以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、本実施形態のプラントシミュレータについて図1から図3を用いて説明する。図1の符号1は、プラントの運転を担う運転員の訓練に用いるプラントシミュレータである。本実施形態で訓練の対象となる運転員は、発電所(発電プラント)に関連する施設の運転を担う。なお、発電所に関連する施設とは、原子力発電所、火力発電所、中央給電指令所、緊急対策所および代替給水タンクである。さらに、変電所、送電設備、電力消費施設、水源施設などの他の施設が含まれても良い。
図1に示すように、プラントシミュレータ1は、発電所の中央制御室などの操作盤の訓練を運転員が行うための複数台の大型表示装置2と、発電所の現場盤の訓練を現場作業員が行うための複数台の現場盤端末3と、指導員が操作を行う複数台のインストラクタ端末4と、訓練に関連する書類を出力するプリンタ5と、発電所に関連する第1施設を含む事象を模擬する第1シミュレータサーバ6と、発電所に関連する第2施設を含む事象を模擬する第2シミュレータサーバ7と、第1施設および第2施設に共通して関連する特定施設を含む事象を模擬する特定シミュレータサーバ8と、各シミュレータサーバ6,7,8から各種情報を伝送する複数台の伝送切替スイッチ9,10,11,12と、プラントシミュレータ1全体を管理する管理者が操作を行う管理端末13と、これらの装置を互いに接続する各伝送回線14,15,16,17とを備える。
複数台の大型表示装置2で第1端末群18が構成される。大型表示装置2は、それぞれに対応して設けられた第1伝送回線14に接続される。これら複数の第1伝送回線14で第1伝送回線群21が構成される。本実施形態では、1つの第1伝送回線14に対して1台の大型表示装置2が接続される。なお、1つの第1伝送回線14に対して2台以上の大型表示装置2が接続されても良い。
複数台の現場盤端末3で第2端末群19が構成される。現場盤端末3は、数台ずつに対応して設けられた第2伝送回線15に接続される。これら複数の第2伝送回線15で第2伝送回線群22が構成される。なお、1つの第2伝送回線15に対して1台の現場盤端末3が接続されても良い。
複数台のインストラクタ端末4で第3端末群20が構成される。インストラクタ端末4は、数台ずつに対応して設けられた第3伝送回線16に接続される。これら複数の第3伝送回線16で第3伝送回線群23が構成される。なお、1つの第3伝送回線16に対して1台のインストラクタ端末4が接続されても良い。
第1端末群18、第2端末群19、第3端末群20、第1伝送回線群21、第2伝送回線群22および第3伝送回線群23が共通伝送回線17を介して互いに接続される。この共通伝送回線17には、プリンタ5、特定シミュレータサーバ8、伝送切替スイッチ9,10,11,12および管理端末13も接続される。この共通伝送回線17は、プラントシミュレータ1全体の共通データの伝送に用いる。また、共通伝送回線17に接続されたプリンタ5は、各端末の画面のハードコピー、または帳票などの印刷を行うことができる。
本実施形態の第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7、特定シミュレータサーバ8、現場盤端末3、インストラクタ端末4および管理端末13は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態のプラントシミュレーション方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
大型表示装置2は、複数の大型のタッチパネル25を備える。タッチパネル25は、各種情報を表示する出力機器と入力操作を行う入力機器とを兼ねる。運転員の訓練時には、タッチパネル25に、発電所の中央制御室の操作盤、または中央給電指令所の指令室の操作盤を模擬した画像が表示される。タッチパネル25に表示される画像は、訓練対象となる操作盤に応じて異なる画像となっている。例えば、原子力発電所の中央制御室の操作盤の画像、または火力発電所の中央制御室の操作盤の画像を表示することができる。
また、大型表示装置2は、模擬される施設に応じてフレキシブルに表示の変更を行うことができる。例えば、所定の大型表示装置2で表示中の画像を、原子力発電所の中央制御室の操作盤の画像から火力発電所の中央制御室の操作盤の画像に変更することができる。
運転員は、タッチパネル25のタッチ操作を行うことで、操作盤の画像に含まれる各種ボタンまたは各種レバーの操作を擬似的に行うことができる。また、複数台の大型表示装置2は、1つの訓練室に設けられる。そして、所定の大型表示装置2を原子力発電所の訓練に用いて、他の大型表示装置2を火力発電所の訓練に用いることができる。つまり、これらの大型表示装置2を用いて、複数の発電所を同時に運転させて互いの発電所を連携させる訓練を行うことができる。
現場盤端末3の表示部には、発電所などの施設において中央制御室以外の場所に設けられた各種機器を操作する現場盤を模擬した画像が表示される。そして、現場作業員がキーボードおよびマウスなどの入力機器を用いて入力操作を行うことで、現場盤の画像に含まれる各種ボタンまたは各種レバーの操作を擬似的に行うことができる。
シミュレーションを用いた訓練を行う際に、指導員がインストラクタ端末4を用いて所定の訓練状況の設定を行う。例えば、原子力発電所で外部電源の喪失した状況などの設定を行うことができる。この指導員が設定した状況に応じて、運転員が大型表示装置2の操作を行い、かつ現場作業員が現場盤端末3の操作を行う。そして、運転員および現場作業員がトラブルに対処する技量の向上を図る。また、訓練の途中で指導員がインストラクタ端末4を操作して訓練状況の設定の変更を行うこともできる。
プラントシミュレータ1全体を管理する管理者は、訓練内容に応じて管理端末13を用いて各種装置の管理を行う。例えば、第1シミュレータサーバ6に原子力発電所モデルの設定を行い、かつ第2シミュレータサーバ7に火力発電所モデルの設定を行う。そして、各発電所を互いに連携させる訓練、つまり、電源の融通または水源の確保の運転取得などの多様な状況に応じて、複数の施設を跨った総合的な訓練または解析が可能となっている。なお、管理端末13は、可搬型のコンピュータ、所謂ノートパソコンで構成される。
