JP2019014958A - 転炉の操業方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 3基の転炉を用いて溶銑を精錬する際に、長所及び短所を併せ持つ種々の酸化精錬方法を、操業状況に応じて組み合わせる。【解決手段】 3基の転炉を用いて溶銑を精錬する転炉の操業方法であって、下記の精錬方法1〜3の精錬方法のなかから、3基の転炉の各々で実施する精錬方法を選択する。精錬方法1;転炉内の溶銑を脱珪し、次いで、炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を脱燐し、脱燐後、溶銑を一旦取鍋に出湯し、出湯した溶銑を別の転炉で脱炭し、脱炭後、溶鋼を出湯する精錬方法。精錬方法2;転炉内の溶銑を脱珪・脱燐し、次いで、炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を脱炭し、脱炭後、溶鋼を出湯する精錬方法。精錬方法3;転炉内の溶銑を1回の酸素吹錬で脱珪、脱燐、脱炭の全てを実施し、酸素吹錬後、溶鋼を取鍋に出湯する精錬方法。【選択図】 図5

Description

本発明は、溶銑の脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理の各処理を行う転炉の操業方法に関し、詳しくは、3基の転炉を用いて溶銑の前記各処理を操業状況に応じて効率的に行う転炉の操業方法に関する。
高炉で溶製される溶銑は、鋼製品の品質上から除去すべき不純物成分として、炭素(C)、燐(P)及び硫黄(S)を含有しており、また、珪素(Si)も含有しており、珪素も鋼製品によっては除去すべき不純物成分になる。これらの不純物成分のうちで、炭素、珪素及び燐は、酸素ガスによる酸化除去が可能であり、種々の酸化精錬方法で酸化除去されている。尚、硫黄は酸素ガスによる酸化除去が効率的でなく、通常、溶銑段階で別途還元反応による脱硫処理が行われている。
一般的な酸化精錬方法は、従来から伝統的に行われている精錬方法であり、溶銑を転炉に装入し、1回の酸素吹錬で脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理の全てを実施する精錬方法である(「普通転炉精錬方法」という)。「酸素吹錬」とは、上吹きランスから酸素ガスを転炉内の溶銑に吹き付けて行う精錬方法である。
しかし、近年、製鋼スラグの発生量の低減、及び、溶鋼の品質向上のために、転炉での酸素吹錬の前に、転炉を使用して、予め溶銑に対して脱珪処理及び脱燐処理を施す精錬方法が採用されるようになった。転炉での酸素吹錬の前に溶銑に対して予め行う精錬を予備処理という。この予備処理方法も種々の方法が提案されている。
特許文献1には、1基の転炉を用い、転炉内の溶銑を酸素吹錬によって脱珪処理し、次いで、転炉を傾動して脱珪処理で生成したスラグを排出(精錬の途中のスラグ排出を「中間排滓」という)し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬によって脱燐処理する予備処理方法が提案されている。この場合、脱燐処理された溶銑は、別の転炉に装入されて脱炭処理が施される。
特許文献2には、2基以上の転炉を用い、酸素吹錬によって転炉内の溶銑に脱珪処理及び脱燐処理を同時に施し、次いで、炉内の溶銑を当該転炉から出湯し、出湯した溶銑を別の転炉に装入し、酸素吹錬によって脱炭処理する転炉の操業方法が提案されている。尚、溶銑に脱珪処理及び脱燐処理を同時に施す処理を、「脱珪・脱燐処理」ともいう。
また、特許文献3には、1基の転炉を用い、転炉内の溶銑を酸素吹錬によって脱珪・脱燐処理し、次いで、脱珪・脱燐処理で生成したスラグを排出(中間排滓)し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬によって脱炭処理する精錬方法が提案されている。
このように、溶銑中の不純物成分を酸素吹錬によって除去する精錬方法として種々の方法が実施されており、各々の精錬方法において長所及び短所がある。
即ち、伝統的に行われている普通転炉精錬方法は、処理時間が短く生産性が高いという長所があるが、CaO系媒溶剤の原単位が多いという短所がある。
特許文献1に提案される方法(脱珪処理→中間排滓→脱燐処理→出湯→脱炭処理)は、効率良く脱珪処理及び脱燐処理が行え、CaO系媒溶剤の原単位が少なく、スラグ発生量も少ないという優れた長所がある。しかし、溶鋼に仕上げるまでの処理時間が長く、生産性が低いという短所がある。
特許文献3に提案される方法(脱珪・脱燐処理→中間排滓→脱炭処理)は、1回の溶銑装入で脱炭処理まで行うので、特許文献1に提案される方法に比べて処理時間が短くなり、且つ、CaO系媒溶剤の原単位は普通転炉精錬方法に比べて少なくなるという長所がある。しかし、中間排滓するものの炉内に燐濃度の高いスラグが残留し、脱炭処理時のスラグ組成の条件がベストではないので、特許文献1に提案される方法に比べて脱燐能力が低くなるという短所がある。
特許文献2に提案される方法(脱珪・脱燐処理→出湯→脱炭処理)は、特許文献1に提案される方法と特許文献3に提案される方法との中間の生産性及び脱燐能力となる。
