JP2019048970A - 水性分散液、および水性分散液を含む水性塗料 - Google Patents

水性分散液、および水性分散液を含む水性塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】塗膜の造膜性に優れ、塗膜の白化が抑制された塗膜、さらには、加工性にも優れた塗膜を形成する水性分散液、および、上記水性分散液を含む水性塗料の提供を課題とする。【解決手段】動的光散乱法により測定される粒子径分布において、2以上の散乱強度ピークを有し、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さない水性分散液であって、前記散乱強度ピークにおける、D10に対するD90の比がいずれも3.0以下であり、かつ、前記散乱強度ピークがいずれも重合体の粒子由来であり、前記散乱強度ピークのうち少なくとも1つは、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子由来であることを特徴とする、水性分散液。【選択図】なし

Description

本発明は、水性分散液、および水性分散液を含む水性塗料に関する。
窯業建材の塗装においては、環境保護のために、水性塗料が使用されるようになっている。特に、塗り替え回数を削減する観点から、水性塗料から形成されてなる塗膜には高耐候性が求められており、窯業建材に要求される高耐候性を実現しうる塗料として、含フッ素重合体の水性分散液を含む水性塗料が提案されている。
特開2002−285016号公報
一方で、含フッ素重合体の水性分散液を含む水性塗料は、含フッ素重合体自体の耐候性には優れるものの、含フッ素重合体が水中に粒子状に分散しているため、粒子と粒子の境界に水が残存する場合があった。特に、含フッ素重合体は疎水性が高いため、水中に安定して分散させるには界面活性剤などを多く用いる必要がある。そのため、塗膜を形成する際には上記界面活性剤が障壁となって粒子同士が融着しにくくなり、塗膜の造膜性に課題があった。このように、塗膜の造膜性が良好でない場合、含フッ素重合体自体が有する耐候性が発揮されず、塗膜の白化を起こしやすい問題が生じていた。
本発明者らは、特許文献1に記載の水性塗料から形成されてなる塗膜を評価したところ、塗膜の造膜性に課題があるために白化しやすいことを知見した。さらに、上記塗膜は、塗膜の剥がれが起こる場合があり、加工性に課題があることを知見した。また、本発明者らは、特許文献1に記載の水性塗料に含まれる重合体の粒子における、D10に対するD90の比を測定したところ、3.0超であることを知見した。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたのであって、塗膜の造膜性に優れ、塗膜の白化が抑制された塗膜、さらには、加工性にも優れた塗膜を形成する水性塗料を製造できる、含フッ素重合体の水性分散液の提供、および、上記水性分散液を含む水性塗料の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
[1] 動的光散乱法により測定される粒子径分布において、2以上の散乱強度ピークを有し、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さない水性分散液であって、上記散乱強度ピークにおける、D10に対するD90の比がいずれも3.0以下であり、かつ、上記散乱強度ピークがいずれも重合体の粒子由来であり、上記散乱強度ピークのうち少なくとも1つは、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子由来であることを特徴とする、水性分散液。
[2] 上記2以上の散乱強度ピークを、粒子径1〜300nmの範囲に有する、[1]に記載の水性分散液。
[3] 上記散乱強度ピークを与える重合体のガラス転移温度が、いずれも0〜100℃である、[1]または[2]に記載の水性分散液。
[4] 粒子径30nm以上100nm以下にピークトップを有する第1の散乱強度ピークと、粒子径100nm超220nm以下にピークトップを有する第2の散乱強度ピークと、を有する[1]〜[3]のいずれかに記載の水性分散液。
[5] 上記第1の散乱強度ピークを与える重合体の粒子と、上記第2の散乱強度ピークを与える重合体の粒子との質量の和に対する、上記第1の散乱強度ピークを与える重合体の粒子の含有量が、3〜50質量%である、[4]に記載の水性塗料。
[6] 上記第1の散乱強度ピークを与える重合体の粒子の平均粒子径と、上記第2の散乱強度ピークを与える重合体の粒子の平均粒子径との差の絶対値が、10〜120nmであり、上記第1の散乱強度ピークを与える重合体のガラス転移温度と、上記第2の散乱強度ピークを与える重合体のガラス転移温度との差の絶対値が、5〜30℃である、[4]または[5]に記載の水性分散液。
[7] フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む上記重合体において、上記重合体が含む全単位に対する、上記親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位の含有量が、0.1〜15モル%である、[1]〜[6]のいずれかに記載の水性分散液。
[8] 上記HLB値が12.0〜19.0である単量体が、ポリオキシアルキレン鎖を有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の水性分散液。
[9] 上記2以上の散乱強度ピークがいずれも、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0であって、かつポリオキシアルキレン鎖を有する単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子由来である、[1]〜[8]のいずれかに記載の水性分散液。
[10] 平均粒子径の異なる2種以上の重合体の粒子と、水とを含み、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない水性分散液であって、上記重合体の粒子の、動的光散乱法により測定される粒子径分布における、D10に対するD90の比がいずれも3.0以下であり、上記重合体のうち少なくとも1種は、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体であることを特徴とする、水性分散液。
[11] 動的光散乱法により測定される粒子径分布において、D10に対するD90の比が3.0以下である重合体の粒子と、水とを含み、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない2種以上の水性分散液を混合して水性分散液を得る、水性分散液の製造方法であって、上記混合する水性分散液のうち少なくとも1種は、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子を含むことを特徴とする、水性分散液の製造方法。
