JP2019041777A - ヌクレアーゼ媒介ゲノム遺伝子操作のための送達方法および組成物 - Google Patents

ヌクレアーゼ媒介ゲノム遺伝子操作のための送達方法および組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】毒性が低く効率的がより高い、細胞のゲノム遺伝子操作、特に、細胞のゲノムの標的化された改変のための組成物および方法を提供する。【解決手段】本発明の一態様では、単離された細胞のゲノム中に1種または複数種の導入遺伝子を組み込む方法が提供され、該方法では、(a)該1種または複数種の導入遺伝子を含むドナーベクター、および(b)少なくとも1種のヌクレアーゼを該細胞中に導入するステップを含み、該少なくとも1種のヌクレアーゼにより該細胞の該ゲノムが開裂され、したがって、該1種または複数種の導入遺伝子が該細胞の該ゲノム中に組み込まれる。【選択図】図1

Description

関連出願への相互参照
本出願は、2013年10月17日に出願された米国仮出願第61/892,348号および2014年8月5日に出願された米国仮出願第62/033,424号の利益を主張し、その開示はそれらの全体が本明細書に参考として援用される。
技術分野
本開示は、ゲノム遺伝子操作、特に、細胞のゲノムの標的化された改変の分野にある。
背景
ゲノムDNAの標的化された開裂のための種々の方法および組成物が説明されてきた。かかる標的化された開裂事象を使用して、例えば、標的化された変異誘発を誘導し、細胞DNA配列の標的化された欠失を誘導し、所定の染色体遺伝子座における標的化された組換えを容易にすることができる。例えば、あらゆる目的でその開示が参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第8,586,526号;同第8,329,986号;同第8,399,218号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および同第20130177960号、ならびに米国出願第14/278,903号を参照されたい。
これらの方法は、多くの場合、非相同末端結合(NHEJ)等、エラーボーン過程による切断の修復または修復鋳型を使用した修復(相同組換え修復またはHDR)が、遺伝子のノックアウトまたは目的の配列の挿入(標的化組込み)をもたらし得るような、標的DNA配列に二本鎖切断(DSB)またはニックを誘導するための遺伝子操作された開裂系の使用に関与する。遺伝子操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)等の特異的ヌクレアーゼの使用により、特異的開裂をガイドするための遺伝子操作されたcrRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)によるCRISPR/Cas系を使用して、および/あるいは、Argonaute系に基づくヌクレアーゼ(例えば、T. thermophilus由来、「TtAgo」として公知;Swartsら(2014年)Nature 507巻(7491号):258〜261頁)を使用して、開裂を生じることができる。
上述のヌクレアーゼ系の1つを使用する標的化された開裂は、HDRまたはNHEJ媒介性の過程のいずれかを使用して、特異的標的位置に核酸を挿入するために利用できる。しかし、細胞にヌクレアーゼ系およびドナーの両方を送達することは、問題であり得る。例えば、細胞中へのプラスミドの形質導入によるドナーまたはヌクレアーゼの送達は、レシピエント細胞、特に、初代細胞であり、したがって細胞株由来の細胞ほどには頑強でない細胞に対して、毒性であり得る。
CD34+幹細胞または前駆細胞は、自己再生し、かつ/またはリンパ系譜の細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)ならびに骨髄系譜の細胞(例えば、単球、赤血球、好酸球、好塩基球、および好中球)に分化する能力を特徴とする不均一な細胞のセットである。それらの不均一性は、CD34+幹細胞集団内には、特定の群の多分化能(系譜にコミットした(lineage committed)かどうかにかかわらず)を反映することも多い多数のサブグループが存在するという事実から生じる。例えば、CD38−であるCD34+細胞は、より原始的な未成熟CD34+前駆細胞であり(長期造血前駆細胞とも呼ばれる)、一方、CD34+CD38+である細胞(短期造血前駆細胞)は系譜にコミットする(Stellaら、(1995年)Hematologica 80巻:367〜387頁を参照されたい)。次いでこの集団が分化経路をさらに進むと、CD34マーカーは失われる。CD34+幹細胞には臨床的細胞療法における巨大な潜在性がある。しかし、それらの不均一性に一部起因して、細胞に対して遺伝子ノックアウト、導入遺伝子の挿入などのような遺伝子操作を実施することは難しい場合がある。具体的には、これらの細胞は、従来の送達ベクターでは形質導入が不十分であり、最も原始的な幹細胞は改変に対して感受性であり、誘導されたDNA DSB後のHDRが限定され、また、長期標準培養条件でのHSC維持が不十分である。さらに、他の目的の細胞(単に非限定的な例として、心筋細胞、中型有棘ニューロン、初代肝細胞、胚性幹細胞、人工多能性(puripotent)幹細胞および筋肉細胞)は、他の細胞よりも、ゲノム編集のための形質導入に成功しない場合がある。
したがって、毒性が低く効率的がより高い、CD34+細胞および他の目的の細胞のゲノム遺伝子操作のための組成物および方法が、いまだ必要とされている。
米国特許第8,586,526号明細書 米国特許第8,329,986号明細書 米国特許第8,399,218号明細書 米国特許第6,534,261号明細書 米国特許第6,599,692号明細書 米国特許第6,503,717号明細書 米国特許第6,689,558号明細書 米国特許第7,067,317号明細書 米国特許第7,262,054号明細書 米国特許第7,888,121号明細書 米国特許第7,972,854号明細書 米国特許第7,914,796号明細書 米国特許第7,951,925号明細書 米国特許第8,110,379号明細書 米国特許第8,409,861号明細書 米国特許出願公開第2003/0232410号明細書 米国特許出願公開第2005/0208489号明細書 米国特許出願公開第2005/0026157号明細書 米国特許出願公開第2005/0064474号明細書 米国特許出願公開第2006/0063231号明細書 米国特許出願公開第2008/0159996号明細書 米国特許出願公開第2010/0218264号明細書 米国特許出願公開第2012/0017290号明細書 米国特許出願公開第2011/0265198号明細書 米国特許出願公開第2013/0137104号明細書 米国特許出願公開第2013/0122591号明細書 米国特許出願公開第2013/0177983号明細書 米国特許出願公開第2013/0177960号明細書
T. thermophilus由来、「TtAgo」として公知;Swartsら(2014年)Nature 507巻(7491号):258〜261頁 Stellaら、(1995年)Hematologica 80巻:367〜387頁
概要
本発明は、遺伝子療法およびゲノム遺伝子操作における使用のための組成物および方法を記載する。具体的には、記載されている方法および組成物は、造血幹細胞/前駆細胞(HSC/PC)およびT細胞を含めた初代細胞などの細胞への核酸の導入に関する。さらに、本発明の方法および組成物は、そのような細胞への目的のドナーDNAを含むAAV粒子の送達に有用である。
一部の態様では、本発明は、ゲノム遺伝子操作の目的で細胞(例えば、HSC/PC)に少なくとも1種のヌクレアーゼを送達することを含む。一部の実施形態では、ヌクレアーゼをペプチドとして送達し、他の実施形態では、ヌクレアーゼを、ヌクレアーゼをコードする核酸として送達する。一部の実施形態では、2種以上のヌクレアーゼを使用する。一部の好適な実施形態では、ヌクレアーゼをコードする核酸はmRNAであり、一部の例では、mRNAは保護されている。ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALE−ヌクレアーゼ(TALEN)またはCRISPR/CasまたはTtAgoヌクレアーゼ系またはこれらの組合せを含み得る。好適な実施形態では、ヌクレアーゼ(複数可)をコードする核酸をエレクトロポレーションによって送達する。
一態様では、単離された細胞のゲノム中に1種または複数種の導入遺伝子を組み込む方法であって、導入遺伝子と少なくとも1種のヌクレアーゼを細胞中に逐次的に導入し、したがってヌクレアーゼにより導入遺伝子の標的化された組込みが媒介されるステップを含む方法が本明細書で提供される。したがって、単離された細胞のゲノム中に1種または複数種の導入遺伝子を組み込む方法であって、(a)1種または複数種の導入遺伝子を含むドナーベクター、および、(b)少なくとも1種のヌクレアーゼを細胞中に導入するステップを含み、少なくとも1種のヌクレアーゼにより細胞のゲノムが開裂され、したがって、1種または複数種の導入遺伝子が細胞のゲノム中に組み込まれ、さらに、(i)ドナーベクターを少なくとも1種のヌクレアーゼよりも前に細胞中に導入する場合、少なくとも1種のヌクレアーゼを、ドナーベクターの導入後48時間以内に細胞中に導入し、(ii)少なくとも1種のヌクレアーゼをドナーベクターよりも前に導入する場合、ドナーベクターを、少なくとも1種のヌクレアーゼの導入後4時間以内に細胞中に導入する、方法。ある特定の実施形態では、方法は、(a)細胞中に1種または複数種の導入遺伝子を含むドナーベクターを導入するステップと、(b)細胞を48時間未満(例えば、数秒〜48時間またはそれらの間の任意の時間)にわたって培養するステップと、(c)細胞中に少なくとも1種のヌクレアーゼを導入するステップとを含んでよく、少なくとも1種のヌクレアーゼにより細胞のゲノムが開裂され、したがって、1種または複数種の導入遺伝子が細胞のゲノム中に組み込まれる。あるいは、方法は、(a)細胞中に少なくとも1種のヌクレアーゼを導入するステップと、(b)細胞を24時間未満(例えば、数秒〜24時間またはそれらの間の任意の時間)にわたって培養するステップと、(c)細胞中に1種または複数種の導入遺伝子を含むドナーベクターを導入するステップとを含んでよく、少なくとも1種のヌクレアーゼにより細胞のゲノムが開裂され、したがって、1種または複数種の導入遺伝子が細胞のゲノム中に組み込まれる。追加的な導入遺伝子を同じ遺伝子座および/または異なる遺伝子座に組み込むために、方法のステップを繰り返すことができる。ある特定の実施形態では、細胞を24時間未満(例えば、数秒〜24時間またはそれらの間の任意の時間)にわたって培養する(ステップ(b))。さらに別の実施形態では、例えば、ドナーベクターを導入する前にヌクレアーゼ(複数可)を導入する場合、細胞を4時間未満にわたって培養する。
任意の細胞、例えば、造血幹細胞(例えば、CD34+細胞)またはT細胞(例えば、CD4+細胞またはCD8+細胞)を使用することができる。ドナーベクターは、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター、例えば、AAVベクター(例えば、AAV6ベクターまたはAAV2/6などのAAV6キメラベクターなど)として導入することができる。ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、TtAgoおよび/またはCRISPR/Cas)も、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを使用して、例えば、mRNA形態で導入することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、セーフハーバー遺伝子(例えば、CCR5遺伝子、AAVS1遺伝子、Rosa遺伝子、アルブミン遺伝子など)を標的とする。導入遺伝子は、タンパク質、例えば、障害(例えば、リソソーム蓄積症、異常ヘモグロビン症、血友病など)を有する被験体では欠如または欠損している治療タンパク質をコードし得る。ある特定の実施形態では、1種または複数種のタンパク質の提供が必要な被験体に1種または複数種のタンパク質を提供する方法であって、本明細書に記載のいずれかの方法に従って、単離された細胞に1種または複数種のタンパク質をコードする1種または複数種の導入遺伝子を導入するステップと、細胞を被験体に導入し、したがって、1種または複数種のタンパク質が被験体に提供されるステップとを含む方法が記載される。
他の態様では、本発明は、標的細胞へのドナー核酸の送達を含む。ドナーは、ヌクレアーゼ(複数可)をコードする核酸よりも前に、それよりも後に、またはそれと一緒に送達することができる。ある特定の実施形態では、ドナーをヌクレアーゼ(複数可)と同時に送達する。他の実施形態では、ドナーをヌクレアーゼ(複数可)よりも任意の時間前、例えば、直前、1〜60分前(またはそれらの間の任意の時間)、1〜24時間前(またはそれらの間の任意の時間)、1〜48時間前(またはそれらの間の任意の時間)または48時間超前を含め、ヌクレアーゼ(複数可)よりも前に送達する。ある特定の実施形態では、ドナーをヌクレアーゼよりも後に、好ましくは4時間以内に送達する。ドナー核酸は、細胞のゲノム、例えば、内因性遺伝子座中に組み込まれる外因性配列(導入遺伝子)を含む。導入遺伝子は、ヌクレアーゼ(複数可)による開裂部位またはその近傍(例えば、1〜50塩基対以内)に組み込まれることが好ましい。一部の実施形態では、ドナーは、標的化された開裂部位との相同性の領域が隣接する全長遺伝子またはその断片を含む。一部の実施形態では、ドナーは、相同な領域を欠き、相同性非依存的機構(即ちNHEJ)によって標的遺伝子座中に組み込まれる。他の実施形態では、ドナーは、細胞における使用のため(即ち、遺伝子補正のため)の相同な領域が隣接する、核酸のより小さい一片を含む。一部の実施形態では、ドナーは、機能的または構造的構成成分、例えば、shRNA、RNAi、miRNAなどをコードする遺伝子を含む。他の実施形態では、ドナーは、目的の遺伝子に結合し、かつ/またはその発現をモジュレートする調節エレメントをコードする遺伝子を含む。
他の態様では、ウイルスおよび/または非ウイルス遺伝子移入方法によってドナーを送達する。好適な実施形態では、アデノ関連ウイルス(AAV)を介してドナーを細胞に送達する。以下に限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8およびこれらの組合せを含めた任意のAAVベクターを使用することができる。一部の例では、AAVは、カプシド血清型と比較して異種血清型であるLTR(例えば、AAV5カプシド、AAV6カプシド、またはAAV8カプシドを有するAAV2 ITR)を含む。ドナーは、ヌクレアーゼを送達するために使用するものと同じ遺伝子移入系を使用して送達することもでき(同じベクター上に含める)、ヌクレアーゼに対して使用する異なる送達系を使用して送達することもできる。ある特定の実施形態では、ドナーはウイルスベクター(例えば、AAV)を使用して送達し、ヌクレアーゼ(複数可)はmRNA形態で送達する。
ドナー分子の目的の配列は、プロモーターありまたはなしで、機能的ポリペプチドをコードする1種または複数種の配列(例えば、cDNA)を含み得る。ある特定の実施形態では、核酸配列は、抗体、抗原、酵素、増殖因子、受容体(細胞表面または核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーター、上記のいずれかの機能的断片、および上記の組合せをコードする配列を含む。機能的ポリペプチドコード配列がプロモーターなしである実施形態では、組み込まれた配列の発現は、次いで、目的の領域中の内因性プロモーターまたは他の制御エレメントによって駆動される転写によって確実にされる。他の実施形態では、「タンデム」カセットが、選択された部位中にこの様式で組み込まれ、カセットの第1の構成成分は、上記のようにプロモーターなし配列を含み、その後転写終結配列、および自律的発現カセットをコードする第2の配列が続く。2Aペプチド、SA部位、IRES等をコードする配列が含まれるがこれらに限定されないさらなる配列(コード配列または非コード配列)が、相同性アーム間で、ドナー分子中に含まれ得る。
別の態様では、相同性非依存的機構によって細胞のゲノム中にドナー核酸を組み込む方法が、本明細書に記載される。これらの方法は、細胞のゲノム中に二本鎖切断(DSB)を生じるステップと、ヌクレアーゼを使用してドナー分子を開裂させるステップとを含み、その結果、ドナー核酸は、DSBの部位において組み込まれる。ある特定の実施形態では、ドナー核酸は、相同性非依存的方法(例えば、NHEJ)によって組み込まれる。上述のように、in vivo開裂の際に、これらのドナー配列は、DSBの位置において、細胞のゲノム中に標的化された様式で組み込まれ得る。ドナー配列は、DSBを生じさせるために使用される1種または複数種のヌクレアーゼと同じ1つまたは複数の標的部位を含み得る。したがって、ドナー配列は、組込みが望まれる内因性遺伝子を開裂させるために使用されるのと同じ1種または複数種のヌクレアーゼによって開裂され得る。ある特定の実施形態では、ドナー配列は、DSBを誘導するために使用されるヌクレアーゼとは異なるヌクレアーゼ標的部位を含む。標的細胞のゲノム中のDSBは、任意の機構によって生じ得る。ある特定の実施形態では、DSBは、1種または複数種のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、目的の領域内の配列に結合するように遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインを含む融合タンパク質、および開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインによって生じる。他の実施形態では、DSBは、ヌクレアーゼドメインに融合された1つまたは複数のTALE DNA結合ドメイン(天然起源または非天然起源)(TALEN)によって生じる。なおさらなる実施形態では、DSBは、遺伝子操作された単一ガイドRNAまたはその機能的相当部分がゲノム中の標的化された部位にこのヌクレアーゼをガイドするために必要に応じて使用される、CRISPR/CasまたはTtAgoヌクレアーゼ系を使用して生じる。
他の態様では、ヌクレアーゼ(複数可)は、哺乳動物細胞においてセーフハーバー遺伝子、例えば、CCR5遺伝子、PPP1R12C(AAVS1としても公知である)遺伝子、Rosa遺伝子もしくはアルブミン遺伝子に結合し、かつ/またはそれを開裂する。さらに、哺乳動物系における選択を補助するために、HPRT遺伝子座を使用することができる。
一態様では、ドナーは、目的の遺伝子に結合しおよび/またはその発現をモジュレートする、目的の調節タンパク質(例えば、ZFP TF、TALE TFまたはCRISPR/Cas TF)である。一実施形態では、調節タンパク質は、DNA配列に結合し、他の調節因子の結合を防止する。別の実施形態では、調節タンパク質の結合は、標的DNAの発現をモジュレート(即ち、誘導または抑制)し得る。
他の態様では、本明細書に記載されているように、例えば、遺伝子改変を導入するためにヌクレアーゼを使用して遺伝子改変された(例えば、トランスジェニック)細胞が本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、細胞は、本明細書に記載の方法によって作製される。ある特定の実施形態では、細胞は、CCR5、AAVS1、ALB、Rosa26および/またはHPRTなどのセーフハーバー遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子を含む。組み込まれた導入遺伝子を含む細胞は、内因性プロモーターから導入遺伝子を発現し得る、あるいは、導入遺伝子は、導入遺伝子の発現を駆動する外因性プロモーターなどの調節エレメントおよび制御エレメントを含み得る(例えば、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれている場合)。ある特定の実施形態では、導入遺伝子を含む細胞では、ゲノム中に組み込まれたウイルスベクター配列を全く含まない。細胞は、任意の真核生物細胞、例えば、CD34+幹細胞(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)もしくは他の動員剤投与を介して患者において骨髄から末梢血中に動員されたまたは骨髄もしくは臍帯から直接採取した患者由来幹細胞)であり得る。任意の適切な方法によって細胞を採取し、精製し、培養し、ヌクレアーゼおよび/またはドナーを細胞中に導入することができる。
本明細書に記載されている遺伝子改変された細胞を含む医薬組成物などの組成物も提供される。一部の実施形態では、組成物は、CD34+HSC/PCまたはHSC/PC細胞集団を含む。他の実施形態では、組成物は、T細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+T細胞)を含む。さらに別の実施形態では、T細胞組成物は、CD4+細胞のみを含む、またはCD8+細胞のみを含む。
別の態様では、本明細書に記載されるとおりの遺伝子改変された細胞を使用する方法が提供される。ある特定の実施形態では、遺伝子改変された血液細胞前駆体(「HSC/PC」)が、骨髄移植において与えられ、これらのHSC/PCは、in vivoで分化および成熟する。一部の実施形態では、これらのHSC/PCは、G−CSF誘導された動員の後に単離され、他の実施形態では、これらの細胞は、ヒト骨髄または臍帯から単離される。一部の態様では、これらのHSC/PCは、特定の遺伝子または調節配列をノックアウトするように設計されたヌクレアーゼによる処理によって編集される。他の態様では、これらのHSC/PCは、野生型遺伝子もしくは他の目的の遺伝子が挿入および発現され、ならびに/または内因性の異常な遺伝子が補正されるように、遺伝子操作されたヌクレアーゼとドナー核酸とで改変される。一部の実施形態では、これらの改変されたHSC/PCは、穏やかな骨髄破壊的前処理の後に患者に投与される。他の態様では、移植後に、造血細胞の100%が改変されたHSC/PCに由来するように、これらのHSC/PCは、完全な骨髄破壊後に投与される。さらに、細胞は、細胞周期のG2期において停止され得る。
一部の実施形態では、トランスジェニックのHSC/PC細胞および/または動物は、ヒト遺伝子をコードする導入遺伝子を含む。一部の例では、トランスジェニック動物は、外因性導入遺伝子に対応する内因性遺伝子座においてノックアウトを含み、それによって、ヒトタンパク質が単離状態で研究され得るin vivo系の開発を可能にする。かかるトランスジェニックモデルは、小分子もしくは大きい生体分子または目的のヒトタンパク質と相互作用し得るもしくは目的のヒトタンパク質を改変し得る他の実体を同定するために、スクリーニング目的で使用され得る。一部の態様では、導入遺伝子は、本明細書に記載される方法のいずれかによって得られた幹細胞(例えば、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、造血幹細胞または前駆細胞等)または動物胚中に、選択された遺伝子座(例えば、セーフハーバー)中に組み込まれ、次いで、胚は、生きた動物が出生するように移植される。次いで、動物は、性的成熟になるまで育てられ、子孫を生じるようになり、ここで、子孫の少なくとも一部は、編集された内因性遺伝子配列または組み込まれた導入遺伝子を含む。