つまり、酸素吹錬によって溶銑中の不純物成分を酸化除去する精錬方法は、処理時間を短くすると高品質な鋼を溶製できにくくなり、また逆に、高品質な溶鋼を安価に得ようとすると処理時間が長くなるという、相反する性格を備えている。そこで、複数の転炉を備えた転炉工場において、このような精錬方法を実施する際の効率的な転炉の操業方法がいくつか提案されている。
例えば、特許文献4には、3基の転炉を用いて溶銑から溶鋼を溶製するに際し、3基の転炉を、脱炭処理用の転炉、脱炭処理と脱珪・脱燐処理との兼用の転炉、脱珪・脱燐処理用の転炉の順で使用し、前記3基の転炉のいずれか一つが脱炭処理用の転炉として使用されているときは、他の一つは脱珪・脱燐処理用の転炉として使用し、残りの一つは脱炭処理と脱珪・脱燐処理との兼用の転炉として使用し、3基の転炉のいずれか一つが修理されているときは、他の二つの転炉を、主に、脱炭処理と脱珪・脱燐処理との兼用の転炉として使用する転炉の操業方法が提案されている。
また、特許文献5には、3基の転炉を用いて溶銑から溶鋼を溶製するに際し、3基の転炉のうち2基の転炉は、脱珪・脱燐処理、中間排滓、脱炭処理を行う溶銑1回装入型精錬処理と、脱珪・脱燐処理の後、炉内の溶銑を転炉から一旦排出し、その後、脱珪・脱燐処理した溶銑を転炉に戻して脱炭処理を行う溶銑2回装入型精錬処理とを併用して行い、他の1基の転炉は、前記溶銑2回装入型精錬処理の脱珪・脱燐処理と脱炭処理とのいずれか或いは両方を行う、転炉の操業方法が提案されている。
特開平10−152714号公報 特開2002−363630号公報 特開2005−325389号公報 特開2007−113029号公報 特開2016−172905号公報
転炉工場に求められる操業の遂行能力としては、生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物(スラグ)発生量などが挙げられ、このうちのどれを優先するかで採用する精錬方法は変わる。
これに対して、特許文献4は、3基の転炉で、特許文献2で提案される方法(脱珪・脱燐処理→出湯→脱炭処理)を効率的に行うことを提案するだけで、その他の精錬方法を組み合わせることは提案していない。即ち、生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量などの操業状況に応じた最適な精錬方法を適用しているとはいえない。
同様に、特許文献5は、3基の転炉で、特許文献2で提案される方法(脱珪・脱燐処理→出湯→脱炭処理)と特許文献3で提案される方法(脱珪・脱燐処理→中間排滓→脱炭処理)とを組み合わせて行うことを提案しており、普通転炉精錬方法や特許文献1で提案される精錬方法を組み合わせることは提案していない。つまり、特許文献5も、生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量などの操業状況に応じた最適な精錬方法を適用しているとはいえない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、3基の転炉を用いて溶銑を精錬する際に、長所及び短所を併せ持つ種々の精錬方法を、操業状況(生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量)に応じて3基の転炉に対してどのように組み合わせるべきかについて、具体的な組み合わせ方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]3基の転炉を用いて溶銑を精錬する転炉の操業方法であって、
下記の精錬方法1〜3の3種類の精錬方法のなかから、前記3基の転炉の各々で実施する精錬方法を選択することを特徴とする、転炉の操業方法。
精錬方法1;転炉内の溶銑を酸素吹錬により脱珪処理し、次いで、転炉を傾動して炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬により脱燐処理し、脱燐処理後、溶銑を一旦取鍋に出湯し、出湯した溶銑を別の転炉に装入して酸素吹錬により脱炭処理し、脱炭処理後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
精錬方法2;転炉内の溶銑を酸素吹錬により同時に脱珪処理及び脱燐処理し、次いで、転炉を傾動して炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬により脱炭処理し、脱炭処理後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
精錬方法3;転炉内の溶銑を1回の酸素吹錬で脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理の全てを実施し、酸素吹錬後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
[2]前記3基の転炉のうち、2基の転炉で前記精錬方法1を、残りの1基の転炉で前記精錬方法3を実施することを特徴とする、上記[1]に記載の転炉の操業方法。
[3]前記3基の転炉のうち、2基の転炉で前記精錬方法1を、残りの1基の転炉で前記精錬方法2を実施することを特徴とする、上記[1]に記載の転炉の操業方法。
[4]前記3基の転炉の各々で前記精錬方法2を実施することを特徴とする、上記[1]に記載の転炉の操業方法。
