[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の一例を示した概略図である。図1に示した車両用ワイパ装置100は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられた「ウィンドシールド」としてのウィンドシールドガラス1を払拭するためのものであり、一対のワイパ14、16と、ワイパモータ18と、リンク機構20と、伸縮機構120と、制御回路52と、ウォッシャ装置70と、を備えている。
図1は、右ハンドル車の場合を示しているので、車両の右側(図1の左側)が運転席側、車両の左側(図1の右側)が助手席側である。車両が左ハンドル車の場合には、車両の左側(図1の右側)が運転席側、車両の右側(図1の左側)が助手席側になる。また、車両が左ハンドル車の場合には、車両用ワイパ装置100の構成が左右反対になる。
ワイパモータ18は、出力軸32が所定の回転角度の範囲で正回転及び逆回転することにより、運転席側ワイパアーム26及び助手席側ワイパアーム24の各々をウィンドシールドガラス1上で往復動作させるための駆動源である。本実施形態では、ワイパモータ18が正回転した場合に、運転席側ワイパアーム26は運転席側ワイパブレード30が下反転位置P2Dから上反転位置P1Dを払拭するように動作し、助手席側ワイパアーム24は助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pを払拭するように動作する。また、ワイパモータ18が逆回転した場合には、運転席側ワイパアーム26は運転席側ワイパブレード30が上反転位置P1Dから下反転位置P2Dを払拭するように動作し、助手席側ワイパアーム24は助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pから下反転位置P2Pを払拭するように動作する。
ウィンドシールドガラス1の外縁部は、可視光及び紫外線を遮るため、セラミックス系の黒色顔料が塗布された遮光部1Aとなっている。黒色顔料は、ウィンドシールドガラス1の車室内側の外縁部に塗布された後、所定温度で加熱されることにより溶融し、ウィンドシールドガラス1の車室側表面に定着される。ウィンドシールドガラス1は、外縁部に塗布された接着剤により車体に固定されるが、図1に示したように、紫外線を透過させない遮光部1Aを外縁部に設けることにより、紫外線による当該接着剤の劣化を抑制する。
後述する伸縮機構120が動作しない場合には、ワイパモータ18の出力軸32が所定の回転角度(以下、「所定回転角度」と称する)で正回転及び逆回転することにより、運転席側ワイパブレード30は払拭範囲H1を、助手席側ワイパブレード28は払拭範囲Z1を、各々払拭する。
伸縮機構120は、助手席側ワイパブレード28を、助手席側ワイパアーム24に対して動作させる機構である。伸縮機構120は、助手席側ワイパブレード28を、ピボット軸42を中心とする円弧の半径方向に移動させ、助手席側ワイパアーム24を見かけ上伸長させる。前述のワイパモータ18が動作中に伸縮機構120が動作することにより、助手席側ワイパアーム24は助手席側上方に見かけ上伸長され、助手席側ワイパブレード28は払拭範囲Z2を払拭する。また、伸縮機構120の作動量(伸縮の程度)を変更することにより、助手席側ワイパアーム24が伸長する範囲を変更することが可能となる。例えば、作動量を大きくすれば、助手席側ワイパアーム24が伸長する範囲は大きくなり、作動量を小さくすれば、助手席側ワイパアーム24が伸長する範囲は小さくなる。
ワイパモータ18は、出力軸32の回転方向を正回転及び逆回転に制御可能であると共に、出力軸32の回転速度も制御可能なモータであり、一例としてブラシ付きDCモータ及びブラシレスDCモータのいずれかである。また、伸縮機構120は、後述するように、複数の電磁石及び複数の永久磁石を含む一種のリニアモータである。
ワイパモータ18及び伸縮機構120には、各々の動作を制御するための制御回路52が接続されている。本実施の形態に係る制御回路52は、例えば、ワイパモータ18の出力軸32末端付近に設けられた絶対角センサ114が検知したワイパモータ18の出力軸32の回転方向、回転位置、回転速度及び回転角度に基づいて、ワイパモータ18に印加する電圧のデューティ比を算出する。また、伸縮機構120の固定子側に設けられた移動検出センサ(図示せず)が検知した可動子の移動方向、移動による位置の変化及び移動速度に基づいて、電磁石で構成された固定子に印加する電圧の極性及びデューティ比を算出する。
本実施形態では、ワイパモータ18及び伸縮機構120の各々に印加する電圧を、電源である車載バッテリの電圧(略12V)をスイッチング素子によってオンオフしてパルス状の波形に変調するパルス幅変調(PWM)によって生成する。本実施の形態でデューティ比は、PWMによって生成される電圧の波形の1周期間に対する前述のスイッチング素子がオンになったことで生じる1のパルスの時間の割合である。また、PWMによって生成される電圧の波形の1周期は、前述の1のパルスの時間と前述のスイッチング素子がオフになりパルスが生じない時間との和である。駆動回路56は、制御回路52によって算出されたデューティ比に従って駆動回路56内のスイッチング素子をオンオフさせてワイパモータ18及び伸縮機構120の各々に印加する電圧を生成し、生成した電圧をワイパモータ18及び伸縮機構120の各々の巻線の端子に印加する。
本実施の形態に係るワイパモータ18は、ウォームギアで構成された減速機構48を有しているので、各々の出力軸の回転方向、回転速度及び回転角度は、ワイパモータ18本体の回転速度及び回転角度と同一ではない。しかしながら、本実施の形態では、各モータと減速機構48とは、一体不可分に構成されているので、以下、ワイパモータ18の出力軸32の回転速度及び回転角度を、ワイパモータ18の回転方向、回転速度及び回転角度とみなすものとする。
絶対角センサ114は、例えばワイパモータ18の減速機構48内に設けられ、出力軸32に連動して回転する励磁コイル又はマグネットの磁界(磁力)を電流に変換して検出するセンサであり、一例として、MRセンサ等の磁気センサである。また、移動検出センサは、固定子に面した側の磁極が交互に異なるように複数の永久磁石が配置された可動子の磁界(磁力)を電流に変換して検出するセンサであり、一例として、MRセンサ等の磁気センサである。
制御回路52は、ワイパモータ18の出力軸32末端付近に設けられた絶対角センサ114が検出したワイパモータ18の出力軸32の回転角度から運転席側ワイパブレード30のウィンドシールドガラス1上での位置を算出可能なマイクロコンピュータ58を備えている。マイクロコンピュータ58は、算出した位置に応じてワイパモータ18の出力軸32の回転速度が変化するように駆動回路56を制御する。
また、マイクロコンピュータ58は、ワイパモータ18の出力軸32末端付近に設けられた絶対角センサ114が検出したワイパモータ18の出力軸32の回転角度から助手席側ワイパブレード28のウィンドシールドガラス1上での位置を算出し、算出した位置に応じて伸縮機構120の可動子の移動量及び移動速度が変化するように駆動回路56を制御する。また、マイクロコンピュータ58は、伸縮機構120の移動検出センサが検出した可動子の移動量から助手席側ワイパアーム24の伸長の程度を算出する。
制御回路52には、駆動回路56の制御に用いるデータ及びプログラムを記憶した記憶装置であるメモリ60が設けられている。メモリ60は、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28のウィンドシールドガラス1上の位置を示すワイパモータ18の出力軸32の回転角度に応じてワイパモータ18の出力軸32の回転速度等(回転角度を含む)及び伸縮機構120の可動子の移動速度(移動量含む)を算出するためのデータ及びプログラムを記憶している。
また、マイクロコンピュータ58には、車両のエンジン等の制御を統括する車両ECU(Electronic Control Unit)90が接続されている。また、車両ECU90には、ワイパスイッチ50、方向指示器スイッチ54、ウォッシャスイッチ62、レインセンサ76、車両の速度を検知する車速センサ92、車両の前方を撮影する車載カメラ94、GPS(Global Positioning System)装置96、操舵角センサ98及び外気温センサ156が接続されている。
ワイパスイッチ50は、車両のバッテリからワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ワイパスイッチ50は、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を、低速で動作させる低速作動モード選択位置、高速で動作させる高速作動モード選択位置、一定周期で間欠的に動作させる間欠作動モード選択位置、レインセンサ76が雨滴を検知した場合に動作させるAUTO(オート)作動モード選択位置、格納(停止)モード選択位置に切替可能である。また、各モードの選択位置に応じた信号を、車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に出力する。
ワイパスイッチ50から各モードの選択位置に応じて出力された信号が車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に入力されると、マイクロコンピュータ58がワイパスイッチ50からの出力信号に対応する制御をメモリ60に記憶されたデータ及びプログラムを用いて行う。
本実施の形態では、ワイパスイッチ50には、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を払拭範囲Z2に変更する変更モードスイッチが別途設けられていてもよい。変更モードスイッチがオンになると、所定の信号が車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に入力される。マイクロコンピュータ58は、所定の信号が入力されると、例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに動作する場合に、払拭範囲Z2を払拭するように伸縮機構120を制御する。
方向指示器スイッチ54は、車両の方向指示器(図示せず)の作動を指示するスイッチであり、運転者の操作により、右又は左の方向指示器をオンにするための信号を車両ECU90に出力する。車両ECU90は、方向指示器スイッチ54から出力された信号に基づいて、右又は左の方向指示器のランプを点滅させる。方向指示器スイッチ54から出力された信号は、車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58にも入力される。
ウォッシャスイッチ62は、車両のバッテリからウォッシャモータ64、ワイパモータ18及び伸縮機構120に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ウォッシャスイッチ62は、例えば、前述のワイパスイッチ50を備えたレバー等の操作手段に一体に設けられ、当該レバー等を乗員が手元に引く等の操作によりオンになる。マイクロコンピュータ58は、ウォッシャスイッチ62がオンになると、ウォッシャモータ64及びワイパモータ18を作動させる。マイクロコンピュータ58は、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pまで払拭する場合には、払拭範囲Z2を払拭するように、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pから下反転位置P2Pまで払拭する場合には、払拭範囲Z1を払拭するように伸縮機構120を各々制御する。かかる制御により、ウィンドシールドガラス1の助手席側を広く払拭することが可能となる。
ウォッシャスイッチ62がオンになっている間は、ウォッシャ装置70が備えるウォッシャモータ64の回転でウォッシャポンプ66が駆動される。ウォッシャポンプ66はウォッシャ液タンク68内のウォッシャ液を運転席側ホース72A又は助手席側ホース72Bに圧送する。運転席側ホース72Aは、ウィンドシールドガラス1の運転席側の下方に設けられた運転席側ノズル74Aに接続されている。また、助手席側ホース72Bは、ウィンドシールドガラス1の助手席側の下方に設けられた助手席側ノズル74Bに接続されている。圧送されたウォッシャ液は、運転席側ノズル74A及び助手席側ノズル74Bからウィンドシールドガラス1上に噴射される。ウィンドシールドガラス1上に付着したウォッシャ液は、動作している運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28によってウィンドシールドガラス1上の汚れと一緒に払拭される。
