JP2018195609A - エッチング方法及びエッチング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡素な構造のヘテロ構造半導体を用いることが可能で、且つ表面の損傷性及び平坦性並びにエッチングの深さ制御性を向上させたエッチング方法を提供する。【解決手段】表面層13と、表面層13よりも狭い禁制帯幅の内部層12と、により構成されるヘテロ構造を有し、表面層13と内部層12との界面において伝導体の下端エネルギーが不連続である半導体の表面層13を光電気化学反応によりエッチングする場合に、表面層13を電解液内に浸した状態で、表面層13の禁制帯幅より高いエネルギーを有し且つエッチングの深さに対応した強度の励起光を照射すると共に、電解液側に正孔を移動させるための表面層13の内部電界、及び内部層12内にある正孔の表面層13に向けた移動を制限するための内部層12の内部電界にそれぞれ対応し、且つ表面層13内に酸化電流を流すための電圧を、励起光の照射と並行して印加する。【選択図】図2

Description

本発明は、エッチング方法及びエッチング装置の技術分野に属する。より詳細には、いわゆるフォトリソグラフィ技術を用いてヘテロ構造半導体の表面にリセス(溝)等の構造物を作製するためのエッチング方法及びエッチング装置の技術分野に属する。
近年、FET(Field Effect Transistor)の分野において、相互コンダクタンス(換言すれば増幅率)の向上やノーマリオフ化(即ち閾値電圧(動作電圧)の正方向シフト)等の好ましい特性を備えるHEMT(High Electron Mobility Transistor)の研究開発が活発に行われている。
ここで、ヘテロ構造の半導体上にフォトリソグラフィ技術を用いてHEMTを作製する場合、HEMTとしてのゲートを構成するリセス(溝)の深さや幅又は長さ、或いはリセス表面の平滑性及び欠陥の有無等を精密に制御することが極めて重要である。これは、当該ゲートの構造や表面の平滑性の改善により、その閾値電圧の精密な制御が可能となると共に、完成したHEMTの安定動作が実現されるからである。
一方、上記リセスを作製する技術として従来一般的には、ウェットエッチング法とドライエッチング法がある。ここでエッチングの深さを精密に制御する観点では、ウェットエッチング法よりもドライエッチング法が有利であることが知られている。しかしながら、一般的なドライエッチング法には、以下の(1)及び(2)のような問題点がある。
(1)高エネルギーの反応を利用するため、半導体の表面に損傷・欠陥を与え易い。そして、半導体表面に当該欠陥ができた場合は、禁制帯中に高密度の表面準位(即ち、電子及び正孔のトラップ準位)が生成されてしまい、予期せぬ電流変動や、ゲート漏れ電流の増加、或いはゲート制御性の劣化の要因となり、結果として素子の異常動作を引き起こす原因となる。
(2)エッチングの深さの精密な制御が困難になる。即ち、上記素子の閾値電圧はリセスの深さに大きな影響を受けるため、エッチングの深さに対する数ナノメートルの誤差が、完成した素子の性能に大きなばらつきを与えてしまう。
そこで、上記のようなドライエッチング法の問題点を解決することを目的とした技術を開示した先行技術文献として、例えば下記特許文献1が挙げられる。この特許文献1に開示されている技術では、いわゆる光電気化学反応を利用したエッチング方法において、エッチングの対象となる層が、その材料組成を深さ方向へ段階的に変化させた二層構造とされている。そして、エッチングされる上層で吸収され且つ下層で透過される波長の光を当該上層に照射しながら光電気化学反応によりエッチングを進めることで、当該光電気化学反応(即ちエッチング自体)が当該上層内又は当該上層と下層との界面で停止する構成とされている。ここで、上記二層構造の具体例としては、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層を光電気化学反応によりエッチングする場合には、エッチングされる上層の組成がAl0.25Ga0.75Nとされ、下層の組成がAl0.375Ga0.625Nとされる。
特開2011−77122号公報(第1図乃至第3図等)
しかしながら、上記特許文献1記載の技術によると、エッチング対象となる層を組成が異なる二層構造とする必要があり、更に実際にエッチングされる第一の層(上層)の禁制帯の幅を第二の層(下層)のそれよりも狭くする必要があるため、結果的に素子の作製工程が増えてしまい、作製コスト及び作製時間の観点で好ましくないという問題点があった。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、エッチング対象のヘテロ構造半導体として簡素な構造を用いることが可能でありながら、エッチングされた表面の損傷性及び平坦性並びにエッチングの深さ制御性を向上させたエッチング方法及びエッチング装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、表面層と、当該表面層の禁制帯幅よりも狭い禁制帯幅の内部層と、により構成されるヘテロ構造の半導体であって、当該表面層と当該内部層との界面において伝導体の下端エネルギーが不連続である半導体の当該表面層を、電解液を用いた光電気化学反応によりエッチングするエッチング方法において、前記表面層におけるエッチング対象の領域が前記電解液内に浸されるように前記半導体を保持した状態で、前記表面層の前記禁制帯幅より高いエネルギーを有する励起光であって、当該表面層のエッチングの深さに対応した強度の励起光を、前記保持されている半導体に照射する照射工程と、i)前記電解液に接する前記表面層の面に向けて当該表面層内にある正孔を移動させるための当該表面層の内部電界に対応し、ii)前記内部層内にある正孔の前記表面層側に向けた移動を制限するための当該内部層の内部電界に対応し、且つiii)前記表面層内に酸化電流を流すための電圧を、前記励起光の照射と並行して前記半導体に印加する印加工程と、を含む。