[5]前記3基の転炉に対して合計3基以上の装入鍋及び合計3基以上の出湯用の取鍋を配置し、各々の転炉で溶銑及び溶鋼をハンドリングする際には、前記装入鍋及び前記出湯用の取鍋を各々の転炉で専用することを特徴とする、上記[1]ないし上記[4]のいずれか1項に記載の転炉の操業方法。
[6]前記3基の転炉に対して合計3基以上の排滓用のスラグポット及び合計3基以上の前記スラグポットを積載するための台車を配置し、各々の転炉からスラグを排出する際には、前記排滓用のスラグポット及び前記スラグポットを積載するための台車を各々の転炉で専用し、各々の転炉からの排出スラグを転炉毎に回収・貯蔵し、排出スラグの処理工程へ搬送することを特徴とする、上記[1]ないし上記[5]のいずれか1項に記載の転炉の操業方法。
本発明によれば、長所及び短所の異なる3種類の精錬方法を、操業状況(生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量)に応じて3基の転炉で適切に実施することができ、生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量などを所望する範囲に制御することが実現される。
本発明で使用する転炉の概略断面図である。 本発明における精錬方法1を工程順に示す概略図である。 本発明における精錬方法2を工程順に示す概略図である。 本発明における精錬方法3を工程順に示す概略図である。 操業パターン1における3基の転炉の操業形態を示す図である。 操業パターン2における3基の転炉の操業形態を示す図である。 操業パターン3における3基の転炉の操業形態を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に係る転炉の操業方法で使用する転炉について説明する。
図1に、本発明に係る転炉の操業方法で使用する転炉の概略断面図を示す。本発明では、図1に示すような上底吹き可能な転炉1を用いる。上吹きは、転炉1の内部を昇降可能な上吹きランス2を介して、上吹きランス2の先端から、酸素源として酸素ガス8を溶銑5に向けて供給して行われる。ここで、酸素ガス8とは工業用純酸素である。底吹きは、転炉1の底部に設けられた底吹き羽口3を介して行われる。底吹きガス9としては、酸素ガスを含むガスでも、或いはアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスのみでもよく、溶銑中に吹き込むことにより溶銑5の攪拌を強化して冷鉄源の溶解を促進する機能を有するものであればよい。
転炉1には出湯口4が設けられており、炉内の溶湯(溶銑または溶鋼)を取鍋に出湯する際には、出湯口4が下側に位置するように転炉1を傾動させ、転炉炉口からスラグ6が排出されないようにしながら、出湯口4から炉内の溶湯を出湯する。一方、2つの精錬処理の途中(例えば、脱珪処理と脱燐処理との途中)で、炉内に溶銑を残留させた状態で炉内のスラグ6を排出(「中間排滓」という)する際には、出湯口4が上側に位置するように転炉1を傾動させ、転炉1の炉口から炉内のスラグ6を排出する。また、炉内の溶湯を出湯した後に炉内のスラグ6を排出する場合には、転炉1の炉口が下に位置するように転炉1を傾動させ、転炉1の炉口から炉内のスラグ6を排出する。
このように構成される転炉を用いた酸素吹錬による溶銑の酸化精錬として、脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理が行われており、転炉を用いて溶銑から溶鋼を溶製する方法は、[背景技術]の欄で記載したように、(1)伝統的に行われている普通転炉精錬方法、(2)特許文献1に提案される方法(脱珪処理→中間排滓→脱燐処理→出湯→脱炭処理)、(3)特許文献2に提案される方法(脱珪・脱燐処理→出湯→脱炭処理)、(4)特許文献3に提案される方法(脱珪・脱燐処理→中間排滓→脱炭処理)の4種類に大別される。ここで、「脱珪・脱燐処理」とは、酸素吹錬によって脱珪処理と脱燐処理とを同時に溶銑に施す精錬方法である。
これらの4種類の精錬方法のなかで、最も脱燐能力が高く、効率良く脱燐処理が行え、燐濃度の低い溶鋼を溶製することができ、しかも、CaO系媒溶剤の原単位が少なく、スラグ発生量が少ないという長所を有する精錬方法は、特許文献1に提案される方法(脱珪処理→中間排滓→脱燐処理→出湯→脱炭処理)である。但し、この精錬方法は、生産性が低いという短所がある。本発明では、この精錬方法を「精錬方法1」とした。
特許文献3に提案される方法(脱珪・脱燐処理→中間排滓→脱炭処理)は、転炉への1回の溶銑装入で脱炭処理まで行うので、溶銑を予備処理するにも拘らず、特許文献1に提案される方法や特許文献2に提案される方法に比べて処理時間が短くなり、生産性をそれほど落とすことなく、溶鋼の溶製が可能である。そこで、本発明では、この精錬方法を「精錬方法2」とした。
また、これらの4種類の精錬方法のなかで、最も生産性に優れる精錬方法は、伝統的に行われている普通転炉精錬方法であり、本発明では、この精錬方法を「精錬方法3」とした。
即ち、本発明における精錬方法1〜3は、下記のとおりである。
精錬方法1;転炉内の溶銑を酸素吹錬により脱珪処理し、次いで、転炉を傾動して炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬により脱燐処理し、脱燐処理後、溶銑を一旦取鍋に出湯し、出湯した溶銑を別の転炉に装入して酸素吹錬により脱炭処理し、脱炭処理後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
