以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(第1の実施の形態)
図1〜図9を用いて、本発明の第1の実施の形態における発電素子について説明する。本実施の形態における発電素子は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う素子である。
図1に、本発明の第1の実施の形態における発電素子の全体構成を斜視図で示し、図2に、図1のA−A線断面図を示す。図1および図2に示すように、本実施の形態による発電素子1は、枠状に形成された支持枠体10と、支持枠体10の内側に設けられた振動体20と、振動体20を支持枠体10に支持させる第1橋梁部30および第2橋梁部35と、を備えている。このうち、支持枠体10は、平面視で矩形枠状に形成されている。そして支持枠体10は、振動体20に対して第1の側(X軸正側)に配置された第1枠体部分11と、振動体20に対して第1の側とは反対の第2の側(X軸負側)に配置された第2枠体部分12と、を有している。ここで平面視とは、図1に示すZ軸方向において見た状態であって、発電素子1を図2に示す姿勢にしたときに上方から見た状態を意味する。また、説明を明瞭にするために、図1に示すようにXYZ座標系を定義し、Z軸方向が上下方向となるように発電素子1を配置した状態で以下の説明を行う。このため、本実施の形態における発電素子1は、Z軸方向を上下方向とした姿勢で使用されることに限られることはない。
第1橋梁部30は、振動体20の後述する重錘体21に対して支持枠体10の第1枠体部分11の側に配置されており、重錘体21と第1枠体部分11とを連結している。より具体的には、第1橋梁部30のX軸正側端部31(根端部)が、第1枠体部分11に連結され、第1橋梁部30のX軸負側端部32(先端部)が、重錘体21に連結されている。このようにして、第1橋梁部30は、重錘体21と第1枠体部分11との間でX軸方向に直線状に延びており、重錘体21を第1枠体部分11に支持させている。なお、X軸正側とは、図1に記されたX軸を示す矢印の向く方向を意味し、X軸負側とは、X軸正側とは反対を向く方向を意味するものとして用いている。後述するY軸正側、Y軸負側、Z軸正側、Z軸負側についても同様である。
第2橋梁部35は、重錘体21に対して支持枠体10の第2枠体部分12の側に配置されており、重錘体21と第2枠体部分12とを連結している。より具体的には、第2橋梁部35のX軸正側端部36(先端部)が、重錘体21に連結され、第2橋梁部35のX軸負側端部37(根端部)が、第2枠体部分12に連結されている。このようにして、第2橋梁部35は、重錘体21と第2枠体部分12との間で、第1橋梁部30にX軸方向に直線状に延びており、第2橋梁部35は、重錘体21を第2枠体部分12に支持させている。
第1橋梁部30および第2橋梁部35は、X軸方向に沿って整列しており、一直線上に配置されている。すなわち、第1橋梁部30および第2橋梁部35は、重錘体21のY軸方向に延びる中心軸線LYを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されている。このようにして、本実施の形態による発電素子1は、両持ち梁構造を有するようになっている。
本実施の形態による振動体20は、直方体状に形成された重錘体21と、重錘体21の上面(Z軸正側の面)に設けられた重錘体支持部22と、を有している。このうち重錘体支持部22は、第1橋梁部30から重錘体21の上面に延びており、第1橋梁部30および第2橋梁部35に一体に連続して形成されている。重錘体支持部22は、重錘体21の上面の全体に形成されており、重錘体21は、重錘体支持部22の下面(Z軸負側の面)に接合されて、重錘体支持部22に支持されている。このような構成により、重錘体21は、重錘体支持部22を介して第1橋梁部30のX軸負側端部32および第2橋梁部35のX軸正側端部36に連結され、重錘体支持部22を介して各橋梁部30、35に支持されている。
重錘体21の下面は、図2に示すように、支持枠体10の下面よりも上方に位置付けられている。重錘体21は、後述する筐体15の底板17に当接するまで、下方(Z軸負側)に変位可能になっている。
また、支持枠体10の上面には、橋梁支持部13が設けられている。この橋梁支持部13は、第1橋梁部30および第2橋梁部35に一体に連続して形成されており、支持枠体10の上面の全体に形成されている。橋梁支持部13は、支持枠体10の上面に接合されており、各橋梁部30、35は、橋梁支持部13を介して支持枠体10に支持されている。
図1に示すように、本実施の形態による発電素子1は、振動体20の変位時に電荷を発生させる圧電素子40(電荷発生素子)を更に備えている。圧電素子40は、図1および図2に示すように、各橋梁部30、35上に設けられた下部電極層41と、下部電極層41上に設けられた圧電材料層42と、圧電材料層42上に設けられた複数の上部電極層E11、E12、E21、E22と、を含んでいる。すなわち圧電材料層42が、下部電極層41と上部電極層E11、E12、E21、E22との間に設けられている。本実施の形態では、下部電極層41は、第1橋梁部30の上面の全体、重錘体支持部22の上面の全体、第2橋梁部35の上面の全体および橋梁支持部13の上面全体に設けられており、一体に形成されている。なお、橋梁支持部13の上面には、下部電極層41は設けられていなくてもよい。圧電材料層42は、下部電極層41の上面の全体に設けられている。図1では、図面を簡略化するために、下部電極層41および圧電材料層42は省略している。
上部電極層E11、E12、E21、E22は、各橋梁部30、35のうち重錘体21の変位時に応力が発生する位置(橋梁部自体が変形する位置)に配置されていることが好適である。図1に示す形態では、第1橋梁部30の上方(Z軸正側)に2つの上部電極層E11、E12が配置されており、X軸方向において互いに異なる位置に2つの上部電極層E11、E12が配置されている。第2橋梁部35の上方には2つの上部電極層E21、E22が配置されており、X軸方向において互いに異なる位置に2つの上部電極層E21、E22が配置されている。これら4つの上部電極層E11、E12、E21、E22は、電気的に互いに独立している。しかしながら、各橋梁部30、35に配置される上部電極層の個数や配置などは、任意であり、後述する図14に示すように、各橋梁部30、35の上方に4つの上部電極層が設けられるようにしてもよい。また、後述する図17に示すように、圧縮応力と引張応力とを同時に受けることによって電荷がキャンセルされることを回避できれば、各橋梁部30、35の上方に2つの上部電極層E11’ 、E12’が設けられ、上部電極層E11’ 、E12’がY軸方向において互いに異なる位置に配置されるようにしてもよい。さらに、後述する図18に示すように、圧縮応力と引張応力とを同時に受けることによって電荷がキャンセルされることを回避できれば、各橋梁部30、35の上方に1つの上部電極層E1が配置されるようにしてもよい。
図3に、図1に示す発電素子の製造方法において、発電素子を製造するために用いられるSOI基板の断面図を示す。発電素子1は、例えば、図3に示すSOI基板50をエッチング処理することにより製造することができる。SOI基板50は、シリコンベース層51と、シリコンベース層51上に設けられた酸化シリコン層52と、酸化シリコン層52上に設けられたシリコン活性層53と、を備えており、3層構造を有する積層基板になっている。このようなSOI基板50は、様々な半導体デバイスを製造するための材料として用いられている。各層の厚みは特に限られることはないが、例えば、シリコンベース層51の厚みは、625〜725μmであり、酸化シリコン層52の厚みは、1μmであり、シリコン活性層53の厚みは10〜15μmである。
エッチング処理時には、SOI基板50の上方からのエッチングにより、シリコン活性層53が、第1橋梁部30、第2橋梁部35、重錘体支持部22および橋梁支持部13を形成する部分が残存するように、不要な部分がエッチングによって除去される。この際、酸化シリコン層52はエッチングストッパーとして機能する。
また、SOI基板50の下方からのエッチングにより、シリコンベース層51が、支持枠体10および重錘体21を形成する部分が残存するように、不要な部分がエッチングによって除去される。この際においても、酸化シリコン層52はエッチングストッパーとして機能する。また、シリコンベース層51のうち重錘体21を形成する部分においては、シリコンベース層51を部分的にエッチングする(ハーフエッチングする)ことが好ましい。このことにより、重錘体21の下面を、支持枠体10の下面よりも上方に位置づけることができる。
次に、シリコン活性層53およびシリコンベース層51のエッチングにより酸化シリコン層52の露出された部分がエッチングで除去される。このようにして、図4に示すような、発電素子1の構造が得られる。図4は、図1に示す発電素子の製造方法において、図3に示すSOI基板をエッチングして得られた発電素子の断面図を示している。ここでは、支持枠体10および重錘体21が、シリコンベース層51および酸化シリコン層52によってそれぞれ形成されている。第1橋梁部30、第2橋梁部35、重錘体支持部22および橋梁支持部13は、シリコン活性層53によって形成されているが、シリコン活性層53と酸化シリコン層52とによって形成されるようにしてもよい。
その後、シリコン活性層53上に、圧電素子40を構成する下部電極層41、圧電材料層42および上部電極層E11、E12、E21、E22が、この順番で形成される。このようにして、本実施の形態による発電素子1を製造することができる。なお、発電素子1の製造方法は、上述した方法に限られることはない。
図1に示すように、本実施の形態による発電素子1は、発電回路55を更に備えている。この発電回路55は、圧電素子40により発生した電荷に基づく電流を整流して電力を取り出して、負荷ZL(図15参照)に供給するように構成されている。発電回路55は、後述する図15に示すように、整流素子(ダイオード)、平滑用の容量素子(コンデンサ)を用いて構成することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
