以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、パレット1は、平面視略矩形状をなしている。また、パレット1は、パレット1の各短側辺部に沿って設けられる一対の側柱部2と、パレット1の中央部を通るようにして、パレット1の一方の長側辺部から他方の長側辺部にかけて設けられる中央柱部3と、各側柱部2、及び、中央柱部3の上端部間を連結する上デッキ4と、各側柱部2、及び、中央柱部3の下端部間を連結する下デッキ5とを備えている。加えて、各側柱部2と中央柱部3との間には、フォークリフトのフォークを差込み可能なフォーク差込み部6が形成されている。本実施形態では、パレット1の外周面を構成する4つの側面のうち2つの側面からフォークを差込み可能な2方差しタイプのパレットとなっている。
また、本実施形態では、側柱部2、中央柱部3、及び、上デッキ4の上面によって物品を載置可能な「載置面7」が構成されている。さらに、側柱部2、中央柱部3、及び、下デッキ5の下面によって、パレット1が設置される床面等の設置面に接地する「接地面8」が構成されている。
また、本実施形態のパレット1は、上構成部9と、下構成部10とから構成されている。上構成部9は、側柱部2、及び、中央柱部3の上側部分と、上デッキ4とを備えている。下構成部10は、側柱部2、及び、中央柱部3の下側部分と、下デッキ5とを備えている(図2参照)。そして、上構成部9の側柱部2、及び、中央柱部3の下面と、下構成部10の側柱部2、及び、中央柱部3の上面とを熱溶着することによって上構成部9と下構成部10とが一体化され、これにより本実施形態のパレット1が構成されている。本実施形態の上構成部9、及び、下構成部10は、いずれもポリプロピレンにより構成されている。
さらに、本実施形態の上構成部9、及び、下構成部10は、互いに同一形状で、同一の大きさに構成されており、パレット1の厚み(高さ)方向の中央部、かつ、パレット1の長手方向の中央部を通り、パレット1の短手方向に延びる仮想軸線を中心として互いに点対称形状をなすようにして接続されている。尚、本実施形態では、パレット1を設置面に設置した場合に、上側が上構成部9とされ、下側が下構成部10とされる。また、上デッキ4がデッキ部に相当し、上構成部9、及び、下構成部10のそれぞれがパレット構成体に相当する。
また、図2等に示すように、上構成部9、及び、下構成部10の裏面側には、補強用のリブが格子状に設けられており、側柱部2、及び、中央柱部3については、側柱部2、及び、中央柱部3の外周面を構成する周壁部11の内側において、側柱部2、及び、中央柱部3の上端部から下端部にかけて延びる内壁部12が格子状に設けられている。
さて、図1、図3、図4に示すように、パレット1には、平面視でパレット1の長手幅の略中央部、かつ、パレット1の短手幅の中央部近傍(中央柱部3の内壁部12で区画された領域の1つ)において、略直方体形状のIDタグ21を収容するタグ収容部22が設けられている。また、タグ収容部22は、載置面7を構成する中央柱部3の上面に設けられ、タグ収容部22を上方に開口させて、IDタグ21のタグ収容部22への挿入を許容する挿入開口部23を備えている。本実施形態では、IDタグ21の長手方向が上下方向となるようにしてタグ収容部22に収容される。
尚、図10等に示すように、本実施形態では、上方に開口する(上構成部9に挿入開口部23が設けられた)タグ収容部22と、下方に開口する(下構成部10に挿入開口部23が設けられた)タグ収容部22とが一対で設けられている。つまり、上構成部9、及び、下構成部10のそれぞれにおいて、タグ収容部22のうち挿入開口部23を含む上側の構成を具備する上側収容構成部24と、上側収容構成部24の側方に設けられ、タグ収容部22の下側の構成を具備する下側収容構成部25とが設けられ、上構成部9及び下構成部10を上下に組合わせて溶着することで、上構成部9の上側収容構成部24と、下構成部10の下側収容構成部25とが合致して、上方に開口するタグ収容部22が構成されるとともに、上構成部9の下側収容構成部25と、下構成部10の上側収容構成部24とが合致して、下方に開口するタグ収容部22が構成されている。
