、より好ましくは80質量%〜100質量%含有するものを使用する必要がある。特に、インジウムを80質量%以上、好ましくは90質量%〜100質量%含有する低融点接合材を接合材6として用いることが好ましい。このような低融点接合材であれば、原子又は分子間の結合が弱いため軟らかく、冷却固化後の硬度が適切な範囲にあるため、作業性に優れている。また、低融点接合材は、作業性に優れるだけでなく、溶融時の流動性が高いため、巣(鬆)やひけが極めて少ない、均一な接合層4を容易に形成することができる。
例えば、インジウムの含有量が100質量%であるインジウム金属を接合材として用いた場合には、インジウム金属の熱伝導率が81.6W/m・kと熱伝導性に優れることから好ましい。また、インジウム金属は、液化して固化することによりターゲット材2とバッキングチューブ3とを接合させる際に、これらを密着性よく接合できることから好ましい。
一方、インジウムの含有量が50質量%未満では、バッキングチューブ3側との濡れ性が低いため、そのような接合材を加熱して溶融した接合材をターゲット材2の内周面2aとバッキングチューブ3の外周面3aとの間の空隙部9に、高い充填性をもって隙間なく注入することができない。
また、接合材としては、上述したインジウム系低融点接合材の他に、インジウム粉末を含有する樹脂ペースト、導電性樹脂等を用いることができるが、導電性や展延性の観点から、インジウム系低融点接合材が好ましく、融点が130℃〜160℃のインジウム系低融点接合材がより好ましい。なお、インジウム以外の成分については、特に制限されることはなく、例えば、スズ、アンチモン(Sb)、亜鉛等を必要に応じて含有させることができる。インジウム以外の成分の含有量は、50質量%未満であり、30質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましい。
次に、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法について、図面を使用しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。
本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲット1の製造方法は、円筒形のターゲット材2を円筒形のバッキングチューブ3の外周面3aに接合層4を介して接合した円筒形スパッタリングターゲット1の製造方法であって、図2に示すように、塗布工程S11、配置工程S12、充填工程S13、撹拌工程S14、及び冷却工程S15を含む。
塗布工程S11は、ターゲット材2の内周面2a及びバッキングチューブ3の外周面3aのそれぞれに接合材を塗布する。配置工程S12は、塗布工程S11で内周面2aに接合材を塗布したターゲット材2の中空部2bに、その外周面3aに接合材を塗布したバッキングチューブ3を同軸に配置する。充填工程S13は、配置工程S12後にターゲット材2の内周面2aとバッキングチューブ3の外周面3aとの間の空隙部9に接合材を充填する。撹拌工程S14は、充填工程S13で空隙部9に充填された接合材を撹拌する。冷却工程S15は、撹拌工程S14後にターゲット材2とバッキングチューブ3を冷却して接合層4を形成する。
すなわち、本実施形態では、円筒形スパッタリングターゲット1は、上述のように内周面2aに表面処理を行ったターゲット材2と、表面処理を行ったバッキングチューブ3とを同軸に配置し、ターゲット材2とバッキングチューブ3との空隙部9に接合材で接合層4を形成することにより作製される。本実施形態の円筒形スパッタリングターゲット1は、例えば、ITO製の円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と、SUS304製のバッキングチューブとをインジウム系低融点接合材を使用して接合することにより、作製することができる。
本発明者は、前述した本発明の目的を達成するために接合材に発生する空隙について、鋭意検討を重ねた結果、バッキングチューブ3と接合材、及びターゲット材2と接合材の界面濡れ性を高めると共に、溶融した接合材と接合材濡らし面の一体化を高めてから、ターゲット材2とバッキングチューブ3間の空間体積を接合材で満たして冷却した場合、接合材に発生する空隙が熱膨張係数差や凝固収縮から予測されるよりも少なくなることを見出した。また、その際に、ターゲット材2やバッキングチューブ3の端部より順次冷却を行わず、接合材を追加補充することなく、接合材の未充填欠陥の少ない接合層4が形成されることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に研究を行った結果、完成するに至った。
