以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
[実施形態1]
1.冷却回路
本実施形態に係るエンジンの冷却システムの概要について、図1を用い説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジンは、エンジン本体1と、冷却システム2と、を有する。エンジン本体1は、シリンダブロック1aとシリンダヘッド1bとを有する。本実施形態では、エンジン本体1の一例として、直列4気筒のガソリンエンジンを採用している。
シリンダブロック1aには、シリンダボア10a〜10dに対応してシリンダライナが形成されている。さらに、シリンダライナの外周にはシリンダボア壁(周囲壁)11が形成され、さらにシリンダボア壁11の周囲を囲むように冷却液の流通路であるブロックウォータージャケット12が設けられている。
ここで、図1においては、“EX”と表記した側がシリンダブロック1aの排気側、“IN”と表記した側がシリンダブロック1aの吸気側としている。そして、ブロックウォータージャケット12は、シリンダブロック1aの吸気側に設けられた吸気側ウォータージャケット12bと、シリンダブロック1aの排気側に設けられた排気側ウォータージャケット12aと、を有している。吸気側ウォータージャケット12bと排気側ウォータージャケット12aとは、気筒列方向の一端部と他端部で互いに連続している。
冷却システム2は、可変ウォーターポンプ20と、ラジエータ21と、冷却液流路FL1〜FL16と、を有する。可変ウォーターポンプ20とブロックウォータージャケット12の排気側ウォータージャケット12aとは、冷却液流路FL1で接続されており、冷却液流路FL1は、排気側ウォータージャケット12aに対して冷却液を導入するための導入部である。
冷却液流路FL2は、冷却液流路FL1を通り導入された冷却液が、排気側ウォータージャケット12a内を流れる流路であり、冷却液流路FL7との接続部分(排出部)まで気筒列方向に沿って延びている。
冷却液流路FL3は、吸気側ウォータージャケット12b内を冷却液が流れる流路であり、冷却液流路FL2と並行するように、冷却液流路FL7との接続部分(排出部)まで気筒列方向に沿って延びている。
冷却液流路FL2と冷却液流路FL3とは、#1気筒のシリンダボア10aの外周部で連続しており、冷却液流路FL2及び冷却液流路FL3を流れる冷却液は、#1気筒側から#4気筒側に向けてそれぞれ流れる。
冷却液流路FL4は、冷却液流路FL2の途中の部分から分岐し、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ22に接続されている。なお、本実施形態では、冷却液流路FL2からの冷却液流路FL4の分岐を、一例として#4気筒に対応する部分に設けている。また、後述するが、冷却液流路FL4は、シリンダボア10a〜10dの下部に沿って流通した冷却液を流す流路であり、シリンダブロック1aからの受熱が相対的に少ない冷却液をEGRクーラ22に送ることができるようになっている。よって、本実施形態に係るエンジンでは、EGRクーラ22に導入される冷却液とEGRクーラ22に導入される排気ガスとの温度差を大きく確保できるので、EGRクーラ22の冷却効率を高めることができる。
冷却液流路FL5は、冷却液流路FL3の途中の部分から分岐し、自動変速機オイル熱交換器26に接続されている。冷却液流路FL5には、逆止弁28が介挿されている。本実施形態では、冷却液流路FL3からの冷却液流路FL5の分岐を、一例として#2気筒に対応する部分からとしている。
冷却液流路FL6は、自動変速機オイル熱交換器26と可変ウォーターポンプ20とを接続する。そして、冷却液流路FL6は、途中の部分でオイルクーラ27を経由している。このため、自動変速機オイル熱交換器26から排出された冷却液は、エンジンオイルの冷却を行った後に可変ウォーターポンプ20に戻される。
冷却液流路FL7は、シリンダブロック1aから排出された冷却液をシリンダヘッド1bに導くための流路である。換言すると、冷却液流路FL7は、シリンダブロック1aに設けられた冷却液流路FL2及び冷却液流路FL3と、シリンダヘッド1bに設けられた冷却液流路FL8と、を接続するための流路である。
冷却液流路FL9は、冷却液流路FL8の途中の部分から分岐された流路であり、冷却液の一部をエアバイパスバルブ24に導くための流路である。なお、エアバイパスバルブ24は、エンジンのスーパーチャージャ(不図示)をバイパスするように構成されたエアバイパス通路でのエア流量を制御するためのバルブである。本実施形態において、エアバイパスバルブ24は、エンジンルーム内において、車両前後方向におけるシリンダブロックよりも前方側に配置されている。
冷却液流路FL9を流れる冷却液は、シリンダブロック1a内のブロックウォータージャケット12で受熱することで加温されている。このため、冷却液流路FL9を流れる冷却液は、温度がある程度上昇した状態となっており、シリンダブロックよりも車両前後方向の前方側に配置されたエアバイパスバルブ24が走行風により凍結することを防止できるように供給される。
冷却液流路FL9は、一端が冷却液流路FL10に接続されている。冷却液流路FL10は、他端がシリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍部分に設けられた冷却液流路FL13に接続されている。冷却液流路FL10は、エンジンルーム内において、車両前後方向におけるシリンダブロック1aよりも前方側に配置されたエレキスロットルバルブ25を経由するように設けられている。冷却液流路FL10を流れる冷却液についても、温度がある程度上昇した状態となっており、上述したエアバイパスバルブ24と同様に、エレキスロットルバルブ25の凍結防止のために供給される。
冷却液流路FL11は、EGRクーラ22とヒータ23とを接続する流路である。このため、ヒータ23には、EGRクーラ22で排気ガスと熱交換することで温度が上昇した冷却液が送られる。
