JP2019003823A - 二次電池用電極、二次電池、それらの製造方法 - Google Patents

二次電池用電極、二次電池、それらの製造方法 Download PDF

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阿部  誠
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和明 直江
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Yusuke Kaga
祐介 加賀
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Abstract

【課題】電極から電解質を漏れにくくして、内部短絡を防止する。【解決手段】電解質を有する二次電池用電極であって、二次電池用電極の中央部および二次電池用電極の外周部に電解質が含まれ、二次電池用電極の中央部の金属イオン濃度より二次電池用電極の外周部の金属イオン濃度が低い二次電池用電極。例えば、前記電解質は、半固体電解液および粒子を有し、前記粒子は半固体電解液を保持し、前記半固体電解液は、電解質塩および電解質溶媒を有することが望ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、二次電池用電極、二次電池、それらの製造方法に関する。
リチウム二次電池は高いエネルギ密度を有し、電気自動車用や電力貯蔵用の電池として注目されている。特に、電気自動車では、エンジンを搭載しないゼロエミッション電気自動車(バッテリ式電気自動車、Battery Electric Vehicle(以下BEVと記す。))、エンジンと二次電池の両方を搭載したハイブリッド電気自動車、さらには系統電源から充電させるプラグイン電気自動車がある。特に、BEVでは、一充電走行距離を大きくするために、高エネルギ密度の蓄電池が要求されている。しかしながら、従来のリチウム二次電池では、電池の冷却機構を付加する必要があり、電池システム全体としてはエネルギ密度が小さくなる点が課題となっている。リチウム二次電池の耐熱性を向上させ、冷却機構を省略することが可能になれば、上述の課題を解決することができる。
リチウム二次電池の耐熱性を向上させるためには、従来のリチウム二次電池に用いられている有機電解液を改良する必要がある。その一つの解決手段が、有機電解液を耐熱性に優れる電解質へ変更する方法であり、その電解質がイオン液体にリチウム塩を溶解させた液体や固体電解質である。
これに関連する先行技術として、特許文献1は、正極活物質層及び/又は負極活物質層の外周からはみ出した一対の集電体の外周縁部の間に介在する固体電解質の厚さが、正極活物質層及び負極活物質層の間に介在する固体電解質の厚さよりも厚いことにして、電極同士の接触を未然に防止する固体電池、及び当該固体電池の製造方法を提供している。特許文献2は、正極層、前記負極層及び前記固体電解質層の少なくとも1つにおいて、該層の外周領域に含まれる前記硫化物系固体電解質のヤング率が、前記外周領域の内側に位置する内側領域に含まれる前記硫化物系固体電解質のヤング率よりも小さいことにして、エネルギ密度を低下させることなく、単電池への均一な面圧付与が可能な全固体電池を開示している。
特開2011−96550号公報 特開2011−154902号公報
電極にイオン液体や固体電解質等の電解質が含まれている場合、電極端部から電解質が染み出し、電極間の絶縁性が低下し、ひいては電池内部で短絡が発生する可能性がある。しかしながら、上述の従来技術では、この問題を回避することは難しい。
本発明の目的は、電極から電解質を漏れにくくして、内部短絡を防止することである。
上記課題を解決するための本発明の特徴は、例えば以下の通りである。
電解質を有する二次電池用電極であって、二次電池用電極の中央部および二次電池用電極の外周部に電解質が含まれ、二次電池用電極の中央部の金属イオン濃度より二次電池用電極の外周部の金属イオン濃度が低い二次電池用電極。
本発明により、電極から電解質を漏れにくくして、内部短絡を防止できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
リチウム二次電池の内部構造の模式図。 電極の外形図と中央線A−A’の5点におけるリチウムイオン濃度を測定する方法。 実施例及び比較例の結果。 実施例及び比較例の結果。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
<本発明の電池の構成>
図1は、リチウム二次電池101の内部構造を模式的に示している。リチウム二次電池101とは、非水電解質中における電極へのリチウムイオン(金属イオン)の吸蔵・放出により、電気エネルギを貯蔵または利用可能とする電気化学デバイスである。これは、リチウムイオン電池、非水電解質二次電池、非水電解液二次電池の別の名称で呼ばれるが、いずれの電池も本発明の対象である。
また、本発明の一実施形態は、グライムとリチウム塩を溶解させた半固体電解液を、固体粒子に含浸させた半固体電解質を用いたリチウムイオン電池に関するものである。本発明は、半固体電解質以外の酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質にも適用可能である。それらを電解質と称する場合がある。
