JP2018203818A - 離型用二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】グリーンシート成形時の支持体の剛性や、電極印刷時の歪み量を低減させることができ、薄膜グリーンシート成形時のセラミックススラリーの塗工性に最適化した離型用二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】フィルム幅が500mm以上であり、フィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度以内であり、150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向とも0.0%以上2.5%未満であり、かつ、長手方向および幅方向のヤング率がそれぞれ4.0GPa以上および5.0GPa以上である離型用二軸配向ポリエステルフィルムとする。
【選択図】なし
【解決手段】フィルム幅が500mm以上であり、フィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度以内であり、150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向とも0.0%以上2.5%未満であり、かつ、長手方向および幅方向のヤング率がそれぞれ4.0GPa以上および5.0GPa以上である離型用二軸配向ポリエステルフィルムとする。
【選択図】なし
Description
本発明は平面特性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
二軸配向ポリエステルフィルムは、機械特性や熱特性、コシの強さやコストの観点から、工業材料用途として多様な用途にて用いられている。特に最近では、電子部材関連の工程紙として、積層セラミックコンデンサのグリーンシートを成型するための離型フィルムや、液晶偏光板のセパレータ、ドライフィルムレジスト用基材などに用いられている。
昨今のスマートフォンの機能高度化や、スマートウォッチ、ウェアラブル機器の普及に伴い、積層セラミックコンデンサの小型高容量化が更に進んでいる。積層セラミックコンデンサの製造に用いる離型フィルムに関しては、グリーンシートの薄膜化に伴い、平滑性が高く、フィルム表面および内部に欠陥の無く、フィルムの平面性に優れたポリエステルフィルムの需要が伸び続けている。一方で、自動車に搭載される積層セラミックコンデンサは、自動車のIoT(Internet Of Things)化や、自動運転機能の搭載により、需要が急速に拡大している。これら自動車用積層セラミックコンデンサに対しては、従来の要求より更に厳しく信頼性を求められている。特に、積層セラミックコンデンサの誘電体部品となるグリーンシートの成形においては、フィルムが起因となって発生するスラリーの欠陥や、厚みの不均一さ、平面特性に対する要求がより厳しくなっている。また、ここでいう平面特性とは、二軸配向ポリエステルフィルムに離型処理を行い、成形を行う対象を塗布、固化させる工程においての、長手、幅、厚み方向における寸法安定性を指す。従来技術において、寸法安定性については、150℃、30分間加熱したときの長手方向、幅方向の熱収縮率やこれらの差を規定し、なおかつ配向角を規定し、光学軸精度と寸法安定性を両立させるという技術が、特許文献1に開示されている。また、特許文献2に示すとおり、耐熱性に優れるポリマーをアロイ化した原料を用いることにより、画像や意匠の印刷精度向上が可能なポリエステルフィルムについての開示もある。
近年のコンデンサーに対する要求は、小型化、大容量化、高信頼性化の傾向にある。小型化はすなわち電極の縮小化により達成され、大容量化はすなわちグリーンシートの薄膜化により、高信頼性化は、電極やグリーンシートを設ける際の、寸法精度の向上により達成される。この中で、スラリー塗布後に電極印刷を実施する工程においては、一つ一つの電極が微細となっているため、電極パターンの歪みやズレに関する要求が、信頼性に関わる要求として厳しくなっている。このため本発明においては、グリーンシート成形時の支持体の剛性を高めることや、電極印刷時の歪み量を低減させることを課題とする。二軸配向ポリエステルフィルムの課題としては、長手方向および幅方向に延伸した中間製品の、幅方向の配向差を極力低減させ、中間製品の幅方向に対する位置由来による、品質のばらつきを低減させることである。
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、フィルムの特性を最適化することで、長手、幅、厚み方向における寸法安定性に優れた離型ポリエステルフィルムを見いだし、本発明に至った。すなわち、本発明は、フィルム幅が500mm以上であり、フィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度以内であり、150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向とも0.0%以上2.5%未満であり、かつ、長手方向および幅方向のヤング率がそれぞれ4.0GPa以上および5.0GPa以上である離型用二軸配向ポリエステルフィルムを特徴とする。
本発明によれば、グリーンシート成形時の支持体の剛性や、電極印刷時の歪み量を低減させることができ、薄膜グリーンシート成形時の、セラミックススラリーの塗工性に最適化した、二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の離型用二軸配向ポリエステルフィルム(以下、単に二軸配向ポリエステルフィルムということがある)における二軸配向とは、未延伸(未配向)フィルムを、常法により、二次元方向に延伸された状態を指し、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものを意味する。延伸は、逐次二軸延伸または同時二軸延伸のいずれの方法も採ることができる。逐次二軸延伸は、長手方向(縦)および幅方向(横)に延伸する工程を、縦−横の1回ずつ実施することもできるし、縦−横−縦−横など、2回ずつ実施することもできる。この際、本発明におけるフィルム幅方向に対する配向主軸の傾きの角度(配向角)と150℃、30分間加熱した時の熱収縮率および、長手方向および幅方向のヤング率をバランス良く発現させるためには、縦−横−縦−横など、2回ずつ実施する製膜プロセスを用いることがより好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおけるポリエステルとは、二塩基酸とグリコールを構成成分とするポリエステルであり、芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などを用いることができる。