冷却液流路FL12は、ヒータ23で熱が奪われて温度が低下した冷却液を、シリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍の冷却液流路FL13に供給するための流路である。冷却液流路FL12を流れる冷却液は、上述のように、ヒータ23で熱が奪われて温度が低下しているので、シリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍を冷却することができる。
なお、ヒータ23の作動が制限されるレベルのエンジン冷間時においては、EGRクーラ22で温められた冷却液が冷却液流路FL12を通り、ヒータ23で熱が奪われないままシリンダヘッド1bの排気ポート近傍に送られる。このため、EGRクーラ22で温められた冷却液により、シリンダヘッド1bの排気ポートが保温又は温度低下が抑制されることとなり、触媒(不図示)に高温の排気ガスを供給することができ、エミッション性能が確保できる。
冷却液流路FL13は、シリンダヘッド1bの排気ポート近傍を#4気筒側から#1気筒側に向けて延びている。そして、冷却液流路FL13は、冷却液流路FL14及び冷却液流路FL16に接続されている。冷却液流路FL13を流れる冷却液は、シリンダヘッド1bの排気ポート近傍の熱を奪いながら下流側へと導かれる。ただし、上述のように、ヒータ23の作動が制限されるレベルのエンジン冷間時においては、EGRクーラ22を通過することで温められた冷却液により、シリンダヘッド1bの排気ポートが保温される。
冷却液流路FL14は、冷却液流路FL16を介して冷却液流路FL8及び冷却液流路FL13と可変ウォーターポンプ20とを接続する流路である。
なお、冷却液流路FL14は、冷却液流路FL8との接続部分で分岐されており、もう一方の端部でラジエータ21にも接続されている。冷却液流路FL15は、逆止弁29を介してラジエータ21と可変ウォーターポンプ20とを接続する。
冷却液流路FL16は、シリンダヘッド1bにおける排気ポート近傍の冷却液流路FL13を流れてきた冷却液、及び冷却液流路FL8を流れてきた冷却液の一部が、ラジエータ21を経由せず可変ウォーターポンプ20に戻されるための流路である。
2.シリンダブロック1aにおける冷却構造
シリンダブロック1aにおける冷却構造について、図2を用い説明する。図2は、エンジン本体1のシリンダブロック1aとウォータージャケットスペーサ30とを示す模式展開斜視図である。なお、図2においては、X方向右側がエンジン本体1の#1気筒側であり、X方向左側がエンジン本体1の#4気筒側である。
図2に示すように、本実施形態に係るエンジン本体1のシリンダブロック1aには、シリンダボア10a〜10dを囲むシリンダライナが嵌め込まれている。そして、シリンダライナの外周のシリンダボア壁11の外周面に面する状態でブロックウォータージャケット12が設けられている。
シリンダブロック1aにおけるY方向手前の側壁(排気側の側壁)には、導入口13と取出口14が開けられている。導入口13及び取出口14は、それぞれブロックウォータージャケット12に連通している。なお、導入口13は、図1の冷却液流路FL1中に含まれ、取出口14は、冷却液流路FL4中に含まれる。
また、図2では、図示を省略しているが、シリンダブロック1aにおけるY方向奥側の側壁(吸気側の側壁)には、冷却液流路FL5中に含まれる取出口が開けられている。
ここで、導入口13は、X方向右側の#1気筒に対応する部分に開けられている。これにより、導入口13からの冷却液は、ブロックウォータージャケット12の#1気筒に対応する部分に導入される。
一方、取出口14は、X方向左側の#4気筒に対応する部分に開けられている。これにより、ブロックウォータージャケット12を流れる冷却液の一部は、#4気筒に対応する部分から取出口14を通り冷却液流路FL4に取り出される。
ウォータージャケットスペーサ30は、樹脂製のスペーサ部材であって、ブロックウォータージャケット12に挿入されている。ウォータージャケットスペーサ30は、ブロックウォータージャケット12へ挿入された状態において、Z方向の上端辺がシリンダブロック1aの上面と略同じ高さレベルとなる。
また、ウォータージャケットスペーサ30の下端辺は、ブロックウォータージャケット12の底部に当接するか近接する状態となっている。
3.ウォータージャケットスペーサ30の構成
ウォータージャケットスペーサ30の構成について、図3を用い説明する。図3は、ウォータージャケットスペーサ30の構成を示す模式斜視図である。
図3に示すように、ウォータージャケットスペーサ30は、4つのシリンダボア10a〜10dにそれぞれ対応する4つの筒部を有する。X方向の右側から順に#1気筒のシリンダボア10a、#2気筒のシリンダボア10b、#3気筒のシリンダボア10c、#4気筒のシリンダボア10dにそれぞれ対応している。
ウォータージャケットスペーサ30は、Z方向の上部が#1ボア上部30a、#2ボア上部30b、#3ボア上部30c、#4ボア上部30dとなっており、Z方向の下部が#1ボア下部30g、#2ボア下部30h、#3ボア下部30i、#4ボア下部30jとなっている。#1〜4ボア上部30a〜30dと#1〜#4ボア下部30g〜30jとの間には、ウォータージャケットスペーサ30の側壁に対して外向きに凸のリブ部が設けられている。
#1ボア上部30aには、Y方向手前側に連通部30eが設けられ、Y方向奥側に連通部30fが設けられている。連通部30e,30fは、#1ボア上部30aの各壁部を内外に挿通する孔部である。本実施形態では、連通部30e,30fは、#1ボア上部30aにおける#2ボア上部30b側に寄った部分に設けられている。
また、連通部30eと連通部30fとは、Y方向に重複する位置に設けられている。
