JP2018193496A - 微多孔性フィルム及びその製造方法並びに電池用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】多数の微小貫通孔を有し、透過性及び突刺強度に優れた微多孔性フィルム及びその製造方法を提案し、合わせて前記要求特性を満たす電池用セパレータを提供することを目的とする。【解決手段】ポリオレフィン樹脂を含むフィルムにクレーズを形成するクレージング工程と、前記クレージング工程においてクレーズが形成されたフィルムを、80℃以上110℃未満の温度で延伸する冷延伸工程とを有する微多孔性フィルムの製造方法。【選択図】図4
Description
本発明は、微多孔性フィルム及びその製造方法に係り、特に電池用セパレータとして利用するのに適した物性を有するクレーズを含むフィルムに関する。
良好な通気性を有する材料として微多孔性フィルムがある。特にポリオレフィン微多孔性フィルムは、電池用セパレータ、各種フィルタ、選択的分離膜等として用いられている。例えば、リチウムイオン電池用セパレータとして用いる場合の基本的な要求特性としては、電気絶縁性であること、電解液に対して濡れやすく電解液の保持性が良いこと、電解液を保持した状態で電解質・イオン透過性が良く電気抵抗が低いこと、電解液に対して化学的・電気化学的に安定であること、高容量化のために高密度充填できるように膜厚が薄くできること、電池組み立て時・使用時に必要とされる力学的強度を有すること、熱暴走時の安全装置として細孔が閉鎖するシャットダウンが起こること、イオン透過が集中することによるイオンの析出を防ぐために細孔径が均一であること、などである。
前記要求をある程度満足する材料として、ポリオレフィン微多孔性フィルムが多用されている。特に電池温度が120℃〜170℃に達したときに、細孔が溶融して電池の異常反応を停止させ安全性を担保する点で優れているからである。このようなポリオレフィン系樹脂フィルムに微小な貫通孔を形成する方法として、物理的に穿孔する乾式プロセスと、化学的処理を伴う湿式プロセスによるものとに大別される。
乾式プロセスの例としては、熱収縮性樹脂フィルムに直径が50〜600ミクロンの孔を穿ち、この熱収縮性樹脂フィルムを加熱処理して面積比で10〜70%収縮させて微細孔を形成する方法(特許文献1)、延伸した薄膜フィルムに、サーマルヘッド等の微細加熱素子による加熱により微細な貫通孔を形成する方法(特許文献2)、粒子径の揃った合成ダイヤモンドが表面に電着されたダイヤモンドロールにより穿孔する方法(特許文献3)、レーザー光線を熱源とし、熱源を光ファイバー、光ケーブル等の光搬送手段により多光束に分割して合成樹脂フィルムに照射する方法(特許文献4)などがある。
これらの方法によれば細孔を形成することは可能であるが、以下の課題があるものと考えられる。例えば、針、ダイヤモンドなどによるパンチング穿孔では孔径を50μm以下に制御することは困難であり、レーザー穿孔では孔数を1〜100個/cm2になるようにするためには大がかりな設備が必要となる。また、加熱による加工では、熱により貫通孔周辺の微多孔が溶融閉塞して、微多孔性フィルムの機能が損なわれ、セパレータとしての使用が困難になるなど、未だ改良の余地があるものと思われる。
なお、孔径が50μm以下に制御できるということは、単位面積当たりの孔数を増やすことができ、また熱暴走時のシャットダウンがより正確・確実・迅速に行える点で優れたセパレータということができる。また、イオン透過が集中することによるイオンの析出を防ぐために細孔径が均一であることが必要であり、この点においても孔径制御は重要な要素になるのである。
前記例示の他に、電極間に高電圧パルスを印加して該電極間ギャップに供給されるプラスチックフィルムに放電開孔する有孔プラスチックフォルムの製造方法(特許文献5)、プラスチックフィルムを、表面に凹凸を有するエンボスロールからなる一の電極に当接し、該一の電極と他方の電極間にて前記プラスチックフィルムに放電処理を施して凸部に当接した部分に開孔を形成する方法(特許文献6)がある。しかし、これらの方法をもってしてもなお、孔径を50μm以下に制御することは容易ではなく、貫通孔周辺のポリマーが溶融することで形成済みの微多孔の閉塞防止の点で課題が残るものであった。
一方、湿式プロセスの例としては、ポリオレフィン樹脂と、可塑剤と無機粒子とを混練してシート状にし、可塑剤や無機粒子を抽出して、更に一軸以上の方向へ延伸する方法(特許文献7、8など)があるが、乾式プロセスに比較して作業工程増および抽出溶媒を使用するなどの環境負荷の点で課題があった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、多数の微小貫通孔を有し、透過性及び突刺強度に優れた微多孔性フィルム及びその製造方法を提案し、合わせて前記要求特性を満たす電池用セパレータを提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の微多孔性フィルムの製造方法は、ポリオレフィン樹脂を含むフィルムにクレーズを形成するクレージング工程と、前記クレージング工程においてクレーズが形成されたフィルムを、80℃以上110℃未満の温度で延伸する冷延伸工程とを有することを特徴とする。