脂環族二塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などを用いることができる。グリコールとしては、脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールなどを用いることができ、芳香族ジオールとして、ナフタレンジオール、2,2ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノンなどを用いることができ、脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどを用いることができる。
上記ポリエステルは公知の方法で製造することができ、固有粘度は下限0.5、上限0.8のものを用いることが好ましい。さらに好ましくは下限0.55、上限0.70である。なお、固有粘度の測定は、オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いる。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定する。単位は[dl/g]で示す。
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定する。単位は[dl/g]で示す。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層フィルムであってもよく、2層以上の積層構成であってもよい。2層積層時は、ポリエステルA層およびポリエステルB層からなり、3層の場合は、ポリエステルA層およびポリエステルB層およびポリエステルC層あるいは、ポリエステルA層およびポリエステルB層およびポリエステルA層の3層からなる積層フィルムとなる。この際、表層を構成する層(積層部)に含有せしめる粒子量を制御することで、内層部にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用でき、石油資源の消費を減らすことが可能となるとともに、コストメリットを得ることが可能であるため、3層以上の層構成を有することが最も好ましい実施形態である。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、回収原料および/またはリサイクル原料をC層に含有することが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、2層以上の構成のうち表層を構成する2層、すなわちポリエステルA層およびポリエステルB層の表面については、表面の平滑性と、搬送や巻き取りなどのハンドリング性を両立させるために、粗さが異なる構成が好ましい。すなわち、一方のフィルム表面の中心線粗さSRa(A)が1nm以上15nm未満であり、他方のフィルム表面の中心線粗さSRa(B)が20nm以上40nm以下であることが好ましい。SRa(A)が1nmを下回ると、該表面に離型層を積層し、その上にセラミックスラリーを積層した後の剥離工程で剥離が困難となることがある。また、SRa(A)が15nm以上になると、スラリーの表面状態が悪くなり厚みに斑が生じ、結果としてコンデンサーの特性にバラツキが生じやすくなる。SRa(B)が20nmを下回ると、離型層塗布後の巻き取りや、セラミックスラリーを塗布後の巻き取りにてブロッキングが発生しやすくなり、繰り出した際に帯電が発生することがある。ポリエステルA層およびポリエステルB層の表面については、さらに好ましくは、一方のフィルム表面の中心線粗さSRa(A)が2nm以上12nm未満であり、他方のフィルム表面の中心線粗さSRa(B)が25nm以上35nm以下であることが好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは、12μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。また、188μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。厚みが12μmより薄くなると、セラミックススラリーを保持するための腰がなくなり、セラミックススラリーの塗布において、セラミックススラリーを支えられなくなり、後工程で均一な乾燥ができなくなることや、熱しわの抑制が不十分となる場合がある。厚みが188μmを超えると、熱しわに対する耐久性は格段に優れるものの、巻き長さが少なくなる分、セラミックスラリーを形成する基材としての単位面積あたりの単価が高くなる傾向にある。厚みの好ましい範囲は12μm以上188μm以下、より好ましくは20μm以上50μm以下、さらに好ましくは25μm以上40μm以下である。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、粒子を含有していてもよい。このとき含有する粒子の体積平均粒径は、1.3μm以下であることが好ましい。粒子の体積平均粒径が1.3μmを超えると、延伸時に粒子とポリマーとの界面に空隙、すなわちボイドが発生する機会が高くなるため、表面構造に凹凸のバラツキが生じることもあるため、スラリーの厚みバラツキが大きくなる場合がある。
本発明に用いる粒子は、フィルム表面に突起を形成する役割のほかに、ボイドを形成する核材にもなりうるため、粒子径とともに、その種類も選定することが望ましい。好ましくは粒子の弾性が高い有機粒子を用いる。有機粒子は、前述の有機粒子の内、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子より選ばれる有機粒子が特に好ましい。無機粒子においては、球状シリカ、酸化アルミニウムが特に好ましい。
粒子の形状・粒子径分布については均一なものが好ましく、とくに粒子形状は球形に近いものが好ましい。体積形状係数は好ましくはf=0.3〜π/6であり、より好ましくはf=0.4〜π/6である。体積形状係数fは、次式で表される。
f=V/Dm3
ここでVは粒子体積(μm3),Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
