以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1. 従来提案されている発電素子 >>>
はじめに、説明の便宜上、板状構造体に取り付けた重錘体を振動させて発電を行うタイプの従来の発電素子の基本構造を簡単に説明しておく。図1は、従来から提案されている一般的な発電素子の基本構造部を示す斜視図である。前掲の特許文献4(WO2015/033621号公報)にも、図1に示すような基本構造をもった発電素子が開示されている。
図示のとおり、この基本構造部は、板状構造体100と、板状構造体100の先端部に取り付けられた重錘体200と、板状構造体100の根端部を固定する台座300とを有している。台座300は、何らかの振動源に取り付けられ、この振動源から供給される振動エネルギーが電気エネルギーに変換されることになる。板状構造体100は、台座300によって固定された根端部から自由端となる先端部へと伸びる長さL、幅w、厚みtの細長い板であり、重錘体200はこの板による片持ち梁構造で支持されている。しかも、板状構造体100は可撓性を有しているため、台座300に振動が加えられると、重錘体200が振動を生じる。その結果、板状構造体100には、周期的に撓みが生じることになる。
図示は省略するが、板状構造体100の表面には、圧電素子などの電荷発生素子が貼り付けられており、板状構造体100の変形に基づいて電荷が発生する。したがって、この電荷発生素子に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して出力する発電回路を設けておけば、発生した電荷を電力として取り出すことができる。電荷を効率的に取り出すための圧電素子の配置については、前掲の特許文献4等に開示されているため、ここでは説明は省略する。
なお、本願では、この基本構造部の構成および変形態様を説明する便宜上、図示のようなXYZ三次元直交座標系を定義する。このような座標系上では、板状構造体100は、XY平面に平行な板面(上面および下面)をもち、Y軸に沿って根端部から先端部へと伸びる細長い板ということになる。図示の例では、板状構造体100の上面の中心位置にY軸が位置している。ここでは、このY軸を基準軸と呼び、板状構造体100の原点O側を根端部と呼び、Y軸上の先端点T側を先端部と呼ぶことにする。したがって、板状構造体100は、基準軸Yに沿って根端部から先端部へと伸び、可撓性を有する板状の部材ということになり、重錘体200は、その先端部の下面に接合されていることになる。
通常、外部の振動源から台座300に伝わる振動エネルギーには、X軸方向成分、Y軸方向成分、Z軸方向成分が含まれている。したがって、重錘体200には、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各方向に変位させる力が加わる。ただ、重錘体200は、図示のような形状を有する板状構造体100によって支持されているため、「変位のしやすさ」は個々の方向ごとに異なる。これは、図の原点Oの位置(根端部)を固定した状態において、先端点T(先端部)に対して各座標軸方向への力Fx,Fy,Fzを作用させた場合、板状構造体100のバネ定数が各座標軸方向によって異なるためであり、一般的には、Z軸方向が最も変位しやすい方向になる。
もちろん、板状構造体100は可撓性を有しているため、Y軸方向に関する伸縮や反りにより重錘体200をY軸方向に変位させることもできるし、X軸方向への変形により重錘体200をX軸方向に変位させることもできる。ただ、ここでは、台座300に対して、Z軸方向への振動エネルギーが加えられ、重錘体200がZ軸方向に振動する場合を代表例として考えてみよう。
一般に、共振系は、その系に固有の共振周波数frを有しており、外部から与えられた振動の周波数fが、この共振周波数frに近い程、与えられた振動に共鳴して大きな振幅Aが生じることになる。図2は、図1に示す基本構造部の台座300対して、外部から様々な周波数の振動エネルギーを与えたときの、重錘体200(先端点T)の振幅Aを示すグラフである。横軸に周波数f、縦軸に振幅Aをとると、図示のとおり、所定の共振周波数frの位置にピーク波形Pが現れる(図では、便宜上、このピーク波形P以外の部分をフラットな直線で示すが、実際には、この部分は完全な直線になるわけではない)。
もちろん、板状構造体100のバネ定数は、座標軸方向ごとに異なるため、重錘体200の共振周波数frの値も、座標軸方向ごとに異なる。図2のグラフは、重錘体200が特定の座標軸方向(ここでは、Z軸方向)に振動する場合を示すものであり、共振周波数frは、当該座標軸方向に関する振動についての共振周波数を示している。また、後述するように、板状構造体100には、その節点の数に応じて複数の共振モードが存在し、個々の共振モードごとにそれぞれ共振周波数が異なる。そこで、ここでは、1次共振モードで振動している場合を考えることにする。
結局、図1に示す基本構造部を1つの共振系として把握した場合、重錘体200をZ軸方向に1次共振モードで効率良く振動させるには、台座300を共振周波数frで振動させればよい。別言すれば、この発電素子に効率的な発電をさせるためには、外部から共振周波数frの振動エネルギーを与える必要があり、与える振動エネルギーの周波数が共振周波数frから外れると、発電効率は低下する。
一方、量産に適したMEMS技術を利用した発電素子には、その材料としてシリコンや金属が用いられることが多いが、このような材料を用いた共振系では、図2のグラフにおけるピーク波形Pのピーク値(Q値)は高いが、半値幅hは狭くなる傾向にある。このため、図1に例示するような従来の発電素子の場合、外部環境から与えられる振動の周波数が、共振周波数frに近い場合には効率的な発電を行うことができるが、共振周波数frから外れている場合には、その発電効率は急激に低下することになる。
したがって、従来から、実利用環境において外部から与えられるであろう振動の周波数を想定し、この想定周波数に共振周波数を一致させるような設計が行われている。しかしながら、既に問題点として指摘したとおり、実際の利用環境では、様々な周波数をもった振動が混在しており、単一の周波数をもった振動が加わるわけではない。このため、想定外の周波数を含んだ振動が加えられるケースも少なくない。また、シリコンや金属からなる構造部分の共振周波数は、外部応力や温度によっても変動するため、設計時の想定どおりの周波数をもった振動が与えられたとしても、必ずしも効率的な発電が行われるとは限らない。
このように、図1に例示するような従来の発電素子には、発電可能な周波数帯域が狭く、実利用環境によっては、必ずしも十分効率的な発電を行うことができないという問題がある。本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、発電可能な周波数帯域を広げ、様々な利用環境において効率的な発電を行うことが可能な発電素子を提供することを目的とする。
<<< §2. 第1の実施形態の構成 >>>
ここでは、本発明の第1の実施形態の構成を説明する。図3は、この第1の実施形態に係る発電素子1000を示す斜視図(一部はブロック図)である。図示のとおり、この発電素子1000は、主基板110、重錘体群210、台座310、電荷発生素子400、発電回路500を備えている。ここでは、主基板110、重錘体群210、台座310によって構成される物理的な構成部分を基本構造部と呼ぶことにする。図3では、この基本構造部が斜視図として示されており、電荷発生素子400および発電回路500はブロック図として示されている。この発電素子1000の特徴は、斜視図として示す基本構造部の固有の構造にある。以下、この固有の構造についての説明を行う。
ここでも、§1と同様に、図示のようなXYZ三次元直交座標系を定義し、Y軸を基準軸と呼ぶことにする。この発電素子1000においても、図1に示す従来の発電素子と同様に、板状構造体による片持ち梁によって重錘体を支持する構造が採用されており、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電が行われる。
主基板110は、平面形状がE字状をした板状の構造体であり、図示のとおり、中央板状構造体111、異属間接続体112、負側板状構造体113、正側板状構造体114の4つの部分によって構成される。異属間接続体112は、後述するように、異なる属性をもつ板状構造体を相互に接続する役割を果たす。負側板状構造体113は、X座標値が負の領域に配置された構成要素であり、正側板状構造体114は、X座標値が正の領域に配置された構成要素である。
なお、ここでは便宜上、主基板110を上記4つの部分に分けて説明するが、主基板110は、あくまでも一体となった1枚のE字状基板であり、上記4つの部分は、この1枚のE字状基板において、特定の役割を担う部分ということになる。主基板110は可撓性をもった部材を構成できる材質であれば、どのような材料を用いて構成してもかまわないが、実用上は、シリコンや金属によって構成するのが好ましい。
一方、重錘体群210は、図示のとおり、3組の重錘体211,212,213によって構成され、それぞれ主基板110の下面の所定箇所に接続されている。具体的には、重錘体211は、異属間接続体112の下面に接続されており、重錘体212は、負側板状構造体113の先端部(図の左側端部)の下面に接続されており、重錘体213は、正側板状構造体114の先端部(図の左側端部)の下面に接続されている。これら各重錘体211,212,213は、振動を生じさせるのに十分な質量を有する材料であれば、どのような材料を用いて構成してもかまわないが、十分な質量を確保する上では、SUS(鉄),銅,タングステンなどの金属、あるいは、シリコン、セラミックもしくはガラス等を用いるのが好ましい。
そして、台座310は、中央板状構造体111の根端部(図の左側端部)を支持固定する構成要素である。後述するように、実際には、この台座310は発電素子1000の装置筐体に固定され、振動源からの振動エネルギーを中央板状構造体111に伝達する役割を果たす。図3には、直方体のブロック状をした台座310が描かれているが、台座310は、中央板状構造体111を支持固定することができるものであれば、どのような形状のものでも、どのような材料を用いて構成したものでもかまわない。
異属間接続体112およびその下面に接続された重錘体211は、Y軸に沿って伸びる中央板状構造体111によって、台座310に対して片持ち梁構造で支持されている。中央板状構造体111は、可撓性を有しているため、外力が作用すると撓みを生じ、原点Oに対して端点T1は変位する。したがって、台座310に対して振動エネルギーが加えられると、中央板状構造体111は周期的な撓みを生じ、重錘体211は振動する。後述するように、このような振動は、第1の共振系Iの振動になる。
一方、重錘体212は、Y軸に平行な方向に伸びる負側板状構造体113によって、異属間接続体112に対して片持ち梁構造で支持されている。負側板状構造体113のうち、少なくとも重錘体212が接続されていない部分は可撓性を有しているため、外力が作用すると撓みを生じ、端点T2に対して端点T3は変位する(この例の場合、重錘体212が接続されている部分には、有意な撓みは生じない)。したがって、異属間接続体112に対して振動エネルギーが加えられると、負側板状構造体113は周期的な撓みを生じ、重錘体212は振動する。後述するように、このような振動は、第2の共振系IIの振動になる。
同様に、重錘体213は、Y軸に平行な方向に伸びる正側板状構造体114によって、異属間接続体112に対して片持ち梁構造で支持されている。正側板状構造体114のうち、少なくとも重錘体213が接続されていない部分は可撓性を有しているため、外力が作用すると撓みを生じ、端点T4に対して端点T5は変位する(この例の場合、重錘体213が接続されている部分には、有意な撓みは生じない)。したがって、異属間接続体112に対して振動エネルギーが加えられると、正側板状構造体114は周期的な撓みを生じ、重錘体213は振動する。この振動は、やはり第2の共振系IIの振動になる。
このように、第1の共振系Iの基点となる原点Oは台座310に固定されているため、第1の共振系Iの振動端T1は、原点Oを基準にして振動することになる。これに対して、第2の共振系IIの基点となる端点T2,T4は、端点T1の振動に応じて振動することになり、第2の共振系IIの振動端T3,T5は、振動中の端点T2,T4を基準にして振動することになる。別言すれば、この基本構造部は、第1の共振系Iと第2の共振系IIとを入れ子状にした複雑な合成振動系を構成していることになる。後述するように、このような複雑な合成振動系を構成することにより、発電可能な周波数帯域を広げるという本発明の目的が達成されることになる。
図3にブロック図として描かれている電荷発生素子400は、これら板状構造体111,113,114の変形に基づいて電荷を発生させる構成要素(たとえば、圧電素子)であり、ブロック図として描かれている発電回路500は、電荷発生素子400に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す構成要素である。この電荷発生素子400および発電回路500の構成や動作については、§5で説明する。
図4(a) は、図3に示す発電素子1000の基本構造部の上面図、図4(b) は、その側面図である。本願では、図示のとおり、XY平面を水平面にとったXYZ三次元直交座標系を定義し、YZ平面で仕切られる空間のうち、正のX座標値を有する空間を正側空間、負のX座標値を有する空間を負側空間と定義する。上述したように、基本構造部は、主基板110、重錘体群210、台座310によって構成される。ここで、主基板110は、図示のとおり、Y軸上に配置された中央板状構造体111と、負側空間に配置された負側板状構造体113と、正側空間に配置された正側板状構造体114と、異属間接続体112と、を有するE字状の基板である。
異属間接続体112は、X軸方向に伸びた板状の構成要素であり、中央板状構造体111と負側板状構造体113とを接続する機能と、中央板状構造体111と正側板状構造体114とを接続する機能を有している。3組の板状構造体111,113,114は、いずれもY軸方向に伸びた板状の構成要素であり、異属間接続体112に接続されている。
ただ、台座310に接続されているのは、中央板状構造体111の左端部のみである。
本願では、各板状構造体の両端部分のうち、台座310への接続経路上において、台座310に近い方を根端部と呼び、台座310から遠い方を先端部と呼ぶことにする。たとえば、中央板状構造体111の場合、図の左の方が右よりも台座310に近いため、左端側が根端部、右端側が先端部ということになる。これに対して、負側板状構造体113および正側板状構造体114の場合は、空間的な位置関係に着目すると、図の左の方が右よりも台座310に近い。しかしながら、台座310への接続経路を考えると、端点T3は、T3−T2−T1−Oという経路で台座310に接続されており、端点T5は、T5−T4−T1−Oという経路で台座310に接続されている。したがって、当該接続経路上においては、図の右の方が左よりも台座310に近いため、右端側が根端部、左端側が先端部ということになる。
そして、ここでは、説明の便宜上、各板状構造体に対して、2つの属性のいずれかを与えることにする。第1属性は、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている板状構造体に対して与えられる属性であり、図示の例の場合、中央板状構造体111が第1属性の板状構造体ということになる。これに対して、第2属性は、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている板状構造体に対して与えられる属性であり、図示の例の場合、負側板状構造体113および正側板状構造体114が第2属性の板状構造体ということになる。
要するに、図4(a) に示す実施例の場合、第1属性をもつ中央板状構造体111は、YZ平面上に配置されており、根端部が台座310に接続されており、先端部が異属間接続体112に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。また、第2属性をもつ負側板状構造体113は、負側空間に配置されており、根端部が異属間接続体112に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びており、同じく第2属性をもつ正側板状構造体114は、正側空間に配置されており、根端部が異属間接続体112に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。
異属間接続体112は、第1属性をもつ板状構造体と第2属性をもつ板状構造体とを相互に接続する役割を果たし、文字どおり、「異なる属性をもった板状構造体を相互に接続する構成要素」である。第1属性をもつ板状構造体と第2属性をもつ板状構造体とは、根端部から先端部へ向かう方向が逆転した関係になっているため、台座310から伸びる片持ち梁構造の経路(図4(a) の例の場合、O−T1−T2−T3を経る経路や、O−T1−T4−T5を経る経路)は、異属間接続体112において折り返すことになり、異属間接続体112は折り返し点としての役割を果たすことになる。
主基板110の下面には、3組の重錘体211,212,213が接続されている。図4(a) では、これら重錘体の輪郭の一部が破線で描かれている。重錘体211は、異属間接続体112と同一の平面形状を有する直方体状の構造物であり、異属間接続体112の下面に接続されている。一方、重錘体212は、負側板状構造体113の先端部の下面に接続された正方形の平面形状を有する直方体状の構造物であり、重錘体213は、正側板状構造体114の先端部の下面に接続された正方形の平面形状を有する直方体状の構造物である。
これら各重錘体の構造は、図4(b) に示す側面図や、図5および図6に示す側断面図に明瞭に現れている。図4(b) は、図4(a) に示す基本構造部を図4(a) の下方側から観察した状態を示す側面図である。また、図5は、図4(a) に示す基本構造部をYZ平面で切断した側断面図であり、図6は、図4(a) に示す基本構造部を切断線6−6に沿って切断した側断面図である。これらの図からわかるように、各重錘体211,212,213の底面の位置は、台座310の底面の位置よりも若干上方に設定されている。これは、台座310の底面を装置筐体に固定したときに、装置筐体と各重錘体211,212,213の底面との間に若干の空間が維持されるようにするための配慮である。各重錘体211,212,213は、この空間を利用して装置筐体内で振動することになる。
<<< §3. 複数の共振系をもつ基本構造部の特徴 >>>
§2では、発電素子1000の基本構造部に、複数の共振系が含まれており、全体として、複雑な合成振動系が構成されることを簡単に説明した。ここでは、これら複数の共振系の具体的な振動態様の特徴とその共振周波数について、より詳しい説明を行うことにする。
図4(a) に示す基本構造部において、重錘体211は、中央板状構造体111による片持ち梁構造で台座310に対して支持されており、台座310から重錘体211に至る経路は、原点Oから端点T1に至る経路になる。これに対して、重錘体212は、中央板状構造体111,異属間接続体112,負側板状構造体113による片持ち梁構造で台座310に対して支持されており、台座310から重錘体212に至る経路は、O−T1−T2−T3を辿る経路になる。同様に、重錘体213は、中央板状構造体111,異属間接続体112,正側板状構造体114による片持ち梁構造で台座310に対して支持されており、台座310から重錘体213に至る経路は、O−T1−T4−T5を辿る経路になる。
このように、3組の重錘体211,212,213は、いずれも片持ち梁構造で台座310に対して支持されているが、片持ち梁構造の経路が異なるため、それぞれ別個の共振系が構成されることになる。図7は、この基本構造部に含まれている2通りの共振系を示す概念図である。
図7(a) は、第1属性をもつ中央板状構造体111の変形に起因して振動を生じる第1の共振系Iを示す。この図では、中央板状構造体111の根端部に位置する原点Oを固定した状態において、先端部に位置する端点T1が変位する様子が示されている。ここでは、この共振系を、1本の線からなる可撓性をもった板状構造体111と、端点T1に位置する質点mと、によって構成される単純なモデルとして考える。図の実線は、静止状態の系を示し、破線は振動状態の系を示す。振動状態では、板状構造体111が破線で示すように変形し、端点T1は、静止状態の位置T1(0)から、上方位置T1(+)まで変位したり、下方位置T1(−)まで変位したりする動作を繰り返す。
