JP2019011424A - 耐水性段ボール用澱粉系接着剤及びそれを用いた段ボールシート - Google Patents

耐水性段ボール用澱粉系接着剤及びそれを用いた段ボールシート Download PDF

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Abstract

【課題】耐水強度を有する段ボール用澱粉系接着剤及び段ボールシートを提供すること。【解決手段】澱粉、並びに、アルキルケテンダイマー及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、段ボール用澱粉系接着剤。【選択図】なし

Description

本発明は、段ボール用澱粉系接着剤及び段ボールシートに関する。
近年、段ボール箱を使用した物流の拡大が進み、青果物、鮮魚物、海産物、冷凍食品等の搬送にも段ボール箱が多用されている。これら用途に使われる段ボール箱は、内容物の箱詰め作業から搬送、積み置き貯蔵等の各場面において、内容物自体からの水分滲出や作業環境からの湿潤により、常に水気に曝される状況にあるため、段ボールを構成する原紙及び接着剤には、耐水性能が要求される。
段ボールの製造に使われる接着剤には、安価で安全性の高い天然物の澱粉が使用される。澱粉は耐水性に乏しく、澱粉接着剤で貼合した段ボールを水に浸すと、ライナーと中芯の接着部より容易に自然剥離を起こしてしまう。したがって、耐水性が求められる耐水段ボールの製造には、澱粉接着剤に耐水性能を付与した接着剤が使われる。
段ボール用接着剤の耐水強度を向上させる技術としては、例えば、特許文献1には所定量の高アミロースデンプンを含有する段ボール用接着剤が開示されている。また、従来から澱粉接着剤にユリアホルムアルデヒド、ケトンホルムアルデヒド、レソルシノールホルムアルデヒドなどの熱硬化性樹脂を架橋添加剤として添加して耐水性を付与してきた。
しかし、さらなる耐水強度の向上が求められているのが現状である。
特開平7−76677
本発明は、耐水強度を有する段ボール用澱粉系接着剤及び段ボールシートを提供することを目的とする。
前記課題に鑑み研究を重ねた結果、本発明者は、従来の段ボール用澱粉系接着剤の製糊時にアルキルケテンダイマー及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を使用することで耐水性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下の態様を包含する。
項1.澱粉、並びに、アルキルケテンダイマー及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、段ボール用澱粉系接着剤。
項2.熱硬化性樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、項1に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
項3.澱粉の全固形分質量に対し、アルキルケテンダイマーが0.5〜10質量%含有する、項1又は2記載の段ボール用澱粉系接着剤
項4.澱粉の全固形分質量に対し、シリコーンが0.001〜10質量%含有する、項1〜3のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤
項5.澱粉がメイン澱粉とキャリア澱粉を含み、前記キャリア澱粉として、ハイアミロース澱粉を含む、項1〜4のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
項6.キャリア澱粉として、地下茎澱粉をさらに含む、項5に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
項7.含水イノケイ酸塩鉱物をさらに含む、項1〜6のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
項8.項1〜7のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤を用いて、波形に成形された中芯紙の片面または両面に、ライナー紙を貼り合わせる工程を含む、段ボールシートの製造方法。
項9.波型に成形された中芯紙とライナー紙との間に項1〜7いずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤が硬化した接着層を有する段ボールシート。