図5に、筐体15を備えた図1の発電素子1の断面図を示す。上述した支持枠体10は、筐体15の一部を構成する部材になっている。すなわち、筐体15は、支持枠体10と、支持枠体10の上方に設けられた凹状の天板16と、支持枠体10の下方に設けられた凹状の底板17と、を有している。天板16および底板17は、支持枠体10とは別個に作製されており、天板16は、上述した橋梁支持部13、下部電極層41および圧電材料層42を介して支持枠体10の上面に接合され、底板17は、支持枠体10の下面に接合されている。このような構成の筐体15に、第1橋梁部30、第2橋梁部35および重錘体21が収容されている。
筐体15の天板16は、支持枠体10の内側の領域を上方から覆うように形成されている。天板16は、重錘体21が重錘体支持部22を介して当接可能に構成されており、重錘体21の上方への変位を規制するストッパーとしての機能を有している。重錘体21がニュートラル位置にあるときには天板16は重錘体支持部22に所定の距離d1を隔てて離間しており、重錘体21は、重錘体支持部22が天板16に当接するまで上方へ変位可能になっている。ここで、ニュートラル位置とは、重錘体に重力を含む加速度が加えられていない状態、すなわち、第1橋梁部30および第2橋梁部35が撓んでいない場合における重錘体21の位置を意味している。
筐体15の底板17は、支持枠体10の内側の領域を下方から覆うように形成されている。底板17は、重錘体21が当接可能に構成されており、重錘体21の下方への変位を規制するストッパーとしての機能を有している。重錘体21がニュートラル位置にあるときには、底板17は重錘体21に所定の距離d2を隔てて離間しており、重錘体21は、底板17に当接するまで下方へ変位可能になっている。
図6に、外装パッケージ60を備えた図5の発電素子1の断面図を示す。図6に示す発電素子1では、筐体15が、外装パッケージ60に収容されている。上述した発電回路55は、この外装パッケージ60に設けられていることが好適である。この場合、筐体15に設けられたボンディングパッド18と、外装パッケージ60に設けられたボンディングパッド61とが、ボンディングワイヤ62で接続される。ここで、筐体15には、上部電極層E11、E12、E21、E22の個数と下部電極層41の個数を合計した個数のボンディングパッドが設けられている。外装パッケージ60にも、筐体15に設けられたボンディングパッド18の個数と同数のボンディングパッド61が設けられている。外装パッケージ60の内部空間は、空洞であってもよく、または樹脂等で充填されていてもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図1に示す発電素子1に上下方向(Z方向)の外部振動が与えられると、重錘体21に上下方向の加速度が加わり、重錘体21が重錘体支持部22とともに上下方向に変位し、第1橋梁部30および第2橋梁部35が撓んで変形する。加速度が大きい場合には、重錘体21が重錘体支持部22を介して天板16に当接したり、底板17に当接したりする。このようにして、重錘体21の上下方向の変位が規制され、第1橋梁部30および第2橋梁部35の塑性変形や破損の防止が図られている。
第1橋梁部30および第2橋梁部35が撓んでいる間、各橋梁部30、35には応力が発生する。応力が発生すると、圧電材料層42のうち各橋梁部30、35の上方に配置された部分において、発生した応力に相応する電荷が発生する。
ここで、図7に示す片持ち梁構造を有する発電素子100との違いについて図7〜図9を用いて説明する。図7は、比較例としての発電素子の全体構成を示す斜視図である。図7に示す発電素子100は、図1に示す発電素子1に対して、第1橋梁部30が取り除かれて、重錘体21が第2橋梁部35によって支持された片持ち梁構造を有している。図7に示す発電素子100の重錘体21が下方に変位した場合の第2橋梁部35の撓みの状態を、図8に簡略化したモデルで示す。図1に示す発電素子1の重錘体21が下方に変位した場合の第1橋梁部30および第2橋梁部35の撓みの状態を、図9に簡略化したモデルで示す。
図7に示す発電素子100の重錘体21は、1つの橋梁部(第2橋梁部35)によって支持枠体10に支持されているため、図8に示すように、重錘体21の変位δOは比較的大きくなる。一方、重錘体21の下方への変位は、上述したように筐体15の底板17によって規制されている。このことにより、重錘体21の変位が小さい場合には、重錘体21は底板17に当接することはないが、重錘体21が受けた力が大きくなると重錘体21は底板17に当接する。すなわち、片持ち梁構造のために重錘体21が変位しやすくなっており、その結果として、加速度がそれほど大きくなくても重錘体21が底板17に当接しやすくなっている。この場合、重錘体21が受けた力が底板17に逃げてしまい、第2橋梁部35に発生する応力が低減する。このため、重錘体21に与えられた振動エネルギーの一部が喪失されて、圧電素子40から発生する電荷が低減するという問題がある。
これに対して図1に示す発電素子1の重錘体21は、第1橋梁部30および第2橋梁部35によって支持枠体10に支持されているため、図9に示すように、重錘体21の変位δを小さくすることができる。すなわち、図8に示す重錘体21に加えられる加速度と、図9に示す重錘体21に加えられる加速度が同一の場合であっても、図9に示す重錘体21の方が変位を小さくすることができる。このことにより、重錘体21が筐体15の底板17に当接することなく変位可能な加速度範囲を、拡大することができ、より広い加速度範囲で重錘体21が底板17に当接することを回避できる。このため、重錘体21が受けた力が底板17に逃げることを抑制し、第1橋梁部30および第2橋梁部35に発生する応力を増大させることができる。この結果、重錘体21に与ええられる振動エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換させることができ、圧電素子40から発生する電荷を増大させることができる。
発生した電荷は、圧電素子40の上部電極層E11、E12、E21、E22から発電回路55(図15参照)に供給され、発電回路55によって平滑化される。平滑化された電力は、負荷ZLに供給される。より具体的には、第1橋梁部30に発生した応力によって上部電極層E11、E12において電荷が発生する。図9に示すように、上部電極層E11は、第1橋梁部30のうち圧縮応力が発生する位置に配置されており、上部電極層E12は、第1橋梁部30のうち引張応力が発生する位置に配置されている。このため、1つの上部電極層が圧縮応力と引張応力とを同時に受けることによって電荷がキャンセルされることを回避でき、第1橋梁部30の応力から効率良く電荷を発生させることができる。同様に、第2橋梁部35に発生した応力によって、上部電極層E21、E22において効率良く電荷を発生させることができる。
ところで、本実施の形態による発電素子1が発電可能な外部振動の振動方向は、上下方向(Z軸方向)に限られることはなく、3軸発電を行うことが可能になっている。
例えば、X軸方向への外部振動が加えられた場合には、重錘体21が、XZ平面において回動するようになる。例えば、重錘体21にX軸正側への加速度が加えられる場合には、重錘体21の下端部がX軸正側に振れるように重錘体21は回動する。このことにより、第1橋梁部30および第2橋梁部35に撓みが生じ、応力が発生して、圧電素子40から電荷を発生させることができる。X軸方向の外部振動が加えられる場合には、図1に示すように上部電極層E11、E12、E21、E22を配置することで、効率良く電荷を発生させることができる。
また、Y軸方向への外部振動が加えられる場合には、重錘体21が、YZ平面において回動するようになる。例えば、重錘体21にY軸正側への加速度が加えられた場合には、重錘体21の下端部がY軸正側に振れるように重錘体21は回動する。このことにより、第1橋梁部30および第2橋梁部35に撓みが生じ、応力が発生して、圧電素子40から電荷を発生させることができる。Y軸方向の外部振動が加えられる場合には、後述する図14に示すように、各橋梁部30、35の上方に4つの上部電極層がそれぞれ配置されることが好ましい。このことにより、各橋梁部30、35で発生する応力によって、効率良く電荷を発生させることができる。
このようにX軸方向およびY軸方向への外部振動が加えられた場合においても、重錘体21が第1橋梁部30および第2橋梁部35によって支持枠体10に支持されているため、重錘体21の変位を小さくすることができる。
このように本実施の形態によれば、支持枠体10の内側に設けられた重錘体21が、支持枠体10の第1枠体部分11に第1橋梁部30によって支持されるとともに、支持枠体10の第2枠体部分12に第2橋梁部35によって支持されている。このことにより、外部振動が加えられた場合の重錘体21の変位量を抑制することができ、より広い加速度範囲で、重錘体21が筐体15の天板16や底板17に当接することを回避できる。このため、重錘体21が受けた力が天板16や底板17に逃げることを抑制し、第1橋梁部30および第2橋梁部35に発生する応力を増大させて、圧電素子40から発生する電荷を増大させることができる。この結果、重錘体21の変位を抑制することができるとともに発電量を増大させることができる。
また、本実施の形態によれば、重錘体21が第1橋梁部30および第2橋梁部35によって支持されているため、第1橋梁部30および第2橋梁部35に反りが発生することを抑制できる。ここで、図7に示すように、発電素子100が片持ち梁構造を有する場合には、第2橋梁部35上に下部電極層41、圧電材料層42および上部電極層E21、E22が積層されているために、各層の線膨張係数の相違によって第1橋梁部30に反りが発生し得る。第2橋梁部35のX軸正側端部36は自由端になっていることから、この反りは大きくなる場合がある。この場合には、半導体製造装置に入らなくなり、製造工程上好ましくない。これに対して、本実施の形態による発電素子1は、両持ち梁構造を有しているため、第1橋梁部30および第2橋梁部35に発生する反りを低減することができ、製造上有利である。
