[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の一例を示した概略図である。図1に示した車両用ワイパ装置100は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられた「ウィンドシールド」としてのウィンドシールドガラス1を払拭するためのものであり、一対のワイパ14、16と、ワイパモータ18と、リンク機構20と、伸縮機構120と、制御回路52と、ウォッシャ装置70と、を備えている。
図1は、右ハンドル車の場合を示しているので、車両の右側(図1の左側)が運転席側、車両の左側(図1の右側)が助手席側である。車両が左ハンドル車の場合には、車両の左側(図1の右側)が運転席側、車両の右側(図1の左側)が助手席側になる。また、車両が左ハンドル車の場合には、車両用ワイパ装置100の構成が左右反対になる。
ワイパモータ18は、出力軸32が所定の回転角度の範囲で正回転及び逆回転することにより、運転席側ワイパアーム26及び助手席側ワイパアーム24の各々をウィンドシールドガラス1上で往復動作させるための駆動源である。本実施形態では、ワイパモータ18が正回転した場合に、運転席側ワイパアーム26は運転席側ワイパブレード30が下反転位置P2Dから上反転位置P1Dを払拭するように動作し、助手席側ワイパアーム24は助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pを払拭するように動作する。また、ワイパモータ18が逆回転した場合には、運転席側ワイパアーム26は運転席側ワイパブレード30が上反転位置P1Dから下反転位置P2Dを払拭するように動作し、助手席側ワイパアーム24は助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pから下反転位置P2Pを払拭するように動作する。
ウィンドシールドガラス1の外縁部は、可視光及び紫外線を遮るため、セラミックス系の黒色顔料が塗布された遮光部1Aとなっている。黒色顔料は、ウィンドシールドガラス1の車室内側の外縁部に塗布された後、所定温度で加熱されることにより溶融し、ウィンドシールドガラス1の車室側表面に定着される。ウィンドシールドガラス1は、外縁部に塗布された接着剤により車体に固定されるが、図1に示したように、紫外線を透過させない遮光部1Aを外縁部に設けることにより、紫外線による当該接着剤の劣化を抑制する。
後述する伸縮機構120が動作しない場合には、ワイパモータ18の出力軸32が所定の回転角度(以下、「所定回転角度」と称する)で正回転及び逆回転することにより、運転席側ワイパブレード30は払拭範囲H1を、助手席側ワイパブレード28は払拭範囲Z1を、各々払拭する。
伸縮機構120は、助手席側ワイパブレード28を、助手席側ワイパアーム24に対して動作させる機構である。伸縮機構120は、助手席側ワイパブレード28を、ピボット軸42を中心とする円弧の半径方向に移動させ、助手席側ワイパアーム24を見かけ上伸長させる。前述のワイパモータ18が動作中に伸縮機構120が動作することにより、助手席側ワイパアーム24は助手席側上方に見かけ上伸長され、助手席側ワイパブレード28は払拭範囲Z2を払拭する。また、伸縮機構120の作動量(伸縮の程度)を変更することにより、助手席側ワイパアーム24が伸長する範囲を変更することが可能となる。例えば、作動量を大きくすれば、助手席側ワイパアーム24が伸長する範囲は大きくなり、作動量を小さくすれば、助手席側ワイパアーム24が伸長する範囲は小さくなる。
ワイパモータ18は、出力軸32の回転方向を正回転及び逆回転に制御可能であると共に、出力軸32の回転速度も制御可能なモータであり、一例としてブラシ付きDCモータ及びブラシレスDCモータのいずれかである。また、伸縮機構120は、後述するように、複数の電磁石及び複数の永久磁石を含む一種のリニアモータである。
ワイパモータ18及び伸縮機構120には、各々の動作を制御するための制御回路52が接続されている。本実施の形態に係る制御回路52は、例えば、ワイパモータ18の出力軸32末端付近に設けられた絶対角センサ114が検知したワイパモータ18の出力軸32の回転方向、回転位置、回転速度及び回転角度に基づいて、ワイパモータ18に印加する電圧のデューティ比を算出する。また、伸縮機構120の固定子側に設けられた移動検出センサ(図示せず)が検知した可動子の移動方向、移動による位置の変化及び移動速度に基づいて、電磁石で構成された固定子に印加する電圧の極性及びデューティ比を算出する。
本実施形態では、ワイパモータ18及び伸縮機構120の各々に印加する電圧を、電源である車載バッテリの電圧(略12V)をスイッチング素子によってオンオフしてパルス状の波形に変調するパルス幅変調(PWM)によって生成する。本実施の形態でデューティ比は、PWMによって生成される電圧の波形の1周期間に対する前述のスイッチング素子がオンになったことで生じる1のパルスの時間の割合である。また、PWMによって生成される電圧の波形の1周期は、前述の1のパルスの時間と前述のスイッチング素子がオフになりパルスが生じない時間との和である。駆動回路56は、制御回路52によって算出されたデューティ比に従って駆動回路56内のスイッチング素子をオンオフさせてワイパモータ18及び伸縮機構120の各々に印加する電圧を生成し、生成した電圧をワイパモータ18及び伸縮機構120の各々の巻線の端子に印加する。
本実施の形態に係るワイパモータ18は、ウォームギアで構成された減速機構48を有しているので、各々の出力軸の回転方向、回転速度及び回転角度は、ワイパモータ18本体の回転速度及び回転角度と同一ではない。しかしながら、本実施の形態では、各モータと減速機構48とは、一体不可分に構成されているので、以下、ワイパモータ18の出力軸32の回転速度及び回転角度を、ワイパモータ18の回転方向、回転速度及び回転角度とみなすものとする。
絶対角センサ114は、例えばワイパモータ18の減速機構48内に設けられ、出力軸32に連動して回転する励磁コイル又はマグネットの磁界(磁力)を電流に変換して検出するセンサであり、一例として、MRセンサ等の磁気センサである。また、移動検出センサは、固定子に面した側の磁極が交互に異なるように複数の永久磁石が配置された可動子の磁界(磁力)を電流に変換して検出するセンサであり、一例として、MRセンサ等の磁気センサである。
制御回路52は、ワイパモータ18の出力軸32末端付近に設けられた絶対角センサ114が検出したワイパモータ18の出力軸32の回転角度から運転席側ワイパブレード30のウィンドシールドガラス1上での位置を算出可能なマイクロコンピュータ58を備えている。マイクロコンピュータ58は、算出した位置に応じてワイパモータ18の出力軸32の回転速度が変化するように駆動回路56を制御する。
また、マイクロコンピュータ58は、ワイパモータ18の出力軸32末端付近に設けられた絶対角センサ114が検出したワイパモータ18の出力軸32の回転角度から助手席側ワイパブレード28のウィンドシールドガラス1上での位置を算出し、算出した位置に応じて伸縮機構120の可動子の移動量及び移動速度が変化するように駆動回路56を制御する。また、マイクロコンピュータ58は、伸縮機構120の移動検出センサが検出した可動子の移動量から助手席側ワイパアーム24の伸長の程度を算出する。
制御回路52には、駆動回路56の制御に用いるデータ及びプログラムを記憶した記憶装置であるメモリ60が設けられている。メモリ60は、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28のウィンドシールドガラス1上の位置を示すワイパモータ18の出力軸32の回転角度に応じてワイパモータ18の出力軸32の回転速度等(回転角度を含む)及び伸縮機構120の可動子の移動速度(移動量含む)を算出するためのデータ及びプログラムを記憶している。
また、マイクロコンピュータ58には、車両のエンジン等の制御を統括する車両ECU(Electronic Control Unit)90が接続されている。また、車両ECU90には、ワイパスイッチ50、方向指示器スイッチ54、ウォッシャスイッチ62、レインセンサ76、車両の速度を検知する車速センサ92、車両の前方を撮影する車載カメラ94、GPS(Global Positioning System)装置96及び操舵角センサ98が接続されている。