以下、特に断りのない限り、上方に開口するタグ収容部22について説明する。図6、図9、図11等に示すように、タグ収容部22は、パレット1の長手方向において相対する第1縦壁部26、及び、第2縦壁部27と、第1縦壁部26、及び、第2縦壁部27の一方の側辺部間(パレット1の短手方向中央部側の側辺部間)を連結する第3縦壁部28と、第3縦壁部28と対向するとともに、前記第2縦壁部27と連結された第4縦壁部29とによって、パレット1の長手方向、及び、パレット1の短手方向におけるタグ収容部22の収容空間の幅が画定されている。第1縦壁部26、第2縦壁部27、第3縦壁部28、及び、第4縦壁部29は、それぞれ上構成部9(上側収容構成部24)によって構成される部位と、下構成部10(下側収容構成部25)によって構成される部位とを備え、特に、図6に示すように、第1縦壁部26、第3縦壁部28は、中央柱部3の上端部から下端部にかけて延びる内壁部12により構成されている。これに対し、図9に示すように、第2縦壁部27、及び、第4縦壁部29は、中央柱部3の上端部、及び、下端部から、上構成部9と下構成部10との接続面側に延びるものの、接続面にまでは至らず、上構成部9の第2縦壁部27、及び、第4縦壁部29と、下構成部10の第2縦壁部27、及び、第4縦壁部29とが上下に離間している。
さらに、本実施形態では、第2縦壁部27の上辺部から第1縦壁部26側に延出する張出部30が設けられている。張出部30の両側部は、第3縦壁部28、及び、第4縦壁部29に連結されている。本実施形態の挿入開口部23は、張出部30と、第1縦壁部26と、第3縦壁部28と、第4縦壁部29とで囲まれる範囲に設けられている。
図6等に示すように、タグ収容部22の下縁部を画定する底壁部31は、下構成部10の下側収容構成部25において設けられている。図8、図10に示すように、IDタグ21の長手幅(タグ収容部22に収容された状態では上下幅)は、パレット1の上下幅(厚み)よりも短く、パレット1の上下幅の半分よりも長くなっている。底壁部31は、底壁部31の上面と、張出部30(後述する張出介助リブ61)との間の距離が、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の上下幅とほぼ同じとなるように、下構成部10の接地面8を構成する壁部よりも上方に離間して設けられている。
図3等に示すように、タグ収容部22には、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の脱落を防止するキャップ部材41が取付けられる。図4、図5、図8等に示すように、キャップ部材41は、挿入開口部23の一部を塞ぐ略矩形板状のベース部42と、キャップ部材41をタグ収容部22に取付けるための係合ピース43とを備えている。係合ピース43は、ベース部42の下面側に設けられた設置凹部44(図5、図10参照)に嵌め込まれて固定される略矩形板状の台座部45と、台座部45の下面から突出する4つの挿入部46と、台座部45の下面の長手幅方向両端部から突出するずれ止め突起49とを備えている。本実施形態では、係合ピース43はポリプロピレンにより構成され、ベース部42は、係合ピース43よりも軟質なオレフィン系熱可塑性エラストマーにより構成されている。
また、本実施形態では、台座部45の長手幅方向中央部から外れた位置に、台座部45の短手幅方向に並ぶ一対の挿入部46が設けられるとともに、ベース部42の中央部を中心とする前記一対の挿入部46の点対称位置に、もう一対の挿入部46が設けられている。各挿入部46は、台座部45から突出する弾性片47と、弾性片47の先端部から側方に突出する爪部48とを備えている。また、台座部45の短手幅方向に並ぶ一対の挿入部46は、弾性片47同士が台座部45の短手幅方向において所定距離を隔てて対向して設けられるとともに、それぞれの爪部48が互いに離間する方向に突出するように構成されている。本実施形態の係合ピース43は、台座部45(ベース部42)の中央部を中心として点対称形状をなしている。
これに対し、図4等に示すように、上構成部9の中央柱部3には、挿入開口部23のうち第1縦壁部26側の部位と重複するようにして、キャップ部材41のベース部42が嵌入するようにして設置されるキャップ設置部51が設けられている。但し、ベース部42の長手幅は、タグ収容部22の第3縦壁部28と、第4縦壁部29との間の距離よりも長い(ほぼ2倍となっている)。このため、挿入開口部23のうち第1縦壁部26側の部位をパレット1の短手方向に拡張するようにして拡張開口部52を設けることにより、キャップ設置部51がキャップ部材41のベース部42を設置可能となるまで拡張されている。尚、図9、図11に示すように、第1縦壁部26は、拡張開口部52側にも連続して延びている。また、第4縦壁部29は、拡張開口部52に対応する部位が省略されている。