先に本発明者が提案している類似の方法として「クレージング工程の後、−20℃以上90℃未満の温度で延伸する冷延伸工程と、90℃以上150℃未満の温度で延伸する熱延伸工程を有する」製造方法(特開2011−256258号参照)がある。本発明の製造方法では、延伸工程は1回とし、延伸温度も先願とは異なる方法を採用している。後に詳述するが、延伸倍率を1.05倍〜2.5倍にすることで先願に示す同様な方法で製造するよりも、大きな気孔率を有する微多孔性フィルムが得られることが分かった。
本発明の微多孔性フィルムはクレージング工程と冷延伸工程によって得られるものであり、好ましくは曲路率が1.1〜2.8の範囲内であり、気孔率が30〜65%の範囲内である。
本発明における曲路率とは、膜厚と気体や液体の実際の膜中の通路経路の比で表される値であり、気孔率とは、フィルム全体の体積に対する気孔の体積が占める割合であり、その測定方法等については後述する。フィルムの気孔率は、電池用セパレータを電池に組み込んだ時のイオン伝導性の指標となる気体透過性に大きく影響する。また、同じ気孔率であっても、曲路率が小さい方が通気性の点で優れていると言える。
本発明では、前記クレージング工程と冷延伸工程を経て製造される微多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いると、基本的な要求事項をほぼ満足し得るセパレータとして機能しうることが分かった。
本発明の製造方法によれば、乾式プロセスのなかでも簡易な製造工程でありコスト面や環境面で優れた方法を提案することができる。また、得られる微多孔性フィルムの気孔率は従来と同様の製法で作成したクレーズフィルムよりも増加させることができ、曲路率が小さいものを得られることから、通気性に優れたフィルムとして、電池用セパレータに特に好適に使用することができる。
さらに、本発明のフィルムは力学的な異方性が小さいために、突き刺しに強く、電池内部で発生し得るデンドライト[金属リチウム負極の放電(酸化)反応で溶解したリチウムイオンは充電(還元)反応によって金属リチウムに戻る。リチウムイオンの還元反応により析出する金属リチウムが樹枝状(dendrite)に析出したものを指す。]による破膜が起きにくいと考えられる。
本発明は、ポリオレフィン樹脂を含むフィルムにクレーズを形成するクレージング工程と、前記クレージング工程においてクレーズが形成されたフィルムを、80℃以上110℃未満の温度で延伸する冷延伸工程とを有することを特徴とする微多孔性フィルムの製造方法に係わる。以下にその詳細を述べることとする。
(ポリオレフィン樹脂)
本発明に用いるポリオレフィン樹脂とは、基本的に先の出願(特開2011−256258号)と同様であって、プロピレン及びエチレンに代表されるオレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体をいう。ポリオレフィン樹脂はホモポリマーであってもコボリマーであってもよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン一プロピレン共重合体が挙げられ、クレーズを容易に形成できる観点から、ポリプロビレン樹脂が好ましい。
本発明に用いるポリオレフィン樹脂とは、基本的に先の出願(特開2011−256258号)と同様であって、プロピレン及びエチレンに代表されるオレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体をいう。ポリオレフィン樹脂はホモポリマーであってもコボリマーであってもよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン一プロピレン共重合体が挙げられ、クレーズを容易に形成できる観点から、ポリプロビレン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、1種類を単独で又は2種類以上を混合して使用することができる。また、ポリオレフィン樹脂を得る際に用いられる重合触媒にも特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系の触媒及びメタロセン系の触媒が挙げられる。ポリオレフィン樹脂分子の立体規則性にも特に制限はなく、例えば、アイソタクチック及びシンジオタクチックのいずれであってもよい。
本発明に好適に用いられるポリプロビレン樹脂は、ポリプロビレンを単量体成分として含む重合体であり、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。微多孔性フィルムの透過性が良好となる観点から、ポリプロピレン樹脂はホモポリマーであると好ましい。ポリプロビレン樹脂がコボリマーである場合、ランダムコボリマーであってもよく、プロックコボリマーであってもよい。また、ポリプロビレン樹脂がコボリマーである場合、共重合成分に限定はなく、例えば、エチレン、プテン及びへキセンが挙げられる。
ポリプロビレン樹脂がコボリマーである場合、微多孔性フィルムの透明性が良好となる観点から、プロビレンの共重合割合は70質量%以上であることが好ましく、90質量% 以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。同様の観点から、共重合成分の共重合割合は、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