ワイパスイッチ50は、車両のバッテリからワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ワイパスイッチ50は、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を、低速で動作させる低速作動モード選択位置、高速で動作させる高速作動モード選択位置、一定周期で間欠的に動作させる間欠作動モード選択位置、レインセンサ76が雨滴を検知した場合に動作させるAUTO(オート)作動モード選択位置、格納(停止)モード選択位置に切替可能である。また、各モードの選択位置に応じた信号を、車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に出力する。
ワイパスイッチ50から各モードの選択位置に応じて出力された信号が車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に入力されると、マイクロコンピュータ58がワイパスイッチ50からの出力信号に対応する制御をメモリ60に記憶されたデータ及びプログラムを用いて行う。
本実施の形態では、ワイパスイッチ50には、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を払拭範囲Z2に変更する拡大モードスイッチが別途設けられていてもよい。拡大モードスイッチがオンになると、所定の信号が車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に入力される。マイクロコンピュータ58は、所定の信号が入力されると、例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに動作する場合に、払拭範囲Z2を払拭するように伸縮機構120を制御する。
方向指示器スイッチ54は、車両の方向指示器(図示せず)の作動を指示するスイッチであり、運転者の操作により、右又は左の方向指示器をオンにするための信号を車両ECU90に出力する。車両ECU90は、方向指示器スイッチ54から出力された信号に基づいて、右又は左の方向指示器のランプを点滅させる。方向指示器スイッチ54から出力された信号は、車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58にも入力される。
ウォッシャスイッチ62は、車両のバッテリからウォッシャモータ64、ワイパモータ18及び伸縮機構120に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ウォッシャスイッチ62は、例えば、前述のワイパスイッチ50を備えたレバー等の操作手段に一体に設けられ、当該レバー等を乗員が手元に引く等の操作によりオンになる。マイクロコンピュータ58は、ウォッシャスイッチ62がオンになると、ウォッシャモータ64及びワイパモータ18を作動させる。マイクロコンピュータ58は、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pまで払拭する場合には、払拭範囲Z2を払拭するように、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pから下反転位置P2Pまで払拭する場合には、払拭範囲Z1を払拭するように伸縮機構120を各々制御する。かかる制御により、ウィンドシールドガラス1の助手席側を広く払拭することが可能となる。
ウォッシャスイッチ62がオンになっている間は、ウォッシャ装置70が備えるウォッシャモータ64の回転でウォッシャポンプ66が駆動される。ウォッシャポンプ66はウォッシャ液タンク68内のウォッシャ液を運転席側ホース72A又は助手席側ホース72Bに圧送する。運転席側ホース72Aは、ウィンドシールドガラス1の運転席側の下方に設けられた運転席側ノズル74Aに接続されている。また、助手席側ホース72Bは、ウィンドシールドガラス1の助手席側の下方に設けられた助手席側ノズル74Bに接続されている。圧送されたウォッシャ液は、運転席側ノズル74A及び助手席側ノズル74Bからウィンドシールドガラス1上に噴射される。ウィンドシールドガラス1上に付着したウォッシャ液は、動作している運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28によってウィンドシールドガラス1上の汚れと一緒に払拭される。
マイクロコンピュータ58は、ウォッシャスイッチ62がオンになっている間のみ動作するようにウォッシャモータ64を制御する。また、マイクロコンピュータ58は、ウォッシャスイッチ62がオフになっても運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2D、P2Pに達するまで動作を継続するようにワイパモータ18を制御する。さらにマイクロコンピュータ58は、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1D、P1Pに向かって払拭している際にウォッシャスイッチ62がオフになった場合には、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28が、ワイパモータ18の回転により上反転位置P1D、P1Pに達するまで、払拭範囲Z2を払拭するように伸縮機構120を制御する。
レインセンサ76は、例えば、ウィンドシールドガラス1の車室内側に設けられる光学センサの一種であり、ウィンドシールドガラス1表面の水滴等を検知する。レインセンサ76は、一例として、赤外線の発光素子であるLED、受光素子であるフォトダイオード、赤外線の光路を形成するレンズ及び制御回路を含んでいる。LEDによって車室側から車外に発せられた赤外線はウィンドシールドガラス1で全反射するが、ウィンドシールドガラス1の表面に水滴が存在すると赤外線の一部が水滴を透過して外部に放出されるため、ウィンドシールドガラス1での反射量が減少する。その結果、受光素子であるフォトダイオードに入る光量が減少する。かかる光量の減少に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を検知する。または、受光素子を車外に設けることで、赤外線の透過量を検出し、当該透過量に基づいて、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を検知してもよい。さらには、発光素子を車外、受光素子を車室内側に各々設けて、赤外線の透過量を検出してもよい。
車速センサ92は、車両の車輪の回転数を検知し、当該回転数を示す信号を出力するセンサである。車両ECU90は、車速センサ92が出力した信号と車輪の周長から車速を算出する。
車載カメラ94は、車両前方を撮影し、動画像のデータを取得する装置である。車両ECU90は、車載カメラ94で取得した動画像のデータを画像処理することにより、車両がカーブに差し掛かっている等を判定することが可能である。また、車両ECU90は、車載カメラ94で取得した動画像のデータの輝度から、車両前方の明るさを算出できる。
本実施の形態に係る車載カメラ94は、被写体までの距離を取得した画像データから算出できるように右撮像部94Rと左撮像部94Lとを備えた、いわゆるステレオカメラである。別途ミリ波レーダ等の車両前方の障害物等を探知し、当該障害物までの距離を検出できる装置を車両が備えている場合には、車載カメラはステレオカメラでなくてもよい。
図1に示したように、本実施の形態では、レインセンサ76及び車載カメラ94は、ウィンドシールドガラス1の中央上部付近の機能エリア102に設けられる。機能エリア102は、レインセンサ76の検知範囲と、車載カメラ94の撮影の視野と、をカバーし得る所定範囲である。
GPS装置は、上空にあるGPS衛星から受信した測位のための信号に基づいて車両の現在位置を算出する装置である。本実施の形態では、車両用ワイパ装置100専用のGPS装置96を用いるが、車両がカーナビゲーションシステム等の他のGPS装置を備える場合には、当該他のGPS装置を用いてもよい。
操舵角センサ98は、一例としてステアリングの回転軸(図示せず)に設けられ、当該ステアリングの回転角度を検出するセンサである。
