JP2019022953A - 塗装鋼板およびその製造方法、ならびにシャッタースラット - Google Patents
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Abstract
【課題】耐傷付き性が高く、さらには耐汚染性も高い塗装鋼板を提供すること。
【解決手段】塗装鋼板は、鋼板と、前記鋼板の少なくとも一方の面に配置された、ワックス粒子を含む有機塗膜と、前記有機塗膜上に配置された、実質的に組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物からなる無機塗膜と、を有する。前記無機塗膜を有する任意の10箇所の、1mm2当たりの無機塗膜被覆率の平均値が26〜90%である。
【選択図】図1
【解決手段】塗装鋼板は、鋼板と、前記鋼板の少なくとも一方の面に配置された、ワックス粒子を含む有機塗膜と、前記有機塗膜上に配置された、実質的に組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物からなる無機塗膜と、を有する。前記無機塗膜を有する任意の10箇所の、1mm2当たりの無機塗膜被覆率の平均値が26〜90%である。
【選択図】図1
Description
本発明は、塗装鋼板およびその製造方法、ならびに前記塗装鋼板を用いたシャッタースラットに関する。
建築物の開口部に設けられるシャッターは、鋼板等の金属板で構成される複数のスラットと称される部材を、互いに回動可能に連結することで構成されている。スラットを構成する金属板として、意匠性や成形加工性、耐食性等の観点から塗装鋼板が用いられることが多い。
一般的に、スラット用の塗装鋼板には、ロール成形による成形が可能であること(成形加工性)や、シャッター開閉時のスラット間の摩擦に対する耐傷付き性等が要求される。そこで、塗装鋼板の最表層にポリエチレンワックス(ポリエチレン粒子)含む有機塗膜を配置することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
一方、シャッターの美観維持ため、スラット用の塗装鋼板には、耐汚染性がさらに求められることもある。ここで、一般的なステンレス鋼板等の耐汚染性を高める手法として、親水性の高い無機塗膜を表面に配置することが知られている(例えば特許文献2参照)。
そこで、耐傷付き性および耐汚染性の両立のため、ワックス粒子を含む有機塗膜が配置された塗装鋼板上に、さらに特許文献2に記載の無機塗膜を配置すること等が考えられる。しかしながら、ワックス粒子を含む有機塗膜上に無機塗膜を形成すると、無機塗膜が十分に密着せず、剥がれてしまう等の課題があった。また仮に無機塗膜を形成できたとしても、ワックス粒子を含む有機塗膜を無機塗膜で覆ってしまうため、ワックス粒子由来の耐傷付き性を発現させることができないとの課題があった。
一方、無機塗膜を先に形成し、当該無機塗膜上に有機塗膜を形成した場合も同様に、無機塗膜に有機塗膜が密着し難かった。また仮に、有機塗膜を形成できたとしても、無機塗膜が有機塗膜で覆われてしまうため、無機塗膜由来の耐汚染性を発現させることができなかった。つまり、塗装鋼板において、耐傷付き性および耐汚染性を両立させることは難しく、このような塗装鋼板は得られていないのが実状であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐傷付き性が高く、さらには耐汚染性も高い塗装鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この塗装鋼板を用いたシャッタースラットを提供することも目的とする。
本発明者らは、有機塗膜に対して特定の親水化処理を行ってから無機塗膜を形成すること、さらには無機塗膜を実質に所定の組成物からなる塗膜とすること、また無機塗膜の被覆率を所定の範囲内とすることで、上記課題を解決することができることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の塗装鋼板およびシャッタースラットに関する。
[1]鋼板と、前記鋼板の少なくとも一方の面に配置された、ワックス粒子を含む有機塗膜と、前記有機塗膜上に配置された、実質的に組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物からなる無機塗膜と、を有し、前記無機塗膜を有する任意の10箇所の、1mm2当たりの無機塗膜被覆率の平均値が26〜90%である、塗装鋼板。
[2]前記ワックス粒子が、ポリエチレン粒子にフッ素樹脂粒子が結合している粒子である、[1]に記載の塗装鋼板。
[3]前記有機塗膜が、ポリエステル−メラミン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、またはこれらの組み合わせをさらに含む、[1]または[2]に記載の塗装鋼板。
[3]前記有機塗膜が、ポリエステル−メラミン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、またはこれらの組み合わせをさらに含む、[1]または[2]に記載の塗装鋼板。
[4]前記鋼板の他方の面に配置された第2の有機塗膜と、前記第2の有機塗膜上に配置された第2の無機塗膜と、をさらに有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の塗装鋼板。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装鋼板を含む、シャッタースラット。
[6]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装鋼板の製造方法であって、前記鋼板および前記有機塗膜を有する基材を準備する工程と、前記有機塗膜に、フレーム処理および/またはコロナ放電処理を行う工程と、前記フレーム処理および/または前記コロナ放電処理を行った前記有機塗膜上に、ケイ酸カリウムおよびコロイダルシリカを少なくとも含む無機塗膜形成用組成物を塗布する工程と、を有する塗装鋼板の製造方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装鋼板を含む、シャッタースラット。
[6]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装鋼板の製造方法であって、前記鋼板および前記有機塗膜を有する基材を準備する工程と、前記有機塗膜に、フレーム処理および/またはコロナ放電処理を行う工程と、前記フレーム処理および/または前記コロナ放電処理を行った前記有機塗膜上に、ケイ酸カリウムおよびコロイダルシリカを少なくとも含む無機塗膜形成用組成物を塗布する工程と、を有する塗装鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐傷付き性および耐汚染性の高い塗装鋼板、およびシャッタースラットを提供することができる。
本発明に係る塗装鋼板は、少なくとも鋼板の表面(第1の面)に所定のワックス粒子を含む有機塗膜と、実質的に組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物からなり、有機塗膜上に不連続に配置された無機塗膜と、を有する。ここで鋼板の表面とは、シャッタースラットとして用いられた場合に主として外部に面する面をいう。
例えば、本発明に係る塗装鋼板が2コートの塗装鋼板である場合は、本発明に係る塗装鋼板は、鋼板の表面に配置された有機塗膜と、当該有機塗膜上に配置された無機塗膜と、を有する。また、本発明に係る塗装鋼板が3コートの塗装鋼板である場合、塗装鋼板は、鋼板の表面に配置された下塗り塗膜と、下塗り塗膜の上に配置された、ワックス粒子を含む有機塗膜と、当該有機塗膜上に配置された無機塗膜と、を有する。シャッタースラットとして用いられた場合の耐久性の観点からは、本発明に係る塗装鋼板は、有機塗膜および無機塗膜だけでなく、下塗り塗膜も有することが好ましい。なお、本発明に係る塗装鋼板は、これらの例に限定されず、鋼板の表面、もしくは下塗り塗膜と有機塗膜との間にさらに別の塗膜(例えば中層塗膜)を有していてもよい。