[12] 上記混合する2種以上の水性分散液が、少なくとも、重合体の粒子を含み、ノニオン性界面活性剤を含まない第一水性分散液と、上記第一水性分散液が含む重合体の平均粒子径超の平均粒子径である重合体の粒子、およびノニオン性界面活性剤を含む第二水性分散液と、である請求項11に記載の水性分散液の製造方法。
[13] 上記第一水性分散液のゼータ電位が−80mV以上−30mV未満であり、上記第二水性分散液のゼータ電位が−30mV以上−5mV以下である、請求項12または13に記載の水性分散液の製造方法。
[14] 窯業建材の塗装に用いられる、[1]〜[10]のいずれかに記載の水性分散液を含む水性塗料。
[15] 基材の表面に、[1]〜[10]のいずれかに記載の水性分散液を含む水性塗料を塗布して塗布層を形成し、上記塗布層を乾燥させて塗膜を形成する、塗膜付き基材の製造方法。
本発明によれば、塗膜の造膜性に優れ、塗膜の白化が抑制された塗膜、さらには、加工性にも優れた塗膜を形成する水性塗料を製造できる水性分散液、および、上記水性分散液を含む水性塗料を提供できる。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
単位とは、単量体の重合により直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、含フッ素重合体を核磁気共鳴スペクトル法により分析して求められ、含フッ素重合体の製造に際して使用する成分の仕込み量からも決定できる。
「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の総称であり、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の総称である。
酸価および水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070−3(1992)の方法に準じて測定される値である。
粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により、粒子の散乱強度を測定して得られる粒子径分布により求められるD50の値であり、上記粒子径分布において、小さな粒子側から起算した体積累計50体積%の粒子直径を表す。また、上記体積累計10体積%の粒子直径をD10、上記体積累計90体積%の粒子直径をD90で表す。
粒子の散乱強度ピークとは、動的光散乱法による粒子の散乱強度の測定において、横軸に粒子径を、縦軸に散乱強度をプロットしたときに得られるピークである。
粒子のゼータ電位は、電気泳動光散乱法により測定される値である。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される中間点ガラス転移温度の値である。ガラス転移温度は、Tgともいう。
本発明の水性分散液(以下、「本水性分散液」ともいう。)は、本水性分散液を含む水性塗料(以下、「本水性塗料」ともいう。)から形成されてなる塗膜(以下、「本塗膜」ともいう。)の造膜性に優れ、塗膜の白化が抑制された塗膜、さらには、加工性にも優れた塗膜を形成できる。この理由は必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。
本水性分散液は、動的光散乱法により測定される粒子径分布において、2以上の散乱強度ピークを有し、上記散乱強度ピークにおける、D10に対するD90の比(以下、「D90/D10」ともいう。)がいずれも3.0以下であり、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さず、上記散乱強度ピークを与えるそれぞれの重合体が、溶媒中に粒子状に分散している(この状態にある粒子状の重合体を、重合体の粒子ともいう。)。
まず、本水性分散液が、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さない、つまり、粒子径300nm超の粒子を含まないことで、本塗膜中の重合体の濃度が均一となると考えられる。
さらに、本水性分散液は、2以上の散乱強度ピークを有する、つまり、異なる平均粒子径である重合体の粒子を2種以上有し、かつ、上記2種以上の重合体の粒子において、各々の散乱強度ピークにおけるD90/D10がともに3.0以下である。すなわち、本水性分散液は、粒子径分布が狭い2種以上の重合体の粒子を含む。このことで、本塗膜を形成する際に、粒子径分布の狭い各々の粒子が、一定の規則性を保って均一に配列する。そのため、上記2種以上の重合体の粒子が隣接している状態で密充填されると考えられる。
その上で、上記2以上の散乱強度ピークのうち少なくとも一方は、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、「単位F」ともいう。)と、親水性基を有し、後述する有機概念図法によって算出されるHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位(以下、「単位1」ともいう。)と、を含む含フッ素重合体由来である。
含フッ素重合体が上記単位を含むことで、含フッ素重合体の粒子における粒子と水との界面(粒子状の含フッ素重合体の輪郭部)側に単位1が配置され、上記界面の親水性が好適に調整される。したがって、本水性分散液中では、含フッ素重合体の粒子が、一定の粒子径を保持したまま安定に存在できるのに加え、各々の重合体の粒子が密充填された際には、重合体の粒子同士の融着が進み、粒子と粒子との間の境界のない、一様な塗膜が形成されると考えられる。
このように、本水性分散液を用いれば、粒子同士の融着を促進し得る含フッ素重合体の粒子と、他の重合体の粒子とが、偏りなく隣接する状態で密充填され、密充填された粒子同士が充分に融着するため、一様な塗膜が形成されると考えられる。このため、本塗膜は造膜性に優れ、塗膜の白化を充分に抑制できる。さらには、本塗膜は、それぞれの重合体の濃度が均一であるため、局所的な濃度の差異による応力の偏りが生じず、塗膜の割れや剥がれが生じにくく、加工性に優れると考えられる。
以下、本水性分散液の第一の態様について説明する。
本水性分散液は、動的光散乱法により測定される粒子径分布において、2以上の散乱強度ピークを有する。散乱強度ピークは、2以上のピークトップが認められればよく、各ピークの一部が重なっていてもよいが、重合体の粒子が密充填されやすい観点から、各ピークに重なりがないことが好ましい。具体的には、2以上の散乱強度ピークにおける各ピーク間に、散乱強度ピークのピークトップに対して散乱強度が1.0%未満、より好ましくは0.1%未満である領域が存在するのが好ましい。特に、各々の散乱強度ピークに重なりがない場合、各散乱強度ピークのピークトップが存在する粒子径±50nmを除いた範囲における散乱強度の合計が、散乱強度の全体に対して1.0%未満であるのが好ましく、0.1%未満であるのがより好ましい。