続いて、ワイパ14、16の構成について説明する。ワイパ14、16は、それぞれ助手席側ワイパアーム24、26と助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30とにより構成されている。助手席側ワイパアーム24、26の基端部は、後述するピボット軸42、44に各々固定されており、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30は、助手席側ワイパアーム24、26の先端部に各々固定されている。
ワイパ14、16は、助手席側ワイパアーム24、26の動作に伴って助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30がウィンドシールドガラス1上を往復動作し、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30がウィンドシールドガラス1を払拭する。
ワイパモータ18は、減速機構48を介して、正逆回転可能な出力軸32を有し、リンク機構20は、クランクアーム34と、第1リンクロッド36と、一対のピボットレバー38、40と、一対のピボット軸42、44と、第2リンクロッド46とを備えている。
クランクアーム34の一端側は、出力軸32に固定されており、クランクアーム34の他端側は、第1リンクロッド36の一端側に動作可能に連結されている。また、第1リンクロッド36の他端側は、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端寄りの箇所に動作可能に連結されており、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端及びピボットレバー40におけるピボットレバー38の当該端に対応する端には、第2リンクロッド46の両端がそれぞれ動作可能に連結されている。
また、ピボット軸42、44は、車体に設けられた図示しないピボットホルダによって動作可能に支持されており、ピボットレバー38、40におけるピボット軸42、44を有する端は、ピボット軸42、44を介して助手席側ワイパアーム24、26が各々固定されている。
車両用ワイパ装置100では、出力軸32が所定の範囲の回転角度θ1で正逆回転されると、この出力軸32の回転力がリンク機構20を介して助手席側ワイパアーム24、26に伝達され、この助手席側ワイパアーム24、26の往復動作に伴って助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30がウィンドシールドガラス1上における下反転位置P2D、P2Pと上反転位置P1D、P1Pとの間で往復動作をする。θ1の値は、車両用洗浄システムのリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として140°とする。
本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100では、図1に示されるように、運転席側ワイパブレード30、助手席側ワイパブレード28が格納位置P3D、P3Pに位置された場合には、クランクアーム34と第1リンクロッド36とが直線状をなす構成とされている。
格納位置P3D、P3Pは、下反転位置P2D、P2Pの下方に設けられている。助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30が下反転位置P2D、P2Pにある状態から、出力軸32がθ2回転することにより、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30は格納位置P3D、P3Pに動作する。θ2の値は、車両用洗浄システムのリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として10°とする。
なお、θ2が「0」の場合は、下反転位置P2D、P2Pと格納位置P3D、P3Pは一致し、助手席側ワイパブレード28、運転席側ワイパブレード30は、下反転位置P2D、P2Pで停止し、格納される。
図2は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100のワイパ14の伸縮機構120の構成の一例を示した概略図である。図2に示したように、伸縮機構120は、助手席側ワイパアーム24の端部に固定軸24Pで固定されたハウジング120H内に設けられた固定子120Aと、助手席側ワイパブレード28側に設けられ、永久磁石列120Bを備えた可動子126と、を含む。
固定子120Aにはコイル120Cが巻装され、コイル120Cに駆動回路56から供給された電圧が印加されると励磁される。駆動回路56は、コイル120Cに印加する電圧の極性を変化させることにより、励磁された固定子120Aの磁極を変化させる。助手席側ワイパアーム24の内部にはコイル120Cと駆動回路56とを導通接続する接続線(図示せず)が配策されている。
可動子126の永久磁石列120Bは、固定子120Aに面した側の磁極が交互に異なるように複数の永久磁石が配置されている。従って、固定子120Aが励磁されると、固定子120Aの磁界と永久磁石列120Bの磁界との吸引及び反発による相互作用により、可動子126は、固定子120Aに対して図2の矢印B方向または矢印C方向に移動する、いわゆる往復運動を行う。
固定子120Aを収めたハウジング120H内には、移動検出センサ118が設けられている。移動検出センサ118は、可動子126の移動に伴って変化する永久磁石列120Bの磁界を検出し、電気信号に変換して制御回路52に出力する。図2の破線で示したように、助手席側ワイパアーム24の内部には移動検出センサ118と制御回路52とを導通接続する信号線が配策されている。
図3は、図2に示されたA−A線に沿って切断した伸縮機構120の断面図である。図3に示したように、可動子126にはブレードラバー122と、金属板であるバッキング124とを備える。バッキング124は、可動子126のバッキング保持部126Aに保持されることにより、助手席側ワイパブレード28の形状保持及び弾性付与に資する部材である。
ブレードラバー122は、基端部122Aが可動子126のブレードラバー保持部126Bに嵌合され、前述のバッキング124と共に、可動子126を含む助手席側ワイパブレード28を構成する。
可動子126の頂部は、固定子120Aのハウジング120Hの下端部の案内機構120Rと嵌合するガイドレール126Rとなっており、可動子126が固定子120Aに対してピボット軸42を中心とする円弧の半径方向に移動可能に構成されている。
図4は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の回路を模式的に示した回路図である。図4に示すように、車両用ワイパ装置100は、制御回路52と駆動回路56とを含んでいる。
制御回路52は、前述のようにマイクロコンピュータ58とメモリ60を有し、マイクロコンピュータ58には、車両ECU90(図示せず)を介して、ワイパスイッチ50、方向指示器スイッチ54、ウォッシャスイッチ62、レインセンサ76、車速センサ92、車載カメラ94、GPS装置96及び操舵角センサ98が各々接続されている。
駆動回路56は、ワイパモータ18を駆動させるための第1プリドライバ104及びワイパモータ駆動回路108、伸縮機構120を駆動させるための第2プリドライバ106及び伸縮機構駆動回路110を備えている。また駆動回路56は、ウォッシャモータ64を駆動させるための、リレー駆動回路78、FET駆動回路80及びウォッシャモータ駆動回路57を有している。
制御回路52のマイクロコンピュータ58は、第1プリドライバ104を介してワイパモータ駆動回路108を構成するスイッチング素子をオンオフさせることによりワイパモータ18の回転を、第2プリドライバ106を介して伸縮機構駆動回路110のスイッチング素子をオンオフさせることにより伸縮機構120の動作を、各々制御する。また、マイクロコンピュータ58は、リレー駆動回路78及びFET駆動回路80を制御することによりウォッシャモータ64の回転を制御する。
ワイパモータ18がブラシ付きDCモータの場合、ワイパモータ駆動回路108は4個のスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、一例としてN型のFET(電界効果トランジスタ)である。また、伸縮機構120を駆動する電圧を生成する伸縮機構駆動回路110も、一例として図4に示したように、4個のスイッチング素子を含み、各スイッチング素子はN型のFETである。
