JP2019019359A - 皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板及びその製造方法 - Google Patents

皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フォルステライトを有しない仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に、皮膜密着性に優れた張力付与性絶縁被膜を磁気特性を損なわずに形成する。【解決手段】質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、張力付与性絶縁皮膜と鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層の表面のフーリエ変換赤外分光分析で、1250(cm-1)のピーク強度IAと、1200(cm-1)のピーク強度IBが、IB/IA≧0.01 を満たすことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。【選択図】図1

Description

本発明は、変圧器の鉄芯材料として使用する一方向性電磁鋼板及びその製造方法、特に、張力付与性絶縁皮膜の密着性に優れる一方向性電磁鋼板及びその製造方法に関する。
一方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位(以下、Goss方位)に高配向集積した結晶粒により構成された、Siを7質量%以下含有する珪素鋼板で、主に、変圧器の鉄芯材料として用いられる。一方向性電磁鋼板におけるGoss方位の高配向集積は、二次再結晶とよばれる粒成長現象を利用して実現される。
一方向性電磁鋼板は、磁気特性として、磁束密度が高く(B8値で代表される)、鉄損が低い(W17/50値で代表される)ことが要求されるが、最近では、省エネルギーの見地から、電力損失の低減、即ち、鉄損の低減に対する要求が一層高まっている。
一方向性電磁鋼板において、磁区は、交流磁場の下では、磁壁の移動を伴って変化する。磁壁の移動が円滑であることが、鉄損の低減に有効であるが、磁区の動きを観察すると、動かない磁区も存在する。
一方向性電磁鋼板の鉄損をさらに低減するためには、磁区の動きを阻害する鋼板表面のフォルステライト(Mg2SiO4)系皮膜(以下「グラス皮膜」ということがある。)の界面の凹凸によるピン止め効果をなくすことが重要である。このピン止め効果をなくすには、鋼板表面に磁区の動きを阻害するグラス皮膜を形成しないことが有効な手段である。
上記ピン止め効果をなくす手段として、例えば、特許文献1〜21には、脱炭焼鈍の露点を制御し、脱炭焼鈍時に形成する酸化層において、Fe系酸化物(Fe2SiO4、FeO等)を形成しないこと、及び、焼鈍分離剤として、シリカと反応しないアルミナ等の物質を用いて、仕上げ焼鈍後に表面の平滑化を達成することが開示されている。
また、一方向性電磁鋼板を変圧器の鉄芯材料として用いる場合、鋼板の絶縁性を確保することが必須であるので、張力を有する絶縁皮膜を鋼板表面に形成する。例えば、特許文献6に開示されている、コロイド状シリカとリン酸塩を主体とする塗布液を鋼板表面に塗布し、焼き付けて、絶縁皮膜を形成する方法は、鋼板に対する張力付与の効果が大きいので、絶縁性の確保に加え、鉄損の低減に有効である。
このように、仕上げ焼鈍工程で生じたグラス皮膜の上に、リン酸塩を主体とする絶縁皮膜を形成することが、一般的な、一方向性珪素鋼板の製造方法である。
上記絶縁皮膜をグラス皮膜の上に形成した場合には、かなりの皮膜密着性が得られるが、グラス皮膜を除去した場合、又は、仕上げ焼鈍工程で意図的にグラス皮膜を形成しなかった場合には、皮膜密着性は十分でない。
グラス皮膜を除去した場合には、塗布液を塗布して形成する張力付与性絶縁皮膜のみで、所要の皮膜張力を確保する必要があるので、必然的に、厚膜化しなければならず、より一層の皮膜密着性が必要である。
それ故、従来の皮膜形成法では、鏡面化の効果を十分に引き出すほどの皮膜張力を達成し、かつ、皮膜密着性をも確保することは困難であり、鉄損を十分に低減することができていなかった。そこで、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を確保するための技術として、張力付与性絶縁皮膜の形成に先き立ち、仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に酸化膜を形成する方法が、例えば、特許文献22〜25にて提案された。
例えば、特許文献23に開示の技術は、鏡面化した、又は、鏡面に近い状態に調製した仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板に、温度毎に、特定の雰囲気で焼鈍を施して、鋼板表面に外部酸化型の酸化膜を形成し、この酸化膜により、張力付与性絶縁皮膜と鋼板との密着性を確保する方法である。
特許文献24に開示の技術は、張力付与性絶縁皮膜が結晶質である場合において、無機鉱物質皮膜のない仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に、非晶質酸化物の下地皮膜を形成して、結晶質の張力付与性絶縁皮膜を形成する際に起きる鋼板の酸化、即ち、鏡面度の減退を防止する技術である。
特許文献25に開示の技術は、特許文献8に開示の技術をさらに発展させ、張力付与性絶縁皮膜と鋼板の界面において、Al、Mn、Ti、Cr、Siを含む金属酸化膜の膜構造を制御し、絶縁皮膜の密着性を改善する方法である。しかし、応力感受性が最も問題となる、金属酸化層と鋼板との界面の密着性については制御しておらず、特許文献25に開示の技術は、皮膜密着性を改善する技術としては不十分である。
特開昭64−062417号公報 特開平07−118750号公報 特開平07−278668号公報 特開平07−278669号公報 特開平07−278670号公報 特開平10−046252号公報 特開平11−106827号公報 特開平11−152517号公報 特開2002−060843号公報 特開2002−173715号公報 特開2002−348613号公報 特開2002−363646号公報 特開2003−055717号公報 特開2003−268541号公報 特開2003−003213号公報 特開2003−041320号公報 特開2003−247021号公報 特開2003−247024号公報 特開2008−001980号公報 特表2011−518253号公報 特開昭48−039338号公報 特開昭60−131976号公報 特開平06−184762号公報 特開平07−278833号公報 特開2002−348643号公報
鉄と鋼, vol99(2013)40.
鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を形成した一方向性電磁鋼板において、該絶縁皮膜をグラス皮膜(フォルステライト系皮膜)の上に形成した場合、上記絶縁皮膜の皮膜密着性は良好であるが、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を検索や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化して、張力付与性絶縁皮膜を形成した場合、該絶縁皮膜の皮膜密着性は十分でなく、皮膜密着性と磁性安定性の両立を図ることは困難である。
そこで、本発明は、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化した、仕上げ焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の表面に、皮膜密着性に優れた張力付与性絶縁皮膜を、磁気特性とその安定性を損なわずに形成することを課題とし、該課題を解決する一方向性電磁鋼板のとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を向上させる手法について、添加元素の影響に着目して鋭意検討した。その結果、張力付与性絶縁皮膜の形成に先き立ち、仕上げ焼鈍済みの一方向性電磁鋼板の表面に酸化膜(以下「中間酸化膜層」ということがある。)を形成する工程において、熱履歴及び酸素ポテンシャルを制御すると、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性が飛躍的に向上することを見いだした。
さらに、本発明者らは、皮膜密着性に最も大きく影響すると考えられる中間酸化膜層の組成を鋭意調査した。その結果、中間酸化膜層の酸化物は、Si酸化物(SiO2)であり、SiO2中間酸化膜層中にMnなどの元素が固溶していると、皮膜密着性が向上することを見いだした。
SiO2中間酸化膜層中に固溶している原子が、SiO2中間酸化膜層と鋼板との格子整合性を改善し、その結果、SiO2中間酸化膜層の密着性が向上したと考えられる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、張力付与性絶縁皮膜と鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層の表面のフーリエ変換赤外分光分析で、1250(cm-1)のピーク強度IAと、1200(cm-1)のピーク強度IBが、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
B/IA≧0.01 ・・・(1)
[2]前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、B:0.001〜0.010%を含有することを特徴とする前記[1]に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
[3]前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
[4]前記SiO2中間酸化膜層の表面の元素M(M:Mn、Al、B)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(2)を満足することを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
Figure 2019019359
Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
Ts:Siのグロー放電発光分析の開始点に対応する時間t(秒)
[5]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の成分組成の鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を製造する熱延工程、熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、焼鈍後の鋼板を酸洗する酸洗工程、酸洗後の鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する冷延工程、冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程、脱炭焼鈍鋼板を仕上焼鈍する仕上焼鈍工程、仕上焼鈍鋼板を焼鈍して、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程、酸化膜形成後の鋼板に、絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板を製造する製造方法において、
(i)上記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程における焼鈍を、600〜1400℃の温度T1(℃)で5〜1200秒、かつ、下記式(3)を満たす酸素ポテンシャルで行い、その後の冷却で、
(ii)下記式(4)で定義する温度T2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域の平均冷却速度CR1(℃/秒)を50℃/秒以下とし、40℃以上、上記T2(℃)未満の温度域の平均冷却速度を、下記式(5)を満たす平均冷却速度CR2(℃/秒)とする
ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
H2O/PH2≦5.65 ・・・(3)
T2=T1−100 ・・・(4)
CR1>CR2 ・・・(5)
[6]前記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程の加熱過程において、室温から600℃以下の温度域の平均加熱速度HR1(℃/秒)を10℃/秒以上とし、600℃を超え前記T1℃以下の温度域の平均加熱速度HR2(℃/秒)を50℃/秒以下とすることを特徴とする前記[5]に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化した、仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に、皮膜密着性に優れる張力付与性絶縁性皮膜を、磁気特性とその安定性を損なわずに形成することができる。
SiO2中間酸化膜層の表面のフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルの一例を示す図である。
本発明の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板(以下「本発明電磁鋼板」ということがある。)は、
質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、張力付与性絶縁皮膜と鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層の表面のフーリエ変換赤外分光分析で、1250(cm-1)のピーク強度IAと、1200(cm-1)のピーク強度IBが、下記式(1)を満たす