散乱強度ピークに重なりがある場合、2以上の散乱強度ピークにおける各ピークトップが独立していればよい。すなわち、2以上の散乱強度ピークにおけるピークトップの値が異なればよい。
したがって、本水性分散液は、2以上の散乱強度ピークを与える、異なる平均粒子径である2種以上の重合体の粒子を含む。重合体の粒子が密充填されやすい観点から、本水性分散液は、上記2以上の散乱強度ピークを、いずれも粒子径1〜300nmに有するのが好ましく、10〜200nmに有するのがより好ましく、50〜180nmに有するのが特に好ましい。
なかでも、粒子径30nm以上100nm以下にピークトップを有する第1の散乱強度ピークと、粒子径100nm超220nm以下にピークトップを有する第2の散乱強度ピークと、を有するのが好ましく、粒子径40nm以上80nm以下にピークトップを有する第1の散乱強度ピークと、粒子径110nm以上200nm以下にピークトップを有する第2の散乱強度ピークと、を有するのがより好ましい。
本水性分散液が、上記第1の散乱強度ピークおよび第2の散乱強度ピークを与える重合体の粒子を含む場合、重合体の粒子が偏りなく隣接する状態で密充填される観点から、上記第1の散乱強度ピークを与える重合体(以下、「第1重合体」ともいう。)の粒子と、上記第2の散乱強度ピークを与える重合体(以下、第2重合体)ともいう。)の粒子との質量の和に対する、上記第1重合体の粒子の含有量は、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜20質量%が特に好ましい。
本水性分散液は、上記2以上の散乱強度ピークにおいて、D90/D10がともに3.0以下である。つまり、本水性分散液が含む重合体は、いずれも粒子径分布が狭い。上記D90/D10は、重合体の粒子が規則的に配置される観点から、ともに3.0以下であり、2.9以下が好ましい。D90/D10の下限値は、通常、1.0である。
本水性分散液は、本塗膜の加工性の観点から、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さない。本明細書において、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さないとは、粒子径300nm超の範囲に、散乱強度ピークのピークトップを有さないか、有する場合でも、散乱強度の全体に対して1.0%未満であり、より好ましくは0.1%未満であることを意味する。また、粒子径300nm超の範囲に、散乱強度ピークの一部を有する場合は、粒子径300nm超の範囲に存在する散乱強度が、散乱強度の全体に対して1.0%未満であり、より好ましくは0.1%未満であることを意味する。
本発明における重合体のTgは、重合体の粒子が融着しやすい観点から、いずれも0℃〜100℃であるのが好ましい。各重合体のTgは、同一でもよく異なってもよく、重合体の粒子が段階的に溶融する観点から、異なるのが好ましい。
本水性分散液は、なかでも、Tgが30℃未満である重合体と、Tgが30℃以上である重合体とを含むのが好ましく、Tgが28℃未満である重合体と、Tgが32℃以上である重合体とを含むのがより好ましい。この場合であれば、各重合体の粒子が、段階的に溶融するため、本塗膜における粒子間の空隙が消失すると考えられる。
本水性分散液が、上記第1重合体の粒子と、上記第2重合体の粒子とを含む場合、重合体の粒子同士が融着しやすい観点から、上記第1重合体のTgと、上記第2重合体のTgとの差の絶対値が、5〜30℃であるのが好ましく、10〜20℃であるのがより好ましい。
また、この場合、上記第1重合体の粒子の平均粒子径と、上記第2重合体の粒子の平均粒子径との差の絶対値が、10〜120nmであるのが好ましく、20〜100nmであるのがより好ましい。
上記第1重合体および第2重合体における、重合体の粒子の平均粒子径と、重合体のTgとが、ともに上記範囲にあれば、密充填された重合体の粒子が、段階的に溶融して一様な塗膜を形成する。
本水性分散液は、2種以上の重合体の粒子を含み、上記重合体の少なくとも一方は、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、「単位F」ともいう。)、および、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体(以下、「単量体1」ともいう。)に基づく単位(以下、「単位1」ともいう。)を含む含フッ素重合体である。
フルオロオレフィンは、水素原子の1以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンは、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CH=CF、CF=CFCF、CFCH=CHFおよびCFCF=CHから選択される少なくとも1種が好ましく、本塗膜の耐候性の観点から、CF=CFまたはCF=CFClがより好ましい。フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
単位Fの含有量は、含フッ素重合体の分散安定性と、本塗膜の耐候性の観点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、20〜70モル%が好ましく、30〜60モル%がより好ましい。
単量体1が有する親水性基としては、水酸基、カルボキシ基またはアミノ基が好ましく、含フッ素重合体の親水性を好適に調整する観点から、水酸基が好ましい。
単量体1は、含フッ素重合体の粒子と、水と、の界面に配向し、上記界面の親水性を調整する観点から、有機概念図法によって算出されるHLB値が12.0〜19.0であり、14.5〜17.0であるのが好ましく、14.8〜16.7がより好ましく、さらに、含フッ素重合体の粒子の粒子径分布を狭くする観点から、15.0〜16.5であるのが特に好ましい。
有機概念図法とは、化合物の有機性値および無機性値を、有機概念図によって定められている方法で算出し、物質の物性を捉える方法(「有機定性分析<混合物編>」、藤田穆 著(1974年)参照)である。有機概念図法によると、下式によって化合物のHLB値が近似的に求められる。
(式) HLB値=(無機性値/有機性値)×10
上記式によって算出されるHLB値が所定範囲内にある単量体を用いれば、含フッ素重合体の粒子と、水との界面における親水性が好適になり、重合体の粒子間の融着が効果的に進むため、本塗膜の造膜性および耐水性に優れる。また、上記単量体によって含フッ素重合体の粒子の重合が制御されるため、含フッ素重合体の粒子の粒子径分布が狭くなり、D90/D10が3.0以下の粒子を得やすい。さらには、粒子径300nm超の粒子の生成を抑制できる。