また、本発明に係る塗装鋼板は、鋼板の裏面(第2の面)にも塗膜を有することが好ましい。この場合も、シャッタースラットとして用いられた場合の耐久性の観点から、塗装鋼板は、鋼板の裏面に配置された第2の有機塗膜と、第2の有機塗膜の上に配置された第2の無機塗膜とを有することが好ましい。またこの場合も、塗装鋼板は、鋼板の表面に配置された第2の下塗り塗膜を有していてもよい。
図1は、本発明の一実施の形態に係る塗装鋼板の構成を示す模式図である。この例では、塗装鋼板100が、鋼板110、鋼板110の表面(第1の面)の上に配置された下塗り塗膜120、有機塗膜130、および無機塗膜140、ならびに鋼板110の裏面(第2の面)の上に配置された第2の下塗り塗膜150、第2の有機塗膜160、および第2の無機塗膜170を有する。有機塗膜130および第2の有機塗膜160は、いずれもワックス粒子を含んでいる。また、無機塗膜140および第2の無機塗膜170は、いずれも組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物を含んでいる。
以下、本発明に係る塗装鋼板の各構成要素について説明する。
(塗装原板)
塗装原板となる鋼板の種類は、特に限定されない。塗装原板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)等が含まれる。耐食性や耐傷付き性、成形加工性等の観点からは、塗装原板は、溶融亜鉛めっき鋼板またはZn−Al−Mg合金めっき鋼板であることが好ましい。鋼板は、脱脂や酸洗等の公知の塗装前処理が施されていてもよい。鋼板の板厚は、特に限定されず、シャッターの種類等に応じて適宜設定される。例えば、鋼板の板厚は、0.3〜2mm程度である。
塗装原板となる鋼板の種類は、特に限定されない。塗装原板の例には、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ステンレス鋼板(オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、フェライト・マルテンサイト二相系を含む)等が含まれる。耐食性や耐傷付き性、成形加工性等の観点からは、塗装原板は、溶融亜鉛めっき鋼板またはZn−Al−Mg合金めっき鋼板であることが好ましい。鋼板は、脱脂や酸洗等の公知の塗装前処理が施されていてもよい。鋼板の板厚は、特に限定されず、シャッターの種類等に応じて適宜設定される。例えば、鋼板の板厚は、0.3〜2mm程度である。
鋼板には、塗装鋼板の耐食性および塗膜密着性(耐傷付き性)を向上させる観点から、化成処理が施されていることが好ましい。化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理等が含まれる。環境負荷低減の観点からは、クロムフリーの化成処理が好ましい。
化成処理は、公知の方法で実施可能である。例えば、化成処理液をロールコート法、スピンコート法、スプレー法等の方法で鋼板の表面に塗布し、水洗せずに乾燥させればよい。乾燥温度および乾燥時間は、化成処理液中の水分を蒸発させることができれば特に限定されない。生産性の観点からは、乾燥温度は、到達板温で60〜150℃の範囲内が好ましく、乾燥時間は、2〜10秒の範囲内が好ましい。化成処理皮膜の付着量は、耐食性および塗膜密着性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。例えば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/m2となるように付着量を調整すればよい。また、クロムフリーのTi−Mo複合皮膜の場合、10〜500mg/m2となるように付着量を調整すればよい。また、クロムフリーのフルオロアシッド系皮膜の場合、フッ素換算付着量で0.5〜500mg/m2および/または総金属元素換算付着量で0.1〜500mg/m2の範囲内となるように付着量を調整すればよい。また、クロムフリーのリン酸塩皮膜の場合、5〜500mg/m2となるように付着量を調整すればよい。
(下塗り塗膜)
下塗り塗膜および第2の下塗り塗膜(以下、まとめて「下塗り塗膜」とも称する)は、鋼板または化成処理皮膜の表面に配置される。下塗り塗膜は、塗装鋼板の耐食性や、有機塗膜および第2の有機塗膜(以下、まとめて「有機塗膜」とも称する)の鋼板に対する密着性等を向上させる。前述のとおり、下塗り塗膜は、任意に配置される塗膜であり、後述の有機塗膜のみで耐食性や耐傷付き性を十分に向上させることができる場合は配置されなくてもよい。
下塗り塗膜および第2の下塗り塗膜(以下、まとめて「下塗り塗膜」とも称する)は、鋼板または化成処理皮膜の表面に配置される。下塗り塗膜は、塗装鋼板の耐食性や、有機塗膜および第2の有機塗膜(以下、まとめて「有機塗膜」とも称する)の鋼板に対する密着性等を向上させる。前述のとおり、下塗り塗膜は、任意に配置される塗膜であり、後述の有機塗膜のみで耐食性や耐傷付き性を十分に向上させることができる場合は配置されなくてもよい。
下塗り塗膜を構成する樹脂(ベース樹脂)の種類は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリエステル、またはこれらの組み合わせが好ましい。エポキシ樹脂は、鋼板および有機塗膜との密着性が高い。したがって、塗装鋼板が、エポキシ樹脂を含む下塗り塗膜を有すると、塗装鋼板の成形加工による塗膜剥離が抑制される。一方で、エポキシ樹脂は比較的硬い樹脂である。そこで、塗装鋼板の加工部の塗膜割れを抑制する観点からは、ポリエステルを含む下塗り塗膜が好ましい。
下塗り塗膜は、耐食性を向上させる観点から、防錆顔料を含むことが好ましい。防錆顔料の種類は、特に限定されない。例えば、防錆顔料として、クロム酸ストロンチウムやクロム酸亜鉛等のクロメート系防錆顔料が使用できる。クロメート系防錆顔料は、非クロメート系防錆顔料やポリリン酸塩等との併用も可能であるが、下塗り塗膜の樹脂成分100質量部に対するこれらの合計量は、5〜150質量部の範囲であることが好ましい。また、下塗り塗膜は、特許第3389191号公報に記載されている、多孔質シリカ粒子にカルシウムイオンをイオン交換により結合させた腐食抑制剤(A)を防錆顔料として含んでいてもよい。この場合、腐食抑制剤(A)からのカルシウムイオンの溶出を抑制する観点から、下塗り塗膜は、ポリリン酸塩(B)も含むことが好ましい。腐食抑制剤(A)とポリリン酸塩(B)との比率は、重量比でA:B=60:40〜5:95の範囲内であることが好ましい。また、下塗り塗膜の樹脂成分100質量部に対する腐食抑制剤(A)およびポリリン酸塩(B)の合計量は、5〜150質量部の範囲内であることが好ましい。
下塗り塗膜は、耐傷付き性を向上させる観点から、骨材を含むことが好ましい。下塗り塗膜中に骨材を添加して下塗り塗膜の表面粗度を大きくすることで、下塗り塗膜上に配置される膜(例えば、有機塗膜)との接触面積が増大し、これらの界面における付着強度が向上する。これにより、塗装鋼板の耐傷付き性を向上させることができる。骨材の種類は、特に限定されない。骨材の例には、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド等の樹脂からなる粒子;シリカ、ガラス、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、アルミナ・シリカ等の無機化合物からなる粒子が含まれる。
骨材の粒径は、特に限定されないが、以下の式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。以下の式(1)および式(2)において、d10は、個数基準の累積粒度分布における骨材の10%粒子径(μm)である。d90は、個数基準の累積粒度分布における骨材の90%粒子径(μm)である。Tは、下塗り塗膜において、骨材が存在しない部分の厚み(μm)である。以下の式(1)を満たさない場合、下塗り塗膜の表面粗度が小さくなり、耐傷付き性を効果的に向上させることができない場合がある。一方、以下の式(2)を満たさない場合、下塗り塗膜から骨材が脱離しやすくなり、耐傷付き性が低下する場合がある。
d10≧0.6T …(1)
