以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、樹脂組成物中の各成分の量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する値である。
以下の説明において、用語「誘電率」とは、別途明示の無い限り、比誘電率のことを示す。
[1.樹脂組成物の概要]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)エピスルフィド化合物、及び(D)フッ素系充填材を含む。ここで、用語「フッ素系」とは、フッ素原子を含むことをいう。また、用語「フッ素系充填材」とは、フッ素原子を含む化合物を材料として含む充填材をいう。このような樹脂組成物により、誘電率が低い絶縁層を得ることができ、且つ、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上との両方を達成できるという、本発明の所望の効果を得ることができる。
[2.(A)エポキシ樹脂]
(A)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)エポキシ樹脂としては、絶縁層の平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族系のエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子が芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂をいう。また、芳香族骨格とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、ベンゼン環等の単環構造だけでなく、ナフタレン環等の多環芳香族構造及び芳香族複素環構造をも含む。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂及びナフトール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種類以上のエポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂及びナフトール型エポキシ樹脂が特に好ましい。
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物層の可撓性を向上させたり、樹脂組成物の硬化物の破断強度を向上させたりできる。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);などが挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂及びナフトール型エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200HH」、「HP−7200H」、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:0.1〜1:15、より好ましくは1:0.5〜1:10、特に好ましくは1:1〜1:8である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との質量比が前記の範囲にあることにより、接着フィルムの形態で使用する場合に、好ましい粘着性を得ることができる。また、接着フィルムの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物の硬化物の破断強度を効果的に高めることができる。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、特に好ましくは110〜1000である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層を得ることができる。なお、エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100〜5000であり、より好ましくは250〜3000であり、さらに好ましくは400〜1500である。エポキシ樹脂等の樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
樹脂組成物における(A)エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度及び絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
[3.(B)硬化剤]
(B)成分としての硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。このような(B)硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。また、硬化剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、絶縁層と導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」「SN375」;DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」;等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
上述した中でも、(A)エポキシ樹脂及び(C)エピスルフィド化合物と組み合わせた場合に樹脂フローの抑制と保存安定性の向上とをバランスよく改善する観点では、(B)硬化剤としては、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤からなる群より選ばれる1種類以上の硬化剤が好ましい。
活性エステル系硬化剤を用いる場合、(B)硬化剤100質量%に対する活性エステル系硬化剤の量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。活性エステル系硬化剤の量が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に樹脂組成物の硬化物の誘電率を効果的に下げることができる。
樹脂組成物における(B)硬化剤の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数及び(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド基数の合計を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.8以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。さらに、「(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド基数」とは、樹脂組成物中に存在する(C)エピスルフィド化合物の不揮発成分の質量をエピスルフィド当量で除した値を全て合計した値である。(B)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
[4.(C)エピスルフィド化合物]
(C)成分としてのエピスルフィド化合物は、分子中に下記式(1)で表されるエピスルフィド基を含む化合物である。下記の式(1)に示される炭素原子の結合手が結合する先の原子に制限は無いが、通常は、水素原子又は炭素原子である。この(C)エピスルフィド化合物を(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(D)フッ素系充填材と組み合わせることにより、(D)フッ素系充填材によって低い誘電率を有する硬化物が得られる樹脂組成物において、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上との両方を達成することができる。
(C)エピスルフィド化合物は、1分子中にエピスルフィド基を1個以上有するものを用いることができる。中でも、(C)エピスルフィド化合物としては、1分子中にエピスルフィド基を2個以上有するものが好ましい。通常、(C)エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基において反応できる。この際、1分子中にエピスルフィド基を2個以上有する(C)エピスルフィド化合物を用いることにより、反応によって架橋構造が生成するので、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。また、特に、架橋構造により樹脂組成物のチキソ性が効果的に高められるので、樹脂フローを効果的に抑制することができる。
(C)エピスルフィド化合物の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有するエピスルフィド化合物の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有するエピスルフィド化合物の割合が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂フローを効果的に抑制できる。また、通常は、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。