ポリプロビレン樹脂として、上述のポリプロビレン樹脂の他に、不飽和カルボン酸、その無水物または誘導体がグラフト共重合したような公知の変性ポリプロビレン樹脂等も使用できる。さらに、本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、上述のポリプロビレン樹脂と該変性ポリプロビレン樹脂との任意の割合の混合物であってもよい。
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、0.01〜20g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10g/10分であり、更に好ましくは0.3〜1.0g/10分である。MFRが0.01g/10分以上であると、溶融時の伸びが高く、成膜性がより良好となる傾向にあり、20g/10分以下であると、ドローダウンが起こり難くなり、成膜性がより良好となる傾向にある。ポリオレフィン樹脂のMFRは、下記実施例に記載した方法に準じて測定される。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、30万〜200万であることが好ましく、より好ましくは50万〜120万である。Mwが30万以上であれば 、微多孔性フィルムの突刺強度がより向上する傾向にあり、200万以下であれば、微多孔性フィルムの成膜性がより良好となる傾向にある。
また、ポリオレフィン樹脂の分子量分布は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(以下、「Mw/Mn」と表記する。)で、2.0〜20.0であることが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0であり、更に好ましくは5.0〜7.0である。Mw/Mnが2.0以上であれば、ポリオレフィン樹脂を成形する際の発熱が抑えられ、樹脂劣化が起こり難くなる傾向にあり、20.0以下であれば、高分子量成分由来の未溶融物が少なくなる傾向にある。Mw及びMnは、ポリスチレンを標準試料として ポリオレフィン樹脂のゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」と表記する)から求められ、詳細には下記実施例に記載した方法に準じて測定される。
本実施形態の微多孔性フィルムはポリオレフィン樹脂を含むものであり、ポリオレフィン樹脂からなるものであると好ましいが、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリオレフィン樹脂以外の他の付加的成分をも含む熱可塑性樹脂組成物からなるものであってもよい。前記熱可塑性樹脂組成物に含まれる付加的成分としては、例えば、オレフィン系エラストマー、酸化防止剤、金属不活性化剤、熱安定剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤など)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、無機若しくは有機の充填材及び強化材(ポリアクリロニトリル繊維、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、導電性金属繊維、導電性カーボンブラック等)、各種着色剤、離型剤が挙げられる。
(微多孔性フィルムの製造方法)
本発明の微多孔性フィルムの製造方法は、(A)ポリオレフィン樹脂を含むフィルム(以下、「原反フィルム」と表記する。)に、クレーズを形成するクレージングエ程と、(B)クレージングエ程においてクレーズが形成されたフィルムを80℃以上110℃未満の温度で延伸する冷延伸工程を有する。
本発明の微多孔性フィルムの製造方法は、(A)ポリオレフィン樹脂を含むフィルム(以下、「原反フィルム」と表記する。)に、クレーズを形成するクレージングエ程と、(B)クレージングエ程においてクレーズが形成されたフィルムを80℃以上110℃未満の温度で延伸する冷延伸工程を有する。
本発明の製造方法に係る前記原反フィルムの製造方法には、ポリオレフィン樹脂(微多孔性フィルムがポリオレフィン樹脂のみからなる場合)、又は、ポリオレフィン樹脂と前記付加的成分とを含む熱可塑性樹脂組成物(以下、「ポリオレフィン樹脂等」ともいう。)を、Tダイ押出成形、インフレーション成形、カレンダー成形等のシート成形方法によって成形する工程を採用し得る。中でも、本発明の微多孔性フィルムに要求される物性及び用途の観点から、Tダイ押出成形が好ましい。
原反フィルムの製造方法において、押し出し後のドロー比は、好ましくは10〜500、より好ましくは50〜300、更に好ましくは100〜250である。ここで、押し出し後のドロー比とは、フィルムの巻き取り速度(単位:m/分)をポリオレフィン樹脂等の押出速度(ダイリップを通過する溶融樹脂の流れ方向における線速度。単位:m/分)で除した値をいう。また、原反フィルムを巻き取る際のフィルムの巻き取り速度は、フィルムの膜厚の均一性を高める観点から、好ましくは約2〜400m/分、より好ましくは10〜200m/分である。ドロー比を上記範囲とすることは、得られる微多孔性フィルムの透気性を向上させる観点から好適である。