マイクロコンピュータ58は、ウォッシャスイッチ62がオンになっている間のみ動作するようにウォッシャモータ64を制御する。また、マイクロコンピュータ58は、ウォッシャスイッチ62がオフになっても運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2D、P2Pに達するまで動作を継続するようにワイパモータ18を制御する。さらにマイクロコンピュータ58は、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1D、P1Pに向かって払拭している際にウォッシャスイッチ62がオフになった場合には、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28が、ワイパモータ18の回転により上反転位置P1D、P1Pに達するまで、払拭範囲Z2を払拭するように伸縮機構120を制御する。
レインセンサ76は、例えば、ウィンドシールドガラス1の車室内側に設けられる光学センサの一種であり、ウィンドシールドガラス1表面の水滴等を検知する。レインセンサ76は、一例として、赤外線の発光素子であるLED、受光素子であるフォトダイオード、赤外線の光路を形成するレンズ及び制御回路を含んでいる。LEDによって車室側から車外に発せられた赤外線はウィンドシールドガラス1で全反射するが、ウィンドシールドガラス1の表面に水滴が存在すると赤外線の一部が水滴を透過して外部に放出されるため、ウィンドシールドガラス1での反射量が減少する。その結果、受光素子であるフォトダイオードに入る光量が減少する。かかる光量の減少に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を検知する。または、受光素子を車外に設けることで、赤外線の透過量を検出し、当該透過量に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を検知してもよい。さらには、発光素子を車外、受光素子を車室内側に各々設けて、赤外線の透過量を検出してもよい。
車速センサ92は、車両の車輪の回転数を検知し、当該回転数を示す信号を出力するセンサである。車両ECU90は、車速センサ92が出力した信号と車輪の周長から車速を算出する。
車載カメラ94は、車両前方を撮影し、動画像のデータを取得する装置である。車両ECU90は、車載カメラ94で取得した動画像のデータを画像処理することにより、車両がカーブに差し掛かっている等を判定することが可能である。また、車両ECU90は、車載カメラ94で取得した動画像のデータの輝度から、車両前方の明るさを算出できる。
本実施の形態に係る車載カメラ94は、被写体までの距離を取得した画像データから算出できるように右撮像部94Rと左撮像部94Lとを備えた、いわゆるステレオカメラである。別途ミリ波レーダ等の車両前方の障害物等を探知し、当該障害物までの距離を検出できる装置を車両が備えている場合には、車載カメラはステレオカメラでなくてもよい。
図1に示したように、本実施の形態では、レインセンサ76及び車載カメラ94は、ウィンドシールドガラス1の中央上部付近の機能エリア102に設けられる。機能エリア102は、レインセンサ76の検知範囲と、車載カメラ94の撮影の視野と、をカバーし得る所定範囲である。
GPS装置は、上空にあるGPS衛星から受信した測位のための信号に基づいて車両の現在位置を算出する装置である。本実施の形態では、車両用ワイパ装置100専用のGPS装置96を用いるが、車両がカーナビゲーションシステム等の他のGPS装置を備える場合には、当該他のGPS装置を用いてもよい。
操舵角センサ98は、一例としてステアリングの回転軸(図示せず)に設けられ、当該ステアリングの回転角度を検出するセンサである。また、外気温センサ156は、車外の気温を検知するセンサである。
続いて、ワイパ14、16の構成について説明する。ワイパ14、16は、それぞれ助手席側ワイパアーム24、26と助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30とにより構成されている。助手席側ワイパアーム24、26の基端部は、後述するピボット軸42、44に各々固定されており、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30は、助手席側ワイパアーム24、26の先端部に各々固定されている。
ワイパ14、16は、助手席側ワイパアーム24、26の動作に伴って助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30がウィンドシールドガラス1上を往復動作し、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30がウィンドシールドガラス1を払拭する。
ワイパモータ18は、減速機構48を介して、正逆回転可能な出力軸32を有し、リンク機構20は、クランクアーム34と、第1リンクロッド36と、一対のピボットレバー38、40と、一対のピボット軸42、44と、第2リンクロッド46とを備えている。
クランクアーム34の一端側は、出力軸32に固定されており、クランクアーム34の他端側は、第1リンクロッド36の一端側に動作可能に連結されている。また、第1リンクロッド36の他端側は、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端寄りの箇所に動作可能に連結されており、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端及びピボットレバー40におけるピボットレバー38の当該端に対応する端には、第2リンクロッド46の両端がそれぞれ動作可能に連結されている。
また、ピボット軸42、44は、車体に設けられた図示しないピボットホルダによって動作可能に支持されており、ピボットレバー38、40におけるピボット軸42、44を有する端は、ピボット軸42、44を介して助手席側ワイパアーム24、26が各々固定されている。
車両用ワイパ装置100では、出力軸32が所定の範囲の回転角度θ1で正逆回転されると、この出力軸32の回転力がリンク機構20を介して助手席側ワイパアーム24、26に伝達され、この助手席側ワイパアーム24、26の往復動作に伴って助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30がウィンドシールドガラス1上における下反転位置P2D、P2Pと上反転位置P1D、P1Pとの間で往復動作をする。θ1の値は、車両用洗浄システムのリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として140°とする。
本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100では、図1に示されるように、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30が格納位置P3P、P3Dに位置された場合には、クランクアーム34と第1リンクロッド36とが直線状をなす構成とされている。
格納位置P3D、P3Pは、下反転位置P2D、P2Pの下方に設けられている。助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30が下反転位置P2D、P2Pにある状態から、出力軸32がθ2回転することにより、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30は格納位置P3D、P3Pに動作する。θ2の値は、車両用洗浄システムのリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として10°とする。
なお、θ2が「0」の場合は、下反転位置P2D、P2Pと格納位置P3D、P3Pは一致し、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30は、下反転位置P2D、P2Pで停止し、格納される。
図2は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100のワイパ14の伸縮機構120の構成の一例を示した概略図である。図2に示したように、伸縮機構120は、助手席側ワイパアーム24の端部に固定軸24Pで固定されたハウジング120H内に設けられた固定子120Aと、助手席側ワイパブレード28側に設けられ、永久磁石列120Bを備えた可動子126と、を含む。
固定子120Aにはコイル120Cが巻装され、コイル120Cに駆動回路56から供給された電圧が印加されると励磁される。駆動回路56は、コイル120Cに印加する電圧の極性を変化させることにより、励磁された固定子120Aの磁極を変化させる。助手席側ワイパアーム24の内部にはコイル120Cと駆動回路56とを導通接続する接続線(図示せず)が配策されている。
可動子126の永久磁石列120Bは、固定子120Aに面した側の磁極が交互に異なるように複数の永久磁石が配置されている。従って、固定子120Aが励磁されると、固定子120Aの磁界と永久磁石列120Bの磁界との吸引及び反発による相互作用により、可動子126は、固定子120Aに対して図2の矢印B方向または矢印C方向に移動する、いわゆる往復運動を行う。
固定子120Aを収めたハウジング120H内には、移動検出センサ118が設けられている。移動検出センサ118は、可動子126の移動に伴って変化する永久磁石列120Bの磁界を検出し、電気信号に変換して制御回路52に出力する。図2の破線で示したように、助手席側ワイパアーム24の内部には移動検出センサ118と制御回路52とを導通接続する信号線が配策されている。
図3は、図2に示されたA−A線に沿って切断した伸縮機構120の断面図である。図3に示したように、可動子126にはブレードラバー122と、金属板であるバッキング124とを備える。バッキング124は、可動子126のバッキング保持部126Aに保持されることにより、助手席側ワイパブレード28の形状保持及び弾性付与に資する部材である。
ブレードラバー122は、基端部122Aが可動子126のブレードラバー保持部126Bに嵌合され、前述のバッキング124と共に、可動子126を含む助手席側ワイパブレード28を構成する。
可動子126の頂部は、固定子120Aのハウジング120Hの下端部の案内機構120Rと嵌合するガイドレール126Rとなっており、可動子126が固定子120Aに対してピボット軸42を中心とする円弧の半径方向に移動可能に構成されている。
図4は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の回路を模式的に示した回路図である。図4に示すように、車両用ワイパ装置100は、制御回路52と駆動回路56とを含んでいる。
制御回路52は、前述のようにマイクロコンピュータ58とメモリ60を有し、マイクロコンピュータ58には、車両ECU90(図示せず)を介して、ワイパスイッチ50、方向指示器スイッチ54、ウォッシャスイッチ62、レインセンサ76、車速センサ92、車載カメラ94、GPS装置96、操舵角センサ98、外気温センサ156が各々接続されている。
駆動回路56は、ワイパモータ18を駆動させるための第1プリドライバ104及びワイパモータ駆動回路108、伸縮機構120を駆動させるための第2プリドライバ106及び伸縮機構駆動回路110を備えている。また駆動回路56は、ウォッシャモータ64を駆動させるための、リレー駆動回路78、FET駆動回路80及びウォッシャモータ駆動回路57を有している。
制御回路52のマイクロコンピュータ58は、第1プリドライバ104を介してワイパモータ駆動回路108を構成するスイッチング素子をオンオフさせることによりワイパモータ18の回転を、第2プリドライバ106を介して伸縮機構駆動回路110のスイッチング素子をオンオフさせることにより伸縮機構120の動作を、各々制御する。また、マイクロコンピュータ58は、リレー駆動回路78及びFET駆動回路80を制御することによりウォッシャモータ64の回転を制御する。
ワイパモータ18がブラシ付きDCモータの場合、ワイパモータ駆動回路108は4個のスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、一例としてN型のFET(電界効果トランジスタ)である。また、伸縮機構120を駆動する電圧を生成する伸縮機構駆動回路110も、一例として図4に示したように、4個のスイッチング素子を含み、各スイッチング素子はN型のFETである。