(C)エピスルフィド化合物としては、例えば、前記の(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した構造を有する化合物が挙げられる。中でも、分子中にエピスルフィド基以外にも環構造を含むエピスルフィド化合物が好ましい。前記の環構造としては、芳香環構造及び脂環式構造が好ましく、脂環式構造が特に好ましい。このような分子中にエピスルフィド基以外にも環構造を含むエピスルフィド化合物を用いることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。また、通常は、絶縁層の平均線熱膨張率を低下させることができる。
好ましい(C)エピスルフィド化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、ビスフェノールF型エピスルフィド化合物、ビスフェノールS型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールF型エピスルフィド化合物、水添ビスフェノールS型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、レゾルシノール型エピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、(C)エピスルフィド化合物としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物が特に好ましい。水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物は、ビスフェノールA型エピスルフィド化合物のベンゼン環の不飽和結合を水素化して一重結合にした構造を有する化合物である。また、ビスフェノールA型エピスルフィド化合物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した構造を有する化合物である。
(C)エピスルフィド化合物の市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製の「YL7007」(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物)が挙げられる。
(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド当量は、好ましくは50g/eq以上、より好ましくは80g/eq以上、特に好ましくは110g/eq以上であり、好ましくは5000g/eq以下、より好ましくは3000g/eq以下、更に好ましくは2000g/eq以下、特に好ましくは1000g/eq以下である。(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド当量が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。なお、エピスルフィド当量は、1当量のエピスルフィド基を含む化合物の質量を表す。
(C)エピスルフィド化合物の重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100〜5000であり、より好ましくは200〜3000であり、さらに好ましくは300〜1500である。
樹脂組成物における(C)エピスルフィド化合物の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.10質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。(C)エピスルフィド化合物の量が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上とをバランスよく改善できる。
(C)エピスルフィド化合物の量は、(A)エポキシ樹脂の量100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。(C)エピスルフィド化合物の量が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上とをバランスよく改善できる。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド基の数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド基の数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上とをバランスよく改善できる。
(C)エピスルフィド化合物の量は、(B)硬化剤の量100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(C)エピスルフィド化合物の量が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上とをバランスよく改善できる。
(B)硬化剤の活性基数を1とした場合、(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド基の数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上であり、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下である。(B)硬化剤の活性基数を1とした場合の(C)エピスルフィド化合物のエピスルフィド基の数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上とをバランスよく改善できる。
[5.(D)フッ素系充填材]
(D)成分としてのフッ素系充填材は、フッ素原子を含む化合物を材料として含む充填材である。フッ素系充填材は、一般に、粒子となっている。よって、(D)フッ素系充填材として、通常は、フッ素原子を含む化合物を材料として含む粒子を用いる。
(D)フッ素系充填材の材料としては、例えば、フッ素系ポリマー、フッ素系ゴムなどが挙げられる。中でも、絶縁層の誘電率を低減する観点から、フッ素系ポリマーが好ましい。よって、(D)フッ素系充填材としては、フッ素系ポリマー粒子が好ましい。
フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、絶縁層の誘電率を特に低減する観点から、フッ素系ポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレンが好ましい。よって、(D)フッ素系充填材としては、ポリテトラフルオロエチレンを含む粒子としてのポリテトラフルオロエチレン粒子が好ましい。
フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは5000000以下、より好ましくは4000000以下、特に好ましくは3000000以下である。
(D)フッ素系充填材の平均粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上、特に好ましくは0.10μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下である。(D)フッ素系充填材の平均粒径が前記の範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、樹脂組成物中における(D)フッ素系充填材の分散性を良好にできる。
(D)フッ素系充填材等の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により、測定できる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で測定し、その粒径分布からメディアン径として平均粒径を得ることができる。測定サンプルは、粒子を超音波により溶剤中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所製社製の「LA−500」等を使用することができる。
(D)フッ素系充填材の市販品としては、例えば、ダイキン工業社製の「ルブロンL−2」、「ルブロンL−5」、「ルブロンL−5F」;旭硝子社製の「FluonPTFE L−170JE」、「FluonPTFEL−172JE」、「FluonPTFE L−173JE」;喜多村社製の「KTL−500F」、「KTL−2N」、「KTL−1N」;三井・デュポン フロロケミカル社製の「TLP10F−1」;等が挙げられる。
