JP6293346B1 - 発電素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な方向の振動エネルギーを無駄なく電気エネルギーに変換でき、過度の振動が加わった場合でも損傷を受けにくい発電素子を提供する。【解決手段】第1層100、第2層200、第3層300を積層した主発電構造体MGSを用意する。第2層200は、可撓性板状橋梁部210、中央板状部220、左翼板状部230、右翼板状部240を有し、その下面に「コの字」状の第3層300(重錘体)が接合される。板状橋梁部210は周囲の重錘体300により保護される。第1層100は、下層電極E0の上面に圧電材料層105を積層し、その上面に先端部上層電極E1,E2と根端部上層電極E3,E4とを積層した構造を有する。板状橋梁部210の根端部は台座400に固定される。重錘体300の振動は板状橋梁部210および橋梁部圧電層110に伝達され、下層電極E0と上層電極E1〜E4とに発生した電荷に基づき、発電回路500が電力を出力する。【選択図】図1

Description

本発明は、発電素子に関し、特に、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う技術に関する。
限られた資源を有効利用するために、様々な形態のエネルギーを電気エネルギーに変換して取り出す技術が提案されている。振動エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出す技術もそのひとつであり、たとえば、下記の特許文献1には、層状の圧電素子を積層して発電用圧電素子を形成し、この発電用圧電素子を外力によって振動させて発電を行う圧電型の発電素子が開示されている。また、特許文献2には、シリコン基板を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical System)構造の発電素子が開示されている。
一方、特許文献3には、一端を固定した片持ち梁によって重錘体を支持するハンマーヘッド型の構造体を用い、ヘッド部分を構成する重錘体を振動させ、柄の部分に配置された発電用圧電素子によって発電を行うタイプの発電素子が開示されている。また、特許文献4には、このハンマーヘッド型の構造体を用いる発電素子とともに、L字型に屈曲した板状橋梁部によって重錘体を支持する構造体を用いた圧電素子が開示されている。
これらの発電素子の基本原理は、重錘体の振動により圧電素子に周期的な撓みを生じさせ、圧電素子に加わる応力に基づいて生じる電荷を外部に取り出す、というものである。このような発電素子を、たとえば、自動車、列車、船舶などに搭載しておけば、輸送中に加わる振動エネルギーを電気エネルギーとして取り出すことが可能になる。また、冷蔵庫やエアコンといった振動源に取り付けて発電を行うことも可能である。
特開平10−243667号公報 特開2011−152010号公報 米国特許公開第2013/0154439号公報 WO2015/033621号公報
発電素子を、自動車、列車、船舶などの輸送機器に搭載して利用する場合、運行中にランダムな方向から力が加わることになる。したがって、このような輸送機器に搭載する発電素子では、重錘体が様々な方向に振動することを想定し、あらゆる方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変換できるようにしておくのが、発電効率を向上させる上で好ましい。
また、上述した特許文献3,4に開示されているような板状橋梁部を利用する発電素子では、構造を単純化してコスト低減を図ることができる利点が得られるが、板状橋梁部に十分な撓みを発生させ、発電効率を向上させるためには、板状橋梁部をできるだけ長く、薄くする必要性が生じる。このため、過度の振動が加わった場合に、板状橋梁部が損傷する可能性がある。
そこで本発明は、単純な構造でありながら、様々な方向成分を含んだ振動エネルギーを無駄なく電気エネルギーに変換することにより、高い発電効率を得ることが可能であり、しかも過度の振動が加わった場合でも損傷を受けにくい発電素子を提供することを目的とする。
(1) 本発明の第1の態様は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子において、
第1の長手方向軸に沿って伸び、可撓性を有する板状橋梁部と、
板状橋梁部の根端部を支持固定する台座と、
板状橋梁部の先端部に直接もしくは間接的に接続された重錘体と、
板状橋梁部の表面の伸縮変形が生じる所定位置に固定された圧電素子と、
圧電素子に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す発電回路と、
を設け、
重錘体が、板状橋梁部の長手方向軸に関して左脇に位置する左翼重錘部と、板状橋梁部の長手方向軸に関して右脇に位置する右翼重錘部と、を有しているようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る発電素子において、
板状橋梁部の先端部に重錘体支持部を接続し、重錘体支持部の下面に重錘体を接続し、重錘体の重心が板状橋梁部の下方に位置するようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第2の態様に係る発電素子において、
重錘体支持部が、第1の長手方向軸に直交する第2の長手方向軸に沿って伸びる中央板状部を有し、板状橋梁部の先端部が中央板状部の中央近傍に接続されており、板状橋梁部および中央板状部によりT字状構造体が形成され、
左翼重錘部が中央板状部の左側の下面に接続されており、右翼重錘部が中央板状部の右側の下面に接続されているようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第2の態様に係る発電素子において、
重錘体支持部が、第1の長手方向軸に直交する第2の長手方向軸に沿って伸び、中央近傍が板状橋梁部の先端部に接続された中央板状部と、中央板状部の左側から板状橋梁部の左脇に伸びる左翼板状部と、中央板状部の右側から板状橋梁部の右脇に伸びる右翼板状部と、を有し、
左翼重錘部が左翼板状部の下面に接続されており、右翼重錘部が右翼板状部の下面に接続されているようにしたものである。
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第3または第4の態様に係る発電素子において、
重錘体が、左翼重錘部と右翼重錘部とを連結する中央重錘部を有し、中央重錘部が中央板状部の下面に接続されているようにしたものである。
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る発電素子において、
板状橋梁部の根端部に第1の長手方向軸に直交する第3の長手方向軸に沿って伸びる台座接続部を接続し、この台座接続部を台座に固定するようにしたものである。
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係る発電素子において、
台座を、板状橋梁部および重錘体の周囲を取り囲む環状構造体によって構成し、発電素子に対して所定の大きさを超える加速度が作用した場合に、重錘体の一部がこの環状構造体の一部に接触し、それ以上の変位が制限されるようにしたものである。
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第7の態様に係る発電素子において、
圧電素子が、板状橋梁部の先端部近傍の左側に配置された先端部左側圧電素子と、板状橋梁部の先端部近傍の右側に配置された先端部右側圧電素子と、板状橋梁部の根端部近傍の左側に配置された根端部左側圧電素子と、板状橋梁部の根端部近傍の右側に配置された根端部右側圧電素子と、を有するようにしたものである。
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る発電素子において、
圧電素子を、板状橋梁部の表面に層状に形成された下層電極と、下層電極の表面に層状に形成された圧電材料層と、圧電材料層の表面に局在的に形成された複数の上層電極からなる上層電極群と、によって構成し、圧電材料層として、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有する材料を用いるようにしたものである。
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第9の態様に係る発電素子を装置筐体に収容することによって構成される発電装置において、
発電素子の台座を装置筐体に固定し、装置筐体を振動させる外力が作用したときに、発電素子の重錘体が板状橋梁部の撓みによって装置筐体内で振動するようにし、当該振動に応じて発電回路から取り出される電力を出力するようにしたものである。
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第1〜第9の態様に係る発電素子を装置筐体に収容することによって構成される発電装置において、
発電素子の重錘体を装置筐体に固定し、装置筐体を振動させる外力が作用したときに、発電素子の台座が板状橋梁部の撓みによって装置筐体内で振動するようにし、当該振動に応じて発電回路から取り出される電力を出力するようにしたものである。
(12) 本発明の第12の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子において、
XY平面を水平面にとり、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向にとった場合に、上から順に主発電第1層、主発電第2層、主発電第3層を積層した主発電構造体と、
主発電構造体の所定箇所を支持固定する台座と、
主発電構造体が発生させた電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す発電回路と、
を設け、
主発電第2層は、XY平面に平行な面に沿って配置された平板状の層であり、Y軸上に配置され可撓性を有する板状橋梁部と、主発電第3層を支持するための重錘体支持部と、を有し、
重錘体支持部は、Y軸と交差しX軸に平行な軸であるX′軸上に配置された中央板状部を有し、
板状橋梁部は根端部から先端部へとY軸に沿って伸び、中央板状部はY軸と交差するようにX′軸に沿って伸び、中央板状部のY軸と交差する部分近傍に板状橋梁部の先端部が接続されており、板状橋梁部と中央板状部とのXY平面投影像はT字状をなし、
主発電第1層は、主発電第2層の板状橋梁部の上面の少なくとも一部分を覆うように形成された圧電素子を有し、
主発電第3層は、主発電第2層の重錘体支持部の下面に接続されており、作用した加速度に基づいて板状橋梁部に撓みを生じさせるのに十分な質量をもった重錘体として機能し、
板状橋梁部の両脇について、X座標値が負となる側を左脇、X座標値が正となる側を右脇と定義したときに、主発電第3層は、板状橋梁部の左脇に位置する左翼重錘部と右脇に位置する右翼重錘部とを有しており、
台座は、板状橋梁部の根端部を支持固定し、
発電回路は、圧電素子に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す回路であるようにしたものである。
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第12の態様に係る発電素子において、
主発電第2層の重錘体支持部が、中央板状部の左側からY軸に平行な方向に沿って板状橋梁部の左脇に伸びる左翼板状部と、中央板状部の右側からY軸に平行な方向に沿って板状橋梁部の右脇に伸びる右翼板状部と、を更に有し、
左翼重錘部が左翼板状部の下面に接続されており、右翼重錘部が右翼板状部の下面に接続されているようにしたものである。
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第12または第13の態様に係る発電素子において、
主発電第3層が、左翼重錘部と右翼重錘部とを連結する中央重錘部を有し、中央重錘部が中央板状部の下面に接続されており、左翼重錘部、右翼重錘部および中央重錘部を有する重錘体のXY平面投影像が「コ」の字状をなすようにしたものである。
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第12〜第14の態様に係る発電素子において、
主発電第3層を構成する構造体の重心が、板状橋梁部の下方に位置するようにしたものである。
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第12〜第15の態様に係る発電素子において、
主発電構造体が、YZ平面に関して面対称をなし、主発電第3層を構成する構造体の重心が、板状橋梁部の下方のYZ平面上に位置するようにしたものである。
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第12〜第16の態様に係る発電素子において、
主発電第1層のXY平面投影像と主発電第2層のXY平面投影像とが同一形状であり、主発電第1層の下面の全領域が主発電第2層の上面の全領域に接合されているようにしたものである。
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第12〜第17の態様に係る発電素子において、
主発電第3層のX軸正方向の端部が重錘体支持部のX軸正方向の端部よりもX軸正方向に突き出しており、主発電第3層のX軸負方向の端部が重錘体支持部のX軸負方向の端部よりもX軸負方向に突き出しており、主発電第3層のY軸正方向の端部が重錘体支持部のY軸正方向の端部よりもY軸正方向に突き出しており、主発電第3層のY軸負方向の端部が重錘体支持部のY軸負方向の端部よりもY軸負方向に突き出しているようにしたものである。
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第12〜第18の態様に係る発電素子において、
主発電第1層が、板状橋梁部の表面に層状に形成された下層電極と、下層電極の表面に層状に形成された圧電材料層と、圧電材料層の表面に局在的に形成された複数の上層電極からなる上層電極群と、を有する圧電素子を構成し、
圧電材料層が、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有し、
発電回路が、上層電極および下層電極に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出すようにしたものである。
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第19の態様に係る発電素子において、
上層電極群が、先端部左側上層電極と、先端部右側上層電極と、根端部左側上層電極と、根端部右側上層電極と、を有し、
先端部左側上層電極の主発電第2層上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部の先端部近傍のX座標値が負となる側に位置し、
先端部右側上層電極の主発電第2層上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部の先端部近傍のX座標値が正となる側に位置し、
根端部左側上層電極の主発電第2層上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部の根端部近傍のX座標値が負となる側に位置し、
根端部右側上層電極の主発電第2層上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部の根端部近傍のX座標値が正となる側に位置するようにしたものである。
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19または第20の態様に係る発電素子において、
発電回路が、容量素子と、各上層電極に発生した正電荷を容量素子の正極側へ導くために各上層電極から容量素子の正極側へ向かう方向を順方向とする正電荷用整流素子と、各上層電極に発生した負電荷を容量素子の負極側へ導くために容量素子の負極側から各上層電極へ向かう方向を順方向とする負電荷用整流素子と、を有し、振動エネルギーから変換された電気エネルギーを容量素子により平滑化して供給するようにしたものである。
(22) 本発明の第22の態様は、上述した第19〜第21の態様に係る発電素子において、
主発電第1層の圧電材料層が圧電薄膜によって構成され、主発電第1層の上層電極および下層電極が金属層によって構成され、主発電第2層がシリコン基板によって構成され、主発電第3層が金属基板、セラミック基板、もしくはガラス基板によって構成されているようにしたものである。
(23) 本発明の第23の態様は、上述した第12〜第22の態様に係る発電素子において、
台座が、XY平面に沿って主発電構造体を取り囲む環状構造体をなし、発電素子に対して所定の大きさを超える加速度の水平方向成分が作用した場合に、主発電第3層が環状構造体の内面に接触し、それ以上の変位が制限されるようにしたものである。
(24) 本発明の第24の態様は、上述した第23の態様に係る発電素子において、
台座が、第1壁部、第2壁部、第3壁部、第4壁部なる4組の壁部を有する矩形状の方環状構造体をなし、