図4に示すように、ワイパモータ駆動回路108は、FET108A〜108Dを含んでいる。FET108Aは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースがワイパモータ18の一端部に接続されている。FET108Bは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースがワイパモータ18の他端部に接続されている。FET108Cは、ドレインがワイパモータ18の一端部に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースが接地されている。FET108Dは、ドレインがワイパモータ18の他端部に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースが接地されている。
第1プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に従ってFET108A〜108Dのゲートに供給する制御信号を切り替えることで、ワイパモータ18の駆動を制御する。すなわち、第1プリドライバ104は、ワイパモータ18の出力軸32を所定方向に回転(正回転)させる場合には、FET108AとFET108Dの組をオンさせ、ワイパモータ18の出力軸32を所定方向と逆方向に回転(逆回転)させる場合には、FET108BとFET108Cの組をオンさせる。また、第1プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に基づいて、FET108A及びFET108Dを断続的にオンオフさせるPWMを行う。
第1プリドライバ104はPWMにより、FET108A及びFET108Dのオンオフに係るデューティ比を変化させることにより、ワイパモータ18の正回転での回転速度を制御する。当該デューティ比が大きくなれば、正回転時にワイパモータ18の端子に印加される電圧の実効値が高くなり、ワイパモータ18の回転速度は大きくなる。
同様に、第1プリドライバ104はPWMにより、FET108B及びFET108Cのオンオフに係るデューティ比を変化させることにより、ワイパモータ18の逆回転での回転速度を制御する。当該デューティ比が大きくなれば、逆回転時にワイパモータ18の端子に印加される電圧の実効値は高くなり、ワイパモータ18の回転速度は大きくなる。
伸縮機構駆動回路110は、FET110A〜110Dを含んでいる。FET110Aは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが伸縮機構120の固定子120Aのコイルの一端部に接続されている。FET110Bは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが伸縮機構120の固定子120Aのコイルの他端部に接続されている。FET110Cは、ドレインが伸縮機構120の固定子120Aのコイル120Cの一端部に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが接地されている。FET110Dは、ドレインが伸縮機構120の固定子120Aのコイル120Cの他端部に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが接地されている。
第2プリドライバ106は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に従ってFET110A〜110Dのゲートに供給する制御信号を切り替えることで、伸縮機構120の駆動を制御する。一例として、助手席側ワイパアーム24を助手席側上方に見かけ上伸長させるように伸縮機構120の可動子126を所定方向に移動させる場合、第2プリドライバ106は、FET110AとFET110Dの組をオンさせ、次いでFET110BとFET110Cの組をオンさせる。かかるスイッチング制御を反復することにより、可動子126を所定方向に移動させる。また、可動子126の移動速度は、FET110AとFET110Dの組をオンさせ、次いでFET110BとFET110Cの組をオンさせるスイッチングのタイミングを早めるとともに、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を高くすることによって高速化できる。第2プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に基づいて、前述の第1プリドライバ104のようなPWMを行うことにより、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を制御する。
伸縮機構120の可動子126を所定方向の逆方向に移動させる場合、第2プリドライバ106は、FET110BとFET110Cの組をオンさせ、次いでFET110AとFET110Dの組をオンさせる。かかるスイッチング制御を反復することにより、可動子126を所定方向の逆方向に移動させる。また、可動子126の移動速度は、FET110BとFET110Cの組をオンさせ、次いでFET110AとFET110Dの組をオンさせるスイッチングのタイミングを早めるとともに、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を高くすることによって高速化できる。第2プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に基づいて、前述の第1プリドライバ104のようなPWMを行うことにより、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を制御する。
ワイパモータ18の減速機構48内における出力軸32の出力軸端部112には、2極のセンサマグネット112Aが固定され、センサマグネット112Aに対向するように絶対角センサ114が設けられている。
伸縮機構120のハウジング120H内には、可動子126の永久磁石列120Bに対向するように移動検出センサ118が設けられている。
絶対角センサ114はセンサマグネット112Aの磁界を、移動検出センサ118は永久磁石列120Bの磁界を、各々検出し、検出した磁界の強さに応じた信号を出力する。マイクロコンピュータ58は、絶対角センサ114が出力した信号に基づいて、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度、回転位置、回転方向及び回転速度を算出すると共に、移動検出センサ118が出力した信号に基づいて、伸縮機構120の移動量、位置、移動方向及び移動速度を算出する。
ワイパモータ18の出力軸32の回転角度からは、運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置が算出できる。また、伸縮機構120の可動子126の移動量からは、助手席側ワイパアーム24の見かけの伸長の程度(拡大の程度)が算出できる。マイクロコンピュータ58は、出力軸32の回転角度から算出した運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置に基づいて、可動子126の移動量を制御することにより、ワイパモータ18と伸縮機構120の各々の動作を同期させる。一例として、メモリ60に、運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置(又は出力軸32の回転角度)と可動子126の移動量とを対応付けたマップ(例えば、後述する伸縮機構作動量マップ)を予め記憶させ、当該マップに従って、出力軸32の回転角度に応じて可動子126の移動量を制御する。
図5は、本実施の形態における出力軸32の回転角度に応じた可動子126の移動量(作動量)を規定した伸縮機構作動量マップの一例を示している。図5の横軸は出力軸32の回転角度である出力軸回転角度θAである。出力軸回転角度θAは、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに位置する場合は「0°」になる図5の縦軸は可動子126の移動量である伸縮機構作動量MVであり、その最大値は所定作動量MV2となる。伸縮機構作動量MVは、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに位置する場合に「0」となるので、伸縮機構作動量MVが「0」となる位置から可動子126の位置までの距離を示している。図5の原点Oは、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pにある状態を示している。図5のθ1は、出力軸32が所定回転角度θ1回転した結果、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pにある状態を示している。
マイクロコンピュータ58は、ワイパモータ18の出力軸32が回転を始めると、絶対角センサ114で検知した出力軸32の回転角度と伸縮機構作動量マップとを照合する。かかる照合により、図5の曲線190で示された角度から、絶対角センサ114で検知した出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVを算出し、算出した伸縮機構作動量MVになるように伸縮機構120の可動子126の移動量を制御する。
より具体的には、マイクロコンピュータ58は、絶対角センサ114によりワイパモータ18の出力軸32の回転角度が0°から正回転方向で変化を開始した場合を、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pからの移動を開始したと判定し、伸縮機構120の可動子126の助手席側上方(所定方向)への移動を開始させる。マイクロコンピュータ58は、前述のように、伸縮機構作動量マップを用いて出力軸32の回転角度に対応した可動子126の移動量を決定するが、マイクロコンピュータ58は、移動検出センサ118からの信号に基づいて可動子126の移動量をモニターし、伸縮機構作動量マップを用いて決定した移動量になるように伸縮機構120の動作を制御する。伸縮機構作動量マップの設定によるが、図5に示したように、出力軸回転角度θAが0°と所定回転角度θ1との間の中間回転角度θmになった場合に、可動子126の助手席側上方への移動量が所定作動量MV2となるようにする。可動子126の助手席側上方への移動量が所定作動量MV2になることで、助手席側ワイパブレード28をウィンドシールドガラス1上の助手席側上方に移動させる。
可動子126の所定方向への移動量が所定作動量MV2に達した後は、伸縮機構作動量マップに従い、可動子126を所定方向とは逆方向に移動させる。具体的には、出力軸32の回転角度が所定回転角度θ1に達して、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに達するまでに可動子126を所定作動量MV2で所定方向とは逆方向に移動させることにより、図5の伸縮機構作動量マップに示したように、可動子126の移動量を0まで減少させる。本実施の形態の移動検出センサ118は、MRセンサ等の、対象物の移動量及び移動方向が検出可能なセンサを用いているので、可動子126が所定方向と逆方向に移動した場合には、それまでに検出した移動量が0に向かって減少する状態を検出できる。そして、かかる可動子126の移動量の減少により、助手席側ワイパブレード28は元の位置に戻される。
以上の説明は、助手席側ワイパブレード28を下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに移動させながら払拭範囲Z2を払拭させる場合である。助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pから下反転位置P2Pに移動させながら払拭範囲Z2を払拭させる場合には、絶対角センサ114により出力軸32の回転角度が0°から逆回転方向で変化を開始した場合を、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pからの移動を開始したと判定し、伸縮機構120の可動子126の所定方向への移動を開始させ、可動子126の所定方向への移動量が所定作動量MV2に達した後は、伸縮機構作動量マップに従い、可動子126を所定方向とは逆方向に移動させる。なお、図5に示す伸縮機構作動量マップは中間回転角度θmを軸にして左右対称な曲線190となっているが、これに限定されることはない。マップの曲線はウィンドシールドガラス1の形状等に応じて、個別に設定する。