本発明によれば、耐水性に優れた段ボール用澱粉系接着剤が提供され、また耐水性に優れた段ボールシートを製造することができる。特に、10分間以上水に浸漬した場合の耐水強度、更には3時間という長時間水に浸漬した場合の耐水強度に優れた段ボールシートを製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「澱粉系接着剤」とは、澱粉を主体とする接着剤であって、接着剤を加熱することで澱粉の持つ吸水・膨潤・糊化の各物性を利用して接着機能を発現させ、接着剤として機能する接着剤を意味する。「段ボール用澱粉系接着剤」とは、波形に成形された中芯原紙とライナー原紙を貼り合わせるために用いられる澱粉系接着剤である。
段ボール用澱粉系接着剤における澱粉は、糊化していない生澱粉からなるメイン澱粉と、化工澱粉をアルカリと熱により完全糊化したキャリア澱粉とを含む。段ボール用澱粉系接着剤は、澱粉が水を主体とする水性媒体に分散した分散液である。
一般的な段ボール用澱粉系接着剤の構成の例として、水、メイン澱粉、キャリア澱粉、アルカリ、及び硼素化合物を含むものが挙げられる。
本発明に使用する澱粉は、従来段ボール用澱粉系接着剤に使われてきた澱粉が使用できる。例えば、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉等、及びこれら澱粉を酸化、酸処理、エステル化、エーテル化した澱粉が使用できる。澱粉は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の接着剤において、倍水率は、通常1.9〜4.5程度である。倍水率を1.9以上とすることで、メイン澱粉が糊化するために十分な水分が供給され良好な接着が得られる。また、倍水率を4.5以下とすることで、接着剤の固形分濃度を所定以上に維持し、良好な初期接着を達成することができる。本明細書において、「倍水率」とは、澱粉系接着剤における(全水量/全澱粉量)の質量比を意味する。
また、本発明の接着剤において、キャリア率は、好ましくは通常5〜30質量%程度である。キャリア率を5%以上とすることで、良好な保水性、初期接着力を達成することができる。また、キャリア率を30%以下とすることは、段ボール用接着剤として適正な粘度及び保存安定性を得るという観点から好ましい。
本発明の好ましい態様の1つにおいて、接着剤はキャリア澱粉として、ハイアミロース澱粉を含む。本明細書において、「ハイアミロース澱粉」とはアミロース含有量50%以上の澱粉を意味する。ハイアミロース澱粉としては、ハイアミロースコーンスターチなどが例示される。
キャリア澱粉としてハイアミロース澱粉を含む場合、キャリア澱粉はハイアミロース澱粉1種のみから構成されても、他の澱粉(1種または2種以上)と組み合わせてもよい。初期接着率を向上させるとの観点から、キャリア澱粉はハイアミロース澱粉に加えて地下茎澱粉をさらに含めることができる。地下茎澱粉としては、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉が例示される。
キャリア澱粉がハイアミロース澱粉及び地下茎澱粉を含む場合、ハイアミロース澱粉と地下茎澱粉との配合比率は通常30:70〜99:1程度とすることができる。
本発明の接着剤は、アルカリをさらに含むことができる。本発明に使用するアルカリは、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、水酸化カリウム等、従来段ボール用澱粉系接着剤に使われてきたものが使用できる。アルカリは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。アルカリは好ましくは水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)である。本発明の接着剤の苛性率は、適性糊化温度を得るために製糊条件に合わせて決めればよい。一般的には、アルカリの添加量は苛性率として、通常0.5〜1.5質量%の範囲が好ましい。本明細書において、「苛性率」とは、澱粉系接着剤における(苛性量/全糊液量)の質量比を意味する。