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、表面層と、当該表面層の禁制帯幅よりも狭い禁制帯幅の内部層と、により構成されるヘテロ構造の半導体であって、当該表面層と当該内部層との界面において伝導体の下端エネルギーが不連続である半導体の当該表面層を、電解液を用いた光電気化学反応によりエッチングするエッチング装置において、前記表面層におけるエッチング対象の領域が前記電解液内に浸されるように前記半導体を保持するホルダ等の保持手段と、前記表面層の前記禁制帯幅より高いエネルギーを有する励起光であって、当該表面層のエッチングの深さに対応した強度の励起光を、前記保持されている半導体に照射するキセノンランプ等の照射手段と、i)前記電解液に接する前記表面層の面に向けて当該表面層内にある正孔を移動させるための当該表面層の内部電界に対応し、ii)前記内部層内にある正孔の前記表面層側に向けた移動を制限するための当該内部層の内部電界に対応し、且つiii)前記表面層内に酸化電流を流すための電圧を、前記励起光の照射と並行して前記半導体に印加する可変電圧源等の印加手段と、を備える。
請求項1又は請求項5に記載の発明によれば、表面層におけるエッチング対象の領域が電解液内に浸されるように半導体を保持した状態で、表面層の禁制帯幅より高いエネルギーを有し且つ表面層のエッチングの深さに対応した強度の励起光を半導体に照射すると共に、i)電解液に接する表面層の面に向けて当該表面層内にある正孔を移動させるための当該表面層の内部電界に対応し、ii)内部層内にある正孔の表面層側に向けた移動を制限するための当該内部層の内部電界に対応し、且つiii)表面層内に酸化電流を流すための電圧を、励起光の照射と並行して半導体に印加する。よって結果的に、光電気化学反応による表面層のエッチングが、励起光の強度に対応したエッチングの深さで自己停止するので、エッチングされた表面層の領域の損傷性及び平坦性並びにエッチングにおける深さ制御性を向上させることができる。
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のエッチング方法において、前記照射工程においては、前記表面層のエッチングの深さに比例した強度の前記励起光を前記半導体に照射するように構成される。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、照射工程において、表面層のエッチングの深さに比例した強度の励起光を半導体に照射するので、エッチングにおける深さ制御性をより向上させることができる。
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法において、前記照射工程においては、前記表面層内で前記エッチングの進行が停止する時間以上に前記励起光を照射するように構成される。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、照射工程において、表面層内でエッチングの進行が停止する時間以上に励起光を照射するので、当該励起光の強度により予定される深さまで確実に表面層をエッチングすることができる。
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法において、前記表面層の材質がAlGaNであり、前記内部層の材質がGaNであるように構成される。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、エッチングされる表面層の材質がAlGaNであり、内部層の材質がGaNであるので、例えばAlGaNからなる表面層とGaNからなる内部層が積層されたヘテロ構造の半導体により例えばHEMTを作製する場合において、その閾値電圧(動作電圧)の制御性及び動作の安定性を向上させることができる。
本発明によれば、表面層におけるエッチング対象の領域が電解液内に浸されるように半導体を保持した状態で、表面層の禁制帯幅より高いエネルギーを有し且つ表面層のエッチングの深さに対応した強度の励起光を半導体に照射すると共に、i)電解液に接する表面層の面に向けて当該表面層内にある正孔を移動させるための当該表面層の内部電界に対応し、ii)内部層内にある正孔の表面層側に向けた移動を制限するための当該内部層の内部電界に対応し、且つiii)表面層内に酸化電流を流すための電圧を、励起光の照射と並行して半導体に印加する。
従って、照射工程における励起光の照射と印加工程における電圧の印加とが並行して実行されることにより、結果的に、光電気化学反応による表面層のエッチングが励起光の強度に対応したエッチングの深さで自己停止するので、エッチングされた表面層の領域の損傷性及び平坦性並びにエッチングにおける深さ制御性を向上させることができる。