また、マイクロコンピュータ58は、運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置及び助手席側ワイパアーム24の拡大の程度に基づいて、ワイパブレードの払拭速度を変化させる等の制御を行うことも可能である。以下に、可動子126の移動量である所定作動量を大きく設定して、助手席側ワイパアーム24の拡大の程度を大きくした場合の払拭速度の制御の一例について述べる。かかる場合には、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度が中間回転角度θmに近づくにつれて、出力軸32の回転速度を徐々に減速させる。そして、出力軸32の回転角度が中間回転角度θmに達した場合、すなわち、助手席側ワイパアーム24が最大に伸長される場合に、出力軸32の回転速度が極小となるように制御する。出力軸32の回転速度の制御には、例えば、出力軸32の回転角度に応じて規定された出力軸32の回転速度のマップ等(図示せず)を用いる。また、出力軸32の回転速度に対応して、可動子126の移動速度も制御する。例えば、図5に示したような伸縮機構作動量マップを用いているのであれば、出力軸32の回転に可動子126の動作を同期できるので、出力軸32の回転速度の増減に対応して、可動子126の移動速度も制御できる。かかる制御により、助手席側ワイパアーム24を伸長させる速度と助手席側ワイパブレード28の払拭速度とを緩和でき、「助手席側ワイパアーム24が急激に伸びた」という違和感を乗員が覚えるおそれを軽減できる。
ウォッシャモータ駆動回路57は、2個のリレーRLY1、RLY2を内蔵したリレーユニット84、2個のFET86A、86Bを含んでいる。リレーユニット84のリレーRLY1、RLY2のリレーコイルはリレー駆動回路78に各々接続されている。リレー駆動回路78はリレーRLY1、RLY2のオンオフ(リレーコイルの励磁/励磁停止)を切り替える。リレーRLY1、RLY2は、リレーコイルが励磁されていない間は、共通端子84C1、84C2が第1端子84A1、84A2と各々接続している状態(オフ状態)を維持し、リレーコイルが励磁されると共通端子84C1、84C2を第2端子84B1、84B2に各々接続する状態に切り替わる。リレーRLY1の共通端子84C1はウォッシャモータ64の一端に接続されており、リレーRLY2の共通端子84C2はウォッシャモータ64の他端に接続されている。また、リレーRLY1、RLY2の第1端子84A1、84A2の各々はFET86Bのドレインに接続され、リレーRLY1、RLY2の第2端子84B1、84B2の各々は電源(+B)に接続されている。
FET86BはゲートがFET駆動回路80に接続され、ソースが接地されている。FET86Bのオンオフに係るデューティ比はFET駆動回路80によって制御される。また、FET86Bのドレインと電源(+B)との間にはFET86Aが設けられている。FET86Aは、ゲートに制御信号が入力されないのでオンオフの切り替えは行われず、寄生ダイオードをサージの吸収に用いる目的で設けられている。
リレー駆動回路78及びFET駆動回路80は、2個のリレーRLY1、RLY2とFET86Bとのオンオフを切り替えることで、ウォッシャモータ64の駆動を制御する。すなわち、ウォッシャモータ64の出力軸を所定方向に回転(正回転)させる場合、リレー駆動回路78はリレーRLY1をオンさせ(リレーRLY2はオフ)、FET駆動回路80は所定のデューティ比でFET86Bをオンさせる。上記の制御により、ウォッシャモータ64の出力軸の回転速度が制御される。
以下、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の制御について説明する。図6は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100における、ウィンドシールドガラス1の付着物に応じて往動時及び復動時のいずれかに拡大払拭を行う制御をする払拭モード制御処理の一例を示したフローチャートである。図6に示した一連の手順は、ワイパスイッチ50が、レインセンサ76が雨滴を検知した場合に車両用ワイパ装置100を自動的に動作させるAUTO作動モード選択位置の場合に実行されるものであり、制御回路52内のマイクロコンピュータ58によって処理される。
ステップ110ではレインセンサ76からの信号を取得し、ステップ112では車載カメラ94から画像データを取得する。さらにステップ114では外気温センサ156から、車外の気温を示す信号を取得する。
ステップ116では、レインセンサ76が、雨滴等の液体又は雪等の固体を検知したか否かを判定する。前述のように、レインセンサ76は、車室側から車外に発した赤外線の反射量の変化によって、ウィンドシールドガラス1上の付着物を検知する。ステップ116では、レインセンサ76から発せられた赤外線の反射量に何らかの変化があった場合に、ウィンドシールドガラス1の表面に付着物が存在するとして、肯定判定をする。ステップ116で肯定判定の場合には、手順をステップ118に移行させる。ステップ116で否定判定の場合には、処理をリターンする。
ステップ118では、車載カメラ94から取得した画像データの最暗部の輝度が閾値輝度以上か否かを判定する。ウィンドシールドガラス1表面の付着物が、水滴、雪、霜、霙、融雪剤等の無色又は白色のものであれば、画像データの輝度は最暗部においても概して高めとなる。一方で、付着物が泥であれば、画像データ最暗部の輝度は水滴等の場合よりも低くなる。本実施の形態では、泥と水滴、雪、霜、霙、融雪剤等とを識別できるように、閾値画素を実機試験等を通じて具体的に決定する。
ステップ118で肯定判定の場合には、手順をステップ120に移行させる。ステップ118で否定判定の場合には、手順をステップ124に移行させる。
ステップ120では、外気温センサ156が検知した車外の気温が閾値温度以上か否かを判定する。閾値温度は、一例として、霜等が発生する4〜5℃である。ステップ120で肯定判定の場合には、ウィンドシールドガラス1表面の付着物は雨滴等の液体であると判定できる。従って、ステップ122では、往動時に払拭範囲Z2を払拭させる拡大払拭を行い、かつ復動時に払拭範囲Z1を払拭させる通常動作を行う雨払拭モードでの動作を行って処理をリターンする。
ステップ118で否定判定の場合には付着物は泥であると判定でき、ステップ120で否定判定の場合には気温の低さから付着物は雪、霜、霙、融雪剤等であると判定できる。ステップ118で否定判定の場合も、ステップ120で否定判定の場合も、ウィンドシールドガラス1表面の付着物は固体であると考えられる。従って、ステップ124では、往動時に払拭範囲Z1を払拭させる通常動作を行い、復動時に払拭範囲Z2を払拭させる拡大払拭を行う雪・泥払拭モードでの動作を行って処理をリターンする。
以上説明したように、本実施の形態では、レインセンサ76、車載カメラ94、外気温センサ156を併用することにより、ウィンドシールドガラス1表面の付着物が雨滴等の液体か、雪又は泥等の固体であるかを判定している。そして、当該判定に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の付着物に応じて往動時及び復動時のいずれかに拡大払拭を行う制御が可能になる。
ウィンドシールドガラス1表面の付着物を液体である雨滴と識別した場合には往動時に拡大払拭を行い復動時に通常動作を行うことにより、ウィンドシールドガラス1表面の助手席側に雨筋が発生することを防止する。往動時に払拭範囲を拡大した場合には助手席側のウィンドシールドガラス1表面に雨筋が発生する場合があるが、復動時に払拭範囲を拡大させない通常の払拭動作によって、発生した雨筋を払拭し、雨筋を構成していた水分を下反転位置の下方に排除することが可能になるからである。
また、ウィンドシールドガラス1表面の付着物を雪又は泥を含む固体と識別した場合には、往動時に通常動作を行い復動時に拡大払拭を行うことにより、ウィンドシールドガラス1表面の運転席側に雪又は泥等の固体が掃き寄せられることを防止する。往動時には運転席側のウィンドシールドガラス表面及びウィンドシールドガラスの上部表面に雪等の固体が掃き寄せられる場合があるが、復動時に払拭範囲を拡大させる払拭動作によって、掃き寄せられた固体を下反転位置の下方に排除することが可能になるからである。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32が正逆(往復)回転可能に制御されていたが、これに限定されることはない。例えば、出力軸32が一方向に回転するものでもよい。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32の回転により、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1D、P1Pと下反転位置P2D、P2Pとの間で移動させていたが、これに限定されることはない。例えば、ワイパモータ18として「運転席側ワイパモータ」と「助手席側ワイパモータ」とを備え、運転席側ワイパモータの回転によって運転席側ワイパブレード30を上反転位置P1Dと下反転位置P2Dとの間で移動させ、助手席側ワイパモータの回転によって助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pと下反転位置P2Pとの間で移動させる構造でもよい。
なお、本実施の形態では、出力軸32の所定回転角度における中間角度付近までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を伸長させ、中間角度付近から所定回転角度までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を縮小させる制御を行ったが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに向かって払拭する際(往動払拭時)に、助手席側ワイパアーム24が徐々に伸長するように制御してもよい。
なお、本実施の形態では、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度と伸縮機構120の可動子126の移動量とを用いた実施の形態を説明したが、これに代えて出力軸32の回転位置と可動子126の位置とを用いたものとしてもよい。
[第2の実施の形態]
上述の第1の実施の形態では、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲の変更は、払拭範囲Z1から払拭範囲Z2に変更することに限られていた。本実施の形態では、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を払拭範囲Z1と払拭範囲Z2との間で段階的に変更する。払拭範囲Z1から払拭範囲Z2へ、段階的に払拭範囲を拡大することにより、ウィンドシールドガラス1上の着雪を徐々に削り取ることが可能になる。便宜上、本実施の形態では、払拭範囲を段階的に拡大する制御を、着雪除去の制御と呼称する。
以下、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置200の制御について図面を参照して説明する。車両用ワイパ装置200の基本構成は、第1の実施の形態と同様なので、第1の実施の形態と共通する構成には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
図8は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置200における、着雪除去の制御で用いる伸縮機構作動量マップの一態様を示した説明図である。図8には、助手席側ワイパアーム24を最大に伸長させる場合(拡大率100%の場合)の出力軸回転角度θAに対する伸縮機構作動量MVを定めた曲線190と、助手席側ワイパアーム24を伸長させない場合(拡大率0%の場合)の出力軸回転角度θAに対する伸縮機構作動量MVを定めた直線194とが記されている。
また、図8には、直線194と曲線190との間に曲線196A、196B、196Cがあり、拡大率0%から拡大率100%の間の拡大率を補間する。図8では、直線194と曲線190との間に曲線196A、196B、196Cの3本の曲線を設定したが、拡大率0%から拡大率100%の間の拡大率を補間する曲線の本数は1以上の任意である。また、曲線196A、196B、196C等の各曲線が担う拡大率も任意である。曲線の具体的な本数、各曲線が担う拡大率は、例えば、実機を用いた実験を通じて決定する。
図9は、図8に示した伸縮機構作動量マップを用いた場合の助手席側ワイパアーム24の動作の一態様を示した説明図である。図9において、払拭範囲Z1は、図8の直線194を用いた場合の助手席側ワイパブレード28の払拭範囲であり、払拭範囲Z2は、図8の曲線190を用いた場合の助手席側ワイパブレード28の払拭範囲である。
また、図9において、払拭範囲Z3は、図8の曲線196Aを、払拭範囲Z4は、図8の曲線196Bを、払拭範囲Z5は、図8の曲線196Cを、各々用いた場合の払拭範囲である。
本実施の形態では、ウィンドシールドガラス1の着雪が拡大払拭時の助手席側ワイパブレード28の動作を阻害するおそれがある場合、又は実際に動作が阻害された場合に、使用する伸縮機構作動量マップを、曲線196Aから196B、196C、190へ、段階的に変更することにより、ウィンドシールドガラス1の着雪を徐々に削り取る。