また、原反フィルムには、必要に応じて熱処理(アニール)を施すことが好ましい。アニールの方法としては、例えば、原反フィルムを加熱ロール上に接触させる方法、巻き取る前に加熱気相中に曝す方法、原反フィルムを芯体上に巻き取り加熱気相又は加熱液相中に曝す方法、並びにこれらを組み合わせて行う方法が挙げられる。これらのアニールの条件は、例えば、100℃〜150℃の加熱温度で、10秒間〜100時間アニールすることが好ましい。加熱温度が100℃以上であれば、後に得られる微多孔性フィルムの透気性が更に良好となる傾向となり、150℃以下であれば、原反フィルムを芯体上に巻き取った状態でアニールしてもフィルム同士が融着し難くなる傾向となる。より好ましい加熱温度の範囲は、120℃〜140℃である。
(クレージング工程)
本明細書において、「クレーズ」とは、樹脂フィルムに形成される直線状又は略直線状のひび、あるいは割れ目を示す。樹脂フィルムがひび又は割れ目を形成した際に現れる壁面間に樹脂フィブリルが残存しているものを狭義の「クレーズ」とし、この狭義の「クレーズ」に対して、樹脂フィブリルが残存していないものを「クラック」と区別して示す場合もあるが、本明細書の「クレーズ」は、これらの「クレーズ」(狭義)及び「クラック 」のいずれをも含む概念である。
本明細書において、「クレーズ」とは、樹脂フィルムに形成される直線状又は略直線状のひび、あるいは割れ目を示す。樹脂フィルムがひび又は割れ目を形成した際に現れる壁面間に樹脂フィブリルが残存しているものを狭義の「クレーズ」とし、この狭義の「クレーズ」に対して、樹脂フィブリルが残存していないものを「クラック」と区別して示す場合もあるが、本明細書の「クレーズ」は、これらの「クレーズ」(狭義)及び「クラック 」のいずれをも含む概念である。
クレージングエ程において、クレーズは、本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、基本的には、原反フィルムの分子配向の方向と平行又は略平行に縞状に形成される。縞の間隔、すなわち、隣り合う縞の向かい合う幅方向端部同士の距離は、リチウムデンドライトを適度に挿通させる観点から、0.1〜100μmであると好ましく、より好ましくは0.5〜50μmである。原反フィルムの製造におけるドロー比を上記の好ましい範囲にすることにより、フィルムの押し出し方向と平行に分子が配向しやすくなるため、クレーズも押し出し方向に対して平行に縞状に形成されやすくなる。
クレージングエ程において、クレーズを形成する方法は特に限定されないが、例えば下記方法が挙げられる。まず、原反フィルムを緊張状態に保持し、該原反フィルムの表面に、鋭角な稜状の先端部を有するブレードのその先端部を、分子配向方向と平行又は略平行に当接する。次いで、該原反フィルムを、ブレードの先端部に当接する部分で局部的に折り曲げる。このとき、クレーズを確実に形成する観点から、その折り曲げ角度を好ましくは120度以下とする。該原反フィルム中にクレーズの帯を形成した後、該原反フィルムを順次、ブレードに対して相対的に徐々に移動させることにより、移動方向と直交又は略直交する方向に連続的な縞状のクレーズを形成する。
上記クレーズを形成させるための具体的な製造方法としては、例えば、図1に示すような、鋭角な稜状の先端部を有するブレード2を備える装置を用いる方法が挙げられる。図1は、その装置を示す概略図である。装置は、フィルムを送るためのローラ1、局所的な曲げを行うSUS製のブレード2、張力制御のための錘から構成されている。この装置では、ローラの回転速度の調節によってフィルムを送る速度(処理速度)を、錘の調節によって張力(処理応力)を、ブレード先端の位置の調節によってフィルムが曲げられる角度(処理角度)をそれぞれ任意に決定することができる。
すなわち、まず、緊張状態に保持された原反フィルム3の表面に、ブレード2の鋭角な稜状の先端部を、原反フィルムの樹脂(例えばポリオレフィン樹脂等)の分子配向方向と平行又は略平行に当接する。次いで、該原反フィルム3を矢印の方向に(錘により)引っ張って局部的に折り曲げ、その折り曲げ角度が120度以下となるような屈曲変形域を形成して、該原反フィルム3中にクレーズ4を形成する。その後、該原反フィルム3を、ブレード2に対して、矢印の方向に相対的に徐々に移動させることによって、移動方向と直交又は略直交する方向に、連続的な縞状のクレーズを形成させることができる。
前記クレーズ形成を模式的に表したものが、図1の右下に拡大図で示されている。フィルム3に張力を加えた状態でフィルムを移動させると、フィルムとブレード2先端との接触部に応力5(図中の○の大きさで表現している)が集中し、ブレードと接していない面からクレーズが発生する。クレーズの発生により応力集中は解放され、フィルムが移動して再び応力集中が生じるまでは、クレーズは発生しない。このように応力の集中と解放が周期的(図では連続する3つの図で示されている)に起こるため、クレーズは周期的に形成される。