さらに、図4、図11等に示すように、キャップ設置部51は、第1縦壁部26の上辺部よりもベース部42の厚みと同程度の距離を下方に変位した位置から第2縦壁部27側に突出する第1係合壁53と、拡張開口部52を挟んで第1縦壁部26の反対側の拡張開口部52の周縁部に設けられた第2係合壁54(図9の下方に開口するタグ収容部22を参照)と、第3縦壁部28のうちキャップ設置部51に対応する部位、及び、当該第3縦壁部28に対向する拡張開口部52の周縁部に設けられた支持壁55とを備えている。尚、第2係合壁54、及び、支持壁55の上面及び下面の高さ位置は、第1係合壁53の上面及び下面の高さ位置とそれぞれ同じとなっている。本実施形態では、第1係合壁53及び第2係合壁54が被係合部に相当する。
そして、図8、図10等に示すように、キャップ部材41のベース部42をキャップ設置部51に設置するようにして、キャップ部材41をタグ収容部22に取付けた場合、ベース部42の下面が、第1係合壁53、第2係合壁54、及び、支持壁55の上面に当接して支持される。さらに、図11等に示すように、キャップ部材41の4つの挿入部46のうち、第1縦壁部26側の2つの挿入部46は、その爪部48が第1係合壁53の下面に係止され、第2係合壁54側の挿入部46は、その爪部48が第2係合壁54の下面に係止される。加えて、キャップ部材41の一対のずれ止め突起49が、キャップ設置部51の一対の支持壁55の間に進入し、各ずれ止め突起49が支持壁55と当接、又は、近接する。加えて、図4等に示すように、支持壁55のうちずれ止め突起49と対応する部位は若干凹状に構成されており、ずれ止め突起49が当該凹状部に位置した場合、キャップ部材41の第2縦壁部27側への変位も規制される。また、キャップ部材41のベース部42の上面が、載置面7と略面一とされる。
尚、本実施形態のキャップ部材41は、ベース部42の中央部を中心として上面側、及び、下面側の構成がそれぞれ点対称形状となっている。従って、キャップ部材41のタグ収容部22への取付けに際して、ベース部42の長手幅方向と、キャップ設置部51の長手幅方向とを合わせさえすれば(ベース部42を挿入開口部23と、拡張開口部52とに掛けて設置することで)、上記のように3つの挿入部46がそれぞれ第1係合壁53及び第2係合壁54と係合状態とされ、キャップ部材41をタグ収容部22に確実に取付けられるようになっている。
加えて、図4、図11に示すように、第1係合壁53、及び、第2係合壁54には、挿入部46の爪部48が係止される位置に対応して、半円状の本体側切欠き部56が設けられている。さらに、キャップ部材41のベース部42においても、各挿入部46の爪部48に対応する位置に半円状のキャップ側切欠き部57が設けられている。キャップ部材41を取外す場合には、キャップ側切欠き部57、及び、本体側切欠き部56を介して、工具の先端部を第1係合壁53や第2係合壁54の裏面側にまで進入させ、爪部48を押圧して弾性片47を変形させることで、挿入部46の係合状態を解除することが可能である。
また、図6等に示すように、第1縦壁部26は、第4縦壁部29よりも第3縦壁部28側の位置において、上下に延び、第1係合壁53の下面に連結される第1介助リブ58を備えている。さらに、第2縦壁部27は、第1縦壁部26側に突出し、上下に延びる2本の第2介助リブ59を備えている。加えて、第3縦壁部28は、第4縦壁部29側に突出し、上下に延びる2本の第3介助リブ60を備えている。尚、第3縦壁部28には、張出部30と、キャップ設置部51(支持壁55)との間の範囲において第3縦壁部28の上辺部に沿って延び、張出部30、及び、支持壁55に連結されるリブが設けられており、当該リブについても、第3介助リブ60を構成する。また、第2介助リブ59、及び、第3介助リブ60は、第2縦壁部27、及び、第3縦壁部28からの突出長がほぼ一定であるのに対し、第1介助リブ58は、その上端部から下方に向けて、第1縦壁部26からの突出長が次第に短くなるように構成されている。