本発明に係る光電気化学反応を用いて作製されるHEMTの構造を示す断面図である。 本発明に係る光電気化学反応によるHEMTの作製工程の一部を示す断面図であり、(a)は当該光電気化学反応実行前の素子構造を示す断面図であり、(b)は当該光電気化学反応実行後の素子構造を示す断面図である。 本発明に係る光電気化学反応の前提となる電気化学反応を説明する図であり、(a)は当該電気化学反応実行前の状態を示す図であり、(b)は当該電気化学反応における酸化反応を示す図であり、(c)は当該電気化学反応により形成された酸化物を示す図であり、(d)は当該電気化学反応における酸化物の溶解を示す図である。 本発明に係る光電気化学反応に対応するエネルギーバンド図等を示す図であり、(a)は当該光電気化学反応における酸化電流と印加される電圧の関係を例示するグラフ図であり、(b)は当該エネルギーバンド図を示す図である。 本発明に係る光電気化学反応におけるエッチング時間とエッチングの深さとの関係等を示すグラフ図であり、(a)は当該関係を示すグラフ図であり、(b)は当該光電気化学反応における励起光の強度とエッチングの自己停止深さとの関係を示すグラフ図である。 実施形態に係るHEMTの作製工程を示すフローチャートである。 実施形態に係るHEMTの作製工程を示す断面図であり、(a)は当該作製工程に係るエピタキシャル基板の構造を示す断面図であり、(b)はマスク及び電流引出電極を作製したエピタキシャル基板の構造を示す断面図であり、(c)はゲートリセスを作製したエピタキシャル基板の構造を示す断面図であり、(d)は完成したHEMTの構造を示す断面図である。 実施形態に係るエッチング装置の概要構成を示す図である。 実施形態に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法によるHEMTの作製結果により当該光電気化学反応の効果を示す図であり、(a)は当該効果を示すAFM(Atomic Force Microscope(原子力間顕微鏡))像を示す図であり、(b)は当該効果を示すAFM断面プロファイル図であり、(c)は当該効果を示す平面SEM(Scanning Electron Microscope)像を示す図であり、(d)は当該効果を示す断面SEM像を示す図である。
次に、本発明の原理及び本発明を実施するための形態について、図面に基づいてそれぞれ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、HEMTの作製に用いられるエッチング方法に対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
(I)本発明の原理
始めに、本発明に係る実施形態について具体的に説明する前に、本発明の原理について図1乃至図5を用いて説明する。なお、図1は本発明に係る光電気化学反応を用いて作製されるHEMTの構造を示す断面図であり、図2は当該光電気化学反応によるHEMTの作製工程の一部を示す断面図であり、図3は当該光電気化学反応の前提となる電気化学反応を説明する図である。また、図4は当該光電気化学反応に対応するエネルギーバンド図等を示す図であり、図5は当該光電気化学反応におけるエッチング時間とエッチングの深さとの関係等を示すグラフ図である。
図1に示すように、本発明に係る光電気化学反応を用いて作製されるHEMT100は、基板10上に、バッファ層11を介して内部層12及び表面層13がエピタキシャル成長された構造を備えている。このとき基板10としては、例えば炭化シリコン(SiC)単結晶基板、シリコン(Si)単結晶基板、サファイア単結晶基板又は窒化ガリウム(GaN)単結晶基板等が用いられる。またバッファ層11は、格子緩和効果や耐圧の向上を目的とした層であり、その材質としては、例えば窒化ガリウム(GaN)又は窒化アルミニウム(AlN)等が用いられる。更にHEMT100としてのキャリア(電子及び正孔を纏めた概念をいう。以下同様。)の移動に直接関与する表面層13及び内部層12それぞれの材質としては、内部層12としては例えば真性窒化ガリウム(i−GaN)が用いられ、表面層13としては例えば真性窒化アルムニウムガリウム(i−AlGaN)が用いられる。なお表面層13の厚さは例えば25ナノメートルとされ、内部層12の厚さは例えば1、000ナノメートルとされる。また、上記の材質により内部層12及び表面層13を作製すると、結果として、表面層13と内部層12との界面においては、それぞれの伝導体の下端エネルギーが不連続となる。このため、表面層13との界面に近い内部層12の領域のうち後述するゲートリセス30に対向した領域以外の領域には、いわゆる二次元電子ガス(2DEG)12Gが存在する。以上の内部層12及び表面層13により、HEMT100としてのいわゆるヘテロ構造が形成されている。このヘテロ構造においては、内部層12及び表面層13がそれぞれ上記の材質により作製されていることから、表面層13の禁制帯(バンドギャップ)幅よりも内部層12の禁制帯幅が狭くなっている。
そして、HEMT100としてのゲートが作製される表面層13の位置には、本発明に係る光電気化学反応によりゲートリセス30が作製され、当該ゲートリセス30を含む表面層13の表面に絶縁膜16が形成され、その上にゲート電極17が作製されている。この絶縁膜16の材質としては、例えば酸化アルミニウム(Al)、窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO)が用いられる。更に、内部層12の一部及び表面層13の部分には、素子分離用のアイソレーション領域21及びアイソレーション領域22が作製されている。これらに加えて、ソース電極14及びドレイン電極15、並びに本発明に係る光電気化学反応によるエッチングに用いられる電流引出電極20が、表面層13に接触するように作製されている。
