JP2018206716A - 端子圧着装置及び端子圧着方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウム電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続する際に、内部に空隙が生じることを防止でき、良好な電気的接続を得ることができる端子圧着装置及び端子圧着方法を提供する。【解決手段】電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続するための端子圧着装置は、スリーブ状の圧着部を載置するための第1の押圧面を有する第1のダイスと、第1のダイスに対向配置され、電線が内部に挿入された圧着部を載置した状態のこの第1のダイスの第1の押圧面に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより圧着部を変形させ、電線と圧着部とを圧着させるための第2の押圧面を有する第2のダイスとを備えている。第1のダイスの第1の押圧面は、圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の1対の第1の突出部を備えており、第2のダイスの第2の押圧面は、1対の第1の突出部とそれぞれ対向する位置に凸状断面の1対の第2の突出部を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、金属又は合金材料等によって形成された電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続する際に用いる端子圧着装置及び端子圧着方法に関する。
アルミニウム電線をスリーブ状の圧着端子に圧着する場合、従来は、例えば、図6に示すような圧着装置を用いていた。この圧着装置は、圧着部の下側外周を変形する略凹アーチ状断面の押圧面1aを有する下金型1と、圧着部の上側外周を変形する略凸状断面の押圧面2aを有する上金型2とを備えており、圧着時は、まず、圧着すべきアルミニウム電線Aをスリーブ状の圧着端子Cの圧着部C1内に挿入し、略凹アーチ状断面の押圧面1aとこれに対向する略凸状断面の押圧面2aとによって上下から圧着部C1を押圧し、これにより圧着部C1及び内部に挿入されているアルミニウム電線Aを変形させて圧着接続していた。
図7は、この種の従来の圧着装置を用いてアルミニウム電線Aをスリーブ状の圧着部を有する圧着端子Cに圧着接続した場合の圧着部C1及びアルミニウム電線Aの断面を示している。同図に示すように、略凹アーチ状断面の押圧面1aと略凸状断面の押圧面2aとを有するダイスで圧着を行うと、スリーブを変形させる際に、スリーブの側方に空隙gが生じてしまう。また、同図に示すように、略凹アーチ状断面の押圧面1aに対応する側の曲面部においては、セレーション部材C2の孔h′の形状が変形するため、これら孔h′内にアルミニウム電線Aが入り込まず、接続が不充分となってしまう。
上述したように、従来技術による圧着装置を用いてアルミニウム電線の圧着を行うと、スリーブが変形する際に、その側方(耳部)(即ち、圧着部の長手方向と直交する断面の両側端近傍)に空隙が残り、圧着及び電気的接続が不十分となる。特に、スリーブの内径に対して電線の径が比較的に小さかったり、又はアルミニウム電線が角形断面を有する場合、スリーブ内壁と電線との隙間が大きくなるため、空隙がより残りやすくなる。空隙が存在すると、アルミニウム電線に酸化被膜の発生や水分による電解腐食(異種金属接触腐食)が起しやすいという問題点があった。
また、圧着部の内周側にセレーション部材を有する場合、特に、略凹アーチ状断面の押圧部により、セレーション部材の孔が変形し、圧着する際にアルミニウム電線がセレーション部材の孔内に入り込まない、即ち、アルミニウム電線表面の酸化皮膜(又は他の被覆層)等を破ることができないことから、良好な導通を得ることができないという問題点があった。また、セレーション部材は、銅(又は、銅表面をスズメッキ)から形成されているため、セレーション部材とアルミニウム電線との間に空隙が存在すると、アルミニウム電線に酸化被膜の発生や水分による電解腐食が起しやすいという問題点があった。