本発明の接着剤は、耐水化を付与するための成分(耐水化剤)として、アルキルケテンダイマー及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。アルキルケテンダイマー及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に使用するアルキルケテンダイマーは、製紙の抄紙工程におけるサイズ剤として使用されるものを使用することができる。アルキルケテンダイマー(AKD)としては、炭素数10〜30(好ましくは12〜25)程度の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸あるいはこれらの混合物を二量化したものが挙げられる。また、アルキルケテンダイマー(AKD)としては、飽和脂肪酸アルキルケテンダイマー、不飽和脂肪酸アルキルケテンダイマーが例示される。
本発明に使用するシリコーンは、いわゆる消泡剤として使用される液状のものを使用することができ、例えばオイル型、溶液型、粉末型、エマルジョン型などの各タイプを使用することができる。
アルキルケテンダイマーの含有量は、澱粉の全固形分質量(全澱粉量)に対して0.5〜10質量%程度、より好ましくは1.0〜8.0質量%程度、さらに好ましくは1.5〜7.0質量%程度とすることができる。
アルキルケテンダイマーの添加量が上述の下限以上であれば良好な耐水強度を得ることができる。また、上述の上限以下であれば冬場の乾燥時などに於いても、いわゆるバリツキといった過乾燥に起因するトラブルを防止することができる。
また、シリコーンの含有量は、澱粉の全固形分質量(全澱粉量)に対して0.001〜10質量%程度、より好ましくは0.01〜3.0質量%程度、さらに好ましくは0.02〜2.0質量%程度とすることができる。
シリコーンの添加量が上述の下限以上であれば良好な耐水強度を得ることができる。また、上述の上限以下であれば、冬場の乾燥時などに於いても、いわゆるバリツキといった過乾燥に起因するトラブルを防止することができる。さらに、上述の数値範囲であれば、接着剤の塗工工程において、接着剤を段ボールに塗布するための金属ロール上での、いわゆる「ハジキ」に起因する塗工ムラを抑制することができる。
本発明の接着剤は、耐水化を付与するための成分(耐水化剤)として熱硬化性樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含むことができる。熱硬化性樹脂及びエポキシ系樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
熱硬化性樹脂としては耐水化を付与できる成分として作用するものであれば特に制限なく、例えばレゾルシノール樹脂(レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂)、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)、尿素樹脂(尿素−ホルムアルデヒド樹脂)、ケトン樹脂(ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、ケトン−メラミン樹脂)等が挙げられる。熱硬化性樹脂の含有量は、澱粉の全固形分質量に対して、通常1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%とすることができる。
エポキシ系樹脂としては、耐水化を付与できる成分として作用するものであれば特に制限なく、例えばポリアミドエピクロロヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物が使用できる。エポキシ系樹脂の含有量は、澱粉の全固形分質量に対して、通常1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%とすることができる。
本発明の接着剤は、さらに硼素化合物を含むことができる。硼素化合物は、糊化澱粉を擬似的に架橋して初期接着力を発現させると考えられる。硼素化合物の含有量は、硼砂換算量として、澱粉の全固形分質量に対して、通常1.5質量%〜3.3質量%程度、好ましくは1.6〜3.3質量%程度、さらに好ましくは1.6〜3.0質量%程度、特に好ましくは0.7〜2.7質量%程度とすることができる。上記下限値以上とすることで、十分な初期接着力の向上が達成される。また、上記上限値以下とすることで、硼砂と澱粉の反応が進行しゲル化及び/または高粘度化が発生することを抑制できる。