なお、上述した本実施の形態においては、上部電極層が、第1橋梁部30の上面および第2橋梁部35の上面にそれぞれ設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上部電極層は、第1橋梁部30に設けられていなくてもよく、または、第2橋梁部35に設けられていなくてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、電荷発生素子として圧電素子40を用いる例について説明した。しかしながら、振動体20の変位時に電荷を発生させることができれば、圧電素子40を用いることに限られることはなく、例えば、エレクトレットなどを用いてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、図10〜図18を用いて、本発明の第2の実施の形態における発電素子について説明する。
図10〜図18に示す第2の実施の形態においては、振動体が、第1橋梁部に連結された第1重錘体と、第2橋梁部に連結された第2重錘体と、第1重錘体と第2重錘体とを連結した第3橋梁部と、を有している点が主に異なり、他の構成は、図1〜図9に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図10〜図18において、図1〜図9に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図10に、本発明の第2の実施の形態における発電素子の上面図を示す。本実施の形態では、図10に示すように、振動体20は、2つの第1橋梁部30A、30Bと2つの第2橋梁部35A、35Bとによって支持枠体10に支持されている。そして、振動体20は、2つの第1橋梁部30A、30Bに連結された第1重錘体25と、対応する第2橋梁部35A、35Bに連結された2つの第2重錘体26A、26Bと、第1重錘体25と対応する第2重錘体26とを連結した2つの第3橋梁部70A、70Bと、を有している。各第2重錘体26A、26Bは、互いに離間しているとともに、第1重錘体25に対しても離間している。
本実施の形態では、平面視で、2つの第1橋梁部30A、30BのY軸方向両側に、第2重錘体26A、26Bおよび第2橋梁部35A、35Bがそれぞれ配置されている。各第3橋梁部70A、70Bは、Y軸方向において、隣り合う第1橋梁部30A、30Bと、隣り合う第2橋梁部35A、35Bとの間にそれぞれ配置されている。より具体的には、一方の第1橋梁部30AがY軸正側に配置され、他方の第1橋梁部30BがY軸負側に配置されている。一方の第2橋梁部35Aが、Y軸正側に配置された第1橋梁部30AよりもY軸正側に配置されている。他方の第2橋梁部35Bは、Y軸負側に配置された第2橋梁部35BよりもY軸負側に配置されている。一方の第3橋梁部70Aは、Y軸正側に配置された第1橋梁部30Aと、Y軸正側に配置された第2橋梁部35Aとの間に配置されている。他方の第3橋梁部70Bは、Y軸負側に配置された第1橋梁部30Bと、Y軸負側に配置された第2橋梁部35Bとの間に配置されている。第3橋梁部70A、70Bの各々は、隣り合う第1橋梁部30A、30Bから離間しているとともに、隣り合う第2橋梁部35A、35Bからも離間している。
支持枠体10は、第1枠体部分11と第1橋梁部30A、30Bとの間に介在された突出部14を有している。突出部14は、第1枠体部分11から第1橋梁部30A、30Bに向かってX軸負側に突出した部分である。
2つの第1橋梁部30A、30Bは、第1重錘体25に対して支持枠体10の第1枠体部分11の側に配置されており、第1重錘体25と第1枠体部分11とを連結している。より具体的には、第1橋梁部30A、30BのX軸正側端部31A、31Bが、突出部14を介して第1枠体部分11に連結され、第1橋梁部30A、30BのX軸負側端部32A、32Bが、第1重錘体25に連結されている。第1橋梁部30A、30Bは、第1重錘体25と突出部14との間で、X軸方向に直線状に延びており、第1重錘体25を突出部14を介して第1枠体部分11に支持させている。
第2橋梁部35A、35Bは、対応する第2重錘体26A、26Bに対して支持枠体10の第2枠体部分12の側に配置されており、第2重錘体26A、26Bと第2枠体部分12とを連結している。より具体的には、第2橋梁部35A、35BのX軸正側端部36A、36Bが、対応する第2重錘体26A、26Bに連結され、第2橋梁部35A、35BのX軸負側端部37A、37Bが、第2枠体部分12に連結されている。第2橋梁部35A、35Bは、第2重錘体26A、26Bと第2枠体部分12との間で、第1橋梁部30A、30Bに沿ってX軸方向に直線状に延びており、第2重錘体26A、26Bを第2枠体部分12に支持させている。
第3橋梁部70A、70Bは、X軸方向において、第1重錘体25と対応する第2重錘体26A、26Bとの間に配置されており、第1重錘体25と対応する第2重錘体26A、26Bとを連結している。より具体的には、第3橋梁部70A、70BのX軸正側端部71A、71Bが、対応する第2重錘体26A、26Bに連結され、第3橋梁部70A、70BのX軸負側端部72A、72Bが、第1重錘体25に連結されている。第3橋梁部70A、70Bは、第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部35A、35Bに沿ってX軸方向に直線状に延びている。第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bは、互いに平行になっている。
第1重錘体25は、Y軸方向に延びるように形成されており、各第1橋梁部30A、30BのX軸負側端部32A、32Bおよび各第3橋梁部70A、70BのX軸負側端部72A、72Bに連結されている。第1重錘体25は、支持枠体10から離間している。
第1重錘体25の上面には、第1重錘体支持部27が設けられている。この第1重錘体支持部27は、各第1橋梁部30A、30Bから第1重錘体25の上面に延びており、第1橋梁部30A、30Bおよび第3橋梁部70A、70Bに一体に連続して形成されている。第1重錘体支持部27は、第1重錘体25の上面の全体に形成されており、第1重錘体25は、第1重錘体支持部27の下面に接合されて、第1重錘体支持部27に支持されている。このような構成により、第1重錘体25は、第1重錘体支持部27を介して第1橋梁部30A、30BのX軸負側端部32A、32Bおよび各第3橋梁部70A、70BのX軸負側端部72A、72Bに連結されている。このようにして、第1重錘体25は、第1重錘体支持部27を介して第1橋梁部30A、30Bおよび第3橋梁部70A、70Bに支持されている。
図11に、図10のB−B線断面図を示し、図12に、図10のC−C線断面図を示す。第1重錘体25の下面は、図11および図12に示すように、支持枠体10の下面よりも上方に位置付けられている。第1重錘体25は、後述する筐体15の底板17に当接するまで、下方に変位可能になっている。
図10に示すように、第2重錘体26A、26Bは、Y軸方向に延びるように形成されており、対応する第2橋梁部35A、35BのX軸正側端部36A、36Bおよび対応する第3橋梁部70A、70BのX軸正側端部71A、71Bに連結されている。第2重錘体26A、26Bは、支持枠体10から離間している。
第2重錘体26A、26Bの上面には、第2重錘体支持部28A、28Bが設けられている。この第2重錘体支持部28A、28Bは、対応する第2橋梁部35A、35Bから第2重錘体26A、26Bの上面に延びており、対応する第2橋梁部35A、35Bおよび対応する第3橋梁部70A、70Bに一体に連続して形成されている。第2重錘体支持部28A、28Bは、第2重錘体26A、26Bの上面の全体に形成されており、第2重錘体26A、26Bは、第2重錘体支持部28A、28Bの下面に接合されて、第2重錘体支持部28A、28Bに支持されている。このような構成により、第2重錘体26A、26Bは、第2重錘体支持部28A、28Bを介して、対応する第2橋梁部35A、35BのX軸正側端部36A、36Bおよび対応する第3橋梁部70A、70BのX軸正側端部71A、71Bに連結されている。このようにして、第2重錘体26A、26Bは、第2重錘体支持部28A、28Bを介して第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bに支持されている。
図13に、図10のD−D線断面図を示す。第2重錘体26A、26Bの下面は、図12および図13に示すように、支持枠体10の下面よりも上方に位置付けられている。第2重錘体26A、26Bは、後述する筐体15の底板17に当接するまで、下方に変位可能になっている。
また、支持枠体10の上面に設けられた橋梁支持部13は、第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部35A、35Bに一体に連続して形成されており、支持枠体10の上面の全体に形成されている。橋梁支持部13は、支持枠体10の上面に接合されており、各橋梁部30A、30B、35A、35Bは、橋梁支持部13を介して支持枠体10に支持されている。
図14に、図10の発電素子の各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70B上に設けられた圧電素子の一例の平面図を示す。図14に示すように、本実施の形態における圧電素子40は、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70B上に設けられた下部電極層41と、下部電極層41上に設けられた圧電材料層42と、圧電材料層42上に設けられた複数の上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bと、を含んでいる。このうち下部電極層41は、第1橋梁部30A、30Bの上面の全体、第2橋梁部35A、35Bの上面の全体、第3橋梁部70A、70Bの上面の全体、第1重錘体支持部27の上面の全体、第2重錘体支持部28A、28Bの上面の全体および橋梁支持部13の上面の全体に設けられており、一体に形成されている。橋梁支持部13の上面には、下部電極層41は設けられていなくてもよい。圧電材料層42は、下部電極層41の上面の全体に設けられている。図面を明瞭にするために、図10では、下部電極層41、圧電材料層42および上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bは省略し、図14では、下部電極層41および圧電材料層42を省略している。