着雪が拡大払拭時の助手席側ワイパブレード28の動作を阻害するおそれがある場合か否かは、ユーザによる目視の判断、又は車載カメラ94によって撮影された画像データに基づく判定による。
例えば、前述の変更モードスイッチとは別に、着雪除去スイッチを設け、ユーザがウィンドシールドガラス1の着雪の状況から、拡大率を段階的に変更して着雪を徐々に削り取る着雪除去処理が必要だと判断した場合に、着雪除去スイッチを操作する。着雪除去スイッチが操作された結果、図9に示したように、拡大率を段階的に変更して着雪を徐々に削り取る着雪除去処理が実行される。
また、車載カメラ94によって撮影された車室内からのウィンドシールドガラス1の上部の画像データから着雪の存在を示す画素が所定数以上検出された場合に、着雪が拡大払拭時の助手席側ワイパブレード28の動作を阻害するおそれがある場合と判定する。着雪の存在を示す画素が所定数以上検出された場合とは、例えば、着雪を示す白色の画素値を示す画素が所定数以上検出された場合に、ウィンドシールドガラス1の広い範囲に着雪が生じていると判断できる。
着雪により助手席側ワイパブレード28の拡大払拭動作が実際に阻害された場合は、ワイパモータ18及び伸縮機構120の少なくともいずれか1つが過負荷になって、ワイパモータ18の回転及び伸縮機構120の作動の少なくともいずれか1つが停止した場合等である。本実施の形態では、ワイパモータ18の電流値、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度及びその回転速度に基づいて、ワイパモータ18が過負荷で停止したか否かを判定する。
また、本実施の形態では、伸縮機構120の電流値、伸縮機構120の可動子126の移動量及びその移動速度に基づいて、伸縮機構120が過負荷で停止したか否かを判定する。
例えば、ワイパモータ18の電流値が所定値以上で、絶対角センサ114で検出された出力軸32の回転角度が0°(下反転位置P2P相当)及び所定回転角度θ1(上反転位置P1P相当)のいずれでもない場合で、かつ絶対角センサ114で検出された出力軸32の回転角度の単位時間での変化量が閾値以下の場合には、ワイパモータ18が過負荷により停止したと判定できる。
また、伸縮機構120の電流値が所定値以上で、移動検出センサ118で検出された可動子126の移動量が0(上反転位置P1P及び下反転位置P2P相当)及び所定作動量MV2(中間位置相当)のいずれでもない場合で、かつ移動検出センサ118で検出された可動子126の移動量の単位時間での変化量が閾値以下の場合には、伸縮機構120が過負荷により停止したと判定できる。
本実施の形態では、ウィンドシールドガラス1の着雪が拡大払拭時の助手席側ワイパブレード28の動作を阻害するおそれがある場合、又は実際に動作が阻害された場合には、拡大率を段階的に変更することにより、払拭範囲の拡縮量を段階的に大きくして着雪を徐々に削り取る着雪除去処理を実行する。拡大率の段階的な変更には、いくつかの態様がある。例えば、助手席側ワイパブレード28を下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに払拭動作させる往動時に拡大払拭を行い、助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pから下反転位置P2Pに払拭動作させる復動時に通常の払拭動作を行う場合は、以下のように拡大率を変更する。着雪除去処理開始直後の往動時は曲線196Aを用いて拡大払拭を行い、復動時には直線194を用いて通常の払拭動作(通常払拭)を行う。曲線196Aを使用した拡大払拭は、1回以上の所定回数実行し、所定回数実行後の次の往動時には、曲線196Bを使用した拡大払拭を所定回数実行する。以後、往動時に曲線196Cを使用した拡大払拭を所定回数実行した後、往動時に曲線190を使用した拡大率100%の拡大払拭を実行する。
また、復動時に拡大払拭を行い、往動時に通常の払拭動作を行う場合は、以下のように拡大率を変更する。着雪除去処理開始直後の復動時は曲線196Aを用いて拡大払拭を行い、往動時には直線194を用いて通常の払拭動作(通常払拭)を行う。曲線196Aを使用した拡大払拭は、1回以上の所定回数実行し、所定回数実行後の次の復動時には、曲線196Bを使用した拡大払拭を所定回数実行する。以後、曲線196Cを使用した拡大払拭を所定回数実行した後、曲線190を使用した拡大率100%の拡大払拭を実行する。
往動時と復動時とで拡大払拭を行うようにしてもよい。例えば、着雪除去処理開始直後の往動時と復動時とで曲線196Aを用いた拡大払拭を各々1回以上の所定回数実行し、後続する往動時と復動時とで曲線196Bを使用した拡大払拭を所定回数実行する。以後、復動時に曲線196Cを使用した拡大払拭を往動時と復動時とで各々所定回数実行した後、復動時に曲線190を使用した拡大率100%の拡大払拭を実行する。
又は、着雪除去処理開始直後の往動時は曲線196Aを用いて拡大払拭を行い、後続する復動時は曲線196Bを用いて拡大払拭を行い、後続する往動時は曲線196Cを使用した拡大払拭を行い、後続する復動時には曲線190を使用した拡大率100%の拡大払拭を実行してもよい。
上記いずれの場合も、曲線190を使用した拡大率100%の拡大払拭を1回以上の所定回数実行した後に、着雪除去処理を終了する。
図10は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置200における、着雪除去の制御で用いる伸縮機構作動量マップの他の態様を示した説明図である。図10に示したように、曲線198は、2つの反転位置(上反転位置P1P及び下反転位置P2P)の間にて、拡大率0%の直線194と拡大率100%の曲線190との間で振動するように伸縮機構作動量MVを周期的に変化させている。図11は、図10に示した伸縮機構作動量マップの曲線198を用いた場合の助手席側ワイパアーム24の動作の一態様を示した説明図である。拡大率0%の直線194と拡大率100%の曲線190との間で振動するように伸縮機構作動量MVを周期的に変化させる曲線198を用いて伸縮機構120の可動子126の移動量を制御することにより、払拭範囲の拡縮量は周期的に変化し、助手席側ワイパブレード28の先端部は、軌跡Z6のようにジグザグ又は蛇行して動く。助手席側ワイパブレード28をジグザグ又は蛇行させて払拭させることにより、ウィンドシールドガラス1の着雪を助手席側ワイパブレード28の先端部で突き崩すことが可能になる。
図12は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置200における着雪除去制御の一例を示したフローチャートである。ステップ250では、環境情報を取得する。環境情報は、着雪除去スイッチからの入力信号、車載カメラ94によって取得した画像データ、ワイパモータ18と伸縮機構120の各々の電流値、出力軸32の回転角度及び回転速度、並びに伸縮機構120の移動量及び移動速度である。
ステップ252では、着雪除去の要否が判定される。前述のように、車載カメラ94で取得した画像データから着雪が検出された場合、又はワイパモータ18が過負荷になった場合は肯定判定をする。また、ユーザが着雪除去スイッチをオンにした場合も、肯定判定をする。
ステップ252で肯定判定の場合には、前述のように、徐々に拡大率を変化させるか、助手席側ワイパブレード28をジグザグに払拭動作させる着雪除去払拭を実行して処理をリターンする。ステップ252で否定判定の場合には、処理をリターンする。
本実施の形態では、1以上の所定回数の払拭動作毎に助手席側ワイパブレード28の払拭範囲の拡縮量を段階的に大きくして着雪を削り取ることにより、ウィンドシールドガラス1の着雪を除去することができる。また、本実施の形態では、助手席側ワイパブレード28をジグザグに払拭動作させることにより、ウィンドシールドガラス1の着雪を助手席側ワイパブレード28の先端部で突き崩し、その結果、ウィンドシールドガラス1の着雪を払拭により排除することができる。
以上説明したように、本実施の形態では、払拭範囲の拡縮量を変化させることにより、ウィンドシールドガラス1の着雪を払拭により排除することができる。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32が正逆(往復)回転可能に制御されていたが、これに限定されることはない。例えば、出力軸32が一方向に回転するものでもよい。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32の回転により、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1D、P1Pと下反転位置P2D、P2Pとの間で移動させていたが、これに限定されることはない。例えば、ワイパモータ18として「運転席側ワイパモータ」と「助手席側ワイパモータ」とを備え、運転席側ワイパモータの回転によって運転席側ワイパブレード30を上反転位置P1Dと下反転位置P2Dとの間で移動させ、助手席側ワイパモータの回転によって助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pと下反転位置P2Pとの間で移動させる構造でもよい。
なお、本実施の形態では、運転席側ワイパブレード30と助手席側ワイパブレード28とが下反転位置P2D、P2Pにて車幅方向に重ならない構造になっていたが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28の運転席側ワイパブレード30側を長く設定してもよい。換言すると、助手席側ワイパブレード28の運転席側ワイパブレード30側が、当該運転席側ワイパブレード30の助手席側ワイパブレード28側と重なるように助手席側ワイパブレード28の長さを設定してもよい。これにより、往復動時に払拭範囲Z2を払拭する際に、ウィンドシールドガラスの中央下側に残る払拭不能領域を少なくすることができる。
なお、本実施の形態では、出力軸32の所定回転角度における中間角度付近までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を伸長させ、中間角度付近から所定回転角度までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を縮小させる制御を行ったが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに向かって払拭する際(往動払拭時)に、助手席側ワイパアーム24が徐々に伸長するように制御してもよい。
なお、本実施の形態では、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度と伸縮機構120の可動子126の移動量とを用いた実施の形態を説明したが、これに代えて出力軸32の回転位置と可動子126の位置とを用いたものとしてもよい。
なお、本実施の形態では、伸縮機構120は動作せずワイパモータ18のみが動作する場合を通常の払拭動作(通常払拭)としたが、これに限定されることはない。例えば、可動子126を移動(助手席側ワイパブレード28によるウィンドシールドガラス1の払拭範囲を若干拡大)させたものを通常払拭としてもよい。
なお、本実施の形態では、拡大率0%の直線194と拡大率100%の曲線190との間で振動するように伸縮機構作動量MVを周期的に変化させているが、これに限定されることはない。例えば、拡大率0%と拡大率80%との間で振動するように伸縮機構作動量MVを周期的に変化させてもよい。
なお、本実施の形態では、伸縮機構作動量MVを周期的に変化させているが、これに限定されることはない。また、助手席側ワイパブレード28の先端部は、ジグザグに動くとしたが、これに限定されることもない。
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、助手席側ワイパブレード28によるウィンドシールドガラス1の払拭範囲が、3段階で変更される。具体的には、上述の払拭範囲Z1が払拭される「通常払拭モード」と、図13に示す払拭範囲Z14が払拭される「第1拡大払拭モード」と、図13に示す払拭範囲Z15が払拭される「第2拡大払拭モード」と、の間で、払拭範囲が変更可能に構成されている。
以下、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置300について図面を参照して説明する。以下の説明では、前述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態と異なる構成について説明し、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図13は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置300の一例を示した概略図である。図13に示したように、運転席側ワイパアーム326の先端部には、一対のウォッシャノズル340A、340Bが設けられている。このウォッシャノズル340Aは、運転席側ワイパアーム326に対して往動側に配置され、ウォッシャノズル340Bは、運転席側ワイパアーム326に対して復動側に配置されている。また、助手席側ワイパアーム324の先端部には、一対のウォッシャノズル342A、342Bが設けられている。このウォッシャノズル342Aは、助手席側ワイパアーム324に対して往動側に配置され、ウォッシャノズル342Bは、助手席側ワイパアーム324に対して復動側に配置されている。