なお、ゲートリセス30の底部に形成される絶縁膜16は、HEMT100の動作として必須のものではないが、HEMT100の動作安定性を向上させる観点からは、ゲート電極17と表面層13との間に形成されていることが望ましい。即ち、ゲートリセス30の作製により表面層13自体が薄くなると、表面層13からゲート電極17へのいわゆる漏れ電流により増幅機能が損なわれる可能性があるため、絶縁膜16はそれを防ぐ目的で、ゲートリセス30の表面層13に近い部分(底部及び内側側面部)に形成される(図1参照)。また、実施形態に係るHEMT100では、本発明に係る光電気化学反応により作製されたゲートリセス30に対向する内部層12の領域には、上記二次元電子ガス12Gは存在しない(図1参照)。これは、ゲートリセス30の作製により表面層13が薄くなったことに起因して、内部層12内の二次元電子ガス12Gが消失していることによる。図1に示す場合は、結果として、ゲート電極17に必要な電圧を印加しない状態で、ソース(ソース電極14)とドレイン(ドレイン電極15)との間には、電流の通り道となる二次元電子ガス12Gが連続して存在しないことになる。これにより、上記ノーマリオフ型(即ち上記閾値電圧>0ボルト)のHEMT100が実現できる。
ここで、上述したようにHEMT100としての閾値電圧の精密な制御やその安定動作の実現のためには、図1に示すゲート長L、ゲート直下の表面層13の厚さt及びゲートリセス30の内側表面等をより精密且つ欠陥なく平滑に作製する必要がある。そこで本発明では、従来の光電気化学反応を用いたエッチング方法を改善することにより、この課題を解決する。
次に、本発明に係る光電気化学反応を用いたゲートリセス30の作製について、具体的に図2乃至図5を用いて説明する。
上述したように本発明に係る光電気化学反応は、ゲート用のゲートリセス30を、表面層13内に高精度に且つ制御性よく作製するために用いられる。即ち本発明に係るHEMT100の作製工程では、図2(a)に示すように、基板10、バッファ層11及び内部層12並びに表面層13がエピタキシャル成長された素子の表面に、例えば絶縁性のマスクM及び電流引出電極20が作製される。このとき、内部層12内の二次元電子ガス12Gは、表面層13に近い領域全体に分布している。なお以下の説明において、作製途中のHEMT100を「途中素子DV0」乃至「途中素子DV2」と称する。その後、マスクMのゲートに相当する領域が開口された上で(図2(a)参照)、当該開口部に対して本発明に係る光電気化学反応によるエッチングが施され、これによりゲートリセス30が作製された途中素子DV2が作製される(図2(b)参照)。
ここで、本発明に係る光電気化学反応の前提となる電気化学反応について、図2(a)に示す途中素子DV1を例として、図3を用いて一般的に説明する。本発明に係る光電気化学反応においては、従来と同様の電気化学反応において同時に励起光の照射を行い、半導体内のキャリアの生成等を調整する。
具体的に当該電気化学反応では、正孔が存在する半導体をイオンが含まれている電解液に浸しつつ、当該電解液と当該半導体の表面との接触面に外部から電界が印加される。これにより、その接触面で酸化反応を生起させて酸化物を形成し、それを電解液内に溶解させることで、当該半導体の表面をエッチングする。即ち、先ず図3(a)に示すように、正孔Hが存在する表面層13を含む途中素子DV1が、イオンIが含まれている電解液LQに浸される。この電解液LQとしては、例えば硫酸(HSO)と燐酸(HPO)の等量混合液や、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ又は塩酸(HCl)等の酸を水又はグリコール等に溶かした溶液が用いられる。そして、電解液LQに途中素子DV1が浸された状態で図3(b)に示す電界を印加することで、表面層13と電解液LQとの接触面において図3(b)に破線で示すような酸化反応を起こさせる。この酸化反応の結果として、図3(c)に示す酸化物OXが表面層13の表面に形成され、この酸化物OXが図3(d)に示すように電解液LQ内に溶解されることで、元の酸化物OXの分だけ表面層13がエッチングされる。
一方、上記電気化学反応に加えて励起光が用いられる本発明に係る光電気化学反応では、上記励起光の波長及び上記電界に対応する電圧が、所望されるキャリアの生成状態に応じて制御される。ここで、図2(a)に例示する表面層(例えば窒化アルムニウムガリウム層)13と内部層(例えば窒化ガリウム層)12からなるヘテロ構造の半導体に対する上記光電気化学反応によるエッチング方法に関し、本願の発明者ら(以下、単に「本発明者ら」と称する)は、その過程の系統的な調査と最適化を行った。この結果、当該エッチングに寄与するキャリアの供給過程には、内部層12からキャリアが供給される「内部層供給過程」と、表面層13からキャリアが供給される「表面層供給過程」と、があることが判明した。これに加えて本発明者らは、これらの過程が、上記励起光の波長及び上記電界に対応する電圧により選択可能であることを明らかにした。更に本発明者らは、内部層供給過程によるキャリアの供給を抑制すると共に、表面層供給過程により供給されるキャリアを促進するような光電気化学反応では、ゲートリセス30としての表面の平坦性及びエッチングの制御性が良好であることも発見した。