上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bは、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bのうち各重錘体25、26A、26Bの変位時に応力が発生する位置(橋梁部自体が変形する位置)に配置されていることが好適である。図14に示す形態では、各第1橋梁部30A、30Bの上方に4つの上部電極層E11A〜E14A、E11B〜E14Bがそれぞれ配置されている。このうち上部電極層E11A、E12A、E11B、E12BがX軸正側に配置され、他の上部電極層E13A、E14A、E13B、E14Bが、X軸負側に配置されている。また、上部電極層E11A、E13A、E11B、E13Bが、Y軸正側に配置され、上部電極層E12A、E14A、E12B、E14Bが、Y軸負側に配置されている。上部電極層E11A〜E14A、E11B〜E14Bは、電気的に互いに独立している。
各第2橋梁部35A、35Bの上方には、4つの上部電極層E21A〜E24A、E21B〜E24Bがそれぞれ配置されている。このうち上部電極層E21A、E22A、E21B、E22BがX軸正側に配置され、他の上部電極層E23A、E24A、E23B、E24Bが、X軸負側に配置されている。また、上部電極層E21A、E23A、E21B、E23Bが、Y軸正側に配置され、上部電極層E22A、E24A、E22B、E24Bが、Y軸負側に配置されている。上部電極層E21A〜E24A、E21B〜E24Bは、電気的に互いに独立している。
各第3橋梁部70A、70Bの上方には、4つの上部電極層E31A〜E34A、E31B〜E34Bがそれぞれ配置されている。このうち上部電極層E31A、E32A、E31B、E32BがX軸正側に配置され、他の上部電極層E33A、E34A、E33B、E34Bが、X軸負側に配置されている。また、上部電極層E31A、E33A、E31B、E33Bが、Y軸正側に配置され、上部電極層E32A、E34A、E32B、E34Bが、Y軸負側に配置されている。上部電極層E31A〜E34A、E31B〜E34Bは、電気的に互いに独立している。
このような発電素子1は、図1に示す発電素子1と同様にして製造することができる。
図15に、図10の発電素子の発電回路の構成図を示す。本実施の形態による発電回路55は、例えば図15に示すような構成を有することができる。図15において、P11〜P34は、圧電材料層42のうち上部電極層E11A〜E34Aの下方に位置する部分に相当する。P11〜P34の左側に示す縦線は、共通の下部電極層41に相当し、P11〜P34の右側に示す縦線は、対応する上部電極層E11A〜E34Aに相当する。図15においては、図面を簡略化するために、一方の第1橋梁部30Aに対応する4つの上部電極層E11A〜E14Aと、一方の第2橋梁部35Aに対応する4つの上部電極層E21A〜E24Aと、一方の第3橋梁部70A、70Bに対応する4つの上部電極層E31A〜E34Aとに対応する圧電材料層42の部分として、P11〜P34が示されている。他方の第1橋梁部30Bに対応する4つの上部電極層E11B〜E14Bと、他方の第2橋梁部35Bに対応する4つの上部電極層E21B〜E24Bと、他方の第3橋梁部70A、70Bに対応する4つの上部電極層E31B〜E34Bとに対応する圧電材料層42の部分は省略されているが、これらの圧電材料層42の部分も、以下と同様にして電荷を取り出す回路を構成することができる。
発電回路500は、整流素子(ダイオード)と、平滑用の容量素子(コンデンサ)と、を有している。このうち整流素子D11(+)〜D34(+)は、それぞれ上部電極層E11A〜E34Aに発生した正電荷を取り出す機能を有している。また、整流素子D11(−)〜D34(−)は、それぞれ上部電極層E11A〜E34Aに発生した負電荷を取り出す機能を有している。
平滑用の容量素子Cfの正極端子(図15における上側の端子)に、整流素子D11(+)〜D34(+)によって取り出された正電荷が供給され、負極端子(図15における下側の端子)に、整流素子D11(−)〜D34(−)によって取り出された負電荷が供給される。この容量素子Cfは、発生した電荷の脈流を平滑化する機能を有している。また、容量素子Cfの両端子と下部電極層41との間には、整流素子として、互いに逆方向を向いた整流素子D41(+)、D41(−)が接続されている。
容量素子Cfに並列接続されているZLは、発電素子1によって発電された電力の供給を受ける機器の負荷を示している。負荷ZLには、整流素子D11(+)〜D34(+)で取り出された正電荷と、整流素子D11(−)〜D34(−)で取り出された負電荷とが供給される。したがって、原理的には、個々の瞬間において、各上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bに発生する正電荷の総量と負電荷の総量とが等しくなるようにすれば、発電効率の向上が可能になる。
したがって、図10に示す発電素子1の第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび振動体20は、第1重錘体25のX軸方向に延びる中心軸線LXを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましい。そして、第1橋梁部30Aの上方に配置された4つの上部電極層E11A〜E14Aは、第1橋梁部30AのX軸方向に延びる中心軸線LX1Aを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましく、第1橋梁部30Bの上方に配置された4つの上部電極層E11B〜E14Bは、第1橋梁部30BのX軸方向に延びる中心軸線LX1Bを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましい。また、第2橋梁部35Aの上方に配置された4つの上部電極層E21A〜E24Aは、第2橋梁部35AのX軸方向に延びる中心軸線LX2Aを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましく、第2橋梁部35Bの上方に配置された4つの上部電極層E21B〜E24Bは、第2橋梁部35BのX軸方向に延びる中心軸線LX2Bを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましい。さらに、第3橋梁部70Aの上方に配置された4つの上部電極層E31A〜E34Aは、第3橋梁部70AのX軸方向に延びる中心軸線LX3Aを含む平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましく、第3橋梁部70Bの上方に配置された4つの上部電極層E31B〜E34Bは、第3橋梁部70BのX軸方向に延びる中心軸線LX3Bを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成されていることが好ましい。
図16に、筐体15を備えた図10の発電素子1の断面図を示す。図16の左側では、図10のB−B線断面に相当する断面での形状が示されており、図16の右側では、図10のD−D線断面に相当する断面での形状が示されている。この筐体15は、図5に示す筐体15と同様の構成を有することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
筐体15の天板16は、第1重錘体25が第1重錘体支持部27を介して当接可能であるとともに、第2重錘体26A、26Bが第2重錘体支持部28A、28Bを介して当接可能に構成されており、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの上方への変位を規制するストッパーとしての機能を有している。第1重錘体25がニュートラル位置にあるときには、天板16は第1重錘体支持部27に所定の距離d3を隔てて離間しており、第1重錘体25は、第1重錘体支持部27が天板16に当接するまで上方へ変位可能になっている。同様に、第2重錘体26A、26Bがニュートラル位置にあるときには、天板16は第2重錘体支持部28A、28Bに所定の距離d3を隔てて離間しており、第2重錘体26A、26Bは、第2重錘体支持部28A、28Bが天板16に当接するまで上方へ変位可能になっている。
筐体15の底板17は、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bが当接可能に構成されており、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの下方への変位を規制するストッパーとしての機能を有している。第1重錘体25がニュートラル位置にあるときには、底板17は第1重錘体25に所定の距離d4を隔てて離間しており、第1重錘体25は、底板17に当接するまで下方へ変位可能になっている。同様に、第2重錘体26A、26Bがニュートラル位置にあるときには、底板17は第2重錘体26A、26Bに所定の距離d4を隔てて離間しており、第2重錘体26A、26Bは、底板17に当接するまで下方へ変位可能になっている。
このような発電素子1は、図6に示すような外装パッケージ60を備えることができる。この場合には、筐体15が外装パッケージ60に収容される。この外装パッケージ60は、図5に示す外装パッケージ60と同様の構成を有することができるため、ここでは詳細な説明は省略する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図10〜図13に示す発電素子1に上下方向への外部振動が与えられると、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bに上下方向への加速度が加わり、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bが上下方向に変位し、第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部35A、35Bが撓んで変形する。第3橋梁部70A、70Bは、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの変位に応じて上下方向に変位しながら撓んで変形する。加速度が大きい場合には、第1重錘体25が天板16に当接したり、底板17に当接したりするとともに、第2重錘体26A、26Bが天板16に当接したり、底板17に当接したりする。このようにして、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの変位が規制され、第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bの塑性変形や破損の防止が図られている。