ことを特徴とする。
B/IA≧0.01 ・・・(1)
本発明電磁鋼板は、さらに、質量%で、(a)B:0.001〜0.010%、及び/又は、(b)Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする。
本発明電磁鋼板は、SiO2中間酸化膜層の表面の元素M(M:Mn、Al、B)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(2)を満足することを特徴とする。
Figure 2019019359
Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
Ts:Siのグロー放電発光分析の開始点に対応する時間t(秒)
本発明の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法(以下「本発明製造方法」ということがある。)は、
本発明電磁鋼板の成分組成の鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を製造する熱延工程、熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、焼鈍後の鋼板を酸洗する酸洗工程、酸洗後の鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する冷延工程、冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程、脱炭焼鈍鋼板を仕上焼鈍する仕上焼鈍工程、仕上焼鈍鋼板を焼鈍して、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程、酸化膜形成後の鋼板に、絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を含む、本発明電磁鋼板を製造する製造方法において、
(i)上記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程における焼鈍を、600〜1400℃の温度T1(℃)で5〜1200秒、かつ、下記式(3)を満たす酸素ポテンシャルで行い、その後の冷却で、
(ii)下記式(4)で定義する温度T2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域の平均冷却速度CR1(℃/秒)を50℃/秒以下とし、40℃以上、上記T2(℃)未満の温度域の平均冷却速度を、下記式(5)を満たす平均冷却速度CR2(℃/秒)とする
ことを特徴とする。
H2O/PH2≦5.65 ・・・(3)
T2=T1−100 ・・・(4)
CR1>CR2 ・・・(5)
また、本発明製造方法は、前記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程の加熱過程において、室温から600℃以下の温度域の平均加熱速度HR1(℃/秒)を10℃/秒以上とし、600℃を超え前記T1℃以下の温度域の平均加熱速度HR2(℃/秒)を50℃/秒以下とすることを特徴とする。
以下、本発明電磁鋼板及び本発明製造方法について説明する。
<成分組成>
まず、本発明電磁鋼板の成分組成の限定理由について説明する。以下、成分組成に係る%は、質量%を意味する。
C:0.10%以下
Cが0.10%を超えると、二次再結晶焼鈍において鋼が相変態し、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Cは0.10%以下とする。Cは、少ないほど、鉄損低減にとって好ましいので、鉄損特性の改善の観点から、0.08%以下が好ましい。
下限は0%を含むが、Cの検出限界が0.0001%程度であるので、実用鋼板上、0.0001%が実質的な下限である。
Si:0.80〜7.00%
Siが0.80%未満であると、二次再結晶焼鈍において鋼が相変態して、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Siは0.80%以上とする。好ましくは2.50%以上、より好ましくは3.00%以上である。
一方、Siが7.00%を超えると、鋼板が脆化し、製造工程での通板性が顕著に劣化するので、Siは7.00%以下とする。好ましくは4.00%以下、より好ましくは3.75%以下である。
酸可溶性Al:0.01〜0.07%
本発明電磁鋼板において、酸可溶性Al(sol.Al)は、皮膜密着性の改善の観点から必須の元素である。
酸可溶性Alが0.01%未満であると、インヒビターとして機能するAlNが十分に生成せず、二次再結晶が不充分となり、鉄損特性が向上しないので、酸可溶性Alは0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上である。
一方、酸可溶性Alが0.07%を超えると、鋼板が脆化し、特に、Siが多い本発明電磁鋼板では、脆化が顕著となるので、酸可溶性Alは0.07%以下とする。好ましくは0.04%以下である。
N:0.012%以下
Nが0.012%を超えると、冷延時、鋼板中にブリスター(空孔)が生じるうえに、鋼板の強度が上昇し、製造時の通板性が悪化するので、Nは0.012%以下とする。好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.009%以下である。
一方、Alと結合して、インヒビターとして機能するAlNを形成するためには、Nは0.004%以上が好ましい。より好ましくは0.006%以上である。
Mn:1.00%以下
Mnが1.00%を超えると、二次再結晶焼鈍において鋼が相変態し、二次再結晶が十分に進行せず、良好な磁束密度と鉄損特性が得られないので、Mnは1.00%以下とする。好ましくは0.50%以下、より好ましくは0.20%以下である。
MnSを、二次再結晶時、インヒビターとして活用することができるが、AlNをインヒビターとして活用する場合、MnSは必須でないので、Mnの下限は0%を含む。MnSをインヒビターとして活用する場合、Mnは0.02%以上とする。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.07%以上である。
S: 0.08%以下
Sが0.08%を超えると、熱間脆性の原因となり、熱延が著しく困難になるので、Sは0.08%以下とする。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
AlNをインヒビターとして活用する場合、MnSは必須でないので、下限は0%を含むが、MnSを、二次再結晶時のインヒビターとし活用する場合、Sは0.005%以上が好ましい。
また、Sの一部を、Se又はSbで置き換えてもよく、その場合は、Seq=S+0.406Se、又は、Seq=S+0.406Sbで換算した値を用いる。
本発明電磁鋼板は、上述元素の他、本発明電磁鋼板の特性を向上させるため、(a)B:0.001〜0.010%、及び/又は、(b)Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%の1種又は2種以上を含有してもよい。
B:0.001〜0.010%