本発明はこのような従来の端子圧着装置が有していた問題点を解決しようとするものであり、本発明の目的は、アルミニウム電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続する際に、内部に空隙が生じることを防止でき、良好な電気的接続を得ることができる端子圧着装置及び端子圧着方法を提供することにある。
本発明によれば、電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続するための端子圧着装置は、スリーブ状の圧着部を載置するための第1の押圧面を有する第1のダイスと、第1のダイスに対向配置され、電線が内部に挿入された圧着部を載置した状態のこの第1のダイスの第1の押圧面に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより圧着部を変形させ、電線と圧着部とを圧着させるための第2の押圧面を有する第2のダイスとを備えている。第1のダイスの第1の押圧面は、圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の1対の第1の突出部を備えており、第2のダイスの第2の押圧面は、1対の第1の突出部とそれぞれ対向する位置に凸状断面の1対の第2の突出部を備えている。
このように本発明の端子圧着装置によれば、第1のダイス及び第2のダイスは、互いに対向する第1及び第2の押圧面をそれぞれ有し、第1の押圧面は圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の1対の第1の突出部を備え、第2の押圧面は、1対の第1の突出部とそれぞれ対向する位置に凸状断面の1対の第2の突出部を備えているため、電線にスリーブ状の圧着部を有する圧着端子を圧着接続する際に、変形される圧着部及び電線の両脇にダムができ、空気を両側端から外側に押し出すことで、圧着領域の内部に空隙が生じることを防止でき、良好な電気的接続を得ることができる。特に、アルミニウム電線の場合、空隙をなくすことで、アルミニウム電線における酸化被膜の発生や水分による電解腐食の発生を防止することができる。
第1及び第2の押圧面のうちの一方が、上述の平面において中央部に凸状断面の第3の突出部を備えており、第1及び第2の押圧面のうちの他方が、上述の平面において中央部に対して線対称の位置に凸状断面の少なくとも1対の第4の突出部を備えていることが好ましい。これにより、圧着端子のスリーブ状の圧着部に均一の力が印加されるので、電線に接する圧着部が平坦に近い形状になり、セレーション部材の貫通孔の変形が小さくなるので、特に、アルミニウム電線の場合、アルミニウム電線の表層がセレーション部材の貫通孔に入り込み、アルミニウム電線の酸化皮膜(又は他の被覆層)等を確実に破ることができると共にアルミニウム電線の応力緩和を防ぐことができる。また、セレーション部材とアルミニウム電線との間の空隙をなくすことで、アルミニウム電線における酸化被膜の発生や水分による電解腐食の発生を防止することができる。さらに、圧着端子のスリーブ状の圧着部に局部的に力がかかるのでつぶしやすくなり、位置決めも容易となる。なお、本明細書において、アルミニウム電線とは、アルミニウム材料又はアルミニウム合金材料等によって形成された電線を意味している。
この場合、1対の第4の突出部が、上述の平面において1対の第1の突出部又は1対の第2の突出部より中央部側の位置に設けられていることがより好ましい。
1対の第1の突出部及び1対の第2の突出部が、変形した際の圧着部の両側端に対応する位置に設けられていることも好ましい。
本発明によれば、さらに、電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続するための端子圧着方法は、電線が内部に挿入された圧着部を第1のダイスの第1の押圧面上に載置する工程と、第1のダイスの第1の押圧面に対向配置された第2のダイスの第2の押圧面を第1の押圧面に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより圧着部を変形させ、電線と圧着部とを圧着する工程とを備えている。圧着する工程が、第1のダイスの第1の押圧面に設けられ、圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の形成された1対の第1の突出部と、第2のダイスの、第1の押圧面に対向する第2の押圧面に設けられ、1対の第1の突出部とそれぞれ対向して位置する凸状断面の1対の第2の突出部とを圧着部に当接させて押圧することにより、圧着部の両側端近傍及び電線を変形させる工程を含んでいる。
