JP2018193814A - 鋼管矢板の施工方法および改良方法 - Google Patents

鋼管矢板の施工方法および改良方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼管矢板の先端部分(下端部分)が矢板壁の施工方向から逸脱しないようにする施工技術を提供する。【解決手段】鋼管にスリット12を形成した継手11を鋼管本体10の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板1’を、順次隣接させて継手同士を係合させながら地盤に貫入していく施工方法であって、一方の継手11に形成されたスリット12と他方の継手11に形成されたスリット12とが、矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板1’a、1’bを、交互に反転させて施工する。鋼管矢板1’の先端部分(下端部分)が矢板壁の施工方向(矢印X)から逸脱しようとする方向を適宜反転させることができるため、逸脱距離が積算されることを回避でき、矢板壁の傾斜を小さく抑えることができる。【選択図】図6

Description

本発明は、P−P型の鋼管矢板の施工方法および改良方法に関する。
鋼管矢板は、外径や板厚などの選択肢が広く、また、矢板壁の施工方向が折れ線や曲線であっても、継手の取り付け位置を変えることで対応でき設計性に優れ、さらに、大径の鋼管矢板を使用することにより、鋼矢板では得られない大きな支持力と曲げ剛性が得られるといった利点がある。鋼管矢板としては、継手形状の相違により、L−T型、P−P型、P−T型があるが、その中でも特にP−P型の鋼管矢板は、継手接合部にモルタル等を装填することによって、優れた止水性も確保できるといった利点があり、例えば止水壁、橋脚の基礎などで広く利用されている。
かかる鋼管矢板を地盤に貫入していく施工方法としては、打撃工法、バイブロハンマ工法、三点式の中堀工法、圧入工法などが知られている。その中でも圧入工法(オーガー併用圧入工法、ウォータージェット併用圧入工法、単独圧入工法)は、騒音や振動の問題が無く、市街地での施工も可能であるといった利点があり、港湾、河川、道路擁壁、耐震補強等の工事において数々の施工実績を残している。さらに、圧入工法は設備が小さくて済み、狭小な施工ヤードでも利用でき機動性に優れ、様々な地盤条件に適用できるといった特徴がある。
P−P型の鋼管矢板を用いて矢板壁を施工する場合、上記したような種々の工法によって、例えば特許文献1に示されるように、既設の鋼管矢板の継手に、これから地盤に施工する鋼管矢板の継手を貫入させて継手同士を係合させ、既設の鋼管矢板に新しい鋼管矢板を順次隣接させて地盤に貫入していく。
特開昭62−37412号公報
図1に示すように、P−P型の鋼管矢板1は、鋼管本体10の周面に一対の継手11を溶接して取り付けた構成である。なお、直線状に配置される矢板壁の施工には、一対の継手11の取り付け位置が、鋼管本体10の中心Oに対して互いに180°(直径方向)である鋼管矢板1が用いられる。継手11は、鋼管本体10よりも小径の鋼管からなり、継手11にはスリット12が形成されている。そして、図2に示すように、これから地盤に施工する鋼管矢板1bを既設の鋼管矢板1aに隣接させて配置し、互いのスリット12を利用して、既設の鋼管矢板1aの継手11にこれから地盤に施工する鋼管矢板1bの継手11の一部を上から貫入させることにより、互いの継手11同士を係合させて、これから地盤に施工する新しい鋼管矢板1bを地盤に貫入していく。
このように、既設の鋼管矢板1aに隣接させて順次新しい鋼管矢板1bを地盤に貫入していく場合、既に貫入が完了している既設の鋼管矢板1aの継手11の内部は土砂が詰まった状態であり、特に地盤が砂質土の場合には、既設の鋼管矢板1aの継手11の内部はすでに土砂が圧縮されて締まった状態となっている。その状態で次に施工する鋼管矢板1bの継手11を上から貫入させていくと深度が高まるにつれ更に圧縮が進み、ついには極限状態となってくる。そして、この状態で貫入を継続すると、新しく貫入される鋼管矢板1bの継手11の先端部分(下端部分)は、図2中の矢印Yで示したように、スリット12から外側(図2中の下側)の方向に押し出される格好となり、鋼管矢板1bの先端部分(下端部分)は、矢板壁の施工方向から逸脱してしまう。これにより、鋼管矢板1bの基端部分(上端部分)と先端部分(下端部分)では距離の差が発生し、鋼管矢板1bは傾斜する格好となる。
ここで、図1に示すように、従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1は、継手11に形成されたスリット12同士の位置関係が、互いに逆向きの関係となっている。すなわち、図1において、仮に図中の右方向の矢印Xを前方(矢板壁の施工方向)とすれば、一対の継手11、11におけるスリット12が、後方の継手11では、スリット12は左側(図1中の上側)に向いた位置にあり、前方の継手11では、スリット12は右側(図1中の下側)に向いた位置にあり、後方の継手11と前方の継手11とでは、スリット12の向く方向が互いに逆向きの関係となっている。