管理端末13は、プラントシミュレータ1で模擬される施設の機器構成情報を記憶している。訓練または解析を行う際には、管理端末13が共通伝送回線17を通じて各種装置に対話的に指令を発して模擬される施設の機器構成を設定することができる。
第1シミュレータサーバ6は、所定の第1施設に設けられた機器およびこの施設に関連する要素(事象)を模擬する。例えば、第1施設が原子力発電所の1号機であるとすると、この1号機に設けられた配線および配管などの各種設備と、この1号機に外部から電力を供給する外部電源とを模擬する。
第2シミュレータサーバ7は、第1施設とは異なる施設である第2施設に設けられた機器およびこの施設に関連する要素(事象)を模擬する。例えば、第2施設が原子力発電所の2号機であるとすると、この2号機に設けられた配線および配管などの各種設備と、この2号機に外部から電力を供給する外部電源とを模擬する。
1台のシミュレータサーバは、1つの施設を含む事象を模擬する。本実施形態では、2台のシミュレータサーバ6,7が設けられ、2つの施設を含む事象を模擬する。なお、これらの第1シミュレータサーバ6および第2シミュレータサーバ7でシミュレータサーバ群24が構成される。
また、特定シミュレータサーバ8を含めた3つのシミュレータサーバ6,7,8で3つの施設を含む事象を模擬することもできる。なお、4台以上のシミュレータサーバを設けるようにし、4つ以上の施設を含む事象を模擬しても良い。
特定シミュレータサーバ8は、第1施設および第2施設に共通して関連する特定施設およびこの施設に関連する要素(事象)を模擬する。例えば、特定施設が中央給電指令所であるとすると、この中央給電指令所で行われる様々な制御内容を模擬する。なお、特定シミュレータサーバ8は、可搬型のコンピュータ、所謂ノートパソコンで構成される。また、特定シミュレータサーバ8を設けずに、第1シミュレータサーバ6および第2シミュレータサーバ7のみでシミュレーションを行っても良い。
第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8は、第1伝送切替スイッチ9、第2伝送切替スイッチ10、第3伝送切替スイッチ11および第4伝送切替スイッチ12にそれぞれ接続される。
第1伝送切替スイッチ9は、各第1伝送回線14および共通伝送回線17に接続される。この第1伝送切替スイッチ9を介して、各シミュレータサーバ6,7,8と各大型表示装置2との間で各種情報(パラメータ)を伝送することができる。
第2伝送切替スイッチ10は、各第2伝送回線15および共通伝送回線17に接続される。この第2伝送切替スイッチ10を介して、各シミュレータサーバ6,7,8と各現場盤端末3との間で各種情報(パラメータ)を伝送することができる。
第3伝送切替スイッチ11は、各第3伝送回線16および共通伝送回線17に接続される。この第3伝送切替スイッチ11を介して、各シミュレータサーバ6,7,8と各インストラクタ端末4との間で各種情報(パラメータ)を伝送することができる。
第4伝送切替スイッチ12は、各シミュレータサーバ6,7,8を互いに接続する。この第4伝送切替スイッチ12を介して、各シミュレータサーバ6,7,8の間で各種情報(パラメータ)を伝送することができる。この第4伝送切替スイッチ12が設けられることで、複数の施設を互いに連携させる訓練が行えるようになる。
なお、複数の施設を互いに連携させる訓練を行う場合は、第4伝送切替スイッチ12が、各シミュレータサーバ6,7,8の間で各種情報の伝送を可能にする。また、1つの施設のみで独立して訓練を行う場合は、第4伝送切替スイッチ12が、各シミュレータサーバ6,7,8の間で各種情報の伝送を不能にしても良い。
次に、第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8のシステム構成を図2に示すブロック図を参照して説明する。また、第1伝送切替スイッチ9、第2伝送切替スイッチ10、第3伝送切替スイッチ11および第4伝送切替スイッチ12のシステム構成を図3に示すブロック図を参照して説明する。
図2に示すように、第1シミュレータサーバ6は、各伝送切替スイッチ9,10,11,12の通信を行う第1通信部26と、第1シミュレータサーバ6を制御する第1サーバ制御部29と、第1施設を含む事象を模擬する第1シミュレータ部32と、事象の模擬に必要な第1パラメータを設定する第1パラメータ設定部35と、所定の条件に基づいて第1パラメータの少なくとも一部を変更する第1パラメータ変更部38と、シミュレーションに関する各種情報を記憶する第1シミュレータ記憶部41とを備える。
第2シミュレータサーバ7は、各伝送切替スイッチ9,10,11,12の通信を行う第2通信部27と、第2シミュレータサーバ7を制御する第2サーバ制御部30と、第2施設を含む事象を模擬する第2シミュレータ部33と、事象の模擬に必要な第2パラメータを設定する第2パラメータ設定部36と、所定の条件に基づいて第2パラメータの少なくとも一部を変更する第2パラメータ変更部39と、シミュレーションに関する各種情報を記憶する第2シミュレータ記憶部42とを備える。
特定シミュレータサーバ8は、各伝送切替スイッチ9,10,11,12の通信を行う特定通信部28と、特定シミュレータサーバ8を制御する特定サーバ制御部31と、特定施設を含む事象を模擬する特定シミュレータ部34と、事象の模擬に必要な特定パラメータを設定する特定パラメータ設定部37と、所定の条件に基づいて特定パラメータの少なくとも一部を変更する特定パラメータ変更部40と、シミュレーションに関する各種情報を記憶する特定シミュレータ記憶部43とを備える。
各シミュレータサーバ6,7,8のシミュレータ部32,33,34は、シミュレーションの対象となる施設および関連する事象の物理現象をモデル化し、かつ動作ロジックを模擬する。このシミュレーションは、各パラメータに基づいてコンピュータが演算を行うことで実現される。また、各シミュレータサーバ6,7,8のパラメータ変更部38,39,40は、他のシミュレータサーバ6,7,8から伝送されたパラメータに基づいて、自己のシミュレータサーバ6,7,8に設定されたパラメータを変更することができる。これらのパラメータ変更部38,39,40が設けられることで、複数の施設を互いに連携させる訓練または解析が行えるようになる。