本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲット1の製造方法は、塗布工程S11では、バッキングチューブ3の外周面3aに対してブラスト加工及び超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら接合材を塗布し、ターゲット材2の内周面2aに対して超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら接合材を塗布することを特徴とする。すなわち、接合材の塗布工程S11でバッキングチューブ3の外周面3a及びターゲット材2の内周面2aのそれぞれに接合材を塗布する際に、ブラスト加工や超音波振動エネルギーの付与等の表面処理をしてから接合材を塗布することによって、必要最小限の接合材で順次冷却を行ことなく、接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成可能としている。
本実施形態の円筒形スパッタリングターゲット1の製造方法における塗布工程S11では、バッキングチューブ3の外周面3aの表面処理をする際に、バッキングチューブ3の外周面3aを表面粗さRa(算術平均粗さ)が2.0μm以上12μm以下、表面粗さRz(十点平均粗さ)が10μm以上50μm以下となるようにブラスト加工後に、超音波振動によるエネルギーを付与しながら接合材を塗布することを特徴とする。
このようにバッキングチューブ3の外周面3aをブラスト加工後に、超音波振動によるエネルギーを付与しながら接合材を塗布することによって、以下の5つの作用と効果を奏することから、バッキングチューブ表面と接合材との密着性を確保できる。
(1)第一に、バッキングチューブ表面を旋盤にて、外形加工を行う。
(2)第二に、ブラスト処理を行うことで、表面のミクロ的な頂点部分の高さを不揃いにさせる。
(3)第三に、超音波はんだ付け装置のコテ先の加温及びバッキングチューブの加温により接合材を溶融し、バッキングチューブ表面を覆う。
(4)第四に、超音波振動のキャビテーションにより、溶融した接合材でバッキングチューブ表面の洗浄及び濡れ性を確保する。
(5)第五に、バッキングチューブ表面を溶融した接合材で覆われた状態(非酸化環境下)で超音波はんだ付け装置のコテ先で加圧を行いながら、バッキングチューブ表面のミクロ的頂点を超音波エネルギーにより塑性変形させることで、接合材とのアンカー効果を促進させ、及び不動態皮膜を破壊し、活性面が現れ、接合材との間で接着が得られる。
従来では、表面粗さが粗いほど、バッキングチューブ表面と接合材との間でアンカー効果が得られると考えられていたため、バッキングチューブ表面は、表面粗さが粗い方が良いと考えられていた。しかし、アンカー効果だけでは、不動態皮膜を有する金属では、接着が得られず、実使用時の熱的応力により、界面剥離が発生し、バッキングチューブ表面と接合材が剥離してしまう。特に、ステンレスやチタン等の表面に形成される不動態皮膜は、ブラスト加工で表面をクリーニングしても、空気中では瞬時に不動態皮膜再生してしまう。
円筒形スパッタリングターゲット1を構成する円筒形のバッキングチューブ3としては、オーステナイト系ステンレス製、特に、SUS304製のものを使用することが一般的である。これらのバッキングチューブ3は、その外周面3aに強固な不動態皮膜が形成されているため、そのままでは、接合材と高い接合率及び接合強度をもって接合することはできない。
このため、本発明の一実施形態では、旋盤加工等で得られたバッキングチューブ3の表面3aをブラスト加工により、クリーニングすることが好ましい。このようにブラスト加工を行うことによって、旋盤加工で付着した異物、油分をクリーニングすると共に、比表面積増加による接合材の濡れ性が向上できる。逆に、ブラスト加工を行わない場合、旋盤加工で付着した異物、油分により、接合材との接着性が悪化する。なお、ブラスト加工でクリーニング以上に表面を平滑化させた場合、接合材とのアンカー効果が期待できない。