(D)フッ素系充填材は、表面処理されていてもよい。例えば(D)フッ素系充填材は、任意の表面処理剤で表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤;無機微粒子;等が挙げられる。親和性の観点から、表面処理剤としては、フッ素系の界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系の界面活性剤の具体例としては、AGCセイミケミカル社製の「サーフロンS−243」(パーフルオロアルキル エチレンオキシド付加物);DIC社製の「メガファックF−251」、「メガファックF−477」、「メガファックF−553」、「メガファックR−40」、「メガファックR−43」、「メガファックR−94」;ネオス社製の「FTX−218」、「フタージェント610FM」;ネオス社製の「フタージェント730LM」;が挙げられる。
樹脂組成物における(D)フッ素系充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。(D)フッ素系充填材の量が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂組成物の硬化物の誘電率を効果的に低減することができる。
また、特に樹脂組成物が(E)無機充填材を含む場合、樹脂組成物における(D)フッ素系充填材の量は、(D)フッ素系充填材及び(E)無機充填材の合計100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(D)フッ素系充填材の量が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、特に、樹脂組成物の硬化物の誘電率を効果的に低減することができる。
[6.(E)無機充填材]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(E)無機充填材を含んでいてもよい。(E)成分としての無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウムが挙げられる。これらの中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。中でも、球形シリカが好ましい。(E)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
通常、(E)無機充填材は、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(E)無機充填材の平均粒径は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、(E)無機充填材の平均粒径が前記の範囲にあることにより、通常は、樹脂組成物層の回路埋め込み性を向上させたり、絶縁層の表面粗さを小さくしたりできる。
(E)無機充填材の市販品としては、例えば、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60−05」、「SP507−05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP−30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO−C4」、「SO−C2」、「SO−C1」;などが挙げられる。(E)無機充填材の平均粒径は、(D)フッ素系充填材と同じく、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。
(E)無機充填材は、任意の表面処理剤で表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤;アルコキシシラン化合物;オルガノシラザン化合物;等が挙げられる。これらの表面処理剤で表面処理されることにより、(E)無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM−103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)などが挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤による表面処理の程度は、(E)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価できる。(E)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(E)無機充填材の分散性向上の観点から、好ましくは0.02mg/m2以上、より好ましくは0.1mg/m2以上、特に好ましくは0.2mg/m2以上である。他方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、前記のカーボン量は、好ましくは1mg/m2以下、より好ましくは0.8mg/m2以下、特に好ましくは0.5mg/m2以下である。
(E)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(E)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称することがある。))により洗浄処理した後に、測定できる。具体的には、十分な量のMEKと、表面処理剤で表面処理された(E)無機充填材とを混合して、25℃で5分間、超音波洗浄する。次いで、上澄液を除去し、不揮発成分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて、(E)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定できる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」を使用することができる。
樹脂組成物における(E)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。(E)無機充填材の量が、前記範囲の下限値以上であることにより、樹脂組成物の硬化物の熱膨張率を低くできるので、絶縁層の反りを抑制できる。また、(E)無機充填材の量が、前記範囲の上限値以下であることにより、樹脂組成物の硬化物の機械的強度を向上させることができ、特に伸びに対する耐性を高めることができる。
[7.(F)熱可塑性樹脂]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(F)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。(F)成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7891BH30」及び「YL7482」が挙げられる。
(F)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上、特に好ましくは20000以上であり、好ましくは70000以下、より好ましくは60000以下、特に好ましくは50000以下である。(F)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定できる。
(F)熱可塑性樹脂を用いる場合、樹脂組成物における(F)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
[8.(G)硬化促進剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(G)硬化促進剤を含んでいてもよい。(G)硬化促進剤を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
(G)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましく、アミン系硬化促進剤が特に好ましい。(G)硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネートが挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが挙げられる。中でも、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物;及び、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体;が挙げられる。中でも、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200−H50」が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニドが挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。
過酸化物系硬化促進剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。
過酸化物系硬化促進剤としては、市販品を用いることができ、例えば、日油社製「パークミル D」が挙げられる。
(G)硬化促進剤を用いる場合、樹脂組成物における(G)硬化促進剤の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