図4(a) に示すように、端点T1には、異属間接続体112、負側板状構造体113、正側板状構造体114、重錘体211,212,213の合計荷重が加わることになり、中央板状構造体111は、これらの荷重を支持する役割を果たしている。したがって、図7(a) のモデルにおける質点mは、構成要素211,212,213,112,113,114の全体の質量をもつ点ということになる。
図1に示す従来の発電素子の基本構造部は、図7(a) に示す共振系Iについて、板状構造体111を板状構造体100によって具現化し、質点mを重錘体200によって具現化したものに相当する。このような共振系は、図2のグラフに示すような周波数特性を有しており、その振幅Aは、所定の共振周波数frの位置にピーク波形Pを有している。図7(a) に示す共振系Iの場合、その共振周波数fr1の値は、板状構造体111のバネ定数と質点mの質量(構成要素211,212,213,112,113,114の全体の質量)によって定まるので、これらの値を調整することにより、共振周波数fr1の値を調整することが可能である。
一方、図7(b) は、第2属性をもつ負側板状構造体113の変形に起因して振動を生じる第2の共振系IIを示す(正側板状構造体114の変形に起因して振動を生じる共振系も同じである)。この図では、負側板状構造体113の根端部に位置する端点T2を固定した状態において、先端部に位置する端点T3が変位する様子が示されている。ここでも、この共振系を、1本の線からなる可撓性をもった板状構造体113と、端点T3に位置する質点mと、によって構成される単純なモデルとして考える。やはり実線は、静止状態の系を示し、破線は振動状態の系を示す。振動状態では、板状構造体113が破線で示すように変形し、端点T3は、静止状態の位置T3(0)から、上方位置T3(+)まで変位したり、下方位置T3(−)まで変位したりする動作を繰り返す。
図4(a) に示すように、端点T3には、重錘体212の荷重が加わることになり、負側板状構造体113は、当該荷重を支持する役割を果たす。したがって、図7(b) のモデルにおける質点mは、重錘体212の質量をもつ点ということになる。この図7(b) に示す共振系IIの場合、その共振周波数fr2の値は、板状構造体113のバネ定数と質点mの質量(重錘体212の質量)によって定まるので、これらの値を調整することにより、共振周波数fr2の値を調整することが可能である。
もっとも、図4に示す基本構造部の場合、図7(b) のモデルにおいて固定点として示されている端点T2は、図7(a) のモデルにおいて変位点として示されている端点T1に接続されている。このため、実際には、端点T2は固定点ではなく、端点T1とともに振動する点になり、第2の共振系IIは、それ全体が第1の共振系Iによって振動させられる系になる。したがって、図4に示す基本構造部は、第1の共振系Iと第2の共振系IIとを入れ子状にした複雑な合成振動系を構成している。
図7(c) は、このような合成振動系を単純なモデルとして示す図であり、図7(a) に示す第1の共振系Iの端点T1の位置に、図7(b) に示す第2の共振系IIを接ぎ木した形態をとる。実際には、第2の共振系IIとしては、負側板状構造体113についての系と正側板状構造体114についての系との2組が組み込まれることになる。したがって、この合成振動系には、中央板状構造体111についての共振系I、負側板状構造体113について共振系II、正側板状構造体114について共振系IIが含まれている。ここで、2組の共振系IIは、その全体が、端点T1に接続された「共振系Iの重り」として機能するため、共振系Iは、2組の共振系IIをそっくり含んだ系ということになる。
図7(c) は、端点T1が上方位置T1(+)に変位し、端点T3が所定位置T3(b)に変位した状態を示している。ここで、位置T3(b)は、図7(b) に示す端点T3の位置に応じて定まる。上述したとおり、共振系Iの共振周波数fr1は、板状構造体111のバネ定数とその質点mの質量(端点T1に加わる荷重)によって定まり、共振系IIの共振周波数fr2は、板状構造体113もしくは114のバネ定数とその質点mの質量(端点T3もしくはT5に加わる荷重)によって定まる。したがって、これらの値を調整することにより、共振周波数fr1,fr2の値を調整することができる。ただ、共振系IIは、全体が共振系Iの重りとして機能するため、共振系IIに対して施した調整は、共振系Iに対しても影響を与えることになる。
なお、図7に実線もしくは破線で示す各板状構造体の変形態様は、各共振系が1次共振モードで共振している状態を示すものであるが、実際には、より高次の共振モードで振動する場合もある。
図8は、一般的な板状構造体の共振モードのいくつかの例を示す模式図であり、水平線を基準位置としたときの板状構造体の変形態様が示されている。図の曲線が板状構造体を示しており、左端(根端部)が固定され、右端(先端部)が自由端となっている。図には、各変形状態において、板状構造体の上面に作用する応力の方向を矢印で示した。具体的には、白い矢印は上面に「長手方向に伸びる応力」が作用することを示し、黒い矢印は上面に「長手方向に縮む応力」が作用することを示している。
図8(a) は1次共振モードの変形態様を示しており、全体的に上方に凸となるなだらかな曲線が描かれている。このような変形状態では、板状構造体の上面にはその長手方向に伸びる応力が作用する(白い矢印参照)。なお、板状構造体の下面には、逆に、長手方向に縮む応力が作用するが、ここでは、上面の伸縮のみに着目する。
一方、図8(b) は2次共振モードの変形態様を示しており、根端部近傍では下方に凸となるなだらかな曲線になるが、その先は、上方に凸となるなだらかな曲線になる。その結果、板状構造体の根端部上面には長手方向に縮む応力が作用し(黒い矢印参照)、その先の上面には長手方向に伸びる応力が作用する(白い矢印参照)。同様に、図8(c) は3次共振モードの変形態様を示しており、曲線はより複雑な形状をなし、部分的に縮む応力(黒い矢印参照)や、伸びる応力(白い矢印参照)が作用する。図示は省略するが、4次以上の共振モードでは、板状構造体の変形態様は更に複雑になる。
この図8に示す各共振モードは、図1に例示するような単純な共振系における板状構造体100についてのものであり、周波数特性のグラフ上には、共振モードの次数に応じた共振周波数のピークが現れ、一般に、共振モードの次数が高くなるほど、ピーク位置はより周波数の高い方にシフトする。
もちろん、この単純な共振系における共振モードを、図7(c) に示すような合成振動系にそのまま当てはめることはできないが、いずれにしても、図3に示す各板状構造体111,113,114の変形態様は、外部環境から与えられる振動の周波数に応じて様々に変化し、各部に加わる応力の方向も変化することになる。実際には、図3に示す各板状構造体111,113,114は、いずれも複数の共振モードで振動し、共振周波数のピークが複数箇所に現れることになるが、各板状構造体の表面に生じる応力は、図8(a) に示す1次共振モードによる変形態様において最も大きくなり、この1次共振モードによる振動が発電に最も寄与する。したがって、以下、各板状構造体が1次共振モードにより振動するものとして、本発明の作用効果の説明を行う。
<<< §4. 共振周波数の調整 >>>
本発明の目的は、発電可能な周波数帯域を広げ、様々な利用環境において効率的な発電を行うことが可能な発電素子を提供することにある。そのため、本発明では、図3に示す実施例のように、複数の共振系を含む合成振動系として振る舞う基本構造部を採用している。上述したとおり、個々の共振系には、それぞれ固有の共振周波数frが存在し、各共振周波数frは、板状構造体のバネ定数と重りの質量によって定まる。したがって、各板状構造体のバネ定数と重りの質量を調整すれば、個々の共振系の共振周波数frを周波数軸上の所望の方向にシフトさせることができ、発電可能な周波数帯域を広げることができる。これが本発明の基本原理である。
図9は、図1に示すような単一の重錘体200を有する単純な共振系において、重錘体200の共振周波数frを調整するための具体的な方法をまとめた表である。この表に示されている具体的な調整方法は、板状構造体100の形状や材質を変える方法(板状構造体100のバネ定数を変える方法)と、重錘体200の質量を変える方法とに大別される。
前者としては、図1に示す板状構造体100について、厚みt(Z軸方向の寸法)を変える方法、幅w(X軸方向の寸法)を変える方法、長さL(Y軸方向の寸法)を変える方法、材質(ヤング率E)を変える方法が挙げられている。まず、板状構造体100の厚みtを薄くすれば、共振周波数frは低くなり、厚みtを厚くすれば、共振周波数frは高くなる。同様に、板状構造体100の幅wを狭くすれば、共振周波数frは低くなり、幅wを広くすれば、共振周波数frは高くなる。そして、板状構造体100の長さL(共振系の長さ)を長くすれば、共振周波数frは低くなり、長さLを短くすれば、共振周波数frは高くなる。最後に、板状構造体100の材質を柔らかくすれば(ヤング率Eを小さくすれば)共振周波数frは低くなり、材質を硬くすれば(ヤング率Eを大きくすれば)共振周波数frは高くなる。
一方、後者は、重錘体の質量mを変える方法であり、具体的には、サイズを変える方法と材質(比重)を変える方法とがある。いずれの場合も、質量mを大きくすると(重くすると)共振周波数frは低くなり、質量mを小さくすると(軽くすると)共振周波数frは高くなる。
この図9の表に示す調整方法は、図1に示すような単一の重錘体200を有する共振系を前提としたものであるが、その基本原理は、複数の重錘体を有する図3に示す基本構造部にも適用することができる。
板状構造体の形状や材質を変える前者の方法では、変更対象として、厚みt、幅w、長さL、材質(ヤング率E)という4つのパラメータが存在するが、もちろん、これら4つのパラメータを組み合わせて変更するようにしてもかまわない。この4つのパラメータを変えることは、共振系のバネ定数を変えることに他ならない。もちろん、共振周波数をシフトさせる方法には、重錘体の質量mを変える方法もあるので、板状構造体の形状や材質を変える前者の方法と、重錘体の質量mを変える後者の方法と、を組み合わせて利用することもできる。
続いて、図3に示す発電素子1000の全体の発電量に関する周波数特性について説明する。図10は、図3に示す発電素子1000の基本構造部について、コンピュータシミュレーションを行った結果として得られた各共振系の振動点となる端点T1,T3の振動の周波数特性を示すグラフである。グラフの横軸は、この発電素子1000に外部から与える振動(この例では、Z軸方向の振動)の周波数fを示し、グラフの縦軸は、当該外部振動に基づいて励振する端点T1もしくは端点T3の振幅Aを示している。
具体的には、図10(a) は、第1の共振系Iの振動点となる端点T1についての振幅Aを示す周波数特性であり、周波数値fr1の位置に大きなピーク波形P11が現れており、周波数値fr2の位置に小さなピーク波形P12が現れている。一方、図10(b) は、第2の共振系IIの振動点となる端点T3についての振幅Aを示す周波数特性であり、周波数値fr2の位置に大きなピーク波形P22が現れており、周波数値fr1の位置に小さなピーク波形P21が現れている。
ここで、周波数値fr1は、第1の共振系Iに固有の1次共振モードでの共振周波数であり、周波数値fr2は、第2の共振系IIに固有の1次共振モードでの共振周波数である。図3の基本構造部において、各板状構造体111,113,114は、厚みtは同一であるが、幅wおよび長さLは若干相違する。具体的には、図4(a) に示すとおり、第1の共振系Iを構成する板状構造体111は、第2の共振系IIを構成する板状構造体113,114に比べて、幅wは狭く、長さLは長い。したがって、図9の表を参照すると、第1の共振系Iを構成する板状構造体111の方が、第2の共振系IIを構成する板状構造体113,114よりもバネ定数kが小さくなり、板状構造体のバネ定数の比較に関する限り、第1の共振系Iの共振周波数fr1の方が、第2の共振系IIの共振周波数fr2よりも低くなる。
一方、第1の共振系Iの重りの質量mは、図7(a) に示すとおり、構成要素211,212,213,112,113,114の全体の質量になる。これに対して、第2の共振系IIの重りの質量mは、図7(b) に示すとおり、重錘体212の質量になる。したがって、第1の共振系Iの重りの方が、第2の共振系IIの重りよりも重くなるので、図9の表を参照すると、重りの重さに関しても、やはり第1の共振系Iの共振周波数fr1の方が、第2の共振系IIの共振周波数fr2よりも低くなる。
結局、図3の基本構造部の場合、共振周波数fr1の方が、共振周波数fr2よりも低くなる。図10(a) ,(b) に示すグラフは、このような理論的な解析結果に合致する周波数特性を示している。
したがって、図3に示す台座310に対して外部から振動を与え、この外部振動の周波数fを低い方から徐々に上げてゆくと、次のような現象が見られることになる。まず、与える外部振動の周波数fが共振周波数fr1に達したときに、図10(a) のピーク波形P11に示すとおり、端点T1の振幅Aが急激に増大する。これは、端点T1の振動に関与する第1の共振系Iがその固有の共振周波数fr1に達したためである。このとき、第2の共振系IIについては、まだ固有の共振周波数fr2に達していないため、本来であれば、端点T3の振幅Aは極めて小さくなるはずである。
しかしながら、実際には、第1の共振系Iと第2の共振系IIとは、図7(c) に示すような入れ子状をなしており、両者は物理的にも接続されているため、振動に関して相互に影響を及ぼすことになる。すなわち、外部振動の周波数fが共振周波数fr1に達し、端点T1の振幅Aがピーク波形P11に示すように急増すると、その影響を受け、端点T3の振幅Aも増加する。図10(b) に示す小さなピーク波形P21は、このような影響を受けて発生したピーク波形である。要するに、端点T1の共振周波数fr1に相当する周波数をもった外部振動が与えられると、端点T1の振幅が急増するだけでなく、その影響で、端点T3の振幅も増加する現象が生じる。
続いて、外部振動の周波数fが共振周波数fr2に達した場合を考えると、図10(b) のピーク波形P22に示すとおり、端点T3の振幅Aが急激に増大する。これは、端点T3の振動に関与する第2の共振系IIがその固有の共振周波数fr2に達したためである。
このとき、その影響を受け、端点T1の振幅Aも増加する。図10(a) に示す小さなピーク波形P12は、このような影響を受けて発生したピーク波形である。要するに、端点T3の共振周波数fr2に相当する周波数をもった外部振動が与えられると、端点T3の振幅が急増するだけでなく、その影響で、端点T1の振幅も増加する現象が生じる。
なお、図10(b) は、端点T3(負側板状構造体113の先端点)の振動の周波数特性を示すものであるが、端点T5(正側板状構造体114の先端点)の振動の周波数特性も全く同じものになる。
結局、図3に示す発電素子1000の台座310に対して、共振周波数fr1をもつ外部振動が加えられたときには、重錘体211には図10(a) のピーク波形P11に示すような振幅Aをもった振動が生じ、重錘体212,213には図10(b) のピーク波形P21に示すような振幅Aをもった振動が生じることになる。また、共振周波数fr2をもつ外部振動が加えられたときには、重錘体211には図10(a) のピーク波形P12に示すような振幅Aをもった振動が生じ、重錘体212,213には図10(b) のピーク波形P22に示すような振幅Aをもった振動が生じることになる。
そこで、中央板状構造体111,負側板状構造体113,正側板状構造体114の変形に基づいて電荷発生素子400が発生させた電荷を発電回路500によって整流して取り出すようにすれば、発電素子1000全体としての発電量の周波数特性は、図11のグラフに示すようになる。すなわち、第1の共振系Iの共振周波数fr1の位置に発電量の第1ピーク波形P1(半値幅h1)が得られ、第2の共振系IIの共振周波数fr2の位置に発電量の第2ピーク波形P2(半値幅h2)が得られる。なお、図11では、便宜上、2つのピーク波形P1,P2の高さや幅を同一に描いているが、実際には、個々のピーク波形P1,P2の高さや幅は、図3に示す基本構造部の各部の寸法や材質などの条件によって定まることになる。
この図11の縦軸に示す発電量は、あくまでも発電素子1000全体としての総発電量であるから、図11に示す第1ピーク波形P1には、第1の共振系Iを構成する中央板状構造体111の変形に基づく発電量だけでなく、第2の共振系IIを構成する負側板状構造体113および正側板状構造体114の変形に基づく発電量も含まれている。第2ピーク波形P2も同様に、各板状構造体111,113,114の変形に基づく総発電量を示すものである。
図1に示す従来の発電素子の場合、図2のグラフに示す共振周波数fr近傍の周波数をもった外部振動が与えられたときにのみ効率的な発電が行われることになり、発電可能な周波数帯域は、その半値幅h程度の狭いものにならざるを得ない。これに対して、図3に示す本発明に係る発電素子1000の場合、図11のグラフに示すとおり、共振周波数fr1,fr2の位置にそれぞれピーク波形P1,P2が得られるため、これら共振周波数fr1,fr2近傍の周波数をもった外部振動が与えられたときに効率的な発電が可能になり、発電可能な周波数帯域を、図示の周波数帯域R1程度にまで広げることが可能になる。
もちろん、図示の周波数帯域R1は、周波数fr1〜fr2の範囲をすべてカバーする連続した帯域ではなく、いわば「歯抜け状態」の帯域である。したがって、fr1〜fr2の範囲の周波数をもった外部振動のすべてについて効率的な発電が行われるわけではないが、図2のグラフに示す従来の発電素子の発電特性に比べれば、発電可能な周波数帯域を広げる効果が得られることになる。
前述したとおり、図3に示す発電素子1000の基本構造部では、第1属性をもつ板状構造体111と第2属性をもつ板状構造体113,114とが、異属間接続体112によって接続されており、しかも第1属性をもつ板状構造体と第2属性をもつ板状構造体とは、根端部から先端部へ向かう方向が逆転した関係になっている。このため、すべての板状構造体は、同じ基準軸Yに沿った方向に伸びているが、異属間接続体112において折り返す構造になっているため、基本構造部全体を、比較的コンパクトな空間に収容することができ、発電素子全体として小型化を図ることができる。
しかも、上記構造により、同じ基準軸Yに沿った方向に伸びる複数の板状構造体によって、入れ子状になった合成振動系を形成することができるので、図11の周波数特性に示すように、比較的大きな発電量のピークP1,P2を複数箇所に設けることができるようになり、発電可能な周波数帯域を広げる効果が得られることになる。これが、本発明の重要な作用効果である。
その上、本発明に係る発電素子を設計する際には、複数の共振系についてのバネ定数や重りの質量を変更することにより、発電量のピークP1,P2の位置をシフトさせることが可能である。
上述したとおり、図2に示す従来装置のグラフと図11に示す本発明に係る装置のグラフとを比較すると、後者では、ピーク波形が2組に増えたため、発電可能な周波数帯域は、図示の周波数帯域R1程度にまで広がっている。したがって、この発電素子1000の実利用環境において外部から与えられるであろう振動が、図示する周波数帯域R1内の周波数成分を含んだ振動であろうと想定される場合には、図11に示す周波数特性は、非常に好ましいと言える。特に、実利用環境における外部振動の主たる周波数成分が、fr1,fr2であるような場合は、図11に示す周波数特性は、正に理想的な特性になる。
しかしながら、想定される外部振動の周波数成分が、より広い範囲に分布している場合は、ピーク波形P1の共振周波数fr1(第1の共振系Iの共振周波数)をより低くなるように左側にシフトさせ、ピーク波形P2の共振周波数fr2(第2の共振系IIの共振周波数)をより高くなるように右側にシフトさせる調整を行うのが好ましい。図12(a) は、このような調整を行った結果を示すグラフである。ピーク波形P1の共振周波数fr1はfr1(−)に調整され、ピーク波形P1は左側にシフトしてピーク波形P1′となっている。また、ピーク波形P2の共振周波数fr2はfr2(+)に調整され、ピーク波形P2は右側にシフトしてピーク波形P2′となっている。
その結果、図12(a) のグラフの場合、全体の周波数帯域がR2に広がっている。もちろん、この周波数帯域はR2は、周波数fr1(−)〜fr2(+)の範囲をすべてカバーする連続した帯域ではなく、「歯抜け状態」の帯域であるが、周波数fr1(−)〜fr2(+)の範囲の周波数成分を含む外部振動が与えられた場合には、好ましい周波数特性を示すことになる。特に、主たる周波数成分が、fr1(−),fr2(+)であるような場合は、図12(a) に示す周波数特性は理想的な特性になる。