本発明の接着剤は、さらに含水イノケイ酸塩鉱物を含むことができる。含水イノケイ酸塩鉱物としては、含水イノケイ酸マグネシウム、含水イノケイ酸アルミニウム・マグネシウム等が挙げられる。含水イノケイ酸塩鉱物は、含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物に含まれる。含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物としては、通称「セピオライト」、「アタパルジャイト」、「パリゴルスカイト」等が挙げられ、本発明においてこれらを使用することができる。
含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物の製造法には、乾式粉砕法と湿式粉砕法の2通りあり、本発明には、いずれの粉砕方法で製造した含水イノケイ酸塩鉱物を主成分とする粘土鉱物も使用できるが、粘土鉱物の微細繊維構造を解繊/分散させる能力が高く、含水イノケイ酸塩鉱物の機能を引き出すことができる点で、湿式粉砕法が好ましい。
本発明において、含水イノケイ酸塩鉱物の含有量は、澱粉の全固形分質量に対して通常0.1〜15質量%程度、好ましくは1〜10質量%程度である。含水イノケイ酸塩鉱物の含有量を前記下限値以上とすることで、含水イノケイ酸塩鉱物を含有する十分な効果が認められる。含水イノケイ酸塩鉱物の含有量を前記下限値以上とすることは、経済性の観点及び含水イノケイ酸塩鉱物の持つ特性の1つである揺変性が強く付与されず良好な接着剤の物性が達成されるとの観点から好ましい。
本発明の接着剤は、ワンタンクステインホール方式、ツータンクステインホール方式、プレミックス方式、ノーキャリア方式等で調製することができる。
ワンタンクキャリア方式は、一つのタンクに澱粉スラリーを調製しアルカリを加えて澱粉をアルカリ糊化した後、アルカリ糊液希釈のため水を加え、希釈されたアルカリ糊液にメイン澱粉(未糊化澱粉)を加え、さらに必要に応じて硼砂を加えて混合する製糊方式である。ワンタンクキャリア方式を採用する場合は、接着剤の仕上がり粘度、経時粘度の安定化の点から、処理温度は30〜45℃であることが好ましく、また、必要に応じて含有するセピオライト等の含水イノケイ酸塩鉱物の繊維を解し、分散させる観点から、製糊時の撹拌の回転数は、好ましくは1000rpm以上、更に好ましくは1500〜5000rpmである。1000rpm以上の回転数で撹拌可能な装置としては、例えばサーコ社製糊装置、三菱重工製糊装置MREX、柿田製作所製糊装置が挙げられる。
ワンタンクキャリア方式による好ましい調製法としては、例えば一つのタンクに30〜45℃の温水を取り、ホモジナイザーを用いて3000〜5000rpmで撹拌し、その中へ澱粉を加え、更に必要に応じて含水イノケイ酸塩鉱物を加え、分散溶解後アルカリを添加し10〜15分間撹拌した後、30〜45℃の温水を加え、引き続きメイン澱粉(未糊化澱粉)を加え、更に必要に応じて硼砂及び耐水化剤を加え、10〜15分間撹拌して段ボール用澱粉系接着剤を製造する方法が挙げられる。
本発明の段ボールシートは、本発明の澱粉系接着剤を用いて製造されるものであり、波形に成形された中芯紙と、澱粉系接着剤によって前記中芯紙の片面または両面に貼合されたライナー紙とを有し、前記中芯紙及びライナー紙の貼合に、前述した本発明の段ボール用澱粉系接着剤が用いられていることを特徴とする。
このようにして製造される段ボールシートは、波型に成形された中芯紙とライナー紙との間に本発明の段ボール用澱粉系接着剤が硬化した接着層を有する段ボールシートである。なお、段ボールシートの製造工程において、本発明の段ボール用澱粉系接着剤の一部が中芯紙及び/またはライナー紙に吸収される場合もある。このような場合であっても、用いた本発明の段ボール用澱粉系接着剤の少なくとも一部が中芯紙とライナー紙との間で接着層を形成し中芯紙とライナー紙とを接着していれば、本発明の段ボールシートの態様に含まれる。
本発明の段ボールシートは、段ボールシートの製造で通常使用されるコルゲーターを用いて製造することができる。すなわち、例えば、糊ロール及び糊ロールに本発明の段ボール用澱粉系接着剤を付着させる手段を少なくとも有するコルゲーターを用い、波形に成形された中芯紙の頂縁と糊ロールとを当接させて頂縁に本発明の段ボール用澱粉系接着剤を塗布する工程と、中芯の、本発明の段ボール用澱粉系接着剤が塗布された片面または両面にライナー紙を貼り合わせる工程と、を含む段ボールシートの製造方法により製造することができる。例えば、本発明の澱粉系接着剤を用いて、グラビアロールを備えたコルゲーターにより段ボールシートを製造することができる。
