JP2019052249A - 熱膨張性耐火シート - Google Patents
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Abstract
【課題】膨張速度が増大しつつ優れた形状保持性を有する熱膨張性耐火シートを提供すること。【解決手段】熱膨張性耐火シート全体の面積に対する前記貫通孔の面積比率が10〜80%である熱膨張性耐火シート。前記貫通孔が1または2以上の線状の貫通孔である熱膨張性耐火シートである。前記貫通孔が複数の打ち抜き孔であり、隣り合う打ち抜き孔のピッチが100μm〜50μmである熱膨張性耐火シート。熱膨張性黒鉛を含有する熱膨張性耐火シートである。【選択図】なし
Description
本発明は、熱膨張性耐火シートに関する。
住宅分野、車輌分野、IT分野などに使われる熱膨張性耐火材として、例えば特許文献1に記載されたような、マトリクス成分に、リン化合物、熱膨張性黒鉛、及び無機充填剤を含有する難燃性樹脂組成物から形成された熱膨張性耐火材が使用されている。このような熱膨張性耐火材は、加熱時にできるだけ早い段階で膨張して断熱層を形成する必要がある。
熱膨張性耐火材の膨張開始後の膨張速度を上昇させると、熱膨張性耐火材が早く膨張するため、熱膨張性耐火材の耐火性能が向上することが発明者らの研究により分かってきたが、従来は、膨張速度を向上させるために、熱膨張性耐火材中の既存の成分の配合を変更することで対応していた。
しかしながら、配合設計を変更すると、熱膨張性耐火材の他の性能が劣る等、製造上作りにくいことが多く、また、成形性が悪くなるという問題がある。
本発明は、既存の成分の配合を変更せずとも、膨張速度が増大すると共に優れた形状保持性を有する熱膨張性耐火シートを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を達成すべく、熱膨張性耐火シートに一定の面積を占める貫通孔を設けることで、膨張速度が増大すると共に形状保持性も維持できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.熱膨張性耐火シート全体の面積に対する前記貫通孔の面積比率が10〜80%である熱膨張性耐火シート。
項2.前記貫通孔が1又は2以上の線状の貫通孔である項1に記載の熱膨張性耐火シート。
項3.前記貫通孔が複数の打ち抜き孔である項1に記載の熱膨張性耐火シート。
項4.前記隣り合う打ち抜き孔のピッチが1000μm〜10mmである項3に記載の熱膨張性耐火シート。
項5.熱膨張性黒鉛を含有する項1〜4のいずれか一項に記載の熱膨張性耐火シート。
本発明によれば、膨張速度が増大すると共に優れた形状保持性を有する熱膨張性耐火シートを提供することができる。
1.熱膨張性耐火シート
本発明の熱膨張性耐火シートは貫通孔を有し、熱膨張性耐火シート全体の面積に対する貫通孔の面積比率が10〜80%である。
本発明の熱膨張性耐火シートは貫通孔を有し、熱膨張性耐火シート全体の面積に対する貫通孔の面積比率が10〜80%である。
貫通孔の面積(貫通孔が複数ある場合は合計面積)が熱膨張性耐火シート全体の面積に対して10〜80%であると、熱膨張性耐火シートの加熱時の膨張速度が増大する。これは熱膨張性耐火シートに貫通孔を設けることで、熱膨張性耐火シートの内部に、加熱による熱がより伝わりやすく、膨張が促進されるためと考えられる。そして、熱膨張性耐火シートの膨張が早く起こると、熱膨張性耐火シートを施した構造体の空間又は隙間を早く埋めることができるため、火の通り道を防ぐ断熱層を早く形成できるため、熱膨張性耐火シートの耐火性が高められる。熱膨張性耐火シート全体の面積に対する貫通孔の面積は20〜80%が好ましい。
貫通孔の面積が熱膨張性耐火シート全体の面積に対して10%未満の場合、膨張速度の増大の効果を十分に発揮できない。貫通孔の面積が熱膨張性耐火シート全体の面積に対して80%を超えると、熱膨張性耐火シートの機械的強度が損なわれ、形状保持性が不良となる。
貫通孔を平面視した形状(以下、単に「形状」と称することがある。)は、特に限定はないが、直線、曲線等の線状;円形、楕円形、及びこれに類する形状等の略円形;正三角形、直角二等辺三角形、及びこれに類する形状等の略三角形;正方形、長方形、平行四辺形、台形、及びこれに類する形状等の略四角形;その他、五角形、六角形、及びこれに類する形状等の略多角形;及びこれらを組み合わせた形状から適宜選択して採用することができる。また、形状の種類としては単独でもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば線状の貫通孔が単独で存在してもよいし、線状の貫通孔と貫通孔とが同時に存在してもよいし、直線の貫通孔と曲線の貫通孔という異なる形状の線状の貫通孔が同時に存在してもよい。なお、幅に対する長さの比が10を超える場合を「線状」とし、幅に対する長さの比が10以下の場合を「略四角形」とする。
膨張性耐火シートにおける貫通孔の数は特に限定されない。