本発明のAAVおよび核酸を含むキットもまた提供される。キットは、ヌクレアーゼをコードする核酸(例えば、RNA分子、または適切な発現ベクター中に含有されるZFN、TALEN、TtAgoもしくはCRISPR/Cas系コード遺伝子)、またはヌクレアーゼタンパク質のアリコート、ドナー分子、適切な幹細胞性改変因子(stemness modifier)、本発明の方法を実施するための指示書などを含み得る。これらのキットは、選択マーカーまたはスクリーニングマーカー等の目的のドナー分子もまた含み得る。
これらおよび他の態様は、全体としての開示を踏まえて、当業者に容易に明らかである。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
単離された細胞のゲノム中に1種または複数種の導入遺伝子を組み込む方法であって、(a)該1種または複数種の導入遺伝子を含むドナーベクター、および(b)少なくとも1種のヌクレアーゼを該細胞中に導入するステップを含み、ここで、該少なくとも1種のヌクレアーゼにより該細胞の該ゲノムが開裂され、したがって、該1種または複数種の導入遺伝子が該細胞の該ゲノム中に組み込まれ、さらに、ここで、
(i)該ドナーベクターを該少なくとも1種のヌクレアーゼよりも前に該細胞中に導入する場合、該少なくとも1種のヌクレアーゼを、ドナーベクターの導入後48時間以内に該細胞中に導入し、
(ii)該少なくとも1種のヌクレアーゼを該ドナーベクターよりも前に導入する場合、該ドナーベクターを、該少なくとも1種のヌクレアーゼの導入後4時間以内に該細胞中に導入する、方法。
(項目2)
前記ドナーベクターを前記少なくとも1種のヌクレアーゼよりも前に前記細胞中に導入し、該細胞を、該ドナーベクターを該細胞中に導入した後1時間〜24時間にわたって培養する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記細胞が造血幹細胞またはT細胞である、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記ドナーベクターがAAVベクターである、項目1〜3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記AAVベクターがAAV6を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
少なくとも1種のヌクレアーゼを前記細胞中にmRNAとして導入する、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記少なくとも1種のヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Casヌクレアーゼ系およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1〜6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記ヌクレアーゼが、セーフハーバー遺伝子を開裂する、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記セーフハーバー遺伝子が、CCR5遺伝子、AAVS1遺伝子、Rosa遺伝子およびアルブミン遺伝子からなる群から選択される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記導入遺伝子が治療タンパク質をコードする、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
(項目11)
項目1〜10のいずれかに記載の方法によって作製された細胞。
(項目12)
1種または複数種のタンパク質の提供が必要な被験体に1種または複数種のタンパク質を提供する方法であって、
項目1〜11のいずれかに記載の方法に従って、単離された細胞中に該1種または複数種のタンパク質をコードする1種または複数種の導入遺伝子を導入するステップと、
該細胞を該被験体に導入し、したがって、該1種または複数種のタンパク質が該被験体に提供されるステップと
を含む方法。
(項目13)
項目11に記載の細胞を含む医薬組成物。
図1のパネルAおよびBは、ZFN−AAVで改変されたCD34+細胞におけるGFP発現を示す。図1Aは、CMVにより駆動されるeGFP導入遺伝子を含有する、示されているAAVベクターを用いて形質導入した、動員された末梢血CD34+細胞(mPBCD34+)におけるGFP発現を示す。図1Aに示されているデータは、形質導入の2日後の細胞からのデータである。次いで、感染の2日後および5日後(dpi)に細胞を収集し、フローサイトメーター(Guava、Millipore)を使用して分析した。図1Bは、各集団におけるGFP陽性である細胞のパーセントを示す。
図2のパネルA〜Cは、CD34+細胞へのZFN媒介性AAVドナー挿入を示す。図2Aは、この試験で使用したAAV6−R5−160−XhoIドナー構築物の略図を示す。これらの試験で使用したAAV6は、AAV2 ITRおよびAAV6カプシドを含む偽型ウイルスであった(即ち、「AAV2/6」)。AAV2の左のITR(L−ITR)と右のITR(R−ITR)の間にドナーDNAを構築し、そこでCCR5特異的ZFN結合部位の間にXhoI部位を導入する。CCR5の左アームおよび右アームは、CCR5 ZFN結合部位に隣接するCCR5遺伝子座のゲノム配列に由来する配列を示す。第2のXhoI部位(図2Aにおいて、CCR5の左の相同性アームの左側に)は、相同性アームの外側にあるのでドナー組込み後に組み込まれない。図2Bおよび図2Cは、AAV6−R5−160−XhoIドナーを300〜1×10vg/細胞の間の用量で用いて形質導入し、その後、形質導入の24時間後にCCR5特異的ZFN mRNA(120μg/ml)をBTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入したCD34+細胞を示す。細胞を5dpiの時点でゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後の図2Bに示されているRFLPアッセイおよび図2Cに示されているIlluminaディープシーケンシングのために処理した。図2Bに野生型(消化されなかったDNA)およびRFLPバンドが矢印で示され、同様に、検出されたRFLPのパーセントが示されている。図2Cは、Illuminaディープシーケンシングによって見出されたゲノム改変またはインデルのパーセントを示すグラフである。
図3のパネルAおよびBは、ヌクレアーゼ投与とドナー投与のタイミングおよび順序に応じたヌクレアーゼ改変を示すグラフである。AAV6−R5−160−XhoIドナーを、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したCD34+細胞へのCCR5特異的ZFN mRNAのエレクトロポレーション(EP)の最大48時間前(−48時間)〜20時間後(+20時間)に導入した(図3Aの−48時間〜−6時間および図3Bの−20時間〜+20時間)。後で細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。図3Aおよび図3Bはどちらも、Illuminaディープシーケンシングによって検出されたゲノム改変の量:挿入もしくは欠失(「インデル」)、または示されている時点においてドナー分子によってもたらされるRFLPの標的化された組込み(TI)のいずれかを示すグラフである。
図4のパネルA〜Dは、ZFNおよびAAVドナーによって改変されたCD34+の結果を示す。図4Aは、この試験において使用したR5−pgk−GFP−pAドナー構築物の略図を示す。ドナーDNAをAAV2のL−ITRとR−ITRの間に構築し、ここで、PGKプロモーターにより駆動されるeGFP発現カセット(1.6kb)をCCR5 ZFN結合部位の間に挿入した。CCR5の左アームおよび右アームは、CCR5 ZFN結合部位に隣接するCCR5遺伝子座のゲノム配列に由来する配列を示す。図4BはAAV6−R5−pgk−GFP−pAドナーを300〜3×10vg/細胞の間の用量で用いて形質導入したCD34+細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。24時間後、CCR5特異的ZFN mRNA(120μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。15dpiの時点で細胞をフローサイトメトリー分析のために収集した。グラフの左下の四分の一区内の数は、生細胞集団(PI−)内に存在するeGFP+細胞の百分率を示す。図4Cは、半定量的「In−Out」PCRアッセイを使用したCCR5遺伝子座中へのGFPカセットの標的化された組込みの検出を示すゲルを示す。標準対照のセットを、改変されていない野生型ゲノムDNAを用いた、CCR5遺伝子座におけるGFP導入遺伝子組込みの頻度が分かっている(サザンブロットにより決定される)ゲノムDNAプールの段階希釈によって調製した。等量のゲノムDNAならびにポリA領域(eGFPカセット内に存在する)内に存在するプライマーおよびZFN標的部位の3’側のCCR5相同アーム領域の外側に位置するプライマーを使用してPCRを実施した。図4Dは、プライマー対の両方のプライマーが標的部位の5’側になり、そのうちの1つがCCR5相同な領域の外側に位置するように1つの追加的なプライマー対を利用したPCR反応の第2のセットを使用した結果を示すゲルを示す。この第2の対を図2Cのものと同じPCR反応に含め、したがって、2つのプライマー対が存在した。第2のプライマー対をゲノムDNAインプットの測定値(measurement)として使用した。GFP−TI特異的PCR産物およびTI非特異的PCR産物(全体)が矢印によって示されている。 図4のパネルA〜Dは、ZFNおよびAAVドナーによって改変されたCD34+の結果を示す。図4Aは、この試験において使用したR5−pgk−GFP−pAドナー構築物の略図を示す。ドナーDNAをAAV2のL−ITRとR−ITRの間に構築し、ここで、PGKプロモーターにより駆動されるeGFP発現カセット(1.6kb)をCCR5 ZFN結合部位の間に挿入した。CCR5の左アームおよび右アームは、CCR5 ZFN結合部位に隣接するCCR5遺伝子座のゲノム配列に由来する配列を示す。図4BはAAV6−R5−pgk−GFP−pAドナーを300〜3×10vg/細胞の間の用量で用いて形質導入したCD34+細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。24時間後、CCR5特異的ZFN mRNA(120μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。15dpiの時点で細胞をフローサイトメトリー分析のために収集した。グラフの左下の四分の一区内の数は、生細胞集団(PI−)内に存在するeGFP+細胞の百分率を示す。図4Cは、半定量的「In−Out」PCRアッセイを使用したCCR5遺伝子座中へのGFPカセットの標的化された組込みの検出を示すゲルを示す。標準対照のセットを、改変されていない野生型ゲノムDNAを用いた、CCR5遺伝子座におけるGFP導入遺伝子組込みの頻度が分かっている(サザンブロットにより決定される)ゲノムDNAプールの段階希釈によって調製した。等量のゲノムDNAならびにポリA領域(eGFPカセット内に存在する)内に存在するプライマーおよびZFN標的部位の3’側のCCR5相同アーム領域の外側に位置するプライマーを使用してPCRを実施した。図4Dは、プライマー対の両方のプライマーが標的部位の5’側になり、そのうちの1つがCCR5相同な領域の外側に位置するように1つの追加的なプライマー対を利用したPCR反応の第2のセットを使用した結果を示すゲルを示す。この第2の対を図2Cのものと同じPCR反応に含め、したがって、2つのプライマー対が存在した。第2のプライマー対をゲノムDNAインプットの測定値(measurement)として使用した。GFP−TI特異的PCR産物およびTI非特異的PCR産物(全体)が矢印によって示されている。
図5のパネルAおよびBは、CD34+細胞のZFN−AAV改変を示す。図5Aは、この試験において使用したAAVS1−HindIIIドナーの略図を示す。ドナーDNAをAAV2のL−ITRとR−ITRの間に挿入し、ここで、HindIII部位をAAVS1特異的ZFN対の結合部位間に導入した。AAVS1の左アームおよび右アームは、AAVS1 ZFN結合部位に隣接するAAVS1遺伝子座のゲノム配列に由来する相同性アーム配列を示す。図5Bは、AAV6−AAVS1−HindIIIドナーを1000vg/mlまたは3000vg/mlで用いて形質導入したCD34+細胞のグラフを示す。24時間後、AAVS1 ZFN mRNA(40μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。5dpiの時点で細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。グラフは、インデル形成または標的化された組込みのいずれかによって測定されたゲノム改変の量を示す。
図6は、示されているTALEN対を用いたCD34+細胞のCCR5改変を示すグラフである。グラフは、Illuminaディープシーケンシングによって検出されたゲノム改変の量:挿入もしくは欠失(「インデル」)、またはドナー分子によってもたらされるRFLPの標的化された組込み(TI)のいずれかを示す。
図7のパネルAおよびBは、示されているヌクレアーゼを使用した、AAV6ドナーによってもたらされるRFLP(HindIII部位)のAAVS1遺伝子座へのCRISPR/Cas9媒介性の標的化された組込みを示すグラフである。同じAAVS1領域(開裂部位は25bp未満離れている)をAAVS1 ZFN対(30054:30035)ならびにCRISPR/Cas9試薬(「Cas9−gRNA−T1」および「Cas9−gRNA−T2」)によって標的化する。「T−1」および「T−2」は異なるガイドRNAを示す。図7Aは、示されている条件下での標的化された組込み(「TI」)と挿入/欠失(「インデル」)の両方についてのゲノム改変の百分率を示す。図7Bは、示されている条件下での標的化された組込みの百分率(「%TI」)を示す。
図8のパネルAおよびBは、CD4+初代T細胞へのヌクレアーゼ媒介性組込みの結果を示す。図8Aは、示されている条件下での、CCR5特異的ZFNおよびAAV2、AAV6またはIDLVを含むドナーの導入後の、標的化された組込み(「TI」)と挿入/欠失(「インデル」)の両方についての、CCR5のゲノム改変の百分率を示す。図8Bは、示されている条件下での、AAVS1ヌクレアーゼおよびAAV6ドナーの導入後のAAVS1のゲノム改変、標的化された組込み(「TI」)と挿入/欠失(「インデル」)の両方の百分率を示す。これらの条件下で、AAV6ドナーを使用すると、AAV2またはIDLVドナーと比較してTIの増加が観察される。
図9のパネルAおよびBは、CD8+初代T細胞へのヌクレアーゼ媒介性組込みの結果を示す。図9Aは、示されている条件下での、CCR5特異的ZFNおよびAAV2、AAV6またはIDLVを含むドナーの導入後の、標的化された組込み(「TI」)と挿入/欠失(「インデル」)の両方についての、CCR5のゲノム改変の百分率を示す。図9Bは、示されている条件下での、AAVS1ヌクレアーゼおよびAAV6ドナーの導入後の、標的化された組込み(「TI」)と挿入/欠失(「インデル」)の両方についての、AAVS1のゲノム改変の百分率を示す。これらの条件下で、AAV6ドナーを使用すると、AAV2またはIDLVドナーと比較してTIの増加が観察される。
詳細な説明
遺伝子療法またはゲノム遺伝子操作における使用のための細胞の形質導入のための組成物および方法が本明細書に開示されている。特に、標的化された開裂、その後の非相同末端結合による外因性配列またはゲノム変更のヌクレアーゼ媒介性の(即ち、ZFN、TALEN、TtAgoまたはCRISPR/Cas系)標的化された組込みが細胞において効率的に実現される。当該方法および組成物は、HSC/PCおよびT細胞の形質導入および遺伝子操作のために特に有用であるが、他の細胞型ためにも使用することができる。
ZFNおよびドナー鋳型DNAの送達は詳細の通り最適化されており、細胞型は、CD34+細胞を含めた任意の造血幹細胞または前駆体細胞を含む。CD34+細胞は、原始的(CD133+CD90+、またはCD90−)、初期(CD34+、CD133+)およびコミットした(CD34+CD133−)のCD34+サブセットならびにT細胞を含み得る。本明細書に記載の方法により、改変された細胞を用いて処置した動物における長期間にわたる多系譜の生着がもたらされる。
概要
本明細書に開示される方法、ならびに組成物の調製および使用の実施は、特に示さない限り、本技術分野の技術範囲内の、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算機化学、細胞培養、組換えDNAならびに関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、SambrookらMOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年および第3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期的更新;シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY、Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、119巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)Humana Press、Totowa、1999年を参照されたい。
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、相互交換可能に使用され、直鎖状または環状コンフォメーションの、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれかの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。本開示の目的のため、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定的であると解釈すべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)において修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対合特異性を有する;即ち、Aのアナログは、Tと塩基対合する。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、相互交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1または複数のアミノ酸が、対応する天然起源のアミノ酸の化学的アナログまたは修飾された誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。
「結合」とは、巨大分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的な非共有結合相互作用を指す。相互作用が全体として配列特異的である限り、結合相互作用の全ての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要はない。かかる相互作用は一般に、10−6−1またはそれ未満の解離定数(K)を特徴とする。「親和性」とは、結合の強度を指す:増加した結合親和性は、より低いKと相関する。
「結合タンパク質」は、別の分子と結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合できる。タンパク質結合タンパク質の場合、これは、それ自体と結合でき(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成する)および/または異なるタンパク質(単数もしくは複数)の1もしくは複数の分子に結合できる。結合タンパク質は、1つよりも多い型の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、タンパク質、またはより大きいタンパク質内のドメインであり、その構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1または複数のジンクフィンガーを介して配列特異的様式でDNAに結合する。用語、ジンクフィンガーDNA結合タンパク質は、多くの場合、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略される。
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1または複数のTALEリピートドメイン/単位を含むポリペプチドである。これらのリピートドメインは、その同族標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「リピート単位」(「リピート」とも呼ぶ)は、典型的には、33〜35アミノ酸長であり、天然起源のTALEタンパク質内の他のTALEリピート配列と少なくともいくらかの配列相同性を示す。
ジンクフィンガーおよびTALE結合ドメインは、例えば、天然起源のジンクフィンガーまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の遺伝子操作(1または複数のアミノ酸を変更する)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「遺伝子操作され」得る。したがって、遺伝子操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガーまたはTALE)は、非天然起源のタンパク質である。DNA結合タンパク質を遺伝子操作するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたDNA結合タンパク質は、その設計/組成が合理的基準から主に生じる、天然起源でないタンパク質である。設計のための合理的基準には、置換ルールの適用、ならびに既存のZFPおよび/またはTALEの設計および結合データの情報を記憶するデータベース中の情報を処理するためのコンピューターアルゴリズムが含まれる。例えば、米国特許第8,586,526号、同第6,140,081号;同第6,453,242号;および同第6,534,261号を参照されたい;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496もまた参照されたい。
「選択された」ジンクフィンガータンパク質またはTALEは、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験過程から主に生じる、天然には見出されないタンパク質である。例えば、米国特許第8,586,526号;同第5,789,538号;US第5,925,523号;US第6,007,988号;US第6,013,453号;US第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197、WO02/099084を参照されたい。
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられる原核生物アルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilusに由来する。(例えば、Swartsら、同書、G. Shengら、(2013年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111巻、652頁を参照されたい)。「TtAgo系」は、例えば、TtAgo酵素による開裂のためのガイドDNAを含めた、必要な構成成分の全てである。