段ボールシートの糊付け機は、アプリケータロールとドクターロールから構成される。アプリケータロール(糊付けロール)には、メタリングロール、梨地ロール、グラビアロールの各種類がある。メタリングロール、梨地ロールは、ロール表面が平滑な糊付けロールであり、グラビアロールは、ロール表面に凹み(セル)が多数設けられた糊付けロールである。糊バットに浸ったロールには、ロール表面に付着した接着剤が回転によりピックアップされ、ドクターロールによりロール表面に付着した余分な接着剤は掻き落される。表面が平滑なロールでは、粘度低下を起した接着剤はロールへのピックアップが十分に行われず、接着剤の塗布が不均一となり接着剤は斑に塗布されて、接着性能に影響を与える。一方、グラビアロールでは、ロール表面に刻まれた凹み(セル)に接着剤が入り込むため、粘度低下を起した接着剤でもピックアップが容易となり、均一な接着剤の塗布が可能となる。
本発明の段ボールシートは、中芯紙及びライナー紙の貼合に本発明の澱粉系接着剤を用いるものであれば特に制限はなく、片面段ボール、両面段ボール、複両面段ボール、複複両面段ボールのいずれも包含する。
本発明の段ボール用澱粉系接着剤を用いることで、本発明の段ボールシートは優れた耐水性を発揮することができる。耐水性は、例えば、段ボール用澱粉系接着剤を用いて貼り合わせた段ボールシートを所定時間(例えば、10分、3時間)イオン交換水に浸漬後にJIS Z 0402「段ボールの接着力試験方法」に規定する方法評価することができる。
本発明の好ましい態様においては、10分浸漬後に測定する耐水強度、3時間浸漬後に測定する耐水強度共に優れた耐水強度を得ることができる。
本発明の段ボール用澱粉系接着剤は、ろ紙に所定量塗工した際の撥水度が一定範囲であることが好ましい。具体的には、以下の方法で作成した試料に、JIS K 6768に規定されるぬれ試薬を、マイクロピペットを用いて、2.5cm〜3.5cmの高さから10μl 滴下し、1秒以内に濡れ試薬の液滴が全部ろ紙に浸透するぬれ試薬のぬれ張力が25.4mN/m以上60mN/m以下、より好ましくは25.4mN/m以上50mN/m以下、更に好ましくは25.4mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。ぬれ張力が上記の下限以上であれば良好な耐水強度を得ることができる。また、上限以下であれば、冬場の乾燥時などに於いても、いわゆるバリツキといった過乾燥に起因するトラブルを防止することができる。
<試料の作成方法>
JIS P 3801に規定された標準ろ紙に、固形分2.5g/m〜3.5g/mの塗工量となるようにバー塗工し、105℃の熱風乾燥機で30分間乾燥させ、23℃50%の雰囲気下で24時間調湿する。
<実施例>
実施例1
<キャリアパートの調製>
1Lのステンレスジョッキに水600gを取り、ウォーターバスを用いて60℃に加熱し、市販の段ボール糊剤用コーンスターチ(王子コーンスターチ(株)製)を72g加え、特殊機化工業(株)製の攪拌機ロボミックス(4700rpm)で分散させ、澱粉スラリーを調製した。撹拌しながらこの澱粉スラリーに25%濃度の苛性ソーダ溶液50gを投入し、15分間撹拌して、段ボール用糊剤のキャリア澱粉を製造した。
<メインパートの調製>
3Lのステンレスジョッキに水840gを取り、ウォーターバスを用いて35℃に加熱し、市販のコーンスターチ(王子コーンスターチ(株))製)を485g投入し、特殊機化工業(株)製の攪拌機ロボミックス(4000rpm)で分散させ、メイン澱粉を調製した。
<段ボール糊剤の調製>
得られたメイン澱粉を前記攪拌機(4000rpm)で撹拌しながらチューブポンプを用いて120g/分の速度でキャリア澱粉を投入した。投入に要した時間は6分であった。
引き続き撹拌を続けながら、5水塩の硼砂を添加した。
更に、引き続き撹拌を続けながら耐水化剤 ケトン・アクリル樹脂(王子コーンスターチ(株)製 耐水化剤A)を表1の添加量となるように添加し、加えてアルキルケテンダイマー(王子コーンスターチ(株)製 NF80)を表1の添加量となるよう投入し、15分間撹拌した。
得られた糊剤の粘度は310mPa・s(B型粘度計で測定)であった。
<常態強度・耐溶剤強度の測定>