バッキングチューブ3の材質は、SUS304の場合に好適に適用することができるが、他の材質、具体的には、SUS304以外のステンレス、チタンまたはチタン合金、モリブデンまたはモリブデン合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、更には強固な不動態皮膜のない銅または銅合金などに対しても適用することができる。
バッキングチューブ3の加工は、ステンレス管を旋盤加工により外形仕上げを行う。旋盤加工後の表面は、一定の間隔で凹凸の曲線が並んでおり、この状態で超音波エネルギーを付与しても凹凸の頂点部分がほぼ等しい高さで並んで支えあっていることが原因で、当該頂点部分を塑性変形させることができない。そこで、本実施形態では、ブラスト加工を行うことによって、当該凹凸の頂点部分の高さが不揃いとなり、Raが2.0μm以上12μm以下、Rzが10μm以上50μm以下となっていれば、超音波エネルギー付与によりミクロ的頂点を塑性変形させることができる。
ブラスト加工は、公知のエアーブラストの技術が使用できる。ガラスビーズなら#200よりも粗い粒度が好適に使用される。アランダム等の研削材でも同様に使用できる。その投射圧も公知の範囲であり、0.9MPa以下で行うことができる。
ブラスト加工後に超音波振動エネルギーを付与する際に使用される超音波はんだ付け装置は、超音波振動子、ヒーター、コテ先、加圧機構、移動機構より構成される。超音波振動子、ヒーター、コテ先は、公知の超音波はんだごてを使用することができる。
バッキングチューブ3の表面、すなわち外周面3aに超音波はんだ付け装置のコテ先を加圧するには、バッキングチューブ表面3aとコテ先との接触時の接触面積がA(cm)、コテ先を通してのバッキングチューブ3への荷重がF(kg)のとき、下記の式(1)で得られるコテ先の単位面積当たりの加圧力σ[kg/cm]が、不動態皮膜の破壊及び、ミクロ的頂点の塑性変形を発生させる圧力以上であることが必要となる。
σ=F÷A・・・・(1)
従って、コテ先のバッキングチューブ表面3aへの加圧力σは、0.2kg/cm以上、10.0kg/cm以下であることが好ましい。このように加圧力σが0.2kg/cm以上、10.0kg/cm以下であれば、不動態皮膜を破壊し、活性面を発現させることで、接合材の接着力を確保できる。また、バッキングチューブ表面3aのミクロ的頂点を塑性変形させることで、アンカー効果を向上させることができる。加圧力σが、0.2kg/cm未満の場合は、不動態皮膜を破壊やミクロ的頂点の塑性変形に至らないため、接着力が不十分である。また、10.0kg/cmを超える場合、超音波打撃によりバッキングチューブ表面3aが平滑になってしまい、接着力が不十分になる。
バッキングチューブ表面3aでのコテ先の移動速度は、30cm/min以上、120cm/min以下であることが好ましい。移動速度が、30cm/min以上、120cm/min以下であれば、不動態皮膜を破壊し、活性面を発現させることで、接着力を確保できる。また、バッキングチューブ表面3aのミクロ的頂点を塑性変形させることで、アンカー効果を向上させることができる。移動速度が、120cm/minを超える場合は、不動態皮膜を破壊やミクロ的頂点の塑性変形に至らないため、接着力が不十分である。また、30cm/min場合、超音波打撃により、バッキングチューブ表面3aが平滑になってしまい、接着力が不十分になる。
コテ先に与える振動エネルギーは、適用する状況に応じて適宜選択すればよいが、周波数15kHz〜1MHz程度の超音波波長領域近辺の弾性波を用いるのが実施上扱い易く、かつ、均一な接合面が得られるので好ましい。その際に、超音波振動子の共振周波数で安定した最適周波数を印加し、その最適周波数でバッキングチューブ3の表面(外周面)3aに超音波エネルギーを付与するのが好ましい。
バッキングチューブ表面3aに超音波エネルギーを与えるに当たり、コテ先に付随するヒーターで接合材を溶解し、バッキングチューブ表面3aを覆うことで、超音波エネルギーを付与する際に、その接触面は、公知の低融点はんだで覆われていることで、空気の侵入が遮断されて非酸化環境下となり、超音波エネルギーを付与による不動態皮膜の剥離後、不動態皮膜の再生を防止し、接合材との十分な接着を確保することができる。