また、各シミュレータサーバ6,7,8のシミュレータ部32,33,34は、それぞれ独立して演算を行って事象を模擬することが可能である。つまり、1つの施設およびこれに関連する事象の模擬を行い、この施設の訓練または解析を行うことができる。
図3に示すように、各伝送切替スイッチ9,10,11,12は、対応する伝送切替スイッチ9,10,11,12を制御するスイッチ制御部44,45,46,47と、1の装置から伝送された各種情報(パラメータ)を他の装置に伝送する伝送部48,49,50,51と、この伝送部51を用いた各種情報の伝送が可能な状態と各種情報の伝送が不可能な状態とを切り替える切替部52,53,54,55とを備える。
このように、第4伝送切替スイッチ12の切替部55を用いて、伝送部51を用いたパラメータの伝送が可能な状態とパラメータの伝送が不可能な状態とを切り替えることができる。このようにすれば、訓練または解析の内容に応じて切替部55により適宜切り替えを行うことができる。そのため、それぞれの施設の訓練または解析を個別に行うことができる。さらに、互いの施設が関連する訓練または解析を行うこともできる。
(第1実施形態)
次に、第1実施形態のシミュレーションについて図4から図6を用いて説明する。なお、図1から図3を適宜参照する。
図4に示すように、第1実施形態では、原子力発電所の1号機56(第1発電プラント)と2号機57(第2発電プラント)とで電力を融通し合う事象を模擬し、これに対応する訓練または解析を行う。第1シミュレータサーバ6の第1シミュレータ部32が1号機56の模擬を行うとともに、第2シミュレータサーバ7の第2シミュレータ部33が2号機57の模擬を行う。
原子力発電所の1号機56には、外部電源58から送電線59を介して1号機用配電設備67に電力が供給される。この1号機用配電設備67から1号機56の各種機器に送電線60を介して電力が供給される。また、震災などの災害時に外部電源58から電力の供給を受けられない場合に使用する非常用ディーゼル発電機69が設けられる。この非常用ディーゼル発電機69と1号機用配電設備67とが送電線61を介して接続される。
原子力発電所の2号機57にも、外部電源58から送電線62を介して2号機用配電設備68に電力が供給される。この2号機用配電設備68から2号機57の各種機器に送電線63を介して電力が供給される。また、震災などの災害時に外部電源58から電力の供給を受けられない場合に使用する非常用ディーゼル発電機70が設けられる。この非常用ディーゼル発電機70と2号機用配電設備68とが送電線64を介して接続される。
原子力発電所の1号機56と2号機57とは、運転が停止しているときに、外部電源58から電力が供給され、この電力を用いて原子炉の冷却が行われる。また、災害時に外部電源58が喪失した場合に、非常用ディーゼル発電機69,70を起動し、その電力を用いて原子炉の冷却が行われる。
災害時に使用する緊急対策所71が設けられる。さらに、1号機56と2号機57との間には、非常用配電設備72が設けられる。この非常用配電設備72は、1号機用配電設備67と送電線65で接続されるとともに、2号機用配電設備68と送電線66で接続される。緊急対策所71は、非常用配電設備72、1号機用配電設備67、1号機56の非常用ディーゼル発電機69、2号機用配電設備68、および2号機57の非常用ディーゼル発電機70のそれぞれに通信線73,74,75,76,77を介して接続される。そして、緊急対策所71から発せられる指令によって、これらの装置の操作を行うことができる。
なお、1号機56と2号機57とのいずれか一方の施設で、外部電源58が喪失し、かつ非常用ディーゼル発電機の起動に失敗するというトラブルが重畳した生じた場合に、緊急対策所71を介して他方の施設から電力を融通させることができる。
また、1号機56と2号機57とは、それぞれ緊急対策所71と通信線78,79を介して接続される。つまり、1号機56の運転員または2号機57の運転員は、自分がいる施設の中央制御室から緊急対策所71を介して他の施設の配電設備67,68,72および非常用ディーゼル発電機69,70を操作することができる。
第1実施形態では、第1シミュレータサーバ6の第1シミュレータ部32が、1号機56および緊急対策所71の事象を模擬するとともに、第2シミュレータサーバ7の第2シミュレータ部33が、2号機57の事象を模擬する(図1および図2参照)。1号機56の運転員は、所定の大型表示装置2に表示される中央制御室の操作盤を用いて訓練を行う。また、2号機57の運転員は、他の大型表示装置2に表示される中央制御室の操作盤を用いて訓練を行う。
なお、各シミュレータ部32,33,34は、各パラメータ設定部35,36,37により予め設定されたパラメータに基づいて演算を行って事象の模擬を行う(図2参照)。例えば、シミュレータ記憶部41,42,43に記憶された施設を含む要素のモデル(模擬プログラム)に、パラメータをあてはめた状態で演算を行い、所定の結果を得る。
第1実施形態では、1号機56の所内電源のモデルで外部電源58が喪失し、かつ非常用ディーゼル発電機69が起動に失敗するパラメータが予め設定される。これに対して2号機57の所内電源のモデルでは、外部電源58および非常用ディーゼル発電機70が正常に動作するパラメータが予め設定される。
図5に示すように、1号機56の所内電源のモデルは、外部電源58のモデルのパラメータが「異常」であり、2号機57の所内電源のモデルは、外部電源58のモデルのパラメータが「正常」である。つまり、1号機56で外部電源58が喪失した事象を模擬する。ここで、1号機56の運転員は、外部電源58から電力の供給を受けられないため、非常用ディーゼル発電機69を起動させる操作を行う。
しかしながら、1号機56の非常用ディーゼル発電機69のモデルのパラメータが「異常」である。そのため、この非常用ディーゼル発電機69の出力電力などのパラメータが全て「ゼロ」になる。つまり、1号機56で非常用ディーゼル発電機69の起動に失敗した事象を模擬する。