図4に示すように、ワイパモータ駆動回路108は、FET108A〜108Dを含んでいる。FET108Aは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースがワイパモータ18の一端部に接続されている。FET108Bは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースがワイパモータ18の他端部に接続されている。FET108Cは、ドレインがワイパモータ18の一端部に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースが接地されている。FET108Dは、ドレインがワイパモータ18の他端部に接続され、ゲートが第1プリドライバ104に接続され、ソースが接地されている。
第1プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に従ってFET108A〜108Dのゲートに供給する制御信号を切り替えることで、ワイパモータ18の駆動を制御する。すなわち、第1プリドライバ104は、ワイパモータ18の出力軸32を所定方向に回転(正回転)させる場合には、FET108AとFET108Dの組をオンさせ、ワイパモータ18の出力軸32を所定方向と逆方向に回転(逆回転)させる場合には、FET108BとFET108Cの組をオンさせる。また、第1プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に基づいて、FET108A及びFET108Dを断続的にオンオフさせるPWMを行う。
第1プリドライバ104はPWMにより、FET108A及びFET108Dのオンオフに係るデューティ比を変化させることにより、ワイパモータ18の正回転での回転速度を制御する。当該デューティ比が大きくなれば、正回転時にワイパモータ18の端子に印加される電圧の実効値が高くなり、ワイパモータ18の回転速度は大きくなる。
同様に、第1プリドライバ104はPWMにより、FET108B及びFET108Cのオンオフに係るデューティ比を変化させることにより、ワイパモータ18の逆回転での回転速度を制御する。当該デューティ比が大きくなれば、逆回転時にワイパモータ18の端子に印加される電圧の実効値は高くなり、ワイパモータ18の回転速度は大きくなる。
伸縮機構駆動回路110は、FET110A〜110Dを含んでいる。FET110Aは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが伸縮機構120の固定子120Aのコイルの一端部に接続されている。FET110Bは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが伸縮機構120の固定子120Aのコイルの他端部に接続されている。FET110Cは、ドレインが伸縮機構120の固定子120Aのコイル120Cの一端部に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが接地されている。FET110Dは、ドレインが伸縮機構120の固定子120Aのコイル120Cの他端部に接続され、ゲートが第2プリドライバ106に接続され、ソースが接地されている。
第2プリドライバ106は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に従ってFET110A〜110Dのゲートに供給する制御信号を切り替えることで、伸縮機構120の駆動を制御する。一例として、助手席側ワイパアーム24を助手席側上方に見かけ上伸長させるように伸縮機構120の可動子126を所定方向に移動させる場合、第2プリドライバ106は、FET110AとFET110Dの組をオンさせ、次いでFET110BとFET110Cの組をオンさせる。かかるスイッチング制御を反復することにより、可動子126を所定方向に移動させる。また、可動子126の移動速度は、FET110AとFET110Dの組をオンさせ、次いでFET110BとFET110Cの組をオンさせるスイッチングのタイミングを早めるとともに、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を高くすることによって高速化できる。第2プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に基づいて、前述の第1プリドライバ104のようなPWMを行うことにより、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を制御する。
伸縮機構120の可動子126を所定方向の逆方向に移動させる場合、第2プリドライバ106は、FET110BとFET110Cの組をオンさせ、次いでFET110AとFET110Dの組をオンさせる。かかるスイッチング制御を反復することにより、可動子126を所定方向の逆方向に移動させる。また、可動子126の移動速度は、FET110BとFET110Cの組をオンさせ、次いでFET110AとFET110Dの組をオンさせるスイッチングのタイミングを早めるとともに、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を高くすることによって高速化できる。第2プリドライバ104は、マイクロコンピュータ58からの制御信号に基づいて、前述の第1プリドライバ104のようなPWMを行うことにより、FET110A、110B、110C、110Dの各々に印加する電圧を制御する。
ワイパモータ18の減速機構48内における出力軸32の出力軸端部112には、2極のセンサマグネット112Aが固定され、センサマグネット112Aに対向するように絶対角センサ114が設けられている。
伸縮機構120のハウジング120H内には、可動子126の永久磁石列120Bに対向するように移動検出センサ118が設けられている。
絶対角センサ114はセンサマグネット112Aの磁界を、移動検出センサ118は永久磁石列120Bの磁界を、各々検出し、検出した磁界の強さに応じた信号を出力する。マイクロコンピュータ58は、絶対角センサ114が出力した信号に基づいて、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度、回転位置、回転方向及び回転速度を算出すると共に、移動検出センサ118が出力した信号に基づいて、伸縮機構120の移動量、位置、移動方向及び移動速度を算出する。
ワイパモータ18の出力軸32の回転角度からは、運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置が算出できる。また、伸縮機構120の可動子126の移動量からは、助手席側ワイパアーム24の見かけの伸長の程度(拡大の程度)が算出できる。マイクロコンピュータ58は、出力軸32の回転角度から算出した運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置に基づいて、可動子126の移動量を制御することにより、ワイパモータ18と伸縮機構120の各々の動作を同期させる。一例として、メモリ60に、運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置(又は出力軸32の回転角度)と可動子126の移動量(作動量)とを対応付けたマップ(例えば、後述する伸縮機構作動量マップ)を予め記憶させ、当該マップに従って、出力軸32の回転角度に応じて可動子126の移動量を制御する。
ウォッシャモータ駆動回路57は、2個のリレーRLY1、RLY2を内蔵したリレーユニット84、2個のFET86A、86Bを含んでいる。リレーユニット84のリレーRLY1、RLY2のリレーコイルはリレー駆動回路78に各々接続されている。リレー駆動回路78はリレーRLY1、RLY2のオンオフ(リレーコイルの励磁/励磁停止)を切り替える。リレーRLY1、RLY2は、リレーコイルが励磁されていない間は、共通端子84C1、84C2が第1端子84A1、84A2と各々接続している状態(オフ状態)を維持し、リレーコイルが励磁されると共通端子84C1、84C2を第2端子84B1、84B2に各々接続する状態に切り替わる。リレーRLY1の共通端子84C1はウォッシャモータ64の一端に接続されており、リレーRLY2の共通端子84C2はウォッシャモータ64の他端に接続されている。また、リレーRLY1、RLY2の第1端子84A1、84A2の各々はFET86Bのドレインに接続され、リレーRLY1、RLY2の第2端子84B1、84B2の各々は電源(+B)に接続されている。