以下では、正極107と負極108と半固体電解質層109からなるリチウム二次電池101において、シート状の正極107、負極108、半固体電解質層109中の電解質保持量を検討した。これにより、正極107、負極108、または半固体電解質層109の面内の電解質濃度を制御する方法を考案し、内部短絡を防止することに成功した。以下では、正極107、負極108を電極と称する場合がある。
リチウム二次電池101は、正極107、負極108および半固体電解質層109からなる電極群を電池容器102に密閉状態で収納した構成を有している。半固体電解質層109は、少なくとも正極107または負極108の表面に形成され、一体構造になっている。半固体電解質層109は、正極107と負極108を電気的に絶縁するとともに、後述の半固体電解液を保持することによって、リチウムイオンを透過させる層の機能を有している。電極群は、短冊状の電極を積層させた構成、帯状の電極を捲回して円筒状、扁平状に成形した構成など、種々の構成を採用することができる。
半固体電解液は、半固体電解質層109に用いた有機溶媒またはイオン液体にリチウム塩を溶解させた溶液である。この半固体電解液は、電極の細孔内部に吸収される。半固体電解質層109と同じように、半固体電解液が電極より漏れ出にくいことが、本発明の一実施形態における特徴になる。半固体電解液は、予め半固体電解質層109に含有させて良いし、半固体電解液を含まないシートを正極107と負極108に挟持させ、電極群が組み上がってから、半固体電解液を添加しても良い。半固体電解液の添加の際には、例えば後述の注液口106から電極群へ供給される。
電池容器102は、電極群の形状に対応して、円筒型、偏平長円形状、角型など、任意の形状を選択することができる。電池容器102は、上部に設けられた開口から電極群を収容した後、開口部が蓋103によって塞がれて密閉されている。電池容器102の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼製など、電解質に対し耐食性のある材料から選択される。
蓋103は、外縁が全周に亘って、例えば、溶接、かしめ、接着などによって電池容器102の開口に接合され、電池容器102を密閉状態で封止している。蓋103は、電池容器102の開口を封止した後に、電池容器102内に半固体電解液を注入する注液口106を有している。
注液口106は、電池容器102内に半固体電解液を注入した後に、注液口106によって密閉されている。注液口106に安全機構を付与することも可能である。その安全機構として、電池容器102内部の圧力を解放するための圧力弁を設けても良い。注液口106は、正極107または負極108に半固体電解液を添加するときに用いるが、予め電極に半固体電解液を保持させているときには、注液口106は不要となるので、削除しても良い。
蓋103には、絶縁性シール材料112を介して正極外部端子104および負極外部端子105が固定され、正極外部端子104、負極外部端子105の短絡が絶縁性シール材料112によって防止されている。正極外部端子104は正極リード線110を介して正極107へ、負極外部端子105は負極リード線111を介して負極108へ、それぞれ連結されている。
絶縁性シール材料112の材料は、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂、ガラスハーメチックシールなどから選択することができ、半固体電解液と反応せず、かつ気密性に優れた任意の絶縁材料を使用することができる。
電流を流したときにオーム損失を小さくすることのできる構造であり、かつ半固体電解液と反応しない材質であれば、正極リード線110、負極リード線111の形状、材質は、電池容器102の構造に応じて任意に選択することができる。正極リード線110、負極リード線111は、ワイヤ状、板状などの任意の形状を採ることができる。
絶縁シート113は、電極群と電池容器102の間にも挿入され、正極107と負極108が電池容器102を通じて短絡しないようにしている。
<正極の製造>
正極107は、正極活物質、導電剤、バインダ、正極集電体から構成される。その正極活物質を例示すると、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4が代表例である。他に、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2、Li4Mn5O12、LiMn2-xMxO2(ただし、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn、Ta、x=0.01〜0.2)、Li2Mn3MO8(ただし、M=Fe、Co、Ni、Cu、Zn)、Li1-xAxMn2O4(ただし、A=Mg、B、Al、Fe、Co、Ni、Cr、Zn、Ca、x=0.01〜0.1)、LiNi1-xMxO2(ただし、M=Co、Fe、Ga、x=0.01〜0.2)、LiFeO2、Fe2(SO43、LiCo1-xMxO2(ただし、M=Ni、Fe、Mn、x=0.01〜0.2)、LiNi1-xMxO2(ただし、M=Mn、Fe、Co、Al、Ga、Ca、Mg、x=0.01〜0.2)、Fe(MoO43、FeF3、LiFePO4、LiMnPO4などを列挙することができる。