逆に、想定される外部振動の周波数成分が、より狭い範囲に分布している場合は、図11に示す周波数特性において、ピーク波形P1の共振周波数fr1をより高くなるように右側にシフトさせ、ピーク波形P2の共振周波数fr2をより低くなるように左側にシフトさせる調整を行うのが好ましい。図12(b) は、このような調整を行った結果を示すグラフである。ピーク波形P1の共振周波数fr1はfr1(+)に調整され、ピーク波形P1は右側にシフトする。また、ピーク波形P2の共振周波数fr2はfr2(−)に調整され、ピーク波形P2は左側にシフトする。その結果、2つのピーク波形は融合し、半値幅h1,h2よりも広い半値幅hhをもった融合ピーク波形PPが形成されている。
この図12(b) のグラフの場合、全体の周波数帯域はR3になり、図11のグラフの周波数帯域R1よりは狭くなっているが、融合ピーク波形PPが形成されているため、周波数帯域R3は、周波数fr1(+)〜fr2(−)の範囲をすべてカバーする連続した帯域になる。したがって、周波数fr1(+)〜fr2(−)の近傍の周波数成分を含む外部振動が与えられた場合には、図12(b) に示す周波数特性は理想的な特性になる。
この図12(b) のグラフに示すような周波数特性をもった発電素子の場合、その基本構造部が、第1属性の板状構造体111の振動端に接続された重錘体211と、第2属性の板状構造体113,114の振動端に接続された重錘体212,213と、を有しており、これら2種類の重錘体の共振周波数付近のスペクトルピーク波形が相互に一部重複するように、各重錘体の共振周波数が隣接するように設定されていることになる。このように、複数のスペクトルピーク波形を隣接させるような設計を行うと、より幅の広い融合ピーク波形PPを形成することができるので、広く、かつ、連続した周波数帯域にわたって効率的な発電が可能になる。
実用上は、実利用環境で発生する外部振動の周波数成分を考慮して、適切な周波数特性をもつ発電素子を設計するのが好ましい。そのためには、第1の共振系Iおよび第2の共振系IIの共振周波数fr1,fr2をそれぞれ所望の方向にシフトする調整が必要になる。もちろん、想定される外部振動の周波数成分が全体的に高い場合や、全体的に低い場合は、周波数帯域自体を周波数軸fに沿って左右に移動させるような調整も必要になる。
各共振系の共振周波数frを調整するには、図9の表に示したとおり、板状構造体を調整する方法(バネ定数を調整する方法)と、重錘体の質量を調整する方法がある。バネ定数を調整する方法を採る場合は、第1属性の板状構造体の変形に起因して振動を生じる第1の共振系Iと、第2属性の板状構造体の変形に起因して振動を生じる第2の共振系IIと、について、第1の共振系Iのバネ定数k1と第2の共振系IIのバネ定数k2とが異なるように設定すればよい。このような設定を行えば、少なくとも2組の共振周波数fr1,fr2を異なる値に設定することができ、単一の共振周波数をもつ共振系に比べて、発電可能な周波数帯域を広げる効果が得られる。
ここで、第1の共振系Iのバネ定数k1は、図7(a) に示すように、点O(台座)を固定した状態において、端点T1(異属間接続体112)に対して所定の作用方向(たとえば、図示の例はZ軸方向)に力Fを加えたときに、端点T1の当該作用方向に生じる変位をd1として、k1=F/d1なる式で与えられる値k1として定義することができる。
同様に、第2の共振系IIのバネ定数k2は、図7(b) に示すように、端点T2(異属間接続体112)を固定した状態において、端点T3もしくはT5(第2属性の板状構造体113もしくは114の振動端)に対して上記作用方向に力Fを加えたときに、端点T3もしくはT5の当該作用方向に生じる変位をd2として、k2=F/d2なる式で与えられる値k2として定義することができる。
実際には、バネ定数は、変位の方向に応じて異なるため、個々の方向ごとに別個のバネ定数が定義される。たとえば、図7(a) ,(b) に示す例のように、力FをZ軸方向に加えたときに生じる変位d1,d2に基づいて算出されるバネ定数は、Z軸方向に関するバネ定数ということになる。したがって、実用上は、実利用環境で発生すると想定される外部振動の代表的な振動方向に関するバネ定数を考慮して設計を行うようにすればよい。
バネ定数に影響を与えるパラメータは、図9の表に示すように、板状構造体の厚み、幅、長さ、材質という4つのパラメータである。したがって、2組の共振周波数fr1,fr2を異なる値に設定して、発電可能な周波数帯域を広げる効果を得るには、基本構造部に含まれる複数の板状構造体のうち、少なくとも2組に関して、厚み、幅、長さ、材質の4つのパラメータのうちの1つのパラメータもしくは複数のパラメータを異ならせることにより、第1の共振系のバネ定数と第2の共振系のバネ定数とが異なるように設定すればよい。
もちろん、重錘体の質量を変えることにより、共振周波数を調整することもできる。また、重錘体の位置を変えることにより(これは、板状構造体の長さを変えることと等価である)、共振周波数を調整することもできる。
図13は、図3に示す発電素子1000の変形例に係る発電素子1001の基本構造部の上面図であり、図14は、この図13に示す発電素子1001の基本構造部を切断線14−14に沿って切断した正断面図である。図3に示す発電素子1000と図13に示す発電素子1001との違いは、前者における一対の重錘体212,213が、後者では単一の重錘体215に置き換えられている点と、前者における中央板状構造体111が、後者では根端部側構造体111aと先端部側構造体111bとによって構成されている点である。
すなわち、この発電素子1001の基本構造部は、異属間接続体112の下面に接続された第1の重錘体211と、負側板状構造体113の先端部下面と正側板状構造体114の先端部下面とを連結する第2の重錘体215と、を有している。図13に示す第1の重錘体211は、図3に示す第1の重錘体211と全く同じものである。一方、第2の重錘体215は、図14の断面図に示すとおり、根端部側構造体111aの下方を、根端部側構造体111aに対して所定の距離を維持しつつ跨ぐように、U字状構造を有している。
したがって、第2の重錘体215は、所定の許容範囲内であれば、根端部側構造体111aに接触することなしに自由に変位することができ、第2の共振系IIの重りとしての役割を果たすことができる。この重錘体215は、根端部側構造体111aの下方を跨ぐ構造部分を有しているため、その質量は、図3に示す発電素子1000の重錘体212,213の合計質量よりも大きくなり、より効率的な発電が期待できる。もちろん、重錘体215は、負側板状構造体113の先端部上面と正側板状構造体114の先端部上面とを連結する構造とし、根端部側構造体111aの上方を跨ぐようにしてもかまわない。
なお、この発電素子1001では、発電素子1000における中央板状構造体111の代わりに、根端部側構造体111aと先端部側構造体111bとを結合した構造体が用いられているが、これは、根端部側構造体111aにストッパーとしての役割を担わせるためである。図14の正断面図に示されているとおり、先端部側構造体111bは、板状構造体113および114と同じ厚みを有する可撓性をもった板状構造体であり、発電素子1000における中央板状構造体111と同等の機能を果たす構成要素である。一方、根端部側構造体111aは、先端部側構造体111bよりも大きな厚みを有しており、より剛性の高い構造体になっている。この根端部側構造体111aは、先端部側構造体111b(中央板状構造体)の根端部を台座310に支持するための支持部材としての機能を果たす。
この発電素子1001では、外部から与えられる振動によって、先端部側構造体111bや板状構造体113,114に撓みが生じて、重錘体215が変位を生じた場合でも、根端部側構造体111a(支持部材)は台座310に固定されたまま、ほぼ静止状態を維持することになる。このため、過度の加速度が加わった場合でも、重錘体215が根端部側構造体111aに接触することにより、重錘体215の過度の変位は制限されることになり、厚みの薄い構造体111b,113,114の部分に破損が生じることを防ぐことができる。もちろん、ストッパーとしての機能が不要な場合は、根端部側構造体111aと先端部側構造体111bとを結合した構造体を用いる代わりに、図3に示す中央板状構造体111をそのまま用いればよい。
このように、本発明では、図9の表に示す任意のパラメータを変更することにより、所望の周波数特性をもった発電素子を設計することが可能である。ただ、基本構造部に含まれている2組の共振系I,IIは、図7(c) に示すように入れ子状の関係になっているので、一方の共振系のパラメータの変更が、他方の共振系のパラメータに影響を及ぼす可能性がある。たとえば、図3に示す基本構造部において、第2の共振系IIを構成する負側板状構造体113や正側板状構造体114の厚み、幅、長さなどを変えると、これらの質量にも変化が生じることになるので、結果的に、第1の共振系Iの重りの質量が変化することになる。
別言すれば、第2の共振系IIの共振周波数fr2を調整する意図で、負側板状構造体113や正側板状構造体114の厚み、幅、長さなどを変える設計を行うと、第1の共振系Iの共振周波数fr1も変動してしまうことになる。このため、所望の周波数特性をもつ発電素子を設計するには、コンピュータによるシミュレーションを利用して、設計変更後の周波数特性を求め、その結果に基づいて更なる設計変更を行う、という作業を繰り返すようにするのが好ましい。
<<< §5. 電荷発生素子および発電回路 >>>
図3に示す発電素子1000では、電荷発生素子400および発電回路500をブロック図として示したが、ここでは、これらについての具体的な実施例を述べる。まず、電荷発生素子400についての説明を行う。前述したとおり、台座310に外部振動が加わると、各板状構造体111,113,114が撓んで変形することにより、各重錘体211,212,213が振動する。電荷発生素子400は、各板状構造体111,113,114の変形に基づいて電荷を発生させる構成要素である。
電荷発生素子400としては、たとえば、エレクトレットなどを用いることも可能であるが、図3に示す基本構造部については、層状の圧電素子を各板状構造体111,113,114の表面に形成するのが好ましい。以下に述べる実施例は、電荷発生素子400として圧電素子を用いた例であり、下部電極層、圧電材料層、上部電極層の3層構造によって圧電素子を構成している。
図15(a) は、図3に示す基本構造部に、電荷発生素子400として圧電素子を形成することにより得られる発電素子1002の上面図であり、図15(b) はこれをYZ平面で切断した側断面図である(発電回路500の図示は省略)。別言すれば、図4(a) ,図4(b) に示す基本構造部に圧電素子400を付加した状態が、図15(a) ,図15(b) に示されている。圧電素子400の3層構造は、図15(b) の側断面図に、中央板状構造体111の上面に形成された層として明瞭に示されている。
図15(b) に示すとおり、圧電素子400は、各板状構造体111,113,114の上面に形成された下部電極層410と、この下部電極層410の上面に形成され、応力に基づいて電荷を発生させる圧電材料層420と、この圧電材料層420の上面に形成された上部電極層430と、を有し、下部電極層410および上部電極層430にそれぞれ所定極性の電荷を供給する機能を有している。
なお、圧電素子400による発電は、実際には、各板状構造体111,113,114の変形を生じる部分(重錘体が接合されていない部分)において行われるため、理論的には、この変形が生じる部分にのみ圧電素子400を形成しておけば十分である。ただ、ここに示す実施例の場合、製造プロセスを簡略化するため、下部電極層410および圧電材料層420については、E字状をした主基板110(中央板状構造体111,異属間接続体112,負側板状構造体113,正側板状構造体114)の上面全面に形成し、上部電極層430のみ、それぞれ所定箇所に局在化して配置されるように形成している。
図15(a) の上面図にハッチングを施して示す矩形図形E11〜E34は、局在化して配置された個々の個別上部電極層を示している(上面図のハッチングは、これら個別上部電極層E11〜E34の形状パターンを明瞭に示すためのものであり、断面を示すものではない。)。
この基本構造部を上方から見ると、図15(a) に示すとおり、E字状をした圧電材料層420の上面に、12枚の個別上部電極層E11〜E34が配置されている状態が観察できる。E字状をした圧電材料層420の下には、同じくE字状をした下部電極層410が配置され、更にその下には、同じくE字状をした主基板110が配置されている。図15(b) は、この基本構造部をYZ平面で切断した側断面図であるため、中央板状構造体111上に形成された個別上部電極層E11,E13が現れており、その奥に、負側板状構造体113上に形成された個別上部電極層E23の一部が現れている。
結局、図15に示す実施例の場合、各板状構造体111,113,114を含むE字状をした主基板110の上面全面に共通下部電極層410が形成され、この共通下部電極層410の上面に共通圧電材料層420が形成され、この共通圧電材料層420の上面の異なる箇所にそれぞれ電気的に独立した複数の個別上部電極層E11〜E34が形成されている。
図16(a) および(b) は、図15に示す発電素子1002の各部の寸法を示すための参考図であり、図16(a) は上面図、図16(b) は側面図である。図16(a) に示す各部の寸法は次のとおりである。d1=0.5mm、d2=0.8mm、d3=0.2mm、d4=0.3mm、d5=0.5mm、d6=1.0mm、d7=0.3mm、d8=0.2mm、d9=0.3mm、d10=1.0mm、d11=0.4mm。一方、図16(b) に示す各部の寸法は次のとおりである。t1=525μm、t2=15μm、t3=0.05μm、t4=2μm、t5=0.05μm。もちろん、これらの各寸法値は、本発明の実施例に係る発電素子1002の実寸を一例として示すものであり、本発明は、これらの寸法値によって何ら限定されるものではない。
圧電材料層420は、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有している。具体的には、圧電材料層420は、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)やKNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)などの圧電薄膜によって構成することができる。あるいは、バルク型圧電素子を用いるようにしてもかまわない。各電極層410,430は、導電性材料であれば、どのような材料で構成してもかまわないが、実用上は、たとえば、金、白金、アルミニウム、銅などの金属層によって構成すればよい。
なお、電荷発生素子400として上述したような圧電素子を用いる場合は、主基板110としてシリコン基板を用いるのが最適である。これは、一般に、現在の製造プロセスをよって、金属基板の上面に圧電素子を形成した場合と、シリコン基板の上面に圧電素子を形成した場合とを比較すると、前者の圧電定数に比べて後者の圧電定数の方が3倍程度大きな値になり、後者の方の発電効率が圧倒的に高くなるためである。これは、シリコン基板の上面に圧電素子を形成すると、圧電素子の結晶の配向が揃うためと考えられる。
台座310に外部振動が与えられると、主基板110の撓みにより圧電材料層420の各部に応力が加わる。その結果、圧電材料層420の厚み方向に分極が生じ、上部電極層430および下部電極層410に電荷が発生する。別言すれば、圧電素子400は、外部振動に基づいて、下部電極層410および上部電極層430にそれぞれ所定極性の電荷を供給する機能を果たす。図には示されていないが、各電極層と発電回路500との間には配線が施されており、圧電素子400が発生させた電荷は発電回路500によって電力として取り出されることになる。
もちろん、板状構造体111,113,114に形成する個別上部電極層の形状および配置は、必ずしも図15(a) の上面図に示す例に限定されるわけではない。たとえば、図17は、図3に示す発電素子1000の更に別な変形例に係る発電素子1003の上面図である(発電回路500の図示は省略)。この上面図においても、ハッチングは、電荷発生素子400を構成する個別上部電極層の形状パターンを明瞭に示すためのものであり、断面を示すものではない。
図17に示す例の場合、中央板状構造体111の上面には、ほぼ全領域にわたるように単一の個別上部電極層E10が形成されており、負側板状構造体113の上面には、その中心を通る長手方向軸L1の両脇に、それぞれ個別上部電極層E25,E26が形成されており、正側板状構造体114の上面には、その根端部側に個別上部電極層E35が、その先端部側に個別上部電極層E36が、それぞれ形成されている。
もちろん、個別上部電極層の配置として、この図17に示すような電極配置を採用した発電素子1003でも、発電を行うことは可能であるが、発電効率は、図15(a) に示すような電極配置を採用した発電素子1002の方が良好になる。これは、図15(a) に示す個別上部電極層E11〜E34の配置が、各板状構造体111,113,114が特定の変形を生じた時点において、個々の個別上部電極層E11〜E34ごとに、それぞれ圧電材料層420から同一極性の電荷が供給されるように配慮されているためである。
図18は、台座10に左端が固定された一般的な板状構造体20についての、個別上部電極層の好ましい配置を示す上面図である。図示のとおり、板状構造体20の右端には重錘体30が接続されており、この重錘体30は、板状構造体20を用いた片持ち梁構造によって台座10に対して支持されていることになる。なお、図示は省略するが、実際には、板状構造体20の上面全面には下部電極層が形成され、その上面全面には圧電材料層が形成され、図示された4枚の個別上部電極層E1〜E4は、この圧電材料層の上面に形成されている。図のハッチングは、個別上部電極層E1〜E4の形状パターンを明瞭に示すためのものであり、断面を示すものではない。
この図18に示す配置例の特徴は、板状構造体20の上面の中心に、Y軸に平行な方向に伸びる中心軸を定義したときに、根端部側の中心軸の両脇と先端部側の中心軸の両脇とに、それぞれ個別上部電極層E1〜E4が配置されている点である。具体的には、図示の例の場合、Y軸を中心軸として、根端部側(図の左側)の中心軸の両脇には、個別上部電極層E1,E2が配置されており、先端部側(図の右側)の中心軸の両脇には、個別上部電極層E3,E4が配置されている。
一般に、1つの板状構造体20について、このような4組の個別上部電極層E1〜E4を配置すると、板状構造体20が特定の変形を生じた時点において、各個別上部電極層E1〜E4には、それぞれ圧電材料層から同一極性の電荷が供給される。
たとえば、台座10を固定した状態において、重錘体30がZ軸方向(図18の紙面に垂直な方向)に1次共振モード(図8(a) 参照)で振動したとすると、ある瞬間において、電極E1,E2が配置されている根端部側の上面の領域には圧縮方向応力か、伸張方向応力かのいずれかが作用し、電極E3,E4が配置されている先端部側の上面の領域にはこれと逆の応力が作用する。一方、重錘体30がY軸方向に1次共振モードで振動したとすると、ある瞬間において、板状構造体20の上面の全領域には、圧縮方向応力か、伸張方向応力かのいずれかが作用する。また、重錘体30がX軸方向に1次共振モードで振動したとすると、ある瞬間において、電極E1,E4が配置されている上面の領域には圧縮方向応力か、伸張方向応力かのいずれかが作用し、電極E2,E3が配置されている上面の領域にはこれと逆の応力が作用する。
したがって、少なくとも1次共振モードでの振動を想定した場合、重錘体30がどの方向に振動しようとも、各個別上部電極層E1〜E4には、ある時点において、それぞれ同一極性の電荷が供給される。たとえば、ある時点において、個別上部電極層E1に供給される電荷の極性は、正もしくは負のいずれか一方のみであり、同一時点で個別上部電極層E1内のある部分には正電荷、別なある部分には負電荷が供給されるようなことはない。
個別上部電極層E2〜E4についても同様である。
このように、ある1つの個別上部電極層について、ある時点では必ず同一極性の電荷が供給されることは、発電効率を向上させる上で重要である。たとえば、図17に示す実施例の場合、中央板状構造体111の上面には、単一の上部電極層E10のみが形成されているが、このような構成では、X軸方向もしくはZ軸方向に振動させた場合、同一時点において、同一の上部電極層E10に正負両極性の電荷が同時に供給されることになる。すなわち、同一の導電体上に逆極性の電荷が発生して、互いに打ち消しあって消滅してしまい、発電ロスを生じることになる。図17に示す上部電極層E25,E26の構成や、上部電極層E35,E36の構成も同様である。