第1介助リブ58、及び、第2介助リブ59は、上構成部9にのみ設けられている。その一方で、第3介助リブ60は、上構成部9、及び、下構成部10のどちら側にも設けられているが、上構成部9と下構成部10との接続面の近傍で途切れている。また、2本の第3介助リブ60のうち一方は、張出部30の下方位置に設けられ、他方は、張出部30よりも第1縦壁部26側の位置に設けられている。
さらに、図10、図11に示すように、張出部30は、底壁部31側に突出し、パレット1の長手方向(張出部30の第2縦壁部27からの延出方向)に沿って延びる2本の張出介助リブ61を備えている。張出介助リブ61のうち第1縦壁部26側の部位は傾斜面となっている。
図4等に示すように、挿入開口部23は、IDタグ21の外表面のうち最小面積の面に対応する形状をなしており、本実施形態では、パレット1の長手方向において幅が大きくなっている。また、本実施形態の挿入開口部23は、張出部30と、第1縦壁部26の第1係合壁53と、第3縦壁部28の第3介助リブ60、及び、支持壁55と、第4縦壁部29とによって区画されている。
図7に示すように、挿入開口部23を介してIDタグ21をタグ収容部22に挿入する場合、IDタグ21は、挿入開口部23の周縁部、第1介助リブ58、第3介助リブ60、及び、第4縦壁部29に案内されつつ、ほぼ鉛直に下方へ移動する。そして、図10の2点鎖線で示すように、挿入開口部23を介してタグ収容部22に挿入されたIDタグ21は、当該IDタグ21の下面が底壁部31に突き当たり、支持される。この状態では、IDタグ21の上面は、張出部30の下面(張出介助リブ61)とほぼ同じ高さとされる。これにより、タグ収容部22に収容されたIDタグ21は、IDタグ21の上面の全体が挿入開口部23の下方の範囲に収まる第1位置とされる。
尚、第1介助リブ58、及び、第3介助リブ60の存在により、第1位置とされたIDタグ21が第1縦壁部26、及び、第3縦壁部28の下方に潜り込んでしまうといった事態が回避される。さらに、第1縦壁部26、及び、第3縦壁部28において、上構成部9と、下構成部10とを溶着することで生じ得るバリ等が形成されていたとしても、第1介助リブ58、及び、第3介助リブ60によってIDタグ21の側面を案内・支持する構成により、IDタグ21が前記バリ等と接触することを抑制(第3縦壁部28側は回避)することができる。また、第2縦壁部27、第4縦壁部29、及び、第3介助リブ60においては、上構成部9と下構成部10とが離間していることから、前記溶着に起因するバリ等は発生しない。
その後、第1位置にあるIDタグ21を第2縦壁部27側に押圧して、図10の実線で示すように、IDタグ21の側面が第2縦壁部27(第2介助リブ59)と当接するまで変位させる。これにより、タグ収容部22に収容されたIDタグ21は、当該IDタグ21の上面の一部が張出部30の下方に位置する第2位置とされる。本実施形態では、パレット1の長手方向において、IDタグ21の上面の1/4以上の範囲が張出部30によって覆われるようになっている。また、底壁部31と、張出部30(張出介助リブ61)との間の距離(タグ収容部22の収容空間の上下の幅)は、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の上下の幅(長手方向の幅)とほぼ同じであり、第2位置とされたIDタグ21は、底壁部31に当接して支持されるとともに、張出部30(張出介助リブ61)と当接、又は、近接するように構成されている。
さらに、第3縦壁部28(第3介助リブ60)と、第4縦壁部29との間の距離(タグ収容部22の収容空間の横幅)は、タグ収容部22に収容されたIDタグ21のパレット1の短手方向における幅(IDタグ21の短い方の横幅)とほぼ同じであり、第2位置とされたIDタグ21は、第3縦壁部28(第3介助リブ60)、及び、第4縦壁部29と当接、又は、近接するように構成されている。
その一方で、タグ収容部22において第2位置にあるIDタグ21の第1位置側には隙間が形成される。本実施形態では、IDタグ21が第2位置に収容されたタグ収容部22に対して、上記のように、キャップ部材41が取付けられる。すなわち、キャップ部材41のベース部42がキャップ設置部51に設置される(第1係合壁53、第2係合壁54、支持壁55の上面に支持される)とともに、第1係合壁53、及び、第2係合壁54の下面に対して、挿入部46の爪部48が係止される。尚、本実施形態では、キャップ部材41の取付状態において、係合ピース43のベース部42においても、第1係合壁53、及び、第2係合壁54と当接するように構成されている(図10等参照)。