Bは、Cr、Cuと同様に、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化して(本発明者らは、GDSで確認した)、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Bは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上である。
一方、0.010%を超えると、鋼板強度が増加し、冷延時の通板性が劣化するので、Bは0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。
Sn:0.01〜0.20%
Snは、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化しないが、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。Snの皮膜密着性の向上機構は明らかでないが、二次再結晶後の鋼板表面の平滑度を調査した結果、平滑度の向上が認められたので、Snは、鋼板表面の凹凸を低減して平滑化し、凹凸欠陥の少ない、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面の形成に寄与すると考えられる。
0.01%未満では、鋼板表面の平滑化効果が十分に得られないので、Snは0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。
一方、0.20%を超えると、二次再結晶が不安定となり、磁気特性が劣化するので、Snは0.20%以下とする。好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.10%以下である。
Cr:0.01〜0.50%
Crは、B、Cuと同様に、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化し、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.01%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Crは0.01%以上とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上である。
一方、0.50%を超えると、CrがSiとOを奪い合い、SiO2中間酸化膜層の形成を阻害することがあるので、Crは0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.20%以下である。
Cu:0.01〜0.50%
Cuは、B、Crと同様に、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に濃化し、皮膜密着性の向上に寄与する元素である。0.01%未満では、皮膜密着性の向上効果が十分に得られないので、Cuは0.01%以上とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上である。
一方、0.50%を超えると、熱間圧延中、鋼板が脆化するので、Cuは0.50%以下とする。好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.10%以下である。
本発明電磁鋼板の成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物であるが、磁気特性の向上、強度、耐食性、疲労特性などの構造部材に求められる特性の向上、鋳造性や通板性の向上、スクラップ等使用による生産性の向上を目的として、Mo、W、In、Bi、Sb、Ag、Te、Ce、V、Co、Ni、Se、Ca、Re、Os、Nb、Zr、Hf、Ta、Y、La等の1種又は2種以上を、合計で5.00%以下、好ましくは3.00%以下、より好ましくは1.00%以下含有してもよい。
<SiO2中間酸化膜>
次に、皮膜密着性の向上に重要な役割を果たすSiO2中間酸化膜層について説明する。本発明電磁鋼板は、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、又は、グラス皮膜の生成を意図的に防止して製造するので、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を十分に確保するため、張力付与性絶縁皮膜と鋼板の界面に、所要の膜厚のSiO2中間酸化膜層を形成する。
SiO2中間酸化膜層の平均膜厚:1.0nm以上、1.0μm以下
SiO2中間酸化膜層の平均膜厚が1.0nm未満であると、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を十分に確保できないので、SiO2中間酸化膜層の平均膜厚は1.0nm以上とする。好ましくは5.0nm以上、より好ましくは9.0nm以上である。
一方、1.0μmを超えると、SiO2中間酸化膜層の内部に、破壊の起点となるクラックが発生し、皮膜密着性が劣化するので、SiO2中間酸化膜層の平均膜厚は1.0μm以下とする。好ましくは0.7μm(=700nm)以下、より好ましくは0.4μm(=400nm)以下である。
SiO2中間酸化膜層の膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で、試料断面を観察して計測する。
SiO2中間酸化膜層を構成する化合物が“SiO2”であることは、TEM又はSEMに付随するエネルギー分散分光(EDS)による元素分析で確認することができる。
具体的には、SiO2中間酸化膜層のEDSスペクトルにおいて、横軸に、エネルギー1.8±0.3kevの位置にSi−Kα線を検出し、同時に、0.5±0.3kevの位置にO−Kα線を検出することにより、“SiO2”の存在を確認することができる。元素の同定は、Kα線以外にも、Lα線やKγ線を用いて行うことができる。
ただし、SiのEDSスペクトルは、鋼板中のSiに由来するスペクトルを含んでいる可能性もあるので、正確には、鋼板表面を電子マイクロアナライザ(EPMA)で分析し、Siが、鋼板由来か、SiO2中間酸化膜層由来かを判別する。
また、SiO2中間酸化膜層の表面をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)で分析し、波数1250(cm-1)にSiO2由来のピークが存在することで、SiO2中間酸化膜層を構成する化合物が“SiO2”であることを確認することができる。
ただし、FT−IRは、試料最表面の化合物を選択的に検出する方法であるので、分析は、(a)張力付与性絶縁皮膜が存在していない状態の試料について行い、(b)鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有する材料については、アルカリ洗浄などで張力付与性絶縁皮膜を完全に除去した後に行う。
なお、赤外分光法(IR)には、反射法と吸収法がある。吸収法は、試料最表面の情報と鋼板内部の情報が重畳するので、SiO2中間酸化膜層を構成する化合物を同定するには、反射法が好ましい。また、吸収法では、SiO2中間酸化膜層に由来の波数は1250(cm-1)とならず、SiO2の形成状態に応じてピークシフトする。