d90<2.0T …(2)
d10≧0.6T …(1)
d90<2.0T …(2)
なお、骨材の粒径は、例えばコールターカウンター法によって測定されるが、他の測定方法により測定された粒径であってもよい。この場合も、上記式(1)および式(2)を満たしていれば、塗装鋼板の耐傷付き性を効果的に向上させることができる。例えば、下塗り塗膜中の骨材の粒径は、以下の手順で測定可能である。まず、塗装鋼板を切断し、切断面を研摩する。次いで、切断面を電子顕微鏡で観察して、下塗り塗膜の断面像を得る。次いで、その断面像の視野に存在する全ての骨材について長辺長さおよび短辺長さを測定し、個々の平均粒子サイズを算出する。次いで、粒子サイズが小さいものから粒子数をカウントしていき、全粒子数の10%になったところの粒径をd10、90%になったところの粒径をd90として算出する。
骨材の配合量は、特に限定されないが、下塗り塗膜の固形分に対して1体積%以上かつ10体積%未満であることが好ましい。合計配合量が1体積%未満の場合、耐傷付き性を効果的に向上させることができないおそれがある。合計配合量が10体積%以上の場合、防錆顔料の溶出が過剰に阻害され、耐食性が低下してしまうおそれがある。
下塗り塗膜の厚みは、特に限定されないが、1〜10μmの範囲内が好ましい。厚みが1μm未満の場合、耐食性を十分に向上させることができないおそれがある。一方、厚みが10μm超の場合、塗料の乾燥時にワキが発生しやすくなり、塗装鋼板の外観が劣化したり(塗料乾燥時のワキの発生等)、塗装鋼板の加工性が低下したりするおそれがある。また、下塗り塗膜の厚みを10μm超としても、コストに対する効果が小さい。
下塗り塗膜は、公知の方法で形成可能である。例えば、ベース樹脂、防錆顔料および骨材を含む下塗り塗料を塗装原板(鋼板)の表面に塗布し、到達板温150〜280℃で10〜60秒間焼き付ける方法とすることができる。なお、焼き付け温度が150℃未満の場合、十分に塗料を焼き付けることができず、下塗り塗膜の機能を十分に発揮させることができないおそれがある。一方、焼き付け温度が280℃超の場合、過度の焼き付けにより、下塗り塗膜と有機塗膜との間の密着性が低下してしまうおそれがある。下塗り塗料の塗布方法は、特に限定されず、プレコート鋼板の製造に使用されている方法から適宜選択すればよい。そのような塗布方法の例には、ロールコート法、フローコート法、カーテンフロー法、スプレー法等が含まれる。
(有機塗膜)
有機塗膜は、鋼板、化成処理皮膜または下塗り塗膜の上に配置された塗膜である。本発明に係る塗装鋼板では、図1に示すように、有機塗膜130および第2の有機塗膜160の一部が塗装鋼板100の表面に露出している。
有機塗膜は、鋼板、化成処理皮膜または下塗り塗膜の上に配置された塗膜である。本発明に係る塗装鋼板では、図1に示すように、有機塗膜130および第2の有機塗膜160の一部が塗装鋼板100の表面に露出している。
前述の通り、本発明に係る塗装鋼板では、鋼板の表面側に少なくともワックス粒子を含む有機塗膜が配置されればよく、鋼板の裏面側には、ワックス粒子を含まない塗膜等が配置されてもよい。ただし、塗装鋼板の意匠性や耐傷付き性、耐食性等を向上させる観点からは、裏面側にもワックス粒子を含む有機塗膜(第2の有機塗膜)が配置されることが好ましい。
本発明に係る塗装鋼板では、有機塗膜のベース樹脂は特に制限されないが、シャッタースラットとして用いられた場合の耐久性の観点からは、有機塗膜を構成する樹脂(ベース樹脂)は、耐候性を有することが好ましい。当該観点から、有機塗膜を構成する樹脂(ベース樹脂)は、ポリエステル−メラミン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
ポリエステル−メラミン樹脂は、ポリエステルおよびメラミン化合物(硬化剤)を含む熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることで得られる樹脂である。ポリエステルおよびメラミン化合物を含む樹脂組成物(塗料)は、100℃前後の温度で硬化を開始する。また、メラミン化合物による架橋反応は自己縮合反応を含むため、ポリエステルおよびメラミン化合物は連鎖的に硬化する。このため、ポリエステルおよびメラミン化合物を含む樹脂組成物は、低温かつ短時間で焼き付けることが可能である。
ここで、ポリエステルとしては、例えば、水酸基含有ポリエステルを使用することが可能である。水酸基含有ポリエステルの例には、オイルフリーポリエステル、(油変性)アルキド樹脂およびこれらの樹脂の変性物が含まれる。オイルフリーポリエステルは、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなる樹脂である。多塩基酸成分の例には、無水フタル酸やイソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸等の二塩基酸、およびこれらの酸の低級アルキルエステル化物が含まれる。アルキド樹脂は、前述のオイルフリーポリエステルの多塩基酸成分および多価アルコール成分に加えて、油脂肪酸も既知の方法で反応させた樹脂である。油脂肪酸の例には、ヤシ油脂肪酸や大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸等が含まれる。また、メラミン化合物の例には、イミノ基型、メチロールイミノ基型、メチロール基型または完全アルキル基型のメラミン化合物が含まれる。
上塗り塗膜を構成するアクリル−メラミン樹脂は、アクリルポリマーおよびメラミン化合物(硬化剤)を含む熱硬化型アクリル樹脂組成物を熱硬化させることで得られる樹脂である。アクリルポリマーおよびメラミン化合物を含む樹脂組成物(塗料)は、100℃前後の温度で硬化を開始する。また、メラミン化合物による架橋反応は自己縮合反応を含むため、アクリルポリマーおよびメラミン化合物は連鎖的に硬化する。このため、アクリルポリマーおよびメラミン化合物を含む樹脂組成物は、低温かつ短時間で焼き付けることが可能である。
アクリルポリマーを構成するモノマーの例には、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(ME)、アクリル酸ブチル(MB)、メタクリル酸ブチル(BMA)等が含まれる。また、メラミン化合物の例には、イミノ基型、メチロールイミノ基型、メチロール基型または完全アルキル基型のメラミン化合物が含まれる。
また、ポリエステル−ウレタン樹脂またはアクリル−ウレタン樹脂は、上記のポリエステルまたはアクリルポリマーとメラミン化合物とを含む樹脂組成物の硬化剤を、メラミン化合物からブロックイソシアネート化合物に変更した樹脂である。なお、ブロックイソシアネート化合物を含む樹脂組成物(塗料)は、ブロック剤の解離温度以上(140〜180℃)に加熱されてから硬化を開始する。したがって、低温かつ短時間で焼き付ける場合には、メラミン化合物を含む樹脂組成物とすることが好ましい。
一方、有機塗膜に含まれるワックス粒子は、塗装鋼板の耐傷付き性等を高めることが可能なワックス粒子であれば特に制限されず、例えば、ポリエチレン粒子であってもよく、ポリエチレン粒子にフッ素樹脂粒子が結合しているワックス粒子(以下「フッ素樹脂/ポリエチレン粒子」ともいう)であってもよい。ただし、耐候性の観点からは、ポリエチレン粒子より、フッ素樹脂/ポリエチレン粒子のほうがより好ましい。
塗装鋼板の表面にワックス粒子の一部が露出し、耐傷付き性等が高まる限りにおいて、有機塗膜の表面(無機塗膜)側にワックス粒子が濃化していてもよく、有機塗膜全体にワックス粒子均一に分散していてもよい。有機塗膜内でのワックス粒子の分散度合いは、ワックス粒子の比重等によって調整することが可能である。
例えば、比較的比重の小さいポリエチレン粒子(比重:約1.0)をベース樹脂(比重:約1.4〜1.8)中に含めると、有機塗膜の形成の際に、ワックス粒子が、有機塗膜の表面(無機塗膜)側に移動しやすくなり、有機塗膜表面側におけるワックス粒子の濃度が高まりやすくなる。一方、比較的比重の大きいフッ素樹脂/ポリエチレン粒子(比重:約1.2)をベース樹脂(比重:約1.4〜1.8)に含めると、この結合体粒子は、ベース樹脂よりも比重が少し軽いため、有機塗膜形成の際にゆっくりと有機塗膜の表面側に移動する。したがって、この場合、ワックス粒子を有機塗膜の全体にある程度均一に分散させることができる。なお、ベース樹脂より比重の大きなワックス粒子を用いると、有機塗膜の形成時、有機塗膜の表面側にワックス粒子が移動し難く、塗装鋼板の耐傷付き性が得られ難くなることがある。したがって、ワックス粒子の比重は、ベース樹脂の比重以下であることが好ましい。