このため、複数本の鋼管矢板1を順次隣接させて継手12同士を係合させながら地盤に貫入して矢板壁を構築していく場合、鋼管矢板1を地盤に貫入する度に鋼管矢板1の先端部分(下端部分)が矢板壁の施工方向から徐々に逸脱して行って傾斜が次第に大きくなり、ついには施工作業が継続できない状態に陥る恐れがある。例えば図3に示すように、四本の鋼管矢板1a、1b、1c、1dを順次隣接させて貫入していく場合に基づいて説明すると、図3中の一番左にある鋼管矢板1aに隣接して貫入された二番目の鋼管矢板1bの先端部分(下端部分)は、矢板壁の施工方向(矢印X)から右側に矢印Yの距離逸脱する。また、二番目の鋼管矢板1bに隣接して貫入された三番目の鋼管矢板1cの先端部分(下端部分)は、二番目の鋼管矢板1bの先端部分(下端部分)からさらに右側に矢印Yの距離逸脱するので、矢板壁の施工方向(矢印X)から右側に矢印Yの2倍の距離逸脱する。同様に、四番目の鋼管矢板1dの先端部分(下端部分)は、矢板壁の施工方向(矢印X)から右側に矢印Yの3倍の距離逸脱する。このように、鋼管矢板1を地盤に貫入する度に鋼管矢板1の先端部分(下端部分)の逸脱距離が積算されて傾斜が次第に大きくなってしまうこととなる。
したがって、本発明の目的は、鋼管矢板の先端部分(下端部分)が矢板壁の施工方向から逸脱しないようにする施工技術を提供し、併せて、その方法に使用する鋼管矢板の改良方法を提供することにある。
以上の課題を解決するため、本発明によれば、鋼管にスリットを形成した継手を鋼管本体の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板を、順次隣接させて継手同士を係合させながら地盤に貫入していく施工方法であって、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板を、交互に反転させて施工することを特徴とする、鋼管矢板の施工方法が提供される。
また本発明によれば、鋼管にスリットを形成した継手を鋼管本体の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板を、順次隣接させて継手同士を係合させながら地盤に貫入していく施工方法であって、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右それぞれ反対の側に向いている鋼管矢板を施工するにあたり、間に、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右それぞれ同じ側に向いている鋼管矢板を施工する工程をいれることを特徴とする、鋼管矢板の施工方法が提供される。
また本発明によれば、鋼管にスリットを形成した継手を鋼管本体の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板であって、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右それぞれ反対の側に向いている鋼管矢板を改良する方法であって、一方の継手もしくは他方の継手のいずれか一方において、既に形成されているスリットを塞ぎ、当該塞いだスリットの左右対称位置に新たなスリットを形成することにより、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板とすることを特徴とする、鋼管矢板の改良方法が提供される。
本発明の施工方法によれば、一対の継手におけるスリットが矢板壁の施工方向に対して同じ側に向いている鋼管矢板を用いることにより、鋼管矢板の先端部分(下端部分)が矢板壁の施工方向から逸脱しようとする方向を適宜反転させることができる。このため、逸脱距離が積算されることを回避でき、矢板壁の傾斜を小さく抑えることができる。また、本発明の改良方法によれば、一般的なP−P型の鋼管矢板を、本発明の施工方法に使用する鋼管矢板に容易に改良することができる。
従来の一般的なP−P型の鋼管矢板の平面図である。 鋼管矢板の継手同士を係合させて地盤に貫入していく状態の説明図である。 複数本の鋼管矢板を継手同士を係合させながら順次隣接させて地盤に貫入して矢板壁を構築していく場合の、従来技術における問題点の説明図である。 鋼管矢板の貫入に用いられる圧入機の説明図である。 本発明の施工方法に用いられる、前方の継手に形成されたスリットと後方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いているP−P型の鋼管矢板の平面図である。 スリットが左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板を、交互に反転させて貫入していく本発明の実施の形態に係る施工方法の説明図である。 スリットが左右それぞれ反対の側に向いている鋼管矢板を貫入するにあたり、間に、スリットが左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板を貫入する工程をいれる本発明の実施の形態に係る施工方法の説明図である。 鋼管矢板を円周上に並べて施工した矢板壁の平面図である。 図8の矢板壁の施工に用いられる鋼管矢板の平面図である。 図8の矢板壁の施工に用いられる鋼管矢板の平面図である。 本発明の実施の形態に係る鋼管矢板の改良方法の説明図であり、(a)は一般的なP−P型の鋼管矢板の平面図、(b)は一方の継手に形成されているスリットを塞いだ状態の鋼管矢板の平面図、(c)は当該塞いだスリットの左右対称位置に新たなスリットを形成した状態の鋼管矢板の平面図である。
以下、図面を参照にして、本発明の実施の形態に係る施工方法を説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
鋼管矢板1の貫入には、例えば図4に示すような杭圧入機20が用いられる。そこで先ず、杭圧入機20について簡単に説明する。