第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bが撓んでいる間、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bには応力が発生する。応力が発生すると、圧電材料層42のうち各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bの上方に配置された部分において、発生した応力に相応する電荷が発生する。
本実施の形態による発電素子1は、両持ち梁構造で構成されており、第1重錘体25と第2重錘体26A、26Bと第3橋梁部70A、70Bとを有する振動体20が、第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部35A、35Bによって支持枠体10に支持されている。このことにより、図8および図9を用いて説明したように、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの上下方向への変位を小さくすることができる。このため、より広い加速度範囲で、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bが筐体15の天板16や底板17に当接することを回避できる。このため、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bが受けた力が天板16や底板17に逃げることを抑制し、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。この結果、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bに与えられる振動エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換させることができ、圧電素子40から発生する電荷を増大させることができる。
圧電素子40の上部電極層E11A〜E34Aにおいて発生した電荷は、整流素子D11(+)〜D34(+)で正電荷として取り出されるとともに整流素子D11(−)〜D34(−)で負電荷として取り出される。取り出された正電荷および負電荷は、平滑用の容量素子Cfで平滑されて、負荷ZLに供給される。
また、本実施の形態による発電素子1においても、第1の実施の形態による発電素子1と同様にして、3軸発電を行うことが可能になっている。X軸方向およびY軸方向への外部振動が加えられた場合においても、振動体20が第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部35A、35Bによって支持枠体10に支持されているため、振動体20の第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの変位を小さくすることができる。
ところで、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子においては、その構造に応じて固有の共振周波数が定められており、外部振動の周波数がこの共振周波数である場合、または共振周波数に近い値である場合に、重錘体を効率良く振動させることができる。しかしながら、外部振動の周波数がこの共振周波数から離れた値である場合には、振動体20を十分に振動させることが困難になるという問題がある。
これに対して、本実施の形態による発電素子1の振動体20は、第1重錘体25と第2重錘体26A、26Bとを有しているため、この発電素子1は、共振系Iと共振系IIと共振系IIIとを含む合成振動系を構成している。このうち共振系Iは、主として第1重錘体25と第1橋梁部30A、30Bとに基づいて規定される共振系であり、固有の共振周波数Iを有している。共振系IIは、主として第2重錘体26Aと第2橋梁部35Aとに基づいて規定される共振系であり、共振周波数Iとは異なる固有の共振周波数IIを有している。さらに、共振系IIIは、主として第2重錘体26Bと第2橋梁部35Bとに基づいて規定される共振系であり、共振周波数Iとは異なる固有の共振周波数IIIを有している。共振周波数Iと共振周波数II、IIIとを異ならせる場合には、例えば、第1重錘体25の質量と第2重錘体26A、26Bの質量を異ならせてもよく、または第1橋梁部30A、30Bのバネ定数と第2橋梁部35A、35Bのバネ定数(より詳細には、幅、厚さ、弾性率)を異ならせてもよく、質量とバネ定数の両者を異ならせるようにしてもよい。
このような共振系Iと共振系IIと共振系IIIとを含む合成振動系を構成することにより、発電可能な振動の周波数帯域を広げることができる。この場合、各共振系の固有の共振周波数を調整することにより、発電可能な周波数帯域を広げたり、狭めたりすることが可能になる。
また、本実施の形態では、共振周波数IIと共振周波数IIIは同一になっている。すなわち、第2重錘体26Aの質量と第2重錘体26Bの質量とが同一になっているとともに、第2橋梁部35Aのバネ定数と第2橋梁部35Bのバネ定数とが同一になっている。さらに、第3橋梁部70Aのバネ定数と第3橋梁部70Bのバネ定数とが同一になっている。このことにより、X軸方向および/またはZ軸方向の外部振動が与えられた場合の振動体20の振動を、中心軸線LXを含むZ軸に平行な平面に対して面対称にすることができる。この場合、各上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bに発生する正電荷の総量と負電荷の総量とを均等化させて、発電効率を向上させることができる。なお、同一とは、厳密な意味に限られることはなく、製造誤差等を含めて実質的に同一と見なすことができる範囲を含む概念を意味しているものとして用いている。
このように本実施の形態によれば、支持枠体10の内側に設けられた振動体20が、第1重錘体25と、第2重錘体26A、26Bと、第1重錘体25と第2重錘体26A、26Bとを連結した第3橋梁部70A、70Bと、を有し、第1重錘体25が、支持枠体10の第1枠体部分11に第1橋梁部30A、30Bによって支持されるとともに、第2重錘体26A、26Bが、支持枠体10の第2枠体部分12に第2橋梁部35A、35Bによって支持されている。このことにより、外部振動が加えられた場合の第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの変位量を抑制することができ、より広い加速度範囲で、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bが筐体15の天板16や底板17に当接することを回避できる。このため、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bが受けた力が天板16や底板17に逃げることを抑制し、第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部35A、35Bに発生する応力を増大させて、圧電素子40から発生する電荷を増大させることができる。この結果、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの変位を抑制することができるとともに発電量を増大させることができる。
また、本実施の形態によれば、振動体20が、第1重錘体25と、第2重錘体26A、26Bと、第1重錘体25と第2重錘体26A、26Bとを連結した第3橋梁部70A、70Bと、を有している。このことにより、第1重錘体25および第1橋梁部30A、30Bに基づいて規定される共振系Iと、第2重錘体26Aおよび第2橋梁部35Aに基づいて規定される共振系IIと、第2重錘体26Bおよび第2橋梁部35Bに基づいて規定される共振系IIIと、を含む合成振動系の発電素子1を得ることができる。このため、発電可能な振動の周波数帯域を広げることができ、様々な利用環境において効率良い発電を行うことができる。
また、本実施の形態によれば、第1橋梁部30A、30BのY軸方向両側に第2橋梁部35A、35Bがそれぞれ配置され、第1橋梁部30A、30Bと第2橋梁部35A、35Bとの間に第3橋梁部70A、70Bがそれぞれ配置されている。このことにより、各上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bに発生する正電荷の総量と負電荷の総量とが均等化させることができ、発電効率を向上させることができる。とりわけ、第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび振動体20を、第1重錘体25のX軸方向に延びる中心軸線LXを含むZ軸に平行な平面に関して面対称に形成する場合には、正電荷の総量と負電荷の総量とをより一層均等化させることができ、発電効率をより一層向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bが、互いに沿って延びている。このことにより、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bのスペース効率を向上させることができ、発電素子1の小形化を図ることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1橋梁部30A、30Bの上方、第2橋梁部35A、35Bの上方および第3橋梁部70A、70Bの上方に、4つの上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bがそれぞれ配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上部電極層の個数や配置等は、任意である。例えば、上述した図1に示すように、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bの上方に2つの上部電極層が設けられて、2つの上部電極層が、X軸方向において互いに異なる位置に配置されるようにしてもよい。