B/IA:0.01以上
1250(cm-1)のピーク強度IAに対する1200(cm-1)のピーク強度IBの比:IB/IAを0.01以上とする。
SiO2中間酸化膜層を1.0nm以上1.0μm以下に制御することにより、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性を確保できるが、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に格子欠陥が存在すると、皮膜密着性が低下する場合がある。
上記界面における格子欠陥は、SiO2中間酸化膜層の格子定数と鋼板の格子定数の違いに起因して発生するが、Mnを、SiO2中間酸化膜層中に固溶させることで、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性をさらに向上させることが可能となる。この皮膜密着性の向上機構は、以下のように考えられる。
SiO2中間酸化膜層の表面には、Siに由来するダングリングボンド(波動関数)が張り出すので、SiO2中間酸化膜層の表面は、電気的引力、即ち、吸着力を持つことになる。それ故、SiO2中間酸化膜層と鋼板は密着するが、一方で、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面では、格子整合性が悪く、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面に、不可避的に格子欠陥が導入される。
しかし、Mnが、SiO2中間酸化膜層に固溶していると、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面におけるSiO2の格子周期性が変化し、SiO2中間酸化膜層と鋼板の界面の格子整合性が向上する。その結果、格子非整合に由来する格子欠陥が減少し、最終的に、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性が向上する。
上記機構により、張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性の向上に寄与するMnのSiO2中間酸化膜層への固溶状態又は濃化状態は、FT−IRで分析することができる。
本発明電磁鋼板においては、波数1250(cm-1)に、通常のSiO2由来のピークが存在し、さらに、1200(cm-1)及び1150(cm-1)に、格子定数が変化したSiO2(以下「Si(Mn)Ox」ということがある。)に由来するピークが存在する。そして、格子定数が変化したSi(Mn)Oxの存在量は、波数1200(cm-1)又は1150(cm-1)のピーク強度に反映される。
図1に、SiO2中間酸化膜層の表面のフーリエ変換赤外分光(FT−IR)スペクトルの一例を示す。図1示すスペクトルは、Gauss分布を仮定した、SiO2ピークのデコンボリューションの一例である。なお、デコンボリューションに際し、分布関数は、Voigt、Gaussian、及び、Lorentzのいずれかにする。
なお、ピーク強度は、解析ソフトウェアで、バックグラウンドを差引いた後のピーク高さで定義してもよいし、ピークの積分強度で定義してもよい。
Si(Mn)Ox由来のピークが明瞭に現れない場合は、フィッティングによるピークのデコンボリューションにより、ピーク強度を抽出することが可能である。
本発明者らは、波数1250(cm-1)のSiO2由来のピーク強度IAと、波数1200(cm-1)のSi(Mn)Ox由来のピーク強度IBが、下記式(1)を満たす場合、良好な皮膜密着性が得られること見いだした。
B/IA≧0.01 ・・・(1)
B/IAの上限は定めないが、Mnの固溶量又は濃化量には限度があり、この限度を考慮すれば、IB/IAの上限は10程度である。IB/IAは、優れた皮膜密着性を確実に確保する点で、0.01〜5が好ましい。より好ましくは0.01〜1である。
∫fM(t)dt>0
元素M(M:Mn、Al、B)をSiO2中間酸化膜層に固溶させた場合、元素Mの固溶態様は、グロー放電発光分析法(GDS)で解析することが可能である。その場合、SiO2中間酸化膜層の深さ位置と元素Mの深さ位置の関係が重要である。
SiO2中間酸化膜層の深さ位置は、Si由来のGDSスペクトル(以下、FSi(t))から解析することが可能である。以下、説明する。
なお、GDSスペクトルに、ピーク解析ソフトウェアを使ってスムージング処理を行ってもよい。また、ピーク解析の精度向上の観点から、測定時間の間隔Δtは、小さい方が好ましく、0.05秒以下が好ましい。以下、tは、試料の深さ位置に対応する時間(秒)を表す。
tは、GDSスペクトルを時間の関数としたときの変数である。鋼板から採取した試料の表面にSiO2中間酸化膜層が存在すると、試料の表面に相当する領域で、Si由来のGDSスペクトルにおいて、(A)バックグラウンドからのピーク立上がり位置、(B)ピークの頂点位置、及び、(C)バックグラウンドへのピーク終端位置を観測することができる。
ここで、ピーク立上り位置に対応する時間tをTs、ピーク頂点に対応する時間tをTp、ピーク終端位置に対応する時間tをTfとする。SiO2中間酸化膜層は、測定試料の最表面に相当する。即ち、GDSスペクトルの測定開始点のtが、ピーク立上り位置に対応するとして、GDSの測定開始点をTsと定義してよい。また、ピークは正規分布に従い左右対称であり、Tf=2Tp−Tsと定義できる。
GDSスペクトルの測定時間間隔Δtは0.05秒以下と小さいので、Ts≒0と近似して、Tf=2×Tpとしてもよい。以下に、Tpの決定方法について説明する。
Tpは、Si由来のGDSスペクトルのピーク頂点位置に対応する。ピーク頂点位置を決定するには、FSi(t)を時間で二階微分し、二階微分曲線(図1中、「d2F(t)/dt2」、参照)の極小値に対応するtを見つければよい。ただし、この極小値は、t=0秒以上、Δt×100秒以下の範囲において見つかるものに限定する。なぜなら、SiO2中間酸化膜層は、試料表面にのみ存在し、鋼板内部には存在しないので、tは、比較的小さい値を有するからである。
さらに、FSi(t)を時間で一階微分した曲線fSi(t)(=dFSi(t)/dt)(図1中、「dF(t)/dt」、参照)において、t=Ts〜Tpの範囲で、常に、fSi(t)≧0であれば、Tpがピーク頂点位置に対応することは、より決定的である。
なお、微分曲線は、導関数を求めてもよいし、差分法によって、f(tn)=[F(tn)−F(tn-1)]/[tn−tn-1]と近似して求めてもよい。ここで、n番目の測定点(時間)をtnとし、そのときのスペクトル強度をF(tn)としている。
Si由来のピークが不明瞭な場合は、Fe由来のGDSスペクトル[以下、FFe(t)]からも解析可能である。この場合は、FFe(t)の一階の微分曲線(以下、fFe(t)とする)において、極大値に相当するtを前記Tfとした場合、前記Tpは、Tp=0.5×(Tf+Ts)と示されるが、Ts≒0と近似して、Tp=0.5×Tfとしてもよい。これは、fFe(t)の極大値がSiO2と地鉄の界面に相当するからである。
ただし、この極大値は、t=0秒以上、Δt×100秒以下の範囲において見つかるものに限定する。なぜなら、SiO2中間酸化膜層は、試料表面にのみ存在し、鋼板内部には存在しないので、tは、比較的小さい値を有するからである。