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換の過程を指し、限定するものではないが、非相同末端結合(NHEJ)および相同組み換えによるドナー捕捉を含む。本開示の目的のため、「相同組換え(HR)」とは、例えば、相同性指向性の修復機構を介した細胞における二本鎖切断の修復の間に行われる、かかる交換の特殊化された形態を指す。この過程は、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「標的」分子(即ち、二本鎖切断を経験したもの)の鋳型修復のために「ドナー」分子を使用し、ドナーから標的への遺伝情報の移入をもたらすので、「非乗換え遺伝子変換」または「ショートトラクト(short tract)遺伝子変換」として様々に公知である。いかなる特定の理論に制約されることも望まないが、かかる移入は、切断された標的とドナーとの間に形成するヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ補正、および/もしくは標的の一部となる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング」、ならびに/または関連する過程に関与し得る。かかる特殊化されたHRは、多くの場合、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全てが標的ポリヌクレオチド中に取り込まれるように、標的分子の配列の変更をもたらす。
本開示の方法では、本明細書に記載される1または複数の標的化されたヌクレアーゼは、所定の部位において標的配列(例えば、細胞クロマチン)中に二本鎖切断を生じ、切断の領域中のヌクレオチド配列に対する相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドが、細胞中に導入され得る。二本鎖切断の存在は、ドナー配列の組込みを容易にすることが示されている。このドナー配列は、物理的に組み込まれ得、またはあるいは、このドナーポリヌクレオチドは、相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用されて、細胞クロマチン中への、ドナーと同様のヌクレオチド配列の全てまたは一部の導入を生じる。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列は、変更され得、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列へと変換され得る。したがって、用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、別のヌクレオチド配列による1つのヌクレオチド配列の置き換え(即ち、情報的な意味での配列の置き換え)を示すと理解され得、別のポリヌクレオチドによる1つのポリヌクレオチドの物理的または化学的置き換えを必ずしも必要としない。
本明細書に記載される方法のいずれかでは、さらなるジンクフィンガータンパク質またはTALENの対が、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖開裂に使用され得る。
本明細書に記載される方法のいずれかは、任意のサイズのドナーの挿入、および/または目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化された組込みによる細胞中の1種もしくは複数種の標的配列の部分的もしくは完全な不活性化に使用され得る。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株もまた提供される。
さらに、本明細書に記載される標的化された組込みの方法は、1種または複数種の外因性配列を組み込むためにも使用され得る。外因性核酸配列は、例えば、1種もしくは複数種の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意の型のコード配列もしくは非コード配列、および1種もしくは複数種の制御エレメント(例えば、プロモーター)を含み得る。さらに、この外因性核酸配列は、1種または複数種のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害的RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)等)を産生し得る。
細胞クロマチン中の目的の領域中の配列の標的化された組換えおよび/または置き換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列との相同組換えによって変更される。かかる相同組換えは、切断の領域と相同な配列が存在する場合に、細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
本明細書に記載される方法のいずれかでは、外因性ヌクレオチド配列(「ドナー配列」または「導入遺伝子」)は、目的の領域中のゲノム配列と相同ではあるが同一ではない配列を含み得、それによって、目的の領域において非同一配列を挿入するように相同組換えを刺激する。したがって、ある特定の実施形態では、目的の領域中の配列と相同なドナー配列の一部分は、置き換えられるゲノム配列に対して、約80〜99%の間(またはそれらの間の任意の整数)の配列同一性を示す。他の実施形態では、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は、例えば、1ヌクレオチドのみが100個を超える連続する塩基対のドナー配列とゲノム配列との間で異なる場合、99%よりも高い。ある特定の場合、ドナー配列の非相同部分は、新たな配列が目的の領域中に導入されるように、目的の領域中に存在しない配列を含み得る。これらの例では、非相同配列には、一般に、目的の領域中の配列と相同または同一な、50〜1,000塩基対(またはそれらの間の任意の整数値)または1,000よりも大きい任意の数の塩基対の配列が隣接する。他の実施形態では、このドナー配列は、第一の配列とは非相同であり、非相同組換え機構によってゲノム中に挿入される。
「開裂」とは、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。開裂は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解が含まれるがこれらに限定されない種々の方法によって開始され得る。一本鎖開裂および二本鎖開裂の両方が可能であり、二本鎖開裂は、2つの個別の一本鎖開裂事象の結果として生じ得る。DNA開裂は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生を生じ得る。ある特定の実施形態では、融合ポリペプチドが、標的化された二本鎖DNA開裂に使用される。
「開裂ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なるのいずれか)と協同して、開裂活性(好ましくは二本鎖開裂活性)を有する複合体を形成する、ポリペプチド配列である。用語「第1および第2の開裂ハーフドメイン」;「+および−の開裂ハーフドメイン」ならびに「右および左の開裂ハーフドメイン」は、相互交換可能に使用されて、二量体形成する開裂ハーフドメインの対を指す。
「遺伝子操作された開裂ハーフドメイン」は、別の開裂ハーフドメイン(例えば、別の遺伝子操作された開裂ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように改変された開裂ハーフドメインである。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0064474号、同第20070218528号、同第2008/0131962号および同第2011/0201055号もまた参照されたい。
用語「配列」とは、DNAまたはRNAであり得;直鎖状、環状または分枝状であり得、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る、任意の長さのヌクレオチド配列を指す。用語「ドナー配列」とは、ゲノム中に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2ヌクレオチド長と100,000,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間もしくはそれらを上回る任意の整数値)、好ましくは約100ヌクレオチド長と100,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間の任意の整数)、より好ましくは約100ヌクレオチド長と5,000ヌクレオチド長との間(またはそれらの間の任意の値)、およびさらにより好ましくは、約100塩基対と2,000塩基対との間(またはそれらの間の任意の値)のものであり得る。
「相同非同一配列」は、第2の配列とある程度の配列同一性を共有するが、その配列が第2の配列と同一ではない第1の配列を指す。例えば、変異体遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、変異体遺伝子の配列と相同かつ非同一である。ある特定の実施形態において、2種の配列の間の相同性の程度は、正常な細胞機序を利用して、その間の相同組換えを可能にするために十分なものである。2種の相同非同一配列は、いかなる長さであってもよく、それらの非相同性の程度は、単一のヌクレオチドほどに小さくても(例えば、標的化相同組換えによるゲノム点変異の補正のため)、10キロベースまたはそれを超えるほどに大きくてもよい(例えば、染色体の所定の異所性部位における遺伝子の挿入のため)。相同非同一配列を含む2種のポリヌクレオチドは、同じ長さである必要はない。例えば、20〜10,000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の間の外因性ポリヌクレオチド(即ち、ドナーポリヌクレオチド)を使用することができる。
核酸およびアミノ酸配列同一性を決定するための技法は、本技術分野において公知である。典型的には、かかる技法は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列の決定および/またはそれにコードされるアミノ酸配列の決定、ならびに第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列とのこのような配列の比較を含む。この様式でゲノム配列を決定および比較することもできる。一般に、同一性は、それぞれ2種のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、正確なヌクレオチド−対−ヌクレオチドまたはアミノ酸−対−アミノ酸の一致を指す。2種またはそれを超える配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらのパーセント同一性を決定することにより比較することができる。典型的には、配列間のパーセント同一性は、少なくとも70〜75%、好ましくは80〜82%、より好ましくは85〜90%、さらにより好ましくは92%、なおより好ましくは95%、最も好ましくは98%配列同一性である。
あるいは、ポリヌクレオチド間の配列類似性の程度は、相同領域間に安定的二重鎖の形成を可能にする条件下におけるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションと、続く一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)による消化および消化した断片のサイズ決定により決定することができる。当該分野で公知の方法を使用して決定される通り、配列が、定義される長さの分子にわたり少なくとも約70%〜75%、好ましくは80%〜82%、より好ましくは85%〜90%、さらにより好ましくは92%、なおより好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を提示する場合、2種の核酸または2種のポリペプチド配列は、互いに実質的に相同である。ハイブリダイゼーションの条件は、当業者に周知のものである。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション条件が、ミスマッチしたヌクレオチドを含有するハイブリッドの形成を嫌う程度を指し、より高いストリンジェンシーは、ミスマッチしたハイブリッドに対するより低い耐容能と相関する。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える因子は、当業者に周知のものであり、その例として、温度、pH、イオン強度ならびに例えば、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシド等の有機溶媒の濃度が挙げられるがこれらに限定されない。当業者に公知の通り、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、より高い温度、より低いイオン強度およびより低い溶媒濃度により増加する。
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核生物細胞クロマチンの大部分は、ヌクレオソームの形態で存在し、ヌクレオソームコアは、各々2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む八量体と会合したおよそ150塩基対のDNAを含む:リンカーDNA(生物に依存して変動する長さのもの)が、ヌクレオソームコア間に延びる。1分子のヒストンH1が、一般に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的のため、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の両方の、全ての型の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンには、染色体クロマチンおよびエピソームクロマチンの両方が含まれる。
「染色体」は、細胞のゲノムの全てまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、多くの場合、細胞のゲノムを構成する全ての染色体のコレクションであるその核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1または複数の染色体を含み得る。
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製性の核酸、核タンパク質複合体または他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが含まれる。
「到達できる領域」は、核酸に存在する標的部位が、該標的部位を認識する外因性分子に結合され得る、細胞クロマチンにおける部位である。いかなる特定の理論に制約されることも望まないが、到達できる領域が、ヌクレオソーム構造へとパッケージされない領域であることが考えられる。到達できる領域の明確な構造は、多くの場合、化学的および酵素的プローブ、例えば、ヌクレアーゼに対するその感受性により検出することができる。
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在する場合に、結合分子が結合する核酸の一部分を規定する核酸配列である。
「外因性」分子は、細胞中に通常は存在しない分子であるが、1または複数の遺伝学的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞中に導入され得る。「細胞中での通常の存在」は、特定の発生段階または細胞の環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生の間にのみ存在する分子は、成人筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、ヒートショックによって誘導される分子は、ヒートショックされていない細胞に関して、外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能障害性内因性分子の機能性バージョン、または正常に機能する内因性分子の機能障害性バージョンを含み得る。
外因性分子は、とりわけ、例えば、コンビナトリアルケミストリー過程によって生成されるような小分子、または巨大分子、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記分子の任意の修飾された誘導体、あるいは上記分子のうちの1または複数を含む任意の複合体であり得る。核酸には、DNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であり得;直鎖状、分枝状または環状であり得;任意の長さのものであり得る。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸、ならびに三重鎖形成性核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが含まれるがこれらに限定されない。
外因性分子は、内因性分子と同じ型の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であり得る。例えば、外因性核酸は、細胞中に導入された感染性ウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞中に通常は存在しない染色体を含み得る。細胞中への外因性分子の導入のための方法は、当業者に公知であり、脂質媒介性移入(即ち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接的注射、細胞融合、微粒子銃、バイオポリマーナノ粒子送達(NittaおよびNumata(2013年)Int J Mol Sci 14巻:1629頁を参照)、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性移入およびウイルスベクター媒介性移入が含まれるがこれらに限定されない。外因性分子はまた、内因性分子と同じ型の分子であり得るが、細胞が由来するのとは異なる種に由来し得る。例えば、ヒト核酸配列は、マウスまたはハムスターに元々由来する細胞株中に導入され得る。
対照的に、「内因性」分子は、特定の発生段階で特定の環境条件下で特定の細胞中に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリアもしくは他のオルガネラのゲノム、または天然起源のエピソーム核酸を含み得る。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素が含まれ得る。
本明細書で使用する場合、用語「外因性核酸の産物」には、ポリヌクレオチド産物およびポリペプチド産物の両方、例えば、転写産物(RNAなどのポリヌクレオチド)および翻訳産物(ポリペプチド)が含まれる。
「融合」分子は、2つまたはそれ超のサブユニット分子が、好ましくは共有結合によって連結された分子である。これらのサブユニット分子は、同じ化学型の分子であり得るか、または異なる化学型の分子であり得る。第1の型の融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALEのDNA結合ドメインと1または複数の活性化ドメインとの間の融合物)および融合核酸(例えば、上記融合タンパク質をコードする核酸)が含まれるがこれらに限定されない。第2の型の融合分子の例には、三重鎖形成性核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝結合剤と核酸との間の融合物が含まれるがこれらに限定されない。
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達によって生じ得、このポリヌクレオチドは転写され、この転写物は翻訳されて、融合タンパク質を生じる。トランス−スプライシング、ポリペプチド開裂およびポリペプチドライゲーションもまた、細胞におけるタンパク質の発現に関与し得る。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達のための方法は、本開示の他の場所に示される。
「遺伝子」には、本開示の目的のために、遺伝子産物をコードするDNA領域(以下を参照)、ならびにかかる調節配列がコード配列および/または転写された配列に隣接してもしなくても、遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域が含まれる。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位ならびに遺伝子座制御領域が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
「遺伝子発現」とは、遺伝子中に含まれる情報の、遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他の型のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などの過程によって修飾されたRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP−リボシル化、ミリストイル化(myristilation)およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質もまた含まれる。
遺伝子発現の「モジュレーション」とは、遺伝子の活性における変化を指す。発現のモジュレーションには、遺伝子活性化および遺伝子抑制が含まれ得るが、これらに限定されない。ゲノム編集(例えば、開裂、変更、不活性化、ランダム変異)が、発現をモジュレートするために使用され得る。遺伝子不活性化とは、本明細書に記載されるZFP、TALE、またはCRISPR/Cas系を含まない細胞と比較して、遺伝子発現における任意の低下を指す。したがって、遺伝子不活性化は、部分的または完全であり得る。
「目的の領域」は、外因性分子に結合することが望まれる、細胞クロマチンの任意の領域、例えば、遺伝子または遺伝子内もしくは遺伝子に隣接した非コード配列などである。結合は、標的化されたDNA開裂および/または標的化された組換えを目的とすることができる。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性ウイルスゲノム中に存在し得る。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写された非コード領域内、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域内に存在し得る。目的の領域は、単一のヌクレオチド対ほどの小ささもしくは最大2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
「真核生物」細胞には、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)を含む動物細胞が含まれるがこれらに限定されない。