FET86BはゲートがFET駆動回路80に接続され、ソースが接地されている。FET86Bのオンオフに係るデューティ比はFET駆動回路80によって制御される。また、FET86Bのドレインと電源(+B)との間にはFET86Aが設けられている。FET86Aは、ゲートに制御信号が入力されないのでオンオフの切り替えは行われず、寄生ダイオードをサージの吸収に用いる目的で設けられている。
リレー駆動回路78及びFET駆動回路80は、2個のリレーRLY1、RLY2とFET86Bとのオンオフを切り替えることで、ウォッシャモータ64の駆動を制御する。すなわち、ウォッシャモータ64の出力軸を所定方向に回転(正回転)させる場合、リレー駆動回路78はリレーRLY1をオンさせ(リレーRLY2はオフ)、FET駆動回路80は所定のデューティ比でFET86Bをオンさせる。上記の制御により、ウォッシャモータ64の出力軸の回転速度が制御される。
以下、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の制御について説明する。図5は、本実施の形態における出力軸32の回転角度に応じた伸縮機構120の作動量を定めた伸縮機構作動量マップの一例を示している。図5の横軸は出力軸32の回転角度である出力軸回転角度θAである。出力軸回転角度θAは、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに位置する場合は「0°」になる。図5の縦軸は伸縮機構120の作動量である伸縮機構作動量MVであり、その最大値は所定作動量MV2となる。伸縮機構作動量MVは、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに位置する場合に「0」となるので、伸縮機構作動量MVが「0」となる位置から可動子126の位置までの距離を示している。マイクロコンピュータ58は、ワイパモータ18の出力軸32が回転を始めると、絶対角センサ114で検知した出力軸32の回転角度と伸縮機構作動量マップとを照合する。かかる照合により、絶対角センサ114で検知した出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVを算出し、算出した伸縮機構作動量MVになるように伸縮機構120の作動量を制御する。
図5には、曲線190と、曲線192と、曲線194とが記載されている。曲線190は、出力軸32の回転角度に対応して、伸縮機構120の作動量が遅延なしに変化する理想的な場合を示している。通常は、曲線190で示された出力軸回転角度θAに対する伸縮機構作動量MVを、伸縮機構120の動作制御の指令値とする。なお、図5に示した曲線190は、後述する曲線192、194と共に、出力軸回転角度θAが、所定回転角度θ1に到達した場合、すなわち、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに到達した場合の伸縮機構作動量MVは、0よりも大きい値を示すように設定されている。
しかしながら、実機では、リンク機構による駆動力伝達の遅れ、制御回路52における素子の動作に要する時間による制御処理の遅れ等により、必ずしも理想値を示す曲線190のように出力軸回転角度θAと伸縮機構作動量MVとが対応しない。
上述の遅れの影響を排除して出力軸回転角度θAと伸縮機構作動量MVとを対応させるには、伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを、曲線190が示す場合よりも早めればよい。
時間経過と共に出力軸回転角度θAが大きくなる往動時では、検出された出力軸回転角度θAに補正値を加算して得られた角度に対応する曲線190上の伸縮機構作動量MVとなるように可動子126の移動量を制御することによって、伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを、曲線190が示す場合よりも早めることができる。
上述のように、本実施の形態では、検出された出力軸回転角度θAに補正値を加算して出力軸回転角度θAの時系列での変化を先取りし、実際の出力軸回転角度θAが示す制御のタイミングよりも伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを早めている。このように、出力軸回転角度θAの時系列での変化を先取りして伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを早めることを、本実施の形態では便宜上、出力軸回転角度θAの進角と表現する。なお、補正値は、伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを最適化するための数値である。補正値は、車両用ワイパ装置100の仕様等によって異なるのみならず、出力軸回転角度θAの変化に伴っても変動するので、設計時のシミュレーション、実機を用いた試験等を通じて出力軸回転角度θAの変化毎に具体的に決定する。
図5の曲線192は、助手席側ワイパアーム24が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに動作する往動時において、検出された出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを、曲線190の場合よりも早めたマップの一例を示している。曲線192は、検出された出力軸回転角度θAに伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを最適化するための補正値を加算して得られた角度に対する曲線190上の伸縮機構作動量MVを、検出された出力軸回転角度θAに対してプロットしたものである。
補正値は、出力軸回転角度θAが0°の場合、すなわち助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに位置している場合と、出力軸回転角度θAが所定回転角度θ1の場合、すなわち助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに位置している場合と、では「0」になるように定める。助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2P及び上反転位置P1Pに位置している場合に補正値を「0」とするのは、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2P又は上反転位置P1Pに到達した場合に、助手席側ワイパブレード28の支持部である伸縮機構120の作動量を「0」に復帰させるためである。助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2P及び上反転位置P1Pに位置している場合に補正値を「0」とすることで、図5に示したように、出力軸回転角度θAが0°及び所定回転角度θ1の場合には、曲線190と、曲線190に対して出力軸回転角度θAを進角させた曲線192とにおける伸縮機構作動量MVが一致する。なお、後述する曲線194も、出力軸回転角度θAが0°及び所定回転角度θ1の場合には、伸縮機構作動量MVが曲線190と一致する。
図6は、曲線190から曲線192を得るための補正値の一例を示した概略図である。図6に示した補正値は、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2P及び上反転位置P1Pに位置している場合に「0」を示し、助手席側ワイパブレード28が払拭動作中に最大値ΔCを示す。助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2P及び上反転位置P1Pに位置している場合は、助手席側ワイパアーム24の伸縮機構120は伸縮を開始していないので、補正値を「0」に定めておく。例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから払拭動作を開始した場合には、補正値を最大値であるΔCまで迅速に増大させ、助手席側ワイパブレード28が2つの反転位置の間を払拭動作する際に最大値ΔCを維持させて伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを最適化させる。そして、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに近づいた場合には、補正値を迅速に減少させ、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに到達した際に補正値を「0」とする。