精錬方法2;転炉内の溶銑を酸素吹錬により同時に脱珪処理及び脱燐処理し、次いで、転炉を傾動して炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬により脱炭処理し、脱炭処理後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
精錬方法3;転炉内の溶銑を1回の酸素吹錬で脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理の全てを実施し、酸素吹錬後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
以下、精錬方法1〜3の具体的な処理方法を図面に基づいて説明する。図2は、精錬方法1を工程順に示す概略図、図3は、精錬方法2を工程順に示す概略図、図4は、精錬方法3を工程順に示す概略図である。図2〜4において、符号7は冷鉄源、10はスクラップシュート、11は装入鍋、12は取鍋、13はスラグポットである。
[精錬方法1]
精錬方法1では、図2に示すように、転炉1にスクラップシュート10を介して冷鉄源7を装入する。冷鉄源7の転炉1への装入は本発明を実施する上で必須条件ではないが、製鋼工程における炭酸ガスの発生量を低減するために、冷鉄源7の転炉1への装入を行うことが好ましい。次いで、転炉1に、装入鍋11を介して、高炉から出銑され、必要に応じて脱硫処理の施された溶銑5を装入する。
その後、この転炉内の溶銑5に、上吹きランス2から酸素源として酸素ガス8を供給して脱珪処理を実施する。溶銑5に含有される珪素と酸素源中の酸素とが反応(Si+2O→SiO;この反応を脱珪反応という)して脱珪処理が進行する。脱珪反応で生成したSiOは溶銑と分離して炉内にスラグを形成する。この脱珪反応による珪素の酸化熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源7の溶解が促進される。
この脱珪処理前及び/または脱珪処理中に、生成するスラグの塩基度(塩基度=(質量%CaO)/(質量%SiO))を調整するために、CaO系媒溶剤を転炉1に添加する。具体的には、脱珪処理後のスラグの塩基度が0.5〜1.5の範囲内となるように、CaO系媒溶剤を転炉1に添加する。
本発明においては、脱珪処理におけるCaO系媒溶剤として、脱珪処理の後工程の脱燐処理で生成するスラグ(脱燐処理で生成するスラグを「脱燐スラグ」と称す)を再利用する。脱燐スラグ中のCaO分がCaO源として活用される。脱燐スラグ以外のCaO系媒溶剤としては、生石灰、ドロマイト、炭酸カルシウムなどが使用できる。
脱珪処理のあとに、転炉1を傾動させて、脱珪処理で発生したスラグの少なくとも一部を転炉1の炉口からスラグポット13に排出する(中間排滓)。脱珪処理で発生したSiOを極力炉外に排出するために、排滓率(排滓率(質量%)=(排出スラグ質量)×100/(脱珪処理終了時の炉内スラグ質量))を50質量%以上とすることが好ましい。
中間排滓後、転炉1を、炉口を上方に向けた直立位置に戻し、転炉内に残留させた脱珪処理後の溶銑にCaO系媒溶剤及び酸素源として酸素ガス8を供給して、脱珪処理後の溶銑に対して脱燐処理を実施する。溶銑に含有される燐と酸素源中の酸素とが反応(2P+5O→P;この反応を脱燐反応という)し、この脱燐反応によって溶銑に含有される燐は酸化されて燐酸化物(P)となり、この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって形成され、脱燐精錬剤として機能するスラグに3CaO・Pなる安定形態の化合物として取り込まれ、溶銑の脱燐処理が進行する。
脱燐処理においては、炉内のスラグの塩基度を1.5〜3.5の範囲に調整する。スラグの塩基度が高いほどスラグの燐化合物(3CaO・P)の吸収能が高くなり、脱燐反応が促進されるので、スラグの塩基度を1.5以上に制御する。一方、スラグの塩基度が3.5を超えると、滓化性が悪くなり、脱燐反応が遅くなるので、脱燐処理時のスラグの塩基度は3.5以下に制御する。脱燐処理時のCaO系媒溶剤としては、生石灰、ドロマイト、炭酸カルシウム、転炉スラグ(脱炭処理時に発生する転炉スラグ)などが使用できる。
この脱燐処理において使用する酸素源は、脱珪処理と同様に、上吹きランス2からの酸素ガス8を主体とするが、一部酸化鉄を使用しても構わない。
脱燐反応が進行して溶銑の燐濃度が所定の値に低下したなら、脱燐処理を終了する。その後の脱炭処理によって溶製される溶鋼の燐濃度を安定して低下するためには、脱燐処理後の溶銑の燐濃度が0.040質量%以下になるまで、脱燐処理を行うことが好ましい。
この脱燐処理のあとに、転炉1を傾動させて、出湯口4から炉内の溶銑を取鍋12に出湯する。炉内のスラグは排出せず、次チャージの溶銑5の脱珪処理時のCaO系媒溶剤として再利用する。
取鍋12に出湯した溶銑を、図2に示すように、別の転炉1Aに装入し、炉内にCaO系媒溶剤及び酸素源として酸素ガス8を供給して、脱燐処理された溶銑に対して脱炭処理を実施する。溶銑に含有される炭素と供給される酸素源中の酸素とが反応(C+O→CO;この反応を脱炭反応という)し、この脱炭反応によって溶銑に含有される炭素は酸化されてCOガスとなり、このCOガスが系外に排出されて溶銑の脱炭処理が進行する。