貫通孔を膨張性耐火シートの厚さ方向に切断した断面で見た形状(以下、単に「断面形状」と称することがある。)は、特に限定はないが、V字形:正方形、長方形、平行四辺形、台形、及びこれに類する形状等の略四角形;円形、楕円形、及びこれに類する形状等の略円形;のいずれであってもよい。
貫通孔の形状は貫通孔を形成する方法に起因する。例えば、カッターで熱膨張性耐火シートを切断して貫通孔を形成した場合は、貫通孔の形状は線状を呈し、かつ断面形状はV字形となる。エンボスロールを用いて貫通孔を形成した場合は、貫通孔の形状は略四角形又は略円形を呈し、かつ断面形状は略四角形又は略半円形となる。針ロールを用いて貫通孔を形成した場合は、貫通孔の形状は略円形を呈し、かつ断面形状はV字形となる。
貫通孔の形状が線状を呈する場合、各貫通孔の幅は0.1〜5mmが好ましく、0.2〜4.0mmがより好ましく、0.3〜3.0mmがさらに好ましい。幅が0.1〜5mmの範囲内にあると、膨張速度が増大する共に形状保持性が維持され、貫通孔の加工も容易である。
貫通孔の形状が略四角形の場合、一辺の長さは0.1〜10mmが好ましく、0.2〜0.8mmがより好ましい。貫通孔の一辺の長さ(貫通孔が複数ある場合は合計長さ)は、熱膨張性耐火シートの全面の一辺の長さに対して2〜90%が好ましく、5〜60%がより好ましく、15〜40%が更に好ましい。
2.熱膨張性耐火シートの実施形態
ここで、本発明の熱膨張性耐火シートの実施形態を図1(A)〜図7を参照しながら説明する。
ここで、本発明の熱膨張性耐火シートの実施形態を図1(A)〜図7を参照しながら説明する。
図1(A)及び図1(B)に示す第1実施形態の熱膨張性耐火シート1は、熱膨張性耐火シート1の表面2から熱膨張性耐火シート1の内部に向かって設けられた複数(図では8個)の貫通孔4を有し、貫通孔4を熱膨張性耐火シート1を平面視した形状は直線状である。熱膨張性耐火シート1の加熱時の形状保持性を維持するために、各貫通孔4の周囲は熱膨張性耐火シート1を構成する後述の熱膨張性樹脂組成物の部分により囲まれている。図1(B)に示すように、各貫通孔4は熱膨張性耐火シート1を貫通して熱膨張性耐火シート1の厚みT方向に延びている。また、熱膨張性耐火シート1の全体の面積(本実施形態では平面視したときの熱膨張性耐火シート1の表面2と貫通孔4の底面6の合計の面積)とに対する貫通孔4の合計面積比率は10〜80%である。貫通孔4の寸法は、加熱時には熱膨張性耐火シート1の膨張により貫通孔4が閉塞され、貫通孔4における火の通過が防止されるよう設計される。なお、熱膨張性耐火シート1の全体の面積に対する貫通孔4の合計面積比率は、以下の第2〜7実施形態の熱膨張性耐火シート1にも当てはまる。
図2に示す第2実施形態の熱膨張性耐火シート1は、曲線状の複数(図では6個)の貫通孔4を有する。
図2に示す第2実施形態の熱膨張性耐火シート1は、図1のように短手方向に延びる複数の直線状の貫通孔4だけでなく、長手方向に延びる複数の直線状の貫通孔4も有する。
図3に示す第3実施形態の熱膨張性耐火シート1は、縦横に複数の平面視略円形の貫通孔4(図では縦6個、横7個)を有する。貫通孔4の底面6の断面形状は平坦でもよいし、半球状であってもよい。本実施形態では、貫通孔4はエンボス加工により打ち抜かれた打ち抜き孔である。一直線上に並んだ隣り合う貫通孔4のピッチは、長手方向のピッチXが6000μm、短手方向のピッチYが4000μmである。長手方向のピッチXと短手方向のピッチYは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図4に示す第4実施形態の熱膨張性耐火シート1は、縦横に千鳥状に配列された複数の平面視略円形の貫通孔4を有する。この場合も、一直線上に並んだ隣り合う貫通孔4のピッチは、長手方向のピッチXが6000μm、短手方向のピッチYが8000μmである。長手方向のピッチXと短手方向のピッチYは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図5に示す第5実施形態の熱膨張性耐火シート1は、縦横に複数の平面視略四角形、特には略正方形の貫通孔4(図では縦9個、横12個)を有する。貫通孔4の底面6の断面形状は平坦でもよいし、半球状であってもよい。一直線上に並んだ隣り合う貫通孔4のピッチは、長手方向のピッチXが4000μm、短手方向のピッチYが3000μmである。長手方向のピッチXと短手方向のピッチYは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図3〜5に示される隣り合う貫通孔4のピッチは長手方向のピッチX及び短手方向のピッチYのそれぞれで100μm〜50mm、好ましくは200μm〜10mm、より好ましくは200μm〜1mmの間で適宜設定することができる。
図6に示す第6実施形態の熱膨張性耐火シート1は、縦横に複数の平面視略菱形の貫通孔4(図では縦6個、横6個)を有する。
図7に示す第7実施形態の熱膨張性耐火シート1は、1つの略長方形の貫通孔4を有する。平面視で貫通孔4はその周囲を熱膨張性耐火シート1の表面2で囲まれている。熱膨張性耐火シート1に貫通孔4が1つのみの場合貫通孔4の面積が大きくなるが、貫通孔4の寸法は、加熱時には熱膨張性耐火シートの膨張により貫通孔が閉塞され、貫通孔における火の通過が防止されるよう設計される。