また、図9、図10等に示すように、本実施形態では、キャップ部材41の4つの挿入部46のうち、タグ収容部22に位置するとともに爪部48が第2縦壁部27側に突出する挿入部46は、第1係合壁53や第2係合壁54に係止されるのではなく、その爪部48が、第2位置にあるIDタグ21の側面と当接、又は、近接するように構成されている。これにより、第2位置にあるIDタグ21の第1位置側への変位が規制されるようになっている。
さらに、本実施形態では、タグ収容部22に取付けられたキャップ部材41のベース部42の下面と、第2位置にあるIDタグ21とが、近接、又は、当接するように構成されている。但し、キャップ部材41のベース部42と、第2位置のIDタグ21とが当接する場合には、ベース部42と、第2位置にあるIDタグ21とが当接するよりも前に、或いは、ほぼ同時に、第2位置にあるIDタグ21と張出部30(張出介助リブ61)とが当接するように構成されている。これにより、例えば、パレット1が上下に振動した場合でも、キャップ部材41が第2位置にあるIDタグ21から上方に向かう力をほぼ受けないように構成されている。
尚、第2縦壁部27は、パレット1の長手方向の中央部に位置しており、上構成部9、及び、下構成部10のそれぞれにおいて、第2縦壁部27を挟んで、上側収容構成部24と、下側収容構成部25とが隣接して設けられる。また、本実施形態では、タグ収容部22に取付けられたキャップ部材41の挿入部46のうち、IDタグ21と対向して当接又は近接する挿入部46により位置決め部が構成される。
以上詳述したように、本実施形態によれば、タグ収容部22にIDタグ21を収容してキャップ部材41を取付けることで、タグ収容部22においてIDタグ21が張出部30の下方の第2位置に配置される。このため、張出部30によりIDタグ21の上方への変位を規制することができる。さらに、キャップ部材41でIDタグ21の上方への変位を規制する必要がなくなることから、例えば、パレット1が上下に振動する等した場合に、キャップ部材41がIDタグ21により上方に押圧されてパレット1から外れてしまうといった事態を回避することができる。
また、IDタグ21をタグ収容部22から取外す場合には、第2位置にあるIDタグ21を第1位置としてから上方の挿入開口部23へ抜き取る必要があるが、キャップ部材41がパレット1に取付けられている場合には、キャップ部材41の挿入部46により、IDタグ21の第1位置側への変位が規制される。従って、パレット1にキャップ部材41を取付けることで、IDタグ21がパレット1から脱落するといった事態をより確実に防止することができる。
さらに、タグ収容部22において第2位置にあるIDタグ21の第1位置側に存在する隙間にキャップ部材41の挿入部46が配置されることにより、IDタグ21の第1位置側へのガタツキについても抑止することができる。特に、タグ収容部22において第2位置にあるIDタグ21の第1位置側に形成された隙間に対しキャップ部材41の複数の挿入部46が上方から挿入されることから、挿入部46のうち第2位置にあるIDタグ21に爪部48が対向する挿入部46をIDタグ21の第1位置側の面と当接又は近接させる(極力近接配置させる)ことができる。従って、タグ収容部22に収容されたIDタグ21の周り(パレット1の本体とは別部材であるキャップ部材41の挿入部46と、IDタグ21との間)にIDタグ21の変位が許容されるような隙間が比較的大きく形成され、IDタグ21のガタツキ、ひいては、IDタグ21の故障のリスクが高められてしまうといった事態を回避することができる。
また、IDタグ21を第2位置に配置する場合には、第1位置にあるIDタグ21を横方向に変位させることとなるため、第2位置に配置されるIDタグ21の上下の幅と、タグ収容部22の収容空間の上下の幅とをほぼ同じに構成することができる。従って、IDタグ21の上下方向へのガタツキを防止することができ、IDタグ21の上下方向のガタツキに起因してIDタグ21が損傷する等の事態を回避することができる。加えて、IDタグ21が第1位置と第2位置との間を変位する方向に対して直交する水平方向(IDタグ21の短い方の横幅方向)においても、第2位置にあるIDタグ21の横幅と、タグ収容部22の収容空間の横幅とをほぼ同じとすることができ、IDタグ21の横幅方向におけるガタツキを防止することができる。結果として、IDタグ21の取付状態の安定化を図ることができる。