脱炭処理においては、炉内のスラグの塩基度を2.5〜5.0に調整する。これは、脱炭処理では、脱燐処理よりも更に低い濃度まで脱燐する必要があり、そのためには、塩基度の下限値を脱燐処理よりも高める必要があるからである。一方、塩基度を5.0超えとしても、脱燐効果は飽和し、添加したCaO系媒溶剤が無駄になる。尚、脱炭処理では酸素ガス8の供給流量が脱燐処理よりも多く、溶銑の攪拌力が強く、且つ、溶湯温度が脱燐処理時よりも高いので、塩基度が5.0以下であれば、スラグは十分に滓化する。
脱炭処理で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰、ドロマイト、炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、CaOを50質量%以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナなどの他の成分を含有するものも、脱炭処理時のCaO系媒溶剤として使用することができる。
脱炭反応が進行して溶製された溶鋼の炭素濃度が所定の値に低下したなら、脱炭処理を終了する。脱炭処理後、転炉1Aを出湯口4が設置された側に傾動させて、溶製された転炉内の溶鋼を出湯口4を介して取鍋12に出湯する。
[精錬方法2]
精錬方法2では、図3に示すように、転炉1にスクラップシュート10を介して冷鉄源7を装入する。冷鉄源7の転炉1への装入は本発明を実施する上で必須条件ではないが、製鋼工程における炭酸ガスの発生量を低減するために、冷鉄源7の転炉1への装入を行うことが好ましい。次いで、転炉1に、装入鍋11を介して、高炉から出銑され、必要に応じて脱硫処理の施された溶銑5を装入する。
その後、この転炉内の溶銑5に、CaO系媒溶剤及び酸素源として酸素ガス8を供給して脱珪・脱燐処理を実施する。転炉内の溶銑5に酸素ガス8を供給することで、先ず、溶銑5に含有される珪素と酸素源中の酸素との反応(Si+2O→SiO)により、脱珪反応が起こり、溶銑5の珪素濃度が低下する。溶銑5の珪素濃度が或る程度低下すると、溶銑5に含有される燐と酸素源中の酸素との反応(2P+5O→P)が起こり、溶銑中の燐は燐酸化物(P)となる。この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって形成されるスラグに3CaO・Pなる化合物として取り込まれ、脱燐反応が進行する。脱珪反応による珪素の酸化熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源7の溶解が促進される。
この脱珪・脱燐処理前及び/または脱珪・脱燐処理中に、生成するスラグの塩基度を調整するために、CaO系媒溶剤を転炉1に添加する。具体的には、脱珪・脱燐処理後のスラグの塩基度が1.5〜3.5の範囲内となるように、CaO系媒溶剤を転炉1に添加する。スラグの塩基度が高いほどスラグの燐化合物(3CaO・P)の吸収能が高くなり脱燐反応が促進されるので、スラグの塩基度を1.5以上に制御する。一方、スラグの塩基度が3.5を超えると、滓化性が悪くなり、脱燐反応が遅くなるので、脱珪・脱燐処理時のスラグの塩基度は3.5以下に制御する。
本発明においては、脱珪・脱燐処理におけるCaO系媒溶剤として、脱珪・脱燐処理の後工程の脱炭処理で生成するスラグ(脱炭処理で生成するスラグを「脱炭スラグ」と称す)を再利用する。脱炭スラグ中のCaO分がCaO源として活用される。脱炭スラグ以外のCaO系媒溶剤としては、生石灰、ドロマイト、炭酸カルシウムなどが使用できる。
この脱珪・脱燐処理において使用する酸素源は、上吹きランス2からの酸素ガス8を主体とするが、一部酸化鉄を使用しても構わない。
脱燐反応が進行して溶銑の燐濃度が所定の値に低下したなら、脱珪・脱燐処理を終了する。その後の脱炭処理によって溶製される溶鋼の燐濃度を安定して低下するためには、脱珪・脱燐処理後の溶銑の燐濃度が0.040質量%以下になるまで、脱珪・脱燐処理を行うことが好ましい。
脱珪・脱燐処理のあとに、転炉1を傾動させて、脱珪・脱燐処理で発生したスラグの少なくとも一部を転炉1の炉口からスラグポット13に排出する(中間排滓)。脱珪・脱燐処理で発生したSiO及びPを極力炉外に排出するために、排滓率(排滓率(質量%)=(排出スラグ質量)×100/(脱珪・脱燐処理終了時の炉内スラグ質量))を50質量%以上とすることが好ましい。
中間排滓後、転炉1を、炉口を上方に向けた直立位置に戻し、転炉内に残留させた脱珪・脱燐処理後の溶銑にCaO系媒溶剤及び酸素源として酸素ガス8を供給して、脱珪・脱燐処理後の溶銑に対して脱炭処理を実施する。溶銑に含有される炭素は供給される酸素源中の酸素に酸化されてCOガスとなり、このCOガスが系外に排出されて溶銑の脱炭処理が進行する。
脱炭処理においては、炉内のスラグの塩基度は2.5〜5.0に調整する。これは、脱炭処理では、脱珪・脱燐処理よりも更に低い濃度まで脱燐する必要があり、そのためには、塩基度の下限値を脱珪・脱燐処理よりも高める必要があるからである。一方、塩基度を5.0超えとしても、脱燐効果は飽和し、添加したCaO系媒溶剤が無駄になる。脱炭処理では酸素ガス8の供給流量が脱珪・脱燐処理よりも多く、溶銑の攪拌力が強く、且つ、溶湯温度が脱珪・脱燐処理時よりも高いので、塩基度が5.0以下であれば、スラグは十分に滓化する。