このような理由から、実用上は、図18に示す例のように、1つの板状構造体20に電気的に独立した4組の個別上部電極層E1〜E4を形成するのが好ましい。図15(a) に示す個別上部電極層の配置は、各板状構造体111,113,114のすべてについて、図18に示す4組の電極配置を採用したものである。すなわち、中央板状構造体111の上面には、Y軸を中心軸として、根端部側の中心軸の両脇に電極層E11,E12が配置され、先端部側の中心軸の両脇に電極層E13,E14が配置されている。また、負側板状構造体113の上面には、Y軸に平行な長手方向軸L1を中心軸として、根端部側の中心軸の両脇に電極層E21,E22が配置され、先端部側の中心軸の両脇に電極層E23,E24が配置されている。同様に、正側板状構造体114の上面には、Y軸に平行な長手方向軸L2を中心軸として、根端部側の中心軸の両脇に電極層E31,E32が配置され、先端部側の中心軸の両脇に電極層E33,E34が配置されている。
なお、図18に示す例において、板状構造体20に発生する応力は、台座10や重錘体30との接続箇所の直前部分に最も集中する傾向があるので、上部電極層E1,E2の左端は台座10との境界位置まで伸ばすのが好ましく、上部電極層E3,E4の右端は重錘体30との境界位置まで伸ばすのが好ましい。図15(a) に示す各個別上部電極層も、このような境界位置まで端部を伸ばす構成を採用している。
図18に示す4組の上部電極層E1〜E4には、いずれも、ある時点では必ず同一極性の電荷が供給されることになるが、各上部電極層から取り出される電荷の極性は、時々刻々と変化する。これは、板状構造体20が振動すると、圧電材料層の各部に加わる応力の向き(圧縮方向応力か、伸張方向応力か)が変化し、それに応じて、発生電荷の極性が変化するためである。したがって、図15(a) に示す発電素子1002において、12組の各個別上部電極層E11〜E34に発生した電荷を取り出して電力として利用するためには、発電回路500によって、発生した電荷に基づいて生じる電流を整流する必要がある。
図19は、このような整流機能を有する発電回路500の具体的な構成を示す回路図である。図19において、左側に示されているP11〜P34は、それぞれ図15(a) に示す個別上部電極層E11〜E34の下方に位置する圧電材料層420の一部分である。そして、P11〜P34の左側に描かれた線は、共通の下部電極層410に相当し、P11〜P34の右側に描かれた線は、それぞれ個別上部電極層E11〜E34に相当する。
この回路図において、D11(+)〜D34(+)は整流素子(ダイオード)であり、それぞれ個別上部電極層E11〜E34に発生した正電荷を取り出す役割を果たす。また、D11(−)〜D34(−)も整流素子(ダイオード)であり、それぞれ個別上部電極層E11〜E34に発生した負電荷を取り出す役割を果たす。
一方、Cfは平滑用の容量素子(コンデンサ)であり、その正極端子(図の上方端子)には取り出された正電荷が供給され、負極端子(図の下方端子)には取り出された負電荷が供給される。この容量素子Cfは、発生電荷に基づく脈流を平滑化する役割を果たし、重錘体の振動が安定した定常時には、容量素子Cfのインピーダンスはほとんど無視しうる。容量素子Cfに並列接続されているZLは、この発電素子1002によって発電された電力の供給を受ける機器の負荷を示している。また、容量素子Cfの両端子と下部電極層410との間には、整流素子(ダイオード)として、互いに逆方向を向いたD41,D42が接続されている。
結局、発電回路500は、容量素子Cfと、各個別上部電極層E11〜E34に発生した正電荷を容量素子Cfの正極側へ導くために各個別上部電極層E11〜E34から容量素子Cfの正極側へ向かう方向を順方向とする正電荷用整流素子D11(+)〜D34(+)と、各個別上部電極層E11〜E34に発生した負電荷を容量素子Cfの負極側へ導くために容量素子Cfの負極側から各個別上部電極層E11〜E34へ向かう方向を順方向とする負電荷用整流素子D11(−)〜D34(−)と、を有し、振動エネルギーから変換された電気エネルギーを容量素子Cfにより平滑化して負荷ZLに供給する機能を果たすことになる。
この回路図において、負荷ZLには、正電荷用整流素子D11(+)〜D34(+)で取り出された正電荷と、負電荷用整流素子D11(−)〜D34(−)で取り出された負電荷とが供給されることになる。したがって、原理的には、個々の瞬間において、各個別上部電極層E11〜E34に発生する正電荷の総量と負電荷の総量とが等しくなるようにすれば、最も効率的な発電が可能になる。
したがって、実用上、発電素子1002の基本構造部は、図4(a) に示すとおり、YZ平面に関して面対称となる対称構造にするのが好ましい。また、中央板状構造体111の上面に形成する電極層E11〜E14は、YZ平面に関して面対称となる対称構造にするのが好ましく、負側板状構造体113の上面に形成する電極層E21〜E24は、長手方向軸L1を含みZ軸に平行な平面に関して面対称となる対称構造にするのが好ましく、正側板状構造体114の上面に形成する電極層E31〜E34は、長手方向軸L2を含みZ軸に平行な平面に関して面対称となる対称構造にするのが好ましい。
<<< §6. 基本構造部を装置筐体に収容した実施例 >>>
ここでは、発電素子を装置筐体に収容した実施例を説明する。図20(a) は、図3に示す発電素子1000を装置筐体310Aに収容した形態を有する装置筐体付きの発電素子1500の平断面図、図20(b) は側断面図である。
図示された装置筐体310Aは、図3に示す発電素子1000の基本構造部を収容するのに適した直方体をなす構造体であり、図20(a) の平断面図に示されている側板311〜314と、図20(b) の側断面図に示されている天板315および底板316を有する。図20(a) は、この発電素子1500を、XY平面に平行な、XY平面よりわずか上方に位置する平面で切断した断面図であり、図20(b) は、この発電素子1500を、YZ平面で切断した断面図である。なお、実際には、主基板110の上面には、圧電素子などの電荷発生素子400が設けられており、更に、いずれかの場所に、発生した電荷を電力として取り出すための発電回路500も設けられているが、図20では、これら電荷発生素子400および発電回路500についての図示は省略する。
この実施例の場合、図3に示す台座310は、装置筐体310Aの一部として組み込まれており、図示の側板311が図3に示す台座310としての機能を果たす。もちろん、台座310を装置筐体310Aとは別個に残しておき、図3に示す基本構造部をそっくり装置筐体310Aの中に収容し、台座310を装置筐体310Aの中に固定するようにしてもよい(たとえば、台座310の底面を底板316の上面に接合すればよい)。
図示のとおり、装置筐体310Aの内面と、各板状構造体111,113,114および各重錘体211,212,213の外面との間には、所定の空間が確保されており、装置筐体310Aに加えられた外部振動の大きさが所定の基準レベル以下である場合には、加えられた外部振動に応じて、各板状構造体111,113,114および各重錘体211,212,213が、確保されている空間内で振動し、発電が行われる。ところが、装置筐体310Aに加えられた外部振動の大きさが、上記基準レベルを超えた場合には、加えられた外部振動に応じて、各板状構造体111,113,114および各重錘体211,212,213のいずれかの箇所(場合によっては、主基板110の上面に形成された電荷発生素子400)が装置筐体310Aの内面に接触して、それ以上の変位が制限される。
もちろん、発電効率を高める、という観点からは、各板状構造体111,113,114や各重錘体211,212,213の変位は制御するべきではない。一般的には、大きな変位が生じれば、板状構造体は大きく撓み、圧電素子などの電荷発生素子400は、より大きな電荷を発生することができる。しかしながら、板状構造体に対して、その弾性限界を超えるような過度の変位が生じると、板状構造体が破損する可能性があり、発電素子として機能しなくなるおそれがある。そこで、実用上は、板状構造体が破損するような過度の変位が生じないように、装置筐体310Aの内面と、板状構造体および重錘体の外面との間の空隙寸法を所定の基準値に設定し、基準レベルを超えた外部振動が加えれらた場合には、板状構造体および重錘体が装置筐体310Aの内面に接触し、それ以上の変位が生じないようにしておくのが好ましい。
<<< §7. 第2〜第8の実施形態 >>>
<7−1. 第1の実施形態との相違>
続いて、これまで述べてきた第1の実施形態の変形例として、第2〜第8の実施形態を個別に説明する。これらの実施形態は、第1の実施形態に係る発電素子1000における基本構造部の形態、特に、板状構造体の数や相互の接続関係を変えたものであり、いずれも、§6で述べたように、装置筐体に収容した実施例として示すことにする。
なお、これら第2〜第8の実施形態に係る発電素子の基本動作は、これまで述べてきた第1の実施形態に係る発電素子の動作とほぼ同じであるため、個別の実施形態についての詳しい動作説明は省略する。
以下の説明で用いる図21〜図28および図31は、第2〜第8の実施形態に係る発電素子を、XY平面に平行な、XY平面よりわずか上方に位置する平面で切断した平断面図であり、発電回路500の図示は省略する。また、個々の板状構造体について、図18に示す4組の電極配置を採用した圧電素子を電荷発生素子400として用いた例を示す(一部に例外あり)。なお、これらの図において、装置筐体の部分(台座として機能する部分も含む)に施された粗い斜線ハッチングは、当該部分が断面部分であることを示している。一方、主基板の部分(板状構造体および各接続体)については、細かな斜線ハッチングは、個々の個別上部電極層の形成領域を示すものであり、ドットハッチングは、主基板の下面に重錘体が接合されている領域を示すものであり、いずれも断面を示すものではない。
また、以下の説明においても、XY平面を水平面にとり、YZ平面で仕切られる空間のうち、正のX座標値を有する空間を正側空間、負のX座標値を有する空間を負側空間と定義することにし、YZ平面上に配置された板状構造体を中央板状構造体と呼び、正側空間に配置された板状構造体を正側板状構造体と呼び、負側空間に配置された板状構造体を負側板状構造体と呼ぶことにする。
<7−2. 第2の実施形態>
図21は、本発明の第2の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子2000の平断面図である。この例の場合、平面がE字状をした主基板120は、第1属性をもつ負側板状構造体121および正側板状構造体122と、異属間接続体123と、第2属性をもつ中央板状構造体124と、によって構成されている。異属間接続体123は、第1属性をもつ負側板状構造体121および正側板状構造体122と、第2属性をもつ中央板状構造体124とを接続する役割を果たす。基本構造部は、この主基板120と、装置筐体320に側板の一部として組み込まれた台座321と、2組の重錘体221,222と、によって構成されている。そして、台座321は、根端点Q1およびQ2において、負側板状構造体121および正側板状構造体122を支持する役割を果たす。
ここで、負側板状構造体121は、負側空間に配置されており、根端部が台座321の根端点Q1に接続されており、先端部が異属間接続体123に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。また、正側板状構造体122は、正側空間に配置されており、根端部が台座の根端点Q2に接続されており、先端部が異属間接続体123に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
一方、中央板状構造体124は、YZ平面上に配置されており、根端部が異属間接続体123に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている第2属性をもつ板状構造体である。そして、第1の重錘体221は、異属間接続体123の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体であり、第2の重錘体222は、中央板状構造体124の先端部下面の領域(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体である。
図3に示す第1の実施形態では、第1属性をもつ板状構造体として、中央板状構造体111が1本だけ設けられ、第2属性をもつ板状構造体として、負側板状構造体113および正側板状構造体114の2本が設けられていたが、図21に示す第2の実施形態では、逆に、第1属性をもつ板状構造体として、負側板状構造体121および正側板状構造体122の2本が設けられ、第2属性をもつ板状構造体として、中央板状構造体124が1本だけ設けられている。
両実施形態ともに、合計3本の板状構造体を有し、合計12組の個別上部電極層を用いて電力が取り出される点に変わりはないが、図21に示す第2の実施形態の場合、主基板120と台座321との間の接続が、根端点Q1,Q2の2箇所において行われているため、装置筐体320に設けられた発電回路500(図示省略)と各個別上部電極層との間の配線を、根端点Q1の近傍と根端点Q2の近傍との2箇所において行うことが可能になり、配線の取り回しが容易になるという利点が得られる。
<7−3. 第3の実施形態>
図22は、本発明の第3の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子3000の平断面図である。この例の場合、主基板130は、第1属性をもつ第1の負側板状構造体131および第1の正側板状構造体132と、異属間接続体133と、第2属性をもつ第2の負側板状構造体134および第2の正側板状構造体135と、最先端部接続体136と、によって構成されている。異属間接続体133は、第1属性をもつ第1の負側板状構造体131および第1の正側板状構造体132と、第2属性をもつ第2の負側板状構造体134および第2の正側板状構造体135とを接続する役割を果たす。また、最先端部接続体136は、第2の負側板状構造体134の先端部および第2の正側板状構造体135の先端部の双方に接続された部材である。
基本構造部は、この主基板130と、装置筐体330に側板の一部として組み込まれた台座331と、2組の重錘体231,232と、によって構成されている。そして、台座331は、根端点Q1およびQ2において、第1の負側板状構造体131および第1の正側板状構造体132を支持する役割を果たす。
ここで、第1の負側板状構造体131は、負側空間に配置されており、根端部が台座331の根端点Q1に接続されており、先端部が異属間接続体133に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。また、第1の正側板状構造体132は、正側空間に配置されており、根端部が台座の根端点Q2に接続されており、先端部が異属間接続体133に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
一方、第2の負側板状構造体134は、負側空間に配置されており、根端部が異属間接続体133に接続されており、先端部が最先端部接続体136に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L3の方向)に伸びている第2属性をもつ板状構造体である。また、第2の正側板状構造体135は、正側空間に配置されており、根端部が異属間接続体133に接続されており、先端部が最先端部接続体136に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L4の方向)に伸びている第2属性をもつ板状構造体である。
そして、第1の重錘体231は、異属間接続体133の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体であり、第2の重錘体232は、最先端部接続体136の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体である。
図21に示す第2の実施形態では、第2属性をもつ板状構造体として、中央板状構造体124が1本だけ設けられていたが、図22に示す第3の実施形態では、第2属性をもつ板状構造体として、第2の負側板状構造体134および第2の正側板状構造体135の2本が設けられている。このため、板状構造体の数は4本に増え、合計16組の個別上部電極層を用いて電力が取り出される。このため、X軸方向の幅が若干広がることになるが、より大きな電力を生成することができる。もちろん、この第3の実施形態の場合も、主基板130と台座331との間の接続が、根端点Q1,Q2の2箇所において行われているため、図示しない発電回路500への配線の取り回しが容易になるという利点が得られる。
なお、最先端部接続体136を設けない構成にすることも可能である。この場合、第2の負側板状構造体134の先端部下面に第2の重錘体を接続し、第2の正側板状構造体135の先端部下面に第3の重錘体を接続するようにし、異属間接続体133の下面に接続された第1の重錘体231と合わせて、合計3組の重錘体をばらばらに設けるようにすればよい。
<7−4. 第4の実施形態>
図23は、本発明の第4の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子4000の平断面図である。図22に示す発電素子3000と図23に示す発電素子4000との本質的な違いは、後者では、中央板状構造体147および最先端部接続体148が追加されている点である。この中央板状構造体147は、これまでの各実施形態には見られなかった第3属性の板状構造体である。この第4の実施形態の重要な特徴は、第1属性の板状構造体および第2属性の板状構造体に加えて、更に、第3属性の板状構造体が設けられている点である。
この例の場合、主基板140は、第1属性をもつ第1の負側板状構造体141および第1の正側板状構造体142と、第1の異属間接続体143と、第2属性をもつ第2の負側板状構造体144および第2の正側板状構造体145と、第2の異属間接続体146と、第3属性をもつ中央板状構造体147と、最先端部接続体148と、によって構成されている。最先端部接続体148は、中央板状構造体147の先端部に接続された部材である。ここで、第1の異属間接続体143は、第1属性をもつ第1の負側板状構造体141および第1の正側板状構造体142と、第2属性をもつ第2の負側板状構造体144および第2の正側板状構造体145と、を接続する役割を果たす。また、第2の異属間接続体146は、第2属性をもつ第2の負側板状構造体144および第2の正側板状構造体145と、第3属性をもつ中央板状構造体147と、を接続する役割を果たす。
別言すれば、第1の異属間接続体143は、第1属性をもつ板状構造体と第2属性をもつ板状構造体とを相互に接続し、板状構造体の第1の折り返し点としての役割を果たす。
同様に、第2の異属間接続体146は、第2属性をもつ板状構造体と第3属性をもつ板状構造体とを相互に接続し、板状構造体の第2の折り返し点としての役割を果たす。このように、この第4の実施形態では、板状構造体が第1の折り返し点で折り返され、更に、第2の折り返し点でも折り返されることになる。
基本構造部は、この主基板140と、装置筐体340に側板の一部として組み込まれた台座341と、3組の重錘体241,242,243と、によって構成されている。そして、台座341は、根端点Q1およびQ2において、第1の負側板状構造体141および第1の正側板状構造体142を支持する役割を果たす。
ここで、第1の負側板状構造体141は、負側空間に配置されており、根端部が台座341の根端点Q1に接続されており、先端部が第1の異属間接続体143に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。また、第1の正側板状構造体142は、正側空間に配置されており、根端部が台座の根端点Q2に接続されており、先端部が第1の異属間接続体143に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
一方、第2の負側板状構造体144は、負側空間に配置されており、根端部が第1の異属間接続体143に接続されており、先端部が第2の異属間接続体146に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L3の方向)に伸びている第2属性をもつ板状構造体である。また、第2の正側板状構造体145は、正側空間に配置されており、根端部が第1の異属間接続体143に接続されており、先端部が第2の異属間接続体146に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L4の方向)に伸びている第2属性をもつ板状構造体である。
そして、中央板状構造体147は、YZ平面上に配置されており、根端部が第2の異属間接続体146に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている第3属性をもつ板状構造体であり、最先端部接続体148は、この中央板状構造体147の先端部に接続された部材である。