ここでVは粒子体積(μm3),Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
なお、体積形状係数fは粒子が球のとき、最大のπ/6(=0.52)をとる。また、必要に応じて濾過などを行うことにより、凝集粒子や粗大粒子などを除去することが好ましい。中でも、乳化重合法で等で合成された、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子が好適に使用できるが、とくに架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン、さらに球状シリカなどは体積形状係数が真球に近く、粒径分布が極めて均一であり、均一にフィルム表面突起を形成する観点で好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム幅が500mm以上であり、フィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度以内でありかつ、150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向とも0.0%以上2.5%未満でありかつ、長手方向および幅方向のヤング率がそれぞれ4.0GPa以上および5.0GPa以上である。
以下に順を追って説明する。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム幅が500mm以上であり、フィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度以内である。ここでいう配向角は、全方位にわたってフィルムに超音波パルスを透過させ、その伝播速度を測定することによって配向性を評価し、配向主軸の傾き(配向角)を測定する。一般的に二軸配向ポリエステルフィルムの配向角は、その製造方法に起因して幅方向における中心より端部に向かって直線的に上昇する特性を有する。そのためフィルム幅が500mm以上のフィルムのフィルム幅方向1mあたりにおける配向角の差を両端部において計測した値に基づき算出することでフィルム幅方向全体の配向角の変化が前述する値以下であることを担保する。配向角および熱収縮率を上記範囲に制御することにより、セラミックスラリーを塗工した後に電極を印刷する加工工程において、印刷のゆがみを少なくすることができる。幅500mm以上のフィルムのフィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度を超えると、小型化したコンデンササイズに適した印刷精度が担保されにくくなる。また、150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向とも0.0%を下回ると、加工時に弛みが顕著となる。また150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向ともに2.5%以上になると、電極印刷時に寸法がずれることがある。幅500mm以上のフィルムのフィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化は好ましくは5度以内が好ましく、4度以内がさらに好ましい。150℃、30分間加熱した時の熱収縮率は、長手方向および幅方向ともに0.2%以上2.3%未満であることが更に好ましく、0.4%以上2.0%未満であることがより好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率が4.0GPa以上であり、幅方向のヤング率が5.0GPa以上であることが好ましい。年々薄膜化するセラミックスラリーの塗布および電極の印刷工程において、基材である離型フィルムは、厚みを維持したまま、剛性を高めることが要求されている。長手方向のヤング率が4.0GPaを下回る場合や、幅方向のヤング率が5.0GPaを下回る場合は、スラリー塗布後の乾燥工程にて離型フィルムに歪みが生じ、均一な塗布ができなくなることがある。長手方向及び幅方向のヤング率は、好ましくは5.5GPa以上、更に好ましくは6.0GPa以上である。また、先述の厚み範囲でのポリエステルフィルムにおいては、熱収縮率とのバランスや製膜性との兼ね合いを考えると長手方向及び幅方向のヤング率の上限は7.0GPaである。
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
ポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も本発明の製造に有効である。
このようにして、準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造における押出機は、1軸、2軸の押出機を用いることができる。また、ペレットの乾燥工程を省くために、押出機に真空引きラインを設けた、ベント式押出機を用いることもできる。また、最も押出量が多くなるB層には、ペレットを溶融する機能と、溶融したペレットを一定温度に保つ機能をそれぞれの押出機で分担する、いわゆるタンデム押出機を用いることができる。
押出機で溶融して押出したポリマーは、フィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルターには例えば3μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、3台の押出機、3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて3層に積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。特に、同時二軸延伸においてはロールによる延伸を伴わないため、フィルム表面の局所的な加熱ムラ及び冷却ムラを抑制し、均一な品質、特に熱収のバラツキを抑制したフィルムが得られると共に、延伸時にロール延伸に伴うフィルムとロールとの接触場所での速度差、ロールの微少傷の転写などによる傷の発生を抑制でき好ましい。