単位1の含有量は、含フッ素重合体の親水性の観点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0.1〜15モル%が好ましく、0.8〜10モル%がより好ましく、1.0〜5.0モル%が特に好ましい。
単量体1の具体例としては、CH=CHO(CHO(CHCHO)10H(HLB値16.8)、CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)10H(HLB値14.7)、CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)15H(HLB値15.7)、CH=CHCHOH(HLB値17.0)、CH=CHOCHCHOH(HLB値15.3)、CH=CHCHOCHCHOH(HLB値12.2)、CH=CHCOOCHCHOH(HLB値16.2)、CH=C(CH)COOCHCHOH(HLB値14.7)が挙げられる。
単量体1は、2種以上を併用してもよい。
単位1は、さらに、親水性のポリオキシアルキレン鎖を有する単量体(以下、「単量体11」ともいう。)に基づく単位(以下、「単位11」ともいう。)であるのが好ましい。単量体11を用いれば、含フッ素重合体の粒子と、水と、の界面にポリオキシアルキレン鎖が入り込み、ポリオキシアルキレン鎖に由来する自由運動によって、重合体の粒子間の融着が進行すると考えられる。
単量体11における親水性のポリオキシアルキレン鎖は、ポリオキシエチレン鎖であるか、炭素数3以上のオキシアルキレン基を親水性が阻害されない程度含むオキシエチレン基を主とするポリオキシアルキレン鎖であることが好ましい。炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、炭素数3または4のオキシアルキレン基が挙げられ、オキシプロピレン基が好ましい。親水性のポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシエチレン鎖が好ましい。炭素数3以上のオキシアルキレン基を含む場合、ポリオキシアルキレン鎖が有する全オキシアルキレン基の数に対して、オキシエチレン基の数は60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
親水性のポリオキシアルキレン鎖が炭素数3以上のオキシアルキレン基とオキシエチレン基とのコポリマー鎖の場合、それらの結合順はランダム型でもブロック型でもよい。
親水性のポリオキシアルキレン鎖は、例えば、式−(OM)−で表される。なお、式中、Mはアルキレン基であり、(OM)は、ポリオキシエチレン鎖であるか、または、m個のOMの一部が炭素数3以上のオキシアルキレン基であり、他がオキシエチレン基であるポリオキシアルキレン鎖である。(OM)は、(OCHCHで表されるポリオキシエチレン鎖が好ましい。
mは、6〜24の整数であり、10〜20の整数が好ましく、含フッ素重合体の粒子の粒子径分布を狭くする観点から、12〜18が特に好ましい。
単量体11の具体例としては、単量体1のうち、CH=CHO(CHO(CHCHO)10H(HLB値16.8)、CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)10H(HLB値14.7)、CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)15H(HLB値15.7)が挙げられ、重合体の粒子径分布を狭くする観点から、CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)15Hが好ましい。なお、「−cycloC10−」はシクロへキシレン基を表し、「−cycloC10−」の結合部位は、通常1,4−である。
単量体11は、2種以上を併用してもよい。
本水性分散液は、本塗膜の加工性の観点から、単位1のほかに、親水性基を有し、HLB値が12.0未満または19.0超である単量体(以下、「単量体2」ともいう。)に基づく単位(以下、「単位2」ともいう。)を含んでもよい。単量体2のHLB値は、含フッ素重合体の親水性の観点から、10.0以下がより好ましく、7.0以下が特に好ましい。単量体2が有する親水性基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、水酸基が好ましい。
単量体2の具体例としては、CH=CHOCH−cycloC10−CHOH(HLB値6.6)、CH=CHCHOCH−cycloC10−CHOH(HLB値6.0)、CH=CHOCHCHCHCHOH(HLB値10.2)、CH=CHCHOCHCHCHCHOH(HLB値8.7)、CH(CH)=CHCOOH(HLB値20超)、CH=CHCHCOOH(HLB値19.0)、CH=CH(CHCOOH(HLB値6.9)、CH=CHCOOH(HLB値20超)、CH=C(CH)COOH(HLB値20超)が挙げられる。
単量体2は、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体が単位2を含む場合、単位2の含有量は、含フッ素重合体の親水性の観点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、15モル%以下が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましく、0.5〜5モル%が特に好ましい。
単量体1および単量体2の親水性基は、一部が架橋性基として作用してもよい。親水性基が水酸基である場合、本水性塗料を製造する際には、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤(イソシアネート基を2以上有する化合物)と混合するのが好ましい。
親水性基がカルボキシ基である場合、本発明の水性塗料は、硬化剤としてカルボジイミド系硬化剤(カルボジイミド基を2以上有する化合物)、アミン系硬化剤(アミノ基を2以上有する化合物)、オキサゾリン系硬化剤(オキサゾリン基を2以上有する化合物)またはエポキシ系硬化剤(エポキシ基を2以上有する化合物)と混合するのが好ましい。
含フッ素重合体の重合安定性、および含フッ素重合体の親水性の観点から、単位11の含有量は、単位1と単位2との合計モル数に対して55〜95モル%であるのが好ましく、より好ましくは、70〜85モル%である。このことで、含フッ素重合体を重合する際のゲル化を抑制できる。また、単量体1および単量体2の親水性基のうち一部が架橋性基として機能する場合においても、好適な親水性を確保できる。
本発明における含フッ素重合体は、本塗膜の塗膜性能を調整する観点から、フルオロオレフィン、単量体1、および単量体2以外の単量体(以下、「単量体3」ともいう。)に基づく単位(以下、「単位3」ともいう。)をさらに含んでもよい。