また、第1の重錘体241は、第1の異属間接続体143の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体であり、第2の重錘体242は、第2の異属間接続体146の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体であり、第3の重錘体243は、最先端部接続体148の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体である。
この第4の実施形態では、前述の第3の実施形態と同様に合計16組の個別上部電極層を用いて電力が取り出される。また、主基板140と台座341との間の接続が、根端点Q1,Q2の2箇所において行われているため、図示しない発電回路500への配線の取り回しが容易になるという利点が得られる。更に、この第4の実施形態の基本構造部では、第1属性をもつ板状構造体の振動に基づく第1の共振系と、第2属性をもつ板状構造体の振動に基づく第2の共振系と、第3属性をもつ板状構造体の振動に基づく第3の共振系と、を含んだ、より複雑な合成振動系が構成されることになる。
なお、最先端部接続体148を設けない構成にすることも可能である。この場合、中央板状構造体147の先端部下面に第3の重錘体を接続するようにすればよい。ただ、図示のように、中央板状構造体147よりも幅の広い最先端部接続体148を設け、その下面に第3の重錘体243を接続するようにすれば、第3の重錘体243として、より質量の大きな重錘体を形成することが可能になり、より大きな振動を生じさせることが可能になる。また、図示の例では、中央板状構造体147の上面には個別上部電極層(圧電素子)を設けていないが、発電効率を更に高めるには、中央板状構造体147の上面にも個別上部電極層(圧電素子)を設け、電力を取り出すようにすればよい。
<7−5. 第5の実施形態>
図24は、本発明の第5の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子5000の平断面図である。この第5の実施形態の重要な特徴は、同一属性の板状構造体が直列配置されている点である。これまで述べてきた実施形態では、いずれも、同一属性の板状構造体は並列配置されており、直列配置されているものはない。ここでは、まず、この点について確認してみよう。
まず、図3に示す第1の実施形態に係る発電素子1000の場合、第2属性の板状構造体として、負側板状構造体113と正側板状構造体114とが設けられているが、これらはいずれも根端部が異属間接続体112に接続されており、並列に配置されている。また、図21に示す第2の実施形態に係る発電素子2000の場合、第1属性の板状構造体として、負側板状構造体121と正側板状構造体122とが設けられているが、これらはいずれも根端部が台座321に接続されており、並列に配置されている。
一方、図22に示す第3の実施形態に係る発電素子3000の場合、第1属性の板状構造体として、負側板状構造体131と正側板状構造体132とが設けられているが、これらはいずれも根端部が台座331に接続されており、並列に配置されている。また、第2属性の板状構造体として、負側板状構造体134と正側板状構造体135とが設けられているが、これらはいずれも根端部が異属間接続体133に接続されており、並列に配置されている。図23に示す第4の実施形態に係る発電素子4000も同様である。
ところが、図24に示す第5の実施形態に係る発電素子5000の場合、合計4本の板状構造体が設けられており、そのうち、3本の板状構造体151,153,154は、いずれも根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となる第1属性の板状構造体であり、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となる第2属性の板状構造体は、板状構造体156のみである。ここで、板状構造体153と154とは並列配置の関係になっているが、板状構造体151と153は直列配置された関係になっており、板状構造体151と154も直列配置された関係になっている。その結果、部材152は、同じ第1属性の板状構造体を接続する役割を果たすことになる。そこで、ここでは、この部材152を同属間接続体と呼ぶことにする。
したがって、この例の場合、主基板150は、第1属性をもつ第1の中央板状構造体151と、同属間接続体152と、同じく第1属性をもつ負側板状構造体153および正側板状構造体154と、異属間接続体155と、第2属性をもつ第2の中央板状構造体156と、最先端部接続体157と、によって構成されている。最先端部接続体157は、第2の中央板状構造体156の先端部に接続された部材である。
ここで、同属間接続体152は、第1属性をもつ第1の中央板状構造体151と、同じく第1属性をもつ負側板状構造体153および正側板状構造体154と、を接続する役割を果たす。これに対して、異属間接続体155は、第1属性をもつ負側板状構造体153および正側板状構造体154と、第2属性をもつ第2の中央板状構造体156と、を接続する役割を果たす。このように、異属間接続体155が、第1属性をもつ板状構造体と第2属性をもつ板状構造体とを相互に接続し、板状構造体の折り返し点として機能するのに対して、同属間接続体152は、同じ第1属性をもつ板状構造体を直列接続する中継地点として機能することになる。
基本構造部は、この主基板150と、装置筐体350に側板の一部として組み込まれた台座351と、3組の重錘体251,252,253と、によって構成されている。台座351は、原点Oにおいて、第1の中央板状構造体151を支持する役割を果たす。
ここで、第1の中央板状構造体151は、YZ平面上に配置されており、根端部が台座351に接続されており、先端部が同属間接続体152に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。また、負側板状構造体153は、負側空間に配置されており、根端部が同属間接続体152に接続されており、先端部が異属間接続体155に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。同様に、正側板状構造体154は、負側空間に配置されており、根端部が同属間接続体152に接続されており、先端部が異属間接続体155に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
一方、第2の中央板状構造体156は、YZ平面上に配置されており、根端部が異属間接続体155に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている第2属性をもつ板状構造体であり、最先端部接続体157は、この第2の中央板状構造体156の先端部に接続された部材である。
また、第1の重錘体251は、同属間接続体152の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体であり、第2の重錘体252は、異属間接続体155の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体であり、第3の重錘体253は、最先端部接続体157の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された重錘体である。
この第5の実施形態には、次の3通りの共振系が含まれている。第1の共振系は、第1の中央板状構造体151の撓みに基づいて振動を生じさせる系であり、図において同属間接続体152およびその右側に接続された構成要素すべてが、この第1の共振系の重りとして機能することになる。第2の共振系は、負側板状構造体153および正側板状構造体154の撓みに基づいて振動を生じさせる系であり、図において異属間接続体155およびその左側中央部分に接続された構成要素すべてが、この第2の共振系の重りとして機能することになる。そして、第3の共振系は、第2の中央板状構造体156の撓みに基づいて振動を生じさせる系であり、その先端部に接続された構成要素が、この第3の共振系の重りとして機能することになる。
なお、最先端部接続体157を設けない構成にすることも可能である。この場合、第2の中央板状構造体156の先端部下面に第3の重錘体を接続するようにすればよい。ただ、図示のように、第2の中央板状構造体156よりも幅の広い最先端部接続体157を設け、その下面に第3の重錘体253を接続するようにすれば、第3の重錘体253として、より質量の大きな重錘体を形成することが可能になり、より大きな振動を生じさせることが可能になる。
図示の例では、第2の中央板状構造体156の上面には個別上部電極層(圧電素子)を設けていないため、この第5の実施形態では、合計12組の個別上部電極層を用いて電力が取り出される。もちろん、発電効率を更に高めるには、第2の中央板状構造体156の上面にも個別上部電極層(圧電素子)を設け、電力を取り出すようにすればよい。
<7−6. 第6の実施形態>
図25は、本発明の第6の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子6000の平断面図である。この第6の実施形態は、上述した第5の実施形態における重錘体の形状を若干変更した変形例というべきものであり、各板状構造体の接続関係は、第5の実施形態と全く同じである。ただ、第1の重錘体と第3の重錘体の質量を大きくする変更を行っているため、同属間接続体と最先端部接続体の平面形状がU字状に変更されている。
具体的には、この例の場合、主基板160は、第1属性をもつ第1の中央板状構造体161と、同属間接続体162と、同じく第1属性をもつ負側板状構造体163および正側板状構造体164と、異属間接続体165と、第2属性をもつ第2の中央板状構造体166と、最先端部接続体167と、によって構成されている。最先端部接続体167は、第2の中央板状構造体166の先端部に接続された部材である。
ここで、同属間接続体162は、第1属性をもつ第1の中央板状構造体161と、同じく第1属性をもつ負側板状構造体163および正側板状構造体164と、を接続する役割を果たす。これに対して、異属間接続体165は、第1属性をもつ負側板状構造体163および正側板状構造体164と、第2属性をもつ第2の中央板状構造体166と、を接続する役割を果たす。
基本構造部は、この主基板160と、装置筐体360に側板の一部として組み込まれた台座361と、3組の重錘体261,262,263と、によって構成されている。台座361は、原点Oにおいて、第1の中央板状構造体161を支持する役割を果たす。
ここで、第1の中央板状構造体161は、YZ平面上に配置されており、根端部が台座361に接続されており、先端部が同属間接続体162に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。また、負側板状構造体163は、負側空間に配置されており、根端部が同属間接続体162に接続されており、先端部が異属間接続体165に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。同様に、正側板状構造体164は、負側空間に配置されており、根端部が同属間接続体162に接続されており、先端部が異属間接続体165に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
一方、第2の中央板状構造体166は、YZ平面上に配置されており、根端部が異属間接続体165に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている第2属性をもつ板状構造体であり、最先端部接続体167は、この第2の中央板状構造体166の先端部に接続された部材である。
この第6の実施形態の特徴は、同属間接続体162および最先端部接続体167の平面形状がU字状をなし、これらの下面に接続される第1の重錘体261および第3の重錘体263の平面形状もU字状をなす点である。
具体的には、同属間接続体162は、図示のとおり、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部162Rと、この直交部162RからY軸負方向に伸びた負側翼状部162Nおよび正側翼状部162Pと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第1の重錘体261は、同属間接続体162の直交部162R、負側翼状部162N、正側翼状部162P、のすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、同属間接続体162の平面形状と第1の重錘体261の平面形状とは同一であり、第1の重錘体261は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
一方、最先端部接続体167は、図示のとおり、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部167Rと、この直交部167RからY軸正方向に伸びた負側翼状部167Nおよび正側翼状部167Pと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第3の重錘体263は、最先端部接続体167の直交部167R、負側翼状部167N、正側翼状部167P、のすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。
図示の実施例の場合、最先端部接続体167の平面形状と第3の重錘体263の平面形状とは同一であり、第3の重錘体263は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。なお、第2の重錘体262は、異属間接続体165の下面(図にドットハッチングを施して示す領域)に接続された、平面が矩形状の重錘体である。
この第6の実施形態における各部材の接続関係は、上述した第5の実施形態と全く同じであり、動作原理も全く同じになる。ただ、第1の重錘体261と第3の重錘体263の平面形状がU字状になっているため、第5の実施形態に比べて、これら重錘体の質量を大きくすることができ、発電効率をより向上させる利点が得られる。もちろん、第2の中央板状構造体166の上面にも個別上部電極層(圧電素子)を設け、電力を取り出すようにしてもよい。
ここで、第1の重錘体261と第3の重錘体263の平面形状をU字状とし、第2の重錘体262の平面形状を矩形状にしているのは、装置筐体360内の空間をできるだけ有効利用して、装置全体の小型化を図るためである。すなわち、第1の重錘体261については、第1の中央板状構造体161の両脇に生じる空間を利用して負側翼状部162Nおよび正側翼状部162Pを配置することができるため、空間の有効利用を図りつつ、質量を増加することができる。同様に、第3の重錘体263については、第2の中央板状構造体166の両脇に生じる空間を利用して負側翼状部167Nおよび正側翼状部167Pを配置することができるため、やはり空間の有効利用を図りつつ、質量を増加することができる。
このように、第6の実施形態に係る発電素子6000は、第1の重錘体261と第3の重錘体263の質量を十分に大きくすることが可能なため、特に、3軸発電に適した性能を発揮することができる。一般に、冷蔵庫やエアコンなど、モータを含む振動源の場合、特定の座標軸方向の振動成分が主になるため、1軸発電に適した構造(特定の座標軸方向にのみ振動しやすい構造)をもつ発電素子でも有用であるが、自動車、列車、船舶などの乗り物では、様々な方向の振動成分を含んだ振動エネルギーが加えられるため、3軸発電に適した構造(座標軸XYZのいずれの方向にも振動しやすい構造)をもつ発電素子を用いるのが好ましい。
図25に示す発電素子6000は、第1の重錘体261および第3の重錘体263の質量が大きいため、X軸成分、Y軸成分、Z軸成分のいずれを含んだ振動エネルギーが外部から加えられた場合にも、各重錘体を十分な振幅で振動させることができ、3軸発電に適した性能を発揮することができる。
<7−7. 第7の実施形態>
図26は、本発明の第7の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子7000の平断面図である。この第7の実施形態は、一見したところ、上述した第6の実施形態に類似した外形を有している。すなわち、図25における第1属性をもつ第1の中央板状構造体161を一対の板状構造体171,172に置き換え、図25における第2属性をもつ第2の中央板状構造体166を一対の板状構造体174,175に置き換えた形態をとる。ただ、構造上の特徴という観点では、図26に示す発電素子7000は、図22に示す発電素子3000と同類である。
具体的には、この例の場合、主基板170は、第1属性をもつ第1の負側板状構造体171および第1の正側板状構造体172と、異属間接続体173と、第2属性をもつ第2の負側板状構造体174および第2の正側板状構造体175と、最先端部接続体176と、によって構成されている。最先端部接続体176は、第2の負側板状構造体174および第2の正側板状構造体175の先端部に接続された部材である。
基本構造部は、この主基板170と、装置筐体370に側板の一部として組み込まれた台座371と、2組の重錘体271,272と、によって構成されている。台座371は、原点O付近において、第1の負側板状構造体171および第1の正側板状構造体172を支持する役割を果たす。
第1の負側板状構造体171は、負側空間に配置された板状構造体であり、根端部が台座371に接続されており、先端部が異属間接続体173に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。同様に、第1の正側板状構造体172は、正側空間に配置された板状構造体であり、根端部が台座371に接続されており、先端部が異属間接続体173に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
一方、異属間接続体173は、これまでの実施例とは若干異なる形状を有している。すなわち、この図26に示す実施例の場合、異属間接続体173は、ドットハッチングが施された連続領域を占める平面形状を有しており、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部173Rと、直交部173RからY軸負方向に伸びた負側翼状部173Nおよび正側翼状部173Pと、直交部173RからY軸正方向に伸びた負側腕状部173NNおよび正側腕状部173PPと、を有し、XY平面への投影像がH字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第1の重錘体271は、異属間接続体173の直交部173R、負側翼状部173N、正側翼状部173P、負側腕状部173NN、正側腕状部173PPのすべての下面に接続され、XY平面への投影像がH字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、異属間接続体173の平面形状と第1の重錘体271の平面形状とは同一であり、第1の重錘体271は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
このように、図26に示す第7の実施形態に係る発電素子7000の場合、負側腕状部173NNおよび正側腕状部173PPは、可撓性を有しておらず、板状構造体として機能するわけではなく、異属間接続体173の一部として機能することになる。そして、負側腕状部173NNの先端部には、第2属性をもつ第2の負側板状構造体174の根端部が接続され、正側腕状部173PPの先端部には、第2属性をもつ第2の正側板状構造体175の根端部が接続されている。したがって、異属間接続体173は、第1の負側板状構造体171および第1の正側板状構造体172と、第2の負側板状構造体174および第2の正側板状構造体175と、を接続する役割を果たす。
一方、最先端部接続体176は、第2の負側板状構造体174の先端部と第2の正側板状構造体175の先端部とを相互に接続する役割を果たす。図示のとおり、最先端部接続体176は、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部176Rと、この直交部176RからY軸正方向に伸びた負側翼状部176Nおよび正側翼状部176Pと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第2の重錘体272は、最先端部接続体176の直交部176R、負側翼状部176N、正側翼状部176P、のすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、最先端部接続体176の平面形状と第2の重錘体272の平面形状とは同一であり、第2の重錘体272は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