同時二軸延伸においては未延伸フィルムを、まず長手および幅方向に延伸温度を80℃以上130℃以下、好ましくは85℃以上110℃以下として同時に延伸する。延伸温度が80℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなると十分な強度が得られないことがある。また、延伸ムラを防止する観点から、長手方向・幅方向の合計延伸倍率は4倍以上20倍以下が好ましく、より好ましくは6倍以上15倍以下である。合計延伸倍率が4倍よりも小さいと十分なヤング率が得られにくい。一方、倍率が20倍よりも大きくなると、フィルム破断が起こりやすく、安定したフィルムの製造が難しい。必要なヤング率を得るためには、温度140℃以上200℃以下、好ましくは160℃以上190℃以下で長手方向及び/又は幅方向に1.02倍以上1.5倍以下、好ましくは1.05倍以上1.2倍以下で再度延伸を行うことが好ましく、合計延伸倍率は、長手方向で3倍以上4.5倍以下、好ましくは3.5倍以上4.2倍以下、幅方向に3.2倍以上5倍以下、好ましくは3.6倍以上4.3倍以下である。目標とするフィルムのヤング率を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向のヤング率を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。
その後、205℃以上240℃以下好ましくは220℃以上240℃以下で0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上15秒以下熱固定を行う。熱固定温度が205℃よりも低いとフィルムの熱結晶化が進まないため目標とする寸法変化率などが安定しにくい。また、フィルム物性を安定させるため、フィルム上下の温度差は20℃以下、好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下である。フィルム上下での温度差が20℃よりも大きいと、熱処理時に微小な平面性の悪化を引き起こしやすい。その後、長手及び/又は幅方向に0.5%以上7.0%以下の弛緩処理を施す。なお、同時二軸、逐次二軸延伸の双方の延伸方式において、熱固定処理以降の横延伸工程で、長手方向に連なるクリップの間隔を任意の割合で狭めることができる。これにより応力緩和を実施することもでき、配向角の抑制に有効である。
また、本発明のポリエステルフィルムは、逐次延伸を用いて製造することもできる。最初の長手方向の延伸は、傷の発生を抑制する上で重要であり、延伸温度は90℃以上130℃以下、好ましくは100℃以上120℃以下である。延伸温度が90℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなる。また、延伸ムラ、及びキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に2.8倍以上5.0倍以下、好ましくは3.3倍以上4.0倍以下であり、幅方向に3.5倍以上5倍以下、好ましくは4.0倍以上4.5倍以下である。目標とする配向角を達成しつつ、フィルムの熱収縮率およびヤング率を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向のヤング率を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。かかる温度、倍率範囲を外れると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、本発明の特徴とするフィルムが得られにくい。再縦または横延伸した後、205℃以上240℃以下、好ましくは210℃以上230℃以下で0.5秒以上20秒以下、好ましくは1秒以上15秒以下熱固定を行う。特に熱固定温度が205℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする寸法変化率などの特性が得られにくい。
逐次延伸において、長手方向の延伸過程は、フィルムとロールの接触し、ロールの周速とフィルムの速度差による傷が発生しやすい工程であるため、ロール周速がロール毎に個別に設定できる駆動方式が好ましい。長手方向の延伸過程において、搬送ロールの材質は、延伸前に未延伸フィルムをガラス転移点以上に加熱するか、ガラス転移点未満の温度に保った状態で延伸ゾーンまで搬送し、延伸時に一挙に加熱するかにより選択されるが、延伸前に未延伸フィルムをガラス転移点以上まで加熱する際は、加熱による粘着を防止するうえで、非粘着性シリコーンロール、セラミックス、テフロン(登録商標)から選択できる。また、延伸ロールは最もフィルムに負荷がかかり、該プロセスで傷や延伸斑が発生しやすい工程であるため、延伸ロールの表面粗さRaは、0.005μm以上1.0μm以下、好ましくは0.1μm以上0.6μm以下である。Raが1.0μmよりも大きいと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写しやすくなり、一方0.005μmよりも小さいとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムが熱ダメージを受けやすくなる。表面粗さを制御するためには研磨剤の粒度、研磨回数などを適宜調整することが有効である。
未延伸フィルムをガラス転移点未満の温度に保った状態で延伸ゾーンまで搬送し、延伸時に一挙に加熱する際、予熱ゾーンの搬送ロールは、ハードクロムやタングステンカーバイドで表面処理を行った、表面粗さRaが0.2μm以上0.6μm以下の金属ロールを使用するのが、熱しわの種となる粘着を抑制するうえで好ましい。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、かかる長手方向に延伸された一軸延伸フィルムを、横延伸機にて80℃以上120℃未満に加熱した後、3倍以上6倍未満で幅方向に延伸し、二軸延伸(二軸配向)フィルムとする。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行なってもよいし、同時2軸にて再延伸してもよい。配向角の変化を所望の値まで低減させる好ましい方法は、長手方向の再延伸工程にて、前の横延伸工程で発生したボーイングの緩和を行うことである。この際、長手方向の再縦延伸前の搬送ロールにて80℃〜100℃の温度にて加熱してもよいし、加熱していないロールを用い搬送してもよい。更には、延伸倍率をかけずに再縦延伸工程を通過させてもよい。再縦延伸後には更に横延伸を実施し、延伸の後にフィルムの熱処理を行なうが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は通常150℃以上245℃未満の任意の温度とすることができ、熱処理時間は、通常1秒間以上60秒間以下行なうことが好ましい。熱処理は、フィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行なってもよい。また、熱処理後は熱処理温度より0℃以上150℃以下の低い温度で幅方向に0%以上10%以下で弛緩させるとよい。