この操作は、効率の面から一般的には室温で行うと好ましいが、場合によっては、フィルムを上記折り曲げによって完全に切断しない範囲において低温で行ってもよい。上記先端部の角度は、クレーズを容易に形成する観点から、90度以下であると好ましい。
(冷延伸工程)
冷延伸工程においては、クレージングエ程を経たクレーズを有するフィルムを、80℃以上110℃未満に保持した状態で、少なくとも一方向に好ましくは1.05倍〜2.5倍に冷延伸する。
冷延伸工程においては、クレージングエ程を経たクレーズを有するフィルムを、80℃以上110℃未満に保持した状態で、少なくとも一方向に好ましくは1.05倍〜2.5倍に冷延伸する。
冷延伸工程における冷延伸の延伸温度は80℃以上110℃未満である。80℃以上で延伸すれば、クレーズを有するフィルムが破断し難くなる傾向となり、110℃未満で延伸すれば、得られる微多孔性フィルムの透気性がより良好になる傾向となる。ここで、冷延伸の延伸温度とは、冷延伸工程におけるフィルムの表面温度を示す。
冷延伸工程における冷延伸の延伸倍率は、1.05倍以上2.5倍以下であり、より好ましくは1.5倍以上2.0倍以下である。延伸倍率が1.05倍以上であると、透気性のより良好な微多孔性フィルムが得られる傾向にあり、2.5倍以下であると、ネッキングによる透過性の低下が起こりにくい傾向にある。クレーズを有する原反フィルムの冷延伸は、少なくとも一方向に行い、二方向に行ってもよいが、好ましくは、フィルムの押し出し方向にのみ、一軸延伸を行う。
本発明の微多孔性フィルムの製造方法は、微多孔性フィルムに要求される良好な透気性や用途の観点から、クレーズ処理と冷延伸工程との2段階の延伸工程を含む。なお、前記冷延伸工程に加えて、更なる延伸工程を含んでもよい。
本発明の微多孔性フィルムの製造方法は、延伸工程を経て得られた微多孔性フィ ルムに対して、100℃以上160℃以下の温度で熱固定を施こすこともできる。この熱固定の方法としては、熱固定後の微多孔性フィルムの長さが熱固定前の微多孔性フィルムの長さに対して3〜50%減少する程度熱収縮させる方法、延伸方向の寸法が変化しないように熱固定する方法が挙げられる。熱固定温度は、微多孔性フィルムの熱収縮率の観点から、100℃以上160℃以下であることが好ましく、140℃以上155℃以下であることがより好ましい。 ここで、熱固定温度とは、熱固定工程における微多孔性フィルムの表面温度を示す。
微多孔性フィルムの製造方法における冷延伸工程及び熱固定工程の各工程において、延伸又は熱固定は、例えば、ロール、テンター 、オートグラフ等により、1段階又は2段階以上で、一軸方向及び/又は二軸方向に行うことができる。特に、得られる微多孔性フィルムに要求される透気度や気孔率等の物性及び用途の観点から、ロールによる2段階以上の一軸延伸/固定を行うことが好ましい。
(微多孔性フィルム)
前記のようにして得られた微多孔性フィルムは、クレージングエ程においてクレーズが形成された部分に微細な貫通孔を有する。すなわち、クレージングエ程において形成されたクレーズの部分は、その後の冷延伸工程などを経ることにより、微細な貫通孔となる。そのため、微細な貫通孔は、クレーズの部分に対応する縞状の部分に特に高密度に形成される。また、微細な貫通孔を有していても機械強度の低下は抑制されている。
前記のようにして得られた微多孔性フィルムは、クレージングエ程においてクレーズが形成された部分に微細な貫通孔を有する。すなわち、クレージングエ程において形成されたクレーズの部分は、その後の冷延伸工程などを経ることにより、微細な貫通孔となる。そのため、微細な貫通孔は、クレーズの部分に対応する縞状の部分に特に高密度に形成される。また、微細な貫通孔を有していても機械強度の低下は抑制されている。
(気孔率)
微多孔性フィルムの気孔率は、セパレータを電池に組み込んだ時にイオン伝導性の指標となる気体透過性に大きく影響する。そこで,以下の考え方によりフィルムの気孔率を求めた。
微多孔性フィルムの気孔率は、セパレータを電池に組み込んだ時にイオン伝導性の指標となる気体透過性に大きく影響する。そこで,以下の考え方によりフィルムの気孔率を求めた。
図2に内部に気孔を持つ固体の断面の模式図を示す。固体内部には外気に通じている開気孔7と固体に閉じこめられた閉気孔6が存在すると仮定する。ここで、固体部分のみ体積をVsolid、開気孔の体積をVopen、閉気孔の体積をVclosedとする。密度には大きく分けて「真密度」、「見掛け密度」、「嵩密度」の三つがある.これらは体積の取り方の違いによるものである。
真密度は、下記で表される。drは真密度、mは固体の質量である。
見掛け密度daは、下記式で表される。
嵩密度dbは、下記式で表される。
これらの密度の値を用いることで、全体の体積に対する固体部分の体積が占める割合である相対密度、全体の体積に対する気孔の体積が占める割合である気孔率が求められる。相対密度Dは下記式で表される。
気孔率εは下記式で表される。
また、全体の体積に占める開気孔の割合である開気孔率εopenは下記式で表される。
全体の体積に占める閉気孔の割合である閉気孔率εclosedは、下記式で表される。