ウォッシャノズル340A、342Bには、運転席側ワイパアーム326内、助手席側ワイパアーム324内に配策された往動用ホース341の一端部が接続されており、往動用ホース341の他端部は、ウォッシャタンク344に設けられたウォッシャポンプ345に接続されている。詳説すると、往動用ホース341が、該往動用ホース341の中間において分岐部により分岐されて、往動用ホース341の一端側の部分が、D往動用ホース341A及びP往動用ホース341Bに分割されている。そして、往動用ホース341の一端側をなすD往動用ホース341A及びP往動用ホース341Bがウォッシャノズル340A、342Bにそれぞれ接続されており、往動用ホース341の他端側がウォッシャポンプ345に接続されている。
一方、ウォッシャノズル340B、342Bには、運転席側ワイパアーム326内、助手席側ワイパアーム324内に配策された復動用ホース343の一端部が接続されており、復動用ホース343の他端部は、ウォッシャタンク344に設けられたウォッシャポンプ345に接続されている。詳説すると、復動用ホース343が、該復動用ホース343の中間において分岐部により分岐されて、復動用ホース343の一端側の部分が、D復動用ホース343A及びP復動用ホース343Bに分割されている。そして、復動用ホース343の一端側をなすD復動用ホース343A及びP復動用ホース343Bがウォッシャノズル340B、342Bにそれぞれ接続されており、復動用ホース343の他端側がウォッシャポンプ345に接続されている。そして、ウォッシャポンプ345には、制御回路52が電気的に接続されており、制御回路52の制御によってウォッシャポンプ345が作動するように構成されている。
具体的には、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324の往動時に、ウォッシャポンプ345が作動(正回転)して、往動用ホース341(D往動用ホース341A及びP往動用ホース341B)を介してウォッシャノズル340A、342Bからウォッシャタンク344内の洗浄液が運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して往動側へ噴射されるようになっている。一方、運転席側ワイパアーム326の復動時に、ウォッシャポンプ345が作動(逆回転)して、復動用ホース343(D復動用ホース343A及びP復動用ホース343B)を介してウォッシャノズル340B、342Bからウォッシャタンク344内の洗浄液が運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して復動側へ噴射されるようになっている。すなわち、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して払拭進行方向側へ洗浄液が噴射される構成となっている。
次に、ワイパモータ18及び伸縮機構120の駆動(作動)を制御する制御回路52について説明する。図13に示されるように、制御回路52は、ワイパモータ18及び伸縮機構120を駆動制御する駆動回路56を備えている。そして、駆動回路56が、ワイパモータ18をPWM制御することで、ワイパモータ18(出力軸32)が正回転又は逆回転されるようになっている。また、駆動回路56が、伸縮機構120をPWM制御することで、伸縮機構120(可動子126)が所定方向または所定方向の逆方向に移動するようになっている。
また、制御回路52は、ウィンドシールドガラス1上における助手席側ワイパブレード28の位置に応じて、伸縮機構120の作動を制御するようになっている。具体的には、ワイパモータ18の出力軸32の末端に設けられた絶対角センサによって検出されたワイパモータ18の出力軸32の回動角度から、ウィンドシールドガラス1上における助手席側ワイパブレード28の位置を制御回路52が算出する。そして、制御回路52が、算出した位置に応じて、伸縮機構120の作動を制御する。
さらに、制御回路52には、車両のエンジン等を制御する車両ECU90が電気的に接続されており、車両ECU90には、ワイパスイッチ356、ウォッシャスイッチ358、「車両電源スイッチ」としてのイグニッションスイッチ360(以下、「IGスイッチ360」という)、及びシフト装置362が、電気的に接続されている。
ワイパスイッチ356は、通常払拭モードと第1拡大払拭モードとを切替可能にするスイッチとして構成されている。一例としては、図16に示すように、変更モードスイッチ356Aを含んで構成されている。そして、制御回路52は、操作されたワイパスイッチ356から入力される信号に基づいて、ワイパモータ18及び伸縮機構120を作動制御するようになっている。具体的には、通常払拭モードでは、制御回路52が、ワイパスイッチ356のオン信号に基づいて、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324を低速で回動させる低速モード、又は運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324を高速で回動させる高速モード、に作動させるように、ワイパモータ18を作動制御する。
また、第1拡大払拭モードでは、ワイパスイッチ356(変更モードスイッチ356A)のオン信号に基づいて、助手席側ワイパアーム324の往動時に、助手席側ワイパブレード28が払拭範囲Z2を払拭するように、助手席側ワイパアーム324の復動時に、助手席側ワイパブレード28が払拭範囲Z1を払拭するように、制御回路52が伸縮機構120を制御する。なお、第1拡大払拭モードでは、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が、低速モードと同じ速度で回動するように、ワイパモータ18が作動する設定になっている。
また、制御回路52は、車両ECU90を介してウォッシャスイッチ358から入力される信号に基づいて、ワイパモータ18、伸縮機構120、及びウォッシャポンプ345をそれぞれ作動制御するようになっている。具体的には、ウォッシャスイッチ358は、前述のワイパスイッチ356を備えた操作手段としてのレバー356Bに一体に設けられ、当該レバー356Bを手前に2段階引く時には、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が第1拡大払拭モードで作動するように、ワイパモータ18及び伸縮機構120が制御回路52によって制御される。すなわち、ウォッシャスイッチ358の操作時では、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が低速モードと同じ速度で回動されるように、ワイパモータ18が制御回路52によって制御されるようになっている。
レバー356Bを手前に2段階引くことで、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が第1拡大払拭モードで作動しつつ、洗浄液を噴射するため、一つの操作(動作)で助手席側ワイパブレード28による払拭範囲の拡大及び洗浄液の噴射ができ、操作性を向上させることができる。
また、制御回路52がウォッシャポンプ345を駆動させて、ウォッシャタンク344内の洗浄液がウォッシャノズル340A(340B)及びウォッシャノズル342A(342B)から噴射される。これにより、ウォッシャスイッチ358が操作されることで、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が第1拡大払拭モードで作動しつつ、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して払拭進行方向側に洗浄液が噴射されるようになっている。
なお、レバー356Bを手前に1段階引く時には、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が通常払拭モードで作動するように、ワイパモータ18(及び伸縮機構120)が制御回路52によって制御される。また、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が通常払拭モードで作動しつつ、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して払拭進行方向側に洗浄液が噴射されるようになっている。
さらに、本実施の形態では、車両ECU90を介してIGスイッチ360及びシフト装置362から入力される信号に基づいて、ワイパモータ18、伸縮機構120、及びウォッシャポンプ345をそれぞれ作動制御するようになっている。具体的には、シフト装置362のシフト位置信号(具体的には、シフト位置がパーキング位置に配置されている信号)が、車両ECU90から制御回路52へ入力され、且つ、IGスイッチ360のオン信号が制御回路52へ入力されたときに、ワイパモータ18、伸縮機構120、及びウォッシャポンプ345をそれぞれ作動制御する。すなわち、車両の走行開始前に、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を拡大した状態で、ウィンドシールドガラス1を払拭するようになっている。以下、この作動モードを、便宜上、「走行前変更払拭モード」という。
そして、走行前変更払拭モードでは、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が第2拡大払拭モードで作動するように、ワイパモータ18及び伸縮機構120が制御回路52によって制御される。例えば、助手席側ワイパアーム324の往動時に、助手席側ワイパブレード28が払拭範囲Z3を払拭するように、助手席側ワイパアーム324の復動時に、助手席側ワイパブレード28が払拭範囲Z1を払拭するように、制御回路52がワイパモータ18及び伸縮機構120を制御する。
さらに、走行前変更払拭モードでは、制御回路52がウォッシャポンプ345を駆動させて、ウォッシャタンク344内の洗浄液がウォッシャノズル340A(340B)及びウォッシャノズル342A(342B)から噴射される。これにより、走行前変更払拭モードにおいても、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28の払拭時に、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して払拭進行方向側に洗浄液が噴射されるようになっている。また、走行前変更払拭モードでは、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が、低速モードよりも低速で回動するように、ワイパモータ18が制御回路52によって制御されるようになっている。
また、本実施の形態では、車両の走行開始前に、制御回路52の制御によって走行前変更払拭モードが実行される。以下、走行前変更払拭モードについて説明する。図14に示されるように、走行前変更払拭モードでは、制御回路52が、シフト装置362からの信号に基づいて、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置されているか否かを判別する(ステップ901)。そして、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置されている場合には、ステップ902に移行する。
ステップ902では、制御回路52がIGスイッチ360からの信号に基づいて、IGスイッチ360がオンにされたか否かを判別する。すなわち、車両のエンジンが始動したか否かを判別する。そして、ステップ902において、IGスイッチ360がオンであることを制御回路52が判別すると、制御回路52が車両の走行開始前であると判断して、ステップ903で走行前変更払拭モードを実行する。
走行前変更払拭モードでは、制御回路52は、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28を第2拡大払拭モードで作動させるように、ワイパモータ18及び伸縮機構120を作動制御する、具体的には、助手席側ワイパアーム324の往動時に、助手席側ワイパブレード28が払拭範囲Z3を払拭するように、助手席側ワイパアーム324の復動時に、助手席側ワイパブレード28が払拭範囲Z1を払拭するように、制御回路52が伸縮機構120を制御する。すなわち、走行前変更払拭モードでは、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28を第1拡大払拭モードで作動させる場合と比べて、伸縮機構120の可動子126の移動量を大きくさせて、伸縮機構120を作動させる。これにより、走行前変更払拭モードでは、ウィンドシールドガラス1の助手席側が一層広く払拭される。