熱処理後のフィルムは、例えば中間冷却ゾーンや除冷ゾーンを設け、寸法変化率や平面性を調整することができる。また特に、特定の熱収縮性を付与するために、熱処理時あるいはその後の中間冷却ゾーンや除冷ゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に弛緩してもよい。
二軸延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後巻取り、中間製品を得る。この搬送工程にて、フィルムの厚みを測定し、該データをフィードバックして用いてダイ厚みなどの調整によってフィルム厚みの調整を行い、また、欠点検出器による異物検知を行うことができる。
中間製品はスリット工程により適切な幅・長さにスリットして巻き取り、二軸配向ポリエステルフィルムのロールが得られる。スリット工程におけるフィルムの切断時も、先述のエッジの切断と同様な切断の方式から選定できる。
上述の方法により得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、平面特性に優れるため、離型用途に好適に用いることができる。なお、本発明における離型用途とは、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを成形用部材として基材に用い、部材を成型し、成型後の部材から剥離する用途を指す。部材は、積層セラミックコンデンサにおけるグリーンシートや、多層回路基板における、層間絶縁樹脂(電気絶縁樹脂)、光学関連部材におけるポリカーボネート(この際は溶液製膜において使用される)などが挙げられ、また、自動車用積層セラミックコンデンサの成形用部材としてより好ましく用いられる。
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
本発明に関する測定方法、評価方法は次の通りである。
(1)測定位置の間隔
中間製品より採取した測定対象のフィルムを台に広げ、採取した測定対象のフィルムの、幅方向の両端部より、幅210mmのA4カットシートを、両端部がA4の長辺に一致するように採取し、これにて配向主軸の傾き(配向角)を測定する。このA4カットシートの中心位置、つまりA4カットシート端部から105mm離れた箇所を測定位置として、この測定位置の間幅を金尺(JIS1級)で測定し、これを測定位置の間隔とした。なお、製品ロールより採取する際には、製品幅方向の両端部より、幅210mmのA4カットシートを採取する。この際、製品幅が1000mmに満たない場合でも、A4カットシートを採取できるが、その際の製品幅は500mmを最小とする。
中間製品より採取した測定対象のフィルムを台に広げ、採取した測定対象のフィルムの、幅方向の両端部より、幅210mmのA4カットシートを、両端部がA4の長辺に一致するように採取し、これにて配向主軸の傾き(配向角)を測定する。このA4カットシートの中心位置、つまりA4カットシート端部から105mm離れた箇所を測定位置として、この測定位置の間幅を金尺(JIS1級)で測定し、これを測定位置の間隔とした。なお、製品ロールより採取する際には、製品幅方向の両端部より、幅210mmのA4カットシートを採取する。この際、製品幅が1000mmに満たない場合でも、A4カットシートを採取できるが、その際の製品幅は500mmを最小とする。
(2)配向主軸の傾き(配向角)
野村商事製SONIC SHEET TESTER(SST−4000)を用いて測定をする。中間製品の両端部より採取したA4カットシートについて測定した。配向主軸がフィルム幅方向と平行であるときが配向角0度であり、フィルム幅方向に対して時計回りの傾きを+、反時計回りを−とし、その差の絶対値を測定位置の間隔で割った値を測定結果とした。すなわち、
配向主軸の傾き(度)の変化=|(片方の端部の配向角)−(もう片方の端部の配向角)|/(測定位置の間隔/1000)
にて求める。配向角は単位が「度」であり、測定位置の間隔は、単位が「mm」である。
野村商事製SONIC SHEET TESTER(SST−4000)を用いて測定をする。中間製品の両端部より採取したA4カットシートについて測定した。配向主軸がフィルム幅方向と平行であるときが配向角0度であり、フィルム幅方向に対して時計回りの傾きを+、反時計回りを−とし、その差の絶対値を測定位置の間隔で割った値を測定結果とした。すなわち、
配向主軸の傾き(度)の変化=|(片方の端部の配向角)−(もう片方の端部の配向角)|/(測定位置の間隔/1000)
にて求める。配向角は単位が「度」であり、測定位置の間隔は、単位が「mm」である。
(3)熱収縮率
フィルムサンプルを幅10mm、長さ300mmに採取し、フィルム表面に、測定長約100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL0とする。このフィルムサンプルを150℃のオーブン中に30分間、1.5gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL1とし、下式により熱収縮率を求めた。
フィルムサンプルを幅10mm、長さ300mmに採取し、フィルム表面に、測定長約100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL0とする。このフィルムサンプルを150℃のオーブン中に30分間、1.5gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL1とし、下式により熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
フィルムの長手方法および幅方向についてそれぞれ3カ所の測定を行い、平均値を求めた。
フィルムの長手方法および幅方向についてそれぞれ3カ所の測定を行い、平均値を求めた。
(4)長手方向および幅方向のヤング率
JIS−K7161(1994)に準拠して測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回測定し、平均値から算出する。
JIS−K7161(1994)に準拠して測定する。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとする。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とする。