このように本発明の端子圧着方法によれば、電線にスリーブ状の圧着部を有する圧着端子を圧着接続する際に、第1のダイスの第1の押圧面の圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の形成された1対の第1の突出部と、第2のダイスの第2の押圧面の、1対の第1の突出部とそれぞれ対向して位置する凸状断面の1対の第2の突出部とが圧着部の両側端近傍を押圧することとなり、変形される圧着部及び電線の両脇にダムができ、空気を両側端から外側に押し出すことで、圧着領域の内部に空隙が生じることを防止でき、良好な電気的接続を得ることができる。
圧着する工程が、第1及び第2の押圧面のうちの一方の上述の平面における中央部に設けられた凸状断面の第3の突出部と、第1及び第2の押圧面のうちの他方の上述の平面における中央部に対して線対称の位置に設けられた凸状断面の少なくとも2つの第4の突出部とを圧着部に当接させて押圧することにより、圧着部を所定範囲に変形させる工程を含んでいることが好ましい。これにより、圧着端子のスリーブ状の圧着部に均一の力が印加されるので、電線に接する圧着部が平坦に近い形状になり、セレーション部材の貫通孔の変形が小さくなるので、特に、アルミニウム電線の場合、アルミニウム電線がセレーション部材の貫通孔に入り込み、アルミニウム電線の酸化皮膜を(又は他の被覆層)等確実に破ることができると共にアルミニウム電線の応力緩和を防ぐことができる。また、セレーション部材とアルミニウム電線との間の空隙をなくすことで、アルミニウム電線における酸化被膜の発生や水分による電解腐食の発生を防止することができる。さらに、圧着端子のスリーブ状の圧着部に局部的に力がかかるのでつぶしやすくなり、位置決めも容易となる。
本発明によれば、電線にスリーブ状の圧着部を有する圧着端子を圧着接続する際に、変形される圧着部及び電線の両脇にダムができ、空気を両側端から外側に押し出すことで、圧着領域の内部に空隙が生じることを防止でき、良好な電気的接続を得ることができる。特に、アルミニウム電線の場合、空隙をなくすことで、アルミニウム電線における酸化被膜の発生や水分による電解腐食の発生を防止することができる。
また、圧着端子のスリーブ状の圧着部に均一の力が印加されるので、電線に接する圧着部が平坦に近い形状になり、セレーション部材の貫通孔の変形が小さくなるので、特に、アルミニウム電線の場合、アルミニウム電線の表層がセレーション部材の貫通孔に入り込み、アルミニウム電線の酸化皮膜(又は他の被覆層)等を確実に破ることができると共に、セレーション部材とアルミニウム電線との間の空隙をなくすことで、アルミニウム電線における酸化被膜の発生や水分による電解腐食の発生を防止することができる。さらに、圧着端子のスリーブ状の圧着部に局部的に力がかかるのでつぶしやすくなり、位置決めも容易となる。
本発明の一実施形態における端子圧着装置の構成を概略的に示す斜視図である。 図1の実施形態における端子圧着装置の押圧面の構成を概略的に示す局部拡大図である。 図1の圧着端子及び電線部分の構成を概略的に示す分解斜視図である。 図1の実施形態における端子圧着装置を用いて圧着端子を圧着する工程を示す図である。 図1の実施形態における端子圧着装置を用いて圧着端子を圧着する際のセレーション部材の貫通孔の状態を説明する断面図である。 従来の端子圧着装置の構成を概略的に示す平面図である。 従来の端子圧着装置を用いて圧着端子を圧着する場合、圧着後の圧着部の断面図である。