尚、第2位置にあるIDタグ21によりキャップ部材41の挿入部46が第1位置側に押圧されたとしても、キャップ部材41がパレット1から外れる方向ではない上、タグ収容部22の内面側によってキャップ部材41を確実に支持させることができる。従って、キャップ部材41でIDタグ21の所定方向への変位を規制する構成であっても、キャップ部材41がパレット1から外れるといった事態を防止することができる。また、基本的に、キャップ部材41に対してパレット1から外れる方向に比較的大きな力が作用するといった事態が発生することはなく、キャップ部材41の取付構造を比較的簡易なものとしても、キャップ部材41の取付状態を確実に維持することができる。
また、本実施形態によれば、キャップ部材41の挿入部46と、タグ収容部22の第1係合壁53、及び、第2係合壁54とが係合状態とされることにより、タグ収容部22に対してキャップ部材41が意図せずに上方に相対変位し、キャップ部材41がタグ収容部22から外れるといった事態をより確実に防止することができる。また、例えば、キャップ部材41と、タグ収容部22とを接着剤やねじ等で固定する場合に比べ、取付作業性の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態のキャップ部材41は点対称形状をなし、4つの挿入部46に関しても、ベース部42の平面視中央部を中心として互いに点対称形状となるように構成されている。このため、キャップ部材41が所定の向きでタグ収容部22に取付けられた状態において、第2位置にあるIDタグ21と当接、又は、近接していた挿入部46は、ベース部42の平面視中央部を中心としてキャップ部材41を180度回転させた向きでタグ収容部22に取付けた場合に、第1係合壁53と係合されることとなる(その代わりに、別の挿入部46が、第2位置にあるIDタグ21と当接、又は、近接する)。つまり、1つの挿入部46が、第1係合壁53と係合される係合部、及び、IDタグ21の位置決めを行う位置決め部の両方の機能を備え、キャップ部材41の取付向きに応じて、係合部、及び、位置決め部のどちらかの機能を発揮することとなる。これにより、キャップ部材41の取付向きを確認する作業の簡略化を図ることができ、キャップ部材41の取付作業性の向上、及び、取付向きを間違える不具合の防止等を図ることができる。
加えて、挿入部46は、弾性片47を備えていることから、キャップ部材41の取付けに支障を来すことなく、IDタグ21と対向する挿入部46を第2位置にあるIDタグ21に近接、当接、又は、圧接させることが可能となる。また、例えば、キャップ部材41の挿入部46に弾性片47が設けられるのではなく、パレット1の第1係合壁53、及び、第2係合壁54が弾性片により支持されるような構成に比べ、パレット1本体の強度、及び、耐久性をより高めることができる上、弾性片47が損傷した場合の対応(交換・修理等)を比較的簡単なものとすることができる。
また、本実施形態のキャップ部材41は、挿入開口部23の一部を塞ぐベース部42を備え、ベース部42は、挿入部46を具備する係合ピース43よりも軟質な材料により構成されている。このように、ベース部42が比較的軟質な素材により構成されているため、タグ収容部22に対する上方からの衝撃をベース部42で緩和させることができ、IDタグ21の保護を図ることができる。さらに、係合ピース43については、比較的硬質な素材で構成することにより、IDタグ21の位置決め効果をより確実なものとすることができる上、挿入部46と、第1係合壁53、及び、第2係合壁54との係合状態をより強固なものとすることができ、キャップ部材41の取付状態の安定化をより一層図ることができる。