また、走行前変更払拭モードでは、制御回路52がウォッシャポンプ345を作動させて、ウォッシャタンク344内の洗浄液がウォッシャノズル340A(340B)及びウォッシャノズル342A(342B)から噴射される。具体的には、ウォッシャノズル340A(340B)及びウォッシャノズル342A(342B)から運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して払拭進行方向側に洗浄液が噴射される。そして、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324の往復回動が所定回数に達した後に、走行前変更払拭モードが終了される。
このように、本実施の形態では、車両の走行開始前に、制御回路52がワイパモータ18及び伸縮機構120を作動させて、走行前変更払拭モードが実行される。これにより、車両の走行開始前に、ウィンドシールドガラス1に対する払拭面積を拡大して、ウィンドシールドガラス1を払拭することができる。このため、車両の走行前に、走行前変更払拭モードが自動的に実行されるため、払拭範囲を拡大する車両用ワイパ装置の利便性を向上することができる。
また、走行前変更払拭モードが実行されるときには、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が低速モードよりも低速で回動される。このため、ワイパモータ18及び伸縮機構120の大型化を抑制しつつ、ウィンドシールドガラス1に対する払拭範囲を一層大きくすることができる。すなわち、第1拡大払拭モードでは、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が低速モードで回動される。この低速モードは、車両の走行中にウィンドシールドガラス1を払拭するため、低速モードにおける運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324の回動が、所定の回動速度以上に設定されている。
一方、走行前変更払拭モード(すなわち、第1拡大払拭モードよりも払拭範囲を拡大する第2拡大払拭モード)では、第1拡大払拭モードよりも、助手席側ワイパブレード28による払拭距離(下反転位置P2Pから上反転位置P1Pまでの距離)が長くなる。このため、走行前変更払拭モード(すなわち、第2拡大払拭モード)における運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324の回動速度を、第1拡大払拭モードと同じ回動速度にした場合には、ワイパモータ18及び伸縮機構120の出力が大きくなる。これにより、ワイパモータ18及び伸縮機構120が大型化する可能性がある。これに対して、本実施の形態では、走行前変更払拭モードが実行されるときには、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が低速モードよりも低速で回動される。このため、第1拡大払拭モードよりも払拭領域を拡大しても、ワイパモータ18及び伸縮機構120の出力を大きくする必要がなくなる。これにより、ワイパモータ18及び伸縮機構120の大型化を抑制しつつ、ウィンドシールドガラス1に対する払拭範囲を一層大きくすることができる。
また、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324が低速モードよりも低速で回動されることで、ウィンドシールドガラス1上の払拭対象物を良好に払拭することができる。すなわち、運転席側ワイパアーム326及び助手席側ワイパアーム324の回動速度を低速モードよりも低速に設定することで、洗浄液が払拭対象物に到達してから、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28によって払拭対象物が払拭されるまでの時間を比較的長く設定することができる。これにより、洗浄液を払拭対象物に十分に浸透させた後に、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28によって払拭対象物を払拭することができる。したがって、ウィンドシールドガラス1上の払拭対象物を良好に払拭することができる。
また、運転席側ワイパアーム326には、ウォッシャノズル340A、340Bが設けられており、助手席側ワイパアーム324には、ウォッシャノズル342A、342Bが設けられている。さらに、走行前変更払拭モードでは、ウォッシャタンク344内の洗浄液がウォッシャノズル340A(340B)及びウォッシャノズル342A(342B)から運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28に対して払拭進行方向側に洗浄液が噴射される。このため、助手席側ワイパブレード28の払拭拡大動作に伴って、洗浄液をウィンドシールドガラス1の上端側へ行き渡らせることができる。これにより、ウィンドシールドガラス1をより良好に払拭することができる。
また、助手席側ワイパアーム324にウォッシャノズル342A、342Bが設けられていることで、ウォッシャノズル342A(342B)によって、ウィンドシールドガラス1の助手席側の上角部付近まで洗浄液を供給することができる。これにより、例えば、ウィンドシールドガラス1上の液体が凍結した場合でも、洗浄液を凍結した部分に供給して、凍結を解除することができる。これにより、運転者に対する視界不良を早期に解消することができる。
なお、本実施の形態では、走行前変更払拭モードが車両の走行開始前毎に実行されるようになっているが、走行前変更払拭モードの実行を選択できるスイッチを別途設けてもよい。この場合には、当該スイッチがオンにされている状態で、且つ車両の走行開始前に、走行前変更払拭モードが実行される。
また、本実施の形態では、ウォッシャノズル340A、340Bが、運転席側ワイパアーム326に設けられており、ウォッシャノズル342A、342Bが、助手席側ワイパアーム324に設けられている。これに代えて、ウォッシャノズル340A、340Bを、運転席側ワイパブレード30に設けてもよいし、ウォッシャノズル342A、342Bを、助手席側ワイパブレード28に設けてもよい。また、ウォッシャノズル342A、342Bの何れか一方を運転席側ワイパブレード30に設けてもよいし、ウォッシャノズル342A、342Bの何れか一方を助手席側ワイパブレード28に設けてもよい。
また、本実施の形態では、ウォッシャノズル340A、340Bが、運転席側ワイパアーム326に設けられており、ウォッシャノズル342A、342Bが、助手席側ワイパアーム324に設けられている。これに代えて、ウォッシャノズルを車両のフードに設けてもよい。この場合には、ウォッシャノズルの個数は4つに限定されるものではなく、例えば、ウォッシャノズルの個数を2つにしてもよい。
また、本実施の形態では、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置され、且つIGスイッチ360がONであることを制御回路52が判別すると、制御回路52が走行前変更払拭モードを実行しているが、走行前変更払拭モードの実行タイミングはこれに限らない。例えば、車両の速度が「0」であること(車両停止状態)を制御回路52が判別し、且つIGスイッチ360がONであること制御回路52が判別したときに、制御回路52によって走行前変更払拭モードを実行してもよい。
また、例えば、シフト装置362のシフト位置にパーキング位置がないマニュアル車の場合では、制御回路52が、車両のサイドブレーキをかけた状態であることを判別し、且つIGスイッチ360がONであることを判別したときに、制御回路52によって走行前変更払拭モードを実行してもよい。このとき、シフト装置362のシフト位置は、停車中の道路の状態(傾斜等)に応じて、ニュートラル位置、1速位置又はリバース位置に配置される。そして、サイドブレーキをかけた状態を車両停止状態として制御回路52が判断している。
また、例えば、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置され、且つ車両の「車両電源スイッチ」としてのアクセサリスイッチ364(図13参照)がONであることを制御回路52が判別したときに、制御回路52によって走行前変更払拭モードを実行させてもよい。この場合には、図13に示されるように、アクセサリスイッチ364が、車両ECU90に電気的に接続されている。また、このとき、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置される状態を車両停止状態として制御回路52が判断している。
また、例えば、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置され、且つ車両のドアの開閉を検知するドア開閉スイッチ366(図13参照)がONになったことを制御回路52が判別したときに、制御回路52によって走行前変更払拭モードを実行させてもよい。この場合には、図13に示されるように、ドア開閉スイッチ366が、車両ECU90に電気的に接続されており、運転席側のドアが開けられることで、ドア開閉スイッチがONになるように構成されている。
また、例えば、シフト装置362のシフト位置がパーキング位置に配置され、且つ外部端末370(例えば、スマートフォン等の外部携帯端末であり、図13参照)から制御回路52へ走行前変更払拭モードを実行させる信号が入力されたことを制御回路52が判別したときに、制御回路52によって走行前変更払拭モードを実行させてもよい。この場合には、図13に示されるように、車両には外部端末370からの信号を受信する外部信号受信機368が備えられており、該外部信号受信機368が車両ECU90に電気的に接続されている。
また、本実施の形態では、助手席側ワイパブレード28の払拭進行方向側のノズル(ウォッシャノズル342Aとウォッシャノズル342Bとの一方)から洗浄液を噴射する構成であるが、往動時に助手席側ワイパアーム324が備えるウォッシャノズル342A及びウォッシャノズル342Bから洗浄液を噴射してもよい。また、復動時に助手席側ワイパアーム324が備えるウォッシャノズル342A及びウォッシャノズル342Bから洗浄液を噴射してもよい。この場合には、ウォッシャポンプ345の構成の簡素化を図ることができる。また、同様に運転席側ワイパブレード30が往復動する時に、ウォッシャノズル340A及びウォッシャノズル340Bから洗浄液を噴射してもよい。
また、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32が正逆(往復)回転可能に制御されていたが、これに限定されることはない。例えば、出力軸32が一方向に回転するものでもよい。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32の回転により、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1D、P1Pと下反転位置P2D、P2Pとの間で移動させていたが、これに限定されることはない。例えば、ワイパモータ18として「運転席側ワイパモータ」と「助手席側ワイパモータ」とを備え、運転席側ワイパモータの回転によって運転席側ワイパブレード30を上反転位置P1Dと下反転位置P2Dとの間で移動させ、助手席側ワイパモータの回転によって助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pと下反転位置P2Pとの間で移動させる構造でもよい。
なお、本実施の形態では、運転席側ワイパブレード30と助手席側ワイパブレード28とが下反転位置P2D、P2Pにて車幅方向に重ならない構造になっていたが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28の運転席側ワイパブレード30側を長く設定してもよい。換言すると、助手席側ワイパブレード28の運転席側ワイパブレード30側が、当該運転席側ワイパブレード30の助手席側ワイパブレード28側と重なるように助手席側ワイパブレード28の長さを設定してもよい。これにより、往復動時に払拭範囲Z2を払拭する際に、ウィンドシールドガラスの中央下側に残る払拭不能領域を少なくすることができる。