より具体的に本発明者らは、上記電気化学反応用の三極式電気化学セルであって、作用電極を図2(a)に例示する途中素子DV1とし、参照電極を飽和銀/塩化銀(飽和Ag/AgCl)電極とし、対向電極を白金(Pt)電極とした電気化学セルを用い、これに励起光を照射して本発明に係る光電気化学反応の特性を検討した。このとき、表面層13及び内部層12の双方においてキャリア(いわゆる光励起キャリア)を発生し得る波長である波長300ナノメートルの上記励起光を照射した。このような波長の励起光は、表面層13及び内部層12それぞれの禁制帯幅より高いエネルギーを有する励起光である。この結果、参照電極に対する電位VECと対向電極から流れる電流の密度JECとの関係(いわゆるヘテロ構造のリニアスイープボルタモグラム)は、図4(a)に例示する特性となった。このとき、スイープ方向は正、スイープ速度は50ミリボルト/秒である。また、参照電極に対する電位VECは上記電界に対応する電圧に相当する。なお以下の説明においては、上記参照電極に対する電位VECを単に「電位VEC」と称し、対向電極から流れる電流の密度JECを単に「電流密度JEC」と称する。図4(a)に示す結果を見ると、波長300ナノメートルの励起光が照射された場合、概ね−0.8ボルトの電位VECを閾値として負の電流密度JEC(即ち還元電流)が観測される一方、概ね−0.5ボルトの電位VECを閾値として正の電流密度JEC(即ち酸化電流)が観測される。更に電位VECが1.0ボルト付近で電流密度JECが飽和する傾向が観測される。
なお本発明者らは、暗中の場合、波長400メートルの励起光を照射した場合、及び表面層13を透過し内部層12に吸収される波長360ナノメートルの照射光を照射した場合のそれぞれについても検討した。この結果、暗中及び波長400ナノメートルの励起光を照射した場合は、表面層13と電解液LQとの界面における電気化学反応は殆ど生起せず、また波長360ナノメートルの励起光を照射した場合は、電位VECが1.0ボルト以下では表面層13と電解液LQとの界面までキャリアが移動されないことを確認している。
ここで一般に、HEMT100の内部層12及び表面層13をそれぞれ上記の材質により作製した場合、内部層12と表面層13との界面における分極効果(より具体的には、ピエゾ分極及び自発分極)により、内部層12及び表面層13には、それぞれ内部電界が発生している。なお、内部層12及び表面層13を後述するヒ化ガリウム系やリン化インジウム系材料で作製した場合、内部層12及び表面層13における上記内部電界は、不純物の変調ドーピング等により発生している。そしてこれらの内部電界(又はその分布)はHEMT100の動作には必要不可欠であり、内部層12と表面層13が積層された段階(例えば、図2(a)に示す途中素子DV1の段階)で、当該内部電界が適切に発生するようにHEMT100自体が設計されている。そして本発明に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法では、上記内部電界を利用しつつ、外部から印加される上記電界に対応する電圧と励起光との調節による上記酸化電流の制御の下で、エッチングを進行させる。ここで、上記内部電界又はその分布が異なれば図4(a)に示す特性が変わるため、当該エッチング方法に最適な上記電界に対応する電圧(図4(a)において「適正範囲」で示される電圧)も異なってくる。
次に、図4(a)に示す結果が得られた理由について、図4(b)に示すエネルギーバンド図を用いて検討する。なお図4(b)は、内部層12及び表面層13を含む途中素子DV2が電解液LQに浸された状態で、電位VECが−0.8ボルト乃至0ボルトの範囲とされている場合の、表面層13、内部層12及び電解液LQそれぞれにおけるエネルギーバンドを示す図であり、伝導体電位E、価電子帯電位E及びフェルミ準位Eが合わせて記載されている。ここで、電位VECにおける上記−0.8ボルト乃至0ボルトの範囲は、図4(a)において「適正範囲」で示される電圧範囲に相当する。また、表面層13と内部層12との界面、及び表面層13と電解液LQとの界面は、それぞれ一点鎖線で示されている。
図4(a)に示す場合において酸化電流(図4(b)において符号「IOX」で示す)が流れたのは、電位VECが1ボルト以下でも表面層13内には図4(b)に示すように強い電界(上記内部電界)が生じており、これにより生成された電子E及び正孔Hが、内部層12内の二次元電子ガス12Gと表面層13/電解液LQ界面へそれぞれ移動され、これらのうちの正孔Hに相当する電流が、酸化電流IOXとして観測されたものと考えられる。ここで、電位VECが1ボルト以下の場合は、図4(b)に示すような高濃度の二次元電子ガス12Gの存在により、内部層12内にはバルク方向の電界が生じている。このバルク方向の電界と、それに対応した表面層13と内部層12との界面における電位障壁の存在と、により、励起光Lの照射で内部層12内に発生した電子E及び正孔Hは、内部層12内で再結合してしまう。よって、励起光Lにより内部層12内で生成された正孔Hが、表面層13との間の電位障壁を越えて表面層13内に移動することはない(図4(b)中×印参照)。従って、内部層12で発生した正孔Hが、電解液LQと表面層13との間の電気化学反応に寄与することは殆どなく、当該電気化学反応には、励起光Lの照射により表面層13内に生成されたキャリア(具体的には正孔H(図3参照))のみが寄与していると考えられる。以上の解析により、図2(a)に示す途中素子DV1における表面層13内に励起光Lの照射により生成された正孔Hのみにより、電解液LQとの間の電気化学反応が進行することで、図3に例示するように、当該表面層13と電解液LQとの界面における当該表面層13のエッチングが進行することが判る。本発明者らによる以上の解析により、途中素子DV1に対する電気化学反応によるエッチングに寄与するキャリアの供給過程である上記内部層供給過程と上記表面層供給過程とが、励起光Lの波長及び電圧VECにより選択可能であり、更に、内部層供給過程によるキャリアの供給を抑制しつつ、表面層供給過程によるキャリアの供給を促進することが可能となることが判る。
次に、本発明者らの研究による、本発明に係る光電気化学反応を用いた表面層13のエッチングにおける制御性について、図5を用いて説明する。なお図5にそれぞれ示す結果は本発明者らの実験により得られた結果である。