本発明電磁鋼板においては、皮膜密着性の向上を目的とし、Mn、Al、B等の元素Mを、SiO2中間酸化膜層の中心部に対応する、t=Tpの位置に濃化させる必要がある。ただし、Mn、Al、B等の元素Mを、t=Tpの位置に留めおくことは不可能であり、実際には、t=Ts〜Tpの範囲に亘って分布することになる。
即ち、SiO2中間酸化膜層に固溶した元素Mの固溶状態は、元素M由来のGDSスペクトル(以下、FM(t))を用いて確認することが可能である。具体的には、fM(t)を、積分範囲:t=Ts〜Tpで積分した時の値が、下記式(2)を満たせばよい。
Figure 2019019359
元素Mは、Mn、Al、B等、複数存在するため、少なくとも、下記式(3)〜(5)の一つ又は二つ以上を満たせばよい。
Figure 2019019359
なお、GDS解析におけるtは連続でなく、t=Ts〜Tpにおいても、fM(t)は不連続な点の集まりである。そのため、fM(t)の各点を直線で繋いで連続な関数として近似して積分する。なお、Σを使った積算値としてもよい。
Mn、Al、B等の元素Mは、化学分析でも検出することが可能である。張力付与性絶縁皮膜を形成する前の状態の試料、又は、張力付与性絶縁皮膜を除去した状態の試料の鋼板部分を、ヨウ素メタノール法により溶解し、SiO2中間酸化膜層を抽出する。次に、抽出したSiO2中間酸化膜層を、ICPなどを用いて化学分析する。これにより、SiO2中間酸化膜層に侵入した金属元素Mを捉えることができる。
SiO2中間酸化膜層中の金属元素Mの固溶量(又は濃化量)は、質量%で、Mn及びAlは0.01%以上、Bは0.001%以上であればよい。上限は、特に存在しないが、Mn及びAlは、0.5%を超える固溶(濃化)は難しく、Bは、0.2%を超える固溶(濃化)は難しい。
FT−IR、GDS、化学分析などによる、皮膜密着性の向上効果の検証には、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した後、張力付与性絶縁皮膜を形成する前の状態の鋼板試料が最も適しているが、表面に張力付与性絶縁皮膜が形成されている鋼板試料については、アルカリ洗浄の後、酸洗、又は、アルコール、水などによる超音波洗浄で、張力付与性絶縁皮膜のみを完全に除去して分析に供すればよい。
また、酸洗、又は、アルコール、水などによる超音波洗浄の後に、鋼板試料の表面を、さらに清浄にする目的で、水素100%の雰囲気にて、800℃以上1100℃以下、1時間以上5時間以下の焼鈍を実施して、分析に供してもよい。SiO2は安定な化合物であるので、上記焼鈍でSiO2が還元され、SiO2中間酸化膜層が消失することはない。
<製造方法>
本発明電磁鋼板は、通常の電磁鋼板と同様に、転炉で溶製され、連続鋳造された鋼片に、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、一次再結晶焼鈍、二次再結晶焼鈍、SiO2中間酸化膜層を形成する焼鈍、及び、絶縁皮膜を形成する焼鈍を施して製造する。
熱間圧延は、直送熱延や、連続熱延でもよく、鋼片加熱温度は限定されない。冷間圧延は、二回以上冷延、温間圧延でもよく、圧下率は限定されない。二次再結晶焼鈍は、箱形炉によるバッチ焼鈍、連続ライン焼鈍のいずれでもよく、焼鈍方式に依らない。
焼鈍分離剤は、アルミナ、マグネシア、又は、シリカなどの酸化物を含有するものであればよく、その種類に依らない。
皮膜密着性に優れた一方向性電磁鋼板を製造する場合、SiO2中間酸化膜層の形成に際しては、SiO2中間酸化膜層を生成するとともに、Mnなどの金属元素MがSiO2中間酸化膜層へ固溶又は濃化する熱処理条件を採用することが重要である。即ち、金属元素Mが、SiO2中間酸化膜層へ固溶又は濃化し得る温度と時間を選択することが重要である。
本発明電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層は、二次再結晶後の鋼板を600℃以上1400℃以下の温度T1(℃)で、5〜1200秒焼鈍して形成する。
焼鈍温度が600℃未満であると、SiO2は生成せず、SiO2中間酸化膜層は形成されないので、焼鈍温度は600℃以上とする。一方、焼鈍温度が1400℃を超えると、鋼板が溶融する恐れがあるので、焼鈍温度は1400℃以下とする。好ましくは、SiO2の析出温度である700〜1150℃である。
SiO2中間酸化膜層を成長させ、優れた皮膜密着性を確保するのに必要な層厚を確保するため、焼鈍時間は5秒以上とする。好ましくは20秒以上である。優れた皮膜密着性を確保する観点から、焼鈍時間は長くてよいが、生産性の観点から、1200秒を上限とする。
焼鈍雰囲気は、外部酸化型のシリカ(SiO2中間酸化膜層)を生成し、かつ、ファイヤライト、ウスタイト、マグネタイト等の低級酸化物の生成を回避する焼鈍雰囲気とする。そのため、焼鈍雰囲気の酸素ポテンシャルPH2O/PH2を、下記式(6)を満たす酸素ポテンシャルとする。
H2O/PH2≦5.65 ・・・(6)
酸素ポテンシャルPH2O/PH2が低いほど、外部酸化型のシリカ(SiO2中間酸化膜層)は生成し易く、本発明の効果を発揮し易いが、酸素ポテンシャルPH2O/PH2を3.0×10-4未満に制御することは難しいので、工業的には、3.0×10-4程度が実質的な下限である。
一方、酸素ポテンシャルPH2O/PH2が5.65を超えると、ファイヤライト、ウスタイト、マグネタイト等の低級酸化物が生成するので、酸素ポテンシャルPH2O/PH2は5.65以下とする。好ましくは2.25以下である。
Mn、Al、B等の金属元素Mを、SiO2中間酸化膜層へ効果的に固溶(又は濃化)させるためには、金属元素Mが拡散できる温度を確保する必要がある。そのため、SiO2中間酸化膜層の形成する焼鈍後の冷却においては、SiO2中間酸化膜層への拡散温度域である、下記式(7)で定義するT2(℃)以上、T1(℃)以下の温度域を、50℃/秒以下の平均冷却速度CR1(℃/秒)で冷却する。
50℃/秒以下の平均冷却速度CR1の冷却により、本発明電磁鋼板の特性が劣化することはないが、生産性の観点から、CR1は0.1℃/秒以上が好ましい。T2(℃)まで冷却した後、冷却速度を速くすると、熱歪が導入され、皮膜密着性及び磁気特性が低下するので、40℃〜T2(℃)の温度域の平均冷却速度CR2は、下記式(8)を満たす平均冷却速度とする。
T2=T1−100 ・・・(7)
CR1>CR2 ・・・(8)
上記式(6)を満たす酸素ポテンシャルPH2O/PH2の焼鈍雰囲気で、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した後、一旦、室温まで冷却し、次いで、T2℃以上、T1℃の温度域に再加熱し、10秒以上保持した後、室温以上、T2℃未満の温度域を、平均冷却速度CR3:30℃/秒以下で冷却してもよい。
皮膜密着性に優れたSiO2中間酸化膜の形成においては、鋼板を加熱する加熱速度も重要である。SiO2以外の酸化物は、張力付与性絶縁皮膜の密着性を低下させるだけでなく、鋼板の表面平滑性を阻害し、鉄損特性の低下を招くので、SiO2以外の酸化物極力生成しない加熱速度を採用する必要がある。