1号機56の運転員は、2号機57に対して電力の供給を求める操作を行う。ここで、1号機56の運転員の操作に基づいて、1号機56の要求パラメータが2号機57に対して伝送される。つまり、1号機56の要求パラメータが第1シミュレータサーバ6から第2シミュレータサーバ7に伝送される(図1参照)。なお、この伝送は、各シミュレータサーバ6,8を接続する第4伝送切替スイッチ12を介して成される。
1号機56の要求パラメータを取得した2号機57の運転員は、非常用ディーゼル発電機70の起動を行う。なお、2号機57の非常用ディーゼル発電機70の起動を、1号機56の運転員が緊急対策所71を介して行っても良い。この2号機57の非常用ディーゼル発電機70は、所定の電力を出力する。例えば、2号機57の非常用ディーゼル発電機70は「480KW」の電力を出力する。なお、2号機57は、外部電源58から電力供給を受けているので、非常用ディーゼル発電機70の全電力を1号機56に出力することができる。
ここで、2号機57の非常用ディーゼル発電機70の給電パラメータが1号機に対して伝送される。つまり、2号機57の給電パラメータが第2シミュレータサーバ7から第1シミュレータサーバ6に伝送される(図1参照)。なお、この伝送は、各シミュレータサーバ6,8を接続する第4伝送切替スイッチ12を介して成される(図3参照)。
給電パラメータを2号機57から取得した1号機56では、2号機57の非常用ディーゼル発電機70から受電を開始する。そして、1号機56で消費される電力が算出される。例えば、1号機56は「240KW」の電力を消費する。
そして、1号機56の消費パラメータが2号機に対して伝送される。つまり、1号機56の消費パラメータが第1シミュレータサーバ6から第2シミュレータサーバ7に伝送される(図1参照)。なお、この伝送は、各シミュレータサーバ6,7,8を接続する第4伝送切替スイッチ12を介して成される(図3参照)。
消費パラメータを1号機56から取得した2号機57では、2号機57の非常用ディーゼル発電機70が出力する電力のパラメータが変更される。例えば、2号機57の非常用ディーゼル発電機70の出力電力が、1号機56の消費電力に合わせて「240KW」に変更される。このパラメータの変更は、第2シミュレータサーバ7の第2パラメータ変更部39が、第2パラメータ設定部36が設定した内容を変更することで成される(図2参照)。
以降、第1シミュレータサーバ6と第2シミュレータサーバ7との間でパラメータがやり取りされる(図1参照)。このように、1号機56と2号機57を同時に運転させて互いの施設を連携させる訓練を行うことができる。
なお、第1実施形態では、緊急対策所71の事象の模擬を第1シミュレータサーバ6で行っているが、緊急対策所71の事象の模擬を特定シミュレータサーバ8で行っても良い。つまり、第1シミュレータサーバ6と第2シミュレータサーバ7との間に特定シミュレータサーバ8が介在しても良い。
なお、第1実施形態では、1号機56または2号機57の運転員が、緊急対策所71を介して非常用ディーゼル発電機69,70および配電設備67,68,72を操作しているが、他の者が操作を行っても良い。例えば、現場盤端末3(図1参照)で訓練を行っている現場作業員が、非常用ディーゼル発電機69,70および配電設備67,68,72を操作しても良い。
次に、各シミュレータサーバ6,7,8が実行する処理について図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図1から図5を適宜参照する。以下のフローチャートの各ステップの説明にて、例えば「ステップS11」と記載する箇所を「S11」と略記する。
この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、本シミュレータサーバ6,7,8でシミュレーションが実行される。なお、シミュレータサーバ6,7,8が他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
また、第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8は、いずれも同一の処理を実行可能である。そのため、後述の第2から第4実施形態の各シミュレータサーバ6,7,8が実行する処理において、第1実施形態の処理と重複する部分の説明を省略する。
図6に示すように、まず、シミュレータサーバ6,7,8のパラメータ設定部35,36,37(図2参照)は、本シミュレータサーバ6,7,8でシミュレーション(模擬)の対象としている本施設(例えば、図4に示す1号機56)のモデルのパラメータを設定する(S11)。
なお、このパラメータは、インストラクタ端末4(図1参照)を操作する指導員の操作に基づいて設定される。さらに、このパラメータは、シミュレータサーバ6,7,8(図2参照)によるシミュレーションの開始前に入力されても良いし、シミュレーションの開始後に入力(変更)されても良い。また、インストラクタ端末4の操作に基づいて、パラメータの新たな入力または変更が無い場合は、S11を実行せずに次のステップに進むようにしても良い。
次に、本シミュレータサーバ6,7,8のサーバ制御部29,30,31(図2参照)は、通信部26,27,28を介して入力情報を取得する(S12)。この入力情報は、本施設の運転員が、本施設に対応する大型表示装置2(図1参照)を操作することで入力される情報である。例えば、本施設の運転員が、本施設に対応する大型表示装置2のタッチパネル25の画像に含まれる各種ボタンの操作を行うことで入力される情報である。
次に、本シミュレータサーバ6,7,8のシミュレータ部32,33,34は、パラメータ設定部35,36,37(図2参照)により設定されたパラメータに基づいて演算を行い、本施設を含む事象の模擬を行う(S13)。
次に、本シミュレータサーバ6,7,8のサーバ制御部29,30,31(図2参照)は、通信部26,27,28を介して模擬結果を、対応する大型表示装置2に出力する(S14)。この模擬結果を取得した大型表示装置2は、タッチパネル25に表示された操作盤に含まれる各種計器類の値を変更する。