上記ポリエチレン粒子の例には、高密度ポリエチレンや低密度ポリエチレン、変性ポリエチレン、酸化ポリエチレン等の粒子が含まれる。
また、ポリエチレン粒子にフッ素樹脂が結合している場合、その粒子の構成は、特に限定されない。例えば、1つのポリエチレン主粒子の表面に多数の微細なフッ素樹脂粒子が結合することで、フッ素樹脂/ポリエチレン粒子が形成されていてもよい。また、複数のポリエチレン粒子と複数のフッ素樹脂粒子がランダムに結合することで、フッ素樹脂/ポリエチレン粒子が形成されていてもよい。
フッ素樹脂/ポリエチレン粒子に含まれるポリエチレン粒子を構成するポリエチレンの種類は、上記ポリエチレン粒子と同様とすることができる。またその平均粒子径は特に限定されず、例えば3〜10μmとすることができる。一方、フッ素樹脂/ポリエチレン粒子に含まれるフッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の種類は、特に限定されないがポリテトラフルオロエチレンが好ましい。またその平均粒子径は特に限定されず、例えば3〜10μmとすることができる。
ポリエチレン粒子にフッ素樹脂粒子が結合しているワックス粒子としては、例えばCERAFLOUR996やCERAFLOUR998(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、FluoroSLIP231(Shamrock Technologies社製)等が挙げられる。
ワックス粒子の平均粒子径d50は特に限定されず、有機塗膜の厚み等に応じて適宜設定される。ここで、ワックス粒子の平均粒子径d50とは、個数基準の累積粒度分布におけるワックス粒子の50%粒子径(μm)である。耐傷付き性を適切に向上させる観点からは、ワックス粒子の平均粒子径d50は、1〜8μmの範囲内であることが好ましい。ワックス粒子の平均粒子径d50が1μm未満の場合、ワックス粒子が摩擦により消耗しやすいため、塗装鋼板の耐傷付き性を向上させにくい。一方、ワックス粒子の平均粒子径が8μm超の場合、無機塗膜の隙間から塗装鋼板表面に露出し難く、耐傷付き性および耐食性が十分に得られ難いことがある。
ワックス粒子の粒径は、例えばレーザ回折・散乱法によって測定される。ただし、他の測定方法により測定された粒径であっても、上記範囲であれば、塗装鋼板の耐傷付き性を効果的に向上させることができる。ワックス粒子の粒径は、例えば、エタノール等の有機溶剤に分散させて、粒度分布測定装置SALD−7100(島津製作所社製)を用いて回分セル方式で測定することが可能である。また、有機塗膜中のワックス粒子の粒径は、以下の手順で測定可能である。まず、塗装鋼板を切断し、切断面を研摩する。次いで、切断面を電子顕微鏡で観察して、有機塗膜の断面像を得る。次いで、その断面像の視野に存在する全てのワックス粒子について長辺長さおよび短辺長さを測定し、個々の平均粒子サイズを算出する。次いで、粒子サイズが小さいものから粒子数をカウントしていき、全粒子数の50%になったところの粒径を平均粒子径d50として算出する。
有機塗膜中のワックス粒子の含有量は、特に限定されず、有機塗膜の厚み等に応じて適宜設定される。塗装鋼板の耐傷付き性を適切に向上させる観点からは、有機塗膜中のワックス粒子の含有量は、0.2〜5.0質量%の範囲内であることが好ましい。ワックス粒子の含有量が0.2質量%未満の場合、耐傷付き性を十分に付与することができないおそれがある。一方、ワックス粒子の含有量が5.0質量%超の場合、相対的にベース樹脂量が少なくなり、腐食が生じやすくなることがある。また、ワックス粒子の含有量を5.0質量%超としても、コストに対する効果が得られ難い。
有機塗膜は、上記以外のワックス粒子をさらに含んでいてもよい。上記以外のワックス粒子の例には、フッ素樹脂粒子が含まれる。フッ素樹脂粒子は、耐侯性に優れるとともに、有機塗膜の内部にも分散しやすいため、長期的に効果を発揮する。
ここで、有機塗膜は、透明であってもよいが、任意の着色顔料によって着色されていてもよい。着色顔料の例には、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック、鉄黒、チタンイエロー、ベンガラ、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、群青、コバルトグリーン、モリブデン赤等の無機顔料;CoAl、CoCrAl、CoCrZnMgAl、CoNiZnTi、CoCrZnTi、NiSbTi、CrSbTi、FeCrZnNi、MnSbTi、FeCr、FeCrNi、FeNi、FeCrNiMn、CoCr、Mn、Co、SnZnTi等の金属成分を含む複合酸化物焼成顔料;Al、樹脂コーティングAl、Ni等のメタリック顔料;および、リソールレッドB、ブリリアントスカーレットG、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、レーキレッドD、パーマネントレッド4R、ボルドー10B、ファストイエローG、ファストイエロー10G、パラレッド、ウォッチングレッド、ベンジジンイエロー、ベンジジンオレンジ、ボンマルーンL、ボンマルーンM、ブリリアントファストスカーレット、バーミリオンレッド、フタロシアニンブロー、フタロシアニングリーン、ファストスカイブルー、アニリンブラック等の有機顔料;が含まれる。また、有機塗膜には、体質顔料等の他の顔料が含まれていてもよい。体質顔料の例には、硫酸バリウム、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等が含まれる。
有機塗膜の厚みは、特に限定されないが、ワックス粒子の平均粒子径の2〜10倍の範囲内であることが好ましい。有機塗膜の厚みがワックス粒子の平均粒子径の2倍未満の場合、ワックス粒子が脱落したときに有機塗膜による遮蔽性が顕著に低下して、耐食性が低下してしまうことがある。一方、有機塗膜の厚みがワックス粒子の平均粒子径の10倍超の場合、有機塗膜の厚みやコストに対する効果が小さくなりやすい。有機塗膜の厚みは、例えば5〜30μm程度とすることができる。なお、鋼板の表面に配置された有機塗膜の厚みおよび鋼板の裏面に配置された有機塗膜(第2の有機塗膜)の厚みは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、鋼板の表面に配置された有機塗膜の厚みを、鋼板の裏面に配置された第2の有機塗膜の厚みより厚くしてもよい。
有機塗膜は、公知の方法で形成することができる。例えば、ベース樹脂およびワックス粒子を含む有機塗膜形成用組成物を塗装原板(鋼板)または下塗り塗膜の上に塗布し、到達板温200〜280℃で20〜80秒間焼き付ける方法とすることができる。なお、焼き付け温度が200℃未満の場合、有機塗膜の焼き付けに時間がかかりやすい。一方、焼き付け温度が280℃超の場合、過度の焼き付けによる樹脂の酸化劣化により、塗装鋼板において成形加工性や耐候性、耐食性等の特性が十分に発揮されないおそれがある。有機塗膜形成用組成物の塗布方法は、特に限定されず、プレコート鋼板の製造に使用されている方法から適宜選択すればよい。そのような塗布方法の例には、ロールコート法、フローコート法、カーテンフロー法、スプレー法等が含まれる。
(無機塗膜)
無機塗膜は、上述の有機塗膜上に配置された塗膜である。本発明に係る塗装鋼板では、図1に示されるように、無機塗膜140および第2の無機塗膜170が、塗装鋼板100の最表層に位置している。
無機塗膜は、上述の有機塗膜上に配置された塗膜である。本発明に係る塗装鋼板では、図1に示されるように、無機塗膜140および第2の無機塗膜170が、塗装鋼板100の最表層に位置している。