また、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の塗布工程S11では、ターゲット材2の内周面2aに対しても、バッキングチューブ3の表面処理と同様に、ターゲット材2の内周面2aと接合材との密着性を確保するために、予めターゲット材2の内周面2aに対して、超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら接合材を塗布する。超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら接合材を塗布する条件は、前述したバッキングチューブ3への塗布条件と同じ条件として構わない。
塗布工程S11が終了したら、次に、配置工程S12では、塗布工程S11で内周面2aに接合材を塗布したターゲット材2の中空部2bに、その外周面3aに接合材を塗布したバッキングチューブ3を同軸に配置する。本実施形態では、バッキングチューブ3をターゲット材2の中空部2bに同軸に、すなわち、これらの中心軸が一致した状態で配置し、両者を接合することが重要となる。両者の中心軸がずれた状態で接合すると、得られる円筒形スパッタリングターゲット1の外径の中心と内径の中心がずれてしまう。その結果、スパッタリング時の熱負荷により、円筒形スパッタリングターゲット1が不均一に膨張し、ターゲット材2に割れや剥離が生じるおそれがある。
なお、バッキングチューブ3をターゲット材2の中空部2bに同軸に配置する方法としては、特に制限されることなく、公知の手段を用いることができる。例えば、X−Yステージを用いて位置決めをすることにより、バッキングチューブ3をターゲット材2の中空部2bに同軸に配置することができる。
配置工程S12が終了したら、次の充填工程S13では、ターゲット材2の内周面2aとバッキングチューブ3の外周面3aとの間の空隙部9(図3参照)に接合材を充填する。本実施形態における充填工程S13では、まず、ターゲット材2とバッキングチューブ3との空隙部9の軸方向一端部をOリング等の公知の封止部材により封止する。そして、この封止側が下方、すなわち底部側となるように、ターゲット材2とバッキングチューブ3とを直立させる。
その後、接合層4を形成するために。ターゲット材2の内周面2aとバッキングチューブ3の外周面3aとの間の空隙部9に接合材を注入する。溶融状態の接合材を充填する際には、気泡を巻き込まないようにするために、図3に示すように、ターゲット材2の端部を接合材注入部5と空気抜き部6を除いてシール部材7で覆い、接合材容器8から接合材注入部5に接合材を注入する。すなわち、ターゲット材2の端部内周面側に有する空隙部9の他端に2つの開口部が形成されるように当該開口部以外の部位をシール部材7で塞いで、開口部の何れか一方を接合材注入部5にして、当該接合材注入部5から溶融状態の接合材を充填する。このように、バッキングチューブ3の外周面3aとターゲット材2の内周面2aとの間の空隙部9に接合材を充填することによって、接合材の量を過剰とすることなく、接合材の未充填欠陥の少ない接合層を形成できるようになる。
本実施形態では、接合材注入部5は、溶融状態の接合材を充填する際に、より確実に気泡を巻き込まないようにするために、ターゲット材2とバッキングチューブ3の空隙部9の円周方向において、6分の1以下の角度範囲となるように制限するのが好ましい。なお、本実施形態では、ターゲット材2の端部内周面側に有する空隙部9の他端に2つの開口部として、接合材注入部5と空気抜き部6が互いにバッキングチューブ3を介して対向する配置となるように形成されているが、接合材注入部5と空気抜き部6の配置は、かかる態様に限定されない。
また、空隙部9に充填される接合材に既に超音波はんだ付け装置等で形成された濡らしのインジウム層と接着させる方法としては、流し込みをターゲット端部(360度)の6分の1以下に制限された角度でのみ接合材を流し込む方法、具体的には、バッキングチューブ3とターゲット材2を垂直ではなく、垂直から35度以上55度以下の角度に傾けて流し込む方法が取られる。