次に、本シミュレータサーバ6,7,8のサーバ制御部29,30,31(図2参照)は、本施設と他の施設(例えば、図4に示す2号機57)とを連携させるシミュレーションを行っているか否かを判定する(S15)。なお、本施設と他の施設とを連携させるか否かは、第4伝送切替スイッチ12の切替部55(図3参照)が、伝送対象を切り替えることで予め設定される。この設定は、インストラクタ端末4または管理端末13を用いてシミュレーションの開始前に行われる。
ここで、本施設と他の施設との連携中でない場合(S15がNO)は、処理を終了する。一方、本施設と他の施設との連携中である場合(S15がYES)は、本施設のパラメータを伝送する(S16)。例えば、第1シミュレータサーバ6から第1パラメータの少なくとも一部(例えば、図5に示す要求パラメータ)が第2シミュレータサーバ7に伝送される(図2参照)。この伝送は、第4伝送切替スイッチ12の伝送部51(図3参照)を介して成される。なお、本施設のパラメータの伝送が必要ない場合は、S16を実行せずに次のステップに進むようにしても良い。
次に、本シミュレータサーバ6,7,8のサーバ制御部29,30,31(図2参照)は、他の施設を含む事象の模擬を行っている他のシミュレータサーバ6,7,8から他の施設のパラメータを取得したか否かを判定する(S17)。例えば、第2シミュレータサーバ7から第2パラメータの少なくとも一部(例えば、図5に示す給電パラメータ)が第1シミュレータサーバ6に伝送された否かを判定する(図2参照)。
ここで、他の施設のパラメータを取得していない場合(S17がNO)は、処理を終了する。一方、他の施設のパラメータを取得した場合(S17がYES)は、取得した他の施設のパラメータに基づいて、本施設のパラメータの少なくとも一部の変更を行う(S18)。例えば、第2シミュレータサーバ7(図2参照)から伝送された第2パラメータに基づいて、第1シミュレータサーバ6の第1パラメータ変更部38が、第1パラメータの少なくとも一部(例えば、図5に示す1号機56の消費電力)の変更を行う。そして、処理を終了する。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のシミュレーションについて図7から図9を用いて説明する。なお、図1から図3を適宜参照する。
図7に示すように、第2実施形態では、原子力発電所の1号機80(第1発電プラント)と2号機81(第2発電プラント)とで、原子炉冷却用の水を融通し合う事象を模擬し、これに対応する訓練または解析を行う。第1シミュレータサーバ6の第1シミュレータ部32が1号機80の模擬を行うとともに、第2シミュレータサーバ7の第2シミュレータ部33が2号機81の模擬を行う(図1参照)。
1号機80は、1号機用給水タンク82と1号機用給水ポンプ84とを備える。また、2号機81は、2号機用給水タンク83と2号機用給水ポンプ85とを備える。ここで、震災などの災害時には、それぞれの給水ポンプ84,85が故障した場合の訓練を行う。給水ポンプ84,85が故障しているため、各給水タンク84,85から給水を受けることができなくなる。このような災害時には、ポンプ車86,87が導入され、代替給水タンク88からホース89,90を介して、1号機80および2号機81が給水を受ける。なお、代替給水タンク88は、1号機80(第1施設)および2号機81(第2施設)に共通して関連する共通要素である。
第2実施形態では、第1シミュレータサーバ6の第1シミュレータ部32が、1号機80および代替給水タンク88の事象を模擬するとともに、第2シミュレータサーバ7の第2シミュレータ部33が、2号機81および代替給水タンク88の事象を模擬する(図1および図2参照)。1号機80の運転員は、所定の大型表示装置2に表示される中央制御室の操作盤を用いて訓練を行う。また、2号機81の運転員は、他の大型表示装置2に表示される中央制御室の操作盤を用いて訓練を行う。
図8に示すように、1号機80の給水モデルでは、1号機用給水タンク82のモデル、1号機用給水ポンプ84のモデル、代替給水タンク88のモデル、1号機用ポンプ車86のモデル、および1号機80のモデルの水の使用量に関するパラメータが設定される。同様に、2号機81の給水モデルでも、2号機用給水タンク83のモデル、2号機用給水ポンプ85のモデル、代替給水タンク88のモデル、2号機用ポンプ車87のモデル、および2号機81のモデルの水の使用量に関するパラメータが設定される。例えば、代替給水タンク88の現在保水量は「19992m3」である。
第2実施形態では、1号機80および2号機81のぞれぞれの給水ポンプ84,85のモデルのパラメータが「異常」である。つまり、ぞれぞれの給水ポンプ84,85が故障している。ここで、1号機80および2号機81のそれぞれの運転員は、ポンプ車86,87を起動して代替給水タンク88から水の供給を受ける操作を行う。例えば、ポンプ車86,87の送水量は「250m3/min」である。この送水量から算出される各発電所の水の使用量は「4m3/sec」である。
ここで、1号機80の水の使用量のパラメータが第1シミュレータサーバ6から第2シミュレータサーバ7に伝送される(図1参照)。さらに、2号機81の水の使用量のパラメータが第2シミュレータサーバ7から第1シミュレータサーバ6に伝送される。なお、これらパラメータの伝送は、各シミュレータサーバ6,8を接続する第4伝送切替スイッチ12を介して成される。さらに、これらパラメータの伝送は、一定時間毎に繰り返し実行される。
第1シミュレータサーバ6では、伝送されたパラメータに基づいて2号機81の水の使用量を算出する。そして、第1シミュレータサーバ6は、1号機80および2号機81の水の総使用量を算出する。この使用量に基づいて代替給水タンク88の現在保水量が減少される。例えば、給水が開始されてから30分経過後の代替給水タンク88の現在保水量が「4992m3」になる。
つまり、第2シミュレータサーバ7から伝送された第2パラメータに基づいて、第1シミュレータサーバ6の第1パラメータ変更部38(図2参照)が、第1パラメータの少なくとも一部(例えば、代替給水タンク88の現在保水量)の変更を行う。