なお、本実施の形態では、出力軸32の所定回転角度における中間角度付近までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を伸長させ、中間角度付近から所定回転角度までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を縮小させる制御を行ったが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに向かって払拭する際(往動払拭時)に、助手席側ワイパアーム24が徐々に伸長するように制御してもよい。
なお、上記実施の形態では、レバー356Bを手前に1段階及び2段階引くことで、洗浄液を噴射しながら払拭する払拭範囲を切り替えていたが、これに限定されることはない。例えば、レバー356Bを手前に引くことで、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が通常モードで作動しつつ、洗浄液を噴射し、変更モードスイッチ356Aを押しつつレバー356Bを手前に引くことで、助手席側ワイパアーム324及び助手席側ワイパブレード28が第1拡大払拭モードで作動しつつ、洗浄液を噴射するようにしてもよい。このようにすると、ウォッシャスイッチ358の構造の複雑化を抑制することができる。
[第3の実施の形態の変形例]
続いて本発明の第3の実施の形態の変形例について説明する。本変形例に係る車両用ワイパ装置は、第1の実施の形態に係る車両用ワイパ装置100のように車速センサ、レインセンサ、車載カメラ及び外気温センサを備えるが、その他の構成は図13に示した第3の実施の形態に係る車両用ワイパ装置300と基本的に同一なので、詳細な説明は省略する。
車速センサ(図示せず)は、車両の車輪の回転数を検知し、当該回転数を示す信号を出力するセンサである。車両ECU90は、車速センサが出力した信号と車輪の周長から車速を算出する。
レインセンサ(図示せず)は、例えば、ウィンドシールドガラス1の車室内側に設けられる光学センサの一種であり、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を検知する。レインセンサは、一例として、赤外線の発光素子であるLED、受光素子であるフォトダイオード、赤外線の光路を形成するレンズ及び制御回路を含んでいる。LEDから放射された赤外線はウィンドシールドガラス1で全反射するが、ウィンドシールドガラス1の表面に水滴が存在すると赤外線の一部が水滴を透過して外部に放出されるため、ウィンドシールドガラス1での反射量が減少する。その結果、受光素子であるフォトダイオードに入る光量が減少する。かかる光量の減少に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を検知する。
車載カメラ(図示せず)は、車両前方を撮影し、動画像のデータを取得する装置である。車両ECU90は、車載カメラで取得した動画像のデータの輝度から、車両前方の明るさを算出できる。また、外気温センサ(図示せず)は、車外の気温を検知するセンサである。
本実施の形態は、図14のステップ903に示した走行前変更払拭モードで、レインセンサ及び車載カメラによってウィンドシールドガラス1上の付着物を検知し、当該付着物に応じた払拭を行うようにワイパモータ18及び伸縮機構120を制御する。
以下、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置の制御について説明する。図15は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置における、ウィンドシールドガラス1の付着物に応じて往動時及び復動時のいずれかに拡大払拭を行う制御をする払拭モード制御処理の一例を示したフローチャートである。
ステップ300では、車両が停止中か否かを判定する。ステップ300では、一例として車速センサによって検出された車両の速度が0の場合に、肯定判定をする。ステップ300で肯定判定の場合には手順をステップ304に移行させ、ステップ300で否定判定の場合には、手順をステップ302に移行させて走行前変更払拭モードをキャンセルして処理をリターンする。本実施の形態では、走行前変更払拭モードで作動中であっても車速センサによって検知した車両速度が0より大きくなった場合に(車両が停止中ではなくなった場合)、走行前変更払拭モードをキャンセルする。また、本実施の形態では、図15のステップ300に示した車両停止の判定ステップは、図15に示したフローのどこにあってもよい。走行前変更払拭モードをキャンセルした後は、払拭範囲Z1を通常の払拭速度(低速)で少なくとも1回、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに到達するまで払拭する。
ステップ304ではレインセンサからの信号を取得し、ステップ306では車載カメラから画像データを取得する。さらにステップ308では外気温センサから、車外の気温を示す信号を取得する。
ステップ310では、レインセンサが、雨滴等の液体又は雪等の固体を検知したか否かを判定する。前述のように、レインセンサは、車室側から車外に発した赤外線の反射量の変化によって、ウィンドシールドガラス1上の付着物を検知する。ステップ310では、レインセンサから発せられた赤外線の反射量に何らかの変化があった場合に、ウィンドシールドガラス1の表面に付着物が存在するとして、肯定判定をする。ステップ310で肯定判定の場合には、手順をステップ314に移行させる。ステップ310で否定判定の場合には、ステップ312で往動時に払拭範囲Z2を払拭させる拡大払拭を行い、かつ復動時に払拭範囲Z1を払拭させると共に洗浄液を噴射する通常払拭モードでの動作を行って処理をリターンする。なお、ステップ312の通常払拭モードでは、往動時に払拭範囲Z2を払拭し、復動時にも払拭範囲Z2を払拭してもよい。
ステップ314では、車載カメラから取得した画像データの最暗部の輝度が閾値輝度以上か否かを判定する。ウィンドシールドガラス1表面の付着物が、水滴、雪、霜、霙、融雪剤等の無色又は白色のものであれば、画像データの輝度は最暗部においても概して高めとなる。一方で、付着物が泥であれば、画像データ最暗部の輝度は水滴等の場合よりも低くなる。本実施の形態では、泥と水滴、雪、霜、霙、融雪剤等とを識別できるように、閾値画素を実機試験等を通じて具体的に決定する。
ステップ314で肯定判定の場合には、手順をステップ316に移行させる。ステップ314で否定判定の場合には、手順をステップ320に移行させる。
ステップ316では、外気温センサが検知した車外の気温が閾値温度以上か否かを判定する。閾値温度は、一例として、霜等が発生する4〜5℃である。ステップ316で肯定判定の場合には、ウィンドシールドガラス1表面の付着物は雨滴等の液体であると判定できる。従って、ステップ318では、往動時に払拭範囲Z2を払拭させる拡大払拭を行い、かつ復動時に払拭範囲Z1を払拭させると共に洗浄液を噴射しない雨払拭モードでの動作を行って処理をリターンする。なお、ステップ318の雨払拭モードでは、往動時に払拭範囲Z2を払拭し、復動時にも払拭範囲Z2を払拭してもよい。また、洗浄液を噴射しながら払拭してもよい。
ステップ314で否定判定の場合には付着物は泥であると判定でき、ステップ316で否定判定の場合には気温の低さから付着物は雪、霜、霙、融雪剤等であると判定できる。ステップ314で否定判定の場合も、ステップ316で否定判定の場合も、ウィンドシールドガラス1表面の付着物は固体であると考えられる。従って、ステップ320では、往動時に払拭範囲Z1を払拭させる通常動作を行い、復動時に払拭範囲Z2を払拭させる拡大払拭を行うと共に洗浄液を噴射する雪・泥払拭モードでの動作を行って処理をリターンする。なお。雪払拭モードと泥払拭モードとを分けてもよい。一例として、雪払拭モードでは洗浄液を噴射せず、泥払拭モードでは洗浄液を噴射するようにしてもよい。
なお、すべてのモードで洗浄液を噴射するようにしてもよい。いかなるモードでも洗浄液を噴射する制御を実行することにより、制御フローを図15に示したものよりも単純化でき、制御回路52の演算負荷を軽減できる。
または、ウィンドシールドガラス1上に付着物が存在しない場合及び付着物が雪または泥だった場合にのみ洗浄液を噴射することで、洗浄液の消費量を抑制するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態では、レインセンサ、車載カメラ、外気温センサを併用することにより、ウィンドシールドガラス1表面の付着物が雨滴等の液体か、雪又は泥等の固体であるかを判定している。そして、当該判定に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の付着物に応じて往動時及び復動時のいずれかに拡大払拭を行う制御が可能になる。
ウィンドシールドガラス1表面の付着物を液体である雨滴と識別した場合には往動時に拡大払拭を行い復動時に通常動作を行うことにより、ウィンドシールドガラス1表面の助手席側に雨筋が発生することを防止する。往動時に払拭範囲を拡大した場合には助手席側のウィンドシールドガラス1表面に雨筋が発生する場合があるが、復動時に払拭範囲を拡大させない通常の払拭動作によって、発生した雨筋を払拭し、雨筋を構成していた水分を下反転位置の下方に排除することが可能になるからである。
また、ウィンドシールドガラス1表面の付着物を雪又は泥を含む固体と識別した場合には、往動時に通常動作を行い復動時に拡大払拭を行うことにより、ウィンドシールドガラス1表面の運転席側に雪又は泥等の固体が掃き寄せられることを防止する。往動時には運転席側のウィンドシールドガラス表面及びウィンドシールドガラスの上部表面に雪等の固体が掃き寄せられる場合があるが、復動時に払拭範囲を拡大させる払拭動作によって、掃き寄せられた固体を下反転位置の下方に排除することが可能になるからである。
[第4の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。本実施の形態は、伸縮機構140が助手席側ワイパアーム24のピボット軸42の近くに設けられている点で、第1〜第3の実施の形態と相違するが、その他の構成については、第1〜第3の実施の形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
図17は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置の伸縮機構140の一例を示した概略図である。図17に示したように、本実施の形態の伸縮機構140は、助手席側ワイパアーム24を望遠鏡状に伸縮させる機構であり、一端がピボット軸42に連結され、内部に電磁石列140Aを備えた固定子である外部筒24Bと、永久磁石列140Bを備えた可動子である内部筒24Aと、を含み、ゴム等の弾性体で構成されたシール部材170によって伸縮機構140の内部の機構が保護されている。外部筒24Bの内部に入り込んだ水は、排水孔172を介して外部筒24Bの外に排出される。
永久磁石列140Bは、電磁石列140Aに面した側の磁極が交互に異なるように複数の永久磁石が配置されている。従って、電磁石列140Aが励磁されると、電磁石列140Aの磁界と永久磁石列140Bとの磁界の吸引及び反発による相互作用により、内部筒24Aは、外部筒24Bに対して図17の矢印D方向または矢印E方向に移動する、いわゆる往復運動を行う。
外部筒24B内には、移動検出センサ118が設けられている。移動検出センサ118は、可動子である内部筒24Aの移動に伴って変化する永久磁石列140Bの磁界を検出し、電気信号に変換して制御回路52に出力する。
マイクロコンピュータ58は、第1の実施の形態で説明したように、出力軸32の回転角度から算出した運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置に基づいて、内部筒24Aの移動量を制御することにより、ワイパモータ18と伸縮機構140の各々の動作を同期させる。
以上説明したように、本実施の形態では、伸縮機構140を助手席側ワイパアーム24が搖動する支点であるピボット軸42近くに設けられるので、第1〜第3の実施の形態よりも、助手席側ワイパアーム24の揺動による遠心力が伸縮機構140に作用しにくくなり、伸縮機構140をより安定して動作させることができる。
また、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を払拭する助手席側ワイパブレード28近くに設けられた第1〜第3の実施の形態の伸縮機構120よりも、本実施の形態に係る伸縮機構140は、助手席側ワイパブレード28から離れた位置に設けられるので、内部機構に雨水が侵入するおそれが軽減できる。
以上、第4の実施の形態について説明したが、本願は、上記に限定されるものではなく、上記以外にも、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。例えば、第1の実施の形態と第2の実施の形態と第3の実施の形態と第4の実施の形態とを適宜組み合わせることが可能である。