単量体3としては、親水性基を有さない、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
単量体3の具体例としては、エチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル(HEXION社商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニルエステル(HEXION社商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニルエステルtert−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体3は、2種以上を併用してもよい。
含フッ素重合体が単位3を含む場合、単位3の含有量は、単位Fおよび単位1との反応性の観点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0〜60モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。
含フッ素重合体が含む全単位に対する、単位Fの含有量、単位1の含有量、単位2の含有量、および単位3の含有量は、本塗膜の造膜性の観点から、この順に、20〜70モル%、0.1〜15モル%、0〜15モル%、0〜60モル%であるのが好ましい。
本発明における含フッ素重合体が水酸基価を有する場合、水酸基価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、5〜40mgKOH/gがより好ましく、10〜20mgKOH/gが特に好ましい。
本発明における含フッ素重合体が酸価を有する場合、酸価は、1〜80mgKOH/gが好ましく、5〜70mgKOH/gがより好ましく、10〜60mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体は、水酸基価または酸価のどちらか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。含フッ素重合体は、本水性分散液の安定性の点からは、水酸基価を有するのが好ましい。含フッ素重合体が水酸基価および酸価の両方を有する場合、水酸基価および酸価の合計が、1〜80mgKOH/gであればよい。
水酸基価および酸価が上記範囲内にあれば、含フッ素重合体の親水性が好適になる。
含フッ素重合体のTgは、本塗膜の造膜性の観点から、0〜60℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、含フッ素重合体の粒子の密充填の観点から、1〜300nmが好ましく、30〜200nmがより好ましい。
含フッ素重合体の粒子におけるD90/D10は、含フッ素重合体と他の重合体とが規則的に配置される観点から、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、2.0以下が特に好ましい。D90/D10の下限値は、通常1.0である。
含フッ素重合体の粒子におけるゼータ電位は、含フッ素重合体の粒子の分散安定性の観点から、−5〜−80mVが好ましく、−20〜−55mVがより好ましい。
含フッ素重合体は、水と重合開始剤の存在下、フルオロオレフィンと、単量体1と、必要に応じて単量体2および単量体3とを重合して得るのが好ましい。
含フッ素重合体の製造においては、必要に応じて、光安定剤、pH調整剤等を添加してもよい。含フッ素重合体の重合方法は、適宜選択され、通常は乳化重合法が採用される。
含フッ素重合体は、含フッ素重合体の分散安定性の観点から、界面活性剤を含むのが好ましい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種が好ましい。界面活性剤の含有量は、水性分散液が含む含フッ素重合体の全質量に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜6質量%がより好ましい。
含フッ素重合体を製造する際は、含フッ素重合体の粒子のD90/D10を3.0以下とする観点から、重合を開始する前に、界面活性剤の存在下で、分散媒である水に各単量体を充分に分散させるのが好ましい。具体的には、水中に、界面活性剤と、単量体1と、必要に応じて単量体2および単量体3とを導入し、得られた混合溶液を、20〜30℃において、撹拌回転数300〜400rpmにて40〜150分撹拌するのが好ましい。この操作によって、単量体の微細な集合が水中に均一に形成されると考えられる。
さらに、上記操作後は、上記混合溶液を、撹拌回転数300〜400rpmにて撹拌しながら、0.1〜5.0℃/分の速度で45〜70℃まで昇温し、さらに昇温後の状態で10〜40分維持するのが好ましい。この操作によって、上記単量体の微細な集合における、単量体間の相互作用が均一かつ安定した状態になると考えられる。
さらに、重合の開始時は、昇温後の状態を一定時間維持した上記混合溶液に、重合開始剤およびフルオロオレフィンを、それぞれ0.01〜10.0g/分の速度で連続添加するのが好ましい。この操作によって、気相から水中に徐々に取り込まれるフルオロオレフィンに、上記単量体の微細な集合から単量体が均一に供給されるため、粒子径分布のシャープな含フッ素重合体の粒子を形成できると考えられる。
このように、含フッ素重合体を製造する際は、重合開始前に、所定の温度において単量体および界面活性剤を水中にて充分に分散させ、所定の撹拌回転数および昇温速度にて均一に昇温したのち、さらに充分な分散時間を確保することによって、D90/D10が3.0以下である含フッ素重合体の粒子が得られると考えられる。
本水性分散液は、平均粒子径の異なる2種以上の重合体を含み、このうち少なくとも一種が含フッ素重合体であればよいが、本塗膜の耐候性の観点から、いずれも含フッ素重合体であるのが好ましい。この場合、複数の含フッ素重合体は、同一の含フッ素重合体であって、含フッ素重合体の粒子の平均粒子径のみが異なっていてもよく、含フッ素重合体と、含フッ素重合体の粒子の平均粒子径とがともに異なっていてもよい。さらに、複数の含フッ素重合体は、少なくとも一種が本発明における含フッ素重合体であればよい。つまり、本発明における含フッ素重合体以外の含フッ素重合体(本発明の含フッ素重合体とは異なる単位を含む含フッ素重合体、ポリフッ化ビニリデン等)を含んでもよい。
複数の含フッ素重合体は、本塗膜の加工性の観点から、いずれも本発明における含フッ素重合体であって、含フッ素重合体と平均粒子径とが、ともに異なるのが好ましい。
本水性分散液が、複数の含フッ素重合体を含む場合、含フッ素重合体の粒子同士の融着を促進する観点から、少なくとも一種の含フッ素重合体が、単位11を含むのが好ましく、複数の含フッ素重合体がいずれも単位11を含むのがより好ましい。この場合、単位11が有するポリオキシレン鎖の自由運動によって、粒子間の融着がより一層促進すると考えられる。