気孔率は式5にて算出することができる。嵩密度db[g/cm3]は、サンプルから2.0cm×2.0cmで切り出した測定片の質量を電子天秤で、膜厚をマイクロメータでそれぞれ測定して求める。真密度dr[g/cm3]は、多孔化する前のフィルムの密度を用いた。これは、処理前のフィルムには気孔が存在せず、処理によってのみ気孔が形成されると仮定したことによる。なお、本来であれば開気孔と閉気孔とを区別すべきであるが、測定が困難であり、また他の物性によりセパレータとしての評価が可能であるため、全て開気孔として処理した。
(通気度)
セパレータは電池の安全性を確保するために必要な部材であるが、イオンの移動にとっては抵抗となる。そのため、セパレータにはイオンの移動の抵抗となりにくい細孔構造が求められる。この細孔構造を厳密に知ることは困難であるが、簡便に知る方法の1つとして通気度が多くの場合に用いられている。一般に気体透過性の良いセパレータはイオン伝導性が高いとされる。そこで、気体流量測定の結果から、気体透過係数を算出してフィルムの通気度を評価した。
セパレータは電池の安全性を確保するために必要な部材であるが、イオンの移動にとっては抵抗となる。そのため、セパレータにはイオンの移動の抵抗となりにくい細孔構造が求められる。この細孔構造を厳密に知ることは困難であるが、簡便に知る方法の1つとして通気度が多くの場合に用いられている。一般に気体透過性の良いセパレータはイオン伝導性が高いとされる。そこで、気体流量測定の結果から、気体透過係数を算出してフィルムの通気度を評価した。
フィルムを直径13mmの円形に切り出し、ステンレスシリンジホルダに設置した。そこに20kPaのゲージ圧でボンベ10より窒素ガスを送り込む。このときフィルム11を透過した気体の流量を、デジタル流量計15(GFE1000)を用いて測定した。図3には、測定系の模式図が示されている。フィルム11は、Oリング12と多孔支持プレート13の間で挟まれ(図には、理解のため各分離された状態で示されているが、試験時には組み合わされた状態で行われる)、窒素ガスの流路を遮るように配置される。
測定は室温、大気圧下で行った。ホルダに設置したフィルムの気体透過部分の面積は0.9cm2である。以下の式を用いて気体透過係数kgas[m3・m/m2・s・Pa]を求める。F[m3/s]は気体流量、t[m]はフィルムの膜圧、ΔP[Pa]は圧力差、A[m2]はフィルム中の気体透過部分の面積である。
(曲路率)
フィルムの貫通孔を図4に示すようにモデル化して、図5に示すような試験装置により透水度試験を行った上で、平均孔径、曲路率、単位面積当たりの孔数を算出した。透水度試験は以下のように行った。
フィルムの貫通孔を図4に示すようにモデル化して、図5に示すような試験装置により透水度試験を行った上で、平均孔径、曲路率、単位面積当たりの孔数を算出した。透水度試験は以下のように行った。
図5に示すように、ホルダには貯水タンクが接続され、貯水タンクと窒素ガスボンベは耐圧チューブを介して接続されている。測定対象のフィルムを直径47mmの円形に切り出し、ステンレスシリンジホルダに設置した。その後、貯水タンクに純水を入れ、窒素ガスを一定圧力ΔPliqで供給することで、フィルムに純水を透過させる。フィルムを透過してきた純水をメスシリンダーで受け取り、ある体積Vliq[m3]の純水が透過する時間tliq[s]を測定し、以下の式を用いて純水の透過速度定数Rliq[m3/m2・s・Pa]を求めた。測定は20℃で行った。Aliq[m2]は液体透過部分の面積であり、12.5cm2である。
図4では、測定面積A[m2]中に長さτ・t[m]、直径D[m]の真円直管N[本]が並列に接続されている。ここでτは曲路率であり、t[m]は膜厚である。窒素分子の平均自由行程が細孔径より大きく、分子流であると仮定する。その場合、1本の直管内のガス流量qgas[Pa m3/s]、コンダクタンスCgas[m3/s]、差圧ΔP[Pa]の関係は以下のように表される。
πは円周率、〈v〉[m/s]はMaxwell-Boltzmann分布における窒素分子の平均速度である。よって流量Fgas[m/s]は以下の式で表される。Pav[Pa]は測定時の直管内の平均圧力である。
単位面積当たりの孔数Bについて考える。真円直管1本当たりの体積はπ(D/2)2×τtである。これがN本あるので、測定に用いたフィルムの全空孔体積V[m3]は、次式で表される。
一方で、気孔率εを用いて、以下の式として表すこともできる。
よって、単位体積当たりの孔数Bは、以下に示すことができる。
式10に式9、式13を代入して以下の式を得る。
これを、気体の透過速度定数Rgasを用いた式と比較して以下の式を得る。
純水の流れを粘性流であるとすると、1本の直管内の液体流量qliq[Pa m3/s]、コンダクタンスCliq[m3/s]、差圧ΔP[Pa]の関係は以下のように表される。
η[Pa・s]は水の粘度であり、20℃で0.001002Pa・sである。Pav,liq[Pa]は透水度測定時の管内の平均圧力である。通気度の場合と同様に計算して、水の透過速度定数Rliq[m3/(m2・s・Pa]は以下のようになる。
平均孔径D[m]は、以下のようになる。
また、気体定数R[JK−1mol−1](=8.314)、絶対温度T[K]、気体分子の分子量Mを用いて以下の式が得られる。