先ず図5(a)は、当該制御性としての、表面層13(厚さ25ナノメートル)の表面からのエッチングの深さのエッチング時間tEC(横軸)に対する依存性を示している。なお図5(a)の実験結果は、硫酸と燐酸の等量混合液である電解液LQに途中素子DV1を浸しつつ、波長が300ナノメートルで出力が0.5ミリワット/平方センチメートルの励起光Lを照射し、電圧VECが−0.2ボルト(図4(a)参照)となるようにした実験により得られた。図5(a)に示す実験の結果より、エッチングの開始から所定の深さまではエッチング時間tECに対してエッチングの深さが線形に増加(比例)しているが、当該所定の深さとなった以降は、エッチング時間tECに拘わらずエッチングの深さが飽和していることが判る。図5(a)に例示する場合、当該所定の深さは約17ナノメートルである。この飽和現象は、即ち電気化学反応によるエッチングが「自己停止」していることを意味している。そして、元の表面層13の厚さが25ナノメートルであるため、結果的に、表面層13の途中でエッチングが自己停止したことになる。更に、図5(a)に示すグラフの傾きで表されるエッチング速度は、一分当たり0.12ナノメートルであり、これは、エッチングに必要な時間はある程度長くはなるが、エッチングの深さの制御が容易であることを意味している。
次に図5(b)は、上記制御性としての、エッチングが自己停止する深さ(縦軸)の、励起光Lの強度PIN(横軸)に対する依存性を示している。なお図5(b)の実験結果は、硫酸と燐酸の等量混合液である電解液LQに途中素子DV1を浸しつつ、波長が300ナノメートルの励起光Lをその強度を変えつつ照射し、電圧VECが−0.2ボルト(図4(a)参照)となるようにした実験により得られた。図5(b)に示す実験の結果より、エッチングが自己停止する深さが励起光Lの強度PINに対して線形に増加(比例)していることが判る。以上の図5(b)に示す結果により、表面層13のエッチングの深さ(換言すれば、エッチング後の表面層13の厚さ)が、励起光Lの強度PINにより容易に制御できることが判る。
以上の図1乃至図5を用いて説明した本発明者らによる研究の結果から、本発明に係る光電気化学反応によるエッチングの過程について纏めて説明すると、以下の通りとなる。即ち、窒化アルミニウムガリウムからなる表面層13で励起光Lの照射により励起(光励起)されたキャリアは、表面層13における上記内部電界により分離され、電解液LQと表面層13との界面に到達した正孔H(図4(b)参照)が酸化反応を生起させる。この酸化反応と、その反応の生成物たる酸化物OXの溶解(図3参照)と、が繰り返されることにより、表面層13の上面(表面)からの均一なエッチングが進行する。そして、表面層13が当該エッチングにより薄層化し、その光吸収量(換言すれば、光励起されるキャリアの量)が減少することで、結果としてエッチング反応が抑制される。このとき、二次元電子ガス12Gが空乏しない電圧条件(図4(a)における「適正範囲」参照)を選択することで、窒化ガリウムからなる内部層12で生成されるキャリアの酸化反応への寄与が抑制されることとなり、これらによりエッチングの上記自己停止が発現する。このように表面層供給過程のキャリアのみを寄与させることにより、従来の電気化学反応によるエッチングの課題であった表面平坦性及びエッチングの深さの制御性において良好な結果が得られ、更に上位自己停止の発現により、エッチングの深さのばらつきの抑制にも効果的であることが判明した。これにより、表面層供給過程のキャリアのみを利用した電気化学反応によるエッチングはゲートリセス30の加工技術への適用に非常に適していることが判った。
(II)本発明の実施形態
次に、上述してきた本発明に係る原理に基づく具体的な実施形態について、図6乃至図8を用いて説明する。なお、図6は実施形態に係るHEMTの作製工程を示すフローチャートであり、図7は当該HEMTの作製工程を示す断面図であり、図8は実施形態に係るエッチング装置の概要構成を示す図である。
図6及び図7に示すように、実施形態に係るHEMT100の作製においては、初めに、図7(a)に示す断面構造を有するエピタキシャル基板である途中素子DV0が、例えば既存のエピタキシャル成長法等により作製される(図6ステップS1)。このとき途中素子DV0では、基板10上に、バッファ層11を介して内部層12及び表面層13がエピタキシャル成長されており、内部層12の表面層13に近い領域には、二次元電子ガス12Gが存在している。
次に、途中素子DV0の表面にマスクMが例えば蒸着法等により作製されると共に、電流引出電極20が作製され、更に、マスクMのゲートに相当する部分が例えばドライエッチング法等により開口されて、図7(b)及び図2(a)に示す途中素子DV1が作製される(図6ステップS2)。
その後、本発明に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法によりゲートリセス30が作製され、図7(c)及び図2(b)に示す途中素子DV2が作製される(図6ステップS3)。このとき、当該ゲートリセス30が形成された後の内部層12では、上述したように、当該ゲートリセス30に対向する領域の二次元電子ガス12Gが消失している。
その後、途中素子DV2に対して上記ゲート電極17、上記絶縁膜16、上記アイソレーション領域21及び上記アイソレーション領域22並びに上記ソース電極14及び上記ドレイン電極15が作製されて(図6ステップS4)、図7(d)及び図1に示す実施形態に係るHEMT100が作製される。