本発明における実施例、比較例では、正極活物質にLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を選択した。ただし、本発明は正極材料に何ら制約を受けないので、これらの材料に限定されない。本発明における実施例では、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を活物質に用いたが、それよりも高容量なLi2MnO3−LiMnO2系固溶体正極を用いることも可能で、高電力量の5V系正極(LiNi0.5Mn1.5O4など)を用いても良い。これらの高容量材料または高電力量材料を用いると、正極合剤層の厚さを薄くすることができ、電池の中に収納可能な電極面積を増大させることができる。その結果、電池の抵抗を低下させて高出力が可能になると同時に、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2正極を用いたときよりも電池の容量を高めることができる。
正極活物質は、造粒されていない一次粒子のまま用いても良いし、造粒して二次粒子を用いても良い。本発明における実施例では、二次粒子を用いた場合として、正極107の製法を説明する。まず、正極活物質の二次粒子(一次粒子を造粒したもの)の粉末を採取する。ただし、リン酸鉄リチウムのように、一次粒子の粉末を造粒せずに用いても良い。造粒の有無、一次粒子か二次粒子の違いは、本発明では重要でない。
正極活物質の粒径は、正極合剤層の厚さ以下になるように規定されることが望ましい。正極活物質粉末中に正極合剤層の厚さより大きなサイズを有する粗粒がある場合、予めふるい分級、風流分級などにより粗粒を除去し、正極合剤層の厚さ以下の粒子を作製する。
正極活物質の平均粒径D50は、正極活物質のサンプルを水に懸濁し、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック(登録商標))を用いて測定される。D50とは、サンプル全体の体積に対する比率(体積分率)が50%のときの粒径と定義される。その範囲は2〜20μmであることが望ましい。特に、D50が2〜10μmのときに、正極活物質の平均粒径減少に伴う正極107中の正極活物質の充填性の悪化を防止しつつ、かつ、半固体電解液の保持能力を高めた、バランスのよい正極107を提供することが可能になる。
バインダは、4フッ化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエーテルサルホンから選択されるが、これに限られない。バインダとしてこれらの材料を一種単独または複数用いてもよい。
正極活物質を用いて正極スラリを調製し、それを正極集電体に塗布することにより、正極107を作製する。正極スラリを正極集電体に塗布した後に、正極スラリの溶媒を乾燥させ、必要に応じて、正極107を圧縮成型すれば、正極107が完成する。本発明の一実施形態における半固体電解液を添加する前の正極合剤層の細孔径は、水銀ポロシメータを用いて測定される。正極合剤層中の細孔径は、0.001μm〜0.5μmであることが望ましい。
正極合剤層中の細孔径は、半固体電解液を除いた空隙の細孔径である。すなわち、正極活物質、導電剤、バインダを除く、空間の細孔径である。以下の手段により測定することができる。まず、テトラグライム等の電解質溶媒成分および電解質塩を、低粘性の有機溶媒または水を用いて、溶出させる。バインダを溶解させず、半固体電解液を溶かすことのできる溶媒であれば、任意の溶媒を用いることができる。正極107をメタノール、エタノール等のアルコール、ジメチルエーテル、アセトン、ジメトキシエーテル、あるいは水に浸漬すると、電解質溶媒および電解質塩が正極107から溶出する。電解質溶媒および電解質塩の溶出を数回繰り返した後、正極107を取り出し、真空で乾燥することによって低粘性の有機溶媒または水を除去し、正極107の細孔から電解質溶媒および電解質塩を抜いたものが得られる。これを、水銀ポロシメータを用いて、正極合剤層中の細孔径を測定する。
本発明における実施例、比較例の正極活物質の平均粒径は5μmである。導電剤にカーボンブラック(CB)、バインダには図3に示した高分子を用い、正極107中の正極活物質の添加量は85重量%、カーボンブラックの添加量を8重量%、バインダの添加量を7重量%とした。なお、図3に示したバインダは、4フッ化ポリエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF-HFP)、PVDFに酢酸セルロース(CA)を重量比90:10の比率で混合したバインダ(PVDF-HFP+CA(90:10))、PVDFにエチルセルロース(CE)を重量比90:10の比率で混合したバインダ(PVDF-HFP+CE(90:10))、PVDFにポリエーテルサルホン(PES)を重量比90:10の比率で混合したバインダ(PVDF-HFP+PES(90:10))である。
電極に用いるバインダの選定においては、ハンセン溶解度パラメータを計算し、ポリマのハンセン溶解度パラメータ(HSP1)と電解質溶媒のハンセン溶解度パラメータ(HSP2)との差が|HSP1−HSP2|≧0.4の関係になるようにすることが望ましい。本発明では、この溶解度パラメータの差は、後述の式(2)のREDである。すなわち、RED≧0.4の関係になるようにすることが望ましい。REDは、後述の式(2)の相対エネルギ差RED(後述の式(2))で表され、Raをバインダ固有の相互作用半径R0で除した値である。このようにすれば、バインダが電解質溶媒に溶解しにくくなり、電極活物質粒子や導電剤粒子の結合を維持することができる。すなわち、電解質溶媒を保持した状態で、電極構造を強固にすることができる。これにより、電極は電解質溶媒を保持しつつ、電極構造を強固に維持することが可能になる。その結果、内部短絡が起こりにくくなるために、電池の初期容量が増大し、負荷特性も改善される。