ウォータージャケットスペーサ30において、シリンダボア10a〜10dの間に相当する部分は、それぞれ外面側が曲面であるボア間部30o〜30qが設けられている。ボア間部30o〜30qの各内面側は、Z方向の上部が棚状の棚部30k〜30mが設けられている。
ウォータージャケットスペーサ30におけるX方向の左端部には、ブロックウォータージャケット12内を流れてきた冷却液をシリンダヘッド1b側に排出する部分である排出部30nが設けられている。本実施形態では、排出部30nは、Y方向に並ぶ状態で2つ設けられている。Y方向に2つ並ぶ排出部30nの相互間には、X方向内向きに突出し、Z方向に延びるリブ部30tが設けられている。
なお、図3では、Y方向手前側が排気側ウォータージャケット12aに挿入される部分であり、Y方向奥側が吸気側ウォータージャケット12bに挿入される部分である。
ウォータージャケットスペーサ30をY方向からの側面視する場合に、#1ボア上部30aの高さをW30a、#2ボア上部30bの高さをW30b、#3ボア上部30cの高さをW30c、#4ボア上部30dの高さをW30dとするとき、次の関係を満足する。
[数1]W30a>W30b>W30c>W30d
なお、本実施形態において#1〜#4ボア上部30a〜30dの高さW30a〜W30dは、隣り合うボア上部30a〜30d間で段差を以って変化するのではなく、X方向右側からX方向左側にゆくにしたがって漸減するように設定されている。
4.ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間
シリンダブロック1aにおけるブロックウォータージャケット12に対してウォータージャケットスペーサ30を挿入した状態での、ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間について、図4から図7を用い説明する。図4は、ブロックウォータージャケット12に対してウォータージャケットスペーサ30を挿入した状態でシリンダブロック1aを斜め上方から見た模式斜視図であり、図5から図7は、図4の各断面図である。
図4に示すように、シリンダブロック1aを#1気筒のシリンダボア10aに対応する領域AR1と、#2〜4気筒のシリンダボア10b〜10dに対応する領域AR2とに分けて考えるとき、領域AR1におけるウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間(矢印Aで指し示す隙間であって、図5中に示す隙間GA)は、領域AR2における隙間(矢印Bで指し示す隙間であって、図7中に示す隙間GB)よりも相対的に狭くなっている。
ここで、ブロックウォータージャケット12に対しては、導入口13に続く導入部から導入されることになり、当該導入部が接続される領域AR1の隙間(図5中に示す隙間GA)が、導入部から冷却液の流れ方向下流側に離間した領域AR2の隙間(図7中に示す隙間GB)よりも狭くなっている。
なお、本実施形態では、先ず排気側ウォータージャケット12aに対して冷却液が導入されるが、当該導入された冷却液は、#1気筒のシリンダボア10aの外周を回り込んで吸気側ウォータージャケットにも流れ込む。このため、排気側だけでなく、吸気側においても、領域AR1におけるウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間は、領域AR2における隙間よりも相対的に狭くなっている。
図5に示すように、導入部が接続された部分での断面において、ウォータージャケットスペーサ30における#1ボア上部30a及び#1ボア下部30gの各壁部は、ブロックウォータージャケット12内のシリンダボア壁11の外周面側に寄った位置に配されている。これにより、図5に示す部分を含む領域AR1では、ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間が相対的に狭くなっている。
なお、ブロックウォータージャケット12内における#1ボア上部30a及び#1ボア下部30gの各壁部のY方向位置は、リブ部30rにより外寄りに移動しないように規制されている。
また、Z方向において、リブ部30rは、導入部の中程に設けられているので、導入部から導入された冷却液は、#1ボア上部30aと#1ボア下部とに分配されるようになっている。
図6に示すように、連通部30e,30fが設けられた部分での断面でも、ウォータージャケットスペーサ30における#1ボア下部30gの壁部は、ブロックウォータージャケット12内のシリンダボア壁11の外周面側に寄った内寄りの位置に配されている。即ち、連通部30e,30fが設けられた部分においても、ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間が相対的に狭くなっている。
なお、ブロックウォータージャケット12内の冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30に設けられた連通部30e,30fを通り、ウォータージャケットスペーサ30の壁部よりも外周側の部分から、内周側の部分に流入することとなる。
図7に示すように、シリンダボアとシリンダボアとの間に対応する部分では、ウォータージャケットスペーサ30におけるボア間上部30sの壁部は、ブロックウォータージャケット12内のシリンダボア壁11の外周面から外側に離れた外寄りの位置に配されている。
一方、Z方向下部のボア間部30oの壁部は、ブロックウォータージャケット12内のシリンダボア壁11の外周面側に寄った内寄りの位置に配されている。そして、ボア間上部30sとボア間部30oとの間の部分に、上述の棚部30kが形成されることとなっている。
なお、図7では、シリンダボアとシリンダボアとの間に対応する部分を示したが、領域AR2においては、#2〜#4気筒の各シリンダボア10b〜10dに対応する部分についても、図7に示した構成と同様の構成を有する。
5.シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内での冷却液の流れ
シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内での冷却液の流れについて、図8及び図9を用い説明する。図8は、シリンダブロック1aのブロックウォータージャケット12内での冷却液の流れを模式的に示す模式図であり、図9は、ウォータージャケットスペーサ30に対する冷却液の流れを示す模式図である。
図8に示すように、可変ウォーターポンプ20から冷却液流路FL1を通り送られてきた冷却液は、導入口13から導入部を通り排気側ウォータージャケット12aの#1気筒のシリンダボア10aに対応する部分に導入される。排気側ウォータージャケット12aに導入された冷却液は、X方向の左側(#4気筒のシリンダボア10d側)に向けての流れ(冷却液流路FL2での流れ)と、シリンダボア壁11の外周側を回り込み吸気側ウォータージャケット12bに流れ込む流れとに分配される。吸気側ウォータージャケット12bに流れ込んだ冷却液は、X方向左側(#4気筒のシリンダボア10d側)に向けての流れ(冷却液流路FL3での流れ)となる。
冷却液流路FL2を流れる冷却液の一部は、取出口14から冷却液流路FL4に導出される。また、図8では図示を省略しているが、冷却液流路FL3を流れる冷却液の一部は、冷却液流路FL5に導出される。
冷却液流路FL2及び冷却液流路FL3をX方向左側端部(気筒列方向の端部)まで流れた冷却液は、冷却液流路FL7を通りシリンダヘッド1bへと送られる。なお、図9に示すように、冷却液流路FL2から冷却液流路FL7へ導出される冷却液と、冷却液流路FL3から冷却液流路FL7へ導出される冷却液と、はウォータージャケットスペーサ30のリブ部30tにより整流され、スムーズな流れが形成される。
図9に示すように、ブロックウォータージャケット12内における冷却液の流れを、ウォータージャケットスペーサ30を基準としてみるとき、可変ウォーターポンプ20から送られてきた冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30における#1気筒のシリンダボア10aに対応する#1ボア上部30a及び#1ボア下部30gに向けて導入される。#1ボア上部30aに向けて導入された冷却液は、X方向の左右に分配され、右側に流れた冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の#1ボア上部30aの外周面に沿って吸気側へと流れる。
なお、#1ボア下部30gに向けて導入された冷却液の一部についても、ウォータージャケットスペーサ30の#1ボア下部30gの外周面に沿って吸気側へと流れる。
一方、左側に流れた冷却液は、連通部30eを通り、ウォータージャケットスペーサ30の内側(ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との間)に導かれる。そして、冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の内側の冷却液流路FL21をX方向左側へと導かれ、シリンダヘッド1bへと送られる。
#1ボア下部30gに向けて導入された冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の外側の冷却液流路FL22をX方向左側へと導かれ、取出口14からEGRクーラ22に取り出される。
本実施形態では、冷却液流路FL21と冷却液流路FL22とを纏めて、冷却液流路FL2と呼んでいる。
吸気側に回り込んだ冷却液は、冷却液流路FL31と冷却液流路FL32とをX方向左側へと導かれ、シリンダヘッド1bへと送られる。本実施形態では、冷却液流路FL31と冷却液流路FL32とを纏めて、冷却液流路FL3と呼んでいる。
吸気側において、冷却液流路FL31を流れる冷却液は、連通部30fを通り、ウォータージャケットスペーサ30の内側(ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との間)に導かれる。そして、X方向左側(気筒列方向の端部)に導かれる。
冷却液流路FL32を流れる冷却液は、ウォータージャケットスペーサ30の外側に沿ってX方向左側(気筒列方向の端部)に導かれる。この際、冷却液流路FL32を流れる冷却液の一部は、オイルクーラ27へと取り出される。
6.効果
本実施形態では、図4を用い説明したように、導入側部分である領域AR1におけるウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間を、離間部分である領域AR2に対して相対的に狭くしているので、導入口13から導入部を介して導入された冷却液が最初に流通する#1気筒のシリンダボア10aの過冷却を抑制することができる。即ち、本実施形態では、領域AR1におけるウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との間の隙間を領域AR2に対して相対的に狭くしているので、隙間に流入する冷却液の流量を少なくして冷却液の流速を弱め、領域AR1での冷却液の流速を低くすることができ、当該部分でのシリンダボア10aの周囲壁(シリンダボア壁11の外周面)に対する冷却液の熱伝達率を小さくし、これにより#1気筒のシリンダボア10aの壁部の過冷却を抑制することができる。
また、本実施形態では、導入部との接続部分から冷却液の流れ方向の下流側に離間した領域AR2では、ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間を相対的に広くすることにより、冷却を促進することができる。即ち、離間部分である領域AR2では、ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との間の隙間に流入する冷却液の流量を相対的に多く確保して冷却液の流速を高め、当該部分でのシリンダボア10b〜10dのシリンダボア壁11の外周面に対する冷却液の熱伝達率を大きくし、これにより#2、#3、#4気筒を適切に冷却することができる。