第1壁部は、主発電構造体に対してX軸負方向側に隣接配置され、YZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、
第2壁部は、主発電構造体に対してX軸正方向側に隣接配置され、YZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、
第3壁部は、主発電構造体に対してY軸正方向側に隣接配置され、XZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、
第4壁部は、主発電構造体に対してY軸負方向側に隣接配置され、XZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、
板状橋梁部の根端部が、第4壁部に支持固定されているようにしたものである。
(25) 本発明の第25の態様は、上述した第23または第24の態様に係る発電素子において、
台座が、上から順に台座第1層、台座第2層、台座第3層を積層した積層構造体によって構成され、台座第1層は板状橋梁部の根端部近傍において主発電第1層に連なり、台座第2層は板状橋梁部の根端部において主発電第2層に連なるようにしたものである。
(26) 本発明の第26の態様は、上述した第23または第24の態様に係る発電素子において、
主発電第2層が、板状橋梁部の根端部に接続された台座接続部を更に有し、
台座接続部は、Y軸と交差しX軸に平行な所定の配置軸上に配置され、配置軸に沿って伸び、
台座の所定箇所の上面には、台座接続部を嵌合するための嵌合溝が形成されており、台座接続部が上記嵌合溝に嵌合した状態で固定されるようにしたものである。
(27) 本発明の第27の態様は、上述した第12〜第26の態様に係る発電素子を装置筐体に収容することによって構成される発電装置において、
発電素子の台座を装置筐体に固定し、装置筐体を振動させる外力が作用したときに、発電素子の主発電第3層が板状橋梁部の撓みによって装置筐体内で振動するようにし、当該振動に応じて発電回路から取り出される電力を出力するようにしたものである。
(28) 本発明の第28の態様は、上述した第27の態様に係る発電装置において、
装置筐体が、発電素子を下方から支持固定するための土台基板と、発電素子の上方を覆う上蓋基板と、発電素子の周囲を囲うように配置され、土台基板と上蓋基板とを連結する側壁板と、を有し、
発電素子の台座の底面は発電素子の主発電第3層の底面より下方に位置し、台座の底面は土台基板の上面に固定されており、土台基板の上面と主発電第3層の底面との間に下方空隙部が形成され、
上蓋基板は、発電素子の主発電第1層の上面より上方に位置し、上蓋基板の下面と主発電第1層の上面との間に上方空隙部が形成され、
発電素子に対して所定の大きさを超える加速度の垂直方向成分が作用した場合に、主発電構造体の一部が土台基板の上面もしくは上蓋基板の下面に接触し、それ以上の変位が制限されるようにしたものである。
(29) 本発明の第29の態様は、上述した第12〜第26の態様に係る発電素子を装置筐体に収容することによって構成される発電装置において、
発電素子の主発電第3層を装置筐体に固定し、装置筐体を振動させる外力が作用したときに、発電素子の台座が板状橋梁部の撓みによって装置筐体内で振動するようにし、当該振動に応じて発電回路から取り出される電力を出力するようにしたものである。
(30) 本発明の第30の態様は、上述した第29の態様に係る発電装置において、
装置筐体が、発電素子を下方から支持固定するための土台基板と、発電素子の上方を覆う上蓋基板と、発電素子の周囲を囲うように配置され、土台基板と上蓋基板とを連結する側壁板と、を有し、
発電素子の台座の底面は発電素子の主発電第3層の底面より上方に位置し、主発電第3層の底面は土台基板の上面に固定されており、土台基板の上面と台座の底面との間に下方空隙部が形成され、
上蓋基板は、発電素子の主発電第1層の上面より上方に位置し、上蓋基板の下面と主発電第1層の上面との間に上方空隙部が形成され、
発電素子に対して所定の大きさを超える加速度の垂直方向成分が作用した場合に、台座の一部が土台基板の上面もしくは上蓋基板の下面に接触し、それ以上の変位が制限されるようにしたものである。
(31) 本発明の第31の態様は、上述した第1〜第9、第12〜第26の態様に係る発電素子から、発電回路を除いた要素により発電素子用構造体を構成するようにしたものである。
本発明に係る発電素子では、可撓性を有する板状橋梁部の根端部を台座に固定し、先端部に重錘体を接続する片持ち梁構造が採用され、板状橋梁部に固定された圧電素子によって発電が行われる。しかも、重錘体は、板状橋梁部の左脇に位置する左翼重錘部と右脇に位置する右翼重錘部とを有しているため、板状橋梁部に対して様々な方向に撓ませる外力を効率良く伝達することができる。また、左右の重錘体の変位を制限する部材を設けることにより、過度の振動が加わった場合にも、板状橋梁部の変位を制限することができるようになり、板状橋梁部の損傷を防ぐことができる。
このように、本発明によれば、単純な構造でありながら、様々な方向成分を含んだ振動エネルギーを無駄なく電気エネルギーに変換することにより、高い発電効率を得ることが可能であり、しかも過度の振動が加わった場合でも損傷を受けにくい発電素子を実現できる。
本発明の基本的実施形態に係る発電素子PGEの構成を示す斜視図(主発電構造体MGSを構成する3層部分を分離して示す)およびブロック図である。 図1に示す主発電構造体MGSの主発電第1層100の上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの主発電第2層200の上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの主発電第3層300の上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの側面図である。 図1に示す主発電構造体MGSを台座400に固定した状態を示す上面図である(ハッチングは各上層電極の形成領域および台座による固定状態を示すためのものであり、断面を示すものではない。括弧書きの符号は、下方に配置されている構成要素を示している。)。 図1に示す主発電構造体MGSを台座400に固定した状態を示す側断面図である(YZ平面で切断した断面を示す)。 図1に示す主発電構造体MGSにX軸正方向の力+Fxが作用したときの変形態様を示す上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSにY軸正方向の力+Fyが作用したときの変形態様を示す側断面図である(YZ平面で切断した断面を示す)。 図1に示す主発電構造体MGSにZ軸正方向の力+Fzが作用したときの変形態様を示す側断面図である(YZ平面で切断した断面を示す)。 図1に示す主発電構造体MGSの重錘体に各座標軸正方向の力が作用したときに、橋梁部圧電層110の上層電極E1〜E4の位置に加わるY軸方向についての伸縮応力を示す表である。 図1に示す主発電構造体MGSの重錘体に各座標軸正方向の力が作用したときに、上層電極E1〜E4に発生する電荷の極性を示す表である。 図1に示す主発電構造体MGSの重錘体にX軸正方向の力+Fxが作用したときに、圧電材料層105に発生するY軸方向応力を示す応力分布図である。 図1に示す主発電構造体MGSの重錘体にY軸正方向の力+Fyが作用したときに、圧電材料層105に発生するY軸方向応力を示す応力分布図である。 図1に示す主発電構造体MGSの重錘体にZ軸正方向の力+Fzが作用したときに、圧電材料層105に発生するY軸方向応力を示す応力分布図である。 図1に示す発電素子PGEの発電回路500の具体的な構成を示す回路図である。 台座400として、矩形状の環状構造体を用いた発電素子PGEを示す上面図である(発電回路は図示省略)。 図17に示す発電素子PGEを切断線18−18に沿って切断した断面を示す正断面図である。 図17に示す発電素子PGEを切断線19−19に沿って切断した断面を示す側断面図である。 図17に示す発電素子PGEを切断線20−20に沿って切断した断面を示す側断面図である。 図17に示す発電素子PGEの主発電構造体MGSおよび台座400を構成する材料として用いられる積層材料ブロック1000の側断面図である。 図17に示す発電素子PGEを装置筐体600に収容して構成される発電装置の側断面図である。 図22に示す発電装置における重錘体と台座の役割を逆にした変形例に係る発電装置の側断面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの第1の変形例Aを示す上面図である(括弧書きの符号は、下方に配置されている主発電第2層200aの構成要素を示している。)。 図1に示す主発電構造体MGSの第2の変形例Bを示す上面図である(括弧書きの符号は、下方に配置されている主発電第2層200bの構成要素を示している。)。 図1に示す主発電構造体MGSの主発電第2層200における板状橋梁部210の両端の接続角度を示す上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの第3の変形例Cに係る主発電第2層200cを示す上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの第4の変形例Dに用いる主発電部品700dを示す上面図(図(a) )および正断面図(図(b) )である。図(a) において、括弧書きの符号は、各層の構成要素を示している。 図1に示す主発電構造体MGSの第4の変形例Dに用いる重錘体300dを示す上面図である。 図1に示す主発電構造体MGSの第4の変形例Dを固定するための台座400dを示す上面図である。 図30に示す台座400dに、図28に示す主発電部品700dおよび図29に示す重錘体300dを取り付けた状態を示す上面図である。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
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図1は、本発明の基本的実施形態に係る発電素子PGE(Power Generating Elementの略)の構成を示す斜視図およびブロック図である。斜視図の部分に示されているように、この発電素子PGEは、第1層100、第2層200、第3層300を積層した3層構造体を有する。図1の斜視図では、説明の便宜上、これら3層をそれぞれ上下に分離した状態を示すが、実際には、第1層100の下面に第2層200の上面が固着され、第2層200の下面に第3層300の上面が固着されており、3層は相互に接合された構造体になる。
この3層構造体は、本発明に係る発電素子PGEにおいて、根源的な発電機能を果たす。そこで、本願では、この3層構造体を主発電構造体MGS(Main Generating Structureの略)と呼ぶことにし、第1層100を「主発電第1層」、第2層200を「主発電第2層」、第3層300を「主発電第3層」と呼ぶことにする。本発明に係る発電素子PGEは、この3層からなる主発電構造体MGSに、更に、台座400(図では、単なるシンボル記号で示す)および発電回路500(図では、ブロックで示す)を付加することにより構成される。
台座400は、主発電構造体MGSの一部分(図における右端面)を支持固定する役割を果たすが、その具体的な構造については§3で詳述する。なお、§3で述べるように、本発明の基本的実施形態の場合、台座400も、主発電構造体MGSと同様に3層構造を有するが、台座400を構成する各層については、それぞれ「台座第1層」、「台座第2層」、「台座第3層」と呼んで区別することにする。
ここでは図1の斜視図に示すように、主発電第2層200の右端面の中央位置に原点Oを定義し、奥方向にX軸、左方向にY軸、上方向にZ軸をそれぞれとることにより、XYZ三次元直交座標系を定義する。本願の以下の説明では、図示のとおり、XY平面を水平面にとり、Z軸正方向を上方向、Z軸負方向を下方向にとることを前提として、各構成要素間の上下の関係を述べることにする。したがって、主発電構造体MGSは、上から順に主発電第1層100、主発電第2層200、主発電第3層300を積層した構造体ということになる。
本発明に係る発電素子PGEは、このようなXYZ三次元座標系における各座標軸方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う機能を有している。なお、図示の座標系は、説明の便宜のために用いる一例であり、座標系の位置は、必ずしも図示の位置である必要はない。たとえば、原点Oは、主発電第2層200の右端面位置ではなく、主発電第2層200の重心位置などに定義してもかまわない。ただ、主発電第2層200の右端面は、台座400によって固定される部分であるため、ここでは説明の便宜上、この右端面の中央位置に原点Oを定義して以下の説明を行う。
主発電第1層100は、平面形状が「E」の字状をした平板状の構造体であり、その主要部分は圧電材料層105によって構成されている。より具体的には、主発電第1層100は、圧電材料層105と、その上面の所定領域に形成された上層電極E1〜E4および下面の全領域に形成された下層電極E0、という3層構造体によって構成されている。ここで、圧電材料層105は、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有している。したがって、圧電材料層105の各部に応力が加わり、撓みが生じることになると、厚み方向に分極が生じ、上層電極E1〜E4および下層電極E0に電荷が発生することになる。
下層電極E0が、圧電材料層105の下面全面に形成された1枚の共通電極になっているのに対し、各上層電極E1〜E4は、圧電材料層105の各所定領域に形成された局在電極になっているのは、作用する外力の方向によっては、圧電材料層105の各部に加わる応力の向き(圧縮方向応力か、伸張方向応力か)が異なり、発生電荷の極性が異なる可能性があるためである。
発電回路500は、こうして発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す機能を有する。この発電素子PGEによって発電された電力は、発電回路500から外部へ供給されることになる。なお、図1では、図示の便宜上、発電回路500に対する配線として、上層電極E4および下層電極E0についての配線しか示されていないが、実際には、上層電極E2〜E4と発電回路500との間にも同様の配線がなされる。
図2は、図1に示す主発電構造体MGSの主発電第1層100の上面図であり、X軸を図の右方向、Y軸を図の上方向にとった二次元平面図が示されている。なお、図2に示すX軸,Y軸,原点Oは、実際には、この主発電第1層100の下方(主発電第2層200の内部)に位置している。上述したとおり、主発電第1層100は、「E」の字状をした圧電材料層105の上面に4枚の上層電極E1〜E4を形成し、下面に1枚の下層電極E0(図2には現れていない)を形成したものである。
圧電材料層105は、実際には、「E」の字状をした1枚の板状一体構造体であるが、ここでは説明の便宜上、図示のような4つの部分110,120,130,140に分けて考えることにする。いずれの部分も、XY平面に平行な面に沿って配置された平板状の圧電材料層によって構成されている。
部分110は、Y軸に沿って伸びる橋梁構造を有する部分であり、ここでは橋梁部圧電層110と呼ぶことにする。この橋梁部圧電層110は、図示のとおり、Y軸に沿って原点Oから先端点T(Y軸上に定義された点)に至る区間に配置された部分ということになる。4枚の上層電極E1〜E4は、いずれもこの橋梁部圧電層110の上面に配置されている。なお、実際には、上層電極E1〜E4および下層電極E0には、発電回路500に対する配線がなされるが、ここでは、配線の図示は省略する。
部分120は、X′軸(Y軸と交差しX軸に平行な軸)に沿って伸びる部分であり、その中央部分は、先端点Tの位置において橋梁部圧電層110に連なっている。ここでは、この部分120を中央圧電層と呼ぶことにする。橋梁部圧電層110と中央圧電層120とは、平面形状がT字状をなす構造体を構成する。
部分130は、中央圧電層120の左側から図の下方へと伸び、橋梁部圧電層110の左脇に配置された翼状部であり、ここでは、この部分130を左翼圧電層130と呼ぶことにする。一方、部分140は、中央圧電層120の右側から図の下方へと伸び、橋梁部圧電層110の右脇に配置された翼状部であり、ここでは、この部分140を右翼圧電層140と呼ぶことにする。
なお、本願では、説明の便宜上、図2に示すように、Y軸を縦方向に描いた上面図を念頭において左右を定義しているため、YZ平面に関してX座標値が負となる側を左側と呼び、Y軸に関してX座標値が正となる側を右側と呼んでいる。このような定義によれば、左翼圧電層130は橋梁部圧電層110の左脇に配置されており、右翼圧電層140は橋梁部圧電層110の右脇に配置されていることになる。もちろん、このような左右の定義は、YZ平面に関する相対的な位置関係を説明するための便宜上の定義であり、絶対的な意味をもつものではない。