REDは0.4以上とすれば好適であり、0.4〜1.3であれば、電池の初期容量が高くなり、好適である。さらに、電極端部でのRaを1.4〜2にすると負荷特性が改善される。
表1に、本発明における実施例、比較例に用いたハンセン溶解度パラメータを示す。ハンセン溶解度パラメータは、分子の分散力、双極子分子間力、水素結合力からなる3つの数列から構成される。分散力をdD、双極子分子間力をdP、水素結合力をdHと表すと、対象とする分子の溶解度パラメータ(dD、dP、dH)は、3次元空間座標の一つとして表示される
Figure 2019003823
バインダと電解質溶媒との溶解性は、式(2)で示す相対エネルギ差REDで定義される。本発明の一実施形態におけるバインダの溶解度パラメータ(δD1、δP1、δH1)と、電解質溶媒の溶解度パラメータ(δD2、δP2、δH2)を、3次元空間の座標と見なし、2座標間の距離Raを、式(1)に従って計算した
〔数1〕
Ra=〔4×(dD1−dD2)2+(dP1−dP2)2+(dH1−dH2)2〕1/2…式(1)
次に、バインダ固有の相互作用半径R0を用いて、式(2)で表されたREDを計算した
〔数2〕
RED=Ra/R0≒Ra/10…式(2)
R0は、バインダ内に取り込み可能な電解質溶媒の溶解度パラメータと、バインダの溶解度パラメータとの最大距離である。REDは相対的エネルギ差と呼ばれ、バインダへ電解質溶媒が溶け込むか否かの指標で、1より小さいと電解質溶媒がバインダに溶解可能である。すなわち、REDが1より小さいと、バインダへ電解質溶媒が溶け込みやすく、逆にREDが1よりも大きくなると、電解質溶媒はバインダへ溶解することができないと判定される。表1に示したバインダのR0は、多くの高分子のR0が7〜13の範囲にあるので、本発明における実施例、比較例では式(2)のR0を10として近似計算をした。
また、実施例4〜8、実施例12〜15では、PVDF-HFPと他のバインダの混合になっている。PVDF-HFPと他のバインダの混合により、電極端部のRED>電極中央部のREDを実現している。ただし、電極中央部もPVDF-HFPと他のバインダの混合としてもよい。電極端部のRED>電極中央部のREDを満たしていなくても、電極中のLi濃度が電極中央部>電極端部となっていることが望ましい。
この場合のハンセン溶解度パラメータは、構成するバインダの各パラメータに重量比率の積の和として、δD1、δP1、δH1をそれぞれ計算し、バインダ全体のパラメータとした。
図3の右端にREDの計算値を示した。いずれも0.4以上、更には0.6以上の値になっており、半固体電解液を保持しつつも、バインダが半固体電解液に溶出しにくい制御が可能になっている。
また、正極活物質は抵抗が高いために、導電剤を必要とするが、その一部を炭素繊維に置き換えることも可能である。炭素繊維は正極活物質の粒子間を連結するので、電子抵抗が低減しやすい。炭素繊維の添加によって、導電性と半固体電解液の保持量の両方が増加する。炭素繊維には、カーボンナノチューブ、ポリアクリロニトリル繊維の炭化した炭素繊維など、任意の材料を用いることができる。
炭素繊維の線径は、0.001μm以上、1μm以下であり、長さは0.1μm以上、10μm以下であれば、本発明に使用することができる。炭素繊維の重量組成は、1重量%以上90重量%以下であれば、本発明に適用することが可能で、正極の電子抵抗を低減させることが可能になる。
正極スラリを調製するために用いる溶媒には、バインダを溶解させるものであれば良く、本発明のバインダには1-メチル-2-ピロリドンを用いた。バインダの種類に応じて、溶媒は選択される。正極材料の分散処理には、公知の混練機、分散機を用いた。
正極活物質、導電剤、バインダ、および有機溶媒を混合した正極スラリを、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などによって正極集電体へ付着させた後、有機溶媒を乾燥し、ロールプレスによって正極107を加圧成形することにより、正極107を作製することができる。また、塗布から乾燥までを複数回、繰り返すことにより、複数の正極合剤層を正極集電体に積層化させることも可能である。
また、正極合剤層の合剤密度は、2〜3g/cm3以上とし、導電剤と正極活物質を密着させ、正極合剤層の電子抵抗を低減すること望ましい。
正極集電体には、厚さが10〜100μmのアルミニウム箔、あるいは厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの孔を有するアルミニウム製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられ、材質もアルミニウムの他に、ステンレス鋼、チタンなども適用可能である。本発明では、電池の使用中に溶解、酸化などの変化をしないものであれば、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の材料を正極集電体に使用することができる。
正極合剤層の厚さは、正極活物質の平均粒径以上とすることが望ましい。正極合剤層の厚さを正極活物質の平均粒径の厚さより小さくすると、隣接する正極活物質間の電子伝導性が悪化するからである。本発明の正極活物質の平均粒径(D50)は、レーザー散乱法により測定され、その範囲は2〜20μmであり、特に2〜8μmの範囲が好適である。この正極活物質を用い、正極合剤層の厚さを20μm以上にすることが望ましい。また、正極合剤層の厚さの上限は、80μm以下とすることが望ましい。正極合剤層が80μmより大きい厚さになると、正極合剤層へ導電剤を多量に添加しない限り、正極合剤層の表面と正極集電体表面近傍の正極活物質の充電レベルにばらつきが生じ、偏った充放電が起こるからである。導電剤の量を増加させると、正極体積が嵩高になり、電池のエネルギ密度が低下する。