「分泌組織」とは、産物を個々の細胞から一般には上皮に由来する一部の型の管腔中に分泌する、動物内の組織である。胃腸管に局在化している分泌組織の例としては、腸、膵臓、および胆嚢を裏打ちする細胞が挙げられる。他の分泌組織としては、肝臓、眼に関連する組織および粘膜、例えば唾液腺、乳腺、前立腺、下垂体および内分泌系の他のメンバーが挙げられる。さらに、分泌組織は、分泌を行うことが可能な組織型の個々の細胞を含む。
用語「作動可能な連結」および「作動可能に連結した(「operatively linked」または「operably linked」)」は、2つまたはそれ超の構成成分(例えば、配列エレメント)の並置に関して相互交換可能に使用され、ここで、これらの構成成分は、両方の構成成分が正常に機能し、他の構成成分のうちの少なくとも1つに対して発揮される機能をこれらの構成成分のうちの少なくとも1つが媒介し得る可能性を許容するように、配置される。例示として、転写調節配列、例えばプロモーターは、転写調節配列が、1または複数の転写調節因子の存在または非存在に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に作動可能に連結される。転写調節配列は、一般に、コード配列とシスで作動可能に連結されるが、このコード配列に直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、エンハンサーとコード配列とが連続していない場合であっても、コード配列に作動可能に連結した転写調節配列である。
融合ポリペプチドに関して、用語「作動可能に連結した」とは、構成成分の各々が、他の構成成分と連結して、そのように連結されていない場合にそれが果たすのと同じ機能を果たすという事実を指し得る。例えば、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメインが活性化ドメインに融合された融合ポリペプチドに関して、このZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメインおよび活性化ドメインは、この融合ポリペプチド中で、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できるが、活性化ドメインは遺伝子発現を上方調節できる場合に、作動可能な連結状態にある。ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメインが開裂ドメインに融合した融合ポリペプチドの場合、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメインおよび開裂ドメインは、この融合ポリペプチド中で、ZFP、TALEまたはCas DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合できるが、開裂ドメインは標的部位の近位(例えば、標的部位のいずれかの側の1〜500塩基対またはその間の任意の値)においてDNAを開裂できる場合に、作動可能な連結状態にある。
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、その全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する天然の分子よりも多い、より少ない、もしくは同じ数の残基を有し得、および/または、1もしくは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含み得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、本技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフトまたは免疫沈降アッセイによって、決定され得る。DNA開裂は、ゲル電気泳動によってアッセイされ得る。Ausubelら、上記を参照されたい。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは遺伝学的および生化学的の両方の補完によって、決定され得る。例えば、Fieldsら(1989年)Nature 340巻:245〜246頁;米国特許第5,585,245号およびPCTWO98/44350を参照されたい。
「ベクター」は、標的細胞に遺伝子配列を移入させることが可能である。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子移入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指向することが可能であり、標的細胞に遺伝子配列を移入させることができる、任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびに組込みベクターを含む。
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」とは、好ましくは、慣用的なアッセイにおいてである必要はないが、容易に測定されるタンパク質産物を産生する任意の配列を指す。適切なレポーター遺伝子には、抗生物質抵抗性(例えば、アンピシリン抵抗性、ネオマイシン抵抗性、G418抵抗性、ピューロマイシン抵抗性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光もしくは発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)ならびに増強された細胞成長および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列が含まれるがこれらに限定されない。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1または複数のコピーが含まれる。「発現タグ」には、目的の遺伝子の発現をモニタリングするために、所望の遺伝子配列に作動可能に連結され得るレポーターをコードする配列が含まれる。
「セーフハーバー」遺伝子座は、遺伝子が宿主細胞に対する任意の有害な影響なしに挿入され得る、ゲノム内の遺伝子座である。挿入された遺伝子配列の発現が隣接する遺伝子からのいずれのリードスルー発現によっても乱されないセーフハーバー遺伝子座が、最も有益である。哺乳動物細胞におけるセーフハーバー遺伝子座の非限定的な例は、AAVS1遺伝子(米国特許第8,110,379号)、CCR5遺伝子(米国特許出願公開第20080159996号)、Rosa遺伝子座(WO2010/065123)および/またはアルブミン遺伝子座(米国特許出願公開第20130177960号および同第20130177983号)である。植物細胞におけるセーフハーバーはZP15遺伝子座(米国特許出願公開第20100199389号)である。
用語「被験体」および「患者」は、相互交換可能に使用され、哺乳動物、例えば、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびに実験動物、例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスおよび他の動物を指す。したがって、用語「被験体」または「患者」は、本明細書で使用する場合、本発明の幹細胞が投与され得る任意の哺乳動物の患者または被験体を意味する。本発明の被験体は、例えば神経毒素を含めた1種または複数種の化学的毒素に曝露されている被験体を含む。
「幹細胞性」(stemness)とは、任意の細胞の、幹細胞様の様式で働く相対的な能力、即ち、任意の特定の幹細胞が有し得る全能性、多能性、または少能性の程度および増大したまたは不定の自己再生を指す。
ヌクレアーゼ
導入遺伝子が標的化された様式でゲノム中に組み込まれるように、導入遺伝子と細胞のゲノムの開裂のためのヌクレアーゼとを保有するドナー分子のin vivo開裂に有用な組成物、特にZFN、TALE、ホーミングエンドヌクレアーゼ、Ttagoおよび/またはCRISPR/Cas系等のヌクレアーゼが、本明細書に記載される。ある特定の実施形態では、これらのヌクレアーゼの1種または複数種は、天然起源である。他の実施形態では、これらのヌクレアーゼの1種または複数種は、非天然起源である、即ち、DNA結合ドメインおよび/または開裂ドメインにおいて遺伝子操作されている。例えば、天然起源のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更され得る(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するように遺伝子操作されたメガヌクレアーゼ)。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、異種のDNA結合ドメインおよび開裂ドメイン(例えば、異種開裂ドメインを有する、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;TALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;メガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含む。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、CRISPR/CasまたはTtago系などの系を含む。
A.DNA結合ドメイン
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物および方法は、ドナー分子に結合するためおよび/または細胞のゲノム中の目的の領域に結合するために、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)DNA結合ドメインを使用する。天然起源のメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対の開裂部位を認識し、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−CystボックスファミリーおよびHNHファミリーへと一般に分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3379〜3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115〜118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res. 22巻、1125〜1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet. 12巻:224〜228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol. 263巻:163〜180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol. 280巻:345〜353頁およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、遺伝子操作された(非天然起源の)ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)を含むヌクレアーゼを使用する。I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列は、公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res. 25巻:3379〜3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115〜118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res. 22巻、1125〜1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet. 12巻:224〜228頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol. 263巻:163〜180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol. 280巻:345〜353頁およびNew England Biolabsカタログもまた参照されたい。さらに、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然標的部位に結合するように遺伝子操作され得る。例えば、Chevalierら(2002年)Molec. Cell 10巻:895〜905頁;Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res. 31巻:2952〜2962頁;Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656〜659頁;Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49〜66頁;米国特許出願公開第20070117128号を参照されたい。ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、全体としてヌクレアーゼに関して変更され得(即ち、ヌクレアーゼが同族開裂ドメインを含むように)、または異種開裂ドメインに融合され得る。
他の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物において使用される1種または複数種のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、天然起源のまたは遺伝子操作された(非天然起源の)TALエフェクターDNA結合ドメインを含む。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,586,526号を参照されたい。属Xanthomonasの植物病原性細菌は、重要な作物植物において多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、植物細胞中に25種よりも多い異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されたタンパク質のなかでも、植物転写活性化因子を模倣し、植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様(TAL)エフェクターである(Kayら(2007年)Science 318巻:648〜651頁を参照されたい)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALエフェクターの1つは、Xanthomonas campestgris pv.Vesicatoria由来のAvrBs3である(Bonasら(1989年)Mol Gen Genet 218巻:127〜136頁およびWO2010079430を参照されたい)。TALエフェクターは、タンデムリピートの集中したドメインを含有し、各リピートは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要なおよそ34アミノ酸を含有する。さらに、これらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(概説については、Schornack S、ら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256〜272頁を参照されたい)。さらに、植物病原性細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum biovar 1株GMI1000およびbiovar 4株RS1000における、brg11およびhpx17と称される2つの遺伝子が、XanthomonasのAvrBs3ファミリーと相同であることが見出されている(Heuerら(2007年)Appl and Envir Micro 73巻(13号):4379〜4384頁を参照されたい)。これらの遺伝子は、互いにヌクレオチド配列において98.9%同一であるが、hpx17のリピートドメインにおける1,575bpの欠失が異なる。しかし、両方の遺伝子産物は、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。例えば、その全体が本明細書に参考として援用される米国特許公報第8,586,526号を参照されたい。
これらのTALエフェクターの特異性は、これらのタンデムリピート中に見出される配列に依存する。リピートされる配列は、およそ102bpを含み、これらのリピートは、典型的には、互いに91〜100%相同である(Bonasら、同書)。これらのリピートの多型は、12位および13位に通常位置し、12位および13位における超可変二残基の正体と、TALエフェクターの標的配列中の連続ヌクレオチドの正体との間には、一対一の相関が存在するようである(MoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁ならびにBochら(2009年)Science 326巻:1509〜1512頁を参照されたい)。実験的に、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然コードは、12位および13位におけるHD配列が、シトシン(C)への結合をもたらし;NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、そしてINGがTに結合するように、決定されている。これらのDNA結合リピートは、新たな配列と相互作用でき植物細胞において非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化できる人工の転写因子を作製するために、新たな組合せおよびリピート数を有するタンパク質へとアセンブルされている(Bochら、同書)。遺伝子操作されたTALタンパク質は、FokI開裂ハーフドメインに連結されて、酵母レポーターアッセイにおいて活性を示すTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を生じている(プラスミドベースの標的)。例えば、米国特許第8,586,526号;Christianら((2010年)< Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)を参照されたい。
ある特定の実施形態では、細胞のゲノムのin vivo開裂および/または標的化された開裂に使用される1種または複数種のヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように遺伝子操作されているという点で、非天然起源である。例えば、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Beerliら(2002年)Nature Biotechnol. 20巻:135〜141頁;Paboら(2001年)Ann. Rev. Biochem. 70巻:313〜340頁;Isalanら(2001年)Nature Biotechnol. 19巻:656〜660頁;Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol. 12巻:632〜637頁;Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol. 10巻:411〜416頁;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;同第2005/0267061号を参照されたい。
遺伝子操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然起源のジンクフィンガータンパク質と比較して、新規結合特異性を有し得る。遺伝子操作方法には、合理的設計および種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット(quadruplet))ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1種または複数種のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号および同第6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;およびWO01/88197中に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係るWO02/077227に記載されている。
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。例示的なリンカー配列については、米国特許第8,772,453号;同第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,815号;同第5,789,538号;同第6,453,242号;同第6,534,261号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970 WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して、一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列について、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号もまた参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガー間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインはCRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部である。例えば、米国特許第8,697,359号および米国特許出願第14/278,903号を参照されたい。系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年. Mol. Microbiol. 43巻:1565〜1575頁;Makarovaら、2002年. Nucleic Acids Res. 30巻:482〜496頁;Makarovaら、2006年. Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年. PLoS Comput. Biol. 1巻:e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主中のCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子およびCRISPR媒介性の核酸開裂の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられた系の1つであり、4つの連続的ステップで、標的化されたDNA二本鎖切断を実施する。第1に、2つの非コードRNA、pre−crRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAは、pre−crRNAのリピート領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのpre−crRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、標的認識のためのさらなる要求、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のWatson−Crick塩基対合を介して、標的DNAにCas9を指向させる。最後に、Cas9は、標的DNAの開裂を媒介して、プロトスペーサー内の二本鎖切断を生じる。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップから構成される:(i)「適応」と呼ばれる過程における、さらなる攻撃を防止するための、CRISPRアレイ中への異質DNA配列の挿入、(ii)関連タンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、その後の、(iii)異質核酸によるRNA媒介性の干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかが、CRISPR/Cas系の天然機能と関連し、異質DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然起源のCasタンパク質の「機能的誘導体」であり得る。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通する定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通した生物学的活性を有することを条件として、天然配列の断片ならびに天然配列ポリペプチドおよびその断片の誘導体が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合的修飾、およびその融合物の両方を包含する。Casポリペプチドまたはその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質またはその断片の変異体、融合物、共有結合的修飾が含まれるがこれらに限定されない。Casタンパク質またはその断片を含むCasタンパク質、およびCasタンパク質またはその断片の誘導体は、細胞から取得可能であり得るか、もしくは化学的に合成され得るか、またはこれらの2つの手順の組合せによって、取得可能であり得る。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、またはCasタンパク質を天然に産生し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を産生するように、もしくは外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であり得、この核酸は、内因性Casと同じまたは異なるCasをコードする。一部の場合には、細胞は、Casタンパク質を天然には産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