すなわち、充填工程S13では、図4に示すように、バッキングチューブ3とターゲット材2を垂直ではなく、垂直から35度以上55度以下傾けて接合材を注入してもよい。その場合には、ターゲット材2とバッキングチューブ3の空隙部9の接合材注入部16を除く領域を、シール部材17で覆う必要がある。具体的には、空隙部9の一端をOリング等の封止部材で封止してから、当該一端が底部側となるように、バッキングチューブ3とターゲット材2を鉛直方向に対して35度以上55度以下の角度に傾けて、空隙部9の他端に1つの開口部16が形成されるように当該開口部以外の部位をシール部材17で塞いで、開口部16から接合材を充填するようにしてもよい。
このように、接合材注入部と空気抜き部を兼用するように開口部16を設けてから、鉛直方向に対して所定角を傾けて溶融状態の接合材を充填することにより、特に、例えば、2m以上等の長尺化された円筒形スパッタリングターゲットを製造する際に、接合材を充填する作業の効率性が向上する。すなわち、長尺化された円筒形スパッタリングターゲット1を製造する際に、バッキングチューブ3の外周面3aとターゲット材2の内周面2aとの間に過剰とすることなく適量な接合材を効率的に充填して、接合材の未充填欠陥の少ない接合層4を形成できるようになる。
充填工程S13で空隙部9に溶融状態の接合材をターゲット材2と同じ高さまで充填したら、次に、溶融状態の接合材に鋼線や鋼板を差し込んで空隙部9に充填された当該接合材を撹拌する(撹拌工程S14)。このように撹拌工程14が行われることによって、空隙部9に充填された溶融状態のインジウム等からなる充填剤が接合層内で塗布工程S11において形成された接合材層と一体化して強固な一枚岩の層となる。
その後、撹拌工程S14が終了したら、ターゲット材2とバッキングチューブ3を冷却して接合層4を形成する(冷却工程S15)。このように、本実施形態では、バッキングチューブ3の外周面3aとターゲット材2の内周面2aの表面処理をして接合材を塗布したものを同軸配置して、双方の空隙部9に溶融状態の接合材を充填して、当該接合材を撹拌してから冷却することによって、接合層4を形成している。
このような手順で円筒形スパッタリングターゲット1を製造することによって、ターゲット材2及びバッキングチューブ3と接合材との濡れ性が高まると共に、濡らし表面に形成されている酸化被膜が撹拌によって破れて新生面が露出し、濡らし面と溶融接合材とが一体化するようになる。そして、当該塗らし面と溶融接合材とを一体化したものを冷却することによって、バッキングチューブ3とターゲット材2の熱膨張係数差による空間体積の増加と固液密度差によって、接合材が収縮しようとするが、接合材は、濡れ性が高く、さらにバッキングチューブ3及びターゲット材2と一体化しているので、ターゲット材2やバッキングチューブ3の界面での剥離が生じない。このため、バッキングチューブ3とターゲット材2の熱膨張係数差や接合材の凝固収縮から計算されるほど、接合材未充填部が発生しないようになる。なお、冷却後の接合材の見かけ体積が減少しない理由は明らかではないが、接合材厚み方向の引張応力によって、接合材内部にミクロな空孔が生じていることがその一因として考えられる。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
(実施例1)
ターゲット材としては、外径153mm、内径135mm、全長200mmのITO製の円筒形セラミックス焼結体を用意した。5本の円筒形セラミックス焼結体について、接合面となる内周面以外の部分に余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱性のマスキングテープでマスキングを行った。その後、接合面となるITO焼結体の内周面を超音波はんだ付け装置(黒田テクノ株式会社製、サンボンダUSM-528)を使用してインジウムで濡らして、接合前のターゲット材を得た。コテ先の形状は50mm×10mmとし、ターゲット材に接する面にはターゲット材内周面の曲率半径と同一に加工したものを使用した。
一方、バッキングチューブとしては、外径133mm、内径125mm、全長1100mmのSUS304製の旋盤加工で得られた円筒形バッキングチューブを用意した。このバッキングチューブのうち、接合面以外の部分については、余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱テープでマスキングを行った。その後、投射材としてガラスビーズ♯80を使用し、投射圧0.5MPaでブラスト加工を行った。その後、接合面となるバッキングチューブの外周面を超音波はんだ付け装置(黒田テクノ株式会社製、サンボンダUSM−528)を使用して、コテ先のバッキングチューブ表面への加圧力σを5.0kg/cm、コテ先の移動速度を60cm/minとしてインジウムで濡らして、接合前のバッキングチューブを得た。コテ先の形状は50mm×10mmとし、バッキングチューブに接する面にはバッキングチューブ外周面の曲率半径と同一に加工したものを使用した。