<負極の製造>
負極108は、負極活物質、バインダ、負極集電体からなる。負極活物質は、例えば非晶質炭素で被覆した天然黒鉛である。
天然黒鉛表面に非晶質炭素を形成させる方法には、負極活物質粉末に熱分解炭素を析出させる方法がある。エタン、プロパン、ブタン等の低分子炭化水素をアルゴン等の不活性ガスで希釈し、800〜1200℃に加熱することにより、負極活物質粒子の表面で、炭化水素から水素が脱離し、負極活物質粒子の表面に炭素が析出する。炭素は非晶質の形態である。その他に、ポリビニルアルコール、ショ糖などの有機物を添加した後に、不活性ガス雰囲気中で300〜1000℃で熱処理を行うことにより、水素と酸素は水素、一酸化炭素、二酸化炭素の形で脱離し、炭素のみを負極活物質表面に析出させることができる。
本実施例および比較例では、1%のプロパンと99%のアルゴンを混合したガスを、1000℃にて負極活物質に接触させ、炭素を析出させた。炭素の析出量は、1〜30重量%の範囲が望ましい。本実施例では2重量%の炭素を負極活物質表面に析出させた。炭素被覆により、1サイクル目放電容量が増加するだけでなく、サイクル寿命特性とレート特性の増加に有効である。
負極活物質の平均粒径D50は、負極活物質のサンプルを水に懸濁し、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック(登録商標))を用いて測定される。D50とは、サンプル全体の体積に対する比率(体積分率)が50%のときの粒径と定義される。その範囲は2〜20μmであることが望ましい。特に、D50のとき、5〜20μmのときに、負極活物質の平均粒径減少に伴う不可逆容量の増加を抑制し、かつ、半固体電解液の保持能力を高めた、バランスのよい負極108を提供することが可能になる。
負極活物質を用いて負極スラリを調製し、それを負極集電体に塗布することにより、負極108を作製する。
正極107と同様に、カーボンブラックや炭素繊維を負極108に添加しても良い。これらの導電剤は、負極108の抵抗をさらに小さくしつつ、負極108の半固体電解液の保持量を増大させることが可能になる。
負極スラリを負極集電体に塗布した後に、負極スラリの溶媒を乾燥させ、必要に応じて、負極108を圧縮成型すれば、負極108が完成する。本発明の半固体電解液を添加する前の負極合剤層の細孔径は、水銀ポロシメータを用いて測定される。その適正な平均細孔径は、0.001μm〜0.5μmである。
負極合剤層中の細孔径は、電解質塩と電解質溶媒を除いた空隙の細孔径である。すなわち、負極活物質、導電剤、バインダを除く、空間の細孔径である。負極合剤層中の細孔径の測定方法は上記の正極合剤層中の細孔径の測定方法と同様である。
負極108を作製するために、負極スラリを調製する必要がある。負極活物質、バインダの重量組成は、図3に記載した。図3の内、電極活物質が黒鉛と記載されているものが、負極に関する実施例である。
負極108のスラリを調製するために用いる溶媒には、バインダを溶解させるものであれば良く、PVDFには1-メチル-2-ピロリドンを用いた。バインダの種類に応じて、溶媒は選択される。例えば、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースのバインダを用いるときに、水を溶媒に用いる。なお、負極材料の分散処理には、公知の混練機、分散機を用いた。
また、負極合剤層の塗布には、ドクターブレード法、ディッピング法、スプレー法などの公知の技術を適用可能である。塗布から乾燥までを複数回おこなうことにより、多層の負極合剤層を負極集電体に形成させることも可能である。本実施例では、ドクターブレード法により、銅箔上に一回の塗布をした。
負極合剤層の厚さは、負極活物質の平均粒径以上とすることが望ましい。負極合剤層の厚さを負極活物質の平均粒径の厚さより小さくすると、隣接する負極活物質粒子間の電子伝導性が悪化するからである。負極合剤層の厚さが10μm以上、より好適には15μm以上にすることが望ましい。また、負極合剤層の厚さの上限は、50μm以下にすることが望ましい。それ以上厚くなると、負極合剤層へ導電剤を多量に添加しない限り、負極合剤層の表面と負極集電体表面近傍の負極活物質の充電レベルにばらつきが生じ、偏った充放電が起こるからである。導電剤の量を増加させると、負極体積が嵩高になり、電池のエネルギ密度が低下する。
本発明における実施例、比較例では、黒鉛を活物質に用いた。本発明として、シリコンやスズまたはそれらの化合物(酸化物、窒化物、および他の金属との合金)を負極活物質に用いてもよい。これらの活物質は、黒鉛の理論容量(372Ah/kg)よりも大きく、500〜1500Ah/kgの容量が得られる。これらの高容量材料を用いると、上述の負極合剤層の厚さを薄くすることができ、電池の中に収納可能な電極面積を増大させることができる。その結果、電池の抵抗を低下させて高出力が可能になると同時に、黒鉛負極を用いたときよりも電池の容量を高めることができる。
本発明に利用可能な負極集電体には、厚さが10〜100μmの銅箔、厚さが10〜100μm、孔径0.1〜10mmの銅製穿孔箔、エキスパンドメタル、発泡金属板などが用いられ、材質も銅の他に、ステンレス鋼、チタン、ニッケルなども適用可能である。本発明では、材質、形状、製造方法などに制限されることなく、任意の負極集電体を使用することができる。本発明における実施例および比較例では、厚さ10μmの圧延銅箔を用いた。