また、図17に、図10に示す圧電素子の上部電極の他の例の平面図を示す。図17に示すように、圧縮応力と引張応力とを同時に受けることによって電荷がキャンセルされることを回避できれば、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bの上方に2つの上部電極層E11’、E12’が設けられて、上部電極層E11’、E12’がY軸方向において互いに異なる位置に配置されるようにしてもよい。さらには、図18に、図10に示す圧電素子の上部電極の他の例の平面図を示す。図18に示すように、圧縮応力と引張応力とを同時に受けることによって電荷がキャンセルされることを回避できれば、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bの上方に1つの上部電極層E1が設けられるようにしてもよい。また、第1橋梁部30A、30Bの上方に配置される上部電極層の個数や配置と、第2橋梁部35A、35Bの上方に配置される上部電極層の個数や配置と、第3橋梁部70A、70Bの上方に配置される上部電極層の個数や配置は、互いに異なっていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、平面視で、2つの第1橋梁部30A、30BのY軸方向両側に、第2重錘体26A、26Bおよび第2橋梁部35A、35Bがそれぞれ配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1橋梁部30A、30Bの一方の側に、一の第2重錘体および一の第2橋梁部が配置されて、他方の側には、第2重錘体も第2橋梁部も配置されていなくてもよい。この場合においても、第1橋梁部30A、30Bおよび第2橋梁部に発生する応力を増大させて、圧電素子40から発生する電荷を増大させることができるとともに、発電可能な振動の周波数帯域を広げることができる。また、振動体20が、2つの第1橋梁部30A、30Bで支持されている例について説明したが、振動体20を支持する第1橋梁部は1つであってもよい。すなわち、第1橋梁部30Aと第1橋梁部30Bとが一体に形成されていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bが、互いに平行になっている例について説明した。しかしながら、第1橋梁部30A、30B、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bは、互いに交差しなければ、互いに平行になっていることに限られない。
(第3の実施の形態)
次に、図19〜図22を用いて、本発明の第3の実施の形態における発電素子について説明する。
図19〜図22に示す第3の実施の形態においては、第1重錘体に第1追加重錘体が設けられるとともに、第2重錘体に第2追加重錘体が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図10〜図18に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図19〜図22において、図10〜図18に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図19に、本発明の第3の実施の形態における発電素子の全体構成の上面図を示し、図20に、図19の発電素子の下面図を示し、図21に、図19のE−E線断面図を示し、図22に、図19のF−F線断面図を示す。本実施の形態では、図19〜図21に示すように、第1重錘体25の下面(第1重錘体支持部27の側とは反対側の面)に、第1追加重錘体80が設けられている。これにより、第1橋梁部30A、30BのX軸負側端部32A、32B(図10参照)に第1重錘体25と第1追加重錘体80とが連結されることになり、第1橋梁部30A、30Bに連結された重錘体の質量が増加している。また、第1追加重錘体80が設けられていない場合(図10〜図13参照)の第1重錘体25の重心位置よりも、第1重錘体25および第1追加重錘体80の合成重心位置(第1重錘体25と第1追加重錘体80とで構成される重錘体全体の重心位置)が下がっている。
同様に、図19、図20および図22に示すように、第2重錘体26A、26Bの下面(第2重錘体支持部28A、28Bの側とは反対側の面)に、第2追加重錘体85が設けられている。これにより、第2橋梁部35A、35BのX軸正側端部36A、36B(図10参照)に第2重錘体26A、26Bと第2追加重錘体85とが連結されることになり、第2橋梁部35A、35Bに連結された重錘体の質量が増加している。また、第2追加重錘体85が設けられていない場合(図10〜図13参照)の第2重錘体26A、26Bの重心位置よりも、第2重錘体26A、26Bおよび第2追加重錘体85の合成重心位置(第2重錘体26A、26Bと第2追加重錘体85とで構成される重錘体全体の重心位置)が下がっている。また、第2追加重錘体85は、一方の第2重錘体26Aから他方の第2重錘体26Bまで延びており、両方の第2重錘体26A、26Bに取り付けられて支持されている。これにより、第2追加重錘体85は、支持枠体10の突出部14の下方を跨ぐように形成されている。
図19〜図21に示すように、第1追加重錘体80は、支持枠体10に当接可能に設けられた第1ストッパー部82A、82Bを有している。この第1ストッパー部82A、82Bは、第1重錘体25の上方(第1重錘体支持部27の側、Z軸正側)への変位を規制するようになっている。すなわち、第1追加重錘体80は、平面視で、第1重錘体25よりもY軸正側およびY軸負側に延びるように形成されている。第1ストッパー部82A、82Bは、Y軸方向(第1重錘体25から第1枠体部分11に向かうX軸方向に直交する方向)における第1追加重錘体80の両端部に配置されている。より具体的には、第1追加重錘体80は、第1重錘体25と平面視で重なる第1本体部分81と、第1本体部分81よりもY軸正側に配置された第1ストッパー部82Aと、第1本体部分81よりもY軸負側に配置された第1ストッパー部82Bと、を有している。このうち第1ストッパー部82Aは、第1重錘体25からY軸正側に突出しており、第1ストッパー部82Bは、第1重錘体25からY軸負側に突出している。
支持枠体10の下面には、追加支持枠体90が設けられている。追加支持枠体90は、平面視で矩形枠状に形成されており、その内側に第1追加重錘体80が配置されるように形成されている。第1追加重錘体80の下面は、追加支持枠体90の下面よりも上方に位置付けられている。第1重錘体25および第1追加重錘体80は、上述した筐体15の底板17に当接するまで、下方に変位可能になっている。また、支持枠体10の下面には、第1ストッパー部82A、82Bが当接する第1座部91A、91Bが設けられている。この第1座部91A、91Bは、平面視で、支持枠体10のうち第2橋梁部35A、35BのX軸負側端部37A、37B(図10参照)の側の部分に形成されている。追加支持枠体90の内面は、この第1座部91A、91Bを下方に露出させるように、支持枠体10の内面よりも部分的に外側に後退している。このようにして、追加支持枠体90は、第1追加重錘体80の第1ストッパー部82A、82Bとの干渉を回避するように形成されており、第1ストッパー部82A、82Bが第1座部91A、91Bに当接可能になっている。
図21に示すように、第1ストッパー部82A、82Bの上面82AU、82BUは、第1本体部分81の上面81Uよりも下方に位置付けられている。例えば、第1追加重錘体80を製造する際に、エッチングや機械加工などによって、第1追加重錘体80の上面を部分的に除去することにより、このような第1ストッパー部82A、82Bの上面82AU、82BUを形成することができる。このようにして、第1ストッパー部82A、82Bは、第1重錘体25がニュートラル位置にあるときに、支持枠体10の第1座部91A、91Bに所定の距離d5を隔てて離間している。このことにより、第1重錘体25は、第1ストッパー部82A、82Bが第1座部91A、91Bに当接するまで上方へ変位可能になっている。この距離d5は、図16に示す距離d3と等しくてもよく、または距離d3よりも小さくてもよい。このことにより、第1ストッパー部82A、82Bが、第1重錘体25の上方への変位のストッパーとして機能することができる。
第2追加重錘体85は、支持枠体10に当接可能に設けられた第2ストッパー部87を有している。この第2ストッパー部87は、第2重錘体26A、26Bの上方(第2重錘体支持部28A、28Bの側)への変位を規制するようになっている。すなわち、第2追加重錘体85は、一方の第2重錘体26Aの下方に配置された第2本体部分86Aと、他方の第2重錘体26Bの下方に配置された第2本体部分86Bと、2つの第2本体部分86A、86Bの間に配置された第2ストッパー部87と、を有している。このうち第2ストッパー部87は、支持枠体10の突出部14の下方に配置されている。第2本体部分86A、86Bおよび第2ストッパー部87は一体に形成されており、第2追加重錘体85は、全体として、支持枠体10の突出部14の下方を跨ぐように形成されている。
上述した追加支持枠体90は、その内側に第2追加重錘体85が配置されるように形成されている。第2追加重錘体85の下面は、追加支持枠体90の下面よりも上方に位置付けられている。第2重錘体26A、26Bおよび第2追加重錘体85は、上述した筐体15の底板17に当接するまで、下方に変位可能になっている。また、支持枠体10の下面には、第2ストッパー部87が当接する第2座部92が設けられている。すなわち、上述した支持枠体10の突出部14が、下面に形成された第2座部92を含んでいる。追加支持枠体90の内面は、この第2座部92を下方に露出させるように、突出部14よりも外側に後退している。このようにして、追加支持枠体90は、第2追加重錘体85の第2ストッパー部87との干渉を回避するように形成されており、第2ストッパー部87が第2座部92に当接可能になっている。