次に、図6ステップS3の実施形態に係るエッチング方法に用いられるエッチング装置について、図8を用いてその概要を説明する。
図8に示すように、実施形態に係るエッチング装置Sでは、容器C内に満たされた電解液LQに、上記作用電極たる途中素子DV1と、上記参照電極3と、上記対向電極1と、が浸されている。このとき、途中素子DV1はホルダHDに保持されている。このホルダHDが本発明に係る「保持手段」の一例に相当する。また途中素子DV1では、マスクMのゲートに相当する領域が開口されて表面層13が露出しており、更に電流引出電極20も作製されている。そして、当該電流引出電極20と参照電極3との間に電圧計が接続され、更に電流引出電極20と対向電極1との間に、電流計を介して可変電圧源2が接続されている。この可変電圧源2が本発明に係る「印加手段」の一例に相当する。この構成により、上記適正範囲(図4(a)参照)の電位VECが電流引出電極20に印加されつつ、所望されるエッチングの自己停止深さ(図5参照)に対応した強度PINで且つ波長300ナノメートルの励起光Lが、途中素子DV1におけるマスクMの開口部を中心として外部から照射される。これにより、所望の電流密度JECを有する酸化電流IOX(図4(b)参照)が途中素子DV1の表面層13内に流れ、本発明に係る光電気化学反応が進行する。なお上記励起光Lの照射は、表面層13内でエッチングの進行が自己停止する時間以上行われる。この励起光Lについては、例えば図示しないキセノンランプからの出射光から波長300ナノメートルの励起光Lをバンドパスフィルタにより抽出して照射するのが好ましい。このキセノンランプ及びバンドパスフィルタが、本発明に係る「照射手段」の一例に相当する。
次に、実施形態に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法を含む作製工程により作製されたHEMT100におけるゲートリセス30の平坦性等を、図9を用いて具体的に説明する。なお図9は、実施形態に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法によるHEMT100の作製結果により当該光電気化学反応の効果を示す図である。ここで図9に示す実験結果は、真性窒化ガリウムからなる内部層12と、真性窒化アルムニウムガリウムからなる表面層13と、を備える途中素子DV0を用いて、実施形態に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法によりゲートリセス30を形成した場合における、その表面の平坦性を示す実験結果である。このとき当該実験の諸元は、励起光Lの波長:300ナノメートル、励起光Lの強度PIN:1.0ミリワット/平方センチメートル、電位VEC:−0.2ボルト、エッチング時間:5,000秒、である。
先ず図9(a)は、実施形態に係る光電気化学反応を用いたエッチング方法により形成されたゲートリセス30のAFM像であり、図9(b)は当該ゲートリセス30の断面プロファイル図である。そして図9(a)及び図9(b)から明らかなように、エッチングされたゲートリセス30の底部とマスクMとの間に約20ナノメートルの深さの段差が見られ、更にゲートリセス30の底部の面における高さの二乗平均平方根(RMS(Root Mean Square))の五点平均は0.41ナノメートルであり、ゲートリセス30の表面の平坦性としては良好な値となっている。
次に、当該ゲートリセス30の平面SEM像及びその拡大図を図9(c)に示すように、ゲートリセス30の底部には目立った孔や凹凸は見られない。更に当該ゲートリセス30の断面SEM像及びその拡大図を示す図9(d)では、図9(a)及び図9(b)に示すAFM像と同等の約20ナノメートルの段差が確認でき、ゲートリセス30の底部において目立った凹凸は見られない。以上の図9に示す実験結果により、実施形態に係る光電気化学反応において表面層供給過程により供給されるキャリアを利用する電気化学反応下では、ゲートリセス30として望ましい均一なエッチングが実現されることが判る。
以上それぞれ説明したように、実施形態に係るエッチング方法によれば、表面層13におけるエッチング対象の領域が電解液LQ内に浸されるように途中素子DV1を保持した状態で、表面層13の禁制帯幅より高いエネルギーを有し且つ表面層13のエッチングの深さに対応した強度PINの励起光Lを照射すると共に、i)電解液LQに接する表面層13の面に向けて当該表面層13内にある正孔Hを移動させるための当該表面層13の内部電界(又はその分布)に対応し、ii)内部層12内にある正孔Hの表面層13側に向けた移動を制限するための当該内部層12の内部電界(又はその分布)に対応し、且つiii)表面層13内に(陽極)酸化電流を流すための電位VECを、励起光Lの照射と並行して途中素子DV1に印加する。よって結果的に、光電気化学反応による表面層13のエッチングが、励起光Lの強度に対応したエッチングの深さで自己停止するので(図5(a)参照)、エッチングされた表面層13の領域の損傷性及び平坦性並びにエッチングにおける深さ制御性を向上させることができる。
また、励起光Lの照射において、表面層13のエッチングの深さに比例した強度PINの励起光L(図5(b)参照)を途中素子DV1に照射するので、エッチングにおける深さ制御性をより向上させることができる。
更に、励起光Lの照射において、表面層13内でエッチングの進行が自己停止する時間以上に励起光Lを照射するので、当該励起光Lの強度PINにより予定される深さまで確実に表面層13をエッチングすることができる。