前述の通り、本発明に係る塗装鋼板では、鋼板の表面側に特定の無機塗膜が配置されればよく、鋼板の裏面側には無機塗膜が配置されなくてもよいが、塗装鋼板の防汚性を高める観点からは、裏面側にも無機塗膜(第2の無機塗膜)が配置されることが好ましい。
ここで、無機塗膜は、実質的に組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物からなる塗膜であり、ケイ酸カリウム(K2O・nSiO2(2≦n≦4)とコロイダルシリカ(SiO2)とを含む無機塗膜形成用組成物を塗布乾燥して得られる膜とすることができる。なお、上記組成式K2O・xSiO2は、塗膜中での元素の状態を示すものではなく、構成元素の比を示すものである。塗膜中では通常、SiO2がシロキサン結合を形成している。一方、カリウムは、カリウムイオンとなり、シロキサン結合していないシリケートイオンと電気的に引き合って存在している。上記組成物からなる無機塗膜は高い親水性を示すが、当該親水性は、無機塗膜表面に微溶出するカリウムイオンの高い水和性、およびシラノール基の親水性によって発現すると考えられる。
上記組成式中のxで表される、酸化カリウム(K2O)に対する酸化ケイ素(SiO2)の割合は、3.5以上6.8未満であればよいが、3.8以上5.2以下であることがより好ましい。xで表される値が3.5未満であると、カリウムイオンが塗膜表面に過剰に溶出する。そして、溶出したカリウムイオンが大気中の二酸化炭素と反応として炭酸塩となり析出する白華現象が生じやすくなる。また、xで表される値が3.5未満であると、無機塗膜が十分に形成され難くなり、無機塗膜被覆率が所望の範囲にならないことがある。一方、xで表される値が6.8以上であると、無機塗膜形成時に、コロイダルシリカを多量に混合する必要がある。その結果、造膜性が低下し、この場合も無機塗膜被覆率が所望の範囲にならなかったり、無機塗膜が膜として十分な強度を有さないことがある。なお、無機塗膜の組成は、無機塗膜形成用組成物が含むケイ酸カリウムとコロイダルシリカとの比等によって調整することができる。また無機塗膜の組成は、EDS、XRF、EPMA等で確認することができ、XPS、IR等によりSiの化学結合状態を確認することができる。
ここで、無機塗膜を有する任意の10箇所の、1mm2当たりの無機塗膜被覆率の平均値(以下、「平均無機塗膜被覆率」とも称する)は26〜90%であり、好ましくは3〜90%であり、より好ましくは40〜70%である。平均無機塗膜被覆率が高すぎると、有機塗膜中のワックス粒子が塗装鋼板表面に露出し難くなるが、90%以下であれば、有機塗膜中のワックス粒子が露出しやすく、塗装鋼板の耐傷付き性が良好になりやすい。また、平均無機塗膜被覆率が低すぎると、無機塗膜由来の耐汚染性が十分に発現しないが、26%以上であれば、塗装鋼板の耐汚染性が良好になりやすい。なお、無機塗膜被覆率を特定する領域(1mm2)の形状は特に制限されず、例えば正方形や長方形等の矩形状、円形状等、いずれの形状であってもよいが、通常矩形状とする。また、平均無機塗膜被覆率は、以下の方法で特定される。
SEM(走査型電子顕微鏡)/EDS(エネルギー分散型X線分光法)にて、無機塗膜が形成されている領域のうち、任意の10箇所(1mm2の領域)について、Si元素分布を測定する。続いて、得られたSiの分布画像を画像処理ソフトで2値化する。2値化に際しては、無機塗膜非形成部(有機塗膜表面)のSi検出値を基準とし、僅かでもSiが増加している領域を無機塗膜が存在する領域として処理する。そして、得られる2値化画像から、Siが増加している領域(無機塗膜が存在する領域)の画素数を、全画素数で除し、無機塗膜被覆率を算出する。そして、これらの無機塗膜被覆率の平均値を、平均塗無機膜被覆率とする。
ここで、無機塗膜は島状に形成された複数の膜からなることが好ましい。島状に形成された膜とは、不連続に形成された膜であって、他の膜と分離している膜をいう。上述の平均無機塗膜被覆率が50%以下である場合に、島状に膜が形成されやすい。また通常、各膜の外周長さは、1600μm以下となることが多い。なお、各膜の形状や、膜どうしの間隔は特に制限されない。複数の膜は均一な形状に形成されていてもよく、不均一な形状に形成されていてもよい。また、これらは均一な間隔で形成されていてもよく、不均一な間隔で形成されていてもよい。ただし、複数の膜(無機塗膜)は、有機塗膜上に略均一な密度で形成されていることが好ましい。膜の形成密度に偏りがあると、十分な耐汚染性が得られなくなることがある。また、個々の膜の面積が過度に大きいと、個々の膜の形状が視認されやすくなる。そこで、無機塗膜が島状に形成された複数の膜からなる場合、各膜の平均最大幅は、500μm以下であることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。各膜の最大幅は、上述の2値化画像から求められ、任意の10個の膜の最大幅の平均を、平均最大幅とする。
また、無機塗膜の平均厚みは、0.05〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.6μmであることがより好ましい。無機塗膜の平均厚みが0.05μm以上であると、塗装鋼板において耐汚染性が十分に得られやすい。一方で、無機塗膜の平均厚みが1μm超であると、無機塗料の平坦化(レベリング)により、平均無機塗膜被覆率が増大し、有機塗膜を一部露出させた無機塗膜を形成することが困難となる。また、無機塗膜の可視光透過性が低くなり、塗装鋼板の質感を損なうことがある。無機塗膜の平均厚みは、塗装鋼板を任意に切り出し、断面から観察することにより測定される。具体的には、塗装鋼板から切り出した試験片を樹脂で包埋後に研磨等で適当な断面を作製し、さらにイオンミリング加工等で高精度の観察断面を作製する。そして、無機塗膜が存在する任意の10箇所について、SEMやTEMで観察し、10箇所の厚みの平均を、平均厚みとする。
ここで、上記無機塗膜は、有機塗膜表面にコロナ放電処理および/またはフレーム処理を行った後、当該有機塗膜上にケイ酸カリウムおよびコロイダルシリカを含む無機塗膜形成用組成物を所定の方法で塗布し、乾燥させることで得られる。
上述の有機塗膜表面を、コロナ放電処理もしくはフレーム処理することで、有機塗膜表面に水酸基等を導入することができる。その結果、有機塗膜に対する無機塗膜形成用組成物の濡れ性が高まり、さらには形成後の無機塗膜の密着性が高まりやすくなる。有機塗膜表面を均一に親水化したり、無機塗膜の密着性が高まりやすいとの観点から、フレーム処理が特に好ましい。
有機塗膜表面をコロナ放電処理する方法としては、公知の方法とすることができる。例えば、絶縁された電極と、接地された対極誘電体ロールとの間に、通常5〜30KV、1〜600KHzの高周波、高電圧を印加し、コロナ放電を生じさせる。そして、当該コロナ放電を生じさせた領域に、上述の有機塗膜が形成された鋼板(本願明細書では「基材」とも称する)を導入することで、有機塗膜をコロナ放電処理することができる。コロナ放電処理装置としては、スパークギャップ方式、真空管方式、ソリッドステート方式等があり、いずれも適用することができる。
有機塗膜をコロナ放電処理する際の条件は、200W・分/m2以上とすることが好ましく、200〜800W・分/m2とすることがより好ましい。200W・分/m2未満であると、十分に有機塗膜表面の濡れ性を高めたりすることが難しいことがある。一方、処理量が800W・分/m2を越えると、コストに対する効果が見込まれ難くなる。
一方、有機塗膜表面をフレーム処理する方法としては、有機塗膜を形成した鋼板(基材)をベルトコンベア等の搬送機に載置し、一定方向に移動させながら、フレーム処理用バーナーで有機塗膜に火炎を放射する方法等とすることができる。
ここで、フレーム処理量は、30〜1000kJ/m2であることが好ましく、100〜600kJ/m2であることがより好ましい。なお、本明細書における「フレーム処理量」とは、LPガス等の燃焼ガスの供給量を基準として計算される基材の単位面積当たりの熱量である。当該フレーム処理量は、フレーム処理用バーナーのバーナーヘッドと有機塗膜との距離、基材の搬送速度等によって調整できる。フレーム処理量が30kJ/m2未満では、処理にムラが生じることがあり、有機塗膜表面を一様に親水化することが難しい。一方、フレーム処理量が1000kJ/m2を超えると、有機塗膜が酸化して黄変することがある。