[9.(H)カップリング剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、(H)カップリング剤を含んでいてもよい。(H)カップリング剤を用いることにより、(E)無機充填材の分散性を高めることができるので、粗化処理後の絶縁層の表面粗さを小さくすることができる。
(H)カップリング剤としては、例えば、(E)無機充填材の表面処理剤として挙げた例と同じものが挙げられる。また、(H)カップリング剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(H)カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物における(H)カップリング剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。(H)カップリング剤の量が前記の範囲にあることにより、粗化処理後の絶縁層の表面粗さを小さくできる。
[10.(I)添加剤]
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;着色剤;難燃剤;等が挙げられる。また、添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類状を任意の組み合わせて用いてもよい。
[11.樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、例えば、配合成分を、必要により溶剤と混合し、回転ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌する方法によって製造できる。
[12.樹脂組成物の特性]
上述した樹脂組成物の硬化物は、その誘電率を低くできる。よって、この樹脂組成物の硬化物により、誘電率の低い絶縁層を得ることができる。例えば、実施例に記載の方法で樹脂組成物を硬化させて硬化物を得た場合、当該硬化物の誘電率を、好ましくは3.00以下、より好ましくは2.97以下、特に好ましくは2.95以下にできる。ここで、硬化物の誘電率は、実施例に記載の方法で測定できる。
上述した樹脂組成物は、樹脂フローを小さくできる。よって、この樹脂組成物を用いて製造された接着フィルムを内層基板とラミネートする場合に、接着フィルムの端部からの樹脂組成物の流出を抑制して、意図しない樹脂組成物層の厚みの変化を抑制できる。したがって、絶縁層の厚み制御を容易に行うことができる。例えば、樹脂組成物によって形成された厚さ20μmの樹脂組成物層を備える接着フィルムを実施例に記載の方法で内層基板にラミネートした場合に、その樹脂フロー量を、好ましくは3mm以下にできる。
上述した樹脂組成物は、保存安定性に優れる。よって、保存後におけるアンジュレーションの増大を抑制することができる。例えば、樹脂組成物によって形成された厚さ20μmの樹脂組成物層を備える接着フィルムを、実施例に記載の方法によって、保存した後で内層基板上に絶縁層を形成した場合、その形成された絶縁層のアンジュレーションを好ましくは2μm未満にできる。アンジュレーションは、実施例に記載の方法によって測定できる。
上述した樹脂組成物によって前記のような効果が得られる仕組みを、本発明者は、下記のように推測する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記に説明する仕組みによって制限されるものでは無い。
(D)フッ素系充填材は、(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤と組み合わせた場合に、樹脂組成物の硬化物の誘電率を下げる作用がある。しかし、(D)フッ素系充填材は、一般に(A)エポキシ樹脂等の樹脂成分との親和性が低い。そのため、(D)フッ素系充填材が樹脂成分と組み合わせて樹脂組成物に含まれる場合、(D)フッ素系充填材と樹脂成分との界面での密着性が低くなり、その樹脂組成物のチキソ性は低くなる。よって、(D)フッ素系充填材を用いると、ラミネート時の樹脂組成物の流動性が大きくなって、樹脂フローが大きくなっていた。これに対し、樹脂組成物が(C)エピスルフィド化合物を含むと、ラミネート時に加えられる熱による(A)エポキシ樹脂の重合速度を速くできる。よって、ラミネート時に樹脂組成物のチキソ性を素早く高めることができるので、樹脂フローを抑制することができる。また、常温の保存環境において、(C)エピスルフィド化合物が(A)エポキシ樹脂の重合速度を速める能力は、硬化促進剤の能力よりも低い適切な範囲にある。そのため、保存時に樹脂組成物において(A)エポキシ樹脂の反応が過剰に進行することを抑制できる。したがって、保存時における樹脂組成物の硬化の進行を抑制できるので、保存による樹脂組成物の特性の変化を抑制でき、その結果、高い保存安定性を得ることができる。
また、一般に、硬化促進剤は触媒として機能できるので、(A)エポキシ樹脂が反応しても、当該硬化促進剤の多くは触媒としての機能を失わない。よって、保存時の(A)エポキシ樹脂の反応は保存時間と共に進行し続ける。そのため、樹脂フローを抑制できるほど多くの硬化促進剤を含む樹脂組成物は、保存時に硬化が大きく進行する傾向があるので、保存安定性が低くなっていた。これに対し、(C)エピスルフィド化合物は、(A)エポキシ樹脂の反応時に重合を生じて消費される。よって、保存時に(A)エポキシ樹脂が反応しても、通常、当該(C)エピスルフィド化合物による反応を促進する能力は過大にはならない。そのため、(C)エピスルフィド化合物は、前記のように、常温の保存環境において(A)エポキシ樹脂の重合速度を速める能力が低い適切な範囲にあるので、高い保存安定性が得られている。
[13.樹脂組成物の用途]
本発明の樹脂組成物は、プリント回路基板等の回路基板の絶縁層形成用の樹脂組成物として用いることができ、中でも、ビルドアップ方式による回路基板の製造において絶縁層を形成するためのビルドアップ絶縁層形成用の樹脂組成物として用いることが好ましい。
特に、誘電率が低い絶縁層を得ることができるという利点を活用して、この樹脂組成物は、高周波回路基板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(高周波回路基板の絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。中でも、この樹脂組成物は、高周波回路基板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(高周波回路基板の層間絶縁層形成用の樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。ここで、「高周波回路基板」とは、高周波帯域の電気信号であっても動作させることができる回路基板を意味する。また、「高周波帯域」とは、通常1GHz以上の帯域を意味し、上記の樹脂組成物は特に28GHz〜80GHzの帯域において有効である。
また、誘電率が低い絶縁層は、回路基板の低背化に貢献できるので、薄い回路基板が求められる用途に好適である。さらに、誘電率が低い絶縁層は、回路基板のインピーダンスコントロールを容易にすることから、回路基板の設計自由度を高めるために好適である。このような観点から、樹脂組成物の好適な用途を挙げると、例えば、携帯機器に用いられるマザーボード、ICパッケージ基板、カメラモジュール基板、指紋認証センサー用基板などの回路基板が挙げられる。具体例を挙げると、指紋認証センサーは、回路基板に含まれる絶縁層と、前記絶縁層上に形成された複数の電極と、絶縁被膜とをこの順に備えることがある。この指紋認証センサーでは、絶縁被膜上に置かれた指と電極と絶縁被膜とによって形成されるコンデンサの容量値が、指紋の凹部と凸部とで異なることを利用して、指紋の認証が行われる。このような指紋認証センサーにおいて、絶縁層を薄くできると、センサー自体の小型化が可能である。
また、本発明の樹脂組成物は、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
[14.接着フィルム]
上述した樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して、絶縁層の形成に使用することができる。しかし、工業的には、この樹脂組成物を含む樹脂組成物層を有する接着フィルムを用いて、絶縁層の形成に用いることが好ましい。接着フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含む。樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物で形成された層であり、「接着層」と呼ばれることがある。