20℃の窒素ガスであれば、T=283.15[K]、M=28.014であるから、〈v〉は470.7m/sとなる。さらに、η、実験により求められるRliq 、Rgas、またPavとして0.11MPaを式18に代入することで、フィルムの平均孔径を算出することができる。また式15から曲路率τは、以下の式で表される。
上述したように定義される気孔率、曲路率について、本発明の微多孔性フィルムは、気孔率が30〜65%の範囲内であり、曲路率が1.1〜2.8の範囲内にあることが特徴である。気孔率は低すぎるとイオン移動の抵抗となり、高すぎるとフィルムの機械的強度が低下するため、前記の範囲が好ましい。また、曲路率が小さい方がイオンの移動がスムーズであるがクレージング工程、延伸工程を経て形成されるためその調整には限界があると考えられる。
本発明の微多孔性フィルムの膜厚は、通気性、機械的強度の観点から、5〜40μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
本発明の微多孔性フィルムは安全性を高めたリチウムイオン二次電池のセパレータとして特に有用である。以下では、実施例及び比較例をあげて、本発明をより具体的に説明する。
(試験1)
電池セパレータは、陽極と陰極の接触を防ぎつつ、その空孔に電解液を保持することで電池の充放電時にイオン移動のためのトンネルとなることである。セパレータの気孔率が大きければ、それだけ電解液の保持量が増えるため、充放電特性など電池性能の向上につながる。
電池セパレータは、陽極と陰極の接触を防ぎつつ、その空孔に電解液を保持することで電池の充放電時にイオン移動のためのトンネルとなることである。セパレータの気孔率が大きければ、それだけ電解液の保持量が増えるため、充放電特性など電池性能の向上につながる。
表1に本発明に係わるクレージング工程を経て冷延伸工程を行う際の冷延伸の条件(延伸倍率、延伸時のフィルム表面温度[℃]、延伸時の引張荷重[MPa]、荷重の負荷時間[min])と共に、得られたセパレータの気孔率(%)を示した。また比較例1として、クレージング工程のみのフィルム、比較として市販のセパレータフィルムAおよびBについても前記気孔率の測定方法に従って測定した結果を示す。なお、クレージング工程の処理条件は、処理応力(図1における引張力)26MPa、処理角度80°、処理速度20mm/minとし、これを同じ面に3回処理(図1おける右下枠内の図を参照)することでクレーズフィルムを作製した。
表1に示す通り、本発明の微多孔性フィルムは、気孔率において市販品と同等以上の性能を有することが分かる。
(試験2)
実施例1で作製したサンプルについて、気体の透過係数[×10−12m3・m/(m2・s・Pa]、孔径[mm]、曲路率、単位面積[μm2]当たりの孔数について測定した結果を表2に示す。
実施例1で作製したサンプルについて、気体の透過係数[×10−12m3・m/(m2・s・Pa]、孔径[mm]、曲路率、単位面積[μm2]当たりの孔数について測定した結果を表2に示す。
また、比較例2として、延伸工程における温度を140℃とし、荷重4[MPa]で1.5倍に延伸した場合の前記同様の物性を表2の最下欄に示した。
表2の結果に示すように、本発明の微多孔性フィルムは市販品よりも高い気体透過性を有しており、曲路率が小さく、単位面積当たりの孔数が多いことが分かる。また、比較例1のクレージング工程のみの場合および、比較例2のように高温での延伸工程を含めると、曲路率の上昇傾向が認められた。曲路率は微細孔のネットワーク構造に影響するので、孔が潰れるなどの変化が起きる可能性があり、延伸時の加熱温度を高く設定すると却ってセパレータとしての機能を損なうおそれがあると思われる。
(試験3)
通常気孔率を高めるとフィルムの固体部分の減少により相対的に力学強度は低下する。そこで以下では、引張試験により性能を評価した。
通常気孔率を高めるとフィルムの固体部分の減少により相対的に力学強度は低下する。そこで以下では、引張試験により性能を評価した。
試料としてフィルムのMD方向とTD方向に10×30mmの短冊状に切り出して、両端10mmの部分に厚紙を貼り付けて補強し、引張試験器の上下チャック部分に固定して、ゲージ長10mm、ひずみ速度10%/minで室温下にて、引張試験を行った。得られたStress−Strain曲線から、破断強度等を求めた。試験として用いたポリプロピレンフィルムは、Tダイ押出成形で作られており、その時の流れ方向をMD、それに垂直な方向をTDとする。成形時の流れ方向に分子鎖の配向があるため、異方性を有すると考えられることから、両者の強度比(MD/TD)を計算して比較した。
図6には、サンプルNo.1、No.9、No.15、比較例1について、TDでのStress−Strain曲線を示す。この図より、クレージング工程のみに比較して冷延伸工程が加わることで若干の強度低下が認められ、延伸倍率が大きいほど低下することが分かる。
図7には、市販品AについてMDとTDでのStress−Strain曲線を示す。多孔化プロセスにおいて、MDに強い延伸がかけられていると思われ、MD強度がTD強度に比べて非常に強い値を示すという異方性を有している。このような異方性を持つフィルムでは分子鎖が一方向に配向しているため、配向方向に沿った方向で裂けやすいと考えられる。リチウムイオン電池内部では、金属リチウムがデンドライト(針状結晶)として析出することがあり、力学的に異方性を有するフィルムは一般に突き刺しによっても破損し易いと思われる。