<電極への半固体電解質層の形成>
電極を作製した後に、その上へ半固体電解質層109を形成する。半固体電解質層109は、酸化物と電解質塩と有機溶媒またはイオン液体を有し、電極上に塗布、乾燥して、作製することができる。電解質塩と有機溶媒またはイオン液体で半固体電解液が構成される。上記及び以下では、有機溶媒またはイオン液体を単に電解質溶媒と称する場合がある。イオン液体とは、常温で陽イオンと陰イオンに解離する化合物であって、液体の状態を保持するものである。なお、イオン液体は、イオン性液体、低融点溶融塩あるいは常温溶融塩と称されることがある。
半固体電解質層109は、有機溶媒またはイオン液体にリチウム塩を溶解させ、SiO2、Al2O3、AlOOH、TiO2、ZrO2、BaTiO3、CaO、MgO、Li7La3Zr2O12などの酸化物と混合したスラリを用いる。スラリには1-メチル-2-ピロリドンを使用することができる。このスラリを電極表面に塗布し、乾燥すると、半固体電解質層109が電極上に形成される。半固体電解質層109を形成した後に、ロールプレスにより圧縮しても良いし、省略しても良い。また、スラリ中に4フッ化エチレンなどのバインダを添加すると、半固体電解質層109の機械的強度が増大し、さらに好適である。バインダを分散させるために、NMPの他に、エタノール等の低級アルコールや、水を用いても良い。
半固体電解質層109では、流動性のある電解液がなく、電解液が漏れ出にくいことに特徴がある。半固体電解質層109は正極107と負極108の間にリチウムイオンの伝達させる媒体となる他に、電子の絶縁体としても働き、正極107と負極108の短絡を防止する。
酸化物の組成は、半固体電解質全体の重量に対して、5重量%以上、80重量%以下であれば、半固体電解液が漏れ出にくい。体積分率で表示すると、半固体電解質層109の体積分率に対して0.33以上0.90以下とする。さらに、半固体電解質層109の細孔径は、0.01μm以上、0.5μm以下とし、リチウムイオンの授受に必要な電解質塩(イミド塩)とグライムを保持し、低抵抗な半固体電解質層109を提供することが可能になる。
本発明における実施例、比較例では、酸化物粒子としてSiO2を選択した。図3における酸化物粒子と電解質塩と電解質溶媒の重量組成は、60:23:17とした。また、半固体電解質層109の厚さは1μm〜100μmであれば、電極間の絶縁を確保しつつ、リチウムイオンを透過させることができる。また、1μm〜20μmにすると、リチウムイオンの導電率を増大させることが可能になり、好適である。厚さを5μm〜20μmにすると、電極のエッジ部での短絡を防止しやすくなり、さらに好ましい。
本発明における半固体電解質層109は、電極上に直接形成するので、単独の部品として扱う必要がない。すなわち、従来のポレオレフィン系セパレータのような機械的強度を要しない。電極が持っている機械的強度によって、半固体電解質層109の破断、破損を防止することができるからである。その結果、バインダ量を20重量%以下とし、酸化物粒子の組成を60重量%以上にすることが可能になる。さらに、バインダ量を10重量%以下に減少させ、代りに酸化物粒子組成を増大させことも可能である。このような酸化物粒子組成の高い半固体電解質層109は、耐熱性が向上し、安全性を高めることに寄与する。
<正極・負極への電解質の充填>
正極107または負極108の細孔に半固体電解液を充填するためには、前述の正極107または負極108に、半固体電解液を添加し、電極の細孔に吸収させることにより、半固体電解液を保持させることができる。半固体電解液を正極107と負極108の細孔に保持させたときに、半固体電解液が漏れると、電極の端部の絶縁性が低下する。その結果、リチウム二次電池の内部短絡が発生する可能性がある。また、硫化物系固体電解質のような柔らかい固体電解質でも同様の問題が生じる可能性がある。
半固体電解液には、例えば電解質溶媒として式(3)に示すグライムを用いる。グライムとは、エチレングリコールジメチルエーテルを基本単位とし、その繰り返し数の多い順にモノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ペンタグライム、ヘキサグライムと呼ばれている
〔数3〕
CH3O-(CH2CH2O)n-CH3 ただし、n=1、2、3、4、5…式(3)
電解質塩には、イミド塩を用いることができ、その代表例として、Li(NSO2F)2(LiFSIと略記される。)またはLiN(SO2CF32(LiTFSIと略記される)、LiC4BO8(リチウムビスオキサレートボラート)、CF3SO3Li(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiBF4(ホウフッ化リチウム)が例示される。電解質塩の濃度は、グライム1リットルに対して、1モル以上3モル以下にすることが好適である。前述のイミド塩に加えて、LiPF6、LiBF4などの公知のリチウムイオン電解質塩を混合させても良い。