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回測定し、平均値から算出する。
(5)フィルム表面粗さ表面の中心線粗さ(SRa値)
三次元微細表面形状測定器(小坂製作所製ET−350K)を用いて測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、JIS・B0601(1994)に準じ、算術平均粗さ(中心線粗さ)SRa値を求める。測定条件は下記のとおり。
X方向測定長さ:0.5mm
X方向送り速度:0.1mm/秒
Y方向送りピッチ:5μm
Y方向ライン数:40本
カットオフ:0.25mm
触針圧:0.02mN
高さ(Z方向)拡大倍率:5万倍。
なお、X方向はサンプルの幅方向、Y方向はサンプルの長手方向で測定する。
三次元微細表面形状測定器(小坂製作所製ET−350K)を用いて測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、JIS・B0601(1994)に準じ、算術平均粗さ(中心線粗さ)SRa値を求める。測定条件は下記のとおり。
X方向測定長さ:0.5mm
X方向送り速度:0.1mm/秒
Y方向送りピッチ:5μm
Y方向ライン数:40本
カットオフ:0.25mm
触針圧:0.02mN
高さ(Z方向)拡大倍率:5万倍。
なお、X方向はサンプルの幅方向、Y方向はサンプルの長手方向で測定する。
(実施例1)
(1)ポリエステルペレットの作成
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸86.5質量部とエチレングリコール37.1質量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02質量部、酢酸マグネシウム0.06質量部、酢酸リチウム0.01質量部、三酸化アンチモン0.0085質量部を添加し、引き続いて、減圧下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルペレットAを得た。
(1)ポリエステルペレットの作成
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸86.5質量部とエチレングリコール37.1質量部を255℃で、水を留出しながらエステル化反応を行う。エステル化反応終了後、トリメチルリン酸0.02質量部、酢酸マグネシウム0.06質量部、酢酸リチウム0.01質量部、三酸化アンチモン0.0085質量部を添加し、引き続いて、減圧下、290℃まで加熱、昇温して重縮合反応を行い、固有粘度0.63dl/gのポリエステルペレットAを得た。
(ポリエステルBの作成)
上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、体積平均粒径0.2μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカを添加し、重縮合反応を行い、粒子をポリエステルに対し1質量%含有するシリカ含有マスターペレットを得た(ポリエステルB)。
上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、体積平均粒径0.2μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカを添加し、重縮合反応を行い、粒子をポリエステルに対し1質量%含有するシリカ含有マスターペレットを得た(ポリエステルB)。
なお、ポリエステルBで用いる球状シリカは、エタノールとエチルシリケートとの混合溶液を攪拌しながら、この混合溶液に、エタノール、純水、および塩基性触媒としてアンモニア水からなる混合溶液を添加し、得られた反応液を攪拌して、エチルシリケートの加水分解反応およびこの加水分解生成物の重縮合反応を行なった後に、反応後の攪拌を行い得られた単分散シリカ粒子である。
(ポリエステルC、Dの作成)
さらに別に、シード法によるジビニルベンゼン80質量%、エチルビニルベンゼン15質量%、スチレン5質量%からなるモノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度80%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒径0.3μm、
0.8μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1質量%含有するマスターペレットをそれぞれ得た(ポリエステルC、ポリエステルD)。
さらに別に、シード法によるジビニルベンゼン80質量%、エチルビニルベンゼン15質量%、スチレン5質量%からなるモノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度3のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(架橋度80%)の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒径0.3μm、
0.8μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1質量%含有するマスターペレットをそれぞれ得た(ポリエステルC、ポリエステルD)。
(ポリエステルEの作成)
ポリエステルAを製造するにあたりエステル交換後、炭酸ガス法にて作成した(体積平均粒径体積平均粒子径1.1μm、モース硬度3)の炭酸カルシウム10質量部とエチレングリコール90質量部を湿式粉砕し、炭酸カルシウム/エチレングリコール分散スラリーを得た。この炭酸カルシウムの体積平均粒子径は1.1μmであった。他方、ジメチルテレフタレート100質量部、エチレングリコール64質量部に触媒として酢酸マンガン0.04質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を加えエステル交換反応を行い、その後反応生成物に、リン化合物としてトリメチルホスフェート0.04質量部を加え、さらにその後、先に調整したスラリー1質量部を加えて重縮合反応を行い、ポリエステルに対し1質量%の炭酸カルシウムを含有するマスターペレット(ポリエステルE)を得た。