脱炭処理で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰、ドロマイト、炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、CaOを50質量%以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナなどの他の成分を含有するものも、脱炭処理時のCaO系媒溶剤として使用することができる。
脱炭反応が進行して溶製された溶鋼の炭素濃度が所定の値に低下したなら、脱炭処理を終了する。脱炭処理後、転炉1を出湯口4が設置された側に傾動させて、溶製された転炉内の溶鋼を出湯口4を介して取鍋12に出湯する。炉内のスラグは排出せず、次チャージの溶銑5の脱珪・脱燐処理時のCaO系媒溶剤として再利用する。
[精錬方法3]
精錬方法3は、伝統的に行われている普通転炉精錬方法である。精錬方法3では、図4に示すように、転炉1にスクラップシュート10を介して冷鉄源7を装入する。冷鉄源7の転炉1への装入は本発明を実施する上で必須条件ではないが、製鋼工程における炭酸ガスの発生量を低減するために、冷鉄源7の転炉1への装入を行うことが好ましい。次いで、転炉1に、装入鍋11を介して、高炉から出銑され、必要に応じて脱硫処理の施された溶銑5を装入する。
その後、この転炉内の溶銑5に、CaO系媒溶剤及び酸素源として酸素ガス8を供給し、転炉内の溶銑5に対して、1回の酸素吹錬で脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理の全てを実施する。転炉内の溶銑5に酸素ガス8を供給すると、先ず、溶銑5に含有される珪素と酸素源中の酸素とが反応して脱珪反応(Si+2O→SiO)が起こり、溶銑5の珪素濃度が低下する。この脱珪反応とほぼ同時に、脱炭反応(C+O→CO)が起こり、溶銑5の炭素濃度が低下する。
そして、溶銑5の珪素濃度が或る程度低下すると、溶銑5に含有される燐と酸素源中の酸素との反応(2P+5O→P)が起こり、溶銑中の燐は燐酸化物(P)となる。この燐酸化物が、CaO系媒溶剤の滓化によって形成されるスラグに3CaO・Pなる化合物として取り込まれ、脱燐反応が進行する。珪素の酸化熱及び炭素の酸化熱で溶銑温度が上昇し、溶銑中の冷鉄源7の溶解が促進される。
この酸素吹錬においては、炉内のスラグの塩基度は3.0〜5.0に調整する。これは、1回の酸素吹錬で所定の燐濃度まで脱燐する必要があり、そのためには、塩基度の下限値を3.0以上に高める必要がある。一方、塩基度を5.0超えとしても、脱燐効果は飽和し、添加したCaO系媒溶剤が無駄になる。
この酸素吹錬で使用するCaO系媒溶剤としては、生石灰、ドロマイト、炭酸カルシウムなどが使用できる。但し、これらに限定されず、CaOを50質量%以上含有し、必要に応じてフッ素やアルミナなどの他の成分を含有するものも、CaO系媒溶剤として使用することができる。
脱炭反応が進行して溶製された溶鋼の炭素濃度が所定の値に低下したなら、酸素吹錬を終了する。酸素吹錬後、転炉1を出湯口4が設置された側に傾動させて、溶製された転炉内の溶鋼を出湯口4を介して取鍋12に出湯する。出湯後、転炉1の炉口が下に位置するように転炉1を傾動させ、転炉1の炉口から炉内のスラグを排出する。
本発明は、3基の転炉を用いて溶銑を精錬して溶鋼を溶製する際に、操業状況に応じて、つまり、生産性、溶製される溶鋼の品質、操業コスト、スラグ発生量などのうちのどれを優先するかに基づき、各々長所及び短所が異なる上記精錬方法1〜3のなかの1種または2種以上を選択し、3基の各々の転炉で実施する。
例えば、生産性が高いことを優先する場合には、3基の転炉のうち、2基の転炉で前記精錬方法1を実施し、残りの1基の転炉で前記精錬方法3を実施することが好ましい。
溶銑の予備処理比率が高く且つ溶製される溶鋼の燐濃度が低いことを優先する場合には、3基の転炉のうち、2基の転炉で前記精錬方法1を実施し、残りの1基の転炉で前記精錬方法2を実施することが好ましい。
生産性が高く且つ予備処理比率が高いことを優先する場合には、3基の転炉の各々で前記精錬方法2を実施することが好ましい。
精錬方法1及び精錬方法2を実施する場合、各々の転炉が、例えば精錬方法1の脱珪処理−中間排滓−脱燐処理と、脱炭処理とを、交互に行うなどのように、複数種類の精錬方法を実施すると、精錬方法の入れ替わり時には、前チャージの残スラグ及び残鋼の影響により、具体的には、前チャージからの燐成分の汚染(コンタミネイション)の影響により、効率的な処理ができなくなる。したがって、本発明を実施する際は、精錬方法1及び精錬方法2を実施する場合には、各々の転炉は単一種類の精錬方法のみを実施することが好ましい。
また、一つの転炉において精錬方法を1種類に固定しても、操業で使用する装入鍋、出湯用の取鍋、排滓用のスラグポットを、精錬方法の異なる複数の転炉で混用した場合にも上記のような前チャージからの燐成分の汚染が生じるおそれがある。したがって、各々の転炉で使用する装入鍋、出湯用の取鍋、排滓用のスラグポットを、各々の転炉で専用とすることが好ましい。各々の転炉で専用化することで、前チャージからの汚染が少なくなり、汚染の少ない転炉操業が実現可能である。排滓用のスラグポットを各転炉で専用する場合には、排滓用のスラグポットを積載する台車も各転炉に専用配置することが必要である。