この発電素子7000の重要な特徴は、第2の負側板状構造体174および第2の正側板状構造体175が、X軸に平行な方向に伸びるX軸経路部と、Y軸に平行な方向に伸びるY軸経路部と、を含み、XY平面への投影像がL字状の形状をなす点である。
たとえば、負側空間に配置された第2の負側板状構造体174は、X軸に平行な方向(長手方向軸L3′の方向)に伸びる負側X軸経路部174XとY軸に平行な方向(長手方向軸L3の方向)に伸びる負側Y軸経路部174Yとを有しており、負側X軸経路部174Xの根端部は、異属間接続体173に接続されており、負側X軸経路部174Xの先端部は負側Y軸経路部174Yの根端部に接続されており、負側Y軸経路部174Yの先端部は、最先端部接続体176に接続されている。したがって、第2の負側板状構造体174は、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。
同様に、正側空間に配置された第2の正側板状構造体175は、X軸に平行な方向(長手方向軸L4′の方向)に伸びる正側X軸経路部175XとY軸に平行な方向(長手方向軸L4の方向)に伸びる正側Y軸経路部175Yとを有しており、正側X軸経路部175Xの根端部は、異属間接続体173に接続されており、正側X軸経路部175Xの先端部は正側Y軸経路部175Yの根端部に接続されており、正側Y軸経路部175Yの先端部は、最先端部接続体176に接続されている。したがって、第2の正側板状構造体175は、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。
上述したとおり、図26に示す発電素子7000の構造上の特徴は、図22に示す発電素子3000と同じであり、いずれも、台座からの位相幾何学的な接続関係は、第1属性をもつ一対の板状構造体、異属間接続体、第2属性をもつ一対の板状構造体、最先端部接続体という順になる。ただ、発電素子7000の場合、第2属性をもつ一対の板状構造体174,175の平面形状をL字状にしたため、各部分の配置の自由度をより向上させることができ、装置筐体370内の空間をできるだけ有効利用して、装置全体の小型化を図ることが可能になる。
この発電素子7000の場合、第1属性をもつ一対の板状構造体171,172は、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L1,L2の方向)に伸びる直線状の板状構造体になっているのに対して、第2属性をもつ一対の板状構造体174,175は、L字状の構造体であるため、これまで述べてきた実施形態における、第2属性をもつ板状構造体とは若干異なる特徴をもつ構成要素になっている。ただ、その一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L3,L4の方向)に伸びるY軸経路部174Y,175Yを含んでいる。そのため、この発電素子7000も、これまで述べてきた種々の実施形態と同様に、特定方向の振動に関する共振周波数の調整を行うことができ、発電可能な周波数帯域を広げ、様々な利用環境において効率的な発電を行うことが可能な発電素子を提供するという本発明に特有の作用効果を奏することができる。
図27は、図26に示す発電素子7000の第1の変形例に係る発電素子7000Aの平断面図である。図26に示す発電素子7000と図27に示す発電素子7000Aとの相違点は、前者における第1属性をもつ一対の板状構造体171,172が、後者では第1属性をもつ一対の板状構造体171A,172Aに置き換えられている点だけである。
すなわち、図27に示す発電素子7000Aの場合、第1属性をもつ一対の板状構造体171A,172Aは、平面がL字状をした板状構造体になっている。
図示のとおり、第1の負側板状構造体171Aは、負側空間に配置されており、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びる第1の負側Y軸経路部171YとX軸に平行な方向(長手方向軸L1′の方向)に伸びる第1の負側X軸経路部171Xとを有し、第1の負側Y軸経路部171Yの根端部は、台座371に接続されており、第1の負側Y軸経路部171Yの先端部は、第1の正側X軸経路部171Xの根端部に接続されており、第1の負側X軸経路部171Xの先端部は異属間接続体173に接続されている。その結果、第1の負側板状構造体171Aは、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。
同様に、第1の正側板状構造体172Aは、正側空間に配置されており、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びる第1の正側Y軸経路部172YとX軸に平行な方向(長手方向軸L2′の方向)に伸びる第1の正側X軸経路部172Xとを有し、第1の正側Y軸経路部172Yの根端部は、台座371に接続されており、第1の正側Y軸経路部172Yの先端部は、第1の正側X軸経路部172Xの根端部に接続されており、第1の正側X軸経路部172Xの先端部は異属間接続体173に接続されている。その結果、第1の正側板状構造体172Aは、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。
結局、この発電素子7000Aの場合、4本の板状構造体171A,172A,174,175は、いずれもXY平面への投影像がL字状の形状をなしているが、その一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向もしくは負方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L1〜L4の方向)に伸びるY軸経路部を含んでいる。このため、この発電素子7000Aも、特定方向の振動に関する共振周波数の調整を行うことができる。
図28は、図26に示す発電素子7000の第2の変形例に係る発電素子7000Bの平断面図である。図26に示す発電素子7000と図28に示す発電素子7000Bとの相違点は、前者における第2属性をもつ一対のL字状板状構造体174,175が、後者では第2属性をもつ一対のJ字状板状構造体174C,175Cに置き換えられている点だけである。
図示のとおり、第2の負側板状構造体174Cは、負側空間に配置されており、X軸に平行な方向(長手方向軸L3′の方向)に伸びる負側X軸経路部と、Y軸に平行な方向(長手方向軸L3の方向)に伸びる負側Y軸経路部と、負側X軸経路部と負側Y軸経路部とを湾曲した経路をもって接続する負側湾曲接続部と、を含んでおり、XY平面への投影像がJ字状の形状をなす板状構造体である。ここで、負側X軸経路部の根端部は、異属間接続体173に接続されており、負側X軸経路部の先端部は負側湾曲接続部によって負側Y軸経路部の根端部に接続されており、負側Y軸経路部の先端部は、最先端部接続体176に接続されている。
同様に、第2の正側板状構造体175Cは、正側空間に配置されており、X軸に平行な方向(長手方向軸L4′の方向)に伸びる正側X軸経路部と、Y軸に平行な方向(長手方向軸L4の方向)に伸びる正側Y軸経路部と、正側X軸経路部と正側Y軸経路部とを湾曲した経路をもって接続する正側湾曲接続部と、を含んでおり、XY平面への投影像がJ字状の形状をなす板状構造体である。ここで、正側X軸経路部の根端部は、異属間接続体173に接続されており、正側X軸経路部の先端部は正側湾曲接続部によって正側Y軸経路部の根端部に接続されており、正側Y軸経路部の先端部は、最先端部接続体176に接続されている。
このように、第2の負側板状構造体174Cおよび第2の正側板状構造体175Cは、いずれもXY平面への投影像がJ字状の形状をなしているが、その一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L3,L4の方向)に伸びるY軸経路部を含んでいる。このため、この発電素子7000Bも、特定方向の振動に関する共振周波数の調整を行うことができる。
なお、図28に示す実施例の場合、第1の負側板状構造体171、第1の正側板状構造体172、第2の負側板状構造体174Cの上面には、それぞれ4組の個別上部電極層が設けられているが、第2の正側板状構造体175Cの上面には、1組のJ字状をした上部電極層のみが設けられている。これは、各板状構造体の上面に配置する上部電極層のバリエーションの一例を示すための配慮である。図17に示す発電素子1003にも、上部電極層の配置に関するバリエーションをいくつか示したが、図26〜図28に示す第7の実施形態に係る発電素子7000,7000A,7000Bについても、このようなバリエーションを適用することが可能である。
たとえば、第1の負側板状構造体171の上面に形成する上部電極層として、これまでの例では、図29(a) に示すように、4組の個別上部電極層E1〜E4を配置した例を述べてきたが、図29(b) に示すように、単一の上部電極層E10を配置するようにしてもかまわない。L字状もしくはJ字状をなす板状構造体の上面に配置する上部電極層についても同様である。たとえば、図27に示すL字状の板状構造体174については、図30(a) に示すような4組の個別上部電極層E1〜E4を配置した例が示されているが、図30(b) に示すように単一の上部電極層E10を配置してもよいし、図30(c) に示すように合計8組の個別上部電極層E1〜E8を配置してもよい。
既に述べたとおり、同一時点において、同一の上部電極層に正負両極性の電荷が同時に供給されると、互いに打ち消しあって消滅してしまい、発電ロスを生じることになる。したがって、発電効率を向上させる上では、ある1つの個別上部電極層について、ある時点では必ず同一極性の電荷が供給されるようにすることが重要である。ただ、上部電極層の数を増やせば増やすほど、製造工程におけるパターニングや配線の手間がかかることになり、製造コストが高騰する。
したがって、実際には、個々の製品となる発電素子の実利用環境を想定して、個々の製品ごとに、上部電極層の適切な配置を決定するのが好ましい。たとえば、L字状の板状構造体174の上面全体に伸長応力もしくは圧縮応力が作用するような実利用環境を想定している場合は、図30(b) に示す例のように、単一の上部電極層E10を配置する構成を採用し、コスト低減を図るのが好ましい。
<7−8. 第8の実施形態>
図31は、本発明の第8の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子8000の平断面図である。この第8の実施形態は、一見したところ、上述した第7の実施形態に類似した外形を有しているが、第2属性をもつ板状構造体として、L字状の板状構造体ではなく、U字状の板状構造体を採用した点に特徴がある。やはり、台座からの位相幾何学的な接続関係は、第1属性をもつ一対の板状構造体181,182、異属間接続体183、第2属性をもつ一対の板状構造体184,185、最先端部接続体186という順になる。
具体的には、この図31に示す第8の実施形態の場合、主基板180は、第1属性をもつ第1の負側板状構造体181および第1の正側板状構造体182と、第2属性をもつ第2の負側板状構造体184および第2の正側板状構造体185と、第1の負側板状構造体181および第1の正側板状構造体182と第2の負側板状構造体184および第2の正側板状構造体185とを接続する異属間接続体183と、第2の負側板状構造体184の先端部および第2の正側板状構造体185の先端部を相互に接続する最先端部接続体186と、によって構成されている。
基本構造部は、この主基板180と、装置筐体380に側板の一部として組み込まれた台座381と、2組の重錘体281,282と、によって構成されている。台座381は、原点O付近において、第1の負側板状構造体181および第1の正側板状構造体182を支持する役割を果たす。
第1の負側板状構造体181は、負側空間に配置された板状構造体であり、根端部が台座381に接続されており、先端部が異属間接続体183に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。同様に、第1の正側板状構造体182は、正側空間に配置された板状構造体であり、根端部が台座381に接続されており、先端部が異属間接続体183に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びている第1属性をもつ板状構造体である。
異属間接続体183は、図示のとおり、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部と、この直交部からY軸負方向に伸びた負側翼状部および正側翼状部と、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第1の重錘体281は、異属間接続体183の全領域の下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、異属間接続体183の平面形状と第1の重錘体281の平面形状とは同一であり、第1の重錘体281は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
一方、第2の負側板状構造体184は、負側空間に配置されており、Y軸に平行な方向(長手方向軸L3の方向)に伸びる負側根端側経路部184Aと、X軸に平行な方向(長手方向軸L5の方向)に伸びる負側中継経路部184Bと、Y軸に平行な方向(長手方向軸L7の方向)に伸びる負側先端側経路部184Cと、を含んでおり、XY平面への投影像がU字状の形状をなす。ここで、負側根端側経路部184Aの根端部は、異属間接続体183に接続されており、負側根端側経路部184Aの先端部は、負側中継経路部184Bの根端部に接続されており、負側中継経路部184Bの先端部は、負側先端側経路部184Cの根端部に接続されており、負側先端側経路部184Cの先端部は、最先端部接続体186に接続されている。
また、第2の正側板状構造体185は、正側空間に配置されており、Y軸に平行な方向(長手方向軸L4の方向)に伸びる正側根端側経路部185Aと、X軸に平行な方向(長手方向軸L6の方向)に伸びる正側中継経路部185Bと、Y軸に平行な方向(長手方向軸L8の方向)に伸びる正側先端側経路部185Cと、を含んでおり、XY平面への投影像がU字状の形状をなす。ここで、正側根端側経路部185Aの根端部は、異属間接続体183に接続されており、正側根端側経路部185Aの先端部は、正側中継経路部185Bの根端部に接続されており、正側中継経路部185Bの先端部は、正側先端側経路部185Cの根端部に接続されており、正側先端側経路部185Cの先端部は、最先端部接続体186に接続されている。
最先端部接続体186は、第2の負側板状構造体184の先端部と第2の正側板状構造体185の先端部とを相互に接続する役割を果たす。図示のとおり、最先端部接続体186は、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部と、この直交部からY軸正方向に伸びた負側翼状部および正側翼状部と、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第2の重錘体282は、最先端部接続体186の全領域の下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、最先端部接続体186の平面形状と第2の重錘体282の平面形状とは同一であり、第2の重錘体282は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
この発電素子8000の場合、第1属性をもつ一対の板状構造体181,182は、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L1,L2の方向)に伸びる直線状の板状構造体になっているのに対して、第2属性をもつ一対の板状構造体184,185は、U字状の構造体であるため、これまで述べてきた実施形態における、第2属性をもつ板状構造体とは若干異なる特徴をもつ構成要素になっている。ただ、その一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L7,L8の方向)に伸びるY軸経路部184C,185Cを含んでいる。そのため、この発電素子8000も、これまで述べてきた種々の実施形態と同様に、特定方向の振動に関する共振周波数の調整を行うことができ、発電可能な周波数帯域を広げ、様々な利用環境において効率的な発電を行うことが可能な発電素子を提供するという本発明に特有の作用効果を奏することができる。
<<< §8. 本発明の基本的な特徴 >>>
これまで、本発明に係る発電素子をいくつかの実施形態に基づいて説明してきたが、ここでは、これらの実施形態の総括として、本発明の基本的な特徴を述べておく。
本発明は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子の発明であって、発電可能な周波数帯域を広げるという作用効果を奏するものである。本発明に係る発電素子の基本構成要素は、物理的な振動系を構成する基本構造部、この基本構造部の変形に基づいて電荷を発生させる電荷発生素子である。なお、発電自体は、電荷発生素子が備わっていれば可能であるが、電力を効率的に取り出すために、実用上は、更に、電荷発生素子に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す発電回路を付加するのが好ましい。
基本構造部は、可撓性を有する複数の板状構造体と、異属間接続体と、台座と、重錘体と、を備えており、板状構造体としては、少なくとも第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体との2種類が含まれている。異属間接続体は、第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とを相互に接続する役割を果たす。また、台座は、第1属性の板状構造体を支持する役割を果たす。ここで、XYZ三次元座標系を定義したときに、第1属性の板状構造体および第2属性の板状構造体は、その板面がXY平面に平行な面になるように配置されている。
第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体との相違は、根端部から先端部へ向かう方向にある。前述したとおり、本願では、複数の板状構造体が接続された構造において、台座への接続経路を考えた場合に、当該接続経路上において、台座に近い方を根端部と呼び、台座から遠い方を先端部と呼んでいる。そうすると、第1属性の板状構造体は、根端部が台座に接続されており、先端部が異属間接続体に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びた板状の部材ということができる。同様に、第2属性の板状構造体は、根端部が異属間接続体に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びた板状の部材ということができる。
また、異属間接続体は、伸びる向きが逆の板状構造体を相互に接続する役割を果たすため、板状構造体の折り返し点として機能する。このように、本発明では、第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とが、異属間接続体を経て折り返す構造を採用しているため、各板状構造体がいずれもY軸に平行な方向に伸びる板状の部材によって構成されているにもかかわらず、装置全体のY軸方向の寸法を抑制することができ、全体的に小型化を図ることができる。
基本構造部に含まれている重錘体は、板状構造体の撓みによって振動するが、図7(c) に示すモデルのように、この基本構造部は、第1属性の板状構造体の撓みに基づく第1の共振系Iと第2属性の板状構造体の撓みに基づく第2の共振系IIとを含む合成振動系を構成することになる。このため、各共振系の共振周波数fr1,fr2を調整することにより、発電可能な周波数帯域を広げる設計が可能になる。
このように、これまで述べてきた実施形態に係る発電素子には、第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とが必須構成要素として設けられているが、更に、第3属性の板状構造体を付加することもできる。具体的には、§7−4で述べた第4の実施形態に係る発電素子4000(図23参照)には、第3属性の板状構造体が付加されている。