さらに、式(3)のグライムを他の電解質溶媒(イオン液体)に変更しても良い。電解質溶媒として、イミダゾリウム系イオン液体やピリジニウム系イオン液体などが挙げられる。具体的には、1-ethyl-3-methylimidazoliumbis(trifluoromethylsulfonyl)imide(EMI-BTI)、1-ethyl-3-methylimidazoliumtrifluoromethanesulfonate(EMI-TMS)、1-butyl-1-methylpyrrolidiniumbis(trifluoromethylsulfonyl)imide(BMP-BTI)、1-hexyl-3-methylimidazoliumhexafluorophosphate(HMI-HFP)、1-ethyl-3-methylimidazoliumdicyanamide(EMI-DCA)、11-methyl-3-octylimidazoliumtetrafluoroborate(MOI-TFB)などが例示される。これらの液体にLiFSIやLiTFSIなどの電解質塩を添加すると、グライムを用いたときよりも高い導電率が得られて、好適である。グライムを用いると、導電率では不利であるが、半固体電解液の漏洩時の環境への負荷が小さく、リサイクル費用を低減することができる利点がある。
本発明における実施例、本比較例では、図3の半固体電解質層109の欄に記載した電解質塩(LiTFSI)と電解質溶媒を用いた。電解質溶媒には、テトラグライム(tetraglyme)、EMI-BTI1-ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide (EMI-BTI)、1-ethyl-3-methylimidazolium dicyanamide (EMI-DCA)を用いた。
電解質塩の組成(濃度)は、電解質溶媒のモル数に対して等しくなるようにした。このように調製した半固体電解液をスプレーによって、半固体電解質層109を介して、正極107または負極108の細孔へ供給した。
本発明の一実施形態では、電極中でリチウムイオン濃度の濃度勾配が形成されている。具体的には、二次電池用電極の中央部のリチウムイオン濃度より二次電池用電極の外周部のリチウムイオン濃度が低くなっている。これにより、二次電池用電極端部からの半固体電解液の漏れ出しや、二次電池用電極端部での正極107−負極108間の短絡を防止できる。更に、二次電池用電極の中央部から二次電池用電極の外周部の方向に向かって、リチウムイオン濃度が単調に低下することが望ましい。これにより、上述のメリットに加えて、広い電極面積にてリチウムイオンの移動がスムーズになって、電池抵抗を低減することができる。本発明の一実施形態では、正極107および負極108のいずれかでリチウムイオン濃度の濃度勾配が形成されていてもよいし、正極107および負極108、のすべてでリチウムイオン濃度の濃度勾配が形成されていてもよい。半固体電解質層109が正極107または負極108上に一体化して形成されている場合、電極単独で中央部のリチウムイオン濃度より外周部のリチウムイオン濃度が低くなっていてもよいが、半固体電解質層109および電極全体で中央部のリチウムイオン濃度より外周部のリチウムイオン濃度が低くなっていることが望ましい。
二次電池用電極中でリチウムイオン濃度の濃度勾配を形成させる方法として、二次電池用電極の中央部を狙って、半固体電解液を塗布、噴霧することにより、二次電池用電極中央部のリチウムイオン濃度が高く、二次電池用電極外周部の濃度がより低くなるように制御することが可能になる。
<電池の組み立て>
本発明における実施例、比較例では、半固体電解質層109を形成した正極107と負極108を積層する。図1では、半固体電解質層109は正極107と負極108のいずれの表面に形成されていてもよく、両方の面に形成してもよい。本実施例では、両方に厚さ15μmずつ作製した。半固体電解質層109は、正極107と負極108の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを正極と負極間を移動させる媒体として機能する。
電極群の末端に配置されている電極と電池容器102の間に、絶縁シート113を挿入し、正極107と負極108が電池容器102を通じて短絡しないようにしている。
電極群の上部には、正極リード線110、負極リード線111を介して正極外部端子104、負極外部端子105に電気的に接続されている。正極107は正極リード線110を介して蓋103の正極外部端子104に接続されている。負極108は負極リード線111を介して蓋103の負極外部端子105に接続されている。その後、蓋103を電池容器102に密着させ、電池全体を密閉する。本実施例ではかしめによって、蓋103を電池容器102に取り付けた。電池を密閉する方法には、溶接、接着など公知の技術を適用しても良い。本実施例、本比較例として製造した電池の定格容量(計算値)は3Ahである。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
図3の実施例1から実施例8、比較例1から比較例2に、本発明の正極仕様を示した。実施例9から実施例16、比較例3から比較例4には、本発明の負極の仕様を記載した。
電解質塩(LiTFSI)は、イオンクロマトグラフィーを用いて、電極面内のリチウムイオン濃度を測定した。図2は実施例および比較例の電極207の外形図(上)と、中央線A−A’の5点におけるリチウムイオン濃度を測定する方法を示している。中央線A−A’の軸方向に沿って、電極面積1cm2を切り出し、メタノールで洗浄した溶液中に溶解したリチウムイオン量を測定した。両端部は、外縁から軸方向で内側に0.5cm分を切り出し、長さ(軸方向に垂直)を2cmとして、全体の面積を1cm2になる分析サンプルを作製した。同様に、x1、L/2、x2の位置を中心として分析サンプルも幅0.5cmで切断し、長さを2cmとし、全体の面積1cm2の分析サンプルを用意した。本実施例では、L=10cmとし、x1=1cm、x2=9cm、L/2=5cmとし、分析結果は図3に示した。