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは60μm以下、中でも好ましくは50μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されなく、例えば1μm以上、5μm以上、10μm以上などでありうる。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられる。支持体としては、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という場合がある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」という場合がある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」という場合がある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」という場合がある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」という場合がある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」という場合がある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価で入手性に優れるのでポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用できる離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種類以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
支持体の厚さは、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
接着フィルムは、例えば、有機溶剤及び樹脂組成物を含む樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより、製造することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;を挙げることができる。有機溶剤は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施することができる。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように設定する。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。通常、樹脂組成物層は、樹脂ワニスの塗膜を半硬化した膜として得られる。
接着フィルムは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、接着フィルムにおいて、樹脂組成物層の支持体とは接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。接着フィルムが保護フィルムを有する場合、通常、接着フィルムは保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。また、接着フィルムは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
[15.プリプレグ]
絶縁層は、接着フィルムに代えて、プリプレグを用いて形成してもよい。プリプレグは、シート状繊維基材に樹脂組成物を含浸させて形成することができる。
プリプレグに用いられるシート状繊維基材は、特に限定されない。シート状繊維基材としては、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等の、プリプレグ用基材として用いられる任意の繊維基材を用いることができる。薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは700μm以下、特に好ましくは600μm以下である。導体層の形成にかかるめっきのもぐり深さを小さく抑える観点から、シート状繊維基材の厚さは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。シート状繊維基材の厚さの下限は、通常1μm以上であり、1.5μm以上又は2μm以上としてもよい。
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の方法により製造することができる。
プリプレグの厚さは、上述の接着フィルムにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。
[16.回路基板]
本発明の回路基板は、上述した樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む。一実施形態において、回路基板は、内層基板と、この内層基板に設けられた絶縁層とを備える。
「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材である。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等のコア基板を含むものが挙げられる。また、通常、内層基板は、コア基材の片面又は両面に、直接的または間接的に形成された導体層を備える。この導体層は、例えば電気的な回路として機能させるために、パターン加工されていてもよい。コア基板の片面または両面に回路として導体層が形成された内層基板は、「内層回路基板」と呼ばれることがある。また、回路基板を製造するために更に絶縁層及び導体層の少なくともいずれかが形成されるべき中間製造物も、用語「内層基板」に含まれる。回路基板が部品を内蔵する場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
内層基板の厚さは、通常50μm〜4000μmであり、回路基板の機械的強度の向上及び低背化(厚さの低減)の観点から、好ましくは200μm〜3200μmである。
内層基板には、その両側の導体層を相互に電気的に接続するために、一方の面から他方の面に至る1個以上のスルーホールが設けられていてもよい。また、内層基板は、受動素子等の更なる構成要素を備えていてもよい。
絶縁層は、樹脂組成物の硬化物の層である。この硬化物で形成された絶縁層は、特にビルドアップ方式による回路基板用、高周波回路基板用、ならびに携帯機器に用いられるマザーボード、ICパッケージ基板、カメラモジュール基板、および指紋認証センサー用基板などの回路基板用の絶縁層に好適に適用することができる。
回路基板は、絶縁層を、1層のみ有していてもよく、2層以上有していてもよい。回路基板が2層以上の絶縁層を有する場合には、導体層と絶縁層とが交互に積層されたビルドアップ層として設けることができる。
絶縁層の厚さは、通常20μm〜200μmであり、電気的特性の向上と回路基板の低背化の観点から、好ましくは50μm〜150μmである。
絶縁層には、回路基板が有する導体層同士を電気的に接続するための1個以上のビアホールが設けられていてもよい。
前記の絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成された層であるので、上述した樹脂組成物の硬化物の優れた特性を発揮できる。よって、回路基板の絶縁層は、好ましくは、絶縁層の誘電率を、前記樹脂組成物の特性の項において説明したのと同じ範囲に調整できる。また、誘電率は、実施例に記載の方法で測定できる。
回路基板は、例えば、接着フィルムを用いて、下記工程(I)及び工程(II)を含む製造方法により製造することができる。
(I)内層基板に、接着フィルムを、該接着フィルムの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程。
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程。
内層基板と接着フィルムとの積層は、例えば、支持体側から接着フィルムを内層基板に押圧しつつ加熱する加熱圧着工程により行うことができる。加熱圧着工程のための部材(「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を接着フィルムの支持体に直接的に押し当ててプレスするのではなく、内層基板の表面の凹凸に接着フィルムが十分に追随するように、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスすることが好ましい。
内層基板と接着フィルムとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施することができる。真空ラミネート法において、加熱圧着の温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃である。加熱圧着の圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaである。加熱圧着の時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材で支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂組成物層の平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着の条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層及び平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)との間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化の条件は、特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を任意に採用することができる。