すなわち、この発電素子4000の場合、基本構造部が、更に、可撓性を有する第3属性の板状構造体(中央板状構造体147)と、この第3属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とを相互に接続する第2の異属間接続体146と、を備えている。そして、第2属性の板状構造体(第2の負側板状構造体144と第2の正側板状構造体145)の先端部は、第2の異属間接続体146に接続されている。第3属性の板状構造体(中央板状構造体147)は、その板面がXY平面に平行な面になるように配置され、根端部が第2の異属間接続体146に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。
このように、第3属性の板状構造体を付加する場合、第3属性の板状構造体の伸びる方向は、第2属性の板状構造体の伸びる方向と逆方向(別言すれば、第1属性の板状構造体の伸びる方向と同方向)になるようにする。そうすれば、各板状構造体について、台座から最先端部(片持ち梁を構成する樹構造の末端)への接続経路を考えた場合、第1属性の板状構造体から第2属性の板状構造体へと移行する際に、折り返しによる向き反転が生じ、更に、第2属性の板状構造体から第3属性の板状構造体へと移行する際に、折り返しによる向き反転が生じることになる。
このような折り返し構造は、第4属性以降の板状構造体を付加する場合も同様である。
すなわち、第4属性以降の板状構造体を付加した実施形態の構成を一般論として説明すれば、基本構造部が、更に、可撓性を有する第3属性の板状構造体〜第n属性の板状構造体(但し、nは、n≧4を満たす任意の自然数)と、第i属性の板状構造体と第(i−1)属性の板状構造体(但し、iは、3≦i≦nを満たす各自然数)とを接続する第(i−1)の異属間接続体と、を備えていることになる。ここで、第i属性の板状構造体は、その板面がXY平面に平行な面になるように配置され、根端部が第(i−1)の異属間接続体に接続されており、先端部が第iの異属間接続体に接続されるか、もしくは、自由端となっており、根端部から先端部へ向かう方向が、iが奇数の場合はY軸正方向、iが偶数の場合はY軸負方向、となるように、Y軸に平行な方向に伸びている
たとえば、n=4に設定した場合、基本構造部が、更に、可撓性を有する第3属性の板状構造体と第4属性の板状構造体と、第3属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とを接続する第2の異属間接続体と、第4属性の板状構造体と第3属性の板状構造体とを接続する第3の異属間接続体と、を備えていることになる。
ここで、第3属性の板状構造体は、その板面がXY平面に平行な面になるように配置され、根端部が第2の異属間接続体に接続されており、先端部が第3の異属間接続体に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。また、第4属性の板状構造体は、その板面がXY平面に平行な面になるように配置され、根端部が第3の異属間接続体に接続されており、先端部が自由端となっており、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。
なお、同一属性をもつ板状構造体は、必要に応じて複数本設けることが可能である。この場合、同一属性をもつ複数本の板状構造体は、互いに平行になるように並列配置することもできるし、同属間接続体を介して直列配置することもできる。たとえば、§7−5で述べた第5の実施形態に係る発電素子5000(図24参照)には、第1属性の板状構造体として、3本の板状構造体151,153,154が設けられているが、板状構造体153,154は相互に配列配置され、これらと板状構造体151とは同属間接続体152を介して直列配置されている。
一般に、複数の板状構造体を設け、各板状構造体にそれぞれ電荷発生素子を設けるようにすれば、それだけ発電効率を向上させることができるが、板状構造体を配置するための占有面積が大きくなるため、装置全体は大型化する。この場合、複数の板状構造体を並列配置すると、装置のX軸方向の寸法が大きくなり、複数の板状構造体を直列配置すると、装置のY軸方向の寸法が大きくなる。したがって、実用上は、装置全体のサイズや形状を考慮して、複数の板状構造体をどのように配置するか決定すればよい。
異属間接続体や同属間接続体としては、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部を有する板状部材を用いるのが好ましい。そうすれば、Y軸に平行な方向に伸びた板状構造体の根端部もしくは先端部を、この直交部の側面の所定箇所に接続することができ、同一属性をもつ板状構造体を複数本設ける場合にも柔軟に対応することができる。
発電素子の発電効率を向上させるには、重錘体の質量を増やすことも有効である。そのための一手法として、最先端の板状構造体の先端部に最先端部接続体を接続し、その下面に重錘体を接続する方法を採用することができる。たとえば、図22に示す最先端部接続体136、図23に示す最先端部接続体148、図24に示す最先端部接続体157、図25に示す最先端部接続体167は、その下面に接続される重錘体の質量を増やす役割を果たしている。特に、図22に示す最先端部接続体136は、同一属性をもち、互いに平行になるように並列配置された複数の板状構造体134,135の先端部を相互に接続する部材であり、その下面に接続された重錘体232の質量を大幅に増す効果を生み出している。
また、図25に示す発電素子6000では、同属間接続体162と最先端部接続体167の平面形状をU字状とし、その下面に接続される重錘体261,263の質量を増加させている。本発明を実施するにあたり、異属間接続体、同属間接続体および最先端部接続体の少なくとも一部の部材を、YZ平面に直交する方向に伸びた直交部と、この直交部からY軸に平行な方向に伸びた正側翼状部および負側翼状部と、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなすU字状板状部材によって構成するようにすれば、その下面に接続される重錘体の質量を増加させる効果が得られる。すなわち、このU字状板状部材の直交部は、正側空間と負側空間を跨る位置に配置され、正側翼状部は正側空間に配置され、負側翼状部は負側空間に配置されているため、直交部の下方、正側翼状部の下方、負側翼状部の下方のすべてに跨るような大きな質量をもった重錘体を配置することができる。
なお、§7−7で述べた第7の実施形態の例や§7−8で述べた第8の実施形態の例に示されているとおり、本発明に係る発電素子の構成要素となる板状構造体は、必ずしもY軸に平行な方向に伸びた直線状のビームである必要はなく、L字状、J字状、U字状のビームであってもかまわない。
要するに、本発明に用いる第1属性の板状構造体は、根端部が台座に接続されており、先端部が異属間接続体に接続されており、少なくともその一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるようにY軸に平行な方向に伸びる第1属性のY軸経路部を含んでいればよい。同様に、本発明に用いる第2属性の板状構造体は、根端部が異属間接続体に接続されており、少なくともその一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸負方向となるようにY軸に平行な方向に伸びる第2属性のY軸経路部を含んでいればよい。
図26に示す発電素子7000は、第2属性の板状構造体174,175を、X軸に平行な方向に伸びるX軸経路部174X,175Xと、Y軸に平行な方向に伸びるY軸経路部174Y,175Yと、を含むL字状のビームによって構成した例である。もちろん、第1属性の板状構造体171,172を、L字状のビームによって構成することも可能であり、図27に示す発電素子7000Aは、4組の板状構造体すべてをL字状のビームによって構成した例である。
要するに、本発明を実施するにあたっては、第1属性の板状構造体および第2属性の板状構造体の一方もしくは双方を、X軸に平行な方向に伸びるX軸経路部と、Y軸に平行な方向に伸びるY軸経路部と、を含み、XY平面への投影像がL字状の形状をなすL字状部分を有するビームによって構成することができる。
また、図28に示す発電素子7000Bのように、第1属性の板状構造体および第2属性の板状構造体の一方もしくは双方を、X軸に平行な方向に伸びるX軸経路部と、Y軸に平行な方向に伸びるY軸経路部と、X軸経路部とY軸経路部とを湾曲した経路をもって接続する湾曲接続部と、を含み、XY平面への投影像がJ字状の形状をなすJ字状部分を有するビームによって構成することもできる。
更に、図31に示す発電素子8000のように、第2属性の板状構造体184,185を、Y軸に平行な方向に伸びる根端側経路部と、X軸に平行な方向に伸びる中継経路部と、Y軸に平行な方向に伸びる先端側経路部と、を含み、根端部から先端部に向かって、根端側経路部、中継経路部、先端側経路部を順に連結することにより、XY平面への投影像がU字状の形状をなすU字状部分を有するビームによって構成することもできる。
なお、本発明に係る発電素子に用いる基本構造部は、XY平面に平行な板面をもった1枚の主基板を利用して構成するのが好ましい。図3に示す発電素子1000の基本構造部は、主基板110に重錘体群210と台座310とを接合することによって構成されており、各板状構造体111,113,114および異属間接続体112は、この主基板110の一部分によって構成されている。もちろん、同属間接続体を有する場合には同属間接続体、最先端部接続体を有する場合には最先端部接続体も、この主基板の一部分によって構成することができる。
また、本発明に係る発電素子に用いる基本構造部は、YZ平面に関して面対称をなす構造体によって構成するのが好ましい。これまで述べてきた第1〜第8の実施形態の基本構造部は、いずれもYZ平面に関して面対称な構造を有している。基本構造部がYZ平面に関して面対称であれば、これに付加する圧電素子などの電荷発生素子もYZ平面に関して面対称となるように配置することができ、個々の瞬間において、各電荷発生素子に発生する正電荷の総量と負電荷の総量とをできるだけ等しくすることができ、ロスのない効率的な発電が可能になる。
<<< §9. 本発明のその他の変形例 >>>
ここでは、これまで述べてきた種々の実施形態について、更にいくつかの変形例を述べる。
まず、複数の板状構造体の相互の接続関係は、これまで述べた第1〜第8の実施形態に示す例に限定されるものではなく、この他にも種々の接続関係を採用することができる。
もちろん、同一属性の板状構造体の数には制限がなく、任意の数の板状構造体を並列配置し、また、任意の数の板状構造体を直列配置してもかまわない。
また、これまで述べた第1〜第8の実施形態に示す例において、直接接続されている2組の部材の間に、更に別な部材を介挿することにより、上記2組の部材が間接的に接続されるようにしてもかまわない。たとえば、図3に示す第1の実施形態では、中央板状構造体111の根端部が台座310に直接接続されているが、両者の間に何らかの別な部材(複数の部材でもよい)を介挿し、中央板状構造体111の根端部と台座310とが間接的に接続されるようにしてもかまわない。
第1〜第8の実施形態では、板状構造体の撓みが生じる主要部分に圧電素子を配置しているが、どの部分に圧電素子を配置するかは、個々の発電素子を設計する際に適宜決定可能な事項であり、必ずしも図示した実施形態どおりの配置を採用する必要はない。もちろん、発電効率を向上させる上では、板状構造体の撓みが生じるすべての部分に圧電素子を配置するのが好ましい。たとえば、図23の板状構造体147、図24の板状構造体156、図25の板状構造体166にも圧電素子を配置すれば、発電効率を更に向上させることができる。また、板状構造体の下面側に圧電素子を配置すれば、発電効率を更に向上させることができる。ただ、圧電素子の数を増やすと、それだけ配線も増やす必要があり、製造コストの高騰は避けられない。
もちろん、重錘体の数や大きさも発電効率を左右する重要なパラメータになる。一般的には、板状構造体の所定箇所、異属間接続体の所定箇所、同属間接続体の所定箇所、最先端部接続体の所定箇所のいずれかに重錘体を接続する構成にすればよい。これまで述べた実施形態では、2箇所もしくは3箇所に重錘体を設けているが、4箇所以上に設けるようにしてもよいし、1箇所のみに設けるようにしてもよい。また、これまで述べた実施形態では、主基板の下面に重錘体を接合する構成をとっているが、主基板の上面や側面に重錘体を接合してもかまわない。重錘体の形状や大きさも任意である。
一般的には、重錘体の数や大きさを増やすほど、板状構造体に、より大きな撓みを生じさせることができるので、発電効率を向上させることができる。ただ、板状構造体に重錘体を接合すると、板状構造体の接合部分は可撓性が失われることになるので、できるだけ各接続体に重錘体を接合する構造を採用するのが好ましい。
なお、本発明を実施するにあたり、重錘体は必ずしも設ける必要はない。たとえば、図3に示す発電素子1000には、3組の重錘体211,212,213が設けられているが、これらの重錘体群210を取り去ったとしても、発電は可能である。これは、板状構造体111,113,114や異属間接続体112が、それぞれ自分自身の質量を有しており、重りとして機能するためである。したがって、図3に示す発電素子1000から重錘体群210を取り去ったとしても、E字状の主基板110のみで合成振動系としての機能を果たすことができ、本発明の作用効果を得ることができる。第2〜第8の実施形態についても同様に、すべての重錘体を取り去ることが可能である。
一般に、1枚の板状構造体を振動させる系の場合、板状構造体のみからなる構造よりも、重錘体を付加した構造の方が振幅を大きくとることができる。したがって、1枚の板状構造体のみを備える発電素子の場合、できるだけ質量の大きな重錘体を付加する方が発電効率を向上させることができる。しかしながら、材質を変えずに重錘体の質量を大きくするには、重錘体のサイズを大きくする必要があり、当該重錘体が振動するスペースを確保する必要が生じ、装置全体は大型化することになる。
これに対して、重錘体を設けない構造を採用した場合、板状構造体の振動は、その自重に相当する質量に起因して生じることになるので、重錘体を設けた場合に比べて振幅は低下せざるを得ない。しかしながら、板状構造体の振動スペースのみを確保しておけばよいので、装置全体の省スペース化を図ることができる。より大きな発電量が必要な場合は、多数の板状構造体を密集して配置した構造を採用することができる。重錘体を設ける必要がないため、極めて高い密度で多数の板状構造体を縦横に並べて配置することが可能になる。
たとえば、図3に示すE字状の主基板110のみであれば、相互にわずかな隙間を維持させながら多数を積層させることにより、小さな空間に充填することができる。もちろん、板状構造体の形状を変えることにより、各共振系の共振周波数を調整することができるので、発電可能な周波数帯域を広げるという本発明の作用効果も得られる。したがって、重錘体を全く設けない発電素子も、工業製品として十分に利用価値のあるものである。
<<< §10. 発電素子の製造プロセス >>>
ここでは、本発明の発電素子を量産する上で好ましい製造プロセスの一例を述べる。もちろん、本発明の発電素子は、その各部分が、これまで述べてきた固有の役割を果たすことができれば、どのようなプロセスで製造してもかまわないが、ここでは、基本構造部を量産するのに適した製造プロセスを説明する。ここで述べる製造プロセスの特徴は、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて基本構造部を形成する点にある。
まず、図32(a) に示すようなSOI基板1800を用意する。このSOI基板1800は、シリコン活性層1801と酸化シリコン層1802とシリコンベース層1803とをこの順に積層させた3層構造を有する基板であり、様々な半導体デバイスを製造するための材料として市販されている。図示の例の場合、シリコン活性層1801の厚みはt11=15μm、酸化シリコン層1802の厚みはt12=1μm、シリコンベース層1803の厚みはt13=625μmである。
もちろん、各部の厚みは任意の寸法でかまわないが、シリコン活性層1801は板状構造体を構成する層になるので、厚みt11は、板状構造体として用いた場合に必要な可撓性が得られる厚みになるようにする。これに対して、シリコンベース層1803は、重錘体および台座を構成する層になるので、厚みt13は、重錘体として十分な質量が確保でき、台座として十分な剛性が確保できる厚みになるようにする。
図32(b) は、図32(a) に示すSOI基板1800を用いて、図20に示す装置筐体付きの発電素子1500に準じた構造を有する発電素子1500Aを製造した例を示す側断面図であり、発電素子1500AをYZ平面で切断した断面を示している(電荷発生素子400および発電回路500の図示は省略)。したがって、図32(b) に示す基本構成は、図20(b) に示す基本構成に準じたものになる。
具体的には、図32(b) には、中央板状構造体111に異属間接続体112が連なり、異属間接続体112の下面に重錘体211が接合された状態が示されている。また、奥には、重錘体212が位置する状態も示されている。左右両端には、装置筐体の側壁311,313が位置し、奥には装置筐体の側壁312が位置している。装置筐体の側壁314は手前に位置するため、図には現れていない。装置筐体の側壁311は台座としての役割を果たし、原点Oにおいて、中央板状構造体111の根端部を支持している。もちろん、中央板状構造体111の奥には、負側板状構造体113が位置し、中央板状構造体111の手前には、正側板状構造体114が位置する。
結局、この発電素子1500Aの場合、各板状構造体111,113,114および異属間接続体112が、図32(a) に示すシリコン活性層1801の単層構造体によって構成され、各重錘体211,212,213が、図32(a) に示す酸化シリコン層1802とシリコンベース層1803との2層構造体によって構成され、台座311(装置筐体の側板311〜314)が、図32(a) に示すシリコン活性層1801と酸化シリコン層1802とシリコンベース層1803との3層構造体によって構成されている。なお、各重錘体211,212,213については、下方に変位するための空間を確保するため、その底面が、台座311(装置筐体の側板311〜314)の底面よりも上方に位置するように加工が施されている。
この図32(b) に示す構造を有する発電素子1500Aの基本構造部は、図32(a) に示すSOI基板1800をエッチング処理することにより製造することが可能である。たとえば、SOI基板1800の上面側からのエッチングにより、シリコン活性層1801をE字状に加工すれば、図3に示す主基板110に相当するE字状部材を形成することができる。このとき、酸化シリコン層1802をエッチングストッパとして利用することができる。また、SOI基板1800の下面側からのエッチングにより、台座311(装置筐体の側板311〜314)や各重錘体211,212,213を残す加工を行うことができる。このときも、酸化シリコン層1802をエッチングストッパとして利用することができる。最後に、酸化シリコン層1802の不要部分を別なエッチング方法で除去すれば、図32(b) に示す構造が得られる。
なお、酸化シリコン層1802の厚みが小さい場合には、酸化シリコン層1802を除去せずにそのまま残しておいてもかまわない。すなわち、図32(a) に示す厚みt11+t12が、板状構造体として用いた場合に必要な可撓性が得られる厚みになっていれば、酸化シリコン層1802を板状橋梁部の一部として残しておいても問題はない。この場合、各板状構造体111,113,114および異属間接続体112は、図32(a) に示すシリコン活性層1801と酸化シリコン層1802との2層構造体によって構成され、各重錘体211,212,213は、図32(a) に示すシリコンベース層1803の単層構造体によって構成されることになる。
以上、図32(a) に示すSOI基板1800を用いて、図20に示す装置筐体付きの発電素子1500に準じた構造を有する発電素子1500Aを製造する例を示したが、他の実施形態に係る発電素子も同様のプロセスで製造可能である。たとえば、図24に示すように、同属間接続体152や最先端部接続体157を有する実施形態の場合には、板状構造体、異属間接続体、同属間接続体、最先端部接続体をシリコン活性層1801の単層構造体もしくはシリコン活性層1801と酸化シリコン層1802との2層構造体によって構成すればよい。
なお、図32(b) に示す発電素子1500Aには、図20に示す発電素子1500における装置筐体の天板315や底板316が設けられていないが、必要に応じて、装置筐体の天板や底板となる部材を付加するようにすればよい。図32(c) に示す構造を有する発電素子1500Bは、装置筐体の天板や底板となる部材を付加することを前提としたものであり、各重錘体211A,212A,213A(図には現れていない)の底面は、台座311(装置筐体の側板311〜314)の底面と同じ位置にある。これは、装置筐体の底板に溝を形成して、各重錘体の下方への変位空間を確保することを想定しているためである。