図2において、橋梁部圧電層110の図の下端(原点Oの近傍)は、左翼圧電層130の下端や右翼圧電層140の下端に比べて下方に伸びているが、これは、図1の斜視図に示されているように、主発電第2層の原点Oの近傍が台座400に接続されているためである。後述するように、台座400との接続端近傍には応力の集中が見られるため、この応力集中部分に上層電極E3,E4を配置すると、より効率的な発電が可能になる。
図3は、図1に示す主発電構造体MGSの主発電第2層200の上面図であり、やはりX軸を図の右方向、Y軸を図の上方向にとった二次元平面図が示されている。この、図3に示すX軸,Y軸,原点Oは、実際には、この主発電第2層200の内部に埋もれた位置(厚み方向の中間位置)に配置されている。
この主発電第2層200も、「E」の字状をした板状構造体であり、ここに示す基本的実施形態の場合、図2に示す主発電第1層100のXY平面投影像と、図3に示す主発電第2層200のXY平面投影像とは同一形状であり、主発電第1層100の下面の全領域が主発電第2層200の上面の全領域に接合されている。したがって、主発電第2層200についても、主発電第1層100と同様に、4つの部分210,220,230,240を定義することができる。いずれの部分も、XY平面に平行な面に沿って配置された平板状の層によって構成されている。もちろん、実際には、この主発電第2層200は、「E」の字状をした1枚の板状一体構造体であり、上記4つの部分は、この板状一体構造体を、個々の区画に分けて説明するための便宜上のものである。
まず、部分210は、Y軸上に配置され、可撓性を有する橋梁構造を有する部分であり、ここでは、この部分210を板状橋梁部210と呼ぶことにする。この板状橋梁部210は、Y軸に沿って、原点Oから先端点T(Y軸上の1点)まで伸びる薄いビーム状の構造体であり、可撓性を有しているため、様々な方向に変形する性質を有している。ここでは、説明の便宜上、板状橋梁部210の原点Oの近傍を根端部と呼び、先端点Tの近傍を先端部と呼ぶことにする。板状橋梁部210は、根端部から先端部へとY軸に沿って伸びる細長い板状部材ということになる。
ここで、板状橋梁部210の根端部(原点O近傍)は、台座400(図3には示されていない)に接合されて支持固定される。したがって、台座400を装置筐体などに固定すれば、根端部は固定された状態になる。これに対して、板状橋梁部210の先端部(先端点T近傍)は、板状橋梁部210の変形の自由度の範囲内で変位可能な自由端になる。
図2に示す橋梁部圧電層110は、図3に示す板状橋梁部210の上面に固着される。後述するように、板状橋梁部210は、重錘体の振動により撓みを生じる性質を有し、当該撓みがその上面に固着された橋梁部圧電層110に伝達され、生じた応力に基づいて電荷が発生することになる。
一方、部分220,230,240(主発電第2層200のうち、板状橋梁部210を除く部分)を一括して、ここでは、重錘体支持部と呼ぶことにする。この重錘体支持部は、図示のとおり、先端点Tにおいて板状橋梁部210に連なっている。この重錘体支持部の役割は、文字どおり、重錘体(主発電第3層300)を支持し、重錘体の振動を板状橋梁部210の先端部(先端点T近傍)に伝達することにある。ここに示す基本的実施形態の場合、重錘体支持部は、中央板状部220、左翼板状部230、右翼板状部240を有する「コ」の字状の部材である。
中央板状部220は、Y軸と交差しX軸に平行な軸であるX′軸上に配置された細長い板状部材であり、Y軸と交差するようにX′軸に沿って伸びている。そして、この中央板状部220の中央部分は、先端点Tの位置において板状橋梁部210の先端部に連なっている。すなわち、中央板状部220のY軸と交差する部分近傍に板状橋梁部210の先端部が接続されている。その結果、板状橋梁部210と中央板状部220とのXY平面投影像はT字状をなす。図2に示す中央圧電層120は、図3に示す中央板状部220の上面に固着される。
一方、左翼板状部230は、中央板状部220の左側からY軸に平行な方向に沿って板状橋梁部210の左脇に伸びる板状部材であり、右翼板状部240は、中央板状部220の右側からY軸に平行な方向に沿って板状橋梁部210の右脇に伸びる板状部材である。図2に示す左翼圧電層130は、図3に示す左翼板状部230の上面に固着され、図2に示す右翼圧電層140は、図3に示す右翼板状部240の上面に固着される。
図3において、板状橋梁部210の図の下端(根端部)は、左翼板状部230の下端や右翼板状部240の下端に比べて下方に伸びているが、これは、図1の斜視図に示されているように、板状橋梁部210の根端部(原点O近傍)を台座400に接続するためである。重錘体の振動によって板状橋梁部210に加わる応力は、根端部(台座400との接続端近傍)と先端部(中央板状部220との接続端近傍)に集中する。
図4は、図1に示す主発電構造体MGSの主発電第3層300の上面図であり、やはりX軸を図の右方向、Y軸を図の上方向にとった二次元平面図が示されている。この、図4に示すX軸,Y軸,原点Oは、実際には、この主発電第3層300の上方に位置している。主発電第3層300は、図3に示す重錘体支持部220,230,240の下面に接続されており、作用した加速度に基づいて板状橋梁部210に撓みを生じさせるのに十分な質量をもった重錘体として機能する。この重錘体は、外部から加えられた加速度に基づく力の作用によって振動を生じ、板状橋梁部210に対して、時間的に変動する弾性変形を生じさせる役割を果たす。
ここに示す基本的実施形態の場合、主発電第3層300(重錘体)は、図4に示すとおり、中央重錘部320、左翼重錘部330、右翼重錘部340によって構成されている。中央重錘部320は、X′軸(Y軸と交差しX軸に平行な軸)に沿って伸びる細長い部分であり、左翼重錘部330と右翼重錘部340とを連結する役割を果たす。
また、前述したように、板状橋梁部210の両脇について、X座標値が負となる側を左脇、X座標値が正となる側を右脇と定義すれば、左翼重錘部330は、中央重錘部320の左側からY軸に平行な方向に沿って板状橋梁部210の左脇に伸びる重錘体であり、右翼重錘部340は、中央重錘部320の右側からY軸に平行な方向に沿って板状橋梁部210の右脇に伸びる重錘体である。
図4に示す中央重錘部320は、図3に示す中央板状部220の下面に固着され、図4に示す左翼重錘部330は、図3に示す左翼板状部230の下面に固着され、図4に示す右翼重錘部340は、図3に示す右翼板状部240の下面に固着される。結局、左翼重錘部330、中央重錘部320、右翼重錘部340を有する重錘体のXY平面投影像は、「コ」の字状をなすことになる。なお、この主発電第3層300では、板状橋梁部210の直下の位置に空洞部310が形成されている。この空洞部310の存在により、板状橋梁部210は下方(Z軸負方向)への変位が可能になる。
実際には、この主発電第3層300は、「コ」の字状をした一体構造体であり、上記3つの部分は、この一体構造体を、個々の区画に分けて説明するための便宜上のものである。
図5は、図1に示す主発電構造体MGSの側面図である。前述したとおり、実際には、図1に示す主発電第1層100,主発電第2層200,主発電第3層300は、上下方向に積層した状態で相互に接合された3層構造体を構成する。各層の接合には、たとえば、接着剤を用いた接着を行えばよい(後述するように、印刷、蒸着、スパッタ等の方法で層形成を行うこともできる。)。図5は、このような積層状態にある主発電構造体MGSを、X軸負方向からX軸正方向に向かって観察したときの側面図である。したがって、座標系の原点Oは図の右端に位置し、図の紙面垂直奥方向がX軸正方向、図の左方向がY軸正方向、図の上方向がZ軸正方向になる。
図5において、主発電第2層200の部分には、原点Oの近傍に板状橋梁部210の根端部が示されており、この板状橋梁部210の手前に位置する中央板状部220および左翼板状部230が観察される。この主発電第2層200の上方に位置する主発電第1層100の部分には、下層電極E0の上面に、橋梁部圧電層110,中央圧電層120,左翼圧電層130が観察され、更にその上面に、上層電極E1,E3が観察される(上層電極E2,E4は、その裏に隠れている)。また、主発電第2層200の下方に位置する主発電第3層300の部分としては、中央重錘部320および左翼重錘部330が観察される。図の右側に突出した橋梁部圧電層110および板状橋梁部210の右端部(原点O近傍)は、図示されていない台座400に固着されることになる。
図示のとおり、主発電第1層100は、主発電第2層200の上面を覆うように形成された圧電素子(圧電材料層105と上下の電極)を構成している。主発電第2層200の下方には、主発電第3層300(「コ」の字状をした重錘体)が接合されており、作用した加速度に基づいて重錘体が変位を生じると、主発電第2層200(特に、板状橋梁部210の部分)に撓みが生じ、その上面に形成されている主発電第1層100(特に、橋梁部圧電層110)の部分にも撓みが伝達され、各上層電極E1〜E4および下層電極E0に電荷が発生する。
図6は、図1に示す主発電構造体MGSを台座400に固定した状態を示す上面図である。図におけるハッチングは各上層電極の形成領域および台座による固定状態を示すためのものであり、断面を示すものではない。また、括弧書きの符号は、下方に配置されている構成要素を示している。ここで、橋梁部圧電層110の上面に配置された4枚の上層電極E1〜E4の平面形状に注目すると、いずれもY軸方向に伸びる細長い矩形状をした電極になっている。
また、4枚の上層電極E1〜E4の配置に着目すると、上層電極E1,E2については、その上端が境界線H(橋梁部圧電層110と中央圧電層120との境界線)に揃う位置に配置され、上層電極E3,E4については、その下端が橋梁部圧電層110の下端に揃う位置(X軸に揃う位置)に配置されている。また、上層電極E1,E3は、橋梁部圧電層110の左側(X座標値が負となる位置)に配置され、上層電極E2,E4は、橋梁部圧電層110の右側(X座標値が正となる位置)に配置されている。
このような上層電極E1〜E4の形状および配置は、§2で述べるように、効率的な発電を行う上で好都合である。図6に示す「コ」の字状部分(中央圧電層120,左翼圧電層130,右翼圧電層140)の下方には、同じく「コ」の字状をした重錘体支持部(中央板状部220,左翼板状部230,右翼板状部240)および重錘体(主発電第3層:中央重錘部320,左翼重錘部330,右翼重錘部340)が接合されている。そして、当該重錘体の振動に基づく力が先端点Tの近傍に作用すると(後述する図7参照)、橋梁部圧電層110がその支持層である板状橋梁部210とともに撓みを生じることになり、当該撓みに応じて、各上層電極E1〜E4に電荷が発生することになる。図示の電極配置は、このような電荷発生を効率的に行うために適したものになっている(詳細は§2で述べる)。こうして、主発電構造体MGSが発生させた電荷に基づいて生じる電流は、発電回路500によって整流され、電力として取り出される。
図7は、図1に示す主発電構造体MGSを台座400に固定した状態を示す側断面図であり、図6に示す主発電構造体MGSを中央のYZ平面で切断した断面に相当する。
この側断面図では、主発電第2層200の部分には、原点O(根端部)から先端点T(先端部)に至る板状橋梁部210と、中央板状部220の断面が示されている。また、主発電第1層100の部分には、橋梁部圧電層110および中央圧電層120と下層電極E0の断面および上層電極E2,E4の側面が示されている。
そして、主発電第3層300(重錘体)の部分には、中央重錘部320の断面および右翼重錘部340の側面が示されている。右翼重錘部340の手前には、空洞部310が形成されており、板状橋梁部210は、この空洞部310の存在により下方に変位することができる。
なお、図示の実施例の場合、板状橋梁部210の根端部と橋梁部圧電層110の根端部との双方が、台座400に接合され支持固定されているが、台座400に対しては、少なくとも板状橋梁部210の根端部が支持固定されていればよい。要するに、重錘体が、台座400に対して片持ち梁構造で支持されるようにし、板状橋梁部210を介して宙吊り状態になればよい。
また、本願では、図面における各部の寸法比は、必ずしも実際の製品の寸法比どおりにはなっておらず、便宜上、実際の寸法比を無視して図面を描いている。そこで、図6および図7には、参考のため、各部の実寸法を符号d1〜d10で示した。これら実寸法d1〜d10の値は、MEMS構造の発電素子PGEを構成するのであれば、たとえば、次のような値に設定することができる。もちろん、以下の寸法例は、一実施例として提示したものであり、本発明を実施するにあたり、各部の寸法が下記の寸法値に限定されるものではない。
d1=1000μm,d2=200μm,d3=800μm,d4=100μm,d5=50μm,d6=200μm,d7=70μm,d8(圧電材料層105の厚み)=2μm(実用上は2μm以上が好ましい),d9(主発電第2層200の厚み)=200μm,d10(主発電第3層300の厚み)=1000μm。下層電極E0および上層電極E1〜E4の厚みは0.01μm。
なお、一般に、主発電構造体MGSの固有の構造に基づいて定まる重錘体の共振周波数が、外部から与えられる振動周波数に一致した場合に最も効率的な発電が可能になる。したがって、外部から与えられる振動の周波数が予め想定されている場合、主発電構造体MGSの構造設計の段階で、当該想定周波数に共振周波数が合致するような設計、すなわち、上述した各部の寸法を適切な値に設定した設計を行うのが好ましい。
一般に、自動車、列車、船舶などの輸送機器やモータなどを利用した産業機器において発生する振動の周波数は、数Hz〜数100Hzの範囲であることが多く、特に、10Hz〜50Hzの範囲内の振動を発生するケースが多い。したがって、このような一般的な機器に搭載して発電を行うことを想定した場合、主発電構造体MGSの各座標軸方向の共振周波数が、10Hz〜50Hzの範囲内になるような設計を行うのが好ましい。
なお、上記説明では、便宜上、主発電第3層300の部分のみを重錘体と呼んでいるが、実際には、主発電構造体MGSの各構成要素のうち、橋梁部圧電層110および板状橋梁部210を除くすべての部分が全体として重錘体としての役割を果たし、先端点Tに変位を生じさせる機能を有している。たとえば、図6に示す中央圧電層120,左翼圧電層130,右翼圧電層140(主発電第1層100の構成要素)や、これらの下層に接合された中央板状部220,左翼板状部230,右翼板状部240(主発電第2層200の構成要素)も、先端点Tに変位を生じさせる役割に寄与するため、重錘体の一部として機能することになる。
ただ、図7に示すとおり、主発電第3層300の厚みは、主発電第1層100や主発電第2層200の厚みに比べて大きく設定されており、重錘体としての役割は、主として主発電第3層300が担うことになる。したがって、ここでは、便宜上、主発電第3層300の部分を重錘体と呼ぶことにする。
本発明に係る発電素子PGEの特徴は、主発電構造体MGSを構成する板状橋梁部210の左右両脇に重錘体が配置されるようにした点にある。すなわち、図1の斜視図を見れば明らかなように、本発明に係る発電素子PGEの重錘体は、XY平面への投影像を見れば明らかなように、少なくとも、板状橋梁部210の左脇に位置する左翼重錘部330と、板状橋梁部210の右脇に位置する右翼重錘部340と、を有している。このため、板状橋梁部210に対して様々な方向に撓ませる外力を効率良く伝達することができる。また、§3で詳述するように、この主発電構造体MGSの外側に、左翼重錘部330および右翼重錘部340の変位を制限する部材を設けることにより、過度の振動が加わった場合にも、板状橋梁部210の変位を制限することができるようになり、板状橋梁部の損傷を防ぐことができるようになる。
また、ここに示す基本的実施形態では、板状橋梁部210を主発電第2層200によって構成し、重錘体をその下方に配置された主発電第3層300によって構成しているため、重錘体(主発電第3層を構成する構造体)の重心Gが、板状橋梁部210の下方に所定距離をおいて位置することになる。図6および図7には、この重錘体の重心Gをx印で示してある。このように、主発電構造体MGSとして、板状橋梁部210の下方に、所定距離をおいて重錘体の重心Gが配置される構造を採用すると、重錘体に作用する加速度の各座標軸方向成分に基づいて、板状橋梁部210を効率的に撓ませることができるようになり、効率的な発電が可能になる。特に、重心Gと板状橋梁部210の下面との間の距離は、できるだけ長くした方が、Y軸方向の加速度に対して板状橋梁部210の撓みを大きくする上で好ましい。
ここに示す実施例の場合、主発電構造体MGSは、YZ平面に関して面対称な構造をなしているため、主発電第3層300を構成する構造体(重錘体)の重心が、板状橋梁部210の下方のYZ平面上に位置している。このような対称性をもった構造を採用すると、重錘体を各座標軸方向について安定して振動させることができるようになり、発電効率を高める上で好ましい。
主発電構造体MGSを構成する各層の材料は、上述した各層としての機能を果たすことができる材質であれば、任意の材料を用いてかまわないが、ここでは、実用上好ましい材料の例をいくつか挙げておくことにする。