なお、上記フレーム処理前に、有機塗膜表面を40℃以上に加熱する予熱処理を行ってもよい。熱伝導率が高い鋼板(例えば、熱伝導率が10W/mK以上の鋼板)表面に形成された有機塗膜に、火炎を照射すると、燃焼性ガスの燃焼によって生じた水蒸気が冷やされて水となり、一時的に有機塗膜の表面に溜まる。そして、当該水がフレーム処理時のエネルギーを吸収して水蒸気となることで、フレーム処理が阻害されることがある。これに対し、有機塗膜表面(基材)を予め加熱しておくことで、火炎照射時の水の発生を抑えることができる。
コロナ放電処理および/またはフレーム処理後の有機塗膜表面に塗布する無機形成用組成物は、ケイ酸カリウムおよびコロイダルシリカを含んでいればよいが、必要に応じて溶剤、レベリング剤、消泡剤等をさらに含んでいてもよい。
ケイ酸カリウムおよびコロイダルシリカは、一般試薬であってもよく、工業用薬品であってもよい。ケイ酸カリウムの市販品の例には、日本化学工業社製の「Aケイ酸カリ」や「2Kケイ酸カリ」、富士化学社製の「2号ケイ酸カリ」、日産化学社製の「スノーテックスK2」等が含まれる。一方、コロイダルシリカの市販品の例には、ADEKA社製の「アデライトAT」や、日産化学工業社の「スノーテックス」、日本化学工業社の「シリカドール」が含まれる。
また、無機塗膜形成用組成物の固形分濃度は、無機塗膜の形成方法に応じて適宜選択される。ただし、平均無機塗膜被覆率を上述の範囲にし、さらに厚みを制御するとの観点から、固形分濃度は比較的低い範囲であることが好ましく、1〜10質量%であることが好ましい。
無機塗膜形成用組成物の塗布方法は、平均無機塗膜被覆率が上述の範囲となるように無機塗膜を形成可能な方法であれば特に制限されない。例えば、スプレーガン、静電霧化装置、インクジェット装置、グラビアロール転写装置等により上記無機塗膜形成用組成物を塗布する方法とすることができる。これらの中でも、無機塗膜形成用組成物を塗布する際に、塗布のための治具が有機塗膜と接触しない方法(例えば、スプレーガンや静電霧化装置等)であることが好ましい。なお、スプレーガンや静電霧化装置によって塗膜を形成する場合、平均無機塗膜被覆率の調整のため、スプレーガンや静電霧化装置の吐出ノズル径を小さくしたり、霧化圧力を調整する等の工夫をすることが好ましい。
また、無機塗膜形成用組成物の乾燥方法は、無機塗膜形成用組成物が含む溶剤を十分に揮発させることが可能であれば、その方法は特に制限されない。例えば、常温で乾燥させてもよいが、80〜300℃に加熱してもよい。加熱により、溶媒の乾燥が促進され、造膜が促進される。さらに、200℃以上に加熱することにより、シロキサン結合の形成が促進され、短時間で強固な無機塗膜を得ることができる。ただし、加熱する場合は有機塗膜等の酸化による変色(テンパーカラー)に注意する。乾燥時間は通常、加熱する場合は10〜30分程度であり、常温乾燥の場合でも24時間あれば十分である。
(効果)
本発明に係る塗装鋼板は、ワックス粒子を含む有機塗膜上に不連続な無機塗膜が配置されている。当該塗装鋼板では、有機塗膜の一部が塗装鋼板の表面に露出しているため、有機塗膜中のワックス粒子が塗装鋼板表面に露出しやすく、当該ワックス粒子によって塗装鋼板の耐傷付き性を高めることができる。
本発明に係る塗装鋼板は、ワックス粒子を含む有機塗膜上に不連続な無機塗膜が配置されている。当該塗装鋼板では、有機塗膜の一部が塗装鋼板の表面に露出しているため、有機塗膜中のワックス粒子が塗装鋼板表面に露出しやすく、当該ワックス粒子によって塗装鋼板の耐傷付き性を高めることができる。
一方で、有機塗膜表面に形成された無機塗膜によって、塗装鋼板の耐汚染性を良好にすることができる。有機塗膜を覆う無機塗膜が不連続であっても、耐汚染性が発現する機構は以下のように考えられる。上記組成物からなる無機塗膜では、表面にカリウムが微溶出する。そして、カリウムイオンが、大気中の水分と水和し、大気中の水分を引き寄せる。その結果、無機塗膜の形成領域だけでなく、無機塗膜どうしの間の領域、すなわち有機塗膜が露出した領域も、薄い水膜で覆われる。したがって、塗装鋼板表面に油汚れ等が付着したとしても、汚れが水膜上に浮いた状態となり、拭き取り等によって容易に汚れを除去することが可能となる。
また一般に、塗装鋼板表面に汚れが付着してから時間が経過すると、汚れの一部が有機塗膜等に含浸し、汚れの除去が困難となることがある。これに対し、本発明の塗装鋼板では、塗装鋼板表面に十分な厚みの水膜が存在するため、汚れが有機塗膜等に浸透し難い。さらに、無機塗膜表面の親水性が高いことから、塗装鋼板に汚れが付着したとしても、塗装鋼板表面(無機塗膜等)と汚れとの間に水が浸透しやすい。したがって、塗装鋼板表面に付着した汚れを水拭き等によって容易に除去することが可能となる。
このように、本発明に係る塗装鋼板は、耐傷付き性に優れており、さらに耐汚染性も有する。したがって、本発明に係る塗装鋼板は、例えばシャッタースラット等への適用に好適である。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
1.塗装鋼板の作製
1−1.基材の準備
塗装原板として、板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板(基材:SPCC、両面めっき付着量:90g/m2)を準備した。塗装原板の表面を酸洗(4%塩酸)および水洗した後、酸系の表面調整処理液(NPC700;日本ペイント株式会社)を塗布し、さらに湯洗し、乾燥させた。表面調整した塗装原板の表面にクロメート処理液(NRC300;日本パーカライジング株式会社)をCr換算付着量が40mg/m2となるようにバーコーターで塗布し、100℃で15秒間加熱して、化成処理皮膜を形成した。
1−1.基材の準備
塗装原板として、板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板(基材:SPCC、両面めっき付着量:90g/m2)を準備した。塗装原板の表面を酸洗(4%塩酸)および水洗した後、酸系の表面調整処理液(NPC700;日本ペイント株式会社)を塗布し、さらに湯洗し、乾燥させた。表面調整した塗装原板の表面にクロメート処理液(NRC300;日本パーカライジング株式会社)をCr換算付着量が40mg/m2となるようにバーコーターで塗布し、100℃で15秒間加熱して、化成処理皮膜を形成した。
化成処理した塗装原板の第1の面(表面)に、エポキシ樹脂系の下塗り塗料(ファインタフC;日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社)をバーコーターで塗布し、到達板温210℃で50秒間焼き付けて、厚み5μmの下塗り塗膜を形成した。下塗り塗料は、防錆顔料としてクロム酸ストロンチウムを、骨材としてシリカ粒子を含んでいる。
次いで、下塗り塗膜の表面に、表1および表2に示すベース樹脂およびワックス粒子を含む有機塗膜形成用組成物をバーコータで塗布した。その後、到達温度220℃で60秒間焼き付けて有機塗膜を形成した。
また、塗装原板の第2の面(裏面)に、第1の面に塗布したものと同一の下塗り塗料をバーコーターで塗布し、到達板温210℃で50秒間焼き付けて、膜厚5μmの下塗り塗膜(第2の下塗り塗膜)を形成した。次いで、下塗り塗膜の表面に、第1の面に塗布したものと同一の有機塗膜形成用組成物をバーコーターで塗布し、第1の面と同一の条件で焼き付けて、厚み7μmの第2の有機塗膜を形成した。各塗装鋼板において、第1の面に形成された有機塗膜の組成と、第2の面に形成された有機塗膜の組成とは、実質的に同一である。
なお、ポリエステル/メラミン樹脂としては、NYV;日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製を用いた。また、アクリル樹脂としては、SP−E41;日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製を用いた。さらに、ポリエステル/ウレタン樹脂としては、KP1101;関西ペイント社製を用いた。