図22に示すように、第2ストッパー部87の上面87Uは、第2本体部分86A、86Bの上面86AU、86BUよりも下方に位置付けられている。例えば、第2追加重錘体85を製造する際に、エッチングや機械加工などによって、第2追加重錘体85の上面を部分的に除去することにより、このような第2ストッパー部87を形成することができる。このようにして、第2ストッパー部87は、第2重錘体26A、26Bがニュートラル位置にあるときに、支持枠体10の第2座部92に所定の距離d6を隔てて離間している。このことにより、第2重錘体26A、26Bは、第2ストッパー部87が第2座部92に当接するまで上方へ変位可能になっている。この距離d6は、図16に示す距離d3と等しくてもよく、または距離d3よりも小さくてもよい。このことにより、第2ストッパー部87が、第2重錘体26A、26Bの上方への変位のストッパーとして機能することができる。
第1追加重錘体80は、第1重錘体25と同一の材料(シリコン)により第1重錘体25とは別個に作製されていてもよい。この場合、第1追加重錘体80は、第1重錘体25の下面に、直接接合技術を用いて接合してもよい。あるいは、第1追加重錘体80がガラスで作製されていてもよい。この場合、シリコンで作製された第1重錘体25の下面に、陽極接合技術を用いて接合してもよい。第2追加重錘体85および追加支持枠体90についても同様にして、第2重錘体26A、26Bの下面および支持枠体10の下面にそれぞれ接合することができる。なお、第1重錘体25および第2重錘体26A、26Bの下面は、支持枠体10の下面と面一にしておくことが好ましい。
本実施の形態による発電素子1は、共振系IVと共振系Vとを含む合成振動系を構成している。このうち共振系IVは、主として第1重錘体25と第1追加重錘体80と第1橋梁部30A、30Bとに基づいて規定される共振系であり、固有の共振周波数IVを有している。共振系Vは、主として第2重錘体26A、26Bと第2追加重錘体85と第2橋梁部35A、35Bとに基づいて規定される共振系であり、固有の共振周波数Vを有している。共振周波数IVと共振周波数Vとは互いに異なっている。共振周波数IVと共振周波数Vとを異ならせる場合には、例えば、第1重錘体25および第1追加重錘体80の合計質量と第2重錘体26A、26Bおよび第2追加重錘体85の合計質量を異ならせてもよく、または第1橋梁部30A、30Bのバネ定数と第2橋梁部35A、35Bのバネ定数(より詳細には、幅、厚さ、弾性率)を異ならせてもよく、質量とバネ定数の両者を異ならせるようにしてもよい。
このような共振系IVと共振系Vとを含む合成振動系を構成することにより、発電可能な振動の周波数帯域を広げることができる。この場合、各共振系の固有の共振周波数を調整することにより、発電可能な周波数帯域を広げたり、狭めたりすることが可能になる。
このように本実施の形態によれば、第1重錘体25の下面に第1追加重錘体80が設けられている。このことにより、第1追加重錘体80が設けられていない場合の第1重錘体25の重心位置よりも、第1重錘体25および第1追加重錘体80の合成重心位置を下げることができる。このため、X軸方向およびY軸方向への外部振動がそれぞれ加えられた場合における各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。また、第1橋梁部30A、30Bに連結された重錘体(第1重錘体25と第1追加重錘体80)の質量を増加させることができ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向への外部振動がそれぞれ加えられた場合における各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。この結果、圧電素子40から発生させる電荷を増大させることができ、3軸発電の発電効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2重錘体26A、26Bの下面に第2追加重錘体85が設けられている。このことにより、第2追加重錘体85が設けられていない場合の第2重錘体26A、26Bの重心位置よりも、第2重錘体26A、26Bおよび第2追加重錘体85の合成重心位置(第2重錘体26A、26Bと第2追加重錘体85とで構成される重錘体全体の重心位置)を下げることができる。このため、X軸方向およびY軸方向への外部振動がそれぞれ加えられた場合における各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。また、第2橋梁部35A、35Bに連結された重錘体(第2重錘体26A、26Bと第2追加重錘体85)の質量を増加させることができ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向への外部振動がそれぞれ加えられた場合における各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。この結果、圧電素子40から発生させる電荷を増大させることができ、3軸発電の発電効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2追加重錘体85が、一方の第2重錘体26Aから他方の第2重錘体26Bまで延びており、両方の第2重錘体26A、26Bに取り付けられて支持されている。このことにより、第2追加重錘体85に、第2重錘体26Aと第2重錘体26Bとの平面面積の合計よりも大きな平面面積を持たせることができる。このため、第2追加重錘体85の質量を増大させることができ、発電効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1追加重錘体80が、支持枠体10の第1座部91A、91Bに当接可能に設けられた第1ストッパー部82A、82Bを有している。このことにより、X軸方向、Y軸方向またはZ軸方向のいずれの方向の外部振動が与えられた場合においても、第1重錘体25の上方への変位を規制することができる。このため、第1橋梁部30A、30Bや、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bの塑性変形や破損をより一層防止することができ、発電素子1の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1ストッパー部82A、82Bを、Y軸方向における第1追加重錘体80の両端部に配置することができる。このことにより、第1ストッパー部82A、82Bが第1座部91A、91Bに当接した際に、第1追加重錘体80の姿勢を安定させることができる。このため、第1重錘体25の上方への変位をより一層確実に規制することができる。また、Y軸方向の外部振動が加えられる場合には、第1重錘体25および第1追加重錘体80がYZ平面において回動するようになるため、いずれの方向に第1重錘体25および第1追加重錘体80が回動した場合であっても、第1ストッパー部82Aを第1座部91Aに当接させるか、または第1ストッパー部82Bを第1座部91Bに当接させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2追加重錘体85が、支持枠体10の第2座部92に当接可能に設けられた第2ストッパー部87を有している。このことにより、X軸方向、Y軸方向またはZ軸方向のいずれの方向の外部振動が与えられた場合においても、第2重錘体26A、26Bの上方への変位を規制することができる。このため、第1橋梁部30A、30Bや、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bの塑性変形や破損をより一層防止することができ、発電素子1の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、支持枠体10の第1枠体部分11と第1橋梁部30A、30Bとの間に介在された突出部14に設けられた第2座部92に、第2追加重錘体85の第2ストッパー部87が当接する。このことにより、第2ストッパー部87が第2座部92に当接した際に、第2追加重錘体85の姿勢を安定させることができる。このため、第2重錘体26A、26Bの上方への変位をより一層確実に規制することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第2追加重錘体85が、支持枠体10の突出部14の下方を跨いで、一方の第2重錘体26Aから他方の第2重錘体26Bまで延びており、両方の第2重錘体26A、26Bに取り付けられて支持されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図示しないが、第2重錘体26Aの下面に設けられた第2追加重錘体と、第2重錘体26Bの下面に設けられた第2追加重錘体とが、それぞれ別体に形成されて、互いに離間していてもよい。この場合においても、第2重錘体26A、26Bと対応する第2追加重錘体との合成重心位置を下げることができる。
また、上述した本実施の形態においては、平面視で、2つの第1橋梁部30A、30BのY軸方向両側に、第2重錘体26A、26Bおよび第2橋梁部35A、35Bがそれぞれ配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1橋梁部30A、30Bの一方の側に、一の第2重錘体および一の第2橋梁部が配置されて、他方の側には、第2重錘体も第2橋梁部も配置されていなくてもよい。この場合においても、この一の第2重錘体の下面に、第2追加重錘体を設けることで、第2重錘体および第2追加重錘体の合成重心位置を下げることができる。
(第4の実施の形態)
次に、図23〜図26を用いて、本発明の第4の実施の形態における発電素子について説明する。