以下、本発明に係る端子圧着装置及び端子圧着方法の実施形態を、図を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態における端子圧着装置100の構成を概略的に示しており、図2は端子圧着装置100の押圧面の構成を概略的に示しており、図3は圧着端子C及びアルミニウム電線Aの構成を概略的に示している。本実施形態において、アルミニウム電線Aは、アルミニウム材料又はアルミニウム合金材料等によって形成された電線である。この例では、例えば、2枚の板状電線を重ねて構成した角形断面を有しており、電線の表面に酸化皮膜(アルミナ皮膜)が生成されている。圧着端子Cは、スリーブ状の圧着部C1を有し、この圧着部C1の内周面に多数の貫通孔が設けられた円筒状(スリーブ状)の銅材料又は銅合金材料のセレーション部材C2が配置されている。
図1に示すように、本実施形態に係る端子圧着装置100は、圧着端子Cのスリーブ状の圧着部C1を載置可能な第1の押圧面11を有する第1のダイス10と、第1のダイス10に対向配置された第2の押圧面21を有する第2のダイス20とを備えている。第1のダイス10の第1の押圧面11上に、アルミニウム電線Aが内部に挿入された状態の圧着部C1を載置し、第2のダイス20の第2の押圧面21を第1の押圧面11に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより、圧着部C1及びアルミニウム電線Aが変形し、アルミニウム電線Aと圧着端子Cとが圧着する。
第1のダイス10には、図において上方に向いた第1の押圧面11が設けられており、この第1の押圧面11上にアルミニウム電線Aが内部に挿入された圧着端子Cのスリーブ状の圧着部C1が載置されて圧着部C1の下側外周を押圧するように構成されている。この第1の押圧面11には、圧着端子Cの圧着部C1の軸線と直交する平面における両側端近傍に、凸状断面を有する1対の第1の突出部12が設けられている。さらに、この第1の押圧面11には、圧着部C1の軸線と直交する平面において1対の第1の突出部12より中央部側の位置に1対の第4の突出部13が設けられている。これら1対の第4の突出部13は、圧着部C1の軸線と直交する平面において中央部と線対称の位置に設けられており、各々の円弧径は後述する第3の突出部23より小さい円弧径を有している。なお、第4の突出部13の形状はこれに限定されものではない。円弧状以外の形状(例えば、矩形又は三角形の凸状)にしても良い。また、第4の突出部13の円弧径は第3の突出部23と同じ、又は第3の突出部23より大きくしても良い。
第2のダイス20には、図において下方に向いた第2の押圧面21が設けられており、この第2の押圧面21は圧着端子Cの圧着部C1の上側外周を押圧するように構成されている。この第2の押圧面21には、第1の押圧面11の1対の第1の突出部12とそれぞれ対向する位置に、即ち、圧着端子Cの圧着部C1の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の1対の第2の突出部22が設けられている。さらに、この第2の押圧面21には、圧着部C1の軸線と直交する平面において中央部に凸状断面の第3の突出部23が設けられている。前述したように、この第3の突出部23は、その円弧径が第1の押圧面11における小径突出部13の円弧径より大きく設定されている。なお、第3の突出部23の形状及び大きさはこれに限定されものではない。円弧状以外の形状(例えば、矩形又は三角形の凸状)にしても良い。
以下、本実施形態に係る端子圧着装置100を用いた場合の端子圧着方法について説明する。図4は端子圧着装置100を用いて圧着端子を圧着する工程を示しており、図5は端子圧着装置100を用いて圧着端子Cを圧着する際のセレーション部材C2の貫通孔hの状態を断面で示している。ただし、図4は圧着端子Cの圧着部C1の軸線と直交する平面における断面を示しており、図5はその断面においてセレーション部材C2の一部の貫通孔hのみを示している。
以下、平板断面を有する2枚のアルミニウム電線Aをスリーブ状の圧着部C1を有する金属材料(例えば、銅材料)の圧着端子Cに圧着接続する場合の各工程を説明する。スリーブ状の圧着部C1の内側には、多数の貫通孔が設けられた円筒状(スリーブ状)の銅材料又は銅合金材料のセレーション部材C2が同軸に設けられている。
まず、図4(a)に示すように、アルミニウム電線Aを圧着端子Cの圧着部C1内に挿入した状態で、第1のダイス10の第1の押圧面11と第2のダイス20の第2の押圧面21との間にセットする(図示の場合、第1のダイス10の第1の押圧面11上に載置する)。