また、ワックス粒子「PTFE/PE」は、ポリエチレン粒子にポリテトラフルオロエチレン粒子が結合している平均粒子径d50が5μmのワックス粒子(CERAFLOUR 998;ビックケミー・ジャパン社製)とした。ワックス粒子の平均粒子径d50は、空気分級機(エアロファインクラシファイア AC−20;日清エンジニアリング社製)を用いて調整した。また、ワックス粒子の平均粒子径d50は、粒度分布測定装置SALD−7100(島津製作所社製)を用いてレーザ回折・散乱法によって個数基準の累積粒度分布から求めた。
1−2.フレーム処理およびフレーム処理またはコロナ放電処理
上述の有機塗膜に対して、表1または表2に示すように、以下のフレーム処理またはコロナ放電処理を行った。なお、フレーム処理およびコロナ放電処理は、有機塗膜および第2の有機塗膜の両方に同様の条件で行った。また、表1または表2におけるNo.1、14、18、22、23、27、および28については、フレーム処理およびコロナ放電処理のいずれも行わなかった。
上述の有機塗膜に対して、表1または表2に示すように、以下のフレーム処理またはコロナ放電処理を行った。なお、フレーム処理およびコロナ放電処理は、有機塗膜および第2の有機塗膜の両方に同様の条件で行った。また、表1または表2におけるNo.1、14、18、22、23、27、および28については、フレーム処理およびコロナ放電処理のいずれも行わなかった。
(1)フレーム処理
フレーム処理には、Flynn Burner社(米国)製のF−3000のバーナーを使用した。また、燃焼性ガスには、LPガス(燃焼ガス)と、クリーンドライエアーとを、ガスミキサーで混合した混合ガス(LPガス:クリーンドライエアー(体積比)=1:25)を使用した。また、各ガスの流量は、バーナーの炎口の1cm2に対してLPガス(燃焼ガス)が1.67L/分、クリーンドライエアーが41.7L/分となるように調整した。なお、有機塗膜の搬送方向のバーナーヘッドの炎口の長さは4mmとした。一方、バーナーヘッドの炎口の搬送方向と垂直方向の長さは、450mmとした。さらに、バーナーヘッドの炎口と有機塗膜表面との距離は50mmとした。さらに、有機塗膜が形成された鋼板(基材)の搬送速度を30m/分とすることで、フレーム処理量を212kJ/m2に調整した。
フレーム処理には、Flynn Burner社(米国)製のF−3000のバーナーを使用した。また、燃焼性ガスには、LPガス(燃焼ガス)と、クリーンドライエアーとを、ガスミキサーで混合した混合ガス(LPガス:クリーンドライエアー(体積比)=1:25)を使用した。また、各ガスの流量は、バーナーの炎口の1cm2に対してLPガス(燃焼ガス)が1.67L/分、クリーンドライエアーが41.7L/分となるように調整した。なお、有機塗膜の搬送方向のバーナーヘッドの炎口の長さは4mmとした。一方、バーナーヘッドの炎口の搬送方向と垂直方向の長さは、450mmとした。さらに、バーナーヘッドの炎口と有機塗膜表面との距離は50mmとした。さらに、有機塗膜が形成された鋼板(基材)の搬送速度を30m/分とすることで、フレーム処理量を212kJ/m2に調整した。
(2)コロナ放電処理
コロナ放電処理には、春日電機社製の下記の仕様のコロナ放電処理装置を使用した。
(仕様)
・電極セラミック電極
・電極長さ 430mm
・出力 310W
また、有機塗膜のコロナ放電処理回数は、いずれも1回とした。コロナ放電処理量は、処理速度によって調整した。具体的には、3.8m/分で処理することにより、コロナ放電処理量200W・分/m2とした。
コロナ放電処理には、春日電機社製の下記の仕様のコロナ放電処理装置を使用した。
(仕様)
・電極セラミック電極
・電極長さ 430mm
・出力 310W
また、有機塗膜のコロナ放電処理回数は、いずれも1回とした。コロナ放電処理量は、処理速度によって調整した。具体的には、3.8m/分で処理することにより、コロナ放電処理量200W・分/m2とした。
1−3.無機塗膜の作製
ケイ酸カリウム(富士化学社製、商品名 2号ケイ酸カリ、K2O・nSiO2(n=3.61)およびコロイダルシリカ(日本化学工業社製、商品名シリカドール)を100:13.3(固形分換算)で混合し、無機塗膜形成用組成物を得た。当該無機塗膜形成用組成物を、鋼板の表面側に配置された有機塗膜上に、表1または表2に示す平均無機塗膜被覆率となるように、霧化スプレーにより塗布した。その後、250℃で20分乾燥させて、無機塗膜(K2O・xSiO2(n=4.3)を得た。また鋼板の裏面側の第2の有機塗膜上にも、同様の条件で第2の無機塗膜を形成した。得られた無機塗膜(表面側)の平均厚みを表1または表2に示す。平均厚みは、以下のように測定した。まず、塗装鋼板を切り出し、切り出した試験片を樹脂で包埋後に研磨よって断面を作製した。さらにイオンミリング加工等で高精度の観察断面を作製してSEMで観察した。無機塗膜の存在する任意の10箇所について、厚みを測定し、これらの平均値を、無機塗膜の平均厚みとした。
ケイ酸カリウム(富士化学社製、商品名 2号ケイ酸カリ、K2O・nSiO2(n=3.61)およびコロイダルシリカ(日本化学工業社製、商品名シリカドール)を100:13.3(固形分換算)で混合し、無機塗膜形成用組成物を得た。当該無機塗膜形成用組成物を、鋼板の表面側に配置された有機塗膜上に、表1または表2に示す平均無機塗膜被覆率となるように、霧化スプレーにより塗布した。その後、250℃で20分乾燥させて、無機塗膜(K2O・xSiO2(n=4.3)を得た。また鋼板の裏面側の第2の有機塗膜上にも、同様の条件で第2の無機塗膜を形成した。得られた無機塗膜(表面側)の平均厚みを表1または表2に示す。平均厚みは、以下のように測定した。まず、塗装鋼板を切り出し、切り出した試験片を樹脂で包埋後に研磨よって断面を作製した。さらにイオンミリング加工等で高精度の観察断面を作製してSEMで観察した。無機塗膜の存在する任意の10箇所について、厚みを測定し、これらの平均値を、無機塗膜の平均厚みとした。
また、1mm2当たりの平均無機塗膜被覆率は、以下のように測定した。
まずSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:S−3700N)/EDS(オックスフォードインストゥルメンツ社製、商品名:x−act)を用いて、無機塗膜の主成分であるSiの元素分布を測定した。測定は無機塗膜が形成されている領域のうち、任意の10箇所(1mm2)について行った。次に、得られたSiの分布画像を、画像処理ソフト(adobe社製、photoshop)で2値化した。2値化に際しては、無機塗膜非形成部(有機塗膜)のSi検出値を基準として、わずかでもSiが増加している領域を無機塗膜が存在する領域として処理した。得られた2値化画像からSiが増加する領域(無機塗膜が存在する領域)の画素数を領域内の全画素で除し、無機塗膜被覆率を算出した。そして、無機塗膜被覆率の平均値を算出し、これを平均無機塗膜被覆率とした。
まずSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:S−3700N)/EDS(オックスフォードインストゥルメンツ社製、商品名:x−act)を用いて、無機塗膜の主成分であるSiの元素分布を測定した。測定は無機塗膜が形成されている領域のうち、任意の10箇所(1mm2)について行った。次に、得られたSiの分布画像を、画像処理ソフト(adobe社製、photoshop)で2値化した。2値化に際しては、無機塗膜非形成部(有機塗膜)のSi検出値を基準として、わずかでもSiが増加している領域を無機塗膜が存在する領域として処理した。得られた2値化画像からSiが増加する領域(無機塗膜が存在する領域)の画素数を領域内の全画素で除し、無機塗膜被覆率を算出した。そして、無機塗膜被覆率の平均値を算出し、これを平均無機塗膜被覆率とした。
2.評価
各実施例および比較例で得られた塗装鋼板について、油性インク除去試験(耐汚染性)、および摺動試験(耐傷付き性)を行った。結果を表1および表2に示す。
各実施例および比較例で得られた塗装鋼板について、油性インク除去試験(耐汚染性)、および摺動試験(耐傷付き性)を行った。結果を表1および表2に示す。