杭圧入機20は、ベース部分となるサドル21の下面に、複数のクランプ22が装着されている。クランプ22は、図示しない油圧シリンダの駆動により既設の鋼管矢板1aの頭部を掴んで杭圧入機20を固定し、杭圧入時の反力をとる機能を有している。図4に示した状態では、既設の鋼管矢板1aの頭部を3つのクランプ22で把持している。
ここで、本明細書において、前方とは杭圧入機20によって鋼管矢板1(既設の鋼管矢板1a、および、これから地盤に圧入する鋼管矢板1b)を順次施工していく進行方向(矢印Xで示す)であり、後方とは前方と反対の方向であり、図1〜7において、紙面右側が前方であり、紙面左側が後方である。左右方向は、前方に向いた状態で決められ、図1〜3、図5〜7において、紙面上側が左側であり、紙面下側が右側である。
サドル21の上面には、油圧シリンダ(図示せず)によって前後方向に移動可能なスライドフレーム23が設けられており、このスライドフレーム23上にリーダーマスト24が設けられている。リーダーマスト24の前方には、チャックフレーム25とチャック26が配置されている。サドル21の上面においてスライドフレーム23が前後方向に移動することによって、リーダーマスト24とチャックフレーム25とチャック26は一体的に前後方向に移動し、さらにメインシリンダ27の作動によってチャックフレーム25とチャック26は昇降する。
チャック26は、これから地盤に圧入する鋼管矢板1bを把持するための、複数のチャック爪(図示せず)を有している。チャック爪は可動爪でありシリンダ等で駆動されて、チャック26に挿通した鋼管矢板1bに対して接近、離隔自在な構成となっている。
かかる杭圧入機20にあっては、サドル21のクランプ22によって、既設の鋼管矢板1aの上部を把持し、これによってサドル21を既設の鋼管矢板1aに固定する。その状態でチャック26によって、これから地盤に圧入する鋼管矢板1bを把持する。次いでメインシリンダ27を作動させてチャックフレーム25、チャック26を下降させる。これによって既設の鋼管矢板1aで反力をとりながら、鋼管矢板1bは地盤に圧入される。
また、このように既設の鋼管矢板1aで反力をとりながら新しい鋼管矢板1bを地盤に圧入する場合、前方先端に位置する既設の鋼管矢板1aの前方の継手11に新しい鋼管矢板1bの後方の継手11の一部を上から貫入させ、互いの継手11同士を係合させる。こうして、継手11同士を係合させながら、新しい鋼管矢板1bを既設の鋼管矢板1aの前方に順次隣接させて施工していくことにより、矢印Xの方向に矢板壁が構築されていく。
ここで、本発明の施工方法で用いられる鋼管矢板1’について説明する。先に図1に示した従来一般に用いらている鋼管矢板1と同様に、本発明の施工方法で用いられる鋼管矢板1’も、鋼管本体10の周面に一対の継手11を溶接して取り付けた構成である。なお、直線状に配置される矢板壁の施工には、一対の継手11の取り付け位置が、鋼管本体10の中心Oに対して互いに180°(直径方向)である鋼管矢板1’が用いられる。継手11は、鋼管本体10よりも小径の鋼管からなり、継手11にはスリット12が形成されている。但し、図5に示すように、本発明の施工方法で用いられる鋼管矢板1’は、一対の継手11にそれぞれ設けられるスリット12の位置が、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いて配置されている。すなわち、図5において、図中の右方向の矢印Xを前方(矢板壁の施工方向)とすれば、鋼管本体10の周面に取り付けられた一対の継手11、11において、後方の継手11のスリット12と前方の継手11のスリット12がいずれも右側(図5中の下側)を向いて配置されており、後方の継手11と前方の継手11では、スリット12が矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向くようになっている。
なお、図5では、一対の継手11、11において、各スリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも右側(図5中の下側)に向いている状態を示しているが、この鋼管矢板1’は、上下を反転させれば、一対の継手11、11におけるそれぞれのスリット12は、矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも左側(図5中の上側)に向いた状態となる。したがって、この鋼管矢板1’は、上下を適宜反転させることによって、一対の継手11、11におけるそれぞれのスリット12が、矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも右側(図5中の下側)に向いた状態といずれも左側(図5中の上側)に向いた状態とに使い分けることができる。
次に、かかる鋼管矢板1’を用いた本発明の施工方法について説明する。図6に示す実施の形態にかかる施工方法では、各スリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して互いに同じ側に向いている鋼管矢板1’のみを用い、鋼管矢板1’を交互に反転させた姿勢にして矢板壁を構築していく。すなわち、例えば図6に示すように、四本の鋼管矢板1’a、1’b、1’c、1’dを順次隣接させて施工する場合に基づいて説明すると、この実施の形態では、図6中の一番左にある鋼管矢板1’aは、各スリット12を矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも右側(図6中の下側)に向けた状態で圧入施工する。