従って、本実施形態では、#1〜#4気筒間でのシリンダボア壁11の壁面の温度バラツキを抑制することができる。
本実施形態では、冷却液の導入部が#1気筒のシリンダボア10aに対応する部分に設けられ、排出部30nがブロックウォータージャケット12の#4気筒側に対応する位置に設けられているので、ブロックウォータージャケット12に導入された冷却液は気筒列方向(X方向)に流れる。そして、上述のように、冷却液の流れ方向において、ウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間が調整されることにより、#1〜#4気筒に対応する各シリンダボア10a〜10d間での冷却性能差を低減することができる。
本実施形態では、図1等を用い説明したように、冷却液の導入部が#1気筒のシリンダボア10aに対応する部分に設けられ、排出部30nがブロックウォータージャケット12の#4気筒側に対応する位置に設けられていることに加えて、ブロックウォータージャケット12が吸気側ウォータージャケット12bと排気側ウォータージャケット12aとを有し、互いに#1気筒側のシリンダボア10aの外側で連続されているので、ブロックウォータージャケット12に導入された冷却液は、吸気側ウォータージャケット12bと排気側ウォータージャケット12aとをX方向に向けて並行して流れることになる。よって、本実施形態では、シリンダブロック1aにおける吸気側と排気側との冷却性能差を小さく抑えながら各シリンダボア壁11の壁面を冷却することが可能となる。
本実施形態では、領域AR1におけるウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間を相対的に狭くしているので、#1気筒のシリンダボア壁11の壁面の過冷却を抑制することができる。そして、領域AR2におけるウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間については、相対的に広くしているので、エンジンの運転状態が高負荷域に入ったような場合(例えば、運転者が急にアクセルを踏み込んだような場合)に可変ウォーターポンプ20の冷却液吐出量を大きくして、導入部から流入する冷却液の流量を大きくすることで、即座にシリンダボア壁11の壁面の冷却を行い、ノッキング等の異常燃焼の発生を抑制することができる。
本実施形態では、排気側ウォータージャケット12aに対して導入部(導入口13に続く部分)が接続されているので、吸気側ウォータージャケット12bと排気側ウォータージャケット12aとで冷却液の圧力差を作り出すことが可能となる。即ち、排気側ウォータージャケット12aの方が吸気側ウォータージャケット12bよりも相対的に冷却液の圧力が高くなる。このため、高負荷運転時のようにシリンダボアが高温になる場合には、可変ウォーターポンプ20の吐出量を大きくして導入部から流入する冷却液の量を増やすことで、#1気筒におけるシリンダボア10aに対応する部分においても、排気側ウォータージャケット12aから吸気側ウォータージャケット12bに向かう強い冷却液の流れを形成することができ、必要に応じた冷却性能の確保が可能となる。これより、高負荷運転時において、#1気筒のシリンダボア壁11の壁面の冷却性能を高くすることが可能である。
本実施形態では、隣接するシリンダボア10aとシリンダボア10bとのボア間(各シリンダボアの連結部)に相当する部分を除く箇所、具体的には、ウォータージャケットスペーサ30の気筒列方向におけるシリンダボア10aとシリンダボア10bとのボア間とシリンダボア10aのボア中心との間に対応する箇所に連通部30e,30fを設けることとしているので、ウォータージャケットスペーサ30における内寄りの部分(壁部がシリンダボア壁11の外周壁側に寄った部分)の外側(外周面)から外寄りの部分(壁部がシリンダボア壁11の外周壁から離間した部分)の内側(内周面)へ冷却液をスムーズに流入させることができ、#2気筒において、気筒列方向における#1気筒寄りの部分も確実に冷却させることができるので、シリンダボア壁11の壁面の冷却性能を高くするのに優位となる。加えて、ウォータージャケットスペーサ30の気筒列方向におけるシリンダボア10aとシリンダボア10bとのボア間とシリンダボア10aのボア中心との間に対応する箇所に連通部30e,30fを設けたことで、連通部30e,30fから流入した冷却液をシリンダボア10aとシリンダボア10bとのボア間に当てることができ、比較的温度上昇し易いボア間の冷却性能を確保することができる。
本実施形態では、図7を用い説明したように、領域AR2において、Z方向下部のウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間を、上部よりも相対的に狭くしているので、上部に比べて温度上昇し難い下部の保温性能を高め、冷間時におけるシリンダボア壁11の壁面の昇温の促進を図ることができる。ここで、シリンダボア10a〜10dの下部は、高負荷運転時においても、上部に比べてシリンダボア壁11の壁面の温度が上昇し難い。このため、上記のように、Z方向下部のウォータージャケットスペーサ30とシリンダボア壁11の外周面との隙間を相対的に狭くすることにより保温性能を高めても信頼性を確保することができる。
[実施形態2]
実施形態2に係るエンジンの冷却構造について、図10を用い説明する。図10では、エンジン本体4のシリンダブロック4aにおいて、ブロックウォータージャケット42a,42bにおける冷却液の流れを模式的に示す。なお、本実施形態において、図示及び説明を省略する構成については、上記実施形態1と同様の構成を採用している。
図10に示すように、エンジン本体4は、上記実施形態1のエンジン本体1と同様に、X方向に直列に配置された#1〜#4気筒を備える。シリンダブロック4aには、各気筒に対応してシリンダボアが形成されている。
