以下、本発明による車両制御装置および車両制御方法を、好適な実施の形態にしたがって図面を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一部分または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における車両制御装置10の構成を示すブロック図である。車両制御装置10は、車両に搭載されるものであり、例えば、演算処理を実行するマイクロコンピュータと、プログラムデータ、固定値データ等のデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、格納されているデータを更新して順次書き換えられるRAM(Random Access Memory)と、データを送受信する無線通信機によって実現される。
車両制御装置10は、車両情報取得部11と、追い越し車両判定部12と、対向車両判定部13と、運転支援制御部14と、送信機、受信機およびアンテナ等を含んで構成される無線通信機15とを備える。
車両情報取得部11は、自車両の位置(以下、自車位置と称す)を経時的に取得する。なお、自車位置を取得する手法としては、公知の技術を適用すればよく、例えば、無線通信機15と通信可能なGPS(Global Positioning System)衛星から位置情報を受信することで自車位置を取得する手法が挙げられる。
車両情報取得部11は、上記のような手法によって自車位置を経時的に取得することによって、現時点で取得した自車位置である現在位置と、現時点よりも過去に取得した自車位置である過去位置を含む位置データを生成する。なお、自車位置を取得するタイミングは、任意に設計することができる。
車両情報取得部11は、生成した位置データを含む第1の通信データT1を、無線通信機15を用いて、通信可能エリア内に送信する。
追い越し車両判定部12は、無線通信機15を用いて、他車両に搭載される車両制御装置10(以下、他車両制御装置と称す)から第1の通信データT1を受信する。つまり、第1の通信データT1を送信する他車両制御装置の通信可能エリアに車両制御装置10が入ると、その他車両制御装置とその車両制御装置10とが無線通信可能に接続される。したがって、その車両制御装置10の追い越し車両判定部12が第1の通信データT1を受信することができる。
追い越し車両判定部12は、受信した第1の通信データT1に含まれる位置データと、車両情報取得部11によって生成された自車両の位置データとに基づいて、第1の通信データT1を送信した他車両制御装置を搭載する他車両が自車両を追い越そうとする追い越し車両であるか否かの追い越し車両判定を行う。
追い越し車両判定部12は、追い越し車両判定の結果と、車両情報取得部11によって生成された自車両の位置データとを含む第2の通信データT2を、無線通信機15を用いて、通信可能エリア内に送信する。
対向車両判定部13は、無線通信機15を用いて、他車両制御装置から第2の通信データを受信する。つまり、第2の通信データT2を送信する他車両制御装置の通信可能エリアに車両制御装置10が入ると、その他車両制御装置とその車両制御装置10とが無線通信可能に接続される。したがって、その車両制御装置10の対向車両判定部13が第2の通信データT2を受信することができる。
対向車両判定部13は、受信した第2の通信データT2に含まれる位置データと、車両情報取得部11によって生成された自車両の位置データとに基づいて、第2の通信データT2を送信した他車両制御装置を搭載する他車両が自車両に対向する対向車両であるか否かの対向車両判定を行う。
運転支援制御部14は、対向車両判定の結果が第2の通信データT2を送信した他車両が対向車両であることを示し、かつ、第2の通信データT2に含まれる追い越し車両判定の結果が第1の通信データT1を送信した他車両が追い越し車両であることを示す場合、自車両のドライバーに対して、追い越し車両の存在に対応した運転支援制御を行う。
具体的には、運転支援制御部14は、運転支援制御の一例として、アラーム、音声アナウンス、ディスプレイへの表示等によってドライバーに対して対向車両の後方に追い越し車両が存在すること報知する。
次に、対向二車線の道路を走行する、第1の車両1、第2の車両2および第3の車両3の各車両1〜3に搭載される車両制御装置10間で通信接続される場合の処理について、図2および図3を参照しながら説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における車両制御装置10が搭載される各車両1〜3の位置関係の一例を示す説明図である。図3は、図2に示す各車両1〜3に搭載される車両制御装置10間で通信接続される場合に機能する各車両制御装置10の構成部分を抜粋したブロック図である。