本水性分散液は、特に、本塗膜が緻密になる観点から、平均粒子径の異なる2種の含フッ素重合体を含み、上記2種の含フッ素重合体のいずれもが単位11を含むのが好ましい。
本水性分散液が、含フッ素重合体以外の重合体を含む場合、含フッ素重合体以外の重合体の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂が挙げられる。
本水性分散液は、含フッ素重合体を分散させる分散媒を含む。分散媒は、水のみからなるか、水と水溶性有機溶媒とからなる混合溶媒からなる。後者の場合、水溶性有機溶媒の含有量は、水の全質量に対して、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。水溶性有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
以下、本水性分散液の第二の態様について説明する。
本水性分散液の第二の態様としては、動的光散乱法により測定される粒子径分布において、D10に対するD90の比がいずれも3.0以下であり、平均粒子径の異なる2種以上の重合体の粒子と、水とを含み、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない水性分散液であって、上記重合体のうち少なくとも1種は、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体である水性分散液が挙げられる。
この場合、重合体の粒子が密充填されやすい観点から、本水性分散液が含む2種以上の重合体の粒子はいずれも、平均粒子径が1〜300nmであり、10〜200nmであるのがより好ましく、50〜180nmであるのが特に好ましい。なかでも、平均粒子径が30nm以上100nm以下である第11重合体の粒子と、平均粒子径が100nm超220nm以下である第21重合体の粒子とを含むのが好ましく、平均粒子径が40nm以上80nm以下である第11重合体の粒子と、平均粒子径が110nm以上200nm以下である第21重合体の粒子とを含むのがより好ましい。
本水性分散液が、上記第11重合体および第21重合体の粒子を含む場合、重合体の粒子が偏りなく隣接する状態で密充填される観点から、上記第11重合体の粒子と、上記第21重合体の粒子との質量の和に対する、上記第11重合体の粒子の含有量は、3〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、7〜20質量%が特に好ましい。
本水性分散液は、上記2種以上の重合体の粒子において、D90/D10がともに3.0以下であり、重合体の粒子が規則的に配置される観点から、2.9以下が好ましい。D90/D10の下限値は、通常、1.0である。
本水性分散液は、本塗膜の加工性の観点から、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない。本明細書において、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まないとは、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まないか、含む場合でも、本水性分散液が含む重合体の粒子の全質量に対して1.0%未満であり、より好ましくは0.1%未満であることを意味する。
本水性分散液は、重合体の粒子として、上記第11重合体の粒子および上記第21重合体の粒子の2種のみを含むのが好ましい。ただしこの場合、上記第11重合体の粒子および上記第21重合体の粒子以外の重合体の粒子を、本水性分散液が含む重合体の全質量に対して1.0%未満含んでいてもよく、好ましくは0.1%未満のみ含んでいてもよい。
本水性分散液が含む重合体の詳細、各々の重合体間の物性の関係(Tgの差や平均粒子径の差等)等は、本水性分散液の第一の態様と同様であるので、省略する。
以下、本水性分散液の製造方法について説明する。
本水性分散液は、動的光散乱法により測定される粒子径分布において、D10に対するD90の比が3.0以下である重合体の粒子と、水とを含み、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない2種以上の水性分散液を混合して得られる。本水性分散液を得るために混合する2種以上の水性分散液のうち少なくとも1種は、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子を含む。
本水性分散液を得るために混合する2種以上の水性分散液は、重合体の粒子を含み、ノニオン性界面活性剤を含まない第一水性分散液と、上記第一水性分散液が含む重合体の平均粒子径超の平均粒子径である重合体の粒子を含み、ノニオン性界面活性剤を含む第二水性分散液と、であるのが好ましい。
ノニオン性界面活性剤を含まないとは、第一水性分散液が含む重合体の全質量に対する、ノニオン性界面活性剤の含有量が0.001質量%以下であることを意味する。
粒子の表面にノニオン性界面活性剤が存在しない重合体の粒子と、粒子の表面にノニオン性界面活性剤が存在する重合体の粒子とを混合することで、重合体の粒子の表面における荷電状態、および、重合体の粒子と粒子の間における荷電状態が好適となり、重合体の粒子同士の融着を促進するため、本塗膜の造膜性に優れると考えられる。
また、本水性分散液を得るために混合する2種以上の水性分散液が、上記第一水性分散液および上記第二水性分散液である場合、上記第一水性分散液のゼータ電位は、−80mV以上−30mV未満であるのが好ましく、上記第二水性分散液のゼータ電位は、−30mV以上−5mV以下であるのが好ましい。
ゼータ電位の異なる重合体の粒子を混合することで、本水性分散液における重合体の粒子の分散状態が好適となり、本水性分散液の分散安定性が向上するとともに、本塗膜の造膜性に優れる。
本水性分散液の製造方法において、さらに、上記第一水性分散液の平均粒子径が30nm以上100nm以下であり、上記第二水性分散液の平均粒子径が100nm超220nm以下であるのが好ましく、上記第一水性分散液の平均粒子径が40nm以上80nm以下であり、上記第二水性分散液の平均粒子径が110nm以上200nm以下であるのがより好ましい。また、上記第一水性分散液および第二水性分散液のD90/D10はいずれも3.0以下であるのが好ましく、2.9以下であるのがより好ましい。平均粒子径が異なり、かつ粒子径分布が狭い重合体の粒子を混合することで、重合体の粒子の密充填が促進され、本塗膜の造膜性に優れる。
本水性分散液を得るために混合する2種以上の水性分散液が含む各重合体の粒子は、特に、上述した含フッ素重合体の粒子であるのが好ましい。つまり、本水性分散液は、上述した含フッ素重合体の粒子を含む水性分散液の2種以上を混合して得るのが好ましい。
本水性塗料は、本発明の水性分散液と、必要に応じて、本発明の水性分散液に含まれる成分以外の成分(以下、「添加剤」ともいう。)を含んでもよい。