ターゲット材内周面及びバッキングチューブの外周面には、コテ先の温度を200℃とし、インジウムを溶融しながら、自動調整機能を使用しての最適周波数(例えば、28kHz±5kHz)に設定し、超音波エネルギーを付与し、接合材を塗布した。
次に、X−Yステージによる位置決めにより、バッキングチューブをターゲット材の中空部に同軸に配置すると共に、隙間の軸方向一端部を耐熱Oリングによって封止し、この封止側が下方となるように、ターゲット材とバッキングチューブを直立させた。
続いて、ターゲット材の外周面にバンドヒータを取り付け、設定温度を190℃として加熱した。また、接合材として、インジウムを溶融した。
バンドヒータが設定温度に達したことを確認した後、上方の360度の開口端のうち、300度分を耐熱テープで封印して、残る60度分のクリアランスに溶融した接合材を注入し、ターゲット材と同じ高さに充填されているのを確認した後、直径0.5mmの鋼線をターゲット材とバッキングチューブの隙間に挿入して溶融状態の接合材を撹拌した。その後、バンドヒータのスイッチを切り、室温(20℃)まで冷却した。冷却はターゲット端からの順次冷却は行わず一括して冷却した。また冷却中に接合材を補充は行わなかった。
この同一の作業を4回繰り返し、実施例1の円筒形スパッタリングターゲットを得た。実施例1では、得られた円筒形スパッタリングターゲット1に対して、超音波探傷装置(株式会社KJTD製、SDS−WIN)を用いて、接合材からの反射エコーを測定し、この測定値より、ターゲット材2とバッキングチューブ3間の隙間における接合材の未充填率を評価した。
また、スパッタリングターゲットをマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置に取り付け、0.6Paのアルゴン雰囲気中、出力10kWで放電試験を実施したところ、スパッタリング中に、ターゲット材に割れや欠け等が生じることはなかった。
これらの結果を表1にまとめた。なお、表1中の「放電試験」には、放電試験後の円筒形スパッタリングターゲットの割れ、欠け、剥離等の不具合が生じたか否かの結果を、「あり」又は「なし」で示した。
(実施例2〜5)
ターゲット材の材質、バッキングチューブの材質、接合材の充填温度を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜5の円筒形スパッタリングターゲットを作製した。製造条件及び評価結果を表1に示す。
(比較例1〜4)
接合材充填後に接合材の撹拌を行わなかった以外は実施例1、2、4、5と同様にして、比較例1〜4の円筒形スパッタリングターゲットを作製した。製造条件及び評価結果を表1に示す。
(比較例5)
バッキングチューブの超音波濡らし処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例5の円筒形スパッタリングターゲットを作製した。製造条件及び評価結果を表1に示す。
(比較例6)
バッキングチューブのブラスト処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例6の円筒形スパッタリングターゲットを作製した。製造条件及び評価結果を表1に示す。
(比較例7)
ターゲット材の超音波濡らし処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例7の円筒形スパッタリングターゲットを作製した。製造条件及び評価結果を表1に示す。
(従来例1)
バッキングチューブのブラスト処理を行わず、溶融接合材の撹拌も行わず、接合材補充しながら、ターゲット端から順次冷却した以外は、実施例1と同様にして円筒形スパッタリングターゲットを作製した。