図33は、図32(c) に示す発電素子1500Bを外装パッケージ1700に収容した例を示す側断面図である。発電素子1500Bの上面には、装置筐体の天板1601が接合され、発電素子1500Bの下面には、装置筐体の底板1602が接合されている。ここで、装置筐体の天板1601の下面には、図に破線で示すように、上部溝1603が形成されており、板状構造体111,113,114や異属間接続体112が上方に変位するための上方空間が確保されている。また、装置筐体の底板1602の上面には、図に破線で示すように、下部溝1604が形成されており、各重錘体211A,212A,213Aが下方に変位するための下方空間が確保されている。装置筐体の天板1601や底板1602は、たとえば、ガラスやシリコン基板によって構成すればよい。
この例の場合、発電素子1500B,天板1601,底板1602からなる装置全体が、外装パッケージ1700内に収容されている。図示されていないが、発電回路500は、この外装パッケージ1700側に設けられている。そのため、発電素子1500B側に設けられたボンディングパッドB1と外装パッケージ1700側に設けられたボンディングパッドB2との間に、ボンディングワイヤWが接続され、相互の配線が施されている(実際は、配線に必要な数だけ、ボンディングワイヤWが接続される)。外装パッケージ1700の内部空間は空洞にしておいてもよいが、樹脂などを充填してもよい。
図34は、図32に示すプロセスの変形例を示す側断面図であり、図32(b) に示す構造体から各重錘体211,212,213を除去した構造を示す。別言すれば、SOI基板1800に対する下面側からのエッチングを行う際に、台座311(装置筐体の側板311〜314)のみを残すようにしたものである。この変形例では、各重錘体は、SOI基板1800の一部ではなく、全く別の材料で構成される。すなわち、下面側からのエッチング後に(図では、酸化シリコン層1802を除去しているが、酸化シリコン層1802は残しておいてもよい)、図に破線で示す位置に各重錘体211B,212B,213B(図には現れていない)を接合すればよい。各重錘体211B,212B,213Bの材質は、どのようなものでもかまわないが、実用上は、できるだけ質量を大きくするため、鉄系やタングステンなどの金属を用いるのが好ましい。
図35は、図34に示す変形例に係るプロセスよって、図25に示す発電素子6000を製造する工程を示す上面図である(ハッチングは、各部の領域を示すためのものであり、断面を示すものではない。)。すなわち、この図35は、図25に示す発電素子6000の同属間接続体162の近傍を示す拡大上面図であり、ドットハッチングを施した領域は、U字状の同属間接続体162を示す。この例の場合、同属間接続体162の下面に、U字状の重錘体261が接合されている。
ただ、U字状の重錘体261は、U字状の同属間接続体162よりも、若干サイズが大きくなるように設計されており、同属間接続体162の下面に接合した状態において、外側部分の一部が同属間接続体162の輪郭から食み出すことになる。U字状の重錘体261のうち、図に斜線ハッチングを施した部分は、この食み出し部分である。上述したとおり、このU字状の重錘体261は、鉄系やタングステンなどの金属を用いて形成した別部材であり、接着剤などを用いて同属間接続体162の下面に接合すればよい。
このような食み出し部分を設けるようにすると、次の2つの利点が得られる。第1の利点は、外部から過度の振動エネルギーが加えられた場合、この食み出し部分が装置筐体の内面に接触して、それ以上の変位を抑えることができるので、脆弱性をもったシリコン活性層から構成される板状構造体161や同属間接続体162などに損傷が生じることを防止することができる点である。重錘体261を金属によって構成しておけば、重錘体261自体が破損することはほとんどない。第2の利点は、重錘体261を同属間接続体162の下面に接合する作業を行う際に、上方から重錘体261の輪郭を目視確認できるようになる点である。図35に示されているとおり、重錘体261は、その一部が同属間接続体162から食み出しているため、両者の位置関係を目視確認でき、正確な接合作業を行うことができる。他の重錘体262,263についても、同様である。
<<< §11. 本発明の別な特徴 >>>
§8で説明したとおり、第1〜第8の実施形態に共通した特徴は、第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とを異属間接続体によって接続した折り返し構造を採用している点にあり、このような特徴により、装置全体の寸法を抑制しつつ、発電可能な周波数帯域を広げるという作用効果が得られることになる。
ここでは、第1〜第8の実施形態に共通した別な特徴について考え、この別な特徴をもつ発電素子として本発明を把握してみよう。この別な特徴の根本概念は、板状構造体からなる経路が途中で分岐したり合流したりする構造にある。以下、この根本概念を具体的に説明する。
ここで述べる発明は、これまで説明してきた発明と同様に、合成振動系を構成する基本構造部と、この基本構造部の変形に基づいて電荷を発生させる電荷発生素子と、を備え、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子に係るものである。実用上は、更に、電荷発生素子に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す発電回路を設けるのが好ましい。
ここで、基本構造部は、可撓性を有する複数の板状構造体と、板状構造体を相互に接続する1つもしくは複数の中間接続体と、板状構造体を支持する台座と、を有している。また、必要に応じて、所定箇所に接続された重錘体を付加することもできる。
そして、重要な特徴は、個々の板状構造体が、直接、もしくは、中間接続体および他の板状構造体を介して間接的に、台座に接続されており、板状構造体および中間接続体の集合体によって、台座を根とする樹状構造(枝葉末節にゆくに従って枝の分岐が生じる構造だけでなく、枝が合流する構造も含む)が形成されており、台座からこの樹状構造の末端に至る経路を辿ったときに、当該経路に、途中で複数の経路に分岐する分岐部、もしくは、途中で複数の経路が合流する合流部が含まれている点である。
たとえば、図3に示す第1の実施形態に係る発電素子1000の場合、台座側の原点Oから樹状構造の末端となる端点T3および端点T5に至る経路を辿ると、異属間接続体112において分岐する分岐部が含まれている。また、図21に示す第2の実施形態に係る発電素子2000の場合、台座側の根端点Q1,Q2から樹状構造の末端となる中央板状構造体124の先端部に至る経路を辿ると、異属間接続体123において合流する合流部が含まれている。そして、図22に示す第3の実施形態に係る発電素子3000の場合、台座側の根端点Q1,Q2から樹状構造の末端となる最先端部接続体136に至る経路を辿ると、異属間接続体133において合流および分岐する合流分岐部が含まれている。
同様に、図23に示す第4の実施形態に係る発電素子4000の場合、台座側の根端点Q1,Q2から樹状構造の末端となる最先端部接続体148に至る経路を辿ると、異属間接続体143において合流および分岐する合流分岐部と、異属間接続体146において合流する合流部と、が含まれている。また、図24に示す第5の実施形態に係る発電素子5000の場合、台座側の原点Oから樹状構造の末端となる最先端部接続体157に至る経路を辿ると、同属間接続体152において分岐する分岐部と、異属間接続体155において合流する合流部と、が含まれている。そして、図25に示す第6の実施形態に係る発電素子6000の場合、台座側の原点Oから樹状構造の末端となる最先端部接続体167に至る経路を辿ると、同属間接続体162において分岐する分岐部と、異属間接続体165において合流する合流部と、が含まれている。図26〜図28に示す第7の実施形態や、図31に示す第8の実施形態の場合も同様である。
このように、板状構造体および中間接続体の集合体によって樹状構造を形成すると、台座から樹状構造の末端に至る経路により片持ち梁構造が形成され、全体として振動系が構成される。しかも、台座から樹状構造の末端に至る経路に分岐部や合流部を設けるようにすると、個々の板状構造体に基づいて形成される共振系が複雑に絡み合った合成振動系が構成されることになり、各共振系の共振周波数を調整することにより、発電可能な周波数帯域を広げるという本発明の作用効果を得ることができる。そこで最後に、「板状構造体からなる経路が途中で分岐したり合流したりする構造」という広い根本概念で本発明を把握した場合の別な実施形態を示しておく。
なお、以下の説明で用いる図36,図37は、第9の実施形態に係る発電素子を、XY平面に平行な、XY平面よりわずか上方に位置する平面で切断した平断面図であり、発電回路500の図示は省略する。また、個々の板状構造体について、図18もしくは図30(a) に示す4組の電極配置を採用した圧電素子を電荷発生素子400として用いた例を示す。これらの図において、装置筐体の部分(台座として機能する部分も含む)に施された粗い斜線ハッチングは、当該部分が断面部分であることを示している。一方、主基板の部分(板状構造体および各接続体)については、細かな斜線ハッチングは、個々の個別上部電極層の形成領域を示すものであり、ドットハッチングは、主基板の下面に重錘体が接合されている領域を示すものであり、いずれも断面を示すものではない。
図36は、本発明の第9の実施形態に係る装置筐体付きの発電素子9000の平断面図である。この例の場合、主基板190は、負側空間に配置された第1の負側板状構造体191と、正側空間に配置された第1の正側板状構造体192と、中間接続体193と、負側空間に配置された第2の負側板状構造体194と、正側空間に配置された第2の正側板状構造体195と、最先端部接続体196と、によって構成されている。そして、基本構造部は、この主基板190と、装置筐体390に側板の一部として組み込まれた台座391と、2組の重錘体291,292と、によって構成されている。
台座391は、原点O付近において、第1の負側板状構造体191および第1の正側板状構造体192を支持する役割を果たす。また、中間接続体193は、第1の負側板状構造体191および第1の正側板状構造体192と、第2の負側板状構造体194および第2の正側板状構造体195と、を接続する役割を果たし、最先端部接続体196は、第2の負側板状構造体194の先端部および第2の正側板状構造体195の先端部を相互に接続する役割を果たす。
より具体的には、第1の負側板状構造体191および第1の正側板状構造体192は、いずれも根端部が台座391に接続されており、先端部が中間接続体193に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向(長手方向軸L1,L2の方向)がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。また、第2の負側板状構造体194および第2の正側板状構造体195は、いずれも根端部が中間接続体193に接続されており、先端部が最先端部接続体196に接続されており、根端部から先端部へ向かう方向(長手方向軸L1,L2の方向)がY軸正方向となるように、Y軸に平行な方向に伸びている。
中間接続体193は、ドットハッチングが施された連続領域を占める平面形状を有しており、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部193Rと、直交部193RからY軸負方向に伸びた負側翼状部193Nおよび正側翼状部193Pと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第1の重錘体291は、中間接続体193の直交部193R、負側翼状部193N、正側翼状部193Pのすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、中間接続体193の平面形状と第1の重錘体291の平面形状とは同一であり、第1の重錘体291は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
同様に、最先端部接続体196は、ドットハッチングが施された連続領域を占める平面形状を有しており、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部196Rと、直交部196RからY軸負方向に伸びた負側翼状部196Nおよび正側翼状部196Pと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第2の重錘体292は、最先端部接続体196の直交部196R、負側翼状部196N、正側翼状部196Pのすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、最先端部接続体196の平面形状と第2の重錘体292の平面形状とは同一であり、第2の重錘体292は、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
この図36に示す発電素子9000の場合、4組の板状構造体191,192,194,195は、いずれも根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるように配置された板状構造体であり、これまで述べてきた第1属性の板状構造体に相当する。別言すれば、発電素子9000の場合、4組の板状構造体191,192,194,195は、いずれも同一属性の板状構造体ということになる。
これまで第1〜第8の実施形態として述べた発電素子の場合、「第1属性の板状構造体と第2属性の板状構造体とを異属間接続体によって接続した折り返し構造」を採用しているが、図36に示す第9の実施形態に係る発電素子9000では、そのような「折り返し構造」は採用されていない。しかしながら、この発電素子9000でも、「板状構造体からなる経路が途中で分岐したり合流したりする構造」という広い根本概念は採用されている。
すなわち、台座391上の原点Oから樹状構造の末端である先端点Tに至る経路に着目すると、当該経路上には、分岐部や合流部が設けられ、個々の板状構造体に基づいて形成される共振系が複雑に絡み合った合成振動系が構成されている。すなわち、原点Oから先端点Tに至る上記経路を辿ると、まず板状構造体191,192に沿った2組の経路に分岐し、これらが中間接続体193において一旦合流し、再び板状構造体194,195に沿った2組の経路に分岐し、これらが最先端部接続体196において再度合流するという樹状構造が形成されている。しかも、4組の板状構造体191,192,194,195は、いずれもY軸に平行な方向に沿って伸びているため、各共振系の共振周波数を調整することにより、発電可能な周波数帯域を広げるという本発明の作用効果を得ることができる。
図37は、図36に示す発電素子9000の変形例に係る発電素子9000Aの平断面図である。図36に示す発電素子9000と図37に示す発電素子9000Aとの相違点は、後者では、前者における4組の板状構造体191,192,194,195の代わりに、L字状をなす4組の板状構造体191A,192A,194A,195Aが用いられている点である。§7−7では、第7の実施形態として、L字状のビームからなる板状構造体を用いた例を示したが、図37に示す発電素子9000Aの場合、4組の板状構造体191A,192A,194A,195Aは、いずれもL字状のビームによって構成されている。
そのため、図37の装置筐体390Aは、図36の装置筐体390よりも、X軸方向の幅が若干広くなっている。また、図37の中間接続体193Aおよび最先端部接続体196Aは、図36の中間接続体193および最先端部接続体196よりも、X軸方向の幅が若干広くなっている。
図36に示す例と同様に、中間接続体193Aは、ドットハッチングが施された連続領域を占める平面形状を有しており、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部193ARと、直交部193ARからY軸負方向に伸びた負側翼状部193ANおよび正側翼状部193APと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第1の重錘体291Aは、中間接続体193Aの直交部193AR、負側翼状部193AN、正側翼状部193APのすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、中間接続体193Aの平面形状と第1の重錘体291Aの平面形状とは同一であり、第1の重錘体291Aは、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
同様に、最先端部接続体196Aは、ドットハッチングが施された連続領域を占める平面形状を有しており、YZ平面に直交する方向(X軸に平行な方向)に伸びた直交部196ARと、直交部196ARからY軸負方向に伸びた負側翼状部196ANおよび正側翼状部196APと、を有し、XY平面への投影像がU字状の形状をなす板状部材によって構成されている。そして、第2の重錘体292Aは、最先端部接続体196Aの直交部196AR、負側翼状部196AN、正側翼状部196APのすべての下面に接続され、XY平面への投影像がU字状の形状をなす構造体によって構成されている。図示の実施例の場合、最先端部接続体196Aの平面形状と第2の重錘体292Aの平面形状とは同一であり、第2の重錘体292Aは、図にドットハッチングが施された領域を占める構造体になる。
一方、第1の負側板状構造体191Aは、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びる第1の負側Y軸経路部191AYとX軸に平行な方向(長手方向軸L3の方向)に伸びる第1の負側X軸経路部191AXとを有し、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。ここで、第1の負側Y軸経路部191AYの根端部は、台座391Aに接続されており、第1の負側Y軸経路部191AYの先端部は、第1の負側X軸経路部191AXの根端部に接続されており、第1の負側X軸経路部191AXの先端部は中間接続体193Aの負側翼状部193ANに接続されている。
また、第1の正側板状構造体192Aは、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びる第1の正側Y軸経路部192AYとX軸に平行な方向(長手方向軸L4の方向)に伸びる第1の正側X軸経路部192AXとを有し、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。ここで、第1の正側Y軸経路部192AYの根端部は、台座391Aに接続されており、第1の正側Y軸経路部192AYの先端部は、第1の正側X軸経路部192AXの根端部に接続されており、第1の正側X軸経路部192AXの先端部は中間接続体193Aの正側翼状部193APに接続されている。
そして、第2の負側板状構造体194Aは、Y軸に平行な方向(長手方向軸L1の方向)に伸びる第2の負側Y軸経路部194AYとX軸に平行な方向(長手方向軸L5の方向)に伸びる第2の負側X軸経路部194AXとを有し、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。ここで、第2の負側Y軸経路部194AYの根端部は、中間接続体193Aの直交部193ARに接続されており、第2の負側Y軸経路部194AYの先端部は、第2の負側X軸経路部194AXの根端部に接続されており、第2の負側X軸経路部194AXの先端部は、最先端部接続体196Aの負側翼状部196ANに接続されている。
最後に、第2の正側板状構造体195Aは、Y軸に平行な方向(長手方向軸L2の方向)に伸びる第2の正側Y軸経路部195AYとX軸に平行な方向(長手方向軸L6の方向)に伸びる第2の正側X軸経路部195AXとを有し、XY平面への投影像がL字状の形状をなす。ここで、第2の正側Y軸経路部195AYの根端部は、中間接続体193Aの直交部193ARに接続されており、第2の正側Y軸経路部195AYの先端部は、第2の正側X軸経路部195AXの根端部に接続されており、第2の正側X軸経路部195AXの先端部は、最先端部接続体196Aの正側翼状部196APに接続されている。
この発電素子9000Aの場合、4本の板状構造体191A,192A,194A,195Aは、いずれもXY平面への投影像がL字状の形状をなしているが、その一部分に、根端部から先端部へ向かう方向がY軸正方向となるようにY軸に平行な方向(長手方向軸L1,L2の方向)に伸びるY軸経路部を含んでいる。このため、この発電素子9000Aも、特定方向の振動に関する共振周波数の調整を行うことができる。
なお、§9で述べた種々の変形例は、この§11で述べた第9の実施形態にも同様に適用可能である。