得られた接着剤の耐水接着強度を以下のようにして測定した。50mm×85mmの大きさの耐水用片面段ボール(原紙構成:耐水K280/強化中芯200)に絶乾10g/m−片面塗布し、これを185℃に加熱したホットプレート上に60mm×85mmの大きさの耐水K280の耐水ライナー原紙を置くと同時に重ね、1kg/42.5cmの荷重を5秒間かけて、耐水接着強度測定サンプルを作成した。そのサンプルを温度23℃、相対湿度50%の状態に24時間放置した後、23℃のイオン交換水に10分浸漬し、JIS Z 0402「段ボールの接着力試験方法」に規定する方法で10分浸漬後の耐水強度を測定した。同じく3時間イオン交換水に浸漬し、JIS Z 0402に規定する方法で10分浸漬時の耐水強度を測定した。更に前記サンプルを水に浸漬しない場合の強度(常態強度)をJIS Z 0402に規定する方法で測定した。
得られた結果を表1に示す。
<実施例2、比較例1〜3>
ケトン・アクリル樹脂(A剤)及びアルキルケテンダイマーを、表1に示す薬品及び添加量に変更した以外は、実施例1と同様にして糊剤を作成し、耐水強度・常態強度を測定した。
なお、表中の原料につき、ケトン・メラミン樹脂は、王子コーンスターチ(株)製 LC2を使用した。
得られた結果を表1に併せて示す。
Figure 2019011424
<実施例3〜6>
キャリア澱粉及びメイン澱粉を、表2に示す通り変更した以外は、実施例2と同様にして糊剤を作成して、耐水強度・常態強度を測定した。
また、初期接着強度の測定のため、5×8.5cmの大きさの片面段ボール(K−280×中芯200)に絶乾5g/m2の接着剤を塗布し、その上に6×8.5cmの大きさのライナー(K−280)を重ね、加重9.8N/42.5cm、加熱温度180℃、加熱時間5秒で貼合後、直ちにロードセル付きピンテスターにセットし、ライナーと片面段ボールの接着面の剥離強度を測定した。
得られた結果を表2に示す。
なお、表中の原料につき、ハイアミロースコーンスターチはイングレディオン社 オプタミル(アミロース含有量 70%)、タピオカ澱粉は王子コーンスターチ(株)製 OTM、馬澱は十勝産ジャガイモより既知の方法で製造した馬鈴薯澱粉、セピオライトは楠本化成(株)製 PANGEL−ADを使用した。
Figure 2019011424
<発明の効果>
実施例1〜2より、アルキルケテンダイマーの効果で耐水強度が向上することがわかる。特に、10分耐水強度の向上が顕著である。
また、実施例3〜6より、ハイアミロースコーンスターチを使用することで、更に3時間耐水強度が向上することがわかる。
さらに、キャリア澱粉として地下茎澱粉である馬澱やタピオカ澱粉を使用することで、初期接着強度が向上することがわかる。そのため、このような場合には更に製造効率主向上させられることがわかる。

Claims (9)

  1. 澱粉、並びに、アルキルケテンダイマー及びシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、段ボール用澱粉系接着剤。
  2. 熱硬化性樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
  3. 澱粉の全固形分質量に対し、アルキルケテンダイマーが0.5〜10質量%含有する、請求項1又は2記載の段ボール用澱粉系接着剤
  4. 澱粉の全固形分質量に対し、シリコーンが0.001〜10質量%含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤
  5. 澱粉がメイン澱粉とキャリア澱粉を含み、前記キャリア澱粉として、ハイアミロース澱粉を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
  6. キャリア澱粉として、地下茎澱粉をさらに含む、請求項5に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
  7. 含水イノケイ酸塩鉱物をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤を用いて、波形に成形された中芯紙の片面または両面に、ライナー紙を貼り合わせる工程を含む、段ボールシートの製造方法。
  9. 波型に成形された中芯紙とライナー紙との間に請求項1〜7いずれか1項に記載の段ボール用澱粉系接着剤が硬化した接着層を有する段ボールシート。
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