即ち、本発明を実施する際は、3基の転炉に対して合計3基以上の装入鍋及び合計3基以上の出湯用の取鍋を配置し、各々の転炉で溶銑及び溶鋼をハンドリングする際には、前記装入鍋及び前記出湯用の取鍋を各々の転炉で専用することが好ましい。
また、本発明を実施する際は、3基の転炉に対して合計3基以上の排滓用のスラグポット及び合計3基以上の前記スラグポットを積載するための台車を配置し、各々の転炉からスラグを排出する際には、前記排滓用のスラグポット及び前記スラグポットを積載するための台車を各々の転炉で専用し、各々の転炉からの排出スラグを転炉毎に回収・貯蔵し、排出スラグの処理工程(スラグの再利用など)へ搬送することが好ましい。
以上説明したように、本発明によれば、長所及び短所の異なる3種類の精錬方法を、操業状況(生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量)に応じて3基の転炉で適切に実施することができ、生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量などを所望する範囲に制御することが実現される。
炉容量が300トンの3基の転炉を用いて、操業状況(生産性、溶鋼の品質、操業コスト、副産物発生量)に応じて3種類の操業パターンで本発明を実施した。
操業パターン1は、生産性を優先し、3基の転炉のうち、2基の転炉で精錬方法1を実施し、残りの1基の転炉で精錬方法3を実施した。
操業パターン2は、溶銑の予備処理比率が高く且つ溶製される溶鋼の燐濃度が低いことを優先し、3基の転炉のうち、2基の転炉で精錬方法1を実施し、残りの1基の転炉で精錬方法2を実施した。
操業パターン3は、生産性が高く且つ予備処理比率が高いことを優先し、3基の転炉の各々で精錬方法2を実施した。
各々の操業パターンで少なくとも1日間以上を継続して操業し、その期間の生産性、予備処理比率、CaO系媒溶剤の原単位、スラグ発生量を比較した。CaO系媒溶剤としては生石灰(CaO)を使用した。
図5に、操業パターン1における3基の転炉(A〜C炉)の操業形態を示し、図6に、操業パターン2における3基の転炉(A〜C炉)の操業形態を示し、図7に、操業パターン3における3基の転炉(A〜C炉)の操業形態を示す。
図5〜7において、「DSi−DP」は、精錬方法1の「脱珪処理−中間排滓−脱燐処理−出湯」を表し、「レス脱炭」は、精錬方法1の「脱炭処理−出湯」を表し、「普通精錬」は、精錬方法3の「普通転炉精錬方法」を表し、「DSiP−DC」は、精錬方法2の「脱珪・脱燐処理−中間排滓−脱炭処理−出湯」を表している。
図5〜7に示すように、操業パターン1では、延べ120分で6チャージ分の溶鋼が溶製されており、1チャージあたりの所要時間は20.0分となり、操業パターン2では、延べ120分で4.5チャージ分の溶鋼が溶製されており、1チャージあたりの所要時間は26.7分となり、また、操業パターン3では、延べ120分で6チャージ分の溶鋼が溶製されており、1チャージあたりの所要時間は20.0分となった。
尚、図6で、前チャージの「DSiP−DC」と次チャージの「DSiP−DC」との間に非操業時間が設定されているが、これは、「DSi−DP」及び「レス脱炭」と「DSiP−DC」とで処理時間が異なり、溶銑を転炉に装入するタイミングが「DSi−DP」及び「レス脱炭」と「DSiP−DC」とで重なることが発生し、且つ、溶銑を各転炉に装入する装入鍋を搬送するクレーンが1基であり、そのために、溶銑を転炉に装入するタイミングが重なる際は、溶銑の装入タイミングを調整する必要があることによる。
表1に、操業パターン1〜3における生産性、予備処理比率、CaO系媒溶剤の原単位及びスラグ発生量の調査結果を示す。尚、表1に示すCaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数は、全チャージを精錬方法3で実施した場合を基準値(=1.0)として指数化した値である。
表1に示すように、操業パターン1は生産性に優れるものの、予備処理比率が50%であり、CaO系媒溶剤の使用量が増加した。操業パターン2は、生産性が低下したものの、CaO系媒溶剤の使用量が少なく、スラグ発生量が低減した。操業パターン3は、生産性に優れ、且つ、予備処理比率を100%にすることができた。
炉容量が300トンの3基の転炉を有する転炉工場において、各々の転炉が複数種類の精錬方法を実施する特許文献5に提案される操業パターンの場合を従来例として、この従来例と、本発明の精錬方法1つまり各々の転炉は単一種類の精錬方法のみを実施する場合とで、CaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数を比較・調査した。調査結果を表2に示す。尚、表2に示すCaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数は、従来例(特許文献5に提案される操業パターン)の場合を基準値(=1.0)として指数化した値である。