一部の実施形態では、DNA結合ドメインはTtAgo系の一部である(Swartsら、同書;Shengら、同書を参照されたい)。真核生物では、遺伝子サイレンシングは、タンパク質のアルゴノート(Ago)ファミリーによって媒介される。このパラダイムでは、Agoは小さな(19〜31nt)RNAに結合する。このタンパク質−RNAサイレンシング複合体は、標的RNAを、低分子RNAと標的の間のワトソン・クリック塩基対合を介して認識し、標的RNAをヌクレオチド鎖切断的に開裂する(Vogel(2014年)Science 344巻:972〜973頁)。対照的に、原核生物Agoタンパク質は、小さな一本鎖DNA断片に結合し、外来(多くの場合ウイルス)DNAを検出し、除去するように機能するようである(Yuanら、(2005年)Mol. Cell 19巻、405頁;Olovnikovら(2013年)Mol. Cell 51巻、594頁;Swartsら、同書)。例示的な原核生物Agoタンパク質としては、Aquifex aeolicus由来のもの、Rhodobacter sphaeroides由来のもの、およびThermus thermophilus由来のものが挙げられる。
最もよく特徴付けられている原核生物Agoタンパク質のうちの1つは、T.thermophilus由来のもの(TtAgo;Swartsら、同書)である。TtAgoは、5’リン酸基を伴う15ntまたは13〜25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoが結合するこの「ガイドDNA」は、タンパク質−DNA複合体と第3のDNA分子内のワトソン・クリック相補DNA配列の結合を導くように機能する。これらのガイドDNA内の配列情報により標的DNAの同定が可能になったら、TtAgo−ガイドDNA複合体が標的DNAを開裂する。そのような機構は、その標的DNAと結合する一方でTtAgo−ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G. Shengら、同書)。Rhodobacter sphaeroides由来のAgo(RsAgo)は同様の特性を有する(Olivnikovら、同書)。
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAをTtAgoタンパク質に負荷することができる(Swartsら、同書)。TtAgo開裂の特異性はガイドDNAによって導かれるので、したがって、外因性の研究者指定のガイドDNAと形成されるTtAgo−DNA複合体により、相補的な研究者指定の標的DNAへのTtAgo標的DNA開裂が導かれる。このように、DNAにおいて標的化された二本鎖切断を生じさせることができる。TtAgo−ガイドDNA系(または他の生物由来のオルソロガスなAgo−ガイドDNA系)の使用により、細胞内のゲノムDNAの標的化された開裂が可能になる。そのような開裂は、一本鎖のものでも二本鎖のものでもあり得る。哺乳動物ゲノムDNAの開裂のためには、哺乳動物細胞における発現についてコドン最適化されたTtAgoのバージョンを使用することが好ましい。さらに、TtAgoタンパク質を細胞透過性ペプチドと融合する場合には、細胞を、in vitroにおいて形成されたTtAgo−DNA複合体で処理することが好ましい場合がある。さらに、37摂氏温度における活性が改善されるように変異誘発によって変更されたTtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago−RNA媒介性DNA開裂を使用して、DNA切断を活用するための、当技術分野における標準の技法を使用した遺伝子ノックアウト、標的化された遺伝子付加、遺伝子補正、標的化された遺伝子欠失を含めた転帰のひと揃い(panopoly)をもたらすことができる。
したがって、ヌクレアーゼは、ドナー(導入遺伝子)を挿入することが望まれる任意の遺伝子中の標的部位に特異的に結合するという点で、DNA結合ドメインを含む。
B.開裂ドメイン
任意の適切な開裂ドメインは、DNA結合ドメインに作動可能に連結されて、ヌクレアーゼを形成し得る。例えば、ZFP DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼドメインに融合されて、ZFN−その遺伝子操作された(ZFP)DNA結合ドメインを介してその意図した核酸標的を認識でき、ヌクレアーゼ活性を介してZFP結合部位の近くでDNAが切断されるようにする、機能的実体−を生じている。例えば、Kimら(1996年)Proc Natl Acad Sci USA 93巻(3号):1156〜1160頁を参照されたい。より最近、ZFNは、種々の生物においてゲノム改変に使用されている。例えば、米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20060063231号;ならびに国際公開第07/014275号を参照されたい。同様に、TALE DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼドメインに融合されて、TALENを生じている。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
上述のように、開裂ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であり得る、例えば、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン、またはTALEN DNA結合ドメインおよび開裂ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインおよび異なるヌクレアーゼ由来の開裂ドメイン。異種開裂ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られ得る。開裂ドメインが由来し得る例示的なエンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが含まれるがこれらに限定されない。例えば、2002〜2003年カタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379〜3388頁を参照されたい。DNAを開裂するさらなる酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNase I;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年もまた参照)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1または複数は、開裂ドメインおよび開裂ハーフドメインの供給源として使用され得る。
同様に、開裂ハーフドメインは、開裂活性のために二量体形成を必要とする、上記のような任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。一般に、融合タンパク質が開裂ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が、開裂に必要とされる。あるいは、2つの開裂ハーフドメインを含む単一のタンパク質が使用され得る。これら2つの開裂ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得、または各開裂ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2つの融合タンパク質についての標的部位は、好ましくは、互いに関して配置され、その結果、そのそれぞれの標的部位への2つの融合タンパク質の結合は、例えば二量体形成によって開裂ハーフドメインに機能的開裂ドメインを形成させる互いに対する空間的配向に、これらの開裂ハーフドメインを置く。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近くの端は、5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチド離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位間に介在し得る(例えば、2〜50ヌクレオチド対またはそれ超)。一般に、開裂の部位は、標的部位間に存在する。
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在しており、(認識部位における)DNAへの配列特異的結合が可能であり、結合の部位またはその近傍でDNAを開裂させることが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から取り出された部位においてDNAを開裂させ、分離可能な結合ドメインおよび開裂ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチドおよび他方の鎖上のその認識部位から13ヌクレオチドの場所において、DNAの二本鎖開裂を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号および同第5,487,994号;ならびにLiら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275〜4279頁;Liら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764〜2768頁;Kimら(1994年a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:883〜887頁;Kimら(1994年b)J. Biol. Chem. 269巻:31,978〜31,982頁を参照されたい。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、遺伝子操作されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1または複数のジンクフィンガー結合ドメイン由来の開裂ドメイン(または開裂ハーフドメイン)を含む。
その開裂ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaiteら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:10,570〜10,575頁。したがって、本開示の目的のため、開示された融合タンパク質において使用されるFokI酵素の一部は、開裂ハーフドメインとみなされる。したがって、ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した細胞配列の標的化された二本鎖開裂および/または標的化された置き換えのために、各々がFokI開裂ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質が、触媒的に活性な開裂ドメインを再構成するために使用され得る。あるいは、1つのジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI開裂ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子もまた、使用され得る。ジンクフィンガー−FokI融合物を使用した標的化された開裂および標的された配列変更のためのパラメーターは、本開示の別の場所に提供される。
開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインは、機能的開裂ドメインを形成するために、開裂活性を保持するまたは多量体形成する(例えば、二量体形成する)能力を保持する、タンパク質の任意の部分であり得る。
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,888,121号に記載されている。さらなる制限酵素もまた、分離可能な結合および開裂ドメインを含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Robertsら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:418〜420頁を参照されたい。
ある特定の実施形態では、開裂ドメインは、例えば、その全ての開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第8,772,453号;同第8,623,618号;同第8,409,861号;同第8,034,598号;同第7,914,796号;および同第7,888,121号に記載されるように、ホモ二量体形成を最小化または防止する1種または複数種の遺伝子操作された開裂ハーフドメイン(二量体形成ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位および538位におけるアミノ酸残基は、全て、FokI開裂ハーフドメインの二量体形成に影響を与えるための標的である。
偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの例示的な遺伝子操作された開裂ハーフドメインには、第1の開裂ハーフドメインが、FokIの490位および538位のアミノ酸残基において変異を含み、第2の開裂ハーフドメインが、アミノ酸残基486および499において変異を含む、対が含まれる。
したがって、一実施形態では、490位における変異によりGlu(E)がLys(K)で置き換えられ、538位における変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられ、486位における変異によりGln(Q)がGlu(E)で置き換えられ、499位における変異によりIso(I)がLys(K)で置き換えられる。特に、本明細書に記載される遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、一方の開裂ハーフドメインにおいて490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と称される遺伝子操作された開裂ハーフドメインを産生し、および別の開裂ハーフドメインにおいて486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と称される遺伝子操作された開裂ハーフドメインを産生することにより調製された。本明細書に記載される遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、異常な開裂が最小化または消失される、偏性ヘテロ二量体変異体である。例えば、あらゆる目的でそれらの開示が参照によりそれらの全体が組み込まれる、米国特許第7,914,796号および同第8,034,598号を参照されたい。ある特定の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、486位、499位および496位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置き換える変異、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で置き換える変異、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」ドメインおよび「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、490位、538位および537位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で置き換える変異、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」ドメインおよび「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、490位および537位における変異(野生型FokIに対して番号を付けた)、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で置き換える変異、および537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」ドメインおよび「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む(例えば、米国特許第8,772,453号を参照されたい)。他の実施形態では、遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、「シャーキー」および/または「シャーキー」変異を含む(Guoら(2010年)J. Mol. Biol. 400巻(1号):96〜107頁を参照されたい)。
本明細書に記載される遺伝子操作された開裂ハーフドメインは、例えば、米国特許第8,772,453号;同第8,623,618号;同第8,409,861号;同第8,034,598号;同第7,914,796号;および同第7,888,121号に記載されるように、野生型開裂ハーフドメイン(FokI)の部位特異的変異誘発によって、任意の適切な方法を使用して調製できる。
あるいは、ヌクレアーゼは、いわゆる「開裂酵素」技術を使用して、核酸標的部位においてin vivoでアセンブルされ得る(例えば、米国特許出願公開第20090068164号を参照されたい)。かかる開裂酵素の構成成分は、別々の発現構築物のいずれか上に発現され得るか、または、例えば、自己開裂性2AペプチドもしくはIRES配列によって個々の構成成分が分離されて、1つのオープンリーディングフレームで連結され得る。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
ヌクレアーゼは、例えば、米国特許第8,563,314号に記載される酵母ベースの染色体系における使用の前に、活性についてスクリーニングされ得る。
ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下で活性化(抑制解除)され、グルコースの存在下で抑制されるガラクトキナーゼプロモーターの制御下にあり得る。
Cas9関連のCRISPR/Cas系は、同一のダイレクトリピート(DR)によって空間が置かれたヌクレアーゼガイド配列(スペーサー)を含有する2種のRNA非コード構成成分:tracrRNAおよびpre−crRNAアレイを含む。ゲノム遺伝子操作を達成するためにCRISPR/Cas系を使用するために、これらのRNAの両方の機能が存在しなければならない(Congら(2013年)Sciencexpress 1/10.1126/science 1231143を参照されたい)。一部の実施形態では、tracrRNAおよびpre−crRNAは、別々の発現構築物を介して、または別々のRNAとして、供給される。他の実施形態では、遺伝子操作された成熟crRNA(標的特異性を付与する)がtracrRNA(Cas9との相互作用を供給する)に融合されてキメラcr−RNA−tracrRNAハイブリッド(単一ガイドRNAとも呼ぶ)を生じる、キメラRNAが構築される(Jinek同書およびCong、同書を参照されたい)。
標的部位
上に詳細に記載したように、DNAドメインは、選択された任意の配列に結合するように遺伝子操作され得る。遺伝子操作されたDNA結合ドメインは、天然起源のDNA結合ドメインと比較して、新規結合特異性を有し得る。遺伝子操作方法には、合理的設計および種々の型の選択が含まれるがこれらに限定されない。合理的設計には、例えば、トリプレット(またはクアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットのヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1種または複数種のアミノ酸配列と関連する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、共有に係る米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照されたい。TALエフェクタードメインの合理的設計もまた実施され得る。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む、DNA結合ドメインに適用可能な例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号;ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば、共有に係るWO02/077227に記載されている。