ポリエステルAを製造するにあたりエステル交換後、炭酸ガス法にて作成した(体積平均粒径体積平均粒子径1.1μm、モース硬度3)の炭酸カルシウム10質量部とエチレングリコール90質量部を湿式粉砕し、炭酸カルシウム/エチレングリコール分散スラリーを得た。この炭酸カルシウムの体積平均粒子径は1.1μmであった。他方、ジメチルテレフタレート100質量部、エチレングリコール64質量部に触媒として酢酸マンガン0.04質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を加えエステル交換反応を行い、その後反応生成物に、リン化合物としてトリメチルホスフェート0.04質量部を加え、さらにその後、先に調整したスラリー1質量部を加えて重縮合反応を行い、ポリエステルに対し1質量%の炭酸カルシウムを含有するマスターペレット(ポリエステルE)を得た。
一方で、下記処方のフィルムを製造した後のフィルムを回収し、ペレット化したものを回収原料Aとした。なお以下に記載する比率は、フィルム全体の質量に対する質量比(質量%)で表す。
ポリエステルA 93.4
ポリエステルD: 0.6
ポリエステルG: 6.0。
ポリエステルA 93.4
ポリエステルD: 0.6
ポリエステルG: 6.0。
(2)ポリエステルペレットの調合
A層、B層、C層それぞれの層の押出機に供給するポリエステルペレットは、以下の比率にて調合した。なお以下に記載する比率は、おのおのの層を構成するポリエステルペレットに対する質量比(単位:質量%)である。
A層、B層、C層それぞれの層の押出機に供給するポリエステルペレットは、以下の比率にて調合した。なお以下に記載する比率は、おのおのの層を構成するポリエステルペレットに対する質量比(単位:質量%)である。
A層
ポリエステルA:87.5
ポリエステルB:12.5
B層
ポリエステルA:60.0
回収原料A :40.0
C層
ポリエステルA:65.0
ポリエステルC:30.0
ポリエステルD: 5.0。
ポリエステルA:87.5
ポリエステルB:12.5
B層
ポリエステルA:60.0
回収原料A :40.0
C層
ポリエステルA:65.0
ポリエステルC:30.0
ポリエステルD: 5.0。
(3)二軸配向ポリエステルフィルムの製造
先述の、各層について調合した原料を、ブレンダー内で攪拌した後、A層およびC層の原料は、攪拌後の原料を、A層およびC層用のベント付き二軸押出機に供給し、B層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、B層用の一軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、3μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の異種3層用合流ブロックで合流積層し、層A、層B、層Cからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
先述の、各層について調合した原料を、ブレンダー内で攪拌した後、A層およびC層の原料は、攪拌後の原料を、A層およびC層用のベント付き二軸押出機に供給し、B層の原料は160℃で8時間減圧乾燥し、B層用の一軸押出機に供給した。275℃で溶融押出し、3μm以上の異物を95%以上捕集する高精度なフィルターにて濾過した後、矩形の異種3層用合流ブロックで合流積層し、層A、層B、層Cからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
この未延伸積層フィルムに逐次延伸(長手方向、幅方向)を実施した。まず長手方向の延伸を実施し、105℃でテフロン(登録商標)ロールにて搬送した後に、長手方向に120℃で4.0倍延伸して一軸延伸フィルムとした。
この一軸延伸フィルムをステンター内で横方向に115℃で4倍延伸し、続いて230℃で熱固定し、その際幅方向に5%弛緩し搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後に巻き取り、厚さ38μmの二軸延伸フィルムの中間製品を得た。この中間製品をスリッターにてスリットし、厚さ38μmの二軸延伸フィルムのロールを得た。この二軸延伸フィルムの積層厚みを測定した結果、A層:6.5μm、B層:30.5μm、C層:1.0μmであった。得られた中間製品より採取したフィルムに関し、その特性評価結果を表1に示した。なお、測定位置の間隔は5000mmであった。
(4)離型層の塗布
次にこの二軸延伸フィルムのロールに、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24−846)を固形分1質量%に調整した塗布液を塗布/乾燥し、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化した。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)100質量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2質量部を固形分5質量%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻き取り、離型フィルムを得た。
次にこの二軸延伸フィルムのロールに、架橋プライマー層(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名BY24−846)を固形分1質量%に調整した塗布液を塗布/乾燥し、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、100℃で20秒乾燥硬化した。その後1時間以内に付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名LTC750A)100質量部、白金触媒(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製商品名SRX212)2質量部を固形分5質量%に調整した塗布液を、乾燥後の塗布厚みが0.1μmとなるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化した後に巻き取り、離型フィルムを得た。
(5)グリーンシートの成型塗布
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT−1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL−1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン−エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型フィルムの上に乾燥後の厚みが0.5μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、グリーンシートを得た。