なお、図3では、各車両1〜3に搭載される車両制御装置10を区別するために、車両制御装置10の末尾と、各車両制御装置10の構成部分の末尾に、各車両に対応する符号を付している。例えば、第1の車両1に搭載される車両制御装置10を「車両制御装置10(1)」と表記し、車両制御装置10(1)の車両情報取得部11を「車両情報取得部11(1)」と表記している。
第1の車両1と第2の車両2の位置関係において、無線通信機15(1)の通信可能エリアに無線通信機15(2)が入れば、車両情報取得部11(1)が無線通信機15(1)を介して送信する第1の通信データT1を、無線通信機15(2)を介して追い越し車両判定部12(2)が受信する。
この場合、追い越し車両判定部12(2)は、第1の車両1から受信した第1の通信データT1に含まれる位置データ(すなわち、第1の車両1の位置データ)と、車両情報取得部11(2)によって生成された位置データ(すなわち、第2の車両2の位置データ)とに基づいて、追い越し車両判定を行う。
このように、第1の車両1は、自車両の位置データを生成し、その位置データを含む第1の通信データT1を通信可能エリア内に送信する。第1の車両1の通信可能エリアに第2の車両2が入ると第1の車両1と第2の車両2とが無線通信可能に接続され、第2の車両2が第1の通信データT1を受信する。第2の車両2は、自車両の位置データを生成し、第1の通信データT1に含まれる位置データと、自車両の位置データとに基づいて、第1の車両が追い越し車両であるか否かの追い越し車両判定を行う。
ここで、追い越し車両判定について、図4および図5を参照しながら説明する。図4は、本発明の実施の形態1における車両制御装置10によって行われる追い越し車両判定を示すフローチャートである。図5は、本発明の実施の形態1における車両制御装置10によって求められる第1の近似直線L1および第2の近似直線L2の概念を示す説明図である。
なお、図4および図5を説明するにあたって、具体例として、車両制御装置10(1)から第1の通信データT1を受信した車両制御装置10(2)が動作するケースを考えている。また、図5では、第1の車両1の位置データに含まれる過去位置を四角印で示し、第2の車両2の位置データに含まれる過去位置を丸印で示している。
ステップS101において、追い越し車両判定部12(2)は、第1の近似直線計算処理として、受信した第1の通信データT1に含まれる位置データの過去位置(図5の四角印参照)を直線近似することで第1の近似直線L1を求め、処理がステップS102へと進む。なお、第1の近似直線L1を求める際に直線近似する過去位置のデータ数は、任意に設計することができる。
ステップS102において、追い越し車両判定部12(2)は、第2の近似直線計算処理として、車両情報取得部11(2)によって生成された自車両の位置データの過去位置(図5の丸印参照)を直線近似することで第2の近似直線L2を求め、処理がステップS103へと進む。なお、第2の近似直線L2を求める際に直線近似する過去位置のデータ数は、任意に設計することができる。
ステップS103において、追い越し車両判定部12(2)は、交点計算処理として、ステップS101で求めた第1の近似直線L1と、ステップS102で求めた第2の近似直線L2との交点Pを求め、処理がステップS104へと進む。
ステップS104において、追い越し車両判定部12(2)は、第1の距離計算処理として、ステップS103で求めた交点Pの位置と、第1の通信データT1に含まれる位置データの現在位置(すなわち、第1の車両1の現在位置)との間の第1の距離D1を求め、処理がステップS105へと進む。
ステップS105において、追い越し車両判定部12(2)は、角度計算処理として、ステップS101で求めた第1の近似直線L1と、ステップS102で求めた第2の近似直線L2とがなす角度θを求め、処理がステップS106へと進む。
ステップS106において、追い越し車両判定部12(2)は、追い越し車両判定処理として、ステップS104で求めた第1の距離D1が第1の設定距離未満であり、かつ、ステップS105で求めた角度θが設定角度範囲内に含まれていることを条件とする追い越し車両判定条件を満たすか否かを判定する。