次いで、第2のダイス20を第1のダイス10に対して相対的に移動させ(図示の場合、降下させ)る。これにより、図4(b)に示すように、第2のダイス20の第2の押圧面21の中央部に設けられている凸状断面の第3の突出部23が圧着部C1の上側外周面に当接すると共に、第1のダイス10の第1の押圧面11の中央部に対して線対称の位置に設けられ、円弧径が第3の突出部23の円弧径より小さい1対の第4の突出部13が圧着部C1の下側外周面に当接して押圧するため、圧着部C1が所定範囲まで変形する。この段階において、セレーション部材C2は圧着部C1と同様に変形し、その貫通孔hの状態は、ほとんど変化しないが、図5(a)に示すように、外周面側の開口径が内周面側の開口径より若干大きい状態となる。第1の押圧面11の中央部に設けられた第3の突出部23と、この第3の突出部23を挟むように第2の押圧面21に設けられた1対の第4の突出部13とによって圧着部C1が押圧されるので、圧着部C1に局部的に力がかかるのでこれをつぶしやすくなり、圧着部C1の位置決めも容易となる。
次いで、第2のダイス20及び第1のダイス10の相対的な移動が進み、第2の押圧面21及び第1の押圧面11の押圧が進むと、図4(c)に示すように、第2の押圧面21の第3の突出部23と第1の押圧面11の1対の小径突出部13とが圧着部C1をさらに押圧することにより、圧着部C1の上側の中央部及び下側の第4の突出部13に対応する部分の変形が進むと共に、第2の押圧面21に設けられた1対の第2の突出部22と第1の押圧面11に設けられた1対の第1の突出部12とが圧着部C1に当接しさらに押圧することにより、圧着部C1の両側端近傍が変形する。その結果、圧着部C1の内壁とアルミニウム電線Aとの間の空隙が小さくなり、アルミニウム電線Aが圧着されて変形を開始する。この段階において、セレーション部材C2は、図5(b)に示すように、圧着部C1と同様に大きく変形し、その貫通孔hは、押圧されてセレーション部材C2が内側に凹んだ部分では、内周面側の開口径が外周面側の開口径より大きい状態となる。逆に、押圧されずに外側に凸状態となっている部分では、図示されていないが、外周面側の開口径が内周面側の開口径より若干大きい状態となる。また、セレーション部材C2が平坦となっている部分では、貫通孔hの内周面側の開口径は外周面側の開口径とほぼ等しいままに維持される。
次いで、第2のダイス20及び第1のダイス10の相対的な移動がさらに進み、第2の押圧面21及び第1の押圧面11の押圧がさらに進むと、図4(d)に示すように、圧着部C1及びセレーション部材C2がこれら第2の押圧面21及び第1の押圧面11の形状に合わせてさらに変形し、アルミニウム電線Aもさらに変形してカシメが行われる。この段階において、図5(b)に示すように、セレーション部材C2の貫通孔hは、セレーション部材C2が内側に凹んだ部分では、内周面側の開口径が外周面側の開口径より大きい状態となっているため、アルミニウム電線Aが貫通孔h内に進入し、その酸化皮膜が貫通孔hの内側開口部で破れて電気的導通が図られる。セレーション部材C2が平坦となっている部分でも、アルミニウム電線Aが貫通孔h内に進入し、その酸化皮膜が破れて電気的導通が図られる。即ち、第1の押圧面11の中央部に設けられた大径突出部23と、この第3の突出部23を挟むように第2の押圧面21に設けられた1対の第4の突出部13とによって圧着部C1に均一の力が印加されるので、アルミニウム電線Aに接する圧着部C1が平坦に近い形状になり、セレーション部材C2の貫通孔hの変形が小さくなるので、アルミニウム電線Aがセレーション部材C2の貫通孔hに入り込みためこのような導通が図れるのである。ただし、この段階においては、圧着部C1の両側端近傍部分に空隙gが存在している。
その後、第2のダイス20及び第1のダイス10の相対的な移動がさらにまた進み、第2の押圧面21及び第1の押圧面11の押圧がさらに進んで、圧着部C1の両側端近傍部分に存在した空気が押し出されて空隙gがなくなる。即ち、第2の押圧面21の第2の突出部22と、第1の押圧面11の第1の突出部12とが圧着部C1の両側端近傍を押圧することとなり、変形される圧着部C1及びアルミニウム電線Aの両脇にダムができ、空気を両側端から外側に押し出すことで、圧着領域の内部の空隙が消滅する。その結果、アルミニウム電線Aと圧着端子Cとが確実に圧着接続され、良好な電気的接続がなされる。また、空隙をなくすことで、アルミニウム電線における酸化被膜の発生や水分による電解腐食の発生を防止することができる。