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT−1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL−1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン−エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状のセラミックスラリーを調整した。得られたセラミックスラリーを、離型フィルムの上に乾燥後の厚みが0.5μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、グリーンシートを得た。
(6)内部電極のパターンの形成
Ni粒子44.6質量部と、テルピネオール52質量部と、エチルセルロース3質量部と、ベンゾトリアゾール0.4質量部とを、混練し、スラリー化して内部電極層用塗料を得る。内部電極層用塗料を、グリーンシートの上に、スクリーン印刷法によって所定パターンで塗布し、内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを得た。乾燥温度は90℃、乾燥時間は5分である。この際の印刷のゆがみ状態を評価した。
<電極印刷特性>
○:ゆがみ無く電極が印刷されている。
△:ゆがみ状態認められるがコンデンサ収率には影響の無いレベルである。
×:ゆがみが大きくコンデンサ収率に影響を及ぼすレベルである。
Ni粒子44.6質量部と、テルピネオール52質量部と、エチルセルロース3質量部と、ベンゾトリアゾール0.4質量部とを、混練し、スラリー化して内部電極層用塗料を得る。内部電極層用塗料を、グリーンシートの上に、スクリーン印刷法によって所定パターンで塗布し、内部電極パターンを有するセラミックグリーンシートを得た。乾燥温度は90℃、乾燥時間は5分である。この際の印刷のゆがみ状態を評価した。
<電極印刷特性>
○:ゆがみ無く電極が印刷されている。
△:ゆがみ状態認められるがコンデンサ収率には影響の無いレベルである。
×:ゆがみが大きくコンデンサ収率に影響を及ぼすレベルである。
実施例1の実施形態においては評価結果は○であった。
(実施例2〜4)
実施例1と同じ処方、積層厚みにて、フィルム製造条件を変更した実施形態を、実施例2〜4に示す。実施例2および3は電極印刷特性の評価結果○であったが、実施例4は△であった。熱収縮率、特に幅方向においては実施例1〜3より高く、幅方向のゆがみが大きかったためと推測される。
実施例1と同じ処方、積層厚みにて、フィルム製造条件を変更した実施形態を、実施例2〜4に示す。実施例2および3は電極印刷特性の評価結果○であったが、実施例4は△であった。熱収縮率、特に幅方向においては実施例1〜3より高く、幅方向のゆがみが大きかったためと推測される。
(比較例1〜4)
実施例1と同じ処方、積層厚みにて、フィルム製造条件を変更した実施形態を、比較例1〜4に示す。比較例1では縦延伸倍率を3.8倍とし、熱収縮率は所定範囲に収まったものの、配向角は14.8°と高く、その結果が電極印刷特性を悪化させコンデンサ収率を悪化させたと推定される。比較例2は、配向角をより良くするための条件調整を実施したが、熱収縮率が高くなったため電極印刷のピッチにバラツキが生じ、コンデンサ収率を悪化させたと推定される。比較例3および比較例4は、中間冷却工程を持たずに配向角の低減を検討したものの、配向角と熱収縮の両立もいずれも達成できなかった。これらも電極印刷特性を悪化させコンデンサ収率を悪化させたと推定される。
実施例1と同じ処方、積層厚みにて、フィルム製造条件を変更した実施形態を、比較例1〜4に示す。比較例1では縦延伸倍率を3.8倍とし、熱収縮率は所定範囲に収まったものの、配向角は14.8°と高く、その結果が電極印刷特性を悪化させコンデンサ収率を悪化させたと推定される。比較例2は、配向角をより良くするための条件調整を実施したが、熱収縮率が高くなったため電極印刷のピッチにバラツキが生じ、コンデンサ収率を悪化させたと推定される。比較例3および比較例4は、中間冷却工程を持たずに配向角の低減を検討したものの、配向角と熱収縮の両立もいずれも達成できなかった。これらも電極印刷特性を悪化させコンデンサ収率を悪化させたと推定される。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、平面特性に優れるため、離型用途に好適に用いることができる。特に、加工時の張力に対抗し、面内での伸縮挙動が均一化しているため、多層セラミックコンデンサにおけるグリーンシートを部材として用いる離型用途に特に好適に用いられる。
Claims (5)
- フィルム幅が500mm以上であり、フィルム幅方向1mあたりに対する配向主軸の傾きの角度(配向角)の変化が6度以内であり、150℃、30分間加熱した時の熱収縮率が、長手方向および幅方向とも0.0%以上2.5%未満であり、かつ、長手方向および幅方向のヤング率がそれぞれ4.0GPa以上および5.0GPa以上である離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 一方のフィルム表面の中心線粗さSRa(A)が1nm以上15nm未満であり、他方のフィルム表面の中心線粗さSRa(B)が20nm以上40nm以下である、請求項1に記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 3層以上の層構成を有する、請求項1または2に記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 積層セラミックコンデンサの成形用部材として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 自動車用積層セラミックコンデンサの成形用部材として用いられる、請求項1〜4のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリエステルフィルム。
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