3.熱膨張性耐火シートの性能
本発明の熱膨張性耐火シートは、貫通孔が所定の面積比で設けられているため、熱膨張性耐火シートが加熱されたときの膨張速度が高く、かつ加熱後の形状保持性にも優れている。
本発明の熱膨張性耐火シートは、貫通孔が所定の面積比で設けられているため、熱膨張性耐火シートが加熱されたときの膨張速度が高く、かつ加熱後の形状保持性にも優れている。
熱膨張性耐火シートの体積膨張率は特に限定されないが、50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましく、10〜50倍のものであればより好ましい。体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積がマトリクス成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。体積膨張率が10倍以上であると、加熱時の熱膨張性耐火シートの膨張により、貫通孔がより確実に閉塞される。
本発明の熱膨張性耐火シートは、好ましくは、600℃で加熱すると、膨張開始後5分後までの膨張速度が、貫通孔を有しない同じ寸法及び組成の熱膨張性耐火シートと比べて有意に大きい。よって火の通り道を防ぐ断熱層をより早く形成できるため、熱膨張性耐火シートの耐火性が高められる。
4.熱膨張性耐火シートの材料
本発明の熱膨張性耐火シートは、マトリクス成分と、熱膨張性黒鉛とを含有する。
本発明の熱膨張性耐火シートは、マトリクス成分と、熱膨張性黒鉛とを含有する。
マトリクス成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム物質、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
エラストマーの例としてはオレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。マトリクス成分に他の成分を高充填するためには、より柔軟で扱い易い熱膨張性耐火シートを得るために、ブチルゴム及びEPDMを初めとするゴム物質、オレフィン系エラストマーが好適に用いられる。
熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで酸処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。熱膨張性黒鉛は、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより値が小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより値が大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の含有量は特に限定されないが、マトリクス成分100質量部に対して、熱膨張性黒鉛を10質量部以上350質量部以下、好ましくは50質量部以上250質量部以下の範囲で含むことが好ましい。
熱膨張性耐火シートは、上記の各成分に加えて、無機充填剤をさらに含んでもよい。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;難燃剤としての無機リン酸塩;硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤の平均粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm未満では二次凝集が起こり分散性が悪くなるため、0.5μm以上であることが好ましい。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、熱膨張性耐火シートの粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで熱膨張性耐火シートの粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましい。粒径が100μmを超えると、成形体の表面性や熱膨張性耐火シートの力学的性能が低下するため、平均100μm以下であることが望ましい。
無機充填剤の平均粒径は例えば電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて一定数(通常10個)以上の粒子の粒径を測定し、これを平均することにより求めることができる。
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)等が挙げられる。炭酸カルシウムの具体例としては、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
無機充填剤の含有量は特に限定されないが、マトリクス成分100質量部に対して、無機充填剤を10質量部以上400質量部以下、好ましくは、50質量部以上300質量部以下の範囲で含むことが好ましい。