図5に示したように、出力軸回転角度θAが0°と所定回転角度θ1との間の中間回転角度θmに達するまでは、同じ出力軸回転角度θAに対する伸縮機構作動量MVは、曲線192が曲線190よりも大きくなっている。リンク機構による駆動力伝達の遅れ及び制御回路52における制御処理の遅れを見越して、曲線190を出力軸回転角度θAついて前述の補正値で適切に進角させて曲線192を定義することにより、出力軸32の回転角度に対する伸縮機構120の作動量の同期の遅れを補正することが可能になる。
図5の曲線194は、助手席側ワイパアーム24が上反転位置とP1Pから下反転位置P2Pに動作する復動時において、検出された出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを、曲線190の場合よりも早めたマップの一例を示している。復動時に、出力軸32は往動時とは逆回転するので、出力軸32の回転角度は、所定回転角度θ1から減少し、下反転位置P2Pに助手席側ワイパブレード28が達すると0°になる。従って、復動時には図5に示したマップを所定回転角度θ1から0°に向かって適用していく。
復動時にも、リンク機構による駆動力伝達の遅れ、制御回路52における素子の動作に要する時間による制御処理の遅れ等が問題になり、伸縮機構120の伸長が曲線190に示した理想値(指令値)のようにはならない場合がある。かかる遅れにより、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pから下反転位置P2Pに向けて払拭動作をする場合には、出力軸回転角度θAの減少に助手席側ワイパアーム24の伸長及び収束が追いつかなくなる。
上述のように、進角という単語は制御のタイミングを速めるという概念を表現したものであるから、時間経過と共に出力軸回転角度θAが減少する復動時では、検出された出力軸回転角度θAから伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを最適化するための補正値を減算して得られた角度に対する曲線190上の伸縮機構作動量MVとなるように可動子126の移動量を制御することによって、伸縮機構120の伸長・収束のタイミングを速めることが可能となる。従って、後述する図8のステップ124では、検出された出力軸回転角度θAから図6に示した補正値を減算することによって進角させる。検出された出力軸回転角度θAから補正値を減算して、出力軸回転角度θAの時系列での変化を先取りし、実際の出力軸回転角度θAが示す制御のタイミングよりも伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを早めることを、本実施の形態では便宜上、出力軸回転角度θAの進角と表現する。なお、補正値は、車両用ワイパ装置100の仕様等によって異なるのみならず、出力軸回転角度θAの変化に伴っても変動するので、設計時のシミュレーション、実機を用いた試験等を通じて出力軸回転角度θAの変化毎に具体的に決定する。
図5の曲線194は、助手席側ワイパアーム24が上反転位置P1Pから下反転位置P2Pに動作する復動時において、検出された出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを、曲線190の場合よりも早めたマップの一例を示している。曲線194は、検出された出力軸回転角度θAに補正値を減算して得られた角度に対応する曲線190上の伸縮機構作動量MVを、検出された出力軸回転角度θAに対してプロットしたものである。
補正値は、図6に示したように、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pから払拭動作を開始した場合には、補正値を最大値であるΔCまで迅速に増大させて、伸縮機構作動量MVの制御のタイミングを最適化させる。そして、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに近づいた場合には、補正値を迅速に減少させ、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pに到達した際に補正値を「0」とする。
図5に示したように、出力軸回転角度θAが所定回転角度θ1から中間回転角度θmに達するまでは、同じ出力軸回転角度θAに対する伸縮機構作動量MVは、曲線194の方が曲線190よりも大きくなっている。リンク機構による駆動力伝達の遅れ及び制御回路52における制御処理の遅れを見越して、曲線190を出力軸回転角度θAについて適切に進角させて曲線194を定義することにより、出力軸32の回転角度に対する伸縮機構120の作動量の同期の遅れを補正することが可能になる。
図7は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の回転角度進角処理の一例を示したフローチャートである。図7は、助手席側ワイパブレード28を下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに払拭動作させる往動時に拡大払拭させ、助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pから下反転位置P2Pに払拭動作させる復動時に通常の払拭動作をさせる場合を示している。
ステップ110では、出力軸32の回転角度(出力軸回転角度θA)と回転方向とを絶対角センサ114を用いて検出する。ステップ112では、出力軸32の回転方向から往動開始か否かを判定し、肯定判定の場合には手順をステップ114に移行させ、否定判定の場合にはリターンする。
ステップ114では、絶対角センサ114によって検出された出力軸回転角度θAに図6の補正値を加算して進角させる。
ステップ116では、進角させた出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVを算出してリターンする。ステップ114で出力軸回転角度θAに補正値を加算して進角させた場合には、図5の曲線190を用いて伸縮機構作動量MVを算出する。なお、ステップ114及びステップ116の処理は、図5の曲線192を使用してもよい。かかる場合には、検出された出力軸回転角度θAに図5の曲線192を適用して伸縮機構作動量MVを算出する。
図7では、往動時に拡大払拭させ、復動時に通常の払拭動作をさせる場合を示したが、往動時に通常の払拭動作をさせ、復動時に拡大払拭させる場合には、図8に示したような処理を行う。図8は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置100の回転角度進角処理の他の一例を示したフローチャートである。
ステップ120では、出力軸回転角度θAと第一出力軸の回転方向とを絶対角センサ114を用いて検出する。ステップ122では、出力軸32の回転方向から復動開始か否かを判定し、肯定判定の場合には手順をステップ124に移行させ、否定判定の場合にはリターンする。
ステップ124では、検出された出力軸回転角度θAから図6の補正値を減算することによって進角させる。補正値は、車両用ワイパ装置100の仕様等によって異なるので、設計時のシミュレーション、実機を用いた試験等を通じて具体的に決定する。
ステップ126では、進角させた出力軸回転角度θAに対応する伸縮機構作動量MVを算出してリターンする。ステップ124で出力軸回転角度θAから補正値を減算して進角させた場合には、図5の曲線190を用いて伸縮機構作動量MVを算出する。なお、ステップ124及びステップ126の処理は、図5の曲線194を使用してもよい。かかる場合には、検出された出力軸回転角度θAに図5の曲線194を適用して伸縮機構作動量MVを算出する。