また、本実施形態では、上構成部9と、下構成部10とを上下に組合わせてパレット1を構成するとともに、タグ収容部22に関しても、上構成部9の上側収容構成部24と、下構成部10の下側収容構成部25とを上下に組合わせることで構成される。このため、タグ収容部22の張出部30と、タグ収容部22の底壁部31とを比較的容易かつ好適に形成することができる。さらに、IDタグ21を上構成部9と、下構成部10とを跨ぐようにして配置することができ、上構成部9及び下構成部10の単体の上下幅が、IDタグ21の長手幅よりも短くても、IDタグ21の長手方向を上下方向としてパレット1に取付ける(埋設する)ことができる。
また、本実施形態のパレット1は、上構成部9と、下構成部10とを上下反対にしても使用可能な両面使用式のパレット1として構成されている上、上方に開口するタグ収容部22と、下方に開口するタグ収容部22とが設けられていることから、IDタグ21の取付作業性の向上を図ることができる。さらに、上構成部9と、下構成部10とが同一形状であることから、別形状の上構成部と、下構成部とを組合わせる場合に比べ、製造作業性の向上、コストの削減等を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、上構成部9と、下構成部10とが、同一形状で、同一の大きさに構成されているが、上構成部9と、下構成部10とで、形状等が異なるよう構成してもよい。例えば、下デッキ5において、ハンドリフトのフォークの下面側に取付けられたキャスターを接地可能とするキャスター用開口部等の開口部が設けられるようなパレット(片面仕様タイプのパレット)に具体化してもよい。また、当該構成を採用する場合、載置面7、及び、接地面8のうち一方側からのみIDタグ21を挿入可能な構成としてもよい。加えて、上構成部9及び下構成部10は、全ての柱部2、3の上下方向における半分を具備するようになっているが、上構成部9と下構成部10とを組合わせて全ての柱部2、3が構成されるようになっていればよく、例えば、上構成部9には、一対の側柱部2のうち一方(の全体)と、中央柱部3の上半分とが設けられることとしてもよい。
さらに、上記実施形態では、一対の側柱部2と、中央柱部3とを備える2方差しタイプのパレットとなっているが、パレットの四隅に設けられる4本の隅柱と、パレットの側辺部に沿って並ぶ一対の隅柱の中間部位に設けられる中間柱と、パレットの中央部に設けられる中央柱とを備え、パレットの外周面を構成する4つの側面からフォークを差込み可能な4方差しタイプのパレットに適応することも可能である。
また、上記実施形態では特に言及していないが、載置面7、及び、接地面8に関し、タグ収容部22以外の部位を無孔状としてもよいし、上デッキ4、及び、下デッキ5を上下に貫通する開口部を有する格子状に構成してもよいし、載置面7、及び、接地面8の全体を格子状に構成してもよい。
(b)上記実施形態では、タグ収容部22がパレット1の平面視略中央部に設けられているが、別の位置に設けることも可能である。さらに、上記実施形態では、上構成部9、及び、下構成部10のそれぞれにおいて、上側収容構成部24と、下側収容構成部25とが隣接して設けられているが、上構成部9と下構成部10とを組合わせて、上構成部9の上側収容構成部24、及び、下側収容構成部25と、下構成部10の下側収容構成部25、及び、上側収容構成部24とが上下に合致するように構成されていれば、上構成部9、及び、下構成部10のそれぞれにおいて、上側収容構成部24と、下側収容構成部25とが離間して設けられていてもよい。
(c)上記実施形態におけるキャップ部材41の形状等については特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、図12に示すように、キャップ設置部51の拡張開口部52を省略するとともに、それに応じて、キャップ部材41が、第3縦壁部28と、第4縦壁部29との間に収まるように、キャップ部材41の長手幅を半減させ、挿入部46を一対のみとし、台座部45の長手方向両端部にずれ止め突起49を設けるような形状としてもよい。また、ずれ止め突起49を省略し、ベース部42や挿入部46でベース部42の長手方向における位置決めが行われるように構成してもよい。