また、第2シミュレータサーバ7も同様に、伝送されたパラメータに基づいて1号機80の水の使用量を算出する。そして、第2シミュレータサーバ7は、1号機80および2号機81の水の総使用量を算出する。この使用量に基づいて代替給水タンク88の現在保水量が減少される。
つまり、第1シミュレータサーバ6から伝送された第1パラメータに基づいて、第2シミュレータサーバ7の第2パラメータ変更部39が、第2パラメータの少なくとも一部(例えば、代替給水タンク88の現在保水量)の変更を行う。
次に、各シミュレータサーバ7,8が実行する処理について図9のフローチャートを用いて説明する。なお、図1から図5を適宜参照する。なお、第2実施形態の各シミュレータサーバ7,8が実行する処理では、S13Aのみが、前述の第1実施形態の各シミュレータサーバ7,8が実行する処理と異なり、他のステップは同じである。
図9に示すように、S13にて本施設を含む事象の模擬を行った後に、本施設(例えば、図7に示す1号機80)および他の施設(例えば、図7に示す2号機81)に共通して関連する代替給水タンク88(共通要素)の模擬を行う(S13A)。そして、S14に進む。
このように、第2実施形態では、各シミュレータサーバ7,8(図1参照)のそれぞれにおいて代替給水タンク88の模擬が行われる。そして、各シミュレータサーバ7,8の間でパラメータのやり取りを行うことで、各シミュレータサーバ7,8で模擬される代替給水タンク88のパラメータが同一になる。このようにすれば、1号機80と2号機81とで共通の代替給水タンク88(給水施設)を用いて、水を融通し合う訓練または解析を行うことができる。つまり、共通要素によって、それぞれの施設の状況が変化する訓練または解析を行うことができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のシミュレーションについて図10から図12を用いて説明する。なお、図1から図3を適宜参照する。なお、第3実施形態の各シミュレータサーバ7,8が実行する処理は、前述した第1実施形態の処理(図6参照)と同一であるので説明を省略する。
図10に示すように、第3実施形態では、中央給電指令所91と火力発電所92(発電プラント)とで連携を行うときの事象を模擬し、これに対応する訓練または解析を行う。第1シミュレータサーバ6の第1シミュレータ部32が中央給電指令所91の模擬を行うとともに、第2シミュレータサーバ7の第2シミュレータ部33が火力発電所92の模擬を行う(図1参照)。
例えば、中央給電指令所91から火力発電所92に指令情報(第1パラメータ、電力パラメータ)を伝送する。火力発電所92は、受信した指令情報に基づいて運転を行うことができる。つまり、火力発電所92を中央給電指令所91から遠隔操作により運転することができる。また、火力発電所92から中央給電指令所91に監視情報(第2パラメータ、電力パラメータ)を伝送する。この監視情報には、火力発電所92の運転情報が含まれる。
中央給電指令所91は、監視情報に基づいて電力供給量の監視を行うことができる。中央給電指令所91は、電力需要量に対して電力供給量が足りなくなりそうな場合に、諸葛の火力発電所92に出力を上げる旨の指令情報を伝送する。
図11は、中央給電指令所91の操作盤に表示される設定画面93である。この設定画面93は、大型表示装置2のタッチパネル25(図1参照)に表示される。中央給電指令所91の運転員が、この設定画面93を操作する訓練または解析を行うことができる。
この設定画面93には、火力発電所92の出力制御方法に関連する各種項目94,95,96,97が設けられる。例えば、本社からの要求に基づいて、「出力指示」の項目94,95,96,97の所定の目標出力値98が点灯する。この目標出力値98に基づいて、中央給電指令所91の運転員が、「出力設定」の項目95に対応する所定の目標出力値99を設定すると、火力発電所92に対して指令情報が伝送される。
図12に示すように、中央給電指令所91のモデルでは、火力発電所92に指令を行う遠隔指令プログラム(指令対話プログラム)と、火力発電所92の監視を行う遠隔監視プログラムとが実行されている。また、火力発電所92のモデルでは、発電出力を制御する出力制御プログラムが実行されている。この出力制御プログラムによって、中央制御室の操作盤に基づく指令である所内指令、または中央給電指令所91の指令に基づく遠隔指令に従った運転が実行される。なお、所内指令よりも中央給電指令所91の指令を優先する。
例えば、中央給電指令所91の運転員が、「1000MW」の目標出力の遠隔指令を入力したとする。ここで、遠隔指令プログラムは、指令パラメータを中央給電指令所91から火力発電所92に伝送する。つまり、指令パラメータが第1シミュレータサーバ6から第2シミュレータサーバ7に伝送される(図1参照)。
一方、火力発電所92の運転員が、「500MW」の目標出力の所内指令を入力したとする。ここで、出力制御プログラムは、所内指令に基づいて火力発電所92の目標出力を決定する。例えば、運転情報のパラメータの目標出力が「500MW」となる。なお、中央給電指令所91から指令パラメータが伝送されていない場合は、所内指令に基づく運転情報のパラメータが維持される。
中央給電指令所91から指令パラメータが伝送され、火力発電所92が指令パラメータを取得した場合は、火力発電所92目標出力が変更される。例えば、運転情報のパラメータの目標出力が「1000MW」となる。そして、この目標出力などを示す監視パラメータが、火力発電所92から中央給電指令所91に伝送される。
火力発電所92から監視パラメータを取得した中央給電指令所91は、この監視パラメータに基づいて、遠隔監視プログラムのパラメータを変更する。なお、監視パラメータは、火力発電所92から逐次伝送される。また、指令パラメータと監視パラメータのやり取りを繰り返しても良い。そして、所定時間経過後に、火力発電所92の現在出力の値が目標出力の値と同一になる。
つまり、第1シミュレータサーバ6から伝送された第1パラメータ(指令パラメータ)に基づいて、第2シミュレータサーバ7の第2パラメータ変更部39が、第2パラメータ(火力発電所92の運転情報のパラメータ)の少なくとも一部の変更を行う(図2参照)。