まず、主発電第1層100は、外部から加えられた応力に基づいて電荷を発生させる圧電素子としての機能を果たすことができればよいので、層方向に伸縮する応力の作用により厚み方向に分極を生じる性質をもった圧電材料層105の上下両面に、それぞれ電極が形成されていればよい。具体的には、圧電材料層105は、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)やKNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)などの圧電薄膜によって構成することができる。あるいは、バルク型圧電素子を用いるようにしてもかまわない。各電極E0〜E4は、導電性材料であれば、どのような材料で構成してもかまわないが、実用上は、たとえば、金、白金、アルミニウム、銅などの金属層によって構成すればよい。
一方、主発電第2層200は、主発電第1層100の支持基板として機能するとともに、板状橋梁部210の部分が可撓性を有する必要がある。このような用途に利用する材質としては、シリコンが最適である。したがって、ここで述べる実施例の場合、主発電第2層はシリコン基板によって構成されている。図7に示す例の場合、主発電第2層200の厚みd9は200μmであり、この程度の厚みをもったシリコンからなる板状橋梁部210は、発電を行うのに必要な十分な可撓性を有している。
もちろん、主発電第2層200として金属基板を利用することも可能である。その場合は、金属基板の上層部分が下層電極E0としての役割を果たすので、この金属基板の上にスパッタ法やゾルゲル法によって圧電薄膜を成膜することにより、主発電第1層100となる圧電素子を形成することができる。あるいは、金属基板の上にバルク型の圧電材料を接着することも可能である。上層電極は、金属材料を印刷、蒸着、スパッタ等の方法で形成することができる。
ただ、本願発明者は、現時点では、シリコン基板が主発電第2層200として最適な材料であると考えている。これは、一般に、現在の製造プロセスによって、金属基板の上面に圧電素子を形成した場合と、シリコン基板の上面に圧電素子を形成した場合とを比較すると、前者の圧電定数に比べて後者の圧電定数の方が3倍程度大きな値になり、後者の方の発電効率が圧倒的に高くなるためである。これは、シリコン基板の上面に圧電素子を形成すると、圧電素子の結晶の配向が揃うためと考えられる。また、主発電第2層200としてシリコン基板を用いるようにすれば、このシリコン基板上に形成した半導体素子を利用して発電回路500を構成することも可能になる。
主発電第3層300は、重錘体として機能を果たす構成要素であるため、できるだけ比重の大きな材料を用いるのが好ましい。具体的には、SUS(鉄),銅,タングステンなどの金属基板、あるいは、セラミック基板もしくはガラス基板等を用いて構成すればよい。
<<< §2. 基本的実施形態に係る発電素子の発電動作 >>>
続いて、§1で述べた基本的実施形態に係る発電素子PGEの発電動作を説明する。既に述べたとおり、図1に示す発電素子PGEは、3層構造体からなる主発電構造体MGSに台座400および発電回路500を付加することにより構成され、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う機能を有している。
そこで、ここでは、台座400の部分を走行中の自動車に固定し、この発電素子PGEに各座標軸方向の振動成分が加えられたときに、どのような原理で発電動作が行われるかについての説明を行うことにする。そのため、以下、XYZ三次元座標系が、台座400(すなわち、輸送機器)に固定された座標系であり、重錘体がこの座標系内で振動するものとして、この発電素子PGEの動作を説明する。
図8は、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体(主発電第3層300)にX軸正方向の力+Fxが作用したときの変形態様を示す上面図である。このような現象は、路面を走行中の自動車の振動により、台座400に対してX軸負方向の加速度−αxが作用した場合に生じる。すなわち、台座400に対して加速度−αxが作用すると、重錘体に対しては、慣性力として逆方向の加速度+αxが作用することになる。その結果、XYZ三次元座標系において、重錘体には、図に白抜矢印で示すように、X軸正方向(図の右方向)へ変位させる外力+Fxが作用する。
当該外力+Fxは、重錘体の重心Gおよび先端点Tを図の右方向へ変位させる力として作用するので、板状橋梁部210およびその上面に形成された橋梁部圧電層110の先端部は、重錘体とともに図の右方向へ変位する。一方、根端部(原点O近傍)は台座400に固定されているため、XYZ三次元座標系上では変位しない。その結果、板状橋梁部210およびその上面に形成された橋梁部圧電層110は、図示のように湾曲変形する。
このような湾曲変形は、橋梁部圧電層110の4枚の上層電極E1〜E4の各配置位置について、Y軸に沿った方向に関して図示のような伸縮応力を生じさせる。すなわち、橋梁部圧電層110の上層電極E1,E4の配置位置については、上下に向かい合う矢印対で示すように、Y軸方向についての圧縮応力が作用し(丸に「縮」の字で示す)、橋梁部圧電層110の上層電極E2,E3の配置位置については、上下に矢がついた両矢印で示すように、Y軸方向についての伸張応力が作用する(丸に「伸」の字で示す)。
一方、台座400に対してX軸正方向の加速度+αxが作用した場合は、重錘体に対しては、慣性力として逆方向の加速度−αxが作用することになる。その結果、XYZ三次元座標系において、重錘体には、図8とは逆に、X軸負方向(図の左方向)へ変位させる外力−Fxが作用する。この場合、各部の伸縮の態様は図8とは逆転したものになる。すなわち、橋梁部圧電層110の上層電極E1,E4の配置位置については伸張応力が作用し、橋梁部圧電層110の上層電極E2,E3の配置位置については圧縮応力が作用する。
図9は、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体(主発電第3層300)にY軸正方向の力+Fyが作用したときの変形態様を示す側断面図である。このような現象は、路面を走行中の自動車の振動により、台座400に対してY軸負方向の加速度−αyが作用した場合に生じる。すなわち、台座400に対して加速度−αyが作用すると、重錘体に対しては、慣性力として逆方向の加速度+αyが作用することになる。その結果、XYZ三次元座標系において、重錘体には、図に白抜矢印で示すように、Y軸正方向(図の左方向)へ変位させる外力+Fyが作用する。
当該外力+Fyは、重錘体の重心Gを図の左方向へ変位させる力として作用するが、重錘体は板状橋梁部210の先端点Tの近傍に接続されているため、重錘体は図9に示すように斜めに傾斜する(図9において、左側が上がり、右側が下がる)。したがって、板状橋梁部210およびその上面に形成された橋梁部圧電層110は、図9に示すように、上方に反るように湾曲変形する。
このような湾曲変形は、橋梁部圧電層110の4枚の上層電極E1〜E4の各配置位置について、Y軸に沿った方向に関して図示のような伸縮応力を生じさせる。すなわち、橋梁部圧電層110の上面に形成された4枚の上層電極E1〜E4の配置位置のすべてについて、左右に向かい合う矢印対で示すように、Y軸方向についての圧縮応力が作用する(丸に「縮」の字で示す)。
一方、台座400に対してY軸正方向の加速度+αyが作用した場合は、重錘体に対しては、慣性力として逆方向の加速度−αyが作用することになる。その結果、XYZ三次元座標系において、重錘体には、図9とは逆に、Y軸負方向(図の右方向)へ変位させる外力−Fyが作用する。この場合、重錘体は図9とは逆の態様に傾斜し(左側が下がり、右側が上がる)、各部の伸縮の態様は図9とは逆転する。すなわち、橋梁部圧電層110の上面に形成された4枚の上層電極E1〜E4の配置位置のすべてについて、Y軸方向についての伸張応力が作用する。
図10は、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体(主発電第3層300)にZ軸正方向の力+Fzが作用したときの変形態様を示す側断面図である。このような現象は、路面を走行中の自動車の振動により、台座400に対してZ軸負方向の加速度−αzが作用した場合に生じる。すなわち、台座400に対して加速度−αzが作用すると、重錘体に対しては、慣性力として逆方向の加速度+αzが作用することになる。その結果、XYZ三次元座標系において、重錘体には、図に白抜矢印で示すように、Z軸正方向(図の上方向)へ変位させる外力+Fzが作用する。
当該外力+Fzは、重錘体の重心Gを図の上方向へ変位させる力として作用するが、重錘体は板状橋梁部210の先端点Tの近傍に接続されているため、板状橋梁部210の先端部に対して図の上方へ変位させる力が加わることになる。一方、板状橋梁部210の根端部(原点O近傍)は台座400に固定されている。したがって、XYZ三次元座標系において、板状橋梁部210の根端部を固定状態にしたまま、先端部を上方に移動させる力が加わることになり、板状橋梁部210およびその上面に形成された橋梁部圧電層110は、図10に示すように湾曲変形する。
このような湾曲変形は、橋梁部圧電層110の4枚の上層電極E1〜E4の各配置位置について、Y軸に沿った方向に関して図示のような伸縮応力を生じさせる。すなわち、橋梁部圧電層110の先端部に配置された上層電極E1,E2の位置については、左右に矢がついた両矢印で示すように、Y軸方向についての伸張応力が作用する(丸に「伸」の字で示す)。これに対して、橋梁部圧電層110の根端部に配置された上層電極E3,E4の位置については、左右に向かい合う矢印対で示すように、Y軸方向についての圧縮応力が作用する(丸に「縮」の字で示す)。
一方、台座400に対してZ軸正方向の加速度+αzが作用した場合は、重錘体に対しては、慣性力として逆方向の加速度−αzが作用することになる。その結果、XYZ三次元座標系において、重錘体には、図10とは逆に、Z軸負方向(図の下方向)へ変位させる外力−Fzが作用する。この場合、重錘体は図の下方へと移動するので、各部の伸縮の態様は図10とは逆転する。すなわち、橋梁部圧電層110の上層電極E1,E2の配置位置については圧縮応力が作用し、橋梁部圧電層110の上層電極E3,E4の配置位置については伸張応力が作用する。
図11は、図8〜図10の変形態様を踏まえて、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体に各座標軸方向の力が作用したときに、橋梁部圧電層110の上層電極E1〜E4の位置に加わるY軸方向についての伸縮応力を示す表である。図は、各座標軸正方向の力+Fx,+Fy,+Fzが作用したときの伸縮応力を示す表であるが、各座標軸負方向の力−Fx,−Fy,−Fzが作用したときの伸縮応力は、この表における圧縮/伸張の関係を逆転させたものになる。
§1で述べたように、基本的実施形態に係る発電素子PGEでは、主発電第1層100が、主発電第2層200の表面に層状に形成された下層電極E0と、この下層電極E0の表面に層状に形成された圧電材料層105と、この圧電材料層105の表面に局在的に形成された複数の上層電極E1〜E4からなる上層電極群と、を有する圧電素子を構成しており、圧電材料層105は、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有している。
ここで、圧電材料層105として、層方向に伸張する応力が作用すると、上方に正電荷、下方に負電荷を発生させ、層方向に圧縮する応力が作用すると、上方に負電荷、下方に正電荷を発生させる分極特性を有するものを用いたとすると、重錘体に各座標軸正方向の力+Fx,+Fy,+Fzが作用したとき、上層電極E1〜E4に発生する電荷の極性は、図12の表のようになる。別言すれば、図12の表は、図11の表における「伸張」を「+」、「圧縮」を「−」に置き換えたものになっている。各座標軸負方向の力−Fx,−Fy,−Fzが作用したときの伸縮応力は、この表における+/−の関係を逆転させたものになる。
もちろん、圧電材料層105としては、層方向に伸張する応力が作用すると、上方に負電荷、下方に正電荷を発生させ、層方向に圧縮する応力が作用すると、上方に正電荷、下方に負電荷を発生させる分極特性を有するものを用いることも可能である。そのような分極特性を有する圧電材料層を用いた場合は、上述した場合に対して、+/−の関係が逆転することになる。また、バルク型の圧電素子を用いた場合は、個々の領域ごとに異なる分極特性をもった圧電素子を配置することが可能であり、個々の局在圧電素子P1〜P4にそれぞれ任意の分極特性をもたせるようにすることができる。
いずれにしても、発電回路500は、4枚の局在上層電極E1〜E4および1枚の共通下層電極E0に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流することにより、電力を取り出すことができる。
図6の上面図に示すように、4枚の上層電極E1〜E4は、橋梁部圧電層110の上面のそれぞれ固有の位置に配置されている。ここでは、個々の配置位置に応じて、これら4枚の上層電極群を、先端部左側上層電極E1、先端部右側上層電極E2、根端部左側上層電極E3、根端部右側上層電極E4と、と呼ぶことにする。そうすると、先端部左側上層電極E1の主発電第2層200上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部210の先端部近傍のX座標値が負となる側に位置し、先端部右側上層電極E2の主発電第2層200上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部210の先端部近傍のX座標値が正となる側に位置し、根端部左側上層電極E3の主発電第2層200上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部210の根端部近傍のX座標値が負となる側に位置し、根端部右側上層電極E4の主発電第2層200上面への投影像は、Y軸に平行な方向に伸び、板状橋梁部210の根端部近傍のX座標値が正となる側に位置する。
このような4枚の上層電極E1〜E4の固有の配置は、電荷発生を効率的に行うために適したものになっており、発電効率を高めるために効果的である。これは、重錘体に対していずれの座標軸方向の力が作用した場合にも、これら4箇所の配置位置には、Y軸方向に関して大きな応力が発生するためである。これは、図13〜図15に示す応力分布図を見れば明らかである。これらの応力分布図は、§1で述べた実寸法を用いてコンピュータによるFEM(有限要素法)構造解析を行った結果を示すものであり、板状橋梁部210の根端部を固定した状態において、重錘体に特定の座標軸正方向の力が作用した場合に、圧電材料層105に発生するY軸方向応力の分布を示す図になっている。
図13は、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体にX軸正方向の力+Fxが作用したときに、圧電材料層105に発生するY軸方向応力を示す応力分布図である。この図では、基本的には、図8に示す伸縮態様に基づく応力分布が得られていることがわかる。4枚の上層電極E1〜E4の固有の配置は、このような応力分布図において、顕著な応力が発生する位置に対応している。
図14は、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体にY軸正方向の力+Fyが作用したときに、圧電材料層105に発生するY軸方向応力を示す応力分布図である。図9に示す変形態様を参照すればわかるとおり、力+Fyが作用した場合、橋梁部圧電層110のほぼ全領域にわたって、Y軸方向についての圧縮応力が作用することになる。このため、図14に示す応力分布図においても、橋梁部圧電層110のほぼ全領域にわたって強度の圧縮応力が発生することが示されている。4枚の上層電極E1〜E4の固有の配置は、このような応力分布図においても、顕著な応力が発生する位置に対応している。
図15は、図1に示す主発電構造体MGSの重錘体にZ軸正方向の力+Fzが作用したときに、圧電材料層105に発生するY軸方向応力を示す応力分布図である。この図では、基本的には、図10に示す伸縮態様に基づく応力分布が得られていることがわかる。4枚の上層電極E1〜E4の固有の配置は、このような応力分布図においても、顕著な応力が発生する位置に対応している。
このように、図13〜図15に示す応力分布図を見れば、図6に示す4枚の上層電極E1〜E4は、重錘体がいずれの方向に変位した場合にも応力が集中する領域に配置されており、発生電荷を効果的に収集できることがわかる。なお、これらの応力分布図を参照すれば、図6に示す上層電極E1,E2の図面における上端位置は、境界線Hよりも若干図の上方(Y軸正方向)に伸びていてもよいことがわかる。
以上、図13〜図15を参照して、重錘体に各座標軸正方向の力+Fx,+Fy,+Fzが作用した場合の応力分布を説明したが、各座標軸負方向の力−Fx,−Fy,−Fzが作用した場合の応力分布は、圧縮/伸張の分布を逆転させたものになる。結局、図6の上面図に示す4枚の上層電極E1〜E4は、重錘体に対していずれの座標軸方向の力が作用した場合にも、Y軸方向に関して大きな応力が発生する位置に配置されていることになる。また、いずれの座標軸方向の力が作用した場合にも、同一の電極に逆極性の電荷が発生することはない。すなわち、同一の電極において、逆極性の電荷が互いに打ち消し合うような現象は生じない。したがって、このような固有の電極配置を採用した発電素子PGEは、極めて効率的な発電を行うことが可能である。