ステップS106で、第1の距離D1が第1の設定距離未満であり、かつ、角度θが設定角度範囲内に含まれている場合には、追い越し車両判定条件を満たすと判定され、処理がステップS107へと進む。一方、第1の距離D1が第1の設定距離以上である場合、または、角度θが設定角度範囲内に含まれていない場合には、追い越し車両判定条件を満たしていないと判定され、処理がステップS108へと進む。
なお、第1の設定距離および設定角度範囲は、予め設定されるものである。第1の設定距離および設定角度範囲の設定方法としてはさまざまな方法が考えらえるが、一例として、以下のような設定方法が考えられる。例えば、時速60kmで走行する第1の車両1がその前方を時速50kmで走行する第2の車両2を追い越す場合を考える。この場合、その追い越しに必要な時間と距離は、それぞれ、21.1秒と360mになる。また、第1の車両1が第2の車両2を追い越すまでの間、第1の車両1は隣車線に移って自車線に戻る。車線幅は、一般的に、乗用車幅の2倍程度であることが多いので、第1の車両が追い越しを開始して対向車線にはみ出すときの第1の車両と第2の車両の相対距離は、追い越しに要する距離の1/4の距離(=360m/4=90m)となるので、追い越しに要する距離の1/4の距離を第1の設定距離とする方法が考えられる。第1の車両1が距離90mを走行する間に、車線幅(一般的な車線幅:3.5m)の1/4(=3.5m/4≒0.9m)だけ横ずれし、その横ずれの角度はsin−1(0.9/90)≒0.57degとなる。そこで、例えば、運転者によるばらつきを考慮するため、該角度が0.57degを中心に0〜1.14の範囲で正規分布すると仮定して、その1σを設定角度範囲とする方法が考えられる。
このように、追い越し車両判定部12は、第1の通信データT1に含まれる位置データと、自車両の位置データとから求めた第1の距離D1および角度θに基づいて追い越し車両判定を行う。
ステップS107において、追い越し車両判定部12(2)は、第1の通信データT1を送信した第1の車両1が追い越し車両であると判定する。また、追い越し車両判定部12(2)は、その判定結果と、車両情報取得部11(2)によって生成された位置データとを含む第2の通信データT2を、無線通信機15(2)を介して通信可能エリア内に送信する。
ステップS108において、追い越し車両判定部12(2)は、第1の通信データT1を送信した第1の車両1が追い越し車両でないと判定する。また、追い越し車両判定部12(2)は、その判定結果と、車両情報取得部11(2)によって生成された位置データとを含む第2の通信データT2を、無線通信機15(2)を介して通信可能エリア内に送信する。
図2および図3の説明に戻り、第2の車両2と第3の車両3の位置関係において、無線通信機15(2)の通信可能エリアに無線通信機15(3)が入れば、追い越し車両判定部12(2)が無線通信機15(2)を介して送信する第2の通信データT2を、無線通信機15(3)を介して対向車両判定部13(3)が受信する。
この場合、車両制御装置10(3)は、受信した第2の通信データT2に含まれる追い越し車両判定の結果から、追い越し車両の存在の有無を認識することができる。つまり、対向二車線の道路を走行する第3の車両3に対して、前方に追い越し車両が存在するか否かが通知されることとなる。
さらに、対向車両判定部13(3)は、第2の車両2から受信した第2の通信データT2に含まれる位置データ(すなわち、第2の車両2の位置データ)と、車両情報取得部11(3)によって生成された位置データ(すなわち、第3の車両3の位置データ)とに基づいて、対向車両判定を行う。
このように、第2の車両2は、追い越し車両判定の結果と、自車両の位置データとを含む第2の通信データT2を通信可能エリア内に送信する。第2の車両2の通信可能エリアに第3の車両3が入ると第2の車両2と第3の車両3とが無線通信可能に接続され、第3の車両3が第2の通信データT2を受信する。第3の車両3は、自車両の位置データを生成し、第2の通信データT2に含まれる位置データと、自車両の位置データとに基づいて、第2の車両2が自車両に対向する対向車両であるか否かの対向車両判定を行う。
ここで、対向車両判定について、図6および図7を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施の形態1における車両制御装置10によって行われる対向車両判定を示すフローチャートである。図7は、本発明の実施の形態1における車両制御装置10によって求められる第3の近似直線L3の概念を示す説明図である。
なお、図6および図7を説明するにあたって、具体例として、車両制御装置10(2)から第2の通信データT2を受信した車両制御装置10(3)が動作するケースを考えている。また、図7では、第3の車両3の位置データに含まれる過去位置を丸印で示している。