非特許文献1に記載されているように、SiO2は、他のFe系酸化物に比べ、安定でないので、加熱途中に、Fe系酸化物が生成しない熱履歴を採用することが好ましい。具体的には、室温から500℃までの温度域における平均加熱速度HR1を10℃/秒以上とすることで、FeXOの生成を回避することができる。この温度域における加熱速度は、速いほど好ましいが、工業的な理由から、平均加熱速度HR1の上限は200℃/秒が好ましい。
SiO2の生成温度域は600℃以上、T1℃以下である。そのため、より多くのSiO2を生成させるために、この温度域の平均加熱速度HR2を50℃/秒以下とする。ただし、加熱速度が遅いと、SiO2よりも熱的に安定なFe2SiO4が生成するので平均加熱速度HR2は5℃/秒以上が好ましい。
また、SiO2の生成駆動力は、600℃までの加熱速度の増加に伴い大きくなるので、室温から600℃までは加熱速度を速くし、その後の生成温度における滞在期間を長くすることが好ましい。そのため、平均加熱速度が下記式(9)を満たすことが、皮膜密着性を確保する点で好ましい。
HR1<HR2 ・・・(9)
以下、本発明の実施例を挙げて、本発明の技術的内容について、さらに説明する。なお、以下に示す実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。また本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
<実施例1>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
Figure 2019019359
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、酸素ポテンシャルPH2O/PH2=0.9の雰囲気、1200℃×400秒の条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。
なお、1100℃以上、1200℃以下の温度域における平均冷却速度CR1を20℃/秒とし、かつ、40℃以上、1100℃未満の平均冷却速度CR2を7℃/秒とした。
その後、鋼板表面に絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁被膜を形成し、該絶縁皮膜の皮膜密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性は、評価用試料を、直径20mmの円筒に巻き付け、180°曲げた時の皮膜残存面積率で評価した。評価は、鋼板から剥離せず、皮膜残存面積率が95%以上の場合をVG(非常に優れる)、90%以上95%未満の場合をG(優れる)、80%以上90%未満の場合をF(効果がある)、80%未満をB(効果がない)とした。
磁気特性は、JIS C 2550に準じて評価した。磁束密度は、B8を用いて評価した。B8は、磁界の強さ800A/mにおける磁束密度で、二次再結晶の良否の判断基準となる。B8=1.89T以上を、二次再結晶したものと判断した。
なお、一部の試料については、SiO2中間酸化膜層の形成後に、張力付与性絶縁皮膜を形成せず、SiO2中間酸化膜層の膜厚調査と、SiO2中間酸化膜層の格子整合度の調査に供した。SiO2中間酸化膜層の膜厚は、特許文献25に記載の方法に準じて、TEM観察により同定した。SiO2中間酸化膜層の格子整合度は、FT−IRにより調査した。一連の評価結果を表2に示す。
Figure 2019019359
記号B1〜B10は発明例であり、いずれも良好な皮膜密着性を示している。記号B8の発明例は、B、Cr、Cu、及び、Snの添加効果が十分に発現し、特に良好な皮膜密着性を示し、判定は「G」である。
一方、記号b1〜b8は比較例である。記号b3、b5、及び、b6の比較例は、それぞれ、Si、Al、及び、Nを多量に含有するため、室温での脆性が悪く、冷延そのものが不可能であった。また、記号b8の比較例は、S含有量が多く、熱間での脆性が悪く、熱延が不可能であった。このため、記号b3、b5、b6、及び、b8の比較例においては、いずれも、密着性の評価に至らなかった。
記号b1、b2、b4、及び、b7の比較例は、添加元素の含有量が本発明範囲を外れたため、いずれも、二次再結晶しなかった。なお、二次再結晶をしなかった試料は、いずれも皮膜密着性が悪かった。二次再結晶しなかった場合、鋼板の結晶粒径が微細で、表面凹凸が激しく、酸化層の形成が好適になされなかったためと考える。
<実施例2>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、酸素ポテンシャルPH2O/PH2=0.005の雰囲気、1100℃×200秒の条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。
なお、900℃以上、1100℃以下の温度域における平均冷却速度CR1を15℃/秒とし、かつ、40℃以上、1000℃未満の平均冷却速度CR2を7℃/秒とした。
その後、鋼板表面に絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、該絶縁被膜の皮膜密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
一部の試料については、SiO2中間酸化膜層を形成した後、張力付与絶縁皮膜を形成せず、SiO2中間酸化膜層の膜厚の調査と、SiO2中間酸化膜層の格子整合度の調査、及び、SiO2中間酸化膜層中のMnの固溶度調査に供した。Mnの固溶度はGDS分析により行った。
表3に、SiO2中間酸化膜層の膜厚、FT−IRによるSiO2中間酸化膜層の格子整合度、GDSによるMn、Al、及び、Bの固溶度、及び、皮膜密着性の評価結果を示す。いずれの測定方法、評価方法も、実施例1に準じて行った。
Figure 2019019359
記号C1〜C9は発明例であり、いずれも、格子整合性に優れたSiO2中間酸化膜層が形成されていることが、FT−IR分析により確認されている。記号C5〜C7の発明例は、それぞれ、Mn、Al、及び、Bが固溶しているため、記号C1〜C4の発明例に比べ、より良好な皮膜密着性を示している。特に、記号C8の発明例は、Mnに加えBが固溶し、記号C9の発明例は、Mn、Al、及び、Bが全て固溶しているため、特に良好な皮膜密着性を示し、評価はVGである。
<実施例3>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上げ焼鈍板を、表4に示す条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。その後、鋼板表面に絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、該絶縁被膜の密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
表4に、SiO2中間酸化膜層の膜厚、FT−IRによるSiO2中間酸化膜層の格子整合度、及び、皮膜密着性の評価結果を示す。いずれの測定方法、評価方法も、実施例1に準じて行った。
Figure 2019019359
記号D1〜D9は発明例であり、特に、記号D8及びD9の発明例は、SiO2中間酸化膜層を形成する際の焼鈍温度及び酸素ポテンシャルが好ましい範囲内であり、とりわけ良好な皮膜密着性を示した。