従来例では、一つの転炉において複数の精錬方法を実施しており、精錬方法の入れ替わり時は前チャージの残スラグ及び残鋼の影響により、効率的な処理ができないために、CaO系媒溶剤の原単位及びスラグ発生量が増加するという課題があった。これに対して、本発明の精錬方法1では、炉毎の精錬方法を1種類に固定するので、前チャージからの汚染(コンタミネイション)が減少し、CaO系媒溶剤の原単位及びスラグ発生量を削減することができた。
具体的には、表2に示すように、精錬方法1を実施することで、CaO系媒溶剤及びスラグ発生量を、従来例に比較して30%以上削減することが可能になる良好な結果が得られた。
また、一つの転炉において精錬方法を1種類に固定しても、操業で使用する装入鍋、出湯用の取鍋、排滓用のスラグポットを、精錬方法の異なる複数の転炉で混用した場合にも上記のような前チャージからの汚染が生じる。そこで、本実施例では、一つの転炉で行う精錬方法の種類を一つに固定し、且つ、操業で使用する装入鍋、出湯用の取鍋、排滓用のスラグポット、排滓用のスラグポットを積載する台車を、各々の転炉で専用とした。各々の転炉からの排出スラグを転炉毎に回収・貯蔵し、排出スラグの処理工程へ搬送した。
操業で使用する装入鍋及び出湯用の取鍋を各々の転炉で専用化することで、専用化しない場合のCaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数をそれぞれ1.00とすると、それぞれ0.98に低減すること、つまり、専用化しない場合に比較して、CaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数をそれぞれ2%低下することができた。また、排滓用のスラグポット及び排滓用のスラグポットを積載する台車を各々の転炉で専用化することで、専用化しない場合のCaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数をそれぞれ1.00とすると、それぞれ0.96に低減すること、つまり、専用化しない場合に比較して、CaO系媒溶剤の原単位指数及びスラグ発生量指数をそれぞれ4%低下することができた。
即ち、装入鍋、出湯用の取鍋、排滓用のスラグポット、排滓用のスラグポットを積載する台車を各々の転炉で専用化することで、前チャージからの汚染が最も少なくなり、汚染の少ない転炉操業が実現可能であった。
1 転炉
2 上吹きランス
3 底吹き羽口
4 出湯口
5 溶銑
6 スラグ
7 冷鉄源
8 酸素ガス
9 底吹きガス
10 スクラップシュート
11 装入鍋
12 取鍋
13 スラグポット

Claims (6)

  1. 3基の転炉を用いて溶銑を精錬する転炉の操業方法であって、
    下記の精錬方法1〜3の3種類の精錬方法のなかから、前記3基の転炉の各々で実施する精錬方法を選択することを特徴とする、転炉の操業方法。
    精錬方法1;転炉内の溶銑を酸素吹錬により脱珪処理し、次いで、転炉を傾動して炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬により脱燐処理し、脱燐処理後、溶銑を一旦取鍋に出湯し、出湯した溶銑を別の転炉に装入して酸素吹錬により脱炭処理し、脱炭処理後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
    精錬方法2;転炉内の溶銑を酸素吹錬により同時に脱珪処理及び脱燐処理し、次いで、転炉を傾動して炉内のスラグを排出し、その後、転炉内に残留させた溶銑を酸素吹錬により脱炭処理し、脱炭処理後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
    精錬方法3;転炉内の溶銑を1回の酸素吹錬で脱珪処理、脱燐処理、脱炭処理の全てを実施し、酸素吹錬後、溶製された溶鋼を転炉から取鍋に出湯する精錬方法。
  2. 前記3基の転炉のうち、2基の転炉で前記精錬方法1を、残りの1基の転炉で前記精錬方法3を実施することを特徴とする、請求項1に記載の転炉の操業方法。
  3. 前記3基の転炉のうち、2基の転炉で前記精錬方法1を、残りの1基の転炉で前記精錬方法2を実施することを特徴とする、請求項1に記載の転炉の操業方法。
  4. 前記3基の転炉の各々で前記精錬方法2を実施することを特徴とする、請求項1に記載の転炉の操業方法。
  5. 前記3基の転炉に対して合計3基以上の装入鍋及び合計3基以上の出湯用の取鍋を配置し、各々の転炉で溶銑及び溶鋼をハンドリングする際には、前記装入鍋及び前記出湯用の取鍋を各々の転炉で専用することを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の転炉の操業方法。
  6. 前記3基の転炉に対して合計3基以上の排滓用のスラグポット及び合計3基以上の前記スラグポットを積載するための台車を配置し、各々の転炉からスラグを排出する際には、前記排滓用のスラグポット及び前記スラグポットを積載するための台車を各々の転炉で専用し、各々の転炉からの排出スラグを転炉毎に回収・貯蔵し、排出スラグの処理工程へ搬送することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の転炉の操業方法。
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