また、熱膨張性黒鉛および無機充填剤の合計は、マトリクス成分100質量部に対し、50〜600質量部の範囲が好ましい。50質量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600質量部以下であると機械的物性が維持される。
熱膨張性耐火シートは、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、上記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含むことができる。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム;低級リン酸塩;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
化学式(1)中、R1およびR3は、同一又は異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。リン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。なお、リン化合物には、難燃剤としての無機リン酸塩である無機充填剤は含まれない。
熱膨張性耐火シートにおける、リン化合物の含有量は特に限定されないが、マトリクス成分100質量部に対して、30〜300質量部であり、40〜250質量部であることがより好ましい。
熱膨張性耐火シートはさらに可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、リン酸トリクレジル(TCP)等の燐酸エステル可塑剤、
鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、
エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、
アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、
トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、
トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、リン酸トリクレジル(TCP)等の燐酸エステル可塑剤、
鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
可塑剤の添加量は、少なくなると押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため可塑剤の添加量は限定されないが、マトリクス成分100質量部に対して、可塑剤の添加量は20〜200質量部の範囲であることが好ましい。
さらに本発明の熱膨張性耐火シートは、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
好ましくは、熱膨張性耐火シートは、マトリクス成分100質量部に対し、熱膨張性黒鉛を10〜350質量部、無機充填剤を10〜400質量部含有する。
この構成によれば、熱膨張性耐火シートは増大した膨張速度を備えつつ、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することができる。
5.熱膨張性耐火シートの製造方法
本発明の熱膨張性耐火シートは、上記マトリクス樹脂、上記熱膨張性黒鉛、及び任意選択の他の成分を混合して得られた熱膨張性樹脂組成物をシート状に成形すること、および得られたシートに貫通孔を設けることにより製造することができる。
本発明の熱膨張性耐火シートは、上記マトリクス樹脂、上記熱膨張性黒鉛、及び任意選択の他の成分を混合して得られた熱膨張性樹脂組成物をシート状に成形すること、および得られたシートに貫通孔を設けることにより製造することができる。
熱膨張性樹脂組成物のシートへの成形は、射出成形、押出成形、カレンダー成形、プレス成形等の公知の成形方法により行うことができる。
また、シートへの貫通孔の形成は、カッター等の切断装置、エンボスロール等の打ち抜き機等の公知の装置により行うことができる。
6.熱膨張性耐火シートの用途
本発明の熱膨張性耐火シート及び熱膨張性耐火材は、住宅(特には建具);船舶;車両;並びに電子機器等の構造体に耐火性を付与するために使用することができる。本発明の熱膨張性耐火シートは、これらの構造体の開口部又は間隙の密封及び防火のための気密材として使用することもできる。
本発明の熱膨張性耐火シート及び熱膨張性耐火材は、住宅(特には建具);船舶;車両;並びに電子機器等の構造体に耐火性を付与するために使用することができる。本発明の熱膨張性耐火シートは、これらの構造体の開口部又は間隙の密封及び防火のための気密材として使用することもできる。
以上、本発明の実施形態について具体的に説明し、下記に実施例を説明するが、本発明は、上述の実施形態及び下記の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および下記の実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.熱膨張性耐火シートの作成