更にまた、エッチングされる表面層13の材質を窒化アルミニウムガリウムとし、内部層12の材質を窒化ガリウムとする場合には、例えば窒化アルムニウムガリウムからなる表面層13と窒化ガリウムからなる内部層12が積層されたヘテロ構造の半導体により例えばHEMT100を作製する場合において、その閾値電圧(動作電圧)の制御性及び動作の安定性を向上させることができる。
なお上述した実施形態では、表面層13の材質が窒化アルムニウムガリウムであり、内部層12の材質が窒化ガリウムであるヘテロ構造半導体のエッチング方法に対して本発明を適用したが、これ以外に、本発明は種々のヘテロ構造半導体のエッチング方法に対して適用可能である。
より具体的に、先ず窒化ガリウム系材料としては、表面層/内部層として、窒化インジウムアルミニウム(InAlN)/窒化ガリウム(GaN)又は窒化アルミニウム(AlN)/窒化ガリウム(GaN)からなるヘテロ構造半導体のエッチング方法に本発明を適用することが可能である。またヒ化ガリウム系材料としては、表面層/内部層として、ヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)/ヒ化ガリウム(GaAs)からなるヘテロ構造半導体のエッチング方法に本発明を適用することが可能である。更にリン化インジウム系材料としては、表面層/内部層として、ヒ化インジウムアルミニウム(InAlAs)/ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)からなるヘテロ構造半導体のエッチング方法に本発明を適用することが可能である。
以上それぞれ説明したように、本発明は半導体素子を作製する際のエッチング方法の分野に利用することが可能であり、ヘテロ構造を有する半導体素子を作製する際のエッチング方法の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
1 対向電極
2 可変電圧源
3 参照電極
10 基板
11 バッファ層
12 内部層
12G 二次元電子ガス
13 表面層
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 絶縁膜
20 電流引出電極
21、22 アイソレーション領域
30 ゲートリセス
100 HEMT
M マスク
I イオン
S エッチング装置
C 容器
H 正孔
LQ 電解液
HD ホルダ
DV0、DV1、DV2 途中素子
OX 酸化物
OX 酸化電流

Claims (5)

  1. 表面層と、当該表面層の禁制帯幅よりも狭い禁制帯幅の内部層と、により構成されるヘテロ構造の半導体であって、当該表面層と当該内部層との界面において伝導体の下端エネルギーが不連続である半導体の当該表面層を、電解液を用いた光電気化学反応によりエッチングするエッチング方法において、
    前記表面層におけるエッチング対象の領域が前記電解液内に浸されるように前記半導体を保持した状態で、
    前記表面層の前記禁制帯幅より高いエネルギーを有する励起光であって、当該表面層のエッチングの深さに対応した強度の励起光を、前記保持されている半導体に照射する照射工程と、
    i)前記電解液に接する前記表面層の面に向けて当該表面層内にある正孔を移動させるための当該表面層の内部電界に対応し、ii)前記内部層内にある正孔の前記表面層側に向けた移動を制限するための当該内部層の内部電界に対応し、且つiii)前記表面層内に酸化電流を流すための電圧を、前記励起光の照射と並行して前記半導体に印加する印加工程と、
    を含むことを特徴とするエッチング方法。
  2. 請求項1に記載のエッチング方法において、
    前記照射工程においては、前記表面層のエッチングの深さに比例した強度の前記励起光を前記半導体に照射することを特徴とするエッチング方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法において、
    前記照射工程においては、前記表面層内で前記エッチングの進行が停止する時間以上に前記励起光を照射することを特徴とするエッチング方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法において、
    前記表面層の材質が窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)であり、前記内部層の材質が窒化ガリウム(GaN)であることを特徴とするエッチング方法。
  5. 表面層と、当該表面層の禁制帯幅よりも狭い禁制帯幅の内部層と、により構成されるヘテロ構造の半導体であって、当該表面層と当該内部層との界面において伝導体の下端エネルギーが不連続である半導体の当該表面層を、電解液を用いた光電気化学反応によりエッチングするエッチング装置において、
    前記表面層におけるエッチング対象の領域が前記電解液内に浸されるように前記半導体を保持する保持手段と、
    前記表面層の前記禁制帯幅より高いエネルギーを有する励起光であって、当該表面層のエッチングの深さに対応した強度の励起光を、前記保持されている半導体に照射する照射手段と、
    i)前記電解液に接する前記表面層の面に向けて当該表面層内にある正孔を移動させるための当該表面層の内部電界に対応し、ii)前記内部層内にある正孔の前記表面層側に向けた移動を制限するための当該内部層の内部電界に対応し、且つiii)前記表面層内に酸化電流を流すための電圧を、前記励起光の照射と並行して前記半導体に印加する印加手段と、
    を備えることを特徴とするエッチング装置。
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