樹脂組成物層の熱硬化条件は、例えば樹脂組成物の種類によっても異なる。樹脂組成物層の硬化温度は、通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)である。また、硬化時間は、通常5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)である。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を、硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化するのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
回路基板の製造方法は、更に、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層に粗化処理を施す工程、及び(V)導体層を形成する工程、を含んでいてもよい。これらの工程(III)〜工程(V)は、回路基板の製造に用いられる適切な方法に従って実施することができる。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)との間、又は工程(IV)と工程(V)との間のいずれの時点で実施してもよい。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程である。穴あけにより、絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の方法で実施することができる。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適切に決定することができる。
工程(IV)は、絶縁層に粗化処理を施す工程である。粗化処理の手順及び条件は、特に限定されず、回路基板の絶縁層を形成するに際して使用される任意の手順及び条件を採用できる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して、絶縁層を粗化処理することができる。
膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液が挙げられる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」が挙げられる。また、膨潤液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されない。膨潤処理は、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に絶縁層を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。
酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、酸化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和液としては、酸性の水溶液が好ましい。中和液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガンスP」が挙げられる。また、中和液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた絶縁層の処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた絶縁層を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(V)は、導体層を形成する工程である。導体層に用いられる材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層の形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましい。さらには、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又は、ニッケル・クロム合金の合金層;がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、通常3μm〜200μmであり、好ましくは10μm〜100μmである。
導体層は、例えば、接着フィルムの支持体として用いられた金属箔を利用して、これを直接的にパターニングして形成することができる。また、導体層は、例えば、めっきにより形成することができる。めっきによる形成方法としては、例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の方法により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。中でも、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。
以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を説明する。まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応するようにめっきシード層の一部分を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
導体層は、例えば、金属箔を使用して形成してもよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好ましい。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施できる。積層の条件は、工程(I)における内層基板と接着フィルムとの積層条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の方法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の方法により製造できる。金属箔の市販品としては、例えば、JX金属社製のHLP箔、JXUT−III箔、三井金属鉱山社製の3EC−III箔、TP−III箔等が挙げられる。
回路基板が2層以上の絶縁層及び導体層(ビルドアップ層)を備える場合には、上述した絶縁層の形成工程及び導体層の形成工程をさらに1回以上繰り返して実施することにより、回路として機能できる多層配線構造を備える回路基板を製造することができる。
他の実施形態において、回路基板は、接着フィルムに代えてプリプレグを用いて製造することができる。プリプレグを用いる製造方法は、基本的に、接着フィルムを用いる場合と同様である。
[17.半導体装置]
半導体装置は、前記の回路基板を備える。この半導体装置は、回路基板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
半導体装置は、例えば、回路基板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「回路基板における電気信号を伝送することができる箇所」であって、その箇所は回路基板の表面であっても、回路基板内に埋め込まれた箇所であっても構わない。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子を任意に用いることができる。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能する任意の方法を採用できる。半導体チップの実装方法としては、例えば、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップを回路基板に直接的に埋め込み、半導体チップと回路基板の配線とを接続させる実装方法」を意味する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
[実施例1]