そこで、表3に、各サンプルおよび比較例1、市販品に関して、MD/TDの強度比を示した。
表3に示す結果より、本発明品のものは市販品に比べて強度比が非常に小さいことが分かる。このことから、本発明のフィルムは比較品のセパレータよりも裂けにくく、突き刺しにも強くなることが予測できる。
(試験4)
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いが、熱暴走を起こした場合には発火や爆発のおそれがあり非常に危険である。温度と電池の状態の関係を簡単に示すと、
45℃以下では通常の使用温度として想定された温度であり、電池に影響はない。
60〜100℃では、保存劣化やサイクル劣化が加速され、長期間の保存をすれば、電池寿命を極端に縮めることとなる。電解液の分解も始まるため、電池が膨らむこともある。
100〜120℃では負極から炭酸ガスが発生し始める。
120〜150℃で、セパレータのシャットダウン機能が働き、温度上昇を食い止めることが必要である。
150〜180℃で加熱が加速し、180℃以上では正極の分解が始まり、酸素が発生し、熱暴走へと至る。
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いが、熱暴走を起こした場合には発火や爆発のおそれがあり非常に危険である。温度と電池の状態の関係を簡単に示すと、
45℃以下では通常の使用温度として想定された温度であり、電池に影響はない。
60〜100℃では、保存劣化やサイクル劣化が加速され、長期間の保存をすれば、電池寿命を極端に縮めることとなる。電解液の分解も始まるため、電池が膨らむこともある。
100〜120℃では負極から炭酸ガスが発生し始める。
120〜150℃で、セパレータのシャットダウン機能が働き、温度上昇を食い止めることが必要である。
150〜180℃で加熱が加速し、180℃以上では正極の分解が始まり、酸素が発生し、熱暴走へと至る。
そこで、本発明のフィルム(サンプルNo.3、No.11、No.17)と市販品AおよびBについてシャットダウン機能について検証した。試験方法としては、以下の通りである。
まず測定するフィルムサンプルを電解液である0.05mol/dm3の塩化リチウム炭酸プロピレン溶液に1日以上浸漬して電気抵抗測定用の試料とした。ただし、比較用の市販品AおよびBについては浸漬するだけで細孔内に電解液が浸透しなかったため、電解液をゲージ圧0.3MPaで加圧し、細孔内へ流し込んだ後、電解液中で1日以上浸漬した。
次いで、各サンプルを電解液中から取り出し、図8に示すようにセットする。試験サンプル20は、15mm×50mmの厚さ0.3mmの二枚の銅板21で挟み、絶縁のための15mm×15mm、厚さ3mmのゴムシート22を銅板の外側に配置して、ダブルクリップで固定する。これをシャーレ内の電解液中に浸漬して25℃に保持する。銅板21にLCRメータ(三和電気計器株式会社製:LCR700)を接続して、実行電圧0.63V、100kHzの交流電流で抵抗値を測定した。
同じサンプルを再び電解液中に漬けたまま40℃の恒温乾燥機にて15分加熱し、電気抵抗値を測定した。この後、再び電解液中にサンプルを戻し、電解液中で50℃の恒温乾燥機にて15分加熱し、再び取り出して電気抵抗値を測定した。以下、サンプルが破損して測定ができなくなるまで恒温乾燥機の温度を10℃ずつ上げながら、この測定を繰り返した。
前記のようにして測定した電気抵抗値と温度との関係を図9に示す。図に示す通り、本発明のフィルムは市販品と同等以上の温度特性を有し、充分なシャットダウン機能が認められた。
以上説明したように本発明の製造方法によれば、クレージング工程と冷延伸工程という簡単な工程にてサイズの小さな貫通孔を制御しつつ形成することができる。得られたフィルムは電池用セパレータとして用いるに充分な性能を有することが分かった。
本発明の製造方法は、安全性に優れたリチウムイオン二次電池用のセパレータの製造方法として、産業上の利用可能性がある。
1 ローラ
2 ブレード
3 原反フィルム
4 クレーズ
5 応力
6 閉気孔
7 開気孔
10 窒素ガスボンベ
11、20 試験フィルム
15 デジタル流量計
21 銅板
2 ブレード
3 原反フィルム
4 クレーズ
5 応力
6 閉気孔
7 開気孔
10 窒素ガスボンベ
11、20 試験フィルム
15 デジタル流量計
21 銅板
Claims (4)
- ポリオレフィン樹脂を含むフィルムにクレーズを形成するクレージング工程と、前記クレージング工程においてクレーズが形成されたフィルムを、80℃以上110℃未満の温度で延伸する冷延伸工程とを有する微多孔性フィルムの製造方法。
- 請求項1に記載の製造方法により製造された微多孔性フィルム。
- 曲路率が1.1〜2.8の範囲内であり、気孔率が30〜65%の範囲内である請求項2に記載の微多孔性フィルム。
- 請求項2または3のいずれかに記載の微多孔性フィルムからなる電池用セパレータ。
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