シリンダブロック4aには、各シリンダボアを囲むようにシリンダライナが嵌め込まれており、シリンダライナの外周のシリンダボア壁41の外周を囲むようにブロックウォータージャケット42a,42bが形成されている。排気側に設けられたウォータージャケットが排気側ウォータージャケット42aであり、吸気側に設けられたウォータージャケットが吸気側ウォータージャケット42bである。
本実施形態では、可変ウォーターポンプから送られてきた冷却液が、冷却液流路FL41を介して導入口43から排気側ウォータージャケット42aに導入される。また、シリンダブロック4aの側壁には、冷却液の一部をEGRクーラへ送るための取出口44と、冷却液の一部を自動変速機オイル用熱交換器に送るための取出口(不図示)と、が設けられている。取出口44には、冷却液流路FL44が接続され、自動変速機オイル用熱交換器へ冷却液を送るために取出口にも、冷却液流路が接続されている。
本実施形態に係るシリンダブロック4aのブロックウォータージャケット42a,42bにも、ウォータージャケットスペーサ50が挿入されている。ウォータージャケットスペーサ50の構成は、図3を用い説明したウォータージャケットスペーサ30と同様である。
本実施形態においても、#1気筒のシリンダボアに対応する部分における、ウォータージャケットスペーサ50とシリンダボア壁41の外周面との隙間が、#2〜#4気筒のシリンダボアに対応する部分における隙間よりも相対的に狭くなっている。
本実施形態に係るブロックウォータージャケット42a,42bでの冷却液の流れは、導入口43から導入部を経て排気側ウォータージャケット42aに導入された冷却液が、X方向の左右に分配される。X方向左側に分配された冷却液は、一部が取出口44から冷却液流路FL44に取り出され、残りが冷却液流路FL42から吸気側ウォータージャケット42bの冷却液流路FL43へと導かれる。
導入された冷却液の内、X方向右側に分配された冷却液は、冷却液流路FL47を介してシリンダヘッドへと送られる。また、吸気側ウォータージャケット42bの冷却液流路FL43をX方向右側に向けて送られてきた冷却液も、冷却液流路FL47を介してシリンダヘッドへと送られる。
即ち、本実施形態に係るシリンダブロック4aでは、排気側ウォータージャケット42aの冷却液流路FL42を流れる冷却液と、吸気側ウォータージャケット42bの冷却液流路FL43を流れる冷却液とは、X方向において逆向きに流れることとなる。
本実施形態に係るエンジンの冷却構造においても、#1気筒に対応する領域におけるウォータージャケットスペーサ50とシリンダボア壁41の外周面との隙間を#2〜#4気筒に対応する領域に対して相対的に狭くしているので、#1〜#4気筒間でのシリンダボア壁41の壁面の温度バラツキを抑制することができる。
また、本実施形態に係るエンジンの冷却構造は、上記実施形態1の冷却構造が奏する他の効果についても同様に奏することができる。
[実施形態3]
実施形態3に係るエンジンの冷却構造について、図11から図15を用い説明する。図11は、本実施形態に係るウォータージャケットスペーサ60の構成を示す模式斜視図であり、図12は、シリンダブロック1aに対してウォータージャケットスペーサ60を組み付けた状態を示す模式平面図であり、図13は、図12のXIII−XIII断面を示す図であって、ウォータージャケットスペーサ60における第2連通部60u,60vが設けられた部分の構成を示す模式断面図である。また、図14(a)は、図12の矢印Fで指し示す部分を示す模式断面図であり、図14(b)は、図12の矢印Dで指し示す部分を示す模式断面図であり、図15は、ウォータージャケットスペーサ60に対する冷却液の流れを示す模式図である。
先ず、本実施形態に係るウォータージャケットスペーサ60も、樹脂材料を用い一体成型されたものである。また、図11に示すように、ウォータージャケットスペーサ60も、4つのシリンダボア10a〜10dにそれぞれ対応する4つの筒部を有する。
ウォータージャケットスペーサ60は、#1ボア上部60a、#2ボア上部60b、#3ボア上部60c、#4ボア上部60d、連通部60e,60f、#1ボア下部60g、#2ボア下部60h、#3ボア下部60i、#4ボア下部60j、ボア間部60k〜60l、排出部60n、及びリブ部60tを有する。これらの構成部位については、上記実施形態1に係るウォータージャケットスペーサ30と略同じであるので、重ねての説明を省略する。
なお、本実施形態に係るウォータージャケットスペーサ60では、リブ部60tがX方向内側に向けて突設されている。
図11に示すように、ウォータージャケットスペーサ60では、#4気筒のシリンダボア10dに対応する領域に、ウォータージャケットスペーサ60の内外(内周側と外周側)を連通する第2連通部60u,60vが設けられている。
ここで、#4気筒のシリンダボア10dの径方向中心からY方向に延びる仮想線(ボア中心線)Ax4を引くとき、第2連通部60u,60vは、仮想線Ax4が交差する箇所とX方向の前後を含む領域に開設されている。
次に、図12に示すように、ウォータージャケットスペーサ60は、シリンダブロック1aにおけるブロックウォータージャケット12a,12bに対して、冷却液の流れ方向における全領域に亘る状態で挿入されている。なお、シリンダブロック1aの構造については、上記実施形態1と同じであって、#1気筒のシリンダボアに対応する排気側ウォータージャケット12aに対して冷却液が導入され、導入された冷却液は、ブロックウォータージャケット12a,12bを通った後、#4気筒のシリンダボアの周囲の領域の内、X方向左側の部分からシリンダヘッド1bへと排出される。
ここで、本実施形態においても、排出時における冷却液は、ウォータージャケットスペーサ60に設けられたリブ部60tにより整流され、スムーズな流れを以ってシリンダヘッド1bへと排出される。
図11に示すように、ウォータージャケットスペーサ60とシリンダボア壁11の外周面との隙間は、矢印Cで指し示す領域が、矢印Dで指し示す領域よりも相対的に狭くなっている。これについては、上記実施形態1と同じである。