以上説明したように、本実施の形態では、絶対角センサ114によって検出された出力軸32の回転角度に対応する伸縮機構120の動作制御のタイミングを速めることにより、助手席側ワイパアーム24の往復動作に同期させる伸縮機構120の伸長及び収束における遅延を低減させることが可能になる。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32が正逆(往復)回転可能に制御されていたが、これに限定されることはない。例えば、出力軸32が一方向に回転するものでもよい。
なお、本実施の形態は、ワイパモータ18の出力軸32の回転により、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1D、P1Pと下反転位置P2D、P2Pとの間で移動させていたが、これに限定されることはない。例えば、ワイパモータ18として「運転席側ワイパモータ」と「助手席側ワイパモータ」とを備え、運転席側ワイパモータの回転によって運転席側ワイパブレード30を上反転位置P1Dと下反転位置P2Dとの間で移動させ、助手席側ワイパモータの回転によって助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pと下反転位置P2Pとの間で移動させる構造でもよい。
なお、本実施の形態では、運転席側ワイパブレード30と助手席側ワイパブレード28とが下反転位置P2D、P2Pにて車幅方向に重ならない構造になっていたが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28の運転席側ワイパブレード30側を長く設定してもよい。換言すると、助手席側ワイパブレード28の運転席側ワイパブレード30側が、当該運転席側ワイパブレード30の助手席側ワイパブレード28側と重なるように助手席側ワイパブレード28の長さを設定してもよい。これにより、往復動時に払拭範囲Z2を払拭する際に、ウィンドシールドガラスの中央下側に残る払拭不能領域を少なくすることができる。
なお、本実施の形態では、出力軸32の所定回転角度における中間角度付近までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を伸長させ、中間角度付近から所定回転角度までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を縮小させる制御を行ったが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに向かって払拭する際(往動払拭時)に、助手席側ワイパアーム24が徐々に伸長するように制御してもよい。
なお、本実施の形態では、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度と伸縮機構120の作動量とを用いた実施の形態を説明したが、これに代えて出力軸32の回転位置と可動子126の回転位置とを用いたものとしてもよい。
なお、本実施の形態では、図5に示すように、出力軸回転角度θAが所定回転角度θ1に到達した場合、すなわち、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに到達した場合の伸縮機構作動量MVをMV3としたが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28が上反転位置P1Pに到達した場合の伸縮機構作動量MVを「0」としてもよい。
なお、本実施の形態では、図6で示すような補正値としたが、これに限定されることはない。例えば、補正値を出力軸回転角度θAの変化に影響されない定数としてもよい。0°から所定回転角度θ1までの出力軸回転角度θAの各々に一律に定数である補正値を加算することによって、制御を簡易迅速に行うことができる。
[第2の実施の形態]
続いて本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る車両用ワイパ装置の構成は、第1の実施の形態に係る車両用ワイパ装置の構成と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
車両用ワイパ装置100において払拭範囲を拡大する場合、運転席側ワイパブレード30の先端側(車両上側)の払拭軌跡に対して助手席側ワイパブレード28の先端側(車両上側)の払拭軌跡が交差する交差部のV字形状の角度が、払拭範囲を拡大しない場合に比べて鋭角になり易い。交差部のV字形状の先端部分が鋭角になるほど払拭範囲外に払拭した液体(雨水等)が払拭面に垂れ易くなるという、問題が発生する。なお、以下では、運転席側ワイパブレード30の車両上側の払拭軌跡に対して助手席側ワイパブレード28の車両上側の払拭軌跡が交差する交差部を単に交差部と称す。また、以下では、運転席側ワイパブレード30の車両上側の払拭軌跡と助手席側ワイパブレード28の車両上側の払拭軌跡とがなす角度でかつ払拭されない側の交差部の角度を交差角度と称す。
そこで、本実施の形態では、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲が変更可能であることを利用して、上反転位置P1P付近の助手席側ワイパアーム24の払拭軌跡を変更することで、交差角度を鈍角に変更(交差角度を大きく)して雨水の垂れを防止するようになっている。
具体的には、制御回路52が、払拭動作を行う際に、交差角度が、助手席側ワイパアーム24を伸長しない場合に比べて鈍角になるように、ワイパモータ18及び伸縮機構120を制御する。例えば、上記の車両用ワイパ装置100の動作の説明では、払拭範囲を拡大する場合、往動時に助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を拡大して上反転位置P1P(出力軸32の回転角度が上反転位置P1Pに対応する角度)で伸縮機構120の作動量を「0」に戻すように制御しているので、図9(A)、(B)に示す払拭範囲Z2となる。しかしながら、助手席側ワイパブレード28の上反転位置P1Pで伸縮機構120の作動量が「0」になることで、払拭範囲Z1に比べて交差角度が鋭角になり易い。そこで、交差部の雨水垂れを防止するために、上反転位置P1Pで伸縮機構120の作動量を「0」に戻さずに、払拭範囲を拡大した状態で上反転位置P1Pまで(出力軸32の回転角度が上反転位置P1Pに対応する角度まで)移動させるように伸縮機構120(可動子126)を制御する。このとき、助手席側ワイパブレード28は、払拭範囲Z2’に沿って移動する。これにより、上反転位置P1Pで伸縮機構120の作動量を「0」に戻す場合に比べて、図9(A)、(B)に示すように、交差角度を大きく(鈍角に)することができ、雨水の垂れを抑制することができる。
次に、交差部の雨水の垂れを防止するために、制御回路52で行う制御についてさらに具体的に説明する。
払拭範囲を拡大する場合、図10(A)に示すように、伸縮機構120(可動子126)の伸縮機構作動量MVは、ワイパモータ18(出力軸32)の回転角度θ1の関数(MV=f(θ1))として表すことができる。すなわち、制御回路52がワイパモータ18の回転角度θ1に応じて伸縮機構120の伸縮機構作動量MVを制御することで払拭範囲Z2に沿って助手席側ワイパブレード28を制御することができる。
上記で説明した車両用ワイパ装置100の動作(払拭範囲Z2)では、伸縮機構120の伸縮機構作動量MVは、ワイパモータ18の回転角度の増加に伴って増加し、上反転位置P1Pと下反転位置P2Pの中間付近で伸縮機構120の伸縮機構作動量MVが最大となる。そして、徐々に伸縮機構作動量MVが減少して上反転位置で「0」となるように制御することになる。
一方、交差部の雨水の垂れを防止する動作(払拭範囲Z2’)では、図10(B)に示すように、伸縮機構120の伸縮機構作動量MVを上反転位置P1Pで「0」に戻さずに、予め定めた作動量(MV=α)になるように制御回路52がワイパモータ18及び伸縮機構120を制御する。これにより、交差角度を大きく(鈍角に)して雨水垂れを防止することができる。このとき、上反転位置P1Pにおける予め定めた回転角度としては、伸縮機構120による助手席側ワイパアーム24の伸長範囲内で交差角度が最大となる角度が好ましい。なお、前述の予め定めた回転角度は、ウィンドシールドガラス1の形状等に応じて、個別に設定する。