[実施例1]
表1に示した配合量で、合成樹脂としてポリ塩化ビニル100重量部(信越化学工業株式会社製 TK−1000)、可塑剤としてジイソデシルフタレート(DIDP ジェイプラス社製 DOP)50重量部、熱膨張性黒鉛(東ソー社製「GREP−EG」)100重量部、および無機充填剤としてシリカ(白石カルシウム社製「シベライトM−6000」)50量部をニーダーにて混合した。その後、その混合物をシート状に押出成形し、長さ1000mm、幅500mm、厚み1mmの耐火樹脂成形体として熱膨張性耐火シートを得た。なお、表1中の各成分は明記がない限り質量部で示している。
[実施例1]
表1に示した配合量で、合成樹脂としてポリ塩化ビニル100重量部(信越化学工業株式会社製 TK−1000)、可塑剤としてジイソデシルフタレート(DIDP ジェイプラス社製 DOP)50重量部、熱膨張性黒鉛(東ソー社製「GREP−EG」)100重量部、および無機充填剤としてシリカ(白石カルシウム社製「シベライトM−6000」)50量部をニーダーにて混合した。その後、その混合物をシート状に押出成形し、長さ1000mm、幅500mm、厚み1mmの耐火樹脂成形体として熱膨張性耐火シートを得た。なお、表1中の各成分は明記がない限り質量部で示している。
次に、得られた熱膨張性耐火シートに市販の打ち抜き機により貫通孔を形成し、実施例1〜3及び比較例1〜4の熱膨張性耐火シートを製造した。隣接する貫通孔のピッチ、シート全体に対する貫通孔の面積比率を表1に示す。
2.熱膨張性耐火シートの膨張速度の測定
10cm×10cmに切断した実施例1〜3及び比較例1〜4の熱膨張性耐火シートを600℃で2分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。膨張倍率が10倍以上であれば○、10倍未満であれば×とした。
10cm×10cmに切断した実施例1〜3及び比較例1〜4の熱膨張性耐火シートを600℃で2分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。膨張倍率が10倍以上であれば○、10倍未満であれば×とした。
3.熱膨張性耐火シートの耐火性の評価
(膨張倍率)
10cm×10cmに切断した実施例1〜3及び比較例1〜4の熱膨張性耐火シートを600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。
(形状保持性)
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を90°に傾け、試験片が崩れず、形状保持ができたものを○、崩れてしまったものを×と評価した。
(膨張倍率)
10cm×10cmに切断した実施例1〜3及び比較例1〜4の熱膨張性耐火シートを600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)を膨張倍率として算出した。
(形状保持性)
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を90°に傾け、試験片が崩れず、形状保持ができたものを○、崩れてしまったものを×と評価した。
4.結果
表1に示すように、実施例1〜3の熱膨張性耐火シートは膨張速度及び耐火性ともに優れていたが、比較例1〜4の熱膨張性耐火シートは膨張速度が遅く、比較例1〜4の熱膨張性耐火シートは耐火性が劣っていた。
表1に示すように、実施例1〜3の熱膨張性耐火シートは膨張速度及び耐火性ともに優れていたが、比較例1〜4の熱膨張性耐火シートは膨張速度が遅く、比較例1〜4の熱膨張性耐火シートは耐火性が劣っていた。
Claims (5)
- 熱膨張性耐火シート全体の面積に対する前記貫通孔の面積比率が10〜80%である熱膨張性耐火シート。
- 前記貫通孔が1又は2以上の線状の貫通孔である請求項1に記載の熱膨張性耐火シート。
- 前記貫通孔が複数の打ち抜き孔である請求項1に記載の熱膨張性耐火シート。
- 前記隣り合う打ち抜き孔のピッチが100μm〜50mmである請求項3に記載の熱膨張性耐火シート。
- 熱膨張性黒鉛を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱膨張性耐火シート。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017177634A JP2019052249A (ja) | 2017-09-15 | 2017-09-15 | 熱膨張性耐火シート |
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ID=66014255
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- 2017-09-15 JP JP2017177634A patent/JP2019052249A/ja not_active Withdrawn
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