図16は、図1に示す発電素子PGEに用いる発電回路500の具体的な構成を示す回路図であり、圧電素子に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す機能を有する。
図16において、先端部左側圧電素子P1は、図6に示す先端部左側上層電極E1と下層電極E0と、圧電材料層105のうち上層電極E1の下方に位置する部分と、によって構成される局在圧電素子を示し、先端部右側圧電素子P2は、図6に示す先端部右側上層電極E2と下層電極E0と、圧電材料層105のうち上層電極E2の下方に位置する部分と、によって構成される局在圧電素子を示す。
同様に、根端部左側圧電素子P3は、図6に示す根端部左側上層電極E3と下層電極E0と、圧電材料層105のうち上層電極E3の下方に位置する部分と、によって構成される局在圧電素子を示し、根端部右側圧電素子P4は、図6に示す根端部右側上層電極E4と下層電極E0と、圧電材料層105のうち上層電極E4の下方に位置する部分と、によって構成される局在圧電素子を示す。また、回路図上に白丸で示すE0は下層電極,E1〜E4は各上層電極に対応する。
D1(+),D2(+),D3(+),D4(+)は整流素子(ダイオード)であり、それぞれ上層電極E1,E2,E3,E4に発生した正電荷を取り出す役割を果たす。また、D1(−),D2(−),D3(−),D4(−)も整流素子(ダイオード)であり、それぞれ上層電極E1,E2,E3,E4に発生した負電荷を取り出す役割を果たす。同様に、D0(+)は下層電極E0に発生した正電荷を取り出す役割を果たす整流素子(ダイオード)であり、D0(−)は下層電極E0に発生した負電荷を取り出す役割を果たす整流素子(ダイオード)である。
一方、Cfは平滑用の容量素子(コンデンサ)であり、その正極端子(図の上方端子)には取り出された正電荷が供給され、負極端子(図の下方端子)には取り出された負電荷が供給される。この容量素子Cfは、発生電荷に基づく脈流を平滑化する役割を果たし、重錘体の振動が安定した定常時には、容量素子Cfのインピーダンスはほとんど無視しうる。容量素子Cfに並列接続されているZLは、本発電素子PGEによって発電された電力の供給を受ける機器の負荷を示している。
結局、この発電回路500は、平滑用の容量素子Cfと、各上層電極E1〜E4に発生した正電荷を容量素子Cfの正極側へ導くために各上層電極E1〜E4から容量素子Cfの正極側へ向かう方向を順方向とする正電荷用整流素子D1(+),D2(+),D3(+),D4(+)と、各上層電極E1〜E4に発生した負電荷を容量素子Cfの負極側へ導くために容量素子Cfの負極側から各上層電極E1〜E4へ向かう方向を順方向とする負電荷用整流素子D1(−),D2(−),D3(−),D4(−)と、を有し、振動エネルギーから変換された電気エネルギーを容量素子Cfにより平滑化して供給する機能を果たすことになる。
この回路図において、負荷ZLには、正電荷用整流素子D1(+),D2(+),D3(+),D4(+)で取り出された正電荷と、負電荷用整流素子D1(−),D2(−),D3(−),D4(−)で取り出された負電荷とが供給されることになる。したがって、原理的には、個々の瞬間において、各上層電極E1〜E4に発生する正電荷の総量と負電荷の総量とが等しくなるようにすれば、最も効率的な発電が可能になる。
図6に示すとおり、基本的実施形態に係る主発電構造体MGSは、YZ平面に関して面対称となる対称構造をなす。このような対称構造を採用すれば、図8に示すように、重錘体がX軸方向に振動した場合は、対称位置に配置された一対の上層電極に発生する正電荷の総量と負電荷の総量とがほぼ等しくなり、効率的な発電が期待できる。また、上層電極E1,E2からなる先端部電極群と、上層電極E3,E4からなる根端部電極群と、の間にも、橋梁部圧電層110の長手方向の中央位置に関して対称性がある。したがって、図10に示すように、重錘体がZ軸方向に振動した場合にも、各上層電極E1〜E4に発生する正電荷の総量と負電荷の総量とがほぼ等しくなり、効率的な発電が期待できる。
<<< §3. 変位制限構造および発電装置 >>>
図1に示す主発電構造体MGSにおいて、発電効率を高めるためには、板状橋梁部210は、できるだけ薄く、長くするのが好ましい。その第1の理由は、薄くて長い板状橋梁部210を用いれば、可撓性が高まるため、より大きな撓みが生じるようになるためである。板状橋梁部210に大きな撓みが生じれば、圧電材料層105にも大きな撓みが生じ、発電量が増加する。なお、板状橋梁部210の幅を細くすると、大きな撓みを生じさせるメリットは得られるが、圧電材料層105の面積が減少するため、発電量が低下するデメリットが生じてしまう。
板状橋梁部210を薄く、長くする第2の理由は、適切な共振周波数が得られるようにするためである。前述したように、主発電構造体MGSの固有の構造に基づいて定まる重錘体の共振周波数は、発電素子の利用環境(輸送機器や産業機器など)における振動周波数に一致させるのが好ましく、実用上は、共振周波数が10Hz〜50Hzの範囲内になるような設計を行うのが好ましい。このような範囲内の共振周波数をもった主発電構造体MGSを設計するためには、板状橋梁部210を薄く、長くした方が有利である。
このような事情により、本発明に係る発電素子PGEを設計する場合、板状橋梁部210を薄く、長くするのが好ましい。しかしながら、薄くて長い板状橋梁部210は、過度の外力が作用すると破損しやすい。たとえば、図8には、重錘体にX軸正方向の力+Fxが作用したときの主発電構造体MGSの変形態様が示されているが、過度の力+Fx(過度の加速度−αx)が作用すると、橋梁部圧電層110およびその下層の板状橋梁部210に過度の変形が生じて破損する可能性がある。
本発明で採用している主発電構造体MGSの場合、板状橋梁部210の過度の変位を抑制する変位制限構造を容易に付加することができる。それは、重錘体が、板状橋梁部の左脇に位置する左翼重錘部と右脇に位置する右翼重錘部とを有しているためである。たとえば、図6に示す実施例の場合、左翼圧電層130の下方には左翼重錘部330が配置され、右翼圧電層140の下方には右翼重錘部340が配置されており、橋梁部圧電層110の下方に位置する板状橋梁部210が、左翼重錘部330および右翼重錘部340によって左右から保護された形態をとっている。
したがって、この図6に示す主発電構造体MGSの右側および左側に何らかの変位制限壁を設ければ、この変位制限壁によって重錘体の左右方向の変位を制限することができる。たとえば、図8の例のように、重錘体にX軸正方向の力+Fxが作用した場合、重錘体は右側の変位制限壁を超えて変位することはできない。同様に、重錘体にX軸負方向の力−Fxが作用した場合、重錘体は左側の変位制限壁を超えて変位することはできない。
また、図6に示す実施例の場合、中央圧電層120の下方には中央重錘部320が配置されているので、図の上方にも変位制限壁を設けておけば、重錘体にY軸正方向の力+Fyが作用した場合にも、重錘体は上方の変位制限壁を超えて変位することはできない。
結局、図6に示す実施例の場合、橋梁部圧電層110の下方に位置する板状橋梁部210が、「コ」の字型をした重錘体によって取り囲まれ、周囲から保護された状態になっているので、主発電構造体MGSの外側に何らかの変位制限壁を設ければ、重錘体の過度の変位を制限し、板状橋梁部210の破損を避けることが可能になる。板状橋梁部210は、「コ」の字型をした重錘体によって取り囲まれているため、変位制限壁に直接接触することはない。
変位制限壁としては、たとえば、この主発電構造体MGSを収容する装置筐体の内壁面を利用することが可能である。ただ、重錘体の外面と変位制限壁の内面との間の空隙寸法を適切な値(正常な発電動作に必要な範囲内で重錘体が自由運動を行い、過度の加速度が加わったときにのみ重錘体の変位を制御するのに適切な値)に設定する上では、専用の変位制限壁を設けるようにするのが好ましい。そこで、ここでは、台座400を変位制限壁として利用した実施形態を説明する。
本発明に係る発電素子PGEでは、板状橋梁部210の根端部が台座400に固定される。たとえば、図1では、固定部を示す単なるシンボル記号として台座400が示されている。また、図6〜図10では、単なる固定面として台座400が示されている。実際、台座400は、板状橋梁部210の根端部を固定して、重錘体を宙吊り状態にする役割を果たすことができれば、どのような構造のものであってもかまわない。以下に述べる実施形態は、主発電構造体MGSを取り囲む環状構造体を、台座400として用い、当該環状構造体の内壁を変位制限壁として利用した例である。
図17は、台座400として矩形状の環状構造体を用いた発電素子PGEを示す上面図である(実際には、発電素子PGEから、発電回路500を除いた発電素子用構造体の部分のみが示されており、発電回路500は図示が省略されている)。図面中央に描かれている主発電構造体MGSは、§1および§2で述べた基本的実施形態に係る主発電構造体であり、その周囲に配置された矩形状の方環状構造体が台座400である。主発電構造体MGSと台座400とは、原点Oの位置で接合されている。
台座400は、XY平面に沿って主発電構造体MGSを取り囲む環状構造体をなす。より具体的には、台座400は、第1壁部410、第2壁部420、第3壁部430、第4壁部440なる4組の壁部を有する矩形状の方環状構造体によって構成されている。ここで、第1壁部410は、主発電構造体MGSに対してX軸負方向側に隣接配置され、YZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、第2壁部420は、主発電構造体MGSに対してX軸正方向側に隣接配置され、YZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、第3壁部430は、主発電構造体MGSに対してY軸正方向側に隣接配置され、XZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成し、第4壁部440は、主発電構造体MGSに対してY軸負方向側に隣接配置され、XZ平面に平行な平面に沿った壁面を構成している。そして、主発電構造体MGSの一部を構成する板状橋梁部210の根端部が、第4壁部440の内面に支持固定されている。
このような構造を有する発電素子PGEに対して、所定の大きさを超える加速度の水平方向成分(XY平面に平行な成分)が作用した場合、重錘体(主発電第3層300)がこの環状構造体からなる台座400の内面に接触し、それ以上の変位が制限される。図示のとおり、主発電構造体MGSの左側面と第1壁部410の内面との間には空隙寸法d11が確保されており、主発電構造体MGSの右側面と第2壁部420の内面との間には空隙寸法d12が確保されている。同様に、主発電構造体MGSの上側面と第3壁部430の内面との間には空隙寸法d13が確保されており、主発電構造体MGSの下側面と第4壁部440の内面との間には空隙寸法d14が確保されている。
したがって、この発電素子PGEに過度の振動が加わり、重錘体にX軸方向の外力成分が作用しても、重錘体の変位は空隙寸法d11,d12の範囲内に制限され、重錘体にY軸方向の外力成分が作用しても、重錘体の変位は空隙寸法d13,d14の範囲内に制限される。このため、板状橋梁部210に生じる撓みの程度を制限することができ、板状橋梁部210の損傷を防ぐことができる。
主発電構造体MGSと台座400との構造上の関係は、図18〜図20に示す側断面図に詳細に示されている。図18は、図17に示す発電素子PGEを切断線18−18に沿って切った断面を示す正断面図である。主発電構造体MGSは、既に述べたとり、主発電第1層100,主発電第2層200,主発電第3層300を積層した3層構造体からなる。一方、台座400も、台座第1層401,台座第2層402,台座第3層403を積層した3層構造体からなる。
ここで、主発電第1層100と台座第1層401とは、Z軸に関して全く同じ位置に配置され、主発電第2層200と台座第2層402とは、やはりZ軸に関して全く同じ位置に配置されている。これに対して、主発電第3層300と台座第3層403とを比較すると、上面はZ軸に関して全く同じ位置に配置されているが、下面は、主発電第3層300の方が台座第3層403よりも若干上方に位置している。これは、重錘体(中央重錘部320,左翼重錘部330,右翼重錘部340)を台座400の底面より浮かして宙吊り状態にするためである。
図示のとおり、左翼重錘部330の外側面と第1壁部410の内面との間には空隙寸法d11が確保されており、右翼重錘部340の外側面と第2壁部420の内面との間には空隙寸法d12が確保されている。したがって、重錘体は、X軸方向に関して、これら空隙寸法d11,d12の範囲内で変位可能であるが、当該範囲を超える変位は制限される。この実施例では、d11=d12=20μmに設定している。
図19は、図17に示す発電素子PGEを切断線19−19に沿って切った断面を示す側断面図であり、図20は、図17に示す発電素子PGEを切断線20−20に沿って切った断面を示す側断面図である。いずれの図にも、主発電構造体MGSおよび台座400が、3層構造体からなる点が明瞭に示されている。
図示のとおり、中央重錘部320の外側面と第3壁部430の内面との間には空隙寸法d13が確保されており、左翼重錘部330および右翼重錘部340の外側面と第4壁部440の内面との間には空隙寸法d14が確保されている。したがって、重錘体は、Y軸方向に関して、これら空隙寸法d13,d14の範囲内で変位可能であるが、当該範囲を超える変位は制限される。この実施例では、d13=d14=15μmに設定している。
ここで、主発電構造体MGSを、主発電第1層100,主発電第2層200,主発電第3層300の3層構造体によって構成する理由は、§2で述べた発電動作を行うためである。すなわち、主発電第2層200は、可撓性を有する板状橋梁部210を構成するための層であり、主発電第1層100は、板状橋梁部210に生じる撓みを検出するための圧電素子を構成するための層であり、主発電第3層300は、板状橋梁部210に外力を作用させる重錘体として機能するための層である。
これに対して、台座400は、板状橋梁部210の根端部を支持固定する固定部材としての役割と、重錘体の過度の変位を制限するための変位制限壁としての役割とを果たせば足りるので、機能上は、敢えて3層構造体にする必要はない。しかしながら、図18〜図20に示す実施例において、台座400を主発電構造体MGSと同様の3層構造体によって構成している理由は、専ら、製造プロセス上の便宜を図るためである。
すなわち、図18に示す実施例の場合、台座400は、上から順に台座第1層401、台座第2層402、台座第3層403を積層した積層構造体によって構成されており、台座第1層401は板状橋梁部210の根端部近傍において主発電第1層100に連なり、台座第2層402は板状橋梁部210の根端部において主発電第2層200に連なっている。また、台座第3層403は、主発電第3層300に対して、物理的には離隔した構成要素になっているが、3層構造体の最下層であり、その上面の位置は同じになっている。
結局、図18に示す実施例の場合、台座第1層401と主発電第1層100とを同一の材料層から構成することができ、台座第2層402と主発電第2層200とを同一の材料層から構成することができ、台座第3層403と主発電第3層300とを同一の材料層から構成することができる。
図21は、図18に示す発電素子PGEの主発電構造体MGSおよび台座400を構成する材料として用いられる積層材料ブロック1000の側断面図である。この積層材料ブロック1000は、上から順に、材料第1層1001、材料第2層1002、材料第3層1003を積層した3層からなる積層構造体である。図の破線は、台座400となるべき部分を示している。
図21において、材料第1層1001は、主発電第1層100を構成することを意図した層であり、圧電材料層の上下両面に電極となる導電層を形成したものである。同様に、材料第2層1002は、主発電第2層200を構成することを意図した層であり、たとえば、板状橋梁部210を構成するのに適したシリコン基板によって構成することができる。そして、材料第3層1003は、主発電第3層300(重錘体)を構成することを意図した層であり、たとえば、SUS等の金属基板によって構成することができる。
このような積層材料ブロック1000の各層に対して、それぞれ必要な加工(たとえば、エッチング加工)を施すことにより、図18〜図20に示す主発電構造体MGSと台座400とを同時進行で構成することができる。このため、製造工程を単純化して量産化を図ることができ、製造コストを低減することができるようになる。
このように、図17に示す発電素子PGEでは、主発電構造体MGSを方環状構造体からなる台座400に収容したため、所定の大きさを超える加速度の水平方向成分(XY平面に平行な成分)が作用した場合、重錘体の変位を制限することが可能である。ここでは更に、所定の大きさを超える加速度の垂直方向成分(Z軸に平行な成分)が作用した場合にも、重錘体の変位を制限する実施例を述べる。