リチウムイオンの定量値は、図3の電解質濃度の欄に記載した。なお、電解質濃度の定量値は、L/2の位置における電極の重量を基準とし、それに対する重量%で表示した。
また、半固体電解質層109を電極表面に形成し、分離不可能な一体化した電極の場合、半固体電解質層109と電極の合計の重量を基準とし、半固体電解質層109と電極を一体物として取り扱う。一体化した電極では、半固体電解質層109と電極表面の界面でリチウムイオンの拡散が起こり、両者はほぼ等濃度になる。したがって、図2のA−A’軸方向で半固体電解質層109と電極層の濃度分布がほぼ一致する。したがって、一体物として扱っても、中央でリチウムイオン濃度が高く、端部でリチウムイオン濃度が低くなる。ここで、電極重量から電極集電体の重量は除いてある。
実施例および比較例の正極107では、端部(0〜x1、x2〜L)において、リチウムイオン量が少なく、中央(x1〜x2)の約1/4とした。比較例1と比較例2では、半固体電解質層109を形成した正極107を半固体電解液へ浸漬し、電極面内での電解質濃度をほぼ均等にした。比較例3と比較例4では、正極107と同様に、負極108内での電解質濃度をほぼ均等にした。
<半固体電解液の染み出し評価>
半固体電解液の染み出しの有無は、以下の方法で評価した。実施例の電極を、二枚の薬包紙やポリエチレン多孔質セパレータの間に挿入し、加圧する。加圧力は、電極の単位面積当たり、3MPaとした。薬包紙やポリエチレン多孔質セパレータの重量が変化しないことから、液漏れが抑制されていることを確認することができる。本実施例の正極107からは、半固体電解液の染み出しは少なかった。本実施例の負極108においても、正極107と同様であった。
比較例1から比較例4の電極からは、液漏れ試験にて、半固体電解液の染み出しがあった。
<電池容量評価>
本発明における実施例、比較例の正極107と負極108を用いて、3Ah電池の充放電試験を実施した。結果を図4に示した。電池の設計容量3Ahに対して、0.1Cの充放電により放電容量を測定した結果を、図4の「0.1C容量」の欄に示した。電流を0.3Aとし、4.2Vに到達するまで0.3Aの定電流で充電し、4.2Vに到達した後に、0.03Aになるまで4.2Vの定電圧充電をした。その後、0.3Aの定電流にて電池電圧が2.8Vに達するまで放電させ、得られた放電容量を「0.1C容量」とした。この条件では、低レートなので、設計容量が得られることが望ましい。実施例17から実施例24において、設計容量1.3Ah以上の設計容量3Ahが得られている。
また、定電流値を3Aに増大させ、1C放電時の容量を得た。この結果を図4の「1C容量」の欄に示した。実施例17から実施例24のいずれの電池においても、容量が2.4Ah以上で設計容量3Ahに近い容量が得られた。
比較例5と比較例6では、端部での内部短絡が発生し、0.1C容量は定格容量3Ahから大幅に減少し設計容量3Ahより小さく、1C容量もそれに追随して著しく減少し0.4Ah以下になった。
101 リチウム二次電池
102 電池容器
103 蓋
104 正極外部端子
105 負極外部端子
106 注液口
107 正極
108 負極
109 半固体電解質層
110 正極リード線
111 負極リード線
112 絶縁性シール材料
113 絶縁シート
207 電極

Claims (8)

  1. 電解質を有する二次電池用電極であって、
    前記二次電池用電極の中央部および前記二次電池用電極の外周部に前記電解質が含まれ、
    前記二次電池用電極の中央部の金属イオン濃度より前記二次電池用電極の外周部の金属イオン濃度が低い二次電池用電極。
  2. 前記電解質は、半固体電解液および粒子を有し、
    前記粒子は半固体電解液を保持し、
    前記半固体電解液は、電解質塩および電解質溶媒を有する二次電池用電極。
  3. 請求項1に記載の二次電池用電極おいて、
    半固体電解質層が前記二次電池用電極上に一体化して形成されている二次電池用電極。
  4. 請求項2に記載の二次電池用電極おいて、
    前記半固体電解質層の中央部および前記半固体電解質層の外周部に半固体電解液が含まれ、
    前記半固体電解質層の中央部の金属イオン濃度より前記半固体電解質層の外周部の金属イオン濃度が低い二次電池用電極。
  5. 請求項1に記載の二次電池用電極において、
    前記二次電池用電極はポリマを含み、
    前記ポリマのハンセン溶解度パラメータ(HSP1)と前記電解質溶媒のハンセン溶解度パラメータ(HSP2)との差が|HSP1−HSP2|≧0.4の関係にある二次電池用電極。
  6. 請求項5に記載の二次電池用電極において、
    前記二次電池用電極はポリマを含み、
    前記二次電池用電極の中央部の前記ポリマのハンセン溶解度パラメータが前記二次電池用電極の外周部の前記ポリマのハンセン溶解度パラメータより大きい二次電池用電極。
  7. 請求項1に記載の二次電池用電極を有する二次電池。
  8. 電解質を有する二次電池用電極の製造方法であって、
    前記二次電池用電極の中央部および前記二次電池用電極の外周部に前記電解質が含まれ、
    前記二次電池用電極の中央部の金属イオン濃度より前記二次電池用電極の外周部の金属イオン濃度が低い二次電池用電極の製造方法。
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