図5(c)は本実施形態の端子圧着装置100を用いて圧着端子Cとアルミニウム電線Aとを実際に圧着した際の圧着後の圧着部C1の断面の一例を示している。同図に示すように、圧着後は圧着部C1の内部、特にその両側端近傍、に空隙がなく、かつアルミニウム電線Aはセレーション部材C2の貫通孔h内に入り込むようになり、アルミニウム電線A表面の酸化皮膜を確実に破ることができる。そのため、圧着端子Cとアルミニウム電線Aとの良好な導通を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態の端子圧着装置100は、圧着端子Cのスリーブ状の圧着部C1を載置可能な第1の押圧面11を有する第1のダイス10と、第1のダイス10に対向配置された第2の押圧面21を有する第2のダイス20とを備えており、第1のダイス10の第1の押圧面11上に、アルミニウム電線Aが内部に挿入された状態の圧着部C1を載置し、第2のダイス20の第2の押圧面21を第1の押圧面11に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより、圧着部C1及びアルミニウム電線Aが変形し、アルミニウム電線Aと圧着端子Cとが圧着する。第1の押圧面11には、圧着端子Cの圧着部C1の軸線と直交する平面における両側端近傍に、凸状断面を有する1対の第1の突出部12が設けられている。第2の押圧面21には、第1の押圧面11の1対の第1の突出部12とそれぞれ対向する位置に、即ち、圧着端子Cの圧着部C1の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の1対の第2の突出部22が設けられている。
これにより、アルミニウム電線Aにスリーブ状の圧着部C1を有する圧着端子Cを圧着接続する際に、変形される圧着部C1及びアルミニウム電線Aの両脇にダムができ、空気を両端部から外側に押し出すことで、圧着領域の内部に空隙が生じることを防止することができ、かつ良好な電気的接続を得ることができる。
また、本発明に係る端子圧着装置100において、第2の押圧面21には、圧着部C1の軸線と直交する平面において中央部に凸状断面の第3の突出部23が設けられている。さらに、第1の押圧面11には、圧着部C1の軸線と直交する平面において中央部と線対称の位置に1対の第4の突出部13が設けられている。これにより、圧着端子Cのスリーブ状の圧着部C1に均一の力が印加されるので、アルミニウム電線Aに接する圧着部C1が平坦に近い形状になり、セレーション部材C2の貫通孔hの変形が小さく、アルミニウム電線Aの表層がセレーション部材C2の貫通孔hに入り込み、アルミニウム電線Aの酸化皮膜を確実に破ることができると共に、セレーション部材C2とアルミニウム電線Aとの間の空隙をなくすことで、アルミニウム電線Aにおける電解腐食の発生を防止することができる。また、アルミニウム電線Aの応力緩和を防ぐことができる。さらに、圧着端子Cのスリーブ状の圧着部C1に局部的に力がかかるのでつぶしやすくなり、位置決めも容易となる。
なお、本発明に係る端子圧着装置100において、第1のダイス10の第1の押圧面11に1対の第4の突出部13が設けられ、第2のダイス20の第2の押圧面21に第3の突出部23が設けられる例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。逆にしても良い。また、第4の突出部13は、4つ以上を有するようにしても良い。
また、上述した実施形態において、アルミニウム電線Aは角形断面を有し、かつ芯線の表面に酸化皮膜を有する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、円形等の断面を有するアルミニウム電線又はより線に対しても本発明を適用できる。また、アルミニウム材質以外の電線、例えば銅材料からなる電線に対しても本発明を適用できる。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