標的部位の選択;融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのヌクレアーゼおよび方法は、当業者に公知であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050064474号および同第20060188987号に詳細に記載されている。
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、DNA結合ドメイン(例えば、マルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質)は、例えば、5またはそれ超のアミノ酸のリンカーを含む、任意の適切なリンカー配列を使用して一緒に連結され得る。6またはそれ超のアミノ酸長の例示的なリンカー配列について、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のDNA結合ドメイン間に適切なリンカーの任意の組合せを含み得る。米国特許第8,586,526号もまた参照されたい。
適切な標的遺伝子の非限定的な例としては、ベータ(β)グロビン遺伝子(HBB)、ガンマ(γ)グロビン遺伝子(HBG1)、B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子、クルッペル様因子1(KLF1)遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1)遺伝子、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、アルブミン遺伝子、第VIII因子遺伝子、第IX因子遺伝子、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子、ハンチンチン(Hungtingin)(Htt)遺伝子、ロドプシン(RHO)遺伝子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子、サーファクタントタンパク質B遺伝子(SFTPB)、T細胞受容体アルファ(TRAC)遺伝子、T細胞受容体ベータ(TRBC)遺伝子、プログラム細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)A遺伝子、HLA B遺伝子、HLA C遺伝子、HLA−DPA遺伝子、HLA−DQ遺伝子、HLA−DRA遺伝子、LMP7遺伝子、抗原ペプチド輸送体(TAP)1遺伝子、TAP2遺伝子、タパシン遺伝子(TAPBP)、クラスII主要組織適合性遺伝子複合体トランス活性化因子(CIITA)遺伝子、ジストロフィン遺伝子(DMD)、グルココルチコイド受容体遺伝子(GR)、IL2RG遺伝子、Rag−1遺伝子、RFX5遺伝子、FAD2遺伝子、FAD3遺伝子、ZP15遺伝子、KASII遺伝子、MDH遺伝子、および/またはEPSPS遺伝子が挙げられる。
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、ヒト細胞におけるAAVS1遺伝子、HPRT遺伝子、アルブミン遺伝子およびCCR5遺伝子、ならびにマウス細胞におけるRosa26などの「セーフハーバー」遺伝子座(例えば、米国特許第7,888,121号;同第7,972,854号;同第7,914,796号;同第7,951,925号;同第8,110,379号;同第8,409,861号;同第8,586,526号;米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20060063231号;同第20080159996号;同第201000218264号;同第20120017290号;同第20110265198号;同第20130137104号;同第20130122591号;同第20130177983号および同第20130177960号を参照されたい)、ならびに植物におけるZp15遺伝子座(米国特許第8,329,986号を参照されたい)を標的とする。
ドナー
本願の開示は、HSC/PCのゲノムへの外因性配列のヌクレアーゼ媒介性の標的化された組込みに関する。上述した通り、例えば、変異遺伝子を補正するための、または野生型遺伝子の発現を増加させるための、または導入遺伝子の発現のための、外因性配列(「ドナー配列」または「ドナー」または「導入遺伝子」とも言う)の挿入。ドナー配列は、典型的には、それが配置されるゲノム配列と同一ではないことが容易に明らかとなる。ドナー配列は、2つの相同な領域に隣接する非相同配列を含有し、目的の位置での効率的なHDRを可能とする。さらに、ドナー配列は、細胞クロマチン内の目的の領域に相同でない配列を含有するベクター分子を含むことができる。ドナー分子は、細胞クロマチンに相同ないくつかの不連続な領域を含有することができる。例えば、常態では目的の領域に存在しない標的化された配列を挿入するために、前記配列を、ドナー核酸分子中に存在させることができ、目的の領域中の配列に相同な領域を隣接させることができる。
本明細書に記載されているのは、選択された位置内へ挿入するための、任意のポリヌクレオチドの標的化された挿入の方法である。挿入に用いるポリヌクレオチドは、「外因性」ポリヌクレオチド、「ドナー」ポリヌクレオチドもしくは分子、または「導入遺伝子」とも呼ばれ得る。ドナーポリヌクレオチドは、DNAであってよく、一本鎖および/または二本鎖であってもよく、直鎖状または環状の形態で細胞内に導入することができる。米国特許出願公開第20100047805号および同第20110207221号を参照されたい。ドナー配列(複数可)は、DNA MCの形態で導入され得、これは、培養中の細胞内へ環状または直鎖状の形態で導入され得る。直鎖状の形態で導入される場合、当業者に公知の方法によって、ドナー配列の末端を保護する(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)ことができる。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基を直鎖状分子の3’末端に付加する、および/または自己相補的なオリゴヌクレオチドを一端または両端にライゲーションする。例えば、Changら、1987年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84巻:4959〜4963頁、Nehlsら、1996年、Science、272巻:886〜889頁を参照されたい。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するための追加的な方法としては、末端アミノ基(複数可)の付加、および例えば、ホスホロチオエート、ホスホルアミダートやO−メチルリボースもしくはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間の結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。二本鎖形態で導入する場合、ドナーは、1つまたは複数のヌクレアーゼ標的部位、例えば、細胞のゲノム中に組み込まれる導入遺伝子に隣接するヌクレアーゼ標的部位を含み得る。例えば、米国特許出願公開第20130326645号を参照されたい。
ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーターや抗生物質耐性をコードしている遺伝子などの追加的な配列を有するベクター分子の部分として、細胞内に導入することができる。さらに、ドナーポリヌクレオチドを、ネイキッド核酸として、リポソーム、ナノ粒子またはポロキサマーなどの剤と複合体を形成した核酸として、導入することができ、また、ウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルスおよびインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
ある特定の実施形態では、二本鎖のドナーは、1kb超の長さの配列(例えば、コード配列であり、導入遺伝子とも呼ばれる)、例えば、2から200kbの間、2から10kbの間(またはこれらの間にある任意の値)を含む。例えば、二本鎖ドナーもまた、少なくとも1つのヌクレアーゼ標的部位を含む。ある特定の実施形態では、ドナーは少なくとも2つの標的部位を含み、例えば、ZFNまたはTALENの対のためのものであり得る。典型的には、ヌクレアーゼ標的部位は、導入遺伝子の開裂に用いるために、導入遺伝子配列の外側、例えば、導入遺伝子に対して5’および/または3’にある。ヌクレアーゼの開裂部位(複数可)は、任意のヌクレアーゼ(複数可)のためのものである。ある特定の実施形態では、二本鎖ドナーに含有されているヌクレアーゼ標的部位(複数可)は、内因性の標的を開裂するために使用されるのと同じヌクレアーゼ(複数可)のためのものであり、その内因性の標的に、開裂されたドナーが相同性非依存的な方法を介して組み込まれる。
ドナーは、一般に、組込み部位の内因性プロモーター、即ちドナーが挿入されている内因性遺伝子(例えば、グロビン、AAVS1など)の発現を駆動するプロモーターによって、発現が駆動されるように挿入される。しかし、ドナーが、プロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成性のプロモーターまたは誘導可能なもしくは組織特異的なプロモーターを含み得ることは明らが明らかである。
ドナー分子は、内因性遺伝子の全てもしくはいくつかが発現するか、または発現しないように、内因性遺伝子内に挿入されていてもよい。他の実施形態では、導入遺伝子(ペプチドをコードする遺伝子があるものまたはないもの)は、任意の内因性遺伝子座、例えば、セーフハーバー遺伝子座に組み込まれている。例えば、米国特許出願公開第20080299580号;同第20080159996号および同第201000218264号を参照されたい。
さらに、発現を必要としていなくとも、外因性配列は、転写調節配列または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルをも含み得る。さらに、スプライスアクセプター配列を含めることができる。例示的なスプライスアクセプター部位配列は、当業者に公知であり、単に例として、CTGACCTCTTCTCTTCCTCCCACAG、(配列番号29)(ヒトHBB遺伝子由来)およびTTTCTCTCCACAG(配列番号30)(ヒト免疫グロブリン−ガンマ遺伝子由来)が挙げられる。
本明細書に記載されているドナー配列に保有されている導入遺伝子は、プラスミド、細胞または他の供給源から、PCRなど当技術分野で公知の標準的な技法を使用して単離され得る。使用するドナーとしては、環状スーパーコイル型、環状リラックス型、線型などを含めて様々な種類のトポロジーを挙げることができる。あるいは、それらを、標準的なオリゴヌクレオチド合成技法を使用して、化学的に合成してもよい。さらに、ドナーをメチル化してもよいし、メチル化を欠いてもよい。ドナーは、細菌または酵母の人工染色体の形態であってもよい(BACまたはYAC)。
本明細書に記載されている二本鎖のドナーポリヌクレオチドは、1つまたは複数の非天然の塩基および/または骨格を含んでいてもよい。具体的には、本明細書に記載されている方法を使用して、メチル化シトシンを伴うドナー分子の挿入を行い、目的の領域での転写的に静止した状態を達成することができる。
外因性の(ドナー)ポリヌクレオチドは、任意の目的の配列(外因性配列)を含んでいてもよい。例示的な外因性配列としては、任意のポリペプチドをコードする配列(例えば、cDNAまたはその断片)、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、開裂酵素認識部位、および様々な種類の発現構築物が挙げられるが、これらに限定されない。マーカー遺伝子としては、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、発色性または蛍光性または発光性のタンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、増強型緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに細胞増殖の増強および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、デヒドロ葉酸レダクターゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。エピトープタグとしては、例えば、1コピーまたは複数のコピーのFLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列が挙げられる。
好適な実施形態では、外因性配列(導入遺伝子)は、細胞での発現が望ましい任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、そのようなポリペプチドとしては、抗体、抗原、酵素、受容体(細胞表面のまたは核の)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーターポリペプチド、増殖因子および前出のいずれかの機能性断片が挙げられるが、これらに限定されない。コード配列は、例えば、cDNAであってもよい。外因性配列は、目的の内因性遺伝子配列と連結するための導入遺伝子の断片であってもよい。例えば、目的の遺伝子の3’末端の配列を含む導入遺伝子の断片を利用して、挿入または置き換えを介して、内因性遺伝子配列の3’末端における変異をコードする配列を補正することができる。同様に、断片は、そのような内因性配列を補正または改変するための内因性配列の挿入/置き換えのための、内因性遺伝子の5’末端と同様の配列を含んでいてもよい。さらに、断片は、in situにおいて内因性遺伝子配列と連結して融合タンパク質を産生するための目的の機能的ドメイン(触媒、分泌など)をコードしてよい。
例えば、外因性配列は、遺伝性疾患に罹っている被験体内で欠失しているか機能しないポリペプチドをコードする配列を含んでいてもよく、そのような遺伝性疾患としては、軟骨形成不全、赤緑色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(OMIM No.102700)、副腎白質萎縮症、エカルディ症候群、アルファ−1アンチトリプシン欠損症、アルファ地中海貧血、アンドロゲン不応症候群、アペール症候群、不整脈性右心室異形成、毛細管拡張性運動失調、バルト症候群、ベータ地中海貧血、青色ゴムまり様母斑症候群、キャナヴァン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、ネコ泣き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉性異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常症、脆弱X染色体症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、血色素症、ベータグロビンの第6コドンのヘモグロビンC変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、フルラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター症候群、クラッベ病、ランガー・ギーディオン症候群、白血球粘着不全症(LAD、OMIM No.116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メービウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎原発性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、骨形成不全、ポルフィリン症、プラダー・ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリッポ症候群、重症複合免疫不全症(SCID)、シュバッハマン症候群、鎌状赤血球病(鎌状赤血球貧血症)、スミス・マジェニス症候群、スティックラー症候群、テイ・ザックス病、血小板減少性橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節硬化症、ターナー症候群、尿素回路障害、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッヒ症候群、X連鎖リンパ球増殖症候群(XLP、OMIM No.308240)が挙げられるが、これらに限定されない。
標的組込みによって治療され得る追加的な疾患の例としては、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積病(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病およびテイ・ザックス病)、ムコ多糖沈着症(例えば、ハンター病、フルラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、HbC、α−地中海貧血、β−地中海貧血)ならびに血友病が挙げられる。
ある特定の実施形態では、外因性配列は、標的組込みを受けた細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子(上述)と、追加的な機能をコードする連結された配列とを含むことができる。マーカー遺伝子の非限定的な例としては、GFP、薬物選択マーカー(複数可)などが挙げられる。
挿入することのできる追加的な遺伝子配列としては、例えば、変異配列を置き換える野生型遺伝子が挙げられ得る。例えば、野生型の第IX因子の遺伝子配列を、内因性の遺伝子コピーが変異している幹細胞のゲノム内へ挿入してもよい。野生型コピーは、内因性遺伝子座へ挿入してもよいし、代替的にセーフハーバー遺伝子座へ標的化してもよい。
本願の明細書の教示に従うそのような発現カセットの構築は、分子生物学の分野で周知の方法論を利用する(例えば、AusubelまたはManiatisを参照されたい)。発現カセットを使用してトランスジェニック動物を生成する前に、選択された制御要素に関連があるストレス誘導物質に対する発現カセットの応答性を、該発現カセットを適切な細胞株(例えば、初代細胞、形質転換細胞または不死化細胞株)内へ導入することによって、試験することができる。
さらに、発現を必要としていなくとも、外因性配列は、転写調節配列または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列および/またはポリアデニル化シグナルをも含み得る。また、目的の遺伝子の制御要素を、レポーター遺伝子へ作動可能に連結して、キメラ遺伝子(例えば、レポーター発現カセット)を作り出すことができる。
非コード核酸配列の標的挿入も達成され得る。アンチセンスRNA、RNAi、shRNAおよびマイクロRNA(miRNA)をコードする配列もまた、標的挿入のために使用され得る。
追加的な実施形態では、ドナー核酸は、追加的なヌクレアーゼの設計のために、特異的な標的部位である非コード配列を含んでいてもよい。その後、元のドナー分子が開裂されて、別の目的のドナー分子を挿入されることによって改変されるように、追加的なヌクレアーゼを細胞で発現してもよい。このようにして、ドナー分子の反復的な組込みを生じ、目的の特定の遺伝子座またはセーフハーバー遺伝子座で、形質を積み重ねることを可能とし得る。
ドナー(複数可)は、ヌクレアーゼ(複数可)を細胞中に導入する前に、それと同時に、またはその後に送達することができる。ある特定の実施形態では、ドナー(複数可)をヌクレアーゼ(複数可)と同時に送達する。他の実施形態では、ドナーをヌクレアーゼ(複数可)の前に、例えば、これらに限定されないが、ヌクレアーゼ(複数可)の1〜60分(またはそれらの間の任意の時間)前、ヌクレアーゼ(複数可)の1〜24時間(またはそれらの間の任意の時間)前、またはヌクレアーゼ(複数可)の24時間超前を含めた、ドナーの数秒前〜数時間前〜数日前に送達する。ある特定の実施形態では、ドナーをヌクレアーゼの後、好ましくは4時間以内に送達する。
ドナーは、ヌクレアーゼ(複数可)と同じ送達系を使用して送達することができる。同時に送達する場合、ドナーおよびヌクレアーゼは、同じベクター、例えば、AAVベクター(例えば、AAV6)上にあってよい。ある特定の実施形態では、ドナーはAAVベクターを使用して送達し、ヌクレアーゼ(複数可)はmRNA形態で送達する。
細胞
したがって、遺伝子改変された細胞、例えば、細胞において機能的なタンパク質を発現する導入遺伝子を含めた導入遺伝子を含む初代HSC/PCまたはT細胞が本明細書で提供される。本明細書に記載の方法によって産生される細胞も提供される。導入遺伝子を、1種または複数種のヌクレアーゼを使用して、標的化された様式で細胞のゲノム中に組み込む。ある特定の実施形態では、導入遺伝子をセーフハーバー遺伝子中に組み込む。
ランダムな組込みとは異なり、標的化された組込みでは、導入遺伝子の指定の遺伝子または遺伝子座中への組込みが確実になる。導入遺伝子は、標的遺伝子中のどこにでも組み込むことができる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子をヌクレアーゼ開裂部位またはその近傍、例えば、開裂部位の上流または下流の1〜300(またはそれらの間の任意の値)塩基対の範囲内、より好ましくは開裂部位のいずれか側の1〜100塩基対(またはそれらの間の任意の値)の範囲内、さらにより好ましくは開裂部位のいずれか側の1〜50塩基対(またはそれらの間の任意の値)の範囲内に組み込む。ある特定の実施形態では、導入遺伝子を含む、組み込まれる配列は、いかなるベクター配列(例えば、ウイルスベクター配列)も含まない。
これらだけに限定されないが、細胞および細胞株を含めた任意の細胞型を本明細書に記載されているように遺伝子改変することができる。本明細書に記載されている細胞の他の非限定的な例としては、T細胞(例えば、CD4+、CD3+、CD8+など);樹状細胞;B細胞;自己由来(例えば、患者由来)または異種性の多能性幹細胞、全能性幹細胞または多分化能性幹細胞(例えば、CD34+細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞など)が挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている細胞は、治療することが望まれる障害を有する患者に由来するCD34+細胞である。
本明細書に記載されている細胞は、障害を、例えばex vivo療法によって治療および/または予防することにおいて有用である。ヌクレアーゼにより改変された細胞を増大させ、次いで、標準の技法を使用して患者に再導入することができる。例えば、Tebasら、(2014年)New Eng J Med 370巻(10号):901頁を参照されたい。幹細胞の場合では、被験体に注入後、これらの前駆体の、機能的な導入遺伝子を発現する細胞へのin vivo分化も起こる。本明細書に記載されている細胞を含む医薬組成物も提供される。さらに、細胞は、患者に投与する前に凍結保存することができる。
送達
ヌクレアーゼ、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、ドナーポリヌクレオチド、ならびに本明細書に記載されているタンパク質および/またはポリヌクレオチドを含む組成物を、任意の適当な手段によって、任意の細胞型へin vivoまたはex vivoで送達してもよい。
適当な細胞としては、真核(例えば、動物)および原核の細胞および/または細胞株が挙げられる。かかる細胞またはかかる細胞から生成される細胞株の非限定的な例としては、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞が挙げられる。ある特定の実施形態において、細胞株は、CHO、MDCK、またはHEK293細胞株である。適当な細胞としては、また、例として、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞および間葉幹細胞などの幹細胞が挙げられる。