添加剤の具体例としては、含フッ素重合体の製造に用いた界面活性剤以外の界面活性剤、硬化剤、顔料、分散剤、消泡剤、造膜助剤、レベリング剤、増粘剤、硬化助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、低汚染化剤が挙げられる。
本水性塗料は、本水性分散液および上述した任意の添加剤を混合して製造するのが好ましい。ただし、本水性分散液を得るために混合する2種以上の水性分散液は、あらかじめ混合してもよく、水性塗料を製造する際に任意の添加剤とともに混合してもよい。
本水性塗料は、基材の表面に直接塗布してもよく、表面処理(下地処理等)された基材の表面に塗布してもよい。本塗膜の膜厚は、本塗膜の耐久性の観点から、25〜100μmが好ましく、30〜80μmがより好ましい。
基材の材質の具体例としては、非金属材料(樹脂、ゴム、木材等の有機質材料、コンクリート、ガラス、セラミックス、石材等の無機質材料等)、金属材料(鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金等)が挙げられる。
本水性塗料の、塗布方法の具体例としては、刷毛、ローラー、ディッピング、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター、スピンコーター等の塗布装置を使用する方法が挙げられる。
本塗膜は、本水性塗料を塗布して形成されてなる塗布層を、乾燥させて得るのが好ましい。塗布後の乾燥温度は、25℃〜200℃が好ましい。
本塗膜は、透過型電子顕微鏡を用いて観察すると、重合体の粒子間に境界の極めて少ない、一様な状態として観測できる。このように、本塗膜は造膜性に優れるため、塗膜の白化が抑制される。
本水性塗料によれば、塗膜の造膜性に優れ、塗膜の白化が抑制された塗膜、さらには、加工性にも優れた塗膜を有する塗膜付き基材が得られる。したがって、上記基材は、降雨に曝されても美観を失わないこと、および微細な加工を求められる窯業建材用途において、好適に使用できる。
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの例に限定されない。
なお、例1〜例4は重合体の製造例であり、例5は水性塗料の製造例であり、例6および例7は実施例であり、例8〜例13は比較例である。
含フッ素重合体の製造に使用した単量体と、その略号は、以下の通りである。
なお、単量体1および単量体2におけるHLB値は、上述した有機概念図法によって算出した値である。
〔フルオロオレフィン〕
CTFE:クロロトリフルオロエチレン
〔単量体1〕
HB−10EOVE:CH=CHO(CH−O(CHCHO)10H(HLB値16.8、Mw556)
CM−10EOVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)10H(HLB値14.7、Mw564)
CM−15EOVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHO(CHCHO)15H(HLB値15.7、Mw830)
〔単量体2〕
CHMVE:CH=CHOCH−cycloC10−CHOH(HLB値6.6)
HBVE:CH=CHOCHCHCHCHOH(HLB値10.2)
〔単量体3〕
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル
EVE:エチルビニルエーテル
[例1]含フッ素重合体1の製造例
真空脱気したオートクレーブ内に、EVE(248g)、CHVE(116g)、CHMVE(31g)、CM−15EOVE(19g)、イオン交換水(947g)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン性界面活性剤)(52g)、ラウリル硫酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)(1.1g)を撹拌下で導入し、25℃において、撹拌回転数300rpmにて60分撹拌した後、0.50℃/分の速度で50℃まで昇温して20分保持した。次いで、オートクレーブ内に、過硫酸アンモニウム(0.12g)の0.4質量%水溶液およびCTFE(532g)を、それぞれ3.0g/分の速度で連続的に添加して、24時間重合した後、オートクレーブ内溶液をろ過し、含フッ素重合体1の粒子を含む第二水性分散液1(含フッ素重合体1の濃度50質量%)を得た。
[例2]含フッ素重合体2の製造例
表1に記載の単量体を使用し、ノニオン性界面活性剤を添加しない以外は例1と同様にして、含フッ素重合体2の粒子を含む第一水性分散液1(含フッ素重合体2の濃度50質量%)を得た。
[例3]含フッ素重合体3の製造例
真空脱気したオートクレーブ内に、CTFE(532g)、EVE(131g)、CHVE(320g)、HBVE(21g)、CM−10EOVE(13g)、イオン交換水(1018g)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ノニオン性界面活性剤)(52g)、ラウリル硫酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)(1.1g)を撹拌下で導入した。次いで、オートクレーブ内に、過硫酸アンモニウム(0.12g)を導入して、24時間重合した後、オートクレーブ内溶液をろ過し、含フッ素重合体3の粒子を含む第二水性分散液2(含フッ素重合体3の濃度50質量%)を得た。
[例4]含フッ素重合体4の製造例
表1に記載の単量体を使用する以外は例3と同様にして、含フッ素重合体4の粒子を含む第一水性分散液2(含フッ素重合体4の濃度50質量%)を得た。
例1〜例4で得られた水性分散液の詳細を表1に示す。なお、表中の「粒子径300nm超における散乱強度割合(%)」は、散乱強度の全体に対する、粒子径300nm超における散乱強度の割合であり、値が小さいほど、粒子径300nm超である重合体の粒子が少ないことを意味する。
各例において、各水性分散液における粒子の平均粒子径、散乱強度ピーク、およびゼータ電位はELS−8000(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。測定における測定温度は23±1℃であり、測定溶媒は水(屈折率1.3、粘度0.9cp)であり、測定する試料中の重合体濃度は95〜105ppmとした。
[例5]水性塗料の製造例
例1〜4で得られた水性分散液を表2で示す割合で混合した水性分散液(100g)、造膜助剤(7.5g)、増粘剤(0.4g)、消泡剤(0.6g)、およびイオン交換水(13g)を混合し、水性塗料1〜8を得た。なお、添加剤の詳細は下記の通りである。
造膜助剤:EHG(日本乳化剤社製品名)
増粘剤:プライマル TT−615(ポリアクリル酸系増粘剤、ローム&ハース社製品名)