2−1.油性インク除去試験(耐汚染性)
実施例および比較例で得られた塗装鋼板(表面)に、油性マーカー(寺西化学工業製、商品名:マジックインキ(登録商標)No.700黒)で描画した。そして、描画部分の油性インクを、描画から1分後および1時間後に、水を含浸させた布(旭化成社製、商品名:ベンコットM3−II)で拭き取り、水拭き後の油性インクの痕跡の程度を評価した。油性インクの痕跡は、以下のような基準で評価した。なお、〇を合格とした。
〇:痕跡なし(除去率90%以上)
△:痕跡有り(除去率5%以上〜90%未満)
×:殆ど除去されない(除去率5%未満)
実施例および比較例で得られた塗装鋼板(表面)に、油性マーカー(寺西化学工業製、商品名:マジックインキ(登録商標)No.700黒)で描画した。そして、描画部分の油性インクを、描画から1分後および1時間後に、水を含浸させた布(旭化成社製、商品名:ベンコットM3−II)で拭き取り、水拭き後の油性インクの痕跡の程度を評価した。油性インクの痕跡は、以下のような基準で評価した。なお、〇を合格とした。
〇:痕跡なし(除去率90%以上)
△:痕跡有り(除去率5%以上〜90%未満)
×:殆ど除去されない(除去率5%未満)
2−2.摺動試験(耐傷付き性)
各塗装鋼板から2枚の板材を切り出し、一方の板材に第2の面(裏面)の無機塗膜が外側となるように半径0.5mmの曲げ加工を行った。図2に示されるように、曲げ加工を行っていない板材(評価試験片)の第1の面(表面)の無機塗膜に、曲げ加工を行った板材の曲げ加工部の無機塗膜(第2の無機塗膜)を接触させて、垂直方向に20kgf(約196N)の荷重を加えた。曲げ加工部の幅(板材の幅)は、70mmであった。この状態で、曲げ加工を行った板材を10往復/分の速度で摺動させて(往復での合計移動幅66mm)、往復200回ごとに曲げ加工を行っていない板材(評価試験片)の第1の面(表面)の無機塗膜および有機塗膜の状態を評価した。評価は以下の基準とした。また、試験は、「×」と評価した時点または往復1000回摺動させた時点で終了した。なお、〇を合格とした。
〇:無機塗膜および有機塗膜ともに傷が軽微
△:無機塗膜が著しく剥離し、有機塗膜に軽微な傷
×:下塗り塗膜またはめっき鋼板が露出
各塗装鋼板から2枚の板材を切り出し、一方の板材に第2の面(裏面)の無機塗膜が外側となるように半径0.5mmの曲げ加工を行った。図2に示されるように、曲げ加工を行っていない板材(評価試験片)の第1の面(表面)の無機塗膜に、曲げ加工を行った板材の曲げ加工部の無機塗膜(第2の無機塗膜)を接触させて、垂直方向に20kgf(約196N)の荷重を加えた。曲げ加工部の幅(板材の幅)は、70mmであった。この状態で、曲げ加工を行った板材を10往復/分の速度で摺動させて(往復での合計移動幅66mm)、往復200回ごとに曲げ加工を行っていない板材(評価試験片)の第1の面(表面)の無機塗膜および有機塗膜の状態を評価した。評価は以下の基準とした。また、試験は、「×」と評価した時点または往復1000回摺動させた時点で終了した。なお、〇を合格とした。
〇:無機塗膜および有機塗膜ともに傷が軽微
△:無機塗膜が著しく剥離し、有機塗膜に軽微な傷
×:下塗り塗膜またはめっき鋼板が露出
表1および表2の結果から、無機塗膜を形成しなかった場合や、無機塗膜の平均無機塗膜被覆率が26%未満である場合(No.1〜6、16、18、19、23、24、27、および28)では、耐汚染性が低かった。また、有機塗膜に対してフレーム処理またはコロナ放電処理を行わずに無機塗膜を形成した場合、無機塗膜が十分に密着せず、剥離した(No.14および22)。この場合も、十分な耐汚染性が得られなかった。一方、有機塗膜がワックス粒子を含まない場合、耐傷付き性が低かった(No.16〜18、および28)。
一方、無機塗膜を十分に密着させ(有機塗膜に対してフレーム処理またはコロナ放電処理を行ってから無機塗膜を形成し)、かつ平均無機塗膜被覆率が26%以上である場合、十分な耐汚染性が得られた(No.7〜13、15、17、20、21、25、26)。無機塗膜が形成されることで、塗装鋼板表面に薄い水分からなる膜が形成され、耐汚染性が高まったと推察される。ただし、無機塗膜の被覆率が90%超になると、耐傷付き性が低くなった(No.12、13、および26)。無機塗膜による被覆率が過度に高いと、塗装鋼板の表面にワックスが露出し難く、十分に耐傷付き性能を発揮することができなかったと推察される。
本発明に係る塗装鋼板は、耐傷付き性および耐汚染性が良好であるため、シャッターのスラットに好適である。
100 塗装鋼板
110 鋼板
120 下塗り塗膜
130 有機塗膜
140 無機塗膜
150 第2の下塗り塗膜
160 第2の有機塗膜
170 第2の無機塗膜
110 鋼板
120 下塗り塗膜
130 有機塗膜
140 無機塗膜
150 第2の下塗り塗膜
160 第2の有機塗膜
170 第2の無機塗膜
Claims (6)
- 鋼板と、
前記鋼板の少なくとも一方の面に配置された、ワックス粒子を含む有機塗膜と、
前記有機塗膜上に配置された、実質的に組成式K2O・xSiO2(3.5≦x<6.8)で表される組成物からなる無機塗膜と、
を有し、
前記無機塗膜を有する任意の10箇所の、1mm2当たりの無機塗膜被覆率の平均値が26〜90%である、
塗装鋼板。 - 前記ワックス粒子が、ポリエチレン粒子にフッ素樹脂粒子が結合している粒子である、
請求項1に記載の塗装鋼板。 - 前記有機塗膜が、ポリエステル−メラミン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、またはこれらの組み合わせをさらに含む、
請求項1または2に記載の塗装鋼板。 - 前記鋼板の他方の面に配置された第2の有機塗膜と、
前記第2の有機塗膜上に配置された第2の無機塗膜と、
をさらに有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装鋼板。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装鋼板を含む、
シャッタースラット。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装鋼板の製造方法であって、
前記鋼板および前記有機塗膜を有する基材を準備する工程と、
前記有機塗膜に、フレーム処理および/またはコロナ放電処理を行う工程と、
前記フレーム処理および/または前記コロナ放電処理を行った前記有機塗膜上に、ケイ酸カリウムおよびコロイダルシリカを少なくとも含む無機塗膜形成用組成物を塗布する工程と、
を有する塗装鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017142728A JP2019022953A (ja) | 2017-07-24 | 2017-07-24 | 塗装鋼板およびその製造方法、ならびにシャッタースラット |
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ID=65368350
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020163636A (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-08 | 日鉄日新製鋼株式会社 | 塗装金属板、シャッタースラットおよびシャッター |
-
2017
- 2017-07-24 JP JP2017142728A patent/JP2019022953A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020163636A (ja) * | 2019-03-28 | 2020-10-08 | 日鉄日新製鋼株式会社 | 塗装金属板、シャッタースラットおよびシャッター |
JP7188233B2 (ja) | 2019-03-28 | 2022-12-13 | 日本製鉄株式会社 | 塗装金属板、シャッタースラットおよびシャッター |
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