本明細書に記載されているようなヌクレアーゼの送達方法は、例えば、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号および同第7,163,824号に記載されており、それらの全ての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。
また、本明細書に記載されているようなヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を、1種または複数種のZFN、TALENまたはCRISPR/Cas系(複数可)をコードする配列を含有するベクターを使用して送達してもよい。以下に限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ関連ウイルスベクターなどを含めた任意のベクター系を使用してもよい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号および同第7,163,824号も参照されたい。さらに、任意のこれらのベクターが、処置に求められる1種または複数種の配列を含んでもよいことは明らかである。そのため、1種または複数種のヌクレアーゼおよびドナー構築物を細胞内に導入する際に、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドを同じベクターまたは異なるベクターに保有させてもよい(DNA MC)。複数のベクターを使用する際には、各ベクターは、1種または複数種のヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物をコードする配列を含んでもよい。
従来のウイルスおよび非ウイルスに基づく遺伝子移入方法は、細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に、ヌクレアーゼおよびドナー構築物をコードする核酸を導入するために使用することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAまたはRNAプラスミド、DNA MC、ネイキッド核酸、およびリポソーム、ナノ粒子またはポロキサマーなどの送達ビヒクルとの複合体を形成している核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、DNAおよびRNAウイルスが挙げられ、これらは細胞へ送達された後に、エピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのどちらかを有する。遺伝子操作されたDNA結合タンパク質およびこれらの結合タンパク質を含む融合タンパク質のin vivo送達の総説については、Rebar(2004年)、Expert Opinion Invest. Drugs、13巻(7号):829〜839頁、Rossiら(2007年)、Nature Biotech.、25巻(12号):1444〜1454頁、ならびにAnderson、Science、256巻:808〜813頁(1992年)、NabelおよびFelgner、TIBTECH、11巻:211〜217頁(1993年)、MitaniおよびCaskey, TIBTECH、11巻:162〜166頁(1993年)、Dillon、TIBTECH、11巻:167〜175頁(1993年)、Miller、Nature、357巻:455〜460頁(1992年)、Van Brunt、Biotechnology、6巻(10号):1149〜1154頁(1988年)、Vigne、Restorative Neurology and Neuroscience、8巻:35〜36頁(1995年)、KremerおよびPerricaudet、British Medical Bulletin、51巻(1号):31〜44頁(1995年)、Haddadaら、Current Topics in Microbiology and Immunology中のDoerflerおよびBoehm著(1995年)ならびにYuら、Gene Therapy、1巻:13〜26頁(1994年)などの一般的な遺伝子送達の文献を参照されたい。
核酸の非ウイルス送達方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、他のナノ粒子、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、および薬剤で増強されたDNA取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich−Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
追加的な例示の核酸送達系としては、Amaxa Biosystems(ケルン、ドイツ)、Maxcyte,Inc.(ロックビル、メリーランド州)、BTX Molecular Delivery Systems(ホリストン、マサチューセッツ州)、およびCopernicus Therapeutics Inc、(例えば、米国特許第6,008,336号を参照されたい)によって提供されるものが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適した陽イオン性および中性脂質としては、FelgnerのWO91/17424、WO91/16024の脂質が挙げられる。
免疫脂質複合体などの標的化されたリポソームを含めた脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、Science、270巻:404〜410頁(1995年)、Blaeseら、Cancer Gene Ther.、2巻:291〜297頁(1995年)、Behrら、Bioconjugate Chem.、5巻:382〜389頁(1994年);Remyら、Bioconjugate Chem.、5巻:647−654(1994年)、Gaoら、Gene Therapy、2巻:710〜722頁(1995年)、Ahmadら、Cancer Res.、52巻:4817〜4820頁(1992年)、ならびに米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号および同第4,946,787号を参照されたい)。
追加的な送達方法としては、送達される核酸のEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)内へのパッケージングを使用することが挙げられる。これらのEDVは、抗体の1つのアームが標的組織に対する特異性を有し、かつ他方がEDVに対する特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体は、EDVを標的細胞の表面に運び、次いでEDVは、エンドサイトーシスにより細胞内に運ばれる。細胞内に取り込まれると、内容物が放出される(MacDiarmidら、(2009年)、Nature Biotechnology、27巻(7号)、643頁を参照されたい)。
遺伝子操作されたZFP、TALE、CRISPR/Cas系をコードする核酸を送達するためのRNAまたはDNAウイルスに基づく系の使用は、ウイルスに体内の特定の細胞を標的とさせ、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化した過程を利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与(in vivo)することができるか、またはインビトロで細胞を処置するために使用することができ、改変された細胞は患者に投与される(ex vivo)。ZFPを送達するための従来のウイルスに基づく系としては、遺伝子移入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクチン、および単純ヘルペスウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連ウイルスの遺伝子移入方法を用いて可能であり、多くの場合、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い形質導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織において観察されている。
レトロウイルスの向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み入れることによって変更することができ、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることができるレトロウイルスベクターであり、典型的には高ウイルス力価を生じる。レトロウイルス遺伝子移入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6〜10kbの外来配列に用いるパッケージング能力を有する、シス作用性の長い末端反復からなる。最小限のシス作用性LTRが、ベクターの複製およびパッケージングには十分であり、それらは、次いで、治療遺伝子を標的細胞内に組み込むために使用されて、導入遺伝子の永続的な発現を提供する。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組合せに基づくものが挙げられる(例えば、Buchscherら、J.Virol.、66巻:2731〜2739頁(1992年)、Johannら、J.Virol.、66巻:1635〜1640頁(1992年)、Sommerfeltら、Virol.、176巻:58〜59頁(1990年)、Wilsonら、J.Virol.、63巻:2374〜2378頁(1989年)、Millerら、J.Virol.、65巻:2220〜2224頁(1991年)、PCT/US94/05700を参照されたい)。
一過性発現が好適な用途では、アデノウイルスに基づく系を使用することができる。アデノウイルスに基づくベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率で形質移入が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを用いて、高力価および高レベルの発現を得ている。このベクターは、比較的単純な系で大量に産生することができる。また、アデノ関連ウイルス(「AAV」)ベクターを使用して、例えば、核酸およびペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療の手順(例えば、Westら、Virology、160巻:38〜47頁(1987年)、米国特許第4,797,368号、WO93/24641、Kotin、Human Gene Therapy、5巻:793〜801頁(1994年)、Muzyczka、J.Clin.Invest. 94巻:1351頁(1994年)を参照されたい)に用いるために、細胞に標的核酸を形質導入することもできる。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschinら、Mol.Cell.Biol.、5巻:3251〜3260頁(1985年)、Tratschinら、Mol.Cell.Biol.、4巻:2072〜2081頁(1984年)、HermonatおよびMuzyczka、PNAS、81巻:6466〜6470頁(1984年)、およびSamulskiら、J.Virol.、63巻:03822〜3828頁(1989年)を含めた多数の刊行物に記載されている。
少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、現在、臨床試験の遺伝子移入に利用可能であり、それらは、形質導入薬剤を生成するために、ヘルパー細胞株内に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを利用する。
pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、Blood、85巻:3048〜305頁(1995年)、Kohnら、Nat.Med.、1巻:1017〜102頁(1995年)、Malechら、PNAS、94巻:22号、12133〜12138頁(1997年))。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験で使用された最初の治療ベクターであった。(Blaeseら、Science、270巻:475〜480頁(1995年))。MFG−Sでパッケージされたベクターについて、50%またはそれ超の形質導入効率が観察されている。(Ellemら、Immunol Immunother.、44巻(1号):10〜20頁(1997年)、Dranoffら、Hum.Gene Ther.、1巻:111〜2頁(1997年)。)
組換えアデノ関連ウイルスベクター(rAAV)は、欠損型および非病原性のパルボウイルスアデノ関連2型ウイルスに基づく有望な代替の遺伝子送達システムである。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bpの逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入された細胞のゲノム内への組込みに起因する効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特長である(Wagnerら、Lancet 351巻:9117号 1702〜3頁(1998年)、Kearnsら、Gene Ther.9巻:748〜55頁(1996年))。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10、ならびに任意の新規AAV血清型を含めた他のAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。一部の実施形態では、ウイルス核酸のLTR配列の起源ウイルスとカプシド配列の起源ウイルスが異種性であるキメラAAVを使用する。例として、AAV2に由来するLTRと、AAV5、AAV6、AAV8またはAAV9に由来するカプシドを有するキメラウイルス(即ち、それぞれAAV2/5、AAV2/6、AAV2/8およびAAV2/9)が挙げられる。
複製欠損性組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生することができ、多数の異なる細胞型を容易に感染させる。アデノウイルスベクターのほとんどは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えて、その後、複製欠損性ベクターが、欠失した遺伝子機能をトランスに供給するヒト293細胞で増殖するように、遺伝子操作される。Adベクターは、肝臓、腎臓、および筋肉で見出されるものなど非分裂性の分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivoで形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きな保有能力を有する。臨床試験でAdベクターを使用する例では、筋肉内注入を用いた抗腫瘍免疫化のポリヌクレオチド治療が含められた(Stermanら、Hum.Gene Ther.、7巻:1083〜9頁(1998年))。臨床試験における遺伝子移入に用いるアデノウイルスベクターの使用の追加的な例としては、Roseneckerら、Infection、24巻:1号、5〜10頁(1996年)、Stermanら、Hum.Gene Ther.、9巻:7号、1083〜1089頁(1998年)、Welshら、Hum.Gene Ther.、2巻:205〜18頁(1995年)、Alvarezら、Hum.Gene Ther.、5巻:597〜613頁(1997年)、Topfら、Gene Ther.、5巻:507〜513頁(1998年)、Stermanら、Hum.Gene Ther.、7巻:1083〜1089頁(1998年)が挙げられる。
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。そのような細胞としては、AAVおよびアデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子内に核酸ベクターをパッケージングする生産細胞株によって生成される。これらのベクターは、典型的に、パッケージングおよびその後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられている他のウイルス配列を含有する。欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスに供給される。例えば、遺伝子治療に使用するAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム内へのパッケージングおよび組込みに必要とされるAAVゲノム由来の逆方向末端反復(ITR)配列のみを具える。ウイルスDNAは、細胞株中にパッケージングされ、他のAAV遺伝子即ち、repおよびcapをコードするもののITR配列を欠失したヘルパープラスミドを含有する。細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスに感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、およびヘルパープラスミド由来のAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列を欠失しているため、有意な量にはパッケージングされない。アデノウイルスによる夾雑は、例えば、AAVよりも感受性があるアデノウイルスに対する熱処理によって低減することができる。一部の実施形態では、バキュロウイルスの発現系を使用してAAVを産生する。
多くの遺伝子治療用途では、遺伝子治療ベクターが、高度な特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面上でウイルス外被タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、ウイルスベクターを所与の細胞型に対する特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型上に存在することが公知の受容体に対する親和性を有するように選ばれる。例えば、Hanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92巻:9747〜9751頁(1995年)は、モロニーマウス白血病ウイルスを改変して、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現しているある特定のヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質をウイルスが発現する、他のウイルス−標的細胞の対にまで及び得るものである。例えば、線状ファージを遺伝子操作して、事実上いかなる選ばれた細胞受容体にも特異的な結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示することができる。上記の記載は、主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターを遺伝子操作して、特異的な標的細胞による取り込みに好都合な特異的な取り込み配列を含有させることができる。
遺伝子治療ベクターは、下記に説明するように、個々の患者への投与によって、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下もしくは頭蓋内注入)または局所適用によって、in vivoで送達することができる。あるいは、個々の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)や万能ドナーの造血幹細胞などの細胞に、ベクターをex vivoで送達し、続いて、通常はベクターを組み入れた細胞を選択した後に、患者への細胞の再移植を行うことができる。
また、ヌクレアーゼおよび/またはドナー構築物を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)を、in vivoでの細胞の形質導入のために、生物に直接投与することもできる。あるいは、ネイキッドDNAを投与することができる。投与は、血液または組織の細胞との最終的な接触の内に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかに依り、そのような経路としては、注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する適当な方法は、利用可能であり、当業者に周知であり、そして、1つよりも多い経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、多くの場合、特定の経路は、別の経路よりも速やかかつ有効な反応を提供することができる。
本明細書に記載されているポリヌクレオチド(例えば、ヌクレアーゼをコードするおよび/または二本鎖のドナー)の導入に適したベクターとしては、非組込み型レンチウイルスベクター(IDLV)が挙げられる。例えば、Oryら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻:11382〜11388頁、Dullら(1998年)、J.Virol.、72巻:8463〜8471頁、Zufferyら(1998年)、J. Virol.、72巻:9873〜9880頁、Follenziら(2000年)、Nature Genetics、25巻:217〜222頁、米国特許出願公開第2009/054985号を参照されたい。
薬学的に許容される担体は、投与されている特定の組成物によって、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって、ある程度は決定される。したがって、下記に記載するように、利用可能な医薬組成物の実に様々な適当な製剤が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences、第17版、1989年を参照されたい)。
ヌクレアーゼをコードする配列とドナー構築物とを、同じまたは異なる系を使用して送達することができることは明らかである。例えば、ヌクレアーゼおよびドナーを同じDNA MCによって保有することができる。あるいは、ドナーポリヌクレオチドをMCによって保有することができ、一方、1種または複数種のヌクレアーゼを標準的なプラスミドまたはAAVベクターによって保有することができる。さらに、これらの異なるベクターを、同じまたは異なる経路(筋肉内注射、尾静脈注射、他の静脈内注射、腹腔内投与および/または筋肉内注射)によって投与することができる。これらのベクターを、同時にまたは任意の順番で、送達することができる。