次に、この一番左にある鋼管矢板1’aに隣接して圧入施工される二番目の鋼管矢板1’bは、各スリット12を矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも左側(図6中の上側)に向けた状態とする。そして、一番左にある鋼管矢板1’aの前方の継手11に、二番目の鋼管矢板1’bの後方の継手11の一部を上から貫入させ、互いの継手11同士を係合させる。こうして、一番目の鋼管矢板1’aの前方の継手11と二番目の鋼管矢板1’bの後方の継手11を係合させながら、二番目の鋼管矢板1’bを一番目の鋼管矢板1’aの前方に隣接させて圧入施工する。
このように二番目の鋼管矢板1’bを一番目の鋼管矢板1’aの前方に隣接させて圧入施工する場合、既に施工が完了している一番目の鋼管矢板1’aの継手11の内部は土砂が圧縮されて締まった状態となっている。そのため、二番目の鋼管矢板1’bの後方の継手11を一番目の鋼管矢板1’aの前方の継手11に上から貫入させていくと深度が高まるにつれ更に圧縮が進み、二番目の鋼管矢板1’bの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、図6中の矢印Yで示したように、スリット12から外側に押し出される格好となる。この場合、一番目の鋼管矢板1’aの継手11に設けられたスリット12は矢板壁の施工方向(矢印X)に対して右側(図6中の下側)に向いているので、二番目の鋼管矢板1’bの先端部分(下端部分)は、右側(図6中の下側)の方向に押し出される格好となる。
次に、二番目の鋼管矢板1’bに隣接して圧入施工される三番目の鋼管矢板1’cは、各スリット12を矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも右側(図6中の下側)に向けた状態とする。そして、二番目の鋼管矢板1’bの前方の継手11に、三番目の鋼管矢板1’cの後方の継手11の一部を上から貫入させ、互いの継手11同士を係合させる。こうして、二番目の鋼管矢板1’bの前方の継手11と三番目の鋼管矢板1’cの後方の継手11を係合させながら、三番目の鋼管矢板1’cを二番目の鋼管矢板1’bの前方に隣接させて圧入施工する。
このように三番目の鋼管矢板1’cを二番目の鋼管矢板1’bの前方に隣接させて圧入施工する場合も、既に施工が完了している二番目の鋼管矢板1’bの継手11の内部は土砂が圧縮されて締まった状態となっている。そのため、三番目の鋼管矢板1’cの後方の継手11を二番目の鋼管矢板1’bの前方の継手11に上から貫入させていくと深度が高まるにつれ更に圧縮が進み、三番目の鋼管矢板1’cの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、図6中の矢印Yで示したように、スリット12から外側に押し出される格好となる。この場合、二番目の鋼管矢板1’bの継手11に設けられたスリット12は矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左側(図6中の上側)に向いているので、三番目の鋼管矢板1’cの先端部分(下端部分)は、左側(図6中の上側)の方向に押し出される格好となる。
次に、三番目の鋼管矢板1’cに隣接して圧入施工される四番目の鋼管矢板1’dは、各スリット12を矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも左側(図6中の上側)に向けた状態とする。そして、三番目の鋼管矢板1’cの前方の継手11に、四番目の鋼管矢板1’dの後方の継手11の一部を上から貫入させ、互いの継手11同士を係合させる。こうして、三番目の鋼管矢板1’cの前方の継手11と四番目の鋼管矢板1’dの後方の継手11を係合させながら、四番目の鋼管矢板1’dを三番目の鋼管矢板1’cの前方に隣接させて圧入施工する。
このように四番目の鋼管矢板1’dを三番目の鋼管矢板1’cの前方に隣接させて圧入施工する場合も、既に施工が完了している三番目の鋼管矢板1’cの継手11の内部は土砂が圧縮されて締まった状態となっている。そのため、四番目の鋼管矢板1’dの後方の継手11を三番目の鋼管矢板1’cの前方の継手11に上から貫入させていくと深度が高まるにつれ更に圧縮が増加し、四番目の鋼管矢板1’dの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、図6中の矢印Yで示したように、スリット12から外側に押し出される格好となる。この場合、三番目の鋼管矢板1’cの継手11に設けられたスリット12は矢板壁の施工方向(矢印X)に対して右側(図6中の下側)に向いているので、四番目の鋼管矢板1’dの先端部分(下端部分)は、右側(図6中の上側)の方向に押し出される格好となる。
以後同様にして、スリット12を矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左側(図6中の上側)に向けた状態の鋼管矢板1’と、スリット12を矢板壁の施工方向(矢印X)に対して右側(図6中の下側)に向けた状態の鋼管矢板1’とを交互に圧入施工していく。
かかる施工方法によれば、スリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して互いに同じ側に向いている鋼管矢板1’を交互に反転させた姿勢にして施工しているため、次々と圧入施工されていく鋼管矢板1’の先端部分(下端部分)は、左側(図6中の上側)の方向と右側(図6中の下側)の方向に交互に押し出される格好となる。このため、次々と圧入施工されていく鋼管矢板1’同士の間で先端部分(下端部分)の逸脱が相殺され、傾斜が一方の方向に積算されて大きくなってしまうことが回避される。その結果、複数の鋼管矢板1’を矢板壁の施工方向(矢印X)に沿って正しく配列して精度の高い施工ができるようになる。