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187、三菱ケミカル社製「jER828US」)18部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱ケミカル社製「YX4000HK」)10部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量276、日本化薬社製「NC3000」)30部、ナフトール型エポキシ樹脂(エポキシ当量332、新日鉄住金化学社製「ESN475V」)10部、水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(エピスルフィド当量220、三菱ケミカル社製「YL7007」)2.0部、及び、フェノキシ樹脂(不揮発成分30質量%のメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1溶液、三菱ケミカル社製「YL7553BH30」)20部を、メチルエチルケトン60部及びシクロヘキサノン20部に撹拌しながら加熱溶解させて、樹脂溶液を得た。
この樹脂溶液へ、活性エステル硬化剤(活性基当量223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液、DIC社製「HPC8000−65T」)15部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック型硬化剤(フェノール当量151、不揮発成分50質量%の2−メトキシプロパノール溶液、DIC社製「LA3018−50P」)25部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のメチルエチルケトン溶液)4部、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM573」)で表面処理した球状シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm)100部、及び、ポリテトラフルオロエチレン粒子(ダイキン工業社製「ルブロンL−2」、平均粒径3μm)80部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを得た。
支持体として、表面にアルキド樹脂系の離型層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm、リンテック社製「AL5」)を用意した。この支持体上に、前記の樹脂ワニスを、ダイコーターを用いて均一に塗布した。塗布された樹脂ワニスを、80℃〜120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて樹脂組成物層を形成し、支持体及び樹脂組成物層を有する接着フィルムを得た。樹脂組成物層の厚さは20μm、樹脂組成物中の残留溶剤量は約2質量%であった。
次いで、樹脂組成物層の表面に、厚さ15μmのポリプロピレンフィルムを貼り合わせながら、接着フィルムをロール状に巻き取った。巻き取られた接着フィルムを幅507mmにスリットして、507mm×336mmサイズのシート状の接着フィルムを得た。
[実施例2]
水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(三菱ケミカル社製「YL7007」)の量を、2.0部から10部に変更した。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828US」)の量を、18部から10部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[実施例3]
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」)30部を、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量260、DIC社製「HP6000」)27部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[実施例4]
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」)30部を、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量260、DIC社製「HP6000」)20部及びナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC社製「HP4700」)5部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[実施例5]
活性エステル硬化剤(不揮発成分65質量%のトルエン溶液、DIC社製「HPC8000−65T」)15部及びトリアジン骨格含有クレゾールノボラック型硬化剤(不揮発成分50質量%の2−メトキシプロパノール溶液、DIC社製「LA3018−50P」)25部を、ナフトール型硬化剤(水酸基当量215、新日鉄住金化学社製「SN485」)15部及びトリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、不揮発成分60%のメチルエチルケトン溶液、DIC社製「LA7054」)12部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[実施例6]
樹脂ワニスに、更にN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM573」)2部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[比較例1]
水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(三菱ケミカル社製「YL7007」)の量を、2.0部から0部に変更した。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828US」)の量を、18部から20部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[比較例2]
水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(三菱ケミカル社製「YL7007」)の量を、2.0部から0部に変更した。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828US」)の量を、18部から20部に変更した。さらに、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、不揮発成分5質量%のメチルエチルケトン溶液)の量を、4部から20部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[比較例3]
水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(三菱ケミカル社製「YL7007」)の量を、2.0部から0部に変更した。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828US」)の量を、18部から20部に変更した。さらに、樹脂ワニスに、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM573」)2部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と全く同様にして、樹脂ワニス及び接着フィルムを製造した。
[誘電率の測定]
表面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「PET501010」)を用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルム上に、実施例及び比較例において得られた樹脂ワニスを、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが50μmとなるように、ダイコーターを用いて均一に塗布した。塗布された樹脂ワニスを、80℃〜110℃(平均95℃)で6分間乾燥して、樹脂組成物層を得た。その後、樹脂組成物層を200℃で90分間熱処理して硬化させ、支持体を剥離することで、樹脂組成物の硬化物で形成された硬化物フィルムを得た。該硬化物フィルムを長さ80mm、幅2mmに切り出し、評価サンプルを得た。
この評価サンプルについて、分析装置(アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)社製「HP8362B」)を用いた空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、樹脂組成物の硬化物の誘電率を測定した。測定は、2本の試験片について行い、その平均値を算出した。
[樹脂フロー量の測定]
内層基板(ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板、銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、松下電工社製「R5715ES」)を用意した。実施例及び比較例で製造した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製の2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接するように、内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより、実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて、60秒間熱プレスを行った。