そのため、本開示は、治療タンパク質をコードする導入遺伝子の挿入に適応し易い疾患および状態のin vivoまたはex vivoでの処置を含み、例えば、第VIII因子(F8)などの凝固因子のヌクレアーゼ媒介性組込みを介した血友病の処置などを含む。組成物は、血清または標的器官もしくは標的細胞で所望の濃度の治療ポリペプチドを得るために、有効量でヒト患者へ投与される。投与は、ポリヌクレオチドが所望の標的細胞に送達される任意の手段に依ることができる。例えば、in vivoおよびex vivoの両方の方法が意図される。門脈への静脈内注射は、好ましい投与方法である。他のin vivo投与の様式としては、例えば、肝動脈を通じることを含めて肝臓葉もしくは胆管への直接注射および肝臓遠位への静脈内注射、肝実質への直接注射、肝動脈を介した注射ならびに/または胆管を通じた逆行注射が挙げられる。ex vivo投与の様式としては、切除した肝細胞または肝臓の他の細胞をin vitroで形質導入し、続いて形質導入された切除肝細胞をヒト患者の門脈脈管、肝実質または胆管へ戻して注入することが挙げられる。例えば、Grossmanら、Nature Genetics、6巻:335〜341頁(1994年)を参照されたい。
投与する有効量のヌクレアーゼ(複数可)およびドナーは、患者に応じておよび目的の治療ポリペプチドによって変化することになる。したがって、有効量は、その組成物を投与する医師によって最適に決定され、適切な投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。十分な時間で組込みおよび発現させた後(例えば、典型的には4〜15日間)、治療ポリペプチドの血清または他の組織のレベルの分析、および投与前の初期レベルとの比較によって、投与されている量が少なすぎるのか、適正な範囲内であるか、または多すぎるのかを決定する。また、初期投与およびそれに引き続いての投与に適したレジメンも変化し得るが、初期投与と、必要であればそれに引き続いての投与とを行うのが典型的である。引き続いての投与は、種々の間隔で投与されてもよく、毎日から毎年まで数年に1回までの範囲に及ぶ。当業者は、適切な免疫抑制技法が、送達ベクターの免疫抑制による形質導入の阻害または遮断を回避するために推奨され得ることを理解する。例えば、Vilquinら、Human Gene Ther.、6巻:1391〜1401頁(1995年)を参照されたい。
ex vivoとin vivoとの両方の投与に用いる製剤としては、液体中懸濁液物または乳濁液が挙げられる。多くの場合、活性成分は、薬学的に許容され、かつ活性成分に適合する賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組合せが挙げられる。さらに、組成物は、湿潤剤もしくは乳濁剤、pH緩衝剤、安定化剤または医薬組成物の効果を高める他の試薬などの微量の補助的な物質を含有していてもよい。
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALENまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ系を含む、本開示の例示的な実施形態に関する。このことが、実例のみの目的にあること、ならびに他のヌクレアーゼが使用され得ること、例えば、Ttago系、遺伝子操作されたDNA結合ドメインを有するホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)が使用され得ること、および/または天然起源のもしくは遺伝子操作されたホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)のDNA結合ドメインと異種由来開裂ドメインとの融合物、および/またはメガヌクレアーゼとTALEタンパク質との融合物が使われ得ることであることは理解されよう。
(実施例1):ジンクフィンガーヌクレアーゼのアセンブリー
Millerら(2007年)Nat. Biotechnol. 25巻:778〜785頁に記載されているように、ZFNをヒトCCR5およびAAVS1遺伝子に対してアセンブルし、ELISAおよびCEL1アッセイによって試験した。CCR5特異的ZFNについては、米国特許第7,951,925号を参照されたく、AAVS1特異的ZFNについては、米国特許第8,110,379号を参照されたい。どちらも参照により本明細書に組み込まれる。
(実施例2):AAV−GFPドナーのCD34+細胞への送達
AAVを、ドナー分子をCD34+細胞に送達するためのビヒクルとして試験するために、4種の異なるAAV血清型を評価した。CMVにより駆動されるeGFP導入遺伝子が血清型特異的LTRの間に挿入されたAAVベクターを構築した。試験したAAV血清型には、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/8およびAAV2が含まれた。これらのAAVベクターでは、ZFNをコードする核酸配列の全てはAAV2 ITRが隣接し、そして、それぞれAAV5、AAV6、またはAAV8に由来するカプシドタンパク質を使用して被包する(GrimmおよびKay(2003年)Current Gene Therapy 3巻:281〜304頁を参照されたい)。
ウイルス粒子を含有するドナーの産生を、当技術分野における標準の方法を使用したHEK293系を使用して調製することによって行った(Liら、同書を参照されたい、例えば、US6723551を参照されたい)。G−CSFにより動員される白血球除去に由来し、Milenyi CliniMACS system(Miltenyi Biotech、Germany)を使用した正の選択によって精製された、動員された末梢血CD34+細胞(mPBCD34+)に、CMVにより駆動されるeGFP導入遺伝子を含有する、示されているAAVベクターを用いて、AAVベクターの存在下で細胞を培養することによって形質導入した。次いで、感染の2日後および5日後(dpi)に細胞を収集し、GFP発現についてフローサイトメーター(Guava、Millipore)を製造者のプロトコールに従って使用して分析した。
図1に示されている結果は、これらの条件で、AAV2/6−GFPドナー粒子が他のAAV血清型を用いて形質導入した細胞の6倍超のGFP発現CD34+ HSC/PCを生成できることを実証している。
(実施例3):AAV2/6を使用したRFLP保有導入遺伝子の送達
CD34+細胞における標的化された組込みを試験するために、AAV6−R5−160−XhoIドナーを生成した。このウイルスベクターへの導入遺伝子挿入では、2つのCCR5特異的ZFN結合部位(図2A)、ZFN対8267:20505(8196zとも呼ばれる)の間にXhoI制限酵素部位を導入した。XhoI部位には、配列がゲノム中のZFN開裂部位に隣接するゲノム中の領域に相同である相同性アームが隣接する。具体的には、右の相同性アームはおよそ1351塩基対であり、左の相同性アームはおよそ509塩基対である。AAV6−R5−160−XhoIドナーを300〜1×10vg/細胞の間の用量で上記の通りCD34+細胞に形質導入した。1日後、CCR5特異的ZFNをコードするmRNA(120μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。mRNAはAsuragen(Austin、TX)により2A構築物(8267−2A−2050)として製造されたものであり、120μg/mlで使用した。
感染の5日後(dpi)に、細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のRFLPアッセイ(図2B)およびIlluminaディープシーケンシング(図2C)のために処理した。NucleoSpin Tissue XSキット(Macherey−Nagel、Bethlehem、PA)を使用してゲノムDNAを単離した。ネステッドPCR手法を使用してRFLPアッセイを実施し、そこで、まず、以下のプライマー:5’−CTGTGCTTCAAGGTCCTTGTCTGC−3’(配列番号1)および5’−CTCTGTCTCCTTCTACAGCCAAGC−3’(配列番号2)を使用してZFN開裂部位の周囲の領域を増幅した。PCR産物をゲル精製し、以下のプライマー対:5’−AAGATGGATTATCAAGTGTCAAGTCC−3’(配列番号3)および5’−CAAAGTCCCACTGGGCG−3’(配列番号4)を用いて再度PCR増幅した。
次いで、増幅したDNAを、XhoIを用いた制限分析に供し、産物をゲル電気泳動によって分析した。図2Bに示されているように、分析により、XhoIを含有する導入遺伝子の存在が、存在するDNA分子のおよそ18パーセントに至るまでのレベルで実証されたが、これはAAV6ドナーとCCR5特異的ZFNをコードするmRNAの両方で処理したCD34+試料においてのみであった。
Illuminaディープシーケンシングにより、ZFNにより誘導されるゲノム改変をNHEJ(「インデル」として公知の一般には小さな挿入および/または欠失)経路およびHDR(TI)経路によって同時検出することが可能になった(図2C)。端的に述べると、まず、CCR5 ZFN開裂部位の周囲の領域を、5’−CTGTGCTTCAAGGTCCTTGTCTGC−3’(配列番号1)および5’−CTCTGTCTCCTTCTACAGCCAAGC−3’(配列番号2)である、相同アームの外側に位置するプライマーを使用して増幅した。PCR産物をゲル精製し、次いで、標的特異的な配列とIllumina−ディープシーケンシング用のアダプターの両方を含有する融合プライマーの対:5’−ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTNNNNNGCCAGGTTGAGCAGGTAGATG−3’(配列番号5)および5’−AGACGTGTGCTCTTCCGATCTGCTCTACTCACTGGTGTTCATCTTT−3’(配列番号6)を使用してPCR増幅した。最後に、以下のプライマー対:5’−AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACACNNNNNNNNACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTT−3’(配列番号7)および5’−CAAGCAGAAGACGGCATACGAGATNNNNNNNNGTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT−3’(配列番号8)を使用した最終的なPCR反応において試料バーコードを加えた。最終的なPCR産物をMiSeq system(Illumina、San Diego、CA)にかけた。カスタマイズされたスクリプトを使用してデータを解析した。
TI頻度のAAV6ドナーの用量依存的な上昇が観察された。TIのピークレベル(22%)は、10,000vg/mlのAAV6ドナーで実現された(図2C)。さらに、インデル頻度は、AAV6ドナーの用量およびTI頻度と逆相関を示した。
(実施例4):ドナー処理とZFN処理のタイミングおよび順序の最適化
HDRによる導入遺伝子の標的化された組込みを最大にするために、AAV6形質導入およびZFN mRNAエレクトロポレーションの最適なタイミングおよび順序を調査した。AAV6−R5−160−XhoIドナーを、CD34+細胞に、CCR5特異的ZFN mRNAを用いたエレクトロポレーション(EP)の最大48時間前(−48時間)〜20時間後(+20時間)に導入した。細胞を収集し、その後の時点で、gDNA精製およびその後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。
図3Aおよび図3Bに示されているように、CCR5 ZFNをコードするmRNAを用いたエレクトロポレーション前にAAV6−R5−160−XhoIドナーを用いて短時間処理(6時間以内)することにより、20%超の標的化された組込みが誘導された。16時間前の処理、20時間前の処理、または24時間前の処理ではわずかに低い効率が観察され、48時間前の処理を使用した場合にはTI効率の有意な降下が観察された。図3Bに示されているように、ヌクレアーゼにより、ドナーをヌクレアーゼトランスフェクションの後(1時間以内)に提供した場合であってもCD34+細胞における効率的な標的化された組込みが刺激された。しかし、ドナーをヌクレアーゼトランスフェクションの4時間後に提供した場合にはTI効率の有意な低下が観察され、ドナーをヌクレアーゼトランスフェクションの20時間後に提供した場合にはTIがほとんど見られなかった。データは、HDRによる効率的なゲノム改変のためには、ZFN mRNAを用いたエレクトロポレーションの前24時間以内またはエレクトロポレーション後1時間以内にAAV6ドナーを用いたCD34+細胞への形質導入を行うことが最適であることを示唆している。
(実施例5):より大きな導入遺伝子の組込み
ドナーのAAV6媒介性送達が、完全な導入遺伝子発現カセットなどのより大きな異種DNAの断片の標的化された組込みにも有効であるかどうかを試験するために、pgkプロモーターにより駆動されるeGFP発現カセット(1.6kb)がCCR5相同アームの間に挿入されたR5−pgk−GFP−pAドナーを構築した(図4A)。
CD34+細胞を、AAV6−R5−pgk−GFP−pAドナーおよびCCR5 ZFN mRNAを用いて上記の通り処理し、次いで、フローサイトメトリー分析のために収集した。
図4Bに示されているように、15dpiにおいて(図4B)またはそれより前の時点において、ドナー(1000vg/mlおよび3000vg/ml)とZFNの両方を用いて処理した試料中にはおよそ15%のGFP+細胞が存在していたが、ドナー単独で処理した試料中には存在していなかった。
GFPカセットのCCR5遺伝子座への標的化された組込みの存在を、半定量的In−Out PCRアッセイを使用してさらに確認した。標準対照のセットを、改変されていない野生型gDNAを用いた、CCR5遺伝子座におけるGFP導入遺伝子組込みの頻度が分かっている(サザンブロットによって決定される)gDNAプールの段階希釈によって調製した。等量のgDNAならびにポリA領域(eGFPカセット内に存在する)内に存在するプライマーおよびZFN標的部位の3’側のCCR5相同アーム領域の外側に位置するプライマーを使用してPCRを実施した(図4C)。使用したプライマーを以下に示す:5’−GAGGATTGGGAAGACAATAGCAG−3’(配列番号9)および5’−CCAGCAATAGATGATCCAACTCAAATTCC−3’(配列番号10)。
PCR反応の第2のセットでは、プライマー対の両方のプライマーが標的部位の5’側に位置し、そのうちの1つがCCR5相同な領域の外側にある1つの追加的なプライマー対も同じPCR反応に含めた(2プライマー対)。第2のプライマー対をgDNAインプットの測定値として使用した。この追加的なプライマー対を下に示す:5’−GATTTGCACAGCTCATCTGGC−3’(配列番号11)および5’−CCATCTTGTTCCACCCTGTGC−3’(配列番号12)。
GFP−TIバンドの強度(図4C)および総CCR5バンドと比較した相対的なGFP−TIバンドの強度(図3D)に基づいて、1000vg/mlまたは3000vg/mlのAAV6ドナーおよびCCR5 ZFN mRNAを用いて処理したCD34+ HSC/PCは、CCR5遺伝子座におけるGFPにおいて10%超の標的化された組込みを有した。
総合すると、結果により、AAV6ドナーの使用は、この方法を用いた、より大きなDNA断片の標的化された組込みに関しても効率が高いことが確認された。
(実施例6):ゲノム中の第2の位置への標的化された組込み
そのような効率の高い標的化された組込みがCCR5遺伝子座に特異的なものである可能性を排除するために、以下の表1に示されている6つのフィンガーを伴うジンクフィンガータンパク質を含む、AAVS1を標的とするZFN対30035:30054の結合部位間にHindIII部位が導入された、AAVS1に特異的なHindIIIドナーを構築した。各フィンガーの認識へリックス領域が表1の1行にF1〜F6として示されており、ZFPが結合した標的部位が表1の最初の列に示されている。米国特許第8,110,379号も参照されたい。標的配列では、ZFNが結合したヌクレオチドが大文字で示されており、結合していないヌクレオチドが小文字で示されている。
CD34+ HSPCを、AAV6−AAVS1−HindIIIドナーおよびAAVS1 ZFN mRNAを用いて処理した。5日後に細胞を収集し、AAVS1に特異的なプライマーを使用した上記のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。
図5Bに示されているように、AAVS1 ZFNの存在下で、低用量のAAV6ドナー(1000vg/ml)を使用すると対立遺伝子の30%超が標的化された組込み(TI)を有し、高用量のAAV6ドナーを使用すると、対立遺伝子の50%超がTIを有した。
(実施例7):TALEN媒介性の標的化された組込み
CD34+細胞に、AAV6−R5−160−XhoIドナー(2000vg/細胞)を用いて形質導入した。37℃で20時間インキュベートした後、米国特許第8,586,526号に記載されているCCR5特異的TALEN mRNA(各々80μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。5日後に、細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。
図6は、配列決定によって検出されたゲノム改変の量:挿入もしくは欠失(インデル)、またはドナー分子によってもたらされるRFLPの標的化された組込み(TI)のいずれかを示す。示されているように、TALENにより、初代CD34+細胞においてAAV6ドナーによってもたらされるRFLPの標的化された組込みが10%超刺激された。
(実施例8):CRISPR/Cas媒介性の標的化された組込み
CD34+細胞に、rAAV6−AAVS1−HindIIIドナー(500または2000vg/細胞)を用いて形質導入した。37℃で20時間インキュベートした後、AAVS1特異的ZFN(30054:30035、40μg/ml)またはCas9 mRNA(20μg/ml)およびAAVS1特異的キメラガイドRNA(gRNA)DNA(10〜40μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。gRNA−T1およびgRNA−T2は、以下のAAVS1ゲノム配列:GTCCCCTCCACCCCACAGTGGGG(配列番号27)およびGGGGCCACTAGGGACAGGATTGG(配列番号28)にそれぞれ結合するように設計されたガイドRNAである。PAM領域に下線が引かれている。5日後に、細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。図7は、配列決定によって検出されたゲノム改変の量:挿入もしくは欠失(インデル)、またはドナー分子によってもたらされるRFLPの標的化された組込み(TI)のいずれかを示す。示されているように、本実験において、CRISPR/Cas9により、初代CD34+細胞においてAAV6ドナーによってもたらされるRFLPの標的化された組込みが1%超刺激された。
(実施例9):CD4+T細胞におけるAAV形質導入およびTI
初代CD4+T細胞に、IL2(20ng/ml)およびDynabeads(登録商標)Human T−Activator CD3/CD28(Life Technology)の存在下で、CMVにより駆動されるeGFP導入遺伝子を含有するAAV2、AAV5、AAV6、AAV8またはAAV9ベクターを用いて形質導入した。次いで、感染の5日後(dpi)に細胞を収集し、フローサイトメーター(Guava、Millipore)を使用して分析した。
GFP陽性細胞の頻度(%)を下の表2に示す。AAV6により、他の血清型(AAV2、AAV5、AAV8、およびAAV9)と比較して最も高い効率で初代CD4+T細胞が形質導入された。
さらに、CD4+細胞に、示されている用量のrAAV2、rAAV6、またはIDLV R5−160−XhoIドナーを用いて形質導入した。37℃で20時間インキュベートした後、CCR5−またはAAVS1−特異的ZFN mRNA(60μg/ml)を、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。4日後に細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。
図8は、CCR5−ヌクレアーゼ(図8A)およびAAVS1−ヌクレアーゼ(図8B)を用いて処理したCD4+T細胞における、配列決定によって検出されたゲノム改変の量:挿入もしくは欠失(インデル)、またはドナー分子によってもたらされるRFLPの標的化された組込み(TI)のいずれかを示す。示されているように、ZFNにより、初代CD4+細胞においてAAV6ドナーによってもたらされるRFLPの標的化された組込みが40%超刺激された。
(実施例10):CD8+T細胞におけるAAV形質導入およびTI
初代CD8+T細胞に、IL2(20ng/ml)およびDynabeads(登録商標)Human T−Activator CD3/CD28(Life Technology)の存在下で、CMVにより駆動されるeGFP導入遺伝子を含有するAAV2、AAV5、AAV6、AAV8またはAAV9ベクターを用いて形質導入した。次いで、感染の5日後(dpi)に細胞を収集し、フローサイトメーター(Guava、Millipore)を使用して分析した。
GFP陽性細胞の頻度(%)を下の表3に示す。AAV6により、他の血清型(AAV2、AAV5、AAV8、およびAAV9)と比較して、比較的低い用量でCD8+T細胞が最も高い効率で形質導入された。
さらに、CD8+細胞に、示されている用量のrAAV2、rAAV6、またはIDLV R5−160−XhoIドナーを用いて形質導入した。37℃で20時間インキュベートした後、CCR5−またはAAVS1−特異的ZFN mRNAを、形質導入された細胞中に、BTX ECM830(Harvard Apparatus)を使用したエレクトロポレーションによって導入した。4日後に細胞をゲノムDNA(gDNA)精製のために収集し、その後のIlluminaディープシーケンシングのために処理した。図9は、CCR5−ヌクレアーゼ(図9A)およびAAVS1−ヌクレアーゼ(図9B)を用いて処理したCD8+T細胞における、配列決定によって検出されたゲノム改変の量:挿入もしくは欠失(インデル)、またはドナー分子によってもたらされるRFLPの標的化された組込み(TI)のいずれかを示す。示されているように、ZFNにより、初代CD8+細胞においてAAV6ドナーによってもたらされるRFLPの標的化された組込みが30%超刺激された。
(実施例11):ex vivoにおける方法
本明細書に記載されているIL2RGを発現する、以前に記載されている(Aiutiら(2013年)Science 341巻、1233151頁)CD34+ HSPC(例えば、患者由来のCD34+細胞および/または改変されたCD4+および/またはCD8+T細胞)を含めた、遺伝子改変された細胞を、以前に記載されているように(Aiutiら、同書)被験体に投与し、その結果、改変された細胞を用いて治療した被験体において長期間にわたる多系譜の生着がもたらされる。
本明細書にて言及されている全ての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
開示は、理解を明確にする目的で、説明および実施例によっていくらか詳細に提供されているが、本開示の精神または範囲を逸脱することなく様々な変形および改変が実践され得ることは、当業者にとって明らかである。したがって、前出の記載および実施例は、限定として解釈されるべきものではない。

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  1. 明細書に記載の発明。
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