以上の結果から、ターゲット材の超音波濡らし処理と、バッキングチューブのブラスト処理及び超音波濡らし処置、接合材の撹拌を行わなかった比較例1〜7の円筒形スパッタリングターゲットでは、接合材の未充填率が7%を超えているのに対し、本発明の一実施形態に係る製造方法による実施例1〜5の円筒形スパッタリングターゲットは、未充填率が7%以下であり、従来例1のように、順次冷却や接合材補充を行わなくても未充填率が少なく、放電でターゲット割れのない円筒形スパッタリングターゲットを得ることができる。特に、バッキングチューブとしてチタン製のものを使用している実施例3乃至5の円筒形スパッタリングターゲットは、未充填率が低い結果が得られていることから、チタン製のバッキングチューブを使用することにより、接合材の未充填率の低い円筒形スパッタリングターゲットが作製されることが分かった。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
1 円筒形スパッタリングターゲット、2 ターゲット材、2a 内周面、2b 中空部、3 バッキングチューブ、3a 外周面、4 接合層、5 接合材注入部(開口部)、6 空気抜き部(開口部)、7、17 シール部材、8 接合材容器、9 空隙部、16 開口部、S11 塗布工程、S12 配置工程、S13 充填工程、S14 撹拌工程、S15 冷却工程

Claims (5)

  1. 円筒形のターゲット材を円筒形のバッキングチューブの外周面に接合層を介して接合した円筒形スパッタリングターゲットの製造方法であって、
    前記ターゲット材の内周面及び前記バッキングチューブの前記外周面のそれぞれに接合材を塗布する塗布工程と、
    前記ターゲット材の内周面側に有する中空部に前記バッキングチューブを同軸に配置する配置工程と、
    前記ターゲット材の内周面と前記バッキングチューブの前記外周面との間の空隙部に前記接合材を充填する充填工程と、
    前記空隙部に充填された接合材を撹拌する撹拌工程と、
    前記撹拌工程後に前記ターゲット材と前記バッキングチューブを冷却して前記接合層を形成する冷却工程と、を含み、
    前記バッキングチューブは、SUS304又はチタンから形成され、
    前記塗布工程では、前記バッキングチューブの前記外周面に対して表面粗さRaが2.0μm以上12μm以下、Rzが10μm以上50μm以下となるようにブラスト加工後に超音波はんだ付け装置のコテ先を加圧する際の加圧力を0.2kg/cm以上、10.0kg/cm以下にして超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら前記接合材を塗布し、前記ターゲット材の前記内周面に対して超音波振動エネルギーを付与して加圧しながら前記接合材を塗布することを特徴とする円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  2. 前記塗布工程では、前記バッキングチューブの前記外周面の表面の凹凸の頂点部分の高さを不揃いにさせて表面粗さRaが2.0μm以上12μm以下、Rzが10μm以上50μm以下となるようにブラスト加工後に、前記超音波振動エネルギーを付与しながら前記接合材を塗布することを特徴とする請求項1に記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 前記塗布工程では、前記バッキングチューブの前記外周面での前記コテ先の移動速度を30cm/min以上、120cm/min以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  4. 前記充填工程では、前記空隙部の一端を封止部材で封止してから、該一端が底部側となるように前記バッキングチューブを鉛直に立て、前記空隙部の他端に2つの開口部が形成されるように該開口部以外の部位をシール部材で塞いで、前記開口部の何れか一方から前記接合材を充填することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
  5. 前記充填工程では、前記空隙部の一端を封止部材で封止してから、該一端が底部側となるように、前記バッキングチューブを鉛直方向に対して35度以上55度以下の角度に傾けて、前記空隙部の他端に1つの開口部が形成されるように該開口部以外の部位をシール部材で塞いで、前記開口部から前記接合材を充填することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
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