ステップS201において、対向車両判定部13(3)は、第3の近似直線計算処理として、車両情報取得部11(3)によって生成された自車両の位置データの過去位置(図7の丸印参照)を直線近似することで第3の近似直線L3を求め、処理がステップS202へと進む。なお、第3の近似直線L3を求める際に直線近似する過去位置のデータ数は、任意に設計することができる。
ステップS202において、対向車両判定部13(3)は、第2の距離計算処理として、受信した第2の通信データT2に含まれる位置データの現在位置(すなわち、第2の車両2の現在位置)と、ステップS201で求めた第3の近似直線L3との間の第2の距離D2を求め、処理がステップS203へと進む。
ステップS203において、対向車両判定部13(3)は、対向車両判定処理として、ステップS202で求めた第2の距離D2が第2の設定距離未満であることを条件とする対向車両判定条件を満たすか否かを判定する。
ステップS203で、第2の距離D2が第2の設定距離未満である場合には、対向車両判定条件を満たすと判定され、処理がステップS204へと進む。一方、第2の距離D2が第2の設定距離以上である場合には、対向車両判定条件を満たしていないと判定され、処理がステップS205へと進む。
なお、第2の設定距離は、予め設定されるものである。第2の設定距離の設定方法としてはさまざまな方法が考えらえるが、一例として、以下のような設定方法が考えられる。第2の車両2が第3の車両3と異なる道路(例えば、交差道路)を走行している場合、進行方向が異なるので、第3の近似直線L3が第2の車両2の中心から離れ、その結果、第2の距離D2が大きくなる。一方、図7に示すように、対向二車線の道路を第2の車両2と第3の車両が対向して走行している場合、第2の距離D2が車線幅程度未満になると考えられる。そこで、例えば、一般的な道路の車線幅である3.5mを第2の設定距離とする方法が考えられる。
このように、対向車両判定部13は、第2の通信データT2に含まれる位置データと、自車両の位置データとから求めた第2の距離D2に基づいて対向車両判定を行う。
ステップS204において、対向車両判定部13(3)は、第2の通信データT2を送信した第2の車両2が対向車両であると判定し、その判定結果を運転支援制御部14(3)に出力する。
ステップS205において、対向車両判定部13(3)は、第2の通信データT2を送信した第2の車両2が対向車両でないと判定し、その判定結果を運転支援制御部14(3)に出力する。
図2および図3の説明に戻り、運転支援制御部14(3)は、対向車両判定部13(3)から入力される対向車両判定の結果が第2の車両2が対向車両であることを示し、かつ、第2の通信データT2に含まれる追い越し車両判定の結果が第1の車両1が追い越し車両であることを示す場合には、第3の車両3のドライバーに対する運転支援制御を行う。
具体的には、運転支援制御部14(3)は、第3の車両3のドライバーに対する運転支援制御の一例として、そのドライバーに対して対向車両に相当する第2の車両2の後方に追い越し車両に相当する第1の車両1が存在することを報知する。
以上、本実施の形態1によれば、自車両の位置データを含む第1の通信データを送信する処理と、他車両から受信した第1の通信データに含まれる位置データと、自車両の位置データとに基づいて、第1の通信データを送信した他車両が追い越し車両であるか否かの追い越し車両判定を行い、その追い越し車両判定の結果と、自車両の位置データとを含む第2の通信データを送信する処理と、他車両から受信した第2の通信データに含まれる位置データと、自車両の位置データとに基づいて、第2の通信データを送信した他車両が対向車両であるか否かの対向車両判定を行う処理とを実行するように構成されている。
これにより、例えば先の図2に示す状況において、第1の車両と第2の車両との間の通信可能エリアと、第2の車両と第3の車両との間の通信可能エリアのそれぞれが確保されれば、第3の車両に対して第1の車両が追い越し車両となることを通知することができる。したがって、それぞれの通信可能エリアを広げることなく、対向車線を走行する車両に対して追い越し車両の存在を通知することができる。その結果、無線通信の輻輳を緩和しつつ、対向二車線の道路を走行する車両に対して前方に追い越し車両が存在することを通知することができる。
また、上記の構成に対して、対向車判定を行うようにさらに構成しているので、第2の車両が第3の車両の対向車で無かった場合に、追い越し車両が存在することを第3の車両が誤って認識することを回避することができる。