その後、内層基板にラミネートされた接着フィルムの端部を観察した。図1は、実施例において内層基板200にラミネートされた接着フィルム100の端部周辺を模式的に示す上面図である。前記の観察の結果、図1に示すように、接着フィルム100の樹脂組成物層110が、接着フィルム100の支持体120の縁120Eよりも外に、はみ出している様子が見られた。前記の樹脂組成物層110のはみ出しは、ラミネート時に流動化した樹脂組成物層110が、内層基板200の表面200Uに平行な面内方向に流出して形成されたものである。そこで、接着フィルム100の支持体120の縁120Eから、はみ出した樹脂組成物層110の先端部110Tまでの距離Wを測定して、この距離Wを樹脂フロー量として求めた。そして、樹脂フロー量が3mm以下のものを「○」と判定し、樹脂フロー量が3mmより大きいものを「×」と判定した。
[保存安定性の評価]
(1)内層基板の下地処理:
IPC MULTI−PURPOSE TEST BOARD NO. IPC B−25のパターン(ライン/スペース=175/175μmの櫛歯パターン(残銅率50%))を形成された銅箔を表面に有する内層基板(ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板、銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.8mm、松下電工社製「R5715ES」)を用意した。この内層基板の両面を、エッチング剤(メック社製「CZ8100」)にて1μmエッチングして、銅箔の表面の粗化処理を行った。
(2)初期アンジュレーションの測定:
試料としての実施例及び比較例で製造した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製の2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の内層基板と接するように、内層基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
その後、ラミネートされた接着フィルムを100℃で30分、さらに180℃で30分加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。その後、接着フィルムの支持体を剥離した。これにより、絶縁層、内層基板及び絶縁層をこの順に備える評価基板を得た。
前記の評価基板を、200mm×200mmの試験片に切断した。得られた試験片の表面状態を、光干渉型表面粗度表面形状測定装置(日本Veeco社製「Wyko NT9300」)を用いて観察して、アンジュレーションを測定した。ここで、アンジュレーションとは、絶縁層の表面の最大高さと最小高さとの差を表す。こうして測定されたアンジュレーションを、以下「初期アンジュレーション」ということがある。この初期アンジュレーションが2μm未満の場合を「○」と判定し、2μm以上を「×」と判定した。
(3)保存安定性試験後のアンジュレーションの測定:
実施例及び比較例で製造した接着フィルムを、温度23℃、湿度85%RHで3日間保管して、保存安定性試験用の接着フィルムを得た。この保存安定性試験用の接着フィルムを試料として用いたこと以外は、前記の初期アンジュレーションの測定方法と同じ方法で、アンジュレーションを測定した。こうして測定されたアンジュレーションを、以下「保存安定試験後のアンジュレーション」ということがある。この保存安定試験後のアンジュレーションが2μm未満の場合を「○」と判定し、2μm以上を「×」と判定した。
(4)保存安定性の評価:
初期のアンジュレーションが「○」であり、且つ、保存安定試験後のアンジュレーションが「○」の場合は、保存安定性を「○」と判定した。
初期のアンジュレーションが「○」であり、且つ、保存安定試験後のアンジュレーションが「×」の場合は、保存安定性を「×」と判定した。
[結果]
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、各成分の量は、不揮発成分の質量部を表す。また、下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
828US:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187、三菱ケミカル社製「jER828US」)。
YX4000HK:ビキシレノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、三菱ケミカル社製「YX4000HK」)。
NC3000:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(エポキシ当量276、日本化薬社製「NC3000」)。
HP6000:ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ当量260、DIC社製「HP6000」)。
HP4700:ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(エポキシ当量163、DIC社製「HP4700」)。
ESN475V:ナフトール型エポキシ樹脂(エポキシ当量332、新日鉄住金化学社製「ESN475V」)。
HPC8000−65T:活性エステル硬化剤(活性基当量223、不揮発成分65質量%のトルエン溶液、DIC社製「HPC8000−65T」)。
SN485:ナフトール型硬化剤(水酸基当量215、新日鉄住金化学社製「SN485」)。
LA3018−50P:トリアジン骨格含有クレゾールノボラック型硬化剤(フェノール当量151、不揮発成分50質量%の2−メトキシプロパノール溶液、DIC社製「LA3018−50P」)。
LA7054:トリアジン含有フェノールノボラック樹脂(水酸基当量125、不揮発成分60%のメチルエチルケトン溶液、DIC社製「LA7054」)。
YL7007:水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物(エピスルフィド当量220、三菱ケミカル社製「YL7007」)。
ルブロンL−2:ポリテトラフルオロエチレン粒子(ダイキン工業社製「ルブロンL−2」、平均粒径3μm)。
SO−C2:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM573」)で表面処理した球状シリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、平均粒径0.5μm)。
YL7553BH30:フェノキシ樹脂(不揮発成分30質量%のメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1溶液、三菱ケミカル社製「YL7553BH30」)。
DMAP:硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、不揮発成分5質量%のメチルエチルケトン溶液)。
KBM573:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM573」)
[検討]
表1から分かるように、いずれの実施例でも、低い誘電率が得られている。この結果から、本発明の樹脂組成物により、誘電率が低い絶縁層が得られることが確認された。
また、比較例1及び3から分かるように、(D)フッ素系充填材を用いた場合、樹脂フロー量が大きくなる。これに対し、比較例2のように、(H)硬化促進剤を多く用いて樹脂組成物の熱硬化の際の硬化速度を速めると、樹脂フロー量を低減することは可能である。しかし、このように(H)硬化促進剤によって樹脂フロー量を低減できる程度に硬化速度を高めると、保存安定性が低下する。そのため、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上との両方を達成することは、従来、困難であった。
しかし、本発明の実施例では、表1に示されるように、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)エピスルフィド化合物、及び(D)フッ素系充填材を組み合わせて用いたことで、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上との両方が達成されている。よって、実施例の結果から、本発明により、誘電率が低い絶縁層を得ることができ、且つ、樹脂フローの抑制と保存安定性の向上との両方を達成可能な樹脂組成物を提供できることが確認された。
また、前記の実施例において、(E)成分〜(H)成分を用いない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。