図23〜図26に示す第4の実施の形態においては、第2追加重錘体が、支持枠体に当接可能な第3ストッパー部を有している点が主に異なり、他の構成は、図19〜図22に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図23〜図26において、図19〜図22に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図23に、本発明の第4の実施の形態における発電素子の全体構成の上面図を示し、図24に、図23の発電素子の下面図を示し、図25に、図23の発電素子のG−G線断面図を示し、図26に、図23の発電素子のH−H線断面図を示す。本実施の形態では、図23、図24および図26に示すように、第2追加重錘体85は、支持枠体10に当接可能に設けられた第3ストッパー部88A、88Bを更に有している。この第3ストッパー部88A、88Bは、第2重錘体26A、26Bの上方(第2重錘体支持部28A、28Bの側)への変位を規制するようになっている。すなわち、第2追加重錘体85は、平面視で、第2重錘体26A、26BよりもY軸正側およびY軸負側に延びるように形成されている。第3ストッパー部88A、88Bは、Y軸方向(第2重錘体26A、26Bから第2枠体部分12に向かうX軸方向に直交する方向)における第2追加重錘体85の両端部に配置されている。より具体的には、第2追加重錘体85は、一方の第2本体部分86AよりもY軸正側に配置された第3ストッパー部88Aと、他方の第2本体部分86BよりもY軸負側に配置された第3ストッパー部88Bと、を更に有している。このうち第3ストッパー部88Aは、第2重錘体26A、26BからY軸正側に突出しており、第3ストッパー部88Bは、第2重錘体26A、26BからY軸負側に突出している。
支持枠体10の下面には、第3ストッパー部88A、88Bが当接する第3座部93A、93Bが設けられている。この第3座部93A、93Bは、平面視で、支持枠体10のうち第2橋梁部35A、35BのX軸正側端部36A、36B(図10参照)の近傍の部分に形成されている。追加支持枠体90は、この第3座部93A、93Bを下方に露出させるように形成されている。このようにして、追加支持枠体90は、第2追加重錘体85の第3ストッパー部88A、88Bとの干渉を回避するように形成されており、第3ストッパー部88A、88Bが第3座部93A、93Bに当接可能になっている。
図26に示すように、第3ストッパー部88A、88Bの上面88AU、88BUは、第2本体部分86A、86Bの上面86AU、86BUよりも下方に位置付けられており、第2ストッパー部87の上面87Uと、同一高さ位置に形成されている。この第3ストッパー部88A、88Bは、上述した第2ストッパー部87と同様に形成することができる。このようにして、第3ストッパー部88A、88Bは、第2重錘体26A、26Bがニュートラル位置にあるときに、支持枠体10の第3座部93A、93Bに所定の距離d6を隔てて離間している。このことにより、第2重錘体26A、26Bは、第3ストッパー部88A、88Bが第3座部93A、93Bに当接するまで上方へ変位可能になっている。
図23および図24に示すように、第1追加重錘体80の第1ストッパー部82A、82Bは、平面視で、支持枠体10の外縁部(図23では外面)まで延びていてもよい。同様にして、第2追加重錘体85の第3ストッパー部88A、88Bは、平面視で、支持枠体10の外縁部(図23では外面)まで延びていてもよい。この場合、追加支持枠体90は、4つの支持枠分割体94A〜94Dに分割される。互いに隣り合う支持枠分割体94A〜94Dの間で、支持枠体10の第1座部91A、91Bおよび第3座部93A、93Bが下方に露出されている。
このように本実施の形態によれば、第1追加重錘体80の第1ストッパー部82A、82Bが、平面視で、支持枠体10の外縁部まで延びている。このことにより、第1ストッパー部82A、82Bと支持枠体10の第1座部91A、91Bとの接触領域を拡大させることができ、第1ストッパー部82A、82Bが第1座部91A、91Bに当接した際に、第1追加重錘体80の姿勢を安定させることができる。このため、X軸方向、Y軸方向またはZ軸方向のいずれの方向の外部振動が与えられた場合においても、第1重錘体25の上方への変位をより一層確実に規制することができる。また、第1追加重錘体80の質量を増加させることができ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向への外部振動がそれぞれ加えられた場合における各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2重錘体26A、26Bの下面に設けられた第2追加重錘体85が、支持枠体10の第3座部93A、93Bに当接可能に設けられた第3ストッパー部88A、88Bを有している。このことにより、X軸方向、Y軸方向またはZ軸方向のいずれの方向の外部振動が与えられた場合においても、第2重錘体26A、26Bの上方への変位を規制することができる。このため、第1橋梁部30A、30Bや、第2橋梁部35A、35Bおよび第3橋梁部70A、70Bの塑性変形や破損をより一層防止することができ、発電素子1の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第3ストッパー部88A、88Bを、Y軸方向における第2追加重錘体85の両端部に配置することができる。このことにより、第3ストッパー部88A、88Bが第3座部93A、93Bに当接した際に、第2追加重錘体85の姿勢を安定させることができる。このため、第2重錘体26A、26Bの上方への変位をより一層確実に規制することができる。また、Y軸方向の外部振動が加えられる場合には、第1重錘体25および第1追加重錘体80がYZ平面において回動するようになるため、いずれの方向に第1重錘体25および第1追加重錘体80が回動した場合であっても、第1ストッパー部82Aを第1座部91Aに当接させるか、または第1ストッパー部82Bを第1座部91Bに当接させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2追加重錘体85の第3ストッパー部88A、88Bが、平面視で、支持枠体10の外縁部まで延びている。このことにより、第3ストッパー部88A、88Bと支持枠体10の第3座部93A、93Bとの接触領域を拡大させることができ、第3ストッパー部88A、88Bが第3座部93A、93Bに当接した際に、第2追加重錘体85の姿勢を安定させることができる。このため、第2重錘体26A、26Bの上方への変位をより一層確実に規制することができる。また、第2追加重錘体85の質量を増加させることができ、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向への外部振動がそれぞれ加えられた場合における各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに発生する応力を増大させることができる。
本発明は上記実施の形態および変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
図23〜図26を用いて説明した上述の第4の実施の形態における発電素子1について、振動加速度を加えた場合に発生する各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70BのX軸方向の応力を、3次元解析を行って求めた。その結果を、図27〜図29に示す。ここで、図27は、ある周波数のX軸方向の振動加速度を加えた場合のX軸方向応力の分布を示し、図28は、ある周波数のY軸方向の振動加速度を加えた場合のX軸方向応力の分布を示し、図29は、ある周波数のZ軸方向の振動加速度を加えた場合のX軸方向応力の分布を示す。なお、図27〜図29には、発電素子1の形状が示されているが、追加支持枠体90は含まれていない。しかしながら、3次元解析を行う上では、支持枠体10に固定条件を設定しているため、追加支持枠体90が含まれていなくても、解析結果に影響を与えることはない。
図27〜図29に示されているように、いずれの方向の振動加速度に対しても、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bに応力が発生している。このことから、発電素子1は、3軸発電を行うことが可能であることが確認できる。
また、図14に示した、圧電素子40の上部電極層E11A〜E34A、E11B〜E34Bの配置は、図27〜図29に示した応力が発生している位置に対応していることがわかる。このことにより、各橋梁部30A、30B、35A、35B、70A、70Bにおいて発生した応力から、効率良く電荷を発生させることができ、発電効率、とりわけ3軸発電の発電効率を向上させることができるといえる。
また、第4の実施の形態における発電素子1の周波数特性を調べた。ここでは、発電素子1に加える振動加速度の周波数を変化させて、いくつかの測定点に発生した応力(振幅)を求めた。図30は、その測定点(SX1、SX2、SX3、SX4)を示す斜視図である。図31は、X軸方向に加えられる振動加速度の周波数と、図30に示す測定点で発生する応力との関係を示す図であり、図32は、Y軸方向に加えられる振動加速度の周波数と、図30に示す測定点で発生する応力との関係を示す図であり、図33は、Z軸方向に加えられる振動加速度の周波数と、図30に示す測定点で発生する応力との関係を示す図である。図31〜図33において、横軸は、振動加速度の周波数を示し、縦軸は、各測定点で発生した応力(単位はPa)を示している。
図31〜図33に示されているように、いずれの方向の振動加速度に対しても、2つのスペクトルピーク波形が得られた。これは、上述したように、振動体20が、第1重錘体25と、第2重錘体26A、26Bと、第1追加重錘体80と、第2追加重錘体85と、を有していることで、発電素子1が、主として第1重錘体25と第1追加重錘体80と第1橋梁部30A、30Bとに基づく共振系IVと、主として第2重錘体26A、26Bと第2追加重錘体85と第2橋梁部35A、35Bとに基づく共振系Vとの合成振動系で構成されていることによる。このことから、発電素子1は、発電可能な周波数帯域を広げることができることが確認できる。
なお、図27〜図29および図31〜図33に示した解析結果は、第4の実施の形態による発電素子1の構成に基づいている。しかしながら、第3の実施の形態による発電素子1と第4の実施の形態による発電素子1との主な相違点は、第1ストッパー部82A、82Bの形状と、第3ストッパー部88A、88Bの有無である。このため、第3の実施の形態による発電素子1においても、図27〜図29および図31〜図33と同様の結果を得ることができる。また、第2の実施の形態による発電素子1と第4の実施の形態による発電素子1との主な相違点は、第1追加重錘体80の有無と、第2追加重錘体85の有無である。しかしながら、その他の点では、同様の構成を有しているため、第2の実施の形態による発電素子1においても、図27〜図29および図31〜図33と同様の結果を得ることができる。