さらに、第2シミュレータサーバ7から伝送された第2パラメータ(監視パラメータ)に基づいて、第1シミュレータサーバ6の第1パラメータ変更部38が、第1パラメータの(遠隔監視プログラムのパラメータ)少なくとも一部の変更を行う(図2参照)。
このようにすれば、中央給電指令所91から火力発電所92を操作する事象の訓練または解析を行うことができる。
なお、第3実施形態では、第1シミュレータサーバ6が中央給電指令所91の模擬を行っているが、特定シミュレータサーバ8を用いて中央給電指令所91の模擬を行っても良い。その場合に、第2シミュレータサーバ7が他の火力発電所92の模擬を行っても良い。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のシミュレーションについて図13から図16を用いて説明する。なお、図1から図3を適宜参照する。
図13に示すように、第4実施形態では、中央給電指令所100(特定施設)と原子力発電所101(第1発電プラント)と火力発電所102(第2発電プラント)とで連携を行うときの事象を模擬し、これに対応する訓練または解析を行う。第1シミュレータサーバ6の第1シミュレータ部32が原子力発電所101の模擬を行い、第2シミュレータサーバ7の第2シミュレータ部33が火力発電所102の模擬を行い、特定シミュレータサーバ8の特定シミュレータ部34が中央給電指令所100の模擬を行う(図1参照)。
第4実施形態では、何らかの原因で原子力発電所101が停止した状態を模擬する。図14に示すように、原子力発電所101が停止すると電力供給量103が下がる。中央給電指令所100は、電力供給量103と電力需要量104とを常時監視している。さらに、中央給電指令所100は、電力需要量104の予測も行っている。
例えば、原子力発電所101の停止時から所定時間経過後に電力需要量104がピークに達する場合を想定する。電力需要量104がピークに達すると、この電力需要量104に対して電力供給量103が足りなくなる。そこで、電力需要量104がピークに達する前に、中央給電指令所100の運転員が、遠隔操作により火力発電所102の出力を上げる訓練または解析を行う。
図15に示すように、中央給電指令所100のモデルでは、電力供給量103と電力需要量104とを常時監視しているとともに、今後の電力需要量104の増減を示す予定需要量の模擬を行う。
また、原子力発電所101のモデルは、運転情報の状態を示すパラメータが「異常」であり、現在出力のパラメータが「ゼロ」となっている。これに対して、火力発電所102のモデルは、運転情報の状態を示すパラメータが「正常」であり、現在出力のパラメータが「500MW」となっている。
ここで、原子力発電所101から中央給電指令所100に監視情報(第1パラメータ、電力パラメータ)が伝送される。つまり、監視パラメータが第1シミュレータサーバ6から特定シミュレータサーバ8に伝送される(図1参照)。また、火力発電所102から中央給電指令所100に監視情報(第2パラメータ、電力パラメータ)が伝送される。つまり、監視パラメータが第2シミュレータサーバ7から特定シミュレータサーバ8に伝送される(図1参照)。
監視情報(パラメータ)を取得した中央給電指令所100では、今後の電力供給量103の増減を示す予定供給量の模擬を行う。ここで、中央給電指令所100の運転員は、原子力発電所101の停止時から所定時間経過後に電力需要量104がピークに達したときに、電力供給量103が足りなくなることを把握する(図14参照)。例えば、中央給電指令所100で電力量の監視を行う遠隔監視プログラムにおいて、予定需要量のパラメータが「1000MW」となり、予定供給量のパラメータが「500MW」となる。
そして、中央給電指令所100の運転員が、火力発電所102の目標出力を「1100MW」とした遠隔指令を入力する。つまり、予定需要量に対して予定供給量が上回るようにする。ここで、遠隔指令プログラムは、指令パラメータ(特定パラメータ)を中央給電指令所100から火力発電所102に伝送する。つまり、指令パラメータが特定シミュレータサーバ8から第2シミュレータサーバ7に伝送される(図1参照)。
中央給電指令所100から指令パラメータが伝送され、火力発電所102が指令パラメータを取得した場合は、火力発電所102目標出力が変更される。例えば、運転情報のパラメータの目標出力が「1100MW」となる。そして、所定時間経過後に、火力発電所102の現在出力の値が目標出力の値と同一になる。
つまり、特定シミュレータサーバ8から伝送された特定パラメータ(指令パラメータ)に基づいて、第2シミュレータサーバ7の第2パラメータ変更部39が、第2パラメータ(火力発電所102の運転情報のパラメータ)の少なくとも一部の変更を行う(図2参照)。
このようにすれば、中央給電指令所100が発する指令によって、原子力発電所101と火力発電所102とで電力を融通し合う事象の訓練または解析を行うことができる。
次に、特定シミュレータサーバ8が実行する処理について図16のフローチャートを用いて説明する。なお、図1から図5を適宜参照する。なお、第4実施形態の第1シミュレータサーバ6および第2シミュレータサーバ7が実行する処理は、前述した第1実施形態の処理(図6参照)と同一であるので説明を省略する。
この処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。この処理が繰り返されることで、特定シミュレータサーバ8でシミュレーションが実行される。なお、特定シミュレータサーバ8が他のメイン処理を実行中に、この処理を割り込ませて実行しても良い。