さらに、上記実施形態のキャップ部材41は、ベース部42と、複数の挿入部46とを備えているが、特にかかる構成に限定されるものではなく、タグ収容部22において第2位置にあるIDタグ21の第1位置側への変位を規制する位置決め部を備えるとともに、タグ収容部22に取付可能に構成されていればよい。例えば、挿入部46の爪部48を省略し、ベース部42をキャップ設置部51に接着剤で固定したり、ベース部42及び挿入部46の代わりに、キャップ部を略四角筒状に構成するとともに、キャップ設置部51(第1係合壁53、第2係合壁54、支持壁55)を省略し、キャップ部材がタグ収容部22のうち第2位置にあるIDタグ21の第1位置側に圧入されるように構成したりしてもよい。但し、キャップ部材41に爪部48を有する挿入部46を設けるとともに、タグ収容部22に対応してキャップ設置部51を設けることで、接着剤を用いるよりも取付作業の向上を図ることができ、キャップ部材を圧入させるだけで固定する場合よりもキャップ部材41の取付状態の安定化を図ることができる。加えて、上記実施形態の挿入部46から爪部48を省略するとともに、ずれ止め突起49の位置に爪部48を具備する挿入部46を設けて支持壁55に挿入部46が係合されるように構成してもよい。
また、キャップ部材41は点対称形状に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態の挿入部46のうち1つを省略したような構成としてもよいし、(図12のキャップ部材41の)ベース部42の一方の長側辺部の中央部と、ベース部42の他方の長側辺部の両端部近傍とに挿入部46を設けることとしてもよいし、4つの挿入部46のうち第2位置にあるIDタグ21と対向配置され得る挿入部46(の一方、又は、両方)の爪部48を省略することとしてもよい。但し、キャップ部材41のタグ収容部22への取付に際し、キャップ設置部51の形状と、ベース部42の形状とを合わせさえすれば、挿入部46と、第1係合壁53、及び、第2係合壁54とが係合するように構成することで、キャップ部材41の取付向きを確認する作業の簡略化を図ることができ、キャップ部材41の取付作業性の向上、取付向きを間違える不具合の防止等を図ることができる。
さらに、例えば、挿入部46の弾性片47を省略して爪部48が弾性変形しない部位から突出するように構成してもよいし、キャップ部材41側に孔状又は凹状の係合部が設けられる一方で、当該係合部と係合されるパレット1の本体側の被係合部が突状(爪状)に構成されることとしてもよい。但し、パレット1の本体側の被係合部が弾性片を有する構成の場合、当該被係合部の損傷のリスクが高くなることから、パレット1の本体よりも比較的容易に交換することのできるキャップ部材41側の挿入部46が弾性片47及び爪部48を備えるように構成することが望ましい。
加えて、上記実施形態では、キャップ部材41の取付状態において、ベース部42の上面と、載置面7とが略面一となっているが、ベース部42が載置面7から上方に突出したり、ベース部42が載置面7よりも下方に没入したりするように構成してもよい。
(d)上記実施形態では、IDタグ21が略直方体形状をなしているが、特にかかる構成に限定されるものではなく、例えば、略円柱状に構成されていてもよい。また、パレット1に対するIDタグ21の設置の向きについても特に限定されるものではなく、例えば、第1縦壁部26と、第2縦壁部27とがパレット1の短手方向において相対する、或いは、パレット1の長手方向、及び、短手方向に対して交差する方向において相対するように構成してもよい。加えて、上記実施形態では、タグ収容部22に取付けられたキャップ部材41のベース部42は、第2位置にあるIDタグ21と当接し得るように構成されているが、当接し得ないように構成してもよい。
(e)上記実施形態では、パレット1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態では、キャップ部材41のベース部42がオレフィン系エラストマーにより構成され、係合ピース43(挿入部46)がポリプロピレンにより構成されているが、特にかかる構成に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、ベース部42を、スチレン系エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、軟質塩化ビニル、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム等で構成してもよい。さらに、例えば、係合ピース43を、高密度ポリエチレン(硬質のポリオレフィン樹脂)や硬質塩化ビニル等の硬質合成樹脂で構成してもよい。