図22は、このような実施例を示す側断面図である。図示の実施例は、図17に示す発電素子PGEを、装置筐体600に収容したものであり、本願では、このように装置筐体600を含めた発電素子PGEを、便宜上、「発電装置」と呼ぶことにする。すなわち、ここで言う「発電装置」とは、これまで述べてきた発電素子PGE(主発電構造体MGS、台座400、発電回路500を有する素子)と、この発電素子PGEを収容する装置筐体600と、を備える装置ということになる。
図示のとおり、発電素子PGEの台座400は、装置筐体600に固定されており、装置筐体600を振動させる外力が作用すると、発電素子PGEの重錘体300(主発電第3層)は、板状橋梁部210の撓みによって装置筐体600内で振動する。図示されていない発電回路500は、当該振動によって発生した電力を取り出して外部に出力する処理を行う。
より具体的には、装置筐体600は、発電素子PGEを下方から支持固定するための土台基板610と、発電素子PGEの上方を覆う上蓋基板620と、発電素子PGEの周囲を囲うように配置され、土台基板610と上蓋基板620とを連結する側壁板630と、を有している。そして、発電素子PGEの台座400(各壁部410〜440)の底面は、発電素子PGEの重錘体(主発電第3層300:320,330,340)の底面より下方に位置し、台座400(各壁部410〜440)の底面は土台基板610の上面に固定されている。
その結果、土台基板610の上面と重錘体(主発電第3層300:320,330,340)の底面との間に、空隙寸法d15を有する下方空隙部が形成されている。また、上蓋基板620は、発電素子PGEの主発電第1層100の上面より上方に位置し、上蓋基板620の下面と主発電第1層100の上面との間に、空隙寸法d16を有する上方空隙部が形成されている。この実施例では、d15=d16=10μmに設定している。
したがって、発電素子PGEに対して、所定の大きさを超える加速度の垂直方向成分が作用した場合には、主発電構造体PGEの一部が土台基板610の上面もしくは上蓋基板620の下面に接触し、それ以上の変位が制限される。かくして、図22に示す発電装置によれば、XYZ三次元座標系において、X軸,Y軸,Z軸のいずれの方向を向いた過度の加速度が作用した場合にも、重錘体の変位を制限することが可能になり、板状橋梁部210の破損を防ぐことができる。
図23は、図22に示す発電装置における重錘体と台座の役割を逆にした変形例に係る発電装置の側断面図である。この図23に示す発電装置も、発電素子PGE′と、この発電素子PGE′を収容する装置筐体600と、を備える装置であり、装置筐体600の部分は、図22に示す装置と全く同じである。ただ、図23に示す発電素子PGE′は、図22に示す発電素子PGEとは若干構造が異なっている。
この図23に示す発電装置の場合、発電素子PGE′の主発電第3層300′(320′,330′,340′)が装置筐体600に固定され、台座400′(410′,420′,430′,440′)が宙吊り状態になっている。このため、装置筐体600を振動させる外力が作用した場合、発電素子PGEの台座400′が板状橋梁部210の撓みによって装置筐体600内で振動する。図示されていない発電回路500は、当該振動によって発生した電力を取り出して外部に出力する処理を行う。
より具体的には、装置筐体600は、発電素子PGE′を下方から支持固定するための土台基板610と、発電素子PGE′の上方を覆う上蓋基板620と、発電素子PGE′の周囲を囲うように配置され、土台基板610と上蓋基板620とを連結する側壁板630と、を有している。そして、発電素子PGE′の台座400′(410′,420′,430′,440′)の底面は、発電素子PGE′の主発電第3層300′(320′,330′,340′)の底面より上方に位置し、主発電第3層300′(320′,330′,340′)の底面は土台基板610の上面に固定されている。
その結果、土台基板610の上面と台座400′(410′,420′,430′,440′)の底面との間に、空隙寸法d17を有する下方空隙部が形成されている。また、上蓋基板620は、発電素子PGE′の主発電第1層100の上面より上方に位置し、上蓋基板620の下面と主発電第1層100の上面との間に、空隙寸法d18を有する上方空隙部が形成されている。この実施例では、d17=d18=10μmに設定している。
したがって、発電素子PGE′に対して、所定の大きさを超える加速度の垂直方向成分が作用した場合には、主発電構造体PGE′の一部が土台基板610の上面もしくは上蓋基板620の下面に接触し、それ以上の変位が制限される。かくして、図23に示す発電装置の場合も、XYZ三次元座標系において、X軸,Y軸,Z軸のいずれの方向を向いた過度の加速度が作用しても、重錘体の変位を制限することが可能になり、板状橋梁部210の破損を防ぐことができる。以上、空隙寸法d11〜d18について具体的な寸法値を例示したが、もちろん、これらの空隙寸法d11〜d18の最適値は、図6および図7に示す各部の寸法値d1〜d10等に応じて定められるべきものである。
なお、図22に示す発電装置と図23に示す発電装置とについて、動作原理を比較すると、前者の場合、主発電第3層300(320,330,340)が、装置筐体600内に宙吊り状態となった重錘体として機能し、この重錘体の振動エネルギーが電気エネルギーに変換されることになるのに対して、後者の場合、台座400′(410′,420′,430′,440′)が、装置筐体600内に宙吊り状態となった重錘体として機能し、この重錘体の振動エネルギーが電気エネルギーに変換されることになる。なお、図23に示す発電装置の場合、原理上は、部材300′を台座と呼び、部材400′を重錘体と呼ぶべきであるが、図22に示す発電装置と対比する便宜上、ここでは部材300′を重錘体と呼び、部材400′を台座と呼んでいる。
一般論として、主発電第3層300,300′よりも、その外側を取り囲む台座400,400′の方が、より大きな質量をもった構造体にしやすい。たとえば、図17に示す例において、第1壁部410,第2壁部420,第3壁部430,第4壁部440の壁の厚みを厚くすれば、台座400の質量を増加させることは容易である。このように質量の大きな台座を重錘体として利用すれば、より大きな発電量を確保することができる。したがって、一般論としては、図22に示す構造よりも、図23に示す構造の方が、発電量を確保する上では好ましい。もちろん、図23に示す構造を採用した場合にも、台座400′の各座標軸方向への変位は制限されるので、板状橋梁部210の破損を防ぐ効果が得られることになる。
<<< §4. 本発明の変形例 >>>
続いて、これまで述べてきた基本的実施形態に係る発電素子PGEについて、いくつかの変形例を述べておく。
<4−1.第1の変形例A:3層構造体の平面形状の変形例>
§1で述べた基本的実施形態に係る発電素子PGEを構成する主発電構造体MGSは、図1に示すように、主発電第1層100,主発電第2層200,主発電第3層300を積層させた3層構造体によって構成されている。これら3層の平面形状は、それぞれ図2〜図4に示されている。
ここで、図2と図3とを比較すればわかるとおり、主発電第1層100の平面形状と主発電第2層200の平面形状とは全く同一であり、両者のXY平面投影像は重なることになる。これは、シリコン基板からなる主発電第2層200の上面の全領域に、圧電素子からなる主発電第1層100を形成する製造プロセスを採ったためである。
もっとも、主発電第1層100(圧電素子)の役割は、主発電第2層200とともに撓みを生じさせ、この撓みに基づいて発電を行うことにあるので、原理的には、主発電第1層100(圧電素子)は、撓みが生じる板状橋梁部210の上面に形成されていれば足りる。図2に示す主発電第1層100は、橋梁部圧電層110,中央圧電層120,左翼圧電層130,右翼圧電層140の4つの部分によって構成されているが、原理的には、橋梁部圧電層110のみを設ければよく、より細かく言えば、橋梁部圧電層110のうち、上層電極E1〜E4が形成される領域にのみ形成されていればよい。
要するに、主発電第1層100の平面形状と主発電第2層200の平面形状とは、必ずしも同一である必要はなく、主発電第1層100は、主発電第2層200の板状橋梁部210の上面の少なくとも一部分を覆うように形成された圧電素子を有していればよい。
一方、図3と図4とを比較すればわかるとおり、主発電第2層200の平面形状と主発電第3層300の平面形状とは、板状橋梁部210の部分を除いて同一になっている。すなわち、図3に示されている主発電第2層200の各部分を構成する中央板状部220,左翼板状部230,右翼板状部240の平面形状は、それぞれ図4に示されている主発電第3層300の各部分を構成する中央重錘部320,左翼重錘部330,右翼重錘部340の平面形状と同一である。平面形状における両者の相違は、図3に示されている主発電第2層200の板状橋梁部210に対応する部分が、図4に示されている主発電第3層300では、空洞部310になっている点だけである。
このように、主発電第2層200の平面形状と主発電第3層300の平面形状とをほぼ同一にすれば、3層の平面形状の外形がほぼ同じになり、主発電構造体MGSの全体形状を単純化することができる。しかしながら、主発電第2層200の平面形状と主発電第3層300の平面形状とは、必ずしもほぼ同一にする必要はない。
図24は、図1に示す主発電構造体MGSの第1の変形例Aに係る主発電構造体MGSaを示す上面図である。この主発電構造体MGSaは、図1に示す主発電構造体MGSと同様に、主発電第1層100a,主発電第2層200a,主発電第3層300aの3層構造体によって構成されているが、各層の平面形状が異なっている。この第1の変形例Aでは、主発電第1層100aの平面形状と主発電第2層200aの平面形状とは同一であるが、これらと主発電第3層300aの平面形状とは大きく異なっている。
主発電第1層100aの各部と主発電第2層200aの各部は、それぞれ同一の平面形状を有している。図24は上面図であるため、主発電第2層200aは主発電第1層100aの下層に隠れ、図には現れていないが、括弧書きの符号により、主発電第1層100aの下方に重なって配置されている主発電第2層200aの各構成要素が示されている。図から明らかなように、主発電第3層300aの外周部は、主発電第1層100aや主発電第2層200aの外周部から大きく外側に張り出している。
具体的には、中央重錘部320aは、中央圧電層120aや中央板状部220aよりも外側に大きく張り出した構造を有する。また、左翼重錘部330aは、左翼圧電層130aや左翼板状部230aよりも外側に大きく張り出した構造を有し、右翼重錘部340aは、右翼圧電層140aや右翼板状部240aよりも外側に大きく張り出した構造を有する。
このような構造を有する主発電構造体MGSaも、YZ平面に関して面対称な構造をなしているため、主発電第3層300aを構成する構造体(重錘体)の重心Gaは、板状橋梁部210aの下方のYZ平面上に位置している。したがって、重錘体が各座標軸方向について安定して振動する点に変わりはない。
このように、重錘体として機能する主発電第3層300a(中央重錘部320a,左翼重錘部330a,右翼重錘部340a)の外周部を、主発電第1層100aや主発電第2層200aの外周部から大きく外側に張り出させる構造を採用すると、過度の振動が加わった場合に、主発電第1層100aおよび主発電第2層200aを保護する機能を向上させることができる。
すなわち、図17に示す主発電構造体MGSの場合、最も損傷が生じやすい板状橋梁部210が、「コ」の字型の構造体によって囲われているため、過度の変位を生じさせる外力が加わっても、板状橋梁部210自体が台座400に接触することはない。しかしながら、図18を見れば明らかなように、主発電第1層100,主発電第2層200,主発電第3層300の外周面の位置は揃っているため、過度の変位を生じさせる外力が加わった場合、これら各層の外周部が台座400の内面に接触することになる。主発電第1層100および主発電第2層200は、主発電第3層300に比べて厚みが小さいため、台座400の内面に接触すると外周部に損傷が生じるおそれがある。
これに対して、図24に示す主発電構造体MGSaの場合、厚みの大きな主発電第3層300aの外周部を外側に張り出させる構造が採られているため、過度の変位を生じさせる外力が加わると、主発電第3層300aの外周部が台座400の内面に接触し、それ以上の変位が制限される。したがって、厚みの小さな主発電第1層100aや主発電第2層200aの外周面が台座400の内面に接触することを防ぐことができ、外周部に損傷が生じることを防止できる。
なお、図24に示す主発電構造体MGSaでは、主発電第3層300aを図の上下左右すべての方向に張り出させているが、上記保護効果を得る上では、必ずしもすべての方向に張り出させる必要はない。すなわち、重錘体として機能する主発電第3層300aについて、その外周部の一部が台座400の内面に接触することにより、図の上下方向の変位および図の左右方向の変位を制限することができる構造になっていればよい。
具体的には、主発電第3層300aのX軸正方向の端部が重錘体支持部(220a,230a,240a)のX軸正方向の端部よりもX軸正方向に突き出しており、主発電第3層300aのX軸負方向の端部が重錘体支持部(220a,230a,240a)のX軸負方向の端部よりもX軸負方向に突き出しており、主発電第3層300aのY軸正方向の端部が重錘体支持部(220a,230a,240a)のY軸正方向の端部よりもY軸正方向に突き出しており、主発電第3層300aのY軸負方向の端部が重錘体支持部(220a,230a,240a)のY軸負方向の端部よりもY軸負方向に突き出しているようにすればよい。
<4−2.第2の変形例B:重錘体の分離構造>
これまで述べてきた基本的実施形態では、図4に示すとおり、重錘体として機能する主発電第3層300を、中央重錘部320,左翼重錘部330,右翼重錘部340の3つの部分によって構成していた(図24に示す第1の変形例Aも同様)。しかしながら、本発明では、重錘体として、板状橋梁部210の長手方向軸(Y軸)に関して、左脇に位置する左翼重錘部330と右脇に位置する右翼重錘部340と、を有する主発電構造体MGSを用いれば、必要な作用効果が得られる。別言すれば、本発明を実施するにあたり、左翼重錘部330と右翼重錘部340とを接続する中央重錘部320は必須のものではない。
図25は、図1に示す主発電構造体MGSの第2の変形例Bを示す上面図である。図示の主発電構造体MGSbは、図1に示す主発電構造体MGSや図24に示す主発電構造体MGSaと同様に、主発電第1層100b,主発電第2層200b,主発電第3層300bの3層構造体によって構成されている。ここでも、括弧書きの符号は、下方に配置されている主発電第2層200bの構成要素を示している。図25に示す主発電第1層100b(110b,120b,130b,140b)は、図24に示す主発電第1層100a(110a,120a,130a,140a)と全く同一の構成要素であり、図25に示す主発電第2層200b(210b,220b,230b,240b)は、図24に示す主発電第2層200a(210a,220a,230a,240a)と全く同一の構成要素である。
図24に示す主発電構造体MGSaと図25に示す主発電構造体MGSbとの相違点は、重錘体として機能する主発電第3層の構造部分のみである。すなわち、図24に示す主発電構造体MGSaの場合、主発電第3層300aは、中央重錘部320a,左翼重錘部330a,右翼重錘部340aの3つの部分からなる「コ」の字状の構造体であるが、図25に示す主発電構造体MGSbの場合、主発電第3層300bは、左翼重錘部330bおよび右翼重錘部340bの2つの部分からなる構造体であり、両者を接続する中央重錘部は設けられていない。
左翼重錘部330bは、左翼板状部230b(重錘体支持部)の下面に接合され、右翼重錘部340bは、右翼板状部240b(重錘体支持部)の下面に接合されており、重錘体に生じた変位は、支障なく板状橋梁部210bの先端部に伝達される。
このような構造を有する主発電構造体MGSbでは、重錘体が、左翼重錘部330bと右翼重錘部340bとの2つの部分に分離しているが、YZ平面に関して面対称な構造をなしているため、重錘体の重心Gbは、板状橋梁部210bの下方のYZ平面上に位置している。したがって、重錘体が各座標軸方向について安定して振動する点に変わりはない。
また、図25に示す主発電構造体MGSbは、図24に示す主発電構造体MGSaと同様に、主発電第1層100bおよび主発電第2層200bの外周部に比べて、主発電第3層300bの外周部が外側に張り出す構造をとっているため、厚みの小さな主発電第1層100bや主発電第2層200bの外周面が台座400の内面に接触することを防ぐことができ、外周部に損傷が生じることを防止する効果も得られる。
すなわち、図25において、右翼重錘部340bのX軸正方向の端部は、右翼板状部240b(重錘体支持部)のX軸正方向の端部よりもX軸正方向に突き出しており、左翼重錘部330bのX軸負方向の端部は、左翼板状部230b(重錘体支持部)のX軸負方向の端部よりもX軸負方向に突き出しており、左翼重錘部330bおよび右翼重錘部340bのY軸正方向の端部は、左翼板状部230bおよび右翼板状部240b(重錘体支持部)のY軸正方向の端部よりもY軸正方向に突き出しており、左翼重錘部330bおよび右翼重錘部340bのY軸負方向の端部は、左翼板状部230bおよび右翼板状部240b(重錘体支持部)のY軸負方向の端部よりもY軸負方向に突き出している。