図16に示すように、まず、中央給電指令所100を含む事象の模擬を行う特定シミュレータサーバ8において、特定シミュレータ部34(図2参照)は、電力供給量103と電力需要量104とを常時監視しているとともに、今後の電力需要量104の増減を示す予定需要量の模擬を行う(S21)。なお、電力供給量103と電力需要量104とを示すパラメータおよび予定需要量の模擬に必要なパラメータは、特定パラメータ設定部37により予め設定される(図2参照)。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定シミュレータ部34は、原子力発電所101の監視パラメータであって、原子力発電所101を含む事象の模擬を行う第1シミュレータサーバ6から伝送される監視パラメータを取得する(S22)。なお、この伝送は、第4伝送切替スイッチ12の伝送部51(図3参照)を介して成される。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定シミュレータ部34は、火力発電所102の監視パラメータであって、火力発電所102を含む事象の模擬を行う第2シミュレータサーバ7から伝送される監視パラメータを取得する(S23)。なお、この伝送は、第4伝送切替スイッチ12の伝送部51(図3参照)を介して成される。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定シミュレータ部34は、第1シミュレータサーバ6から伝送される監視パラメータ、および第2シミュレータサーバ7から伝送される監視パラメータに基づいて、今後の電力供給量103の増減を示す予定供給量の模擬を行う(S24)。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定サーバ制御部31は、電力量の模擬結果を出力する(S25)。例えば、大型表示装置2(図1参照)に表示される遠隔監視プログラムの画面において、予定需要量が「1000MW」であり、予定供給量が「500MW」である旨の表示が成される。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定サーバ制御部31は、特定通信部28を介して入力情報を取得する(S26)。この入力情報は、中央給電指令所100の運転員が、中央給電指令所100に対応する大型表示装置2(図1参照)を操作することで入力される情報である。例えば、中央給電指令所100の運転員が、火力発電所102の目標出力を「1100MW」とした遠隔指令を入力する。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定シミュレータ部34は、特定パラメータ設定部37(図2参照)により設定されたパラメータに基づいて演算を行い、中央給電指令所100を含む事象の模擬を行う(S27)。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定サーバ制御部31(図2参照)は、特定通信部28を介して指令パラメータを第2シミュレータサーバ7に伝送する(S28)。つまり、指令パラメータが中央給電指令所100から火力発電所102に伝送される。なお、この伝送は、第4伝送切替スイッチ12の伝送部51(図3参照)を介して成される。
次に、特定シミュレータサーバ8の特定サーバ制御部31(図2参照)は、特定通信部28を介して模擬結果を、中央給電指令所100に対応する大型表示装置2に出力する(S29)。そして、処理を終了する。
特定シミュレータサーバ8から第2シミュレータサーバ7に伝送される特定パラメータは、第1シミュレータサーバ6から伝送された第1パラメータに基づくものである。つまり、原子力発電所101のモデルの現在出力のパラメータが「ゼロ」となっていることに応じて中央給電指令所100から指令パラメータが火力発電所102で伝送される。
第4伝送切替スイッチ12の伝送部51(図3参照)は、第1パラメータの少なくとも一部を第1シミュレータ部32から特定シミュレータ部34に伝送する。さらに、伝送された第1パラメータに基づいて変更された特定パラメータの少なくとも一部を特定シミュレータ部34から第2シミュレータ部33に伝送する。このようにすれば、複数の施設に加えて、さらに他の特定施設を連携させる訓練または解析を行うことができる。
本実施形態に係るプラントシミュレータを第1実施形態から第4実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。例えば、第3および第4実施形態の中央給電指令所のモデルを第1および第2実施形態で用いても良い。
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
本実施形態の第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
なお、本実施形態の第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8で実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
また、第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8で実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、この第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
なお、本実施形態では、第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8を設け、それぞれにシミュレータ部が構築されているが、1のコンピュータを用いて複数のシミュレータ部を構築しても良い。例えば、仮想化技術を用いて1のコンピュータの内部に第1シミュレータサーバ6、第2シミュレータサーバ7および特定シミュレータサーバ8を設け、それぞれにシミュレータ部を構築しても良い。つまり、1の物理ハードウェアに複数の仮想サーバを構築しても良い。
以上説明した実施形態によれば、第1パラメータの少なくとも一部を第1シミュレータ部から第2シミュレータ部に伝送する伝送部と、伝送された第1パラメータに基づいて第2シミュレータ部の第2パラメータの少なくとも一部を変更する変更部とを備えることにより、複数の施設が関連する訓練または解析を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。