本発明は、アルミニウム電線等の電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続する場合等に利用できる。
10 第1のダイス
11 第1の押圧面
12 第1の突出部
13 第4の突出部
20 第2のダイス
21 第2の押圧面
22 第2の突出部
23 第3の突出部
100 端子圧着装置
A アルミニウム電線
C 圧着端子
C1 圧着部
C2 セレーション部材
g 空隙
h 貫通孔

Claims (6)

  1. 電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続するための端子圧着装置であって、
    前記スリーブ状の圧着部を載置するための第1の押圧面を有する第1のダイスと、前記第1のダイスの前記第1の押圧面に対向配置され、前記電線が内部に挿入された前記圧着部を載置した状態の前記第1のダイスの前記第1の押圧面に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより前記圧着部を変形させ、前記電線と前記圧着部とを圧着させるための第2の押圧面を有する第2のダイスとを備え、
    前記第1のダイスの前記第1の押圧面は、前記圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の1対の第1の突出部を備えており、前記第2のダイスの前記第2の押圧面は、前記1対の第1の突出部とそれぞれ対向する位置に凸状断面の1対の第2の突出部を備えていることを特徴とする端子圧着装置。
  2. 前記第1及び第2の押圧面のうちの一方が、前記平面において中央部に凸状断面の第3の突出部を備えており、前記第1及び第2の押圧面のうちの他方が、前記平面において前記中央部に対して線対称の位置に凸状断面の少なくとも1対の第4の突出部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
  3. 前記1対の第4の突出部が、前記平面において前記1対の第1の突出部又は前記1対の第2の突出部より前記中央部側の位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の端子圧着装置。
  4. 前記1対の第1の突出部及び前記1対の第2の突出部が、変形した際の前記圧着部の両側端に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の端子圧着装置。
  5. 電線をスリーブ状の圧着部を有する圧着端子に圧着接続するための端子圧着方法であって、
    前記電線が内部に挿入された前記圧着部を第1のダイスの第1の押圧面上に載置する工程と、
    前記第1のダイスの前記第1の押圧面に対向配置された第2のダイスの第2の押圧面を前記第1の押圧面に向かって相対的に移動して当接及び押圧することにより前記圧着部を変形させ、前記電線と前記圧着部とを圧着する工程とを備え、
    前記圧着する工程が、前記第1のダイスの前記第1の押圧面に設けられ、前記圧着部の軸線と直交する平面における両側端近傍に凸状断面の形成された1対の第1の突出部と、前記第2のダイスの、前記第1の押圧面に対向する第2の押圧面に設けられ、前記1対の第1の突出部とそれぞれ対向して位置する凸状断面の1対の第2の突出部とを前記圧着部に当接させて押圧することにより、前記圧着部の両側端近傍及び前記電線を変形させる工程を含んでいることを特徴とする端子圧着方法。
  6. 前記圧着する工程が、前記第1及び第2の押圧面のうちの一方の前記平面における中央部に設けられた凸状断面の第3の突出部と、前記第1及び第2の押圧面のうちの他方の前記平面における前記中央部に対して線対称の位置に設けられ、凸状断面の少なくとも2つの第4の突出部とを前記圧着部に当接させて押圧することにより、前記圧着部を所定範囲に変形させる工程を含んでいることを特徴とする請求項5に記載の端子圧着方法。
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