一方、記号d1〜d4は比較例である。記号d1〜d3の比較例においては、SiO2中間酸化膜層を形成する際の焼鈍温度、焼鈍時間、及び、酸素ポテンシャルのいずれかが本発明の範囲外であるために、SiO2中間酸化膜層が形成されず、FT−IRによる評価ができなかった。
記号d4の比較例については、SiO2中間酸化膜層の冷却速度が本発明の範囲外であるために、SiO2中間酸化膜層の格子整合度が悪く、皮膜密着性の評価は「B」であった。
<実施例4>
表1に示す成分組成の珪素鋼を1000〜1400℃に加熱して熱間圧延に供し、板厚2.3〜2.8mmの熱延鋼板とし、該熱延鋼板に900〜1200℃で焼鈍を施し、その後、一回の冷間圧延又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して、最終板厚0.23mmの冷延鋼板とした。
最終板厚0.23mmの冷延鋼板に、脱炭焼鈍と窒化焼鈍を施し、その後、焼鈍分離剤を塗布して、1200℃で仕上げ焼鈍を施し、次いで、仕上焼鈍板を、表5に示す条件で焼鈍し、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成した。その後、鋼板表面に絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成し、該絶縁被膜の皮膜密着性を評価するとともに、磁気特性(磁束密度)を評価した。
一部の試料については、SiO2中間酸化膜層の形成後、張力付与妹尾絶縁皮膜の形成を行わず、SiO2中間酸化膜層の膜厚調査、及び、SiO2中間酸化膜層の格子整合度の調査に供した。
表5に、SiO2中間酸化膜層の膜厚、FT−IRによるSiO2中間酸化膜層の格子整合度、及び、皮膜密着性の評価結果を示す。いずれの測定方法、評価方法も、実施例1に準じて行った。
Figure 2019019359
記号E1〜E5は発明例であり、特に、記号E5の発明例は、HR1<HR2の条件を満たしており、判定はVGである。記号E1〜E3の発明例は、HR1<HR2の条件を満たしているが、HR1又はHR2の値が、発明範囲の上下限に近いため、皮膜密着性は、記号E5の発明例と比べてやや劣り、判定はGである。
記号E4の発明例は、SiO2中間酸化膜層を形成する際の焼鈍温度、焼鈍時間、酸素ポテンシャル、及び、冷却速度のいずれもが、本発明の範囲内であるが、HR1<HR2の条件を満たしておらず、判定はFとなった。
前述したように、本発明によれば、グラス皮膜の生成を意図的に抑制したり、グラス皮膜を研削や酸洗等の手段で除去したり、さらに、鋼板表面を鏡面光沢を呈するまで平坦化した、仕上げ焼鈍済みの一方向性珪素鋼板の表面に、皮膜密着性に優れる張力付与性絶縁性皮膜を、磁気特性とその安定性を損なわずに形成することができる。よって、本発明は、電磁鋼板製造産業及び電磁鋼板利用産業において利用可能性が高いものである。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.10%以下、Si:0.80〜7.00%、酸可溶性Al:0.01〜0.07%、N:0.012%以下、Mn:1.00%以下、S:0.08%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、鋼板表面に張力付与性絶縁皮膜を有し、かつ、張力付与性絶縁皮膜と鋼板表面の界面に、平均膜厚が1.0nm以上1.0μm以下のSiO2中間酸化膜層を有する一方向性電磁鋼板において、SiO2中間酸化膜層の表面のフーリエ変換赤外分光分析で、1250(cm-1)のピーク強度IAと、1200(cm-1)のピーク強度IBが、下記式(1)を満たす
    ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
    B/IA≧0.01 ・・・(1)
  2. 前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、B:0.001〜0.010%を含有することを特徴とする請求項1に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
  3. 前記一方向性電磁鋼板が、さらに、質量%で、Sn:0.01〜0.20%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
  4. 前記SiO2中間酸化膜層の表面の元素M(M:Mn、Al、B)のグロー放電発光分析スペクトルの時間微分曲線fM(t)が、下記式(2)を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板。
    Figure 2019019359
    Tp:Siのグロー放電発光分析スペクトルの二階の時間微分曲線の極小値に対応す る時間t(秒)
    Ts:Siのグロー放電発光分析の開始点に対応する時間t(秒)
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の成分組成の鋼片を熱間圧延して熱延鋼板を製造する熱延工程、熱延鋼板を焼鈍する熱延板焼鈍工程、焼鈍後の鋼板を酸洗する酸洗工程、酸洗後の鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を製造する冷延工程、冷延鋼板を脱炭焼鈍する脱炭焼鈍工程、脱炭焼鈍鋼板を仕上焼鈍する仕上焼鈍工程、仕上焼鈍鋼板を焼鈍して、鋼板表面にSiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程、酸化膜形成後の鋼板に、絶縁皮膜形成用塗布液を塗布して焼き付け、張力付与性絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板を製造する製造方法において、
    (i)上記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程における焼鈍を、600〜1400℃の温度T1(℃)で5〜1200秒、かつ、下記式(3)を満たす酸素ポテンシャルで行い、その後の冷却で、
    (ii)下記式(4)で定義する温度T2(℃)以上、上記T1(℃)以下の温度域の平均冷却速度CR1(℃/秒)を50℃/秒以下とし、40℃以上、上記T2(℃)未満の温度域の平均冷却速度を、下記式(5)を満たす平均冷却速度CR2(℃/秒)とする
    ことを特徴とする皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
    H2O/PH2≦5.65 ・・・(3)
    T2=T1−100 ・・・(4)
    CR1>CR2 ・・・(5)
  6. 前記SiO2中間酸化膜層を形成する酸化膜形成工程の加熱過程において、室温から600℃以下の温度域の平均加熱速度HR1(℃/秒)を10℃/秒以上とし、600℃を超え前記T1℃以下の温度域の平均加熱速度HR2(℃/秒)を50℃/秒以下とすることを特徴とする請求項5に記載の皮膜密着性に優れる一方向性電磁鋼板の製造方法。
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