消泡剤:デヒドラン 1620(BASF社製品名)
〔塗膜の評価〕
[例6〜13]塗膜付き基材の製造例
スレート板(縦120mm、横60mm、板厚15mm)の表面に、下塗り塗料(大日本塗料社製、Vセラン(登録商標)#700)を、エアスプレーにて乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、100℃で210秒間乾燥させて下塗り膜を形成した。
次いで、下塗り膜の表面に、水性塗料1をエアスプレーにて乾燥膜厚が40μmになるように塗布し、100℃で210秒間乾燥させて塗膜を形成して、水性塗料1から形成されてなる塗膜付き基材1を得て、試験板1とした。水性塗料2〜8のそれぞれについても、同様にして試験板2〜8をそれぞれ得た。
(塗膜の耐白化性)
試験板を60℃の温水に18時間浸漬後、5℃の冷水に15時間浸漬し、その後5℃で乾燥した。乾燥後、塗膜の外観について以下の基準に従い評価した。
A:塗膜面に、白化が認められなかった。
B:塗膜面の80%以上に、白化が認められなかった。
C:塗膜面の20%超の面積に、白化が認められた。
(塗膜の加工性)
塗膜を形成した直後の2枚の試験板の塗装面同士を重ね合わせ、その上に2kgのおもりをのせた。1時間後、試験板を引き剥がし、塗膜が剥がれるかを確認した。
A:塗膜面に剥がれが認められなかった。
B:塗膜面の20%未満に剥がれが認められた。
C:塗膜面の20%以上に剥がれが認められた。
評価結果を表2に示す。

Claims (15)

  1. 動的光散乱法により測定される粒子径分布において、2以上の散乱強度ピークを有し、粒子径300nm超の範囲に散乱強度ピークを有さない水性分散液であって、
    前記散乱強度ピークにおける、D10に対するD90の比がいずれも3.0以下であり、かつ、
    前記散乱強度ピークがいずれも重合体の粒子由来であり、前記散乱強度ピークのうち少なくとも1つは、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子由来であることを特徴とする水性分散液。
  2. 前記2以上の散乱強度ピークを、粒子径1〜300nmの範囲に有する、請求項1に記載の水性分散液。
  3. 前記散乱強度ピークを与える重合体のガラス転移温度が、いずれも0〜100℃である、請求項1または2に記載の水性分散液。
  4. 粒子径30nm以上100nm以下にピークトップを有する第1の散乱強度ピークと、粒子径100nm超220nm以下にピークトップを有する第2の散乱強度ピークと、を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性分散液。
  5. 前記第1の散乱強度ピークを与える重合体の粒子と、前記第2の散乱強度ピークを与える重合体の粒子との質量の和に対する、前記第1の散乱強度ピークを与える重合体の粒子の含有量が、3〜50質量%である、請求項4に記載の水性塗料。
  6. 前記第1の散乱強度ピークを与える重合体の粒子の平均粒子径と、前記第2の散乱強度ピークを与える重合体の粒子の平均粒子径との差の絶対値が、10〜120nmであり、
    前記第1の散乱強度ピークを与える重合体のガラス転移温度と、前記第2の散乱強度ピークを与える重合体のガラス転移温度との差の絶対値が、5〜30℃である、請求項4または5に記載の水性分散液。
  7. フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む前記重合体において、前記重合体が含む全単位に対する、前記親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位の含有量が、0.1〜15モル%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性分散液。
  8. 前記HLB値が12.0〜19.0である単量体が、ポリオキシアルキレン鎖を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液。
  9. 前記2以上の散乱強度ピークがいずれも、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0であって、かつポリオキシアルキレン鎖を有する単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子由来である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性分散液。
  10. 平均粒子径の異なる2種以上の重合体の粒子と、水とを含み、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない水性分散液であって、
    前記重合体の粒子の、動的光散乱法により測定される粒子径分布における、D10に対するD90の比がいずれも3.0以下であり、
    前記重合体のうち少なくとも1種は、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体であることを特徴とする水性分散液。
  11. 動的光散乱法により測定される粒子径分布において、D10に対するD90の比が3.0以下である重合体の粒子と、水とを含み、粒子径300nm超である重合体の粒子を含まない2種以上の水性分散液を混合して水性分散液を得る、水性分散液の製造方法であって、
    前記混合する水性分散液のうち少なくとも1種は、フルオロオレフィンに基づく単位と、親水性基を有しHLB値が12.0〜19.0である単量体に基づく単位と、を含む重合体の粒子を含むことを特徴とする、水性分散液の製造方法。
  12. 前記混合する2種以上の水性分散液が、少なくとも、
    重合体の粒子を含み、ノニオン性界面活性剤を含まない第一水性分散液と、
    前記第一水性分散液が含む重合体の平均粒子径超の平均粒子径である重合体の粒子、およびノニオン性界面活性剤を含む第二水性分散液と、である請求項11に記載の水性分散液の製造方法。
  13. 前記第一水性分散液のゼータ電位が−80mV以上−30mV未満であり、前記第二水性分散液のゼータ電位が−30mV以上−5mV以下である、請求項12または13に記載の水性分散液の製造方法。
  14. 窯業建材の塗装に用いられる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性分散液を含む水性塗料。
  15. 基材の表面に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性分散液を含む水性塗料を塗布して塗布層を形成し、前記塗布層を乾燥させて塗膜を形成する、塗膜付き基材の製造方法。
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