上述のように、本実施形態では、矢印Eで指し示す領域において、ウォータージャケットスペーサ60に第2連通部60uが設けられている。なお、図12では、特に矢印で指し示していないが、矢印Eで指し示した領域に対してY方向の反対側(吸気側)にも第2連通部60vが設けられている。
図13に示すように、第2連通部60u,60vは、ウォータージャケットスペーサ60におけるZ方向上部に設けられており(矢印H1,H2で指し示す部分)、当該第2連通部60u,60vを通り、冷却液がウォータージャケットスペーサ60の内周側から外周側へと導かれる。
なお、第2連通部60u,60vを通る冷却液は、導入口13から排出部60nへと導かれる冷却液であって、取出口14へと導かれる冷却液については、ほとんど第2連通部60u,60vを通らないようになっている。
次に、図14(a)に示すように、図12の矢印Fで指し示す部分においては、冷却液の流路におけるウォータージャケットスペーサ60よりも外周側の部分の幅はGF1であり、内周側の部分の幅はGF2である。矢印Fの部分(#4気筒のシリンダボアに対応する部分)では、ウォータージャケットスペーサ60の#4ボア上部60dがシリンダボア壁11側に寄って配されているので、幅GF1と幅GF2とは、次の関係を満たす。
[数2]GF1>GF2
一方、図14(b)に示すように、図12の矢印Dで指し示す部分(離間部分)においては、冷却液の流路におけるウォータージャケットスペーサ60よりも外周側の部分の幅はGD1であり、内周側の部分の幅はGD2である。矢印Dの部分(#2,3気筒のシリンダボアに対応する部分)では、ウォータージャケットスペーサ60の#3ボア上部60cがシリンダボア壁11から遠ざかって(外寄りに)配されているので、幅GD1と幅GD2とは、次の関係を満たす。
[数3]GD1<GD2
また、矢印Fで指し示す部分と矢印Dで指し示す部分(離間部分)とを比較するとき、次の関係を満たす。
[数4]GF1>GD1
[数5]GF2<GD2
上記の[数2]〜[数5]を総合的に考えるとき、矢印Fで指し示す部分におけるウォータージャケットスペーサ60の#4ボア上部60dよりも外周側での冷却液の流路断面積SPFと、矢印Dで指し示す部分におけるウォータージャケットスペーサ60の#3ボア上部60cよりも外周側での冷却液の流路断面積SPDと、は次の関係を満たす。
[数6]SPF>SPD
図15に示すように、本実施形態においても、ブロックウォータージャケット12内における冷却液の流れを、ウォータージャケットスペーサ60を基準としてみるとき、可変ウォーターポンプ20から送られてきた冷却液は、ウォータージャケットスペーサ60における#1気筒のシリンダボア10aに対応する#1ボア上部60aに向けて導入される。#1ボア上部60aに向けて導入された冷却液は、X方向の左右に分配され、右側に流れた冷却液は、ウォータージャケットスペーサ60の#1ボア上部60aの外周面に沿って吸気側へと流れる。
一方、左側に流れた冷却液は、冷却液流路FL51から連通部60eを通り、ウォータージャケットスペーサ60の内側(ウォータージャケットスペーサ60とシリンダボア壁11の外周面との間)に導かれる。そして、冷却液は、ウォータージャケットスペーサ60の内側の冷却液流路FL53をX方向左側へと導かれ、第2連通部60uに到達する。
そして、冷却液は、第2連通路60uを通り、ウォータージャケットスペーサ60の外側(ウォータージャケットスペーサ60の外周側)に導かれ、シリンダヘッド1bへと送られる。
吸気側に回り込んだ冷却液は、冷却液流路FL52から連通部60fへと導かれる。連通部60fを通り、冷却液流路FL32とをX方向左側へと導かれ、ウォータージャケットスペーサ60の内側(ウォータージャケットスペーサ60とシリンダボア壁11の外周面との間)の冷却液流路FL54に導かれ、第2連通部60vへと到達する。
冷却液は、第2連通路60vを通り、ウォータージャケットスペーサ60の外側(ウォータージャケットスペーサ60の外周側)に導かれる。排気側及び吸気側の各冷却液流路FL55,FL56を導かれた冷却液は、冷却液流路FL57を通りシリンダヘッド1bへと送られる。
なお、図15では、#1ボア下部60g、#2ボア下部60h、#3ボア下部60i、#4ボア下部60jに導かれた冷却液の流れについての説明を省略したが、上記実施形態1と同じである。また、冷却液流路FL5を通り、自動変速機オイル熱交換器26に導かれる冷却液の流れについても、上記実施形態1と同じである(図9を参照)。
以上のような構成を有する本実施形態に係るエンジンの冷却構造は、上記実施形態1に係るエンジンの冷却構造が奏する効果に加えて、次のような効果を奏することができる。
本実施形態に係るエンジンの冷却構造では、ウォータージャケットスペーサ60とシリンダボア壁11の外周面との間の隙間を、上記[数5]のように、#4気筒のシリンダボア10dに対応する部分(矢印Fで指し示す部分)が、#3気筒のシリンダボア10cに対応する部分(離間部分)よりも相対的に狭くなっている。これより、本実施形態に係るエンジンの冷却構造では、排出部60nに流れ込む際の冷却液の流速を高くすることができ、シリンダブロック1aにおける吸気側及び排気側の両流路FL51〜FL56を流れてきた冷却液が排出部60nに流れ込む際の流速によって、#4気筒のシリンダボア10dの過冷却を抑制することができる。
また、本実施形態に係るウォータージャケットスペーサ60では、#4気筒のシリンダボア10dに対応する領域(矢印Eで指し示す領域)に、当該ウォータージャケットスペーサ60の内外を連通する第2連通部60u,60vを有する。これより、第2連通部60u,60vを介して冷却液をブロックウォータージャケット12a,12bにおけるウォータージャケットスペーサ60よりも外周側に導出することができ、シリンダボア壁11に接触する冷却液の量を相対的に少なくし、#4気筒のシリンダボア10dの過冷却を抑制することができる。