したがって、重錘体に対して、図の上下方向もしくは図の左右方向に過度の変位を生じさせる外力が加わったとしても、常に、主発電第3層300b(重錘体)の外周部が台座400の内面に接触し、それ以上の変位が制限される。このため、厚みの小さな主発電第1層100bや主発電第2層200bの外周面が台座400の内面に接触することを防ぐことができ、外周部に損傷が生じることを防止できる。
<4−3.第3の変形例C:板状橋梁部の接続角>
図26は、図1に示す主発電構造体MGSの主発電第2層200における板状橋梁部210の両端の接続角度を示す上面図である。図示のとおり、主発電第2層200は、板状橋梁部210、中央板状部220、左翼板状部230、右翼板状部240という4つの部分によって構成されている。
ここで、板状橋梁部210は、発電動作に直接的に関与する撓みを生じる中枢部分であり、第1の長手方向軸L1(これまでの説明ではY軸)に沿って伸びる可撓性をもったビーム状の構造体である。これに対して、中央板状部220は、第1の長手方向軸L1に直交する第2の長手方向軸L2(これまでの説明ではX′軸)に沿って伸びる構造体であり、第1の長手方向軸L1に関して左右対称となる位置に配置されている。そして、板状橋梁部210の先端部は、先端点Tにおいて中央板状部220の中央側部に接続されており、両者はT字状の構造体をなす。
更に、中央板状部220の左側には左翼板状部230が接続され、右側には右翼板状部240が接続されており、主発電第2層200は、全体として平面形状が「E」の字状をした平板状の構造体を構成している。図の境界線H′は、これら各部の領域を相互に区分けするための境界線に相当する。
このような主発電第2層200において、板状橋梁部210の先端部(先端点Tの近傍)における中央板状部220に対する接続状態に注目してみると、図示の接続角θ1,θ2は、いずれも90°になる。ここで、接続角θ1は、板状橋梁部210の左側辺と境界線H′とのなす角であり、接続角θ2は、板状橋梁部210の右側辺と境界線H′とのなす角である。このように、接続角θ1,θ2が90°になるのは、第1の長手方向軸L1および第2の長手方向軸L2が互いに直交し、かつ、長方形状の板状橋梁部210が第1の長手方向軸L1を中心軸として配置され、長方形状の中央板状部220が第2の長手方向軸L2を中心軸として配置されているためである。
同様に、板状橋梁部210の根端部(原点Oの近傍)における台座400に対する接続状態に注目してみると、図示の接続角θ3,θ4は、いずれも90°になる。ここで、接続角θ3は、板状橋梁部210の左側辺と台座400の内側面とのなす角であり、接続角θ4は、板状橋梁部210の右側辺と台座400の内側面とのなす角である。このように、接続角θ3,θ4が90°になるのは、第1の長手方向軸L1が台座400の内側面に直交し、かつ、長方形状の板状橋梁部210が第1の長手方向軸L1を中心軸として配置されているためである。
一方、図27は、図1に示す主発電構造体MGSの第3の変形例Cに係る主発電第2層200cを示す上面図である。この第3の変形例Cの場合も、主発電第2層200cは、板状橋梁部210c、中央板状部220c、左翼板状部230c、右翼板状部240cという4つの部分によって構成されているが、これら個々の部分の平面形状は長方形ではなく、変則的な図形になっている。また、板状橋梁部210cは、長手方向軸L1′に沿った方向に伸びる部材であるが、長手方向軸L1′は、台座400の内側面には直交していない。そのため、板状橋梁部210cの先端部についての接続角θ1,θ2および根端部についての接続角θ3,θ4は、90°にはなっていない。
このように、図27に示す第3の変形例Cに係る変則的な形状を有する主発電第2層200cを用いて本発明に係る発電素子を形成した場合にも、支障なく発電を行うことが可能である。すなわち、左翼板状部230cの下面に接合された左翼重錘部330cと、右翼板状部240cの下面に接合された右翼重錘部340cと、を有する重錘体を設ければ、当該重錘体の振動により、板状橋梁部210cに撓みが生じるので、その上面に設けた圧電素子により発電を行うことができる。
したがって、本発明を実施する上で、板状橋梁部と中央板状部とは、必ずしも直交させる必要はなく、必ずしも両者によってT字状の構造体を構成する必要はない。たとえば、図27に示す変形例Cの場合、板状橋梁部210cと中央板状部220cは、Y字に近い形態をなしている。また、板状橋梁部は、必ずしも台座400の内側面に対して直交する形態で接続する必要はない。更に、主発電構造体の各層を構成する各部分の平面形状は、必ずしも長方形である必要はなく、任意の形状でかまわない。
しかしながら、実用上は、図26に示す例のように、主発電第2層200の各部を、平面が長方形となる部材によって構成し、板状橋梁部210を、台座400の内側面に直交する第1の長手方向軸L1が中心軸となるように配置し、中央板状部220を、第1の長手方向軸L1に直交する第2の長手方向軸L2が中心軸となるように配置し、板状橋梁部210と中央板状部220とが直交してT字状をなすようにするのが好ましい。このような構成を採ると、接続角θ1〜θ4がすべて90°となり、板状橋梁部210の先端部および根端部に応力を集中させることができるようになり(図13〜図15参照)、図6に示す位置に配置された4枚の上層電極E1〜E4に効率的に電荷を発生させることができる。
<4−4.第4の変形例D:独立した主発電部品>
図18に示す発電素子PGEは、主発電構造体MGSの部分と台座400の部分との双方を3層構造体によって構成したため、図21に示すような単一の積層材料ブロック1000を用意して、これに対してエッチングなどの加工処理を施すことにより製造することができるので、量産化に適していることは既に述べたとおりである。
ここで、主発電構造体MGSを構成する3層構造のうち、主発電第1層100としては、発電動作を行わせるために圧電素子を用いる必要がある。また、主発電第2層200としては、シリコン基板を用いるのが適しており、主発電第3層300としては、金属基板を用いるのが適している。これは、前述したとおり、圧電素子の支持層としてはシリコン基板が最適であり、共振周波数を10Hz〜50Hzの範囲にするためには、重錘体を金属基板によって構成するのが最適であるためである。
特に、量産性を考慮すると、図21に示す積層材料ブロック1000を用意する段階において、材料第2層1002をシリコン基板によって構成し、その上面に下層電極E0となるべき金属層を形成し、その上面に圧電材料層を成膜し、更にその上面に上層電極E1〜E4となるべき金属層を形成することにより、材料第1層1001を形成し、これを金属基板からなる材料第3層1003の上面に接合するのが好ましい。
しかしながら、現在のところ、シリコン基板上に圧電素子を形成する処理工程には、高度な設備が必要になり、多大なコストがかかる。実際、現在の技術では、シリコン基板上に圧電素子を形成する処理工程には、当該シリコン基板の材料価格の10倍以上の費用がかかる。したがって、図21に示す積層材料ブロック1000を利用して、図18に示す発電素子PGEを製造するプロセスは効率的に行うことができたとしても、積層材料ブロック1000の調達コストは比較的高価にならざるを得ない。
実際、発電素子PGEの発電機能に直接関与する圧電素子は、板状橋梁部210の上面に形成された部分のみであり、それ以外の領域に圧電素子を形成する必要はない。特に、台座400に形成された圧電素子は無駄であり、そもそも台座400にシリコン基板を用いる必要は全くない。そこでここでは、シリコン基板およびその上面に形成される圧電素子の平面的なサイズを大幅に削減し、製造コストの低減を図ることができる変形例を述べる。
図28は、図1に示す主発電構造体MGSの第4の変形例Dに用いる主発電部品700dを示す図であり、図28(a) はその上面図、図28(b) はこれを切断線b−bに沿って切断した正断面図である。図28(a) において、括弧書きの符号は、各層の構成要素を示している。ここで述べる第4の変形例Dは、原理的には、これまで述べてきた基本的実施形態と全く同じであるが、具体的な部品構成が若干異なっている。図28に示す主発電部品700dは、これまで述べてきた基本的実施形態における主発電構造体MGSから、重錘体の部分を除いた部品としての役割を果たす。
図28(a) の上面図に示されているように、主発電部品700dは、第1の長手方向軸L1に沿って伸びる第1部材710dと、第2の長手方向軸L2に沿って伸びる第2部材720dと、第3の長手方向軸L3に沿って伸びる第3部材730dと、によって構成されている。ここで、第1の長手方向軸L1,第2の長手方向軸L2,第3の長手方向軸L3は、いずれも同一の共通平面上に含まれ、第1の長手方向軸L1と第2の長手方向軸L2とは直交し、第1の長手方向軸L1と第3の長手方向軸L3とは直交する(第2の長手方向軸L2と第3の長手方向軸L3とは平行になる)。
図28(b) の正断面図には、第1部材710dを切断線b−bに沿って切断した断面部分のみが示されている。図示のとおり、第1部材710dは、たとえば、シリコンからなる板状橋梁部712dの上面に、金属からなる下層電極E0を形成し、その上面に橋梁部圧電層711dを形成し、更にその上面の所定箇所に上層電極E1〜E4(図には、切断面に位置するE1,E2のみが現れている)を形成した構造を有しており、その層構造および各層の厚み寸法は、図7に示す実施例と同じである。したがって、この実施例の場合、第1部材710dの厚み寸法d19(板状橋梁部712dの下面から上層電極E1〜E4の上面までの寸法)は、4層の各厚みの和、すなわち、0.01+2.00+0.01+200.00=202.02μmになる。
図示は省略するが、第2部材720dおよび第3部材730dも同様の層構造を有している。すなわち、第2部材720dは、たとえば、シリコンからなる中央板状部722dの上面に、金属からなる下層電極E0を形成し、その上面に中央圧電層721dを形成した構造を有し、第3部材730dは、たとえば、シリコンからなる台座接続部732dの上面に、金属からなる下層電極E0を形成し、その上面に接続部圧電層731dを形成し、更にその上面の所定箇所にボンディングパッドB(図示の例では、5箇所に設けられている)を形成した構造を有している。
ここで、第3部材730dの厚みは、第1部材710dの厚みと同じ寸法d19である(ボンディングパッドBの厚みを上層電極E1〜E4の厚みと同じに設定したため)。一方、図示の実施例の場合、第2部材720dの上面には、上層電極E1〜E4やボンディングパッドBは形成されていない。そのため、第2部材720dの厚みは、寸法d19より若干小さくなる。なお、5組のボンディングパッドBと各電極E0〜E4との間には配線(図示省略)がなされている。各ボンディングパッドBに対しては、発電回路500からの配線がなされることになる。
この第4の変形例Dにおいても、4枚の上層電極E1〜E4は、第1部材710dの図の上端近傍の左右両脇位置と第1部材710dの図の下端近傍の左右両脇位置に形成されており、いずれも応力が集中する領域に配置されている。なお、図13〜図15に示す応力分布図を見れば、図28に示す上層電極E1,E2の図面における上端位置は、第1部材710dと第2部材720dとの境界線を越えて、若干図の上方(第2部材720dの領域)に伸びていてもよいことがわかる。同様に、図28に示す上層電極E3,E4の図面における下端位置は、第1部材710dと第3部材730dとの境界線を越えて、若干図の下方(第3部材730dの領域)に伸びていてもよいことがわかる。
一方、図29は、この第4の変形例Dに用いる重錘体300dを示す上面図である。この重錘体300dは、図4に示す重錘体300(主発電第3層)と同様に、金属,ガラス,セラミックスなどの材料によって構成され、中央重錘部320d,左翼重錘部330d,右翼重錘部340dという3つの部分を有する「コ」の字状の構成要素であり、空洞部310dを有する。もちろん、重錘体300dの厚みは、図28に示す第1部材710dに撓みを生じさせるための十分な質量が得られる寸法に設定される。図示の実施例の場合、中央重錘部320dの上面に長方形状の嵌合溝325dが形成されている。この嵌合溝325dは、後述するように、図28に示す主発電部品700dの第2部材720dを嵌合させて固定するためのものであり、その深さの寸法は、第2部材720dの厚み寸法よりも大きくなるように設定されている。
図30は、この第4の変形例Dに用いる台座400dを示す上面図である。この台座400dは、図17に示す台座400と同様に、第1壁部410d,第2壁部420d,第3壁部430d,第4壁部440dを有する長方形状の構成要素である。ただ、台座400が図18に示すような3層構造体(主発電構造体MGSと同様の層構造をもつ)によって構成されていたのに対し、図30に示す台座400dは、そのような3層構造をもつ必要はなく、たとえば、金属などの材料からなる単層構造体でかまわない。これは、ここに示す第4の変形例Dの場合、台座400dが、図28に示す主発電部品700dとは全く別個独立したプロセスで製造されるためである。
なお、図示の実施例の場合、第4壁部440dの上面中央部に、長方形上の嵌合溝445dが形成されている。この嵌合溝445dは、後述するように、図28に示す主発電部品700dの第3部材730dを嵌合させて固定するためのものであり、その深さの寸法は、第3部材730dの厚み寸法よりも大きくなるように設定されている。
図31は、この第4の変形例Dに係る発電素子PGEdの全体構成を示す上面図である(ただし、発電回路500を除いた発電素子用構造体の部分のみが示され、発電回路500は図示されていない)。この発電素子PGEdは、図30に示す台座400dに、図28に示す主発電部品700dおよび図29に示す重錘体300dを取り付けることにより構成される。
具体的には、図28に示す主発電部品700dの第2部材720dを、図29に示す「コ」の字状の重錘体300dの中央重錘部320dに設けられた嵌合溝325dに嵌め込み、第2部材720dの下面を嵌合溝325dの底面に接着する。同様に、この主発電部品700dの第3部材730dを、図30に示す台座400dの第4壁部440dに設けられた嵌合溝445dに嵌め込み、第3部材730dの下面を嵌合溝445dの底面に接着する。そうすれば、図31に示す発電素子PGEdが完成する(実際には、図示されていない発電回路500とボンディングパッドBとの間に配線を行う必要がある。)。
結局、図31に示す発電素子PGEdも、矩形状の台座400dの内部に主発電構造体MGSdを収容した構成を採り、主発電構造体MGSdが3層構造体からなる点については、図17に示す基本的実施形態に係る発電素子PGEと同様である。ただ、図28に括弧書きの符号で示すとおり、主発電構造体MGSdを構成する主発電第2層が、板状橋梁部712dの根端部に接続された台座接続部732dを更に有している。この台座接続部732dは、第1の長手方向軸L1(基本的実施形態におけるY軸)と交差する第3の長手方向軸L3(基本的実施形態におけるX軸に平行な軸)を配置軸として、当該配置軸上に配置され、当該配置軸に沿って伸びる部材である。
図29に示すとおり、重錘体300dの所定箇所の上面には、中央板状部722d(第2部材720d)を嵌合させてその下面を接着するための嵌合溝325dが形成されており、中央板状部722dが嵌合溝325dに嵌合した状態で固定される。同様に、図30に示すとおり、台座400dの所定箇所の上面には、台座接続部732d(第3部材730d)を嵌合させてその下面を接着するための嵌合溝445dが形成されており、台座接続部732dが嵌合溝445dに嵌合した状態で固定される。
なお、図31に示すとおり、ここに示す実施例の場合、嵌合溝325dの平面形状は第2部材720dの平面形状より若干大きくなるように設計されており、第2部材720dが嵌合溝325d内に余裕をもって嵌合する。一方、嵌合溝445dの平面形状は第3部材730dの平面形状に一致するように設計されており、第3部材730dが嵌合溝445d内にぴったり嵌合する形態になっている。もちろん、各嵌合溝325d,445dとそこに嵌合させる部材720d,730dとの平面形状の関係は、必ずしもこの実施例のようにする必要はない。いずれの場合も、溝内に余裕をもって嵌合させるように設計してもよいし、ぴったり嵌合させるように設計してもよい。
これに対して、各嵌合溝325d,445dの深さとそこに嵌合させる部材720d,730dの厚みとの関係は、前者の寸法の方が後者の寸法よりも大きくなるように、すなわち、嵌合溝が部材の厚みより深くなるように設計するのが好ましい。これは、主発電部品700dを破損から保護するための配慮である。主発電部品700dは、たとえば、シリコン基板,圧電素子層,電極を含む部品であるため、重錘体300dや台座400dに比べて破損しやすい部品である。そこで、部材720d,730dが、嵌合溝325d,445dの内部に完全に埋め込まれるようにすれば、主発電部品700dが何らかの別部材と接触して破損する可能性を低減することができる。