また、復動時について上記で説明した車両用ワイパ装置100の動作(払拭範囲Z2)では、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を拡大しない払拭範囲Z1として、往動時に払拭していない領域を払拭するようにしている。よって、交差部の雨水の垂れを防止する制御においても復動時に払拭していない領域を払拭する必要がある。そこで、図10(B)の一点鎖線で示すように、復動時には徐々に伸縮機構120の作動量を「0」に戻すように(MV=f’(θ1))制御することで、払拭してない領域を復動時に払拭することが可能となる。
また、図10(B)に示したマップを用いてワイパモータ18の出力軸32の回転に同期させて伸縮機構120の作動を制御する場合に、第1の実施の形態のように、出力軸32の回転角度を進角させ、進角させた出力軸32の回転角度に基づいて伸縮機構120の作動量を制御してもよい。かかる制御により、出力軸32の回転角度に対応する伸縮機構120の動作制御のタイミングを速めることにより、助手席側ワイパアーム24の往復動作に同期させる伸縮機構120の伸長及び収束における遅延を低減させることが可能になる。
本実施の形態では、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を動作させる速度(払拭速度)は、予め定めた速度の中から選択可能であることを前提としたが、払拭速度が無段階で変更可能であってもよい。
なお、上記の実施形態では、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲を拡大することにより、助手席側ワイパブレード28の車両下側の払拭軌跡が運転席側ワイパブレード30の払拭軌跡と重ならず、払拭不能領域が発生してしまう。そのため、払拭不能な領域をなくすために、払拭範囲を拡大する場合に往動時と復動時の助手席側ワイパブレード28を異なる軌跡として説明したが、これに限るものではない。例えば、図11に示すように、助手席側ワイパブレード28の長さを払拭範囲を拡大した際に払拭されない領域がない長さに設定して、往動時及び復動時共に同じ払拭軌跡の払拭範囲Z2’になるように制御してもよい。
また、上記の実施形態では、払拭範囲を拡大して払拭動作を行う場合において、交差部の雨水の垂れを防止する制御回路52の制御について説明したが、払拭範囲を拡大する場合に限るものではない。すなわち、払拭範囲を拡大しない場合(払拭範囲Z1)についても同様に、上反転位置P1Pで伸縮機構120を伸長して交差角度が鈍角になるように制御してもよい。
また、本実施形態は、ワイパモータ18の出力軸32が正逆(往復)回転可能に制御されていたが、これに限定されることはない。例えば、出力軸32が一方向に回転するものでもよい。
また、本実施形態は、ワイパモータ18の出力軸32の回転により、運転席側ワイパブレード30及び助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1D、P1Pと下反転位置P2D、P2Pとの間で移動させていたが、これに限定されることはない。例えば、ワイパモータ18として「運転席側ワイパモータ」と「助手席側ワイパモータ」とを備え、運転席側ワイパモータの回転によって運転席側ワイパブレード30を上反転位置P1Dと下反転位置P2Dとの間で移動させ、助手席側ワイパモータの回転によって助手席側ワイパブレード28を上反転位置P1Pと下反転位置P2Pとの間で移動させる構造でもよい。
また、本実施形態では、出力軸32の所定回転角度における中間角度付近までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を伸長させ、中間角度付近から所定回転角度までの間で助手席側ワイパアーム24(助手席側ワイパブレード28)を縮小させる制御を行ったが、これに限定されることはない。例えば、助手席側ワイパブレード28が下反転位置P2Pから上反転位置P1Pに向かって払拭する際(往動払拭時)に、助手席側ワイパアーム24が徐々に伸長するように制御してもよい。
また、本実施形態では、ワイパモータ18の回転角度に応じて伸縮機構120を制御していたが、これに限定されることはない。例えば、伸縮機構120の作動量に応じてワイパモータ18を制御してもよい。
なお、本実施の形態では、ワイパモータ18の出力軸32の回転角度と伸縮機構120の可動子126の作動量とを用いた実施の形態を説明したが、これに代えて出力軸32の回転位置と可動子126の位置とを用いたものとしてもよい。
また、上記の実施形態における払拭範囲を変更可能にする構成は一例として説明したが、これに限るものではなく、他の構成を適用してもよい。
また、上記の実施形態では、助手席側ワイパブレード28の払拭範囲のみを変更可能な例を説明したが、これに限るものではなく、運転席側についても助手席側と同様の機構を設けて払拭範囲を変更可能としてもよい。
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、払拭範囲Z1の面積よりも払拭範囲Z2の面積が大きくなっているが、これに限定されない。払拭範囲Z1の面積と払拭範囲Z2の面積とが同じでもよく、払拭範囲Z1の面積よりも払拭範囲Z2の面積が小さくてもよい。
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
[第3の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、伸縮機構140が助手席側ワイパアーム24のピボット軸42の近くに設けられている点で、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と相違するが、その他の構成については、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
図12は、本実施の形態に係る車両用ワイパ装置の伸縮機構140の一例を示した概略図である。図12に示したように、本実施の形態の伸縮機構140は、助手席側ワイパアーム24を望遠鏡状に伸縮させる機構であり、一端がピボット軸42に連結され、内部に電磁石列140Aを備えた固定子である外部筒24Bと、永久磁石列140Bを備えた可動子である内部筒24Aと、を含み、ゴム等の弾性体で構成されたシール部材170によって伸縮機構140の内部の機構が保護されている。外部筒24Bの内部に入り込んだ水は、排水孔172を介して外部筒24Bの外に排出される。
永久磁石列140Bは、電磁石列140Aに面した側の磁極が交互に異なるように複数の永久磁石が配置されている。従って、電磁石列140Aが励磁されると、電磁石列140Aの磁界と永久磁石列140Bとの磁界の吸引及び反発による相互作用により、内部筒24Aは、外部筒24Bに対して図12の矢印D方向または矢印E方向に移動する、いわゆる往復運動を行う。
外部筒24B内には、移動検出センサ118が設けられている。移動検出センサ118は、可動子である内部筒24Aの移動に伴って変化する永久磁石列140Bの磁界を検出し、電気信号に変換して制御回路52に出力する。
マイクロコンピュータ58は、第1の実施の形態で説明したように、出力軸32の回転角度から算出した運転席側ワイパブレード30の下反転位置P2Dと上反転位置P1Dとの間での位置に基づいて、内部筒24Aの移動量を制御することにより、ワイパモータ18と伸縮機構140の各々の動作を同期させる。
以上説明したように、本実施の形態では、伸縮機構140を助手席側ワイパアーム24が搖動する支点であるピボット軸42近くに設けられるので、第1の実施の形態及び第2の実施の形態よりも、助手席側ワイパアーム24の揺動による遠心力が伸縮機構140に作用しにくくなり、伸縮機構140をより安定して動作させることができる。
また、ウィンドシールドガラス1表面の水滴を払拭する助手席側ワイパブレード28近くに設けられた第1の実施の形態及び第2の実施の形態の伸縮機構120よりも、本実施の形態に係る伸縮機構140は、助手席側ワイパブレード28から離れた位置に設けられるので、内部機構に雨水が侵入するおそれが軽減できる。
以上、第3の実施の形態について説明したが、本願は、上記に限定されるものではなく、上記以外にも、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。例えば、第1の実施の形態と第2の実施の形態と第3の実施の形態とを適宜組み合わせることが可能である。