次に、図5に示したように一対の継手11、11におけるスリット12が、矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板1’と、図1に示したように一対の継手11、11におけるスリット12が、矢板壁の施工方向(矢印X)に対して互いに反対の側に向いている従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1とを一緒に用いた本発明の施工方法について、図7を参照にして説明する。図7に示す実施の形態にかかる施工方法では、スリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して互いに反対の側に向いている従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1を2本圧入施工する毎に、スリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板1’を間に1本圧入施工して、鋼管矢板1の先端部分(下端部分)が矢板壁の施工方向から大きく逸脱してしまうことを回避する。
すなわち、図7では、先ず、一番左にある従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1aが圧入施工され、この一番目の鋼管矢板1aの先端部分(下端部分)が、矢板壁の施工方向(矢印X)から右側に矢印Yの距離逸脱した状態を示している。この一番目の鋼管矢板1aは、前方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して右側に向いており、後方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して左側に向いている。
そして、この一番目の鋼管矢板1aに隣接して、二番目の鋼管矢板1b(二番目の鋼管矢板1bも従来の一般的なP−P型の鋼管矢板である。)を圧入施工する。なお、この二番目の鋼管矢板1aも、前方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して右側に向いており、後方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して左側に向いている。かかる二番目の鋼管矢板1bを圧入施工すると、二番目の鋼管矢板1bの先端部分(下端部分)は、一番目の鋼管矢板1aの先端部分(下端部分)からさらに右側に矢印Yの距離逸脱するので、矢板壁の施工方向(矢印X)から右側に矢印Yの2倍の距離逸脱することとなる。
そこで次に、図5に示したようにスリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して同じ側に向いている鋼管矢板1a’を圧入施工する。この場合、前方の継手11におけるスリット12と後方の継手11におけるスリット12がいずれも施工方向(矢印X)に対して左側に向いた状態とする。その結果、施工された鋼管矢板1a’は、前方の継手11におけるスリット12が施工方向(矢印X)に対して左側に向いた状態となる。
次に、こうして施工した鋼管矢板1a’に隣接して、三番目の鋼管矢板1c(三番目の鋼管矢板1cも従来の一般的なP−P型の鋼管矢板である。)を圧入施工する。この場合、三番目の鋼管矢板1cは、前方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して左側に向け、後方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して右側に向けた姿勢にする。そして、既に施工した鋼管矢板1a’の前方の継手11に、三番目の鋼管矢板1cの後方の継手11の一部を上から貫入させ、互いの継手11同士を係合させる。こうして、継手11同士を係合させながら、三番目の鋼管矢板1cを鋼管矢板1a’の前方に隣接させて圧入施工する。
なお、図1では、後方の継手11ではスリット12は左側(図1中の上側)に向き、前方の継手11ではスリット12は右側(図1中の下側)に向いた状態を示したが、この鋼管矢板1は、上下を反転させれば、後方の継手11ではスリット12は右側(図1中の下側)に向き、前方の継手11ではスリット12は左側(図1中の上側)に向いた状態となる。したがって、この鋼管矢板11は、上下を反転させることによって、後方の継手11のスリット12の向く方向と、前方の継手11のスリット12の向く方向を適宜変更することができる。
このように三番目の鋼管矢板1cを鋼管矢板1a’の前方に隣接させて圧入施工する場合、既に施工が完了している鋼管矢板1a’の継手11の内部は土砂が圧縮されて締まった状態となっている。そのため、三番目の鋼管矢板1cの後方の継手11を鋼管矢板1’aの前方の継手11に上から貫入させていくと深度が高まるにつれ更に圧縮が進み、三番目の鋼管矢板1cの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、図7中の矢印Yで示したように、スリット12から外側に押し出される格好となる。この場合、鋼管矢板1a’の前方の継手11に設けられたスリット12は矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左側(図7中の上側)に向いているので、三番目の鋼管矢板1cの先端部分(下端部分)は、左側(図7中の上側)の方向に押し出される格好となる。