図31に示す実施例の場合、嵌合溝325dの深さ寸法は、第2部材720dの厚み寸法よりも大きくなるように設定されているため、第2部材720dの上面は、中央重錘部320dの上面よりも下方(図の奥方向)に位置し、第2部材720dは重錘体300dの内部に完全に埋め込まれており、外部部材との接触から保護される状態になっている。同様に、嵌合溝445dの深さ寸法は、第3部材730dの厚み寸法よりも大きくなるように設定されているため、第3部材730dの上面(ボンディングパッドBを含めた上面)は、第4壁部440dの上面よりも下方(図の奥方向)に位置し、第3部材730dは台座400dの内部に完全に埋め込まれており、外部部材との接触から保護されている状態になっている。このような構成を採れば、過度の加速度が加わり、各部が大きく変位する事態が生じても、主発電部品700dが何らかの別部材と接触して破損することを防止できる。
この第4の変形例Dに係る発電素子PGEdの製造プロセスは、図17,図18に示す基本的実施形態に係る発電素子PGEの製造プロセスとは異なり、各部品を相互に接着して組み立てる工程が必要になるが、板状橋梁部712dに連なる層をシリコンによって構成した場合でも、シリコン層およびその上面の圧電素子は、図28に示す主発電部品700dの部分にのみ形成すれば足りる。したがって、シリコン基板およびその上面に形成される圧電素子の平面的なサイズを大幅に削減し、製造コストの低減を図ることができる。
また、この第4の変形例Dの場合、図28に示すとおり、第1の長手方向軸L1に沿って配置された第1部材710d(板状橋梁部712d)と、第2の長手方向軸L2に沿って配置された第2部材720d(中央板状部722d)および第3の長手方向軸L3に沿って配置された第3部材730d(台座接続部732d)とは直交しているため、図26に示す接続角θ1〜θ4を90°にすることができる。したがって、板状橋梁部712dの両端部に効率的な応力を発生させ、発電効率を高めることができる。
<<< §5. 本発明の基本概念 >>>
以上、§1〜§3において、本発明の基本的な実施形態を説明し、更に§4において、いくつかの変形例を述べた。もちろん、本発明の変形例は§4で述べた変形例に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏することができる範囲で、この他にも様々な変形例を実施することが可能である。
たとえば、これまで述べてきた基本的な実施形態や変形例では、主発電構造体MGSを3層構造体によって構成しているが、本発明を実施する上では、必ずしも3層構造体を用いる必要はない。たとえば、主発電第2層200と主発電第3層300と融合させ、板状橋梁部と重錘体とをシリコン基板等で一体に形成するようにしてもかまわない。もちろん、板状橋梁部と重錘体と台座とをシリコンなどの同一材料で一体形成することもできる。
また、これまでの例では、重錘体を構成する主発電第3層300を、板状橋梁部より下方に配置しているが、板状橋梁部の下方から上方へと連なる重錘体を設けるようにしてもかまわない。
ここでは、これまで述べてきた基本的な実施形態および種々の変形例を踏まえて、本発明の基本概念を総括しておく。本発明に係る発電素子は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子であって、図1に示すように、第1の長手方向軸Yに沿って伸び、可撓性を有する板状橋梁部210と、この板状橋梁部210の根端部を支持固定する台座400と、板状橋梁部210の先端部に直接もしくは間接的に接続された重錘体300と、板状橋梁部210の表面の伸縮変形が生じる所定位置に固定された圧電素子100と、この圧電素子100に発生した電荷に基づいて生じる電流を整流して電力を取り出す発電回路500と、を備え、重錘体300が、板状橋梁部210の長手方向軸Yに関して左脇に位置する左翼重錘部330と、板状橋梁部210の長手方向軸Yに関して右脇に位置する右翼重錘部340と、を有していればよい。
ただ、より効率的な発電を行う上では、板状橋梁部210の先端部に重錘体支持部220,230,240を接続し、その下面に重錘体300を接続するようにし、重錘体300の重心Gが板状橋梁部210の下方に位置しているようにするのが好ましい。
特に、図1に示す基本的実施形態では、重錘体支持部として、第1の長手方向軸Yに直交する第2の長手方向軸X′に沿って伸びる中央板状部220が設けられており、板状橋梁部210の先端部を中央板状部220の中央近傍に接続し、板状橋梁部210および中央板状部220によりT字状構造体が形成されるようにしている。そして、左翼重錘部330を中央板状部220の左側の下面に接続し、右翼重錘部340を中央板状部220の右側の下面に接続する構造を採用している。
より具体的には、図1に示す基本的実施形態の場合、重錘体支持部を、第1の長手方向軸Yに直交する第2の長手方向軸X′に沿って伸び、中央近傍が板状橋梁部210の先端部に接続された中央板状部220と、この中央板状部220の左側から板状橋梁部210の左脇に伸びる左翼板状部230と、中央板状部210の右側から板状橋梁部210の右脇に伸びる右翼板状部240と、によって構成しており、左翼重錘部330を左翼板状部230の下面に接続し、右翼重錘部340を右翼板状部240の下面に接続する構造を採用している。また、重錘体300には、左翼重錘部330と右翼重錘部340とを連結する中央重錘部320を設け、この中央重錘部320を中央板状部220の下面に接続するようにしている。
このような構成を採用すると、板状橋梁部210の周囲を重錘体300によって「コ」の字状に覆うような構造が実現でき、また、重錘体300の重心Gを板状橋梁部210の下方の所定位置に置くことができる。そのため、重錘体300の変位に基づいて板状橋梁部210を効率的に撓ませることができる。また、重錘体300の周囲に何らかの変位制限壁を設けるようにすれば、重錘体300に対して過度の変位を生じさせる外力が作用した場合にも、重錘体300の変位を制限し、板状橋梁部210の破損を防止することができる。
実用上は、台座400を重錘体300の変位を制限する変位制限壁として利用するのが好ましい。たとえば、図17に示す実施形態の場合、板状橋梁部210および重錘体300を有する主発電構造体MGSの周囲を取り囲む環状構造体をなす台座400を用いている。そうすることにより、発電素子PGEに対して所定の大きさを超える加速度が作用した場合に、重錘体300の一部が環状構造体からなる台座400の一部に接触し、それ以上の変位を制限することができる。
なお、図26に示すように、板状橋梁部210と中央板状部220とを直交させ、T字状構造体が形成されるようにすると、重錘体300に各座標軸方向の力が作用した場合、図13〜図15に示すように、板状橋梁部210の先端部の左右両側と根端部の左右両側とに応力集中が見られる。
したがって、圧電素子としては、板状橋梁部210の先端部近傍の左側に配置された先端部左側圧電素子P1(上層電極E1の領域に形成される圧電素子)と、板状橋梁部210の先端部近傍の右側に配置された先端部右側圧電素子P2(上層電極E2の領域に形成される圧電素子)と、板状橋梁部210の根端部近傍の左側に配置された根端部左側圧電素子P3(上層電極E3の領域に形成される圧電素子)と、板状橋梁部210の根端部近傍の右側に配置された根端部右側圧電素子P4(上層電極E4の領域に形成される圧電素子)と、を設けるようにすると、効率的な発電が可能になる。
また、圧電素子の具体的な構造は、図1に示されているように、板状橋梁部210の表面に層状に形成された下層電極E0と、下層電極E0の表面に層状に形成された圧電材料層105と、圧電材料層105の表面に局在的に形成された複数の上層電極E1〜E4からなる上層電極群と、を有する積層構造を採ればよい。ここで、圧電材料層105は、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有する材料を用いればよい。
なお、図1に示す実施例の場合、圧電素子(主発電第1層100)は、板状橋梁部210(主発電第2層200)の上面に形成されているが、圧電素子は必ずしも板状橋梁部210の上面に形成する必要はなく、側面や下面に形成することも可能である。もちろん、上面と側面の両方に形成したり、上面,側面,下面のすべてに形成してもかまわない。板状橋梁部210の撓みは、上面だけでなく、側面や下面にも応力を発生させるので、側面や下面に形成された圧電素子によっても発電は可能である。
要するに、圧電素子は上面,側面,下面に関わらず、板状橋梁部210の表面に形成されていればよい。たとえば、板状橋梁部210の上面から側面へと連なるように下層電極E0を形成し、この下層電極E0の表面全域に圧電材料層105を形成し、この圧電材料層105の表面の所定箇所(板状橋梁部210の上方だけでなく側方も含めた所定箇所)に局在的に複数の上層電極を形成するようにすれば、板状橋梁部210の上面だけでなく側面にも圧電素子が形成されることになる。この場合、上面に形成された圧電素子だけでなく、側面に形成された圧電素子によっても発電が可能になる。
ただ、板状橋梁部210の上面だけでなく、側面や下面にも圧電素子を形成するためには、複雑な工程が必要になるため、製造コストは高騰せざるを得ない。したがって、実用上は、これまで述べてきた基本的実施形態やその変形例に示すように、板状橋梁部210の上面に圧電素子を設ける構造を採用し、コスト低減を図るのが好ましい。特に、図21に示すような積層材料ブロック1000を用意し、これに対して所定の加工処理を施す量産プロセスを採る場合、圧電素子は板状橋梁部210の上面に形成せざるを得ない。
なお、図22に示す例のように、発電素子PGEを装置筐体600内に収容して発電装置を構成する場合には、発電素子PGEの台座400を装置筐体600に固定し、装置筐体600を振動させる外力が作用したときに、発電素子PGEの重錘体300が板状橋梁部210の撓みによって装置筐体600内で振動するようにし、当該振動に応じて発電回路500から取り出される電力を出力する構成を採ればよい。
あるいは、図23に示す例のように、重錘体と台座の役割を逆転させる構成を採ることも可能である。この場合は、台座400′の底面よりも重錘体300′の底面の方が下方に位置する発電素子PGE′を用意し、この発電素子PGE′の重錘体300′を装置筐体600に固定し、装置筐体600を振動させる外力が作用したときに、発電素子PGE′の台座400′が板状橋梁部210の撓みによっ装置筐体600内で振動するようにし、当該振動に応じて発電回路500から取り出される電力を出力する構成を採ればよい。
もちろん、図28〜図31に示す実施例のように、いくつかの個別部品を組み立てる方法により、発電素子PGEを構成することもできる。図28に示す主発電部品700dの場合、長手方向軸L1に沿って伸びる板状橋梁部712dの根端部に、この長手方向軸L1に直交する長手方向軸L3に沿って伸びる台座接続部732dが接続されており、この台座接続部732dを台座400dに固定することにより、組み立てを行うことができるようにしている。
100:主発電第1層
105:圧電材料層
110:橋梁部圧電層
120:中央圧電層
130:左翼圧電層
140:右翼圧電層
200:主発電第2層
210,210a,210b,210c:板状橋梁部
220,220a,220b,220c:中央板状部(重錘体支持部)
230,230a,230b,230c:左翼板状部(重錘体支持部)
240,240a,240b,240c:右翼板状部(重錘体支持部)
300,300d:主発電第3層(重錘体)
310,310d:空洞部
320,320a,320d:中央重錘部(重錘体)
325d:嵌合溝
330,330a,330b,330d:左翼重錘部(重錘体)
340,340a,340b,340d:右翼重錘部(重錘体)
400,400d:台座
401:台座第1層
402:台座第2層
403:台座第3層
410,410d:第1壁部
420,420d:第2壁部
430,430d:第3壁部
440,440d:第4壁部
445d:嵌合溝
500:発電回路
600:装置筐体
610:土台基板
620:上蓋基板
630:側壁板
700d:主発電部品
710d:第1部材
711d:橋梁部圧電層
712d:板状橋梁部
720d:第2部材
721d:中央圧電層
722d:中央板状部
730d:第3部材
731d:接続部圧電層
732d:台座接続部
1000:積層材料ブロック
1001:材料第1層
1002:材料第2層
1003:材料第3層
B:ボンディングパッド
Cf:平滑用容量素子(コンデンサ)
D0(+)〜D4(+):正電荷用整流素子(ダイオード)
D0(−)〜D4(−):負電荷用整流素子(ダイオード)
d1〜d10:各部の実寸法
d11〜d18:空隙寸法
d19:各部の実寸法
E0:下層電極
E1:先端部左側上層電極
E2:先端部右側上層電極
E3:根端部左側上層電極
E4:根端部右側上層電極
Fx:X軸方向の力
Fy:Y軸方向の力
Fz:Z軸方向の力
G,Ga,Gb:重錘体の重心
H,H′:各部分の境界線
L1,L2,L3:長手方向軸
L1′:長手方向軸
MGS:主発電構造体
MGSa:主発電構造体
MGSb:主発電構造体
MGSd:主発電構造体
O:XYZ三次元座標系の原点(根端部)
P1:先端部左側圧電素子
P2:先端部右側圧電素子
P3:根端部左側圧電素子
P4:根端部右側圧電素子
PGE,PGE′,PGEd:発電素子
T,T′:先端点(先端部)
X:XYZ三次元座標系の座標軸
X′:X軸に平行な軸
Y:XYZ三次元座標系の座標軸
Z:XYZ三次元座標系の座標軸
ZL:電力供給を受ける機器の負荷
θ1〜θ4:板状橋梁部の接続角

Claims (3)

  1. 振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子であって、
    X軸、Y軸、Z軸を有するXYZ三次元座標系におけるXY平面に平行な面に沿って配置された平板状の部材からなり、根端部から先端部へと前記Y軸に沿って伸び、可撓性を有する板状橋梁部と、
    前記板状橋梁部の前記根端部を支持固定する台座と、
    前記板状橋梁部の前記先端部に直接もしくは間接的に接続された重錘体と、
    前記板状橋梁部の表面の伸縮変形が生じる所定位置に固定された複数組の圧電素子と、
    を備え、
    前記板状橋梁部の両脇について、X座標値が負となる側を左脇、X座標値が正となる側を右脇と定義したときに、前記重錘体は、前記板状橋梁部の左脇に位置する左翼重錘部と、前記板状橋梁部の右脇に位置する右翼重錘部と、を有しており、
    前記複数組の圧電素子が、前記板状橋梁部の先端部近傍に配置された先端部圧電素子と、前記板状橋梁部の根端部近傍に配置された根端部圧電素子と、を有し、
    前記各圧電素子は、前記板状橋梁部の表面に層状に形成された下層電極と、この下層電極の表面に層状に形成された圧電材料層と、この圧電材料層の表面に層状に形成された上層電極と、を有し、前記圧電材料層として、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有する材料が用いられており、
    前記重錘体が前記Z軸方向に所定の変位を生じたときに、前記先端部圧電素子の上層電極には第1極性の電荷が発生し、前記根端部圧電素子の上層電極には前記第1極性とは逆の第2極性の電荷が発生することを特徴とする発電素子。
  2. 請求項1に記載の発電素子において、
    重錘体がY軸方向に所定の変位を生じたときに、先端部圧電素子の上層電極と根端部圧電素子の上層電極には同一極性の電荷が発生することを特徴とする発電素子。
  3. 振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子であって、
    X軸、Y軸、Z軸を有するXYZ三次元座標系におけるXY平面に平行な面に沿って配置された平板状の部材からなり、根端部から先端部へと前記Y軸に沿って伸び、可撓性を有する板状橋梁部と、
    前記板状橋梁部の前記根端部を支持固定する台座と、
    前記板状橋梁部の前記先端部に直接もしくは間接的に接続された重錘体と、
    前記板状橋梁部の表面の伸縮変形が生じる所定位置に固定された複数組の圧電素子と、
    を備え、
    前記板状橋梁部の両脇について、X座標値が負となる側を左脇、X座標値が正となる側を右脇と定義したときに、前記重錘体は、前記板状橋梁部の左脇に位置する左翼重錘部と、前記板状橋梁部の右脇に位置する右翼重錘部と、を有しており、
    前記複数組の圧電素子が、前記板状橋梁部の先端部近傍に配置された先端部圧電素子と、前記板状橋梁部の根端部近傍に配置された根端部圧電素子と、を有し、
    前記各圧電素子は、前記板状橋梁部の表面に層状に形成された下層電極と、この下層電極の表面に層状に形成された圧電材料層と、この圧電材料層の表面に層状に形成された上層電極と、を有し、前記圧電材料層として、層方向に伸縮する応力の作用により、厚み方向に分極を生じる性質を有する材料が用いられており、
    前記重錘体が前記Y軸方向に所定の変位を生じたときに、前記先端部圧電素子の上層電極と前記根端部圧電素子の上層電極には、同一極性の電荷が発生することを特徴とする発電素子。
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