また、本実施形態に係るウォータージャケットスペーサ60では、#4気筒のシリンダボア10dに対して、Z方向からの平面視で複数のシリンダボア10a〜10dの配列方向(X方向)に直交する方向(Y方向)にボア中心線(仮想線Ax4)を引く場合に、第2連通部60u,60vは、ウォータージャケットスペーサ60におけるボア中心線(仮想線Ax4)が交差する箇所を含む領域に設けられている。これより、本実施形態では、ボア接線方向の成分を有する冷却液の流れを利用して、スムーズに冷却液を上記外周側に導出することができる。よって、上記態様では、より効果的に、前記排出部が設けられた部分に最も近いシリンダボアの過冷却を抑制することができる。
また、本実施形態では、上記[数6]のように、ブロックウォータージャケット12a,12b内におけるウォータージャケットスペーサ60よりも外周側での冷却液の流路の断面積を、#4気筒のシリンダボア10dに対応する領域が、#3気筒のシリンダボア10cに対応する領域よりも広くなるようになっている。これより、本実施形態では、冷却液をスムーズな流れを以って第2連通部60u,60vからウォータージャケットスペーサ60の外周部へと導出させることができる。
[変形例]
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、ウォータージャケットスペーサ30,50,60の形態により、気筒列方向におけるウォータージャケットスペーサ30,50,60とシリンダボア壁11,41の外周面との隙間を調整することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、シリンダボア壁11,41の厚みなどにより、ウォータージャケットスペーサとシリンダボア壁の外周面との隙間を調整することも可能である。また、ブロックウォータージャケットの外周壁面を加工することによっても、ウォータージャケットスペーサとシリンダボア壁の外周面との隙間を調整することも可能である。
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、領域AR2において、Z方向の上下でウォータージャケットスペーサ30,50,60とシリンダボア11,41の外周面との隙間を調整することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、Z方向の上下で略均一な隙間とすることも可能である。
上記実施形態1では、ウォータージャケットスペーサ30における#1〜#4ボア上部30a〜30dの高さW30a〜W30dを上記[数1]のように気筒列方向に漸次変化させる構成としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ボア上部の高さを気筒列方向に略同一とすることもできる。
ただし、上記実施形態1のように、#1〜#4ボア上部30a〜30dの高さW30a〜W30dを気筒列方向に漸次変化させるようにすれば、冷却液流路FL21を流れる冷却液が、#1気筒側から#4気筒側へと進むに従ってZ方向上方へと導かれ、シリンダヘッド1bへスムーズに冷却液を送るのに優位である。
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、ウォータージャケットスペーサ30,50,60を一体形成したものを採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、2以上の要素の組み合わせを以ってウォータージャケットスペーサを構成することとしてもよい。上記実施形態1に係るウォータージャケットスペーサの形態の場合、領域AR1に対応する部分と、領域AR2に対応する部分とを別の部品として構成することなどが可能である。
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、エンジン本体1,4における排気側の側壁に導入口13,43を開け、排気側ウォータージャケット12a,42aに対して導入部を接続することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、エンジン本体の吸気側の側壁に導入口を開け、吸気側ウォータージャケットに対して導入部を接続することとしてもよい。
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、エンジン本体1,4として直列4気筒のガソリンエンジンを一例として採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、2気筒あるいは3気筒、あるいは5気筒以上のエンジンを採用することもできる。また、複数の気筒が直列配置されてなる部分を備えていればよく、例えば、V型やW型の4気筒以上のエンジン等を採用することもできる。
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、シリンダブロック1a,4aにシリンダライナを嵌め込んだ構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。シリンダブロックに直接シリンダボアが設けられた構成のエンジンを採用することもできる。
上記実施形態1、上記実施形態2、及び上記実施形態3では、ブロックウォータージャケット12,42a,42bにおける冷却液の流れ方向の全領域に亘りウォータージャケットスペーサ30,50,60を挿入することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、排気側ウォータージャケット12a,42aあるいは吸気側ウォータージャケット12b,42bにだけウォータージャケットスペーサを挿入することともできるし、排気側ウォータージャケット12a,42aの一部領域あるいは吸気側ウォータージャケット12b,42bの一部領域にだけウォータージャケットスペーサを挿入することともできる。