そして、この三番目の鋼管矢板1cに隣接して、四番目の鋼管矢板1d(四番目の鋼管矢板1dも従来の一般的なP−P型の鋼管矢板である。)を圧入施工する。なお、この四番目の鋼管矢板1dも、三番目の鋼管矢板1cと同様に、前方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して左側に向け、後方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して右側に向けた姿勢にする。かかる四番目の鋼管矢板1dを施工すると、四番目の鋼管矢板1dの先端部分(下端部分)は、三番目の鋼管矢板1cの先端部分(下端部分)からさらに左側に矢印Yの距離逸脱するので、矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左側に矢印Yの2倍の距離押し出されることとなる。
そこで次に、図5に示したようにスリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して同じ側に向いている鋼管矢板1b’を圧入施工する。この場合、前方の継手11におけるスリット12と後方の継手11におけるスリット12がいずれも施工方向(矢印X)に対して右側に向いた状態とする。その結果、施工された鋼管矢板1b’は、前方の継手11におけるスリット12が施工方向(矢印X)に対して右側に向いた状態となる。
次に、こうして施工した鋼管矢板1b’に隣接して、五番目の鋼管矢板1e五番目の鋼管矢板1eも従来の一般的なP−P型の鋼管矢板である。)を圧入施工する。この場合、五番目の鋼管矢板1eは、前方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して右側に向け、後方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して左側に向けた姿勢にする。そして、既に施工した鋼管矢板1b’の前方の継手11に、五番目の鋼管矢板1eの後方の継手11の一部を上から貫入させ、互いの継手11同士を係合させる。こうして、継手11同士を係合させながら、五番目の鋼管矢板1eを鋼管矢板1b’の前方に隣接させて圧入施工する。
このように五番目の鋼管矢板1eを鋼管矢板1b’の前方に隣接させて施工する場合、既に施工が完了している鋼管矢板1b’の継手11の内部は土砂が圧縮されて締まった状態となっている。そのため、五番目の鋼管矢板1eの後方の継手11を鋼管矢板1’bの前方の継手11に上から貫入させていくと深度が高まるにつれ更に圧縮が進み、五番目の鋼管矢板1eの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、図7中の矢印Yで示したように、スリット12から外側に押し出される格好となる。この場合、鋼管矢板1b’の前方の継手11に設けられたスリット12は矢板壁の施工方向(矢印X)に対して右側(図7中の下側)に向いているので、五番目の鋼管矢板1eの先端部分(下端部分)は、右側(図7中の下側)の方向に押し出される格好となる。
そして、この五番目の鋼管矢板1eに隣接して、六番目の鋼管矢板1f(六番目の鋼管矢板1fも従来の一般的なP−P型の鋼管矢板である。)を圧入施工する。なお、この六番目の鋼管矢板1fも、五番目の鋼管矢板1eと同様に、前方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して右側に向け、後方の継手11におけるスリット12は施工方向(矢印X)に対して左側に向けた姿勢にする。かかる六番目の鋼管矢板1fを施工すると、六番目の鋼管矢板1fの先端部分(下端部分)は、五番目の鋼管矢板1eの先端部分(下端部分)からさらに右側に矢印Yの距離逸脱するので、矢板壁の施工方向(矢印X)に対して右側に矢印Yの2倍の距離押し出されることとなる。
以後同様にして、従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1を2本圧入施工する毎に、スリット12が矢板壁の施工方向(矢印X)に対して同じ側に向いている鋼管矢板1’を間に1本づつ圧入施工していく。
かかる施工方法によれば、従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1を続けて圧入施工することによって先端部分(下端部分)が逸脱し、傾斜が次第に大きくなってしまうといった問題を、スリット12が左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板1’を適当な間隔で間に1本ずつ圧入施工することにより、逸脱する方向が反転し、傾斜を相殺して解消することができる。例えば図7において、一番目の鋼管矢板1aの先端部分(下端部分)と二番目の鋼管矢板1bの先端部分(下端部分)は、いずれも矢板壁の施工方向(矢印X)に対して右側に逸脱していく。しかしながら、間にスリット12が同じ側に向いている鋼管矢板1’aを圧入施工したことにより、三番目の鋼管矢板1cの先端部分(下端部分)と四番目の鋼管矢板1dの先端部分(下端部分)は、いずれも矢板壁の施工方向(矢印X)に対して左側に逸脱していく。これにより、一番目の鋼管矢板1aおよび二番目の鋼管矢板1bと三番目の鋼管矢板1cおよび四番目の鋼管矢板1dとによって、互いの逸脱が相殺され、傾斜が一方の方向に積算されて大きくなってしまうことが回避される。なお同様に、三番目の鋼管矢板1cおよび四番目の鋼管矢板1dと五番目の鋼管矢板1eおよび六番目の鋼管矢板1fとによっても、互いの逸脱が相殺され、傾斜が一方の方向に積算されて大きくなってしまうことが回避される。その結果、複数の鋼管矢板1、1’を矢板壁の施工方向(矢印X)に沿って正しく配列して精度の高い施工ができるようになる。
以上では、矢板壁を直線状に施工していく場合を説明したが、図8に示すように、鋼管矢板1”を円周上に並べて施工する場合でも、同様に適用できる。このように、円周上に並べられる矢板壁の施工には、例えば図9に示す鋼管矢板1”aと図10に示す鋼管矢板1”bが用いられる。
図9に示す鋼管矢板1”aと図10に示す鋼管矢板1”bも、先に図1に示した従来一般に用いらている鋼管矢板1や本発明の施工方法で用いられる鋼管矢板1’と同様に、鋼管本体10の周面に一対の継手11を溶接して取り付けた構成である。継手11は、鋼管本体10よりも小径の鋼管からなり、継手11にはスリット12が形成されている。但し、円周上に並べられる矢板壁の施工に用いられる鋼管矢板1”a、鋼管矢板1”bは、図9、10に示すように、一対の継手11の取り付け位置が、鋼管本体10の中心Oに対して180°(直径方向)の位置から角度θだけ偏芯している。この偏芯角度θは、図8に示すように、鋼管矢板1”a、1”bの直径(鋼管本体10、継手11の直径)、円周上に並べられる矢板壁の円周直径D、曲率などによって設計される。
図9に示す鋼管矢板1”aは、一対の継手11にそれぞれ設けられるスリット12の位置が、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いて配置されている。すなわち、図9において、図中の上向方向の矢印Xを前方(矢板壁の施工方向)とすれば、前方(図9において上側)の継手11に設けられたスリット12と後方(図9において下側)の継手11に設けられたスリット12は、矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも左側に向いて形成されている。
また、図10に示す鋼管矢板1”bも、一対の継手11にそれぞれ設けられるスリット12の位置が、矢板壁の施工方向に対して同じ側に向いて配置されている。但し、図9に示す鋼管矢板1”aと図10に示す鋼管矢板1”bとでは、スリット12の向きが逆方向の関係になっている。すなわち、図10において、図中の上向方向の矢印Xを前方(矢板壁の施工方向)とすれば、前方(図10において上側)の継手11に設けられたスリット12と後方(図10において下側)の継手11に設けられたスリット12は、矢板壁の施工方向(矢印X)に対していずれも右側に向いて形成されている。
図8に示すように、この実施の形態では、これら図9に示す鋼管矢板1”と図10に示す鋼管矢板1”bを交互に配置することにより円周上に矢板壁を施工していく。かかる実施の形態にあっては、先に施工された鋼管矢板1”aの前方に次の鋼管矢板1”bを隣接させて圧入施工する場合は、鋼管矢板1”bの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、施工済みの鋼管矢板1”aの前方の継手11のスリット12から押し出され、図8中の矢印Yで示したように、円周上に施工される矢板壁の外側に押し出される格好となる。
そして、鋼管矢板1”bを施工後、この施工済みの鋼管矢板1”bの前方に次の鋼管矢板1”aを隣接させて圧入施工する場合は、鋼管矢板1”aの後方の継手11の先端部分(下端部分)は、施工済みの鋼管矢板1”bの前方の継手11のスリット12から押し出され、図8中の矢印Yで示したように、円周上に施工される矢板壁の内側に押し出される格好となる。
したがって、この実施の形態の施工方法によれば、図9に示す鋼管矢板1”と図10に示す鋼管矢板1”bを交互に圧入施工することにより、鋼管矢板1”と鋼管矢板1”bとの間で先端部分(下端部分)の逸脱が相殺され、傾斜が一方の方向に積算されて大きくなってしまうことが回避される。その結果、円周上に並べられる矢板壁を正しく配列して精度の高い施工ができるようになる。特に円周上に並べられる矢板壁では、ループを形成するためにより高い施工精度が要求されるが、本発明はかかる要求に応えることができる。
以上、本発明の実施の形態を例示して説明したが、本発明は以上に示した形態に限定されないことはもちろんである。例えば、図4では、鋼管矢板を施工する装置として圧入機20を例示しているが、本発明は、打撃工法、バイブロハンマ工法、三点式の中堀り工法、圧入工法などにおいて広く適用できる。なお、本発明は、杭の外周を把持して施工を行う圧入工法において特に有用である。
また、図6で説明した実施の形態のように、スリット12が矢板壁の施工方向に対して互いに同じ側に向いている鋼管矢板1’のみを用いても良いし、図7で説明した実施の形態のように、スリット12が矢板壁の施工方向に対して同じ側に向いている鋼管矢板1’と、スリット12が矢板壁の施工方向に対して互いに反対の側に向いている従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1とを一緒に用いても良い。図6で説明した実施の形態によれば、鋼管矢板1’のみを用いるので、管理がしやすいといった利点がある。一方、図7で説明した実施の形態によれば、従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1を併用できるといった利点がある。なお、図7で説明した実施の形態では、スリット12が矢板壁の施工方向に対して互いに反対の側に向いている従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1を2本施工する毎に、間に、スリット12が矢板壁の施工方向に対して同じ側に向いている鋼管矢板1’を施工していく例を示したが、鋼管矢板1を連続して施工する本数は任意であり、また、鋼管矢板1を1本施工する毎に、間に、スリット12が矢板壁の施工方向に対して同じ側に向いている鋼管矢板1’を施工してもよい。更に、直線上の矢板壁や円周上の矢板壁の他、直線やカーブの混在する配列の矢板壁など、任意の配列の矢板壁にも本発明は適用できる。
また図5に示した鋼管矢板1’は、一対の継手11にそれぞれ形成するスリット12の位置を、最初から矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側とすることでも製造できるが、従来の一般的なP−P型の鋼管矢板1を改良して製造しても良い。
ここで、図11(a)は、先に図1に示したものと同様の、従来一般に用いられている鋼管矢板1であり、仮に図中の右方向の矢印Xを前方(矢板壁の施工方向)とすれば、一対の継手11、11におけるスリット12が、後方の継手11では、スリット12は左側(図11(a)中の上側)に向いた位置にあり、前方の継手11では、スリット12は右側(図11(a)中の下側)に向いた位置にあり、後方の継手11と前方の継手11とでは、スリット12の向く方向が互いに逆向きの関係となっている。かかる一般的な鋼管矢板1のいずれか一方の継手11において、既成のスリット12を塞ぎ、当該塞いだスリット12の左右対称位置に新たなスリット12’を形成することによっても、図5に示した鋼管矢板1’と同等の鋼管矢板1’”を得ることができる。
すなわち、図11(a)に示された従来一般的な鋼管矢板1において、図11(b)に示すように、例えば後方の継手11の左側(図11(a)中の上側)に向いた位置)に形成されていたスリット12を塞ぐようにプレート30をあてがい、溶接等することによって、鋼管矢板1の後方の継手11の周面にプレート30を接着させる。これにより、鋼管矢板1の後方の継手11の左側のスリット12を塞いだ状態にする。
次に、後方の継手11において、図11(c)に示すように、この塞いだスリット12の左右対称位置、すなわち後方の継手11の右側に新たなスリット12’を形成する。かかる改良を行うことによって、後方の継手11のスリット12’と前方の継手11のスリット12がいずれも右側(図11(c)中の下側)を向いた配置となる。こうして一般的なP−P型の鋼管矢板1を改良して製造された鋼管矢板1’”は、一対の継手11にそれぞれ設けられるスリット12(12’)の位置が、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いて配置されたものとなり、先に図5に示した鋼管矢板1’と同等に活用することが可能となる。
本発明は、矢板壁の施工に有用である。
1 鋼管矢板(スリットが矢板壁の施工方向に対して互いに反対の側に向いている従来の一般的なP−P型の鋼管矢板)
1’ 鋼管矢板(スリットが矢板壁の施工方向に対して同じ側に向いている鋼管矢板)
1”a、1”b 円周上に並べられる矢板壁の施工に用いられる鋼管矢板
10 鋼管本体
11 継手
12 スリット
20 圧入機
21 サドル
22 クランプ
23 スライドフレーム
24 リーダーマスト
25 チャックフレーム
26 チャック

Claims (4)

  1. 鋼管にスリットを形成した継手を鋼管本体の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板を、順次隣接させて継手同士を係合させながら地盤に貫入していく施工方法であって、
    一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板を、交互に反転させて施工することを特徴とする、鋼管矢板の施工方法。
  2. 鋼管にスリットを形成した継手を鋼管本体の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板を、順次隣接させて継手同士を係合させながら地盤に貫入していく施工方法であって、
    一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右それぞれ反対の側に向いている鋼管矢板を施工するにあたり、
    間に、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板を施工する工程をいれることを特徴とする、鋼管矢板の施工方法。
  3. 鋼管矢板を圧入工法で地盤に貫入していくことを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼管矢板の施工方法。
  4. 鋼管にスリットを形成した継手を鋼管本体の周面に一対取り付けてなるP−P型の鋼管矢板であって、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右それぞれ反対の側に向いている鋼管矢板を改良する方法であって、
    一方の継手もしくは他方の継手のいずれか一方において、既に形成されているスリットを塞ぎ、当該塞いだスリットの左右対称位置に新たなスリットを形成することにより、一方の継手に形成されたスリットと他方の継手に形成されたスリットとが、矢板壁の施工方向に対して左右いずれか同じ側に向いている鋼管矢板